(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】定着装置、及びそれを用いた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241015BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 500
(21)【出願番号】P 2024016951
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2020021763の分割
【原出願日】2020-02-12
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶明
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120808(JP,A)
【文献】特開2015-28506(JP,A)
【文献】特開2014-153507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、
記録材を挟持するニップ部を形成するニップ部形成部材と、記録材の搬送方向と直交する方向に並ぶ複数の発熱体を有するヒータと、を有し、記録材に形成された未定着画像を、前記ニップ部において
、前記ヒータの熱を利用して加熱して記録材に定着させる定着部と、
記録材に形成する画像に応じて前記複数の発熱体へ供給する電力を制御する制御部と、を備え、
前記ニップ部で未定着画像が形成された記録材を定着処理する時、前記制御部が、未定着画像が形成されていない記録材の領域を加熱する加熱領域である非画像加熱領域の制御目標温度を、未定着画像が形成されている記録材の領域を加熱する加熱領域である画像加熱領域の制御目標温度よりも低く設定する画像形成装置において、
複数枚の記録材への連続プリントの中断後、前記画像形成装置の中に残留する記録材を前記定着部を通過させて自動的に排出する時、前記制御部は、前記非画像加熱領域の制御目標温度を前記連続プリント中の前記非画像加熱領域の制御目標温度よりも高く設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ニップ部形成部材は、前記ヒータが
内部空間に配置される筒状のフィルムと、前記フィルムの
外周面に接触し、前記フィルムを介して前記ヒータとの間に前記ニップ部を形成する加圧部材と、を含むことを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
複数の
前記加熱領域の夫々の温度を検知する温度検知手段をさらに備え、
前記制御部は、前記温度検知手段が検知する温度と、前記制御目標温度と、に基づいて、前記複数の発熱体に供給する電力を制御することを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を形成した記録材を加熱し定着する定着装置に関する。また、該定着装置を画像定着手段として搭載した、複写機、プリンタ、等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、磁気記録等の画像形成プロセスにより、紙や光沢フィルム等の記録材の上に、画像情報に対応した未定着トナー像を形成する画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、トナー像を永久固着画像として記録材面上に定着させるため、定着装置によりトナー像を溶融し、記録材と密着させる加熱処理(定着処置)が行われる。
【0003】
定着装置として、特許文献1に示すようなフィルム加熱方式のものが知られている。本方式の定着装置は、定着フィルムと定着フィルムの内面に接触するヒータと、定着フィルムを介してヒータに加圧接触しニップ部を形成する加圧ローラとで主要部が構成される。フィルム加熱方式の定着装置は熱容量が小さいためクイックスタート性や省電力性に優れるという特徴を持つ。しかしながら近年、これまで以上の省電力化が求められており、それに対応するため、記録材上に画像が形成された領域を選択的に加熱する方式(特許文献2)が提案されている。この方式では、独立して発熱量を制御可能な複数の発熱体を、記録材の搬送方向と直交する方向(以下、長手方向という)に並べて配置した構造のヒータを用いる。そして、画像が通過する領域に対応する発熱体を選択的に通電することで、画像部が選択的に加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-44075号公報
【文献】特開平6-95540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置ではジャム(紙詰まり)等が発生した場合、画像形成途中であっても装置の動作を中断し、停止する場合がある。未定着のトナーを載せた記録材が定着装置の定着ニップ部を通過中に停止した場合、定着ニップ部に記録材を挟んだままの状態となる。そのため、ユーザーは装置のドアを開け記録材を定着器から除去する所謂ジャム処理を行う必要があるが、その際に未定着のトナー像が定着装置の定着フィルムや加圧ローラに付着してしまうことがある。このようにして付着したトナーは、通常、装置の停止状態が解除され、画像形成が再開可能な状態に復帰(リカバリ)した後、画像形成に伴い記録材が定着装置を通過する度に除去される。しかし、特許文献2の定着装置のように記録材上において未定着画像が形成される部分である画像部を選択的に加熱する方式の定着装置において、以下のようなことが考えられる。例えば、ジャム後に復帰した後に、記録材上において未定着画像が形成されない部分である非画像部の領域の方が前述の画像部の領域より広い画像が形成された記録材を通紙し続けた場合、定着フィルムや加圧ローラに付着した汚れトナーが除去されない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の画像部を選択的に加熱する定着装置において、画像形成動作停止後に定着フィルムや加圧ローラに付着したトナーを速やかに除去可能な定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における画像形成装置は、
記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、
記録材を挟持するニップ部を形成するニップ部形成部材と、記録材の搬送方向と直交する方向に並ぶ複数の発熱体を有するヒータと、を有し、記録材に形成された未定着画像を、前記ニップ部において、前記ヒータの熱を利用して加熱して記録材に定着させる定着部と、
記録材に形成する画像に応じて前記複数の発熱体へ供給する電力を制御する制御部と、を備え、
前記ニップ部で未定着画像が形成された記録材を定着処理する時、前記制御部が、未定着画像が形成されていない記録材の領域を加熱する加熱領域である非画像加熱領域の制御目標温度を、未定着画像が形成されている記録材の領域を加熱する加熱領域である画像加熱領域の制御目標温度よりも低く設定する画像形成装置において、
複数枚の記録材への連続プリントの中断後、前記画像形成装置の中に残留する記録材を前記定着部を通過させて自動的に排出する時、前記制御部は、前記非画像加熱領域の制御目標温度を前記連続プリント中の前記非画像加熱領域の制御目標温度よりも高く設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の画像形成装置は、ジャム等による画像形成動作停止の前と後とでヒータや定着フィルムの温度分布を変えることで、画像部を選択的に過熱する定着装置においても、停止後に画像を形成しない加熱領域が続いた場合に、付着したトナーが除去されにくい問題を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実施例1において記録材の上の画像を加熱領域に分割した様子を示す図
【
図5】実施例1における加熱領域A3のヒータの温度の時間推移
【
図6】実施例1において
図4のR2タイミングにおける温度分布
【
図7】実施例1において、記録材が搬送路や定着装置を通過する様子を示した図
【
図8】実施例1における画像が形成された加熱領域が多い画像を示す図
【
図9】実施例1における画像が形成された加熱領域が少ない画像を示す図
【
図10】実施例1における停止前と後のヒータの温度分布
【
図11】実施例1のその他の実施形態において停止後に画像を形成する際のヒータの温度分布
【
図12】実施例2において停止時に形成していた画像を示す図
【
図13】実施例2において停止後に画像を形成する際のヒータの温度分布
【
図14】実施例3において停止時に形成していた画像を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0011】
(実施例1)
本実施例は、画像形成装置に備えられた定着装置のニップ部に挟持された記録材Pを除去するジャム処理を行う際における画像形成動作の停止の前と後とで、ヒータ(または定着フィルム)の温度分布を変えることを最大の特徴としている。
【0012】
まず画像形成装置と定着装置の概略構成例について説明し、その次に、画像部を選択的
に加熱可能とした定着装置のヒータ構成、及び画像部を選択的に加熱する方法について説明を行う。その後、本発明の特徴部である停止前後の長手温度分布の変更内容について説明を行う。
【0013】
[画像形成装置の概略構成例]
図1は本実施例における画像形成装置の概略構成を示したものである。画像形成装置1は、記録材Pを収納するトレイ2から供給される記録材Pに画像を形成する。画像形成部は、感光体11~14や感光体表面を帯電する帯電ローラ61~64、感光体上の潜像をトナーで現像する現像ローラ71~74を有するトナーカートリッジ21~24と、感光体に潜像を書き込むスキャナユニット31~34とからなる。この画像形成部で、記録材Pに対して後述の定着装置8で定着処理がされる前の未定着画像が形成される。
【0014】
前記感光体11~14は中間転写ベルト(ITB)7を介し1次転写ローラ41~44に当接している。各色の感光体上に形成されたトナー画像は、1次転写ローラに印加される正極性電圧により、一定速度で搬送される中間転写ベルト7上に順次、重ね合うように転写(一次転写)される。つまり、例えば最初にイエロー(Y)の画像が中間転写ベルト7に転写され、その上に、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の順に転写されて、カラー画像が形成される。カラー画像は、中間転写ベルト7の回転に伴い、2次転写ローラ6と中間転写ベルト7が接する2次転写部まで搬送される。
【0015】
一方、トレイ2内の記録材Pは給紙ローラ3によって1枚ずつ繰り出され、搬送ローラ対4により200mm/secの一定速度でレジローラ対5まで搬送される。レジローラ対5まで搬送された記録材Pは、中間転写ベルト7上に形成された画像とタイミングが合うように2次転写ローラ6まで搬送される。そしてカラー画像は正極性の電圧が印加された2次転写ローラ6により中間転写ベルト7から記録材Pに転写される(2次転写)。記録材Pに転写しきれずに中間転写ベルト7上に残ったトナーは、中間転写ベルトに接するように配置されたクリーニングブレード57によってかきとられて、回収容器58に入れられる。2次転写ローラ6の下流には定着部としての定着装置8が設けられる。画像が転写された記録材Pは定着装置8で、熱と圧力によって、画像を定着処理した後、プリンタの上部、排出トレイ9に排出される。画像形成装置は、レターサイズ(215.9mm幅)までの幅の記録材に画像形成可能である。
【0016】
画像形成装置は、直接又はネットワークを介してPC等の端末機器(不図示)と接続されており、ユーザーは端末機器を介し、画像形成装置に画像形成指示を出す。画像形成装置は、ジャム等を検知した際、画像形成を停止すると共に、その検知内容とジャム処理方法などの対処方法を表示部80に表示すると同時に端末機器に送信する。検知した内容や対処方法は、端末機器上でも表示され、ユーザーに告知される。画像形成装置には、これら一連の動作を制御するための制御部129も備えている。
【0017】
装置がジャム(紙づまり)等を検知し停止した場合、ユーザーは記録材の搬送路82に残留した記録材を除去するジャム処理を行うことがある。その際は、
図1における装置の右側に設けられた開閉可能なドア81を開け、搬送路82に残留した記録材を除去する。定着装置8に記録材が挟まったまま停止している場合は、必要に応じて定着装置を装置本体から取り外した上で、定着装置の入り口側または出口側から記録材を引き抜いて除去する。
【0018】
[定着装置の構成例]
次に、定着装置の構成例について説明する。
図2(a)は、定着装置8の模式的断面図である。定着装置8は、以下の構成を備えている。すなわち、定着部材としての定着フィルム202と、定着フィルム202の内面に
接触する加熱部材としてのヒータ300と、定着フィルム202の外面と当接し、定着フィルム202を介してヒータ300と共に定着ニップ部N1を形成する加圧部材としての加圧ローラ208と、金属ステー204と、を有する。これらの、定着フィルム202と加圧ローラ208を含む構成が、本実施例において定着ニップ部N1を形成するニップ部形成部材に相当する。
【0019】
定着フィルム202は、筒状に形成された複層耐熱フィルムであり、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属を基層としている。また、定着フィルム202の表面には、トナーの付着防止や記録材Pとの分離性を確保するため、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の離型性にすぐれた耐熱樹脂を被覆して離型層を形成してある。更に、画質向上のため、上記基層と離型層の間にシリコーンゴム等の耐熱ゴムを弾性層として形成してもよい。
【0020】
加圧ローラ208は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金209と、シリコーンゴム等の材質の弾性層210を有する。
【0021】
ヒータ300は、耐熱樹脂製のヒータ保持部材201に保持されており、定着ニップ部N1内に設けられた加熱領域A1~A7(詳細は後述する)を加熱することで、定着フィルム202を加熱する。ヒータ保持部材201は定着フィルム202の回転を案内するガイド機能も有している。ヒータ300には、定着フィルム202の内面に接触する側とは反対側(裏面側)に電極Eが設けられており、電気接点Cより電極Eに給電を行っている。また、ヒータ300の異常発熱により作動してヒータ300に供給する電力を遮断するサーモスイッチや温度ヒューズ等の安全素子212が、ヒータ300の裏面側に対向して配置されている。
【0022】
金属ステー204は、不図示の加圧機構から加圧力を受け、ヒータ保持部材201及びヒータ300を加圧ローラ208に向けて付勢する。その結果、定着フィルム202が加圧ローラ208に密着し、ニップN1が形成される。
【0023】
加圧ローラ208は、モータ(不図示)から動力を受けて矢印R1方向に回転する。加圧ローラ208が回転することによって、定着フィルム202が従動して矢印R2方向に回転する。定着ニップ部N1において記録材Pを挟持搬送しつつ定着フィルム202を介してヒータの熱を利用し、記録材P上の未定着トナー画像は定着処理される。また、定着フィルム202の摺動性を確保し安定した従動回転状態を得るために、ヒータ300と定着フィルム202の間には、耐熱性の高いフッ素系潤滑グリース(不図示)を介在させている。
【0024】
尚、本実施例の定着装置8は、ヒータ300及びヒータ保持部材201を加圧ローラ208から離間する、不図示の離間機構を備えている。ジャム等が発生し、記録材Pが定着ニップ部N1に挟まったまま装置が停止した際は、定着ニップ部N1に挟まった記録材Pを容易に除去できるよう離間機構により離間動作をおこなう。また、定着装置8には、記録材Pの搬送方向における入口側、及び出口側に、それぞれ、記録材Pの位置を検知することで、記録材の有無を判断する検知部としての入口記録材センサ215、出口記録材センサ216を備えている。これらのセンサを用いることで、停止状態となった際に定着装置8に記録材Pが残留しているかの検知が可能である。
【0025】
[画像部を選択的に加熱可能なヒータの構成]
次に、
図3を用いて、本実施例におけるヒータ300の構成を説明する。
図3(A)はヒータ300の断面図、
図3(B)はヒータ300の各層の平面図である。
図3(B)には、本実施例の画像形成装置1における記録材Pの搬送基準位置Xを示してある。本実施
例における搬送基準は中央基準となっており、記録材Pはその搬送方向に直交する方向(長手方向)における中心線が搬送基準位置Xを沿うように搬送される。また、
図3(A)は、搬送基準位置Xにおけるヒータ300の断面図となっている。
【0026】
ヒータ300は、セラミックス製の基板305と、基板305上に設けられた裏面層1と、裏面層1を覆う裏面層2と、基板305上の裏面層1とは反対側の面に設けられた摺動面層1と、摺動面層1を覆う摺動面層2により構成される。
【0027】
裏面層1には独立して通電制御可能な発熱体302が長手方向に複数並べて形成されている(302-1~7)。本実施例では、同じ幅(31.4mm)の発熱体を長手方向に7個並べ、全体の長さが220mmとなるよう形成した。尚、発熱体の数は任意であり、また、発熱体の幅は場所により異なっていても良い。図中E1~E8-2で示したものは、発熱体に給電するための電気接点(給電電極)であり、301、303-1~7で示したものは、電気接点と発熱体を電気的に接続する導電体パターンである。
【0028】
このように各種パターンを構成することで、E1~E8-2のうち発熱体毎に独立した給電電極E1~E7から、各導電パターン303-1~7を経由して各発熱体302-1~7を通り、導電パターン301を経由して電極E8-1、2に流れる通電経路が形成される。
【0029】
長手方向に並んだ各発熱体302-1~7が発熱を担う長手領域を、以下ではそれぞれ加熱領域A1~A7と表現する。裏面層2は、絶縁性を有する表面保護層307より構成(本実施例ではガラス)されており、導電体301a、b、導電体303、発熱体302を覆っている。また、表面保護層307は、電極E4の箇所を除いて形成されており、電極E4に対して、ヒータの裏面層2側から電気接点C(不図示)を接続可能な構成となっている。
【0030】
基板305を介し裏面層1の反対側に位置する摺動面層1には、各発熱体302-1~7が配置された各々の加熱領域A1~A7におけるヒータの温度を検知するため、温度検知手段であるサーミスタTH(TH-1~7)が形成されている。また、各サーミスタの検知した温度信号を取り出すための独立した配線パターンとして機能する導電体ET1~7と、各サーミスタ共通の給電用の配線パターンとして機能する導電体EGも形成されている。
【0031】
このように、各発熱体が加熱する加熱領域毎に温度検知手段を設けることで、長手方向に並んだヒータの加熱領域A1~A7毎に独立した異なる温度に制御することが可能である。摺動面層2は、摺動性と絶縁性を有する表面保護層308より構成(本実施例ではガラス)されており、サーミスタTH、導電体ET、導電体EGを覆うとともに、定着フィルム202内面との摺動性を確保している。また、表面保護層308は、導電体ETおよび導電体EGに対して電気接点を設けるために、ヒータ300の長手両端部を除いて形成されている。
【0032】
[画像部を選択的に加熱する方法]
次に、前述の加熱領域毎に独立して温度制御可能なヒータを搭載した定着装置8で、記録材上において前述の未定着画像が形成された部分である画像部を選択的に加熱する方法について説明する。例えば、
図4のようにレターサイズの紙等の記録材上に401、402、403で示した部分に画像を形成する場合について考える。
【0033】
制御部129は、まず取得部129-1で取得された画像情報に基づき画像を長手の加熱領域(A1~A7)毎に分割する。そして、分割した加熱領域毎に、画像の先端が定着ニ
ップN1に到達するタイミングと画像の後端が定着ニップN1から抜けるタイミングを算出する。そして、各々の加熱領域の定着ニップ部を画像が通過している間だけ、その加熱領域のヒータ温度(又は定着フィルム温度)を定着可能な温度に維持する。ここでは、加熱領域A3を例に挙げ、
図4、及び
図5に示した加熱領域A3のヒータの制御目標温度の設定の時間推移を示した図と共に説明する。
【0034】
図4に示すとおり、加熱領域A3を通過する画像は、画像401の一部の401-3と、画像403の一部の403-3である。ここで、画像401-3の先端が加熱領域A3の定着ニップN1に達するタイミングをR1、後端が定着ニップN1を通過するタイミングをR3とする。また、同様に画像403-3の先端が加熱領域A3の定着ニップN1に達するタイミングをR4、後端が定着ニップN1を通過するタイミングをR5とする。
【0035】
この場合、加熱領域A3に対応するヒータの制御目標温度は、
図5に示すように設定される。画像部401-3がニップ部を通過するタイミングR1からR3までの間と、画像部403-3が通過するタイミングR4からR5までの間の時間は定着可能な温度Tf(200℃)が維持されるように制御目標温度が設定され、画像部が選択的に加熱される。
【0036】
一方、前述の画像部に対して、記録材上において未定着画像が形成されない部分を非画像部とする。この非画像部が定着ニップN1を通過しているR1以前のタイミングや、R3からR4の間、およびR5以降は、より低温のTw(130℃)まで温度を下げることでヒータへの通電電力を削減することができる。
【0037】
尚、低温の状態からヒータ300や定着フィルム202の温度を定着可能な温度Tfまで昇温するためには立ち上げ時間を要する。そのため、
図5に示すように画像が定着ニップN1に達するR1、R4タイミングに先立つR1´、R4´のタイミングからヒータへの通電電力を増しヒータ300や定着フィルム202の昇温を開始する。
【0038】
以上の動作を、A1からA7の加熱領域夫々に並行して行うことで、全ての画像部に対して選択的に加熱することができる。
【0039】
このように、画像部を選択的に加熱することで、ヒータ300や定着フィルム202には、画像の配置により長手方向に温度分布が発生する。
図6は、
図4の画像401が定着ニップを通過中のR2のタイミングにおけるヒータ(又は定着フィルム)の長手方向の温度分布を示したものである。前述の複数の加熱領域のうち、画像の通過する加熱領域であるA2、A3、A4、A5は定着可能な高温Tfに維持される。一方で、未定着画像が形成されない非画像領域としての非画像部が通過するA1、A6、A7を非画像加熱領域とすると、これらの加熱領域では低温Twで維持される。
【0040】
[ジャム処理による汚れトナー付着について]
次に、
図7を用いて、停止後のジャム処理により定着フィルム202や加圧ローラ208に汚れトナーが付着する様子について説明する。
図7は、
図1の画像形成装置の記録材搬送路82付近の部分拡大図であり、画像を形成中の記録材Pが図中、下から上に向かう搬送方向に進み、定着装置8のニップ部N1を通過している様子を示したものである。
【0041】
図中406は、定着ニップN1より搬送方向の下流側の記録材の領域を示しており、記録材Pに形成されたトナー画像の定着処理が済んだ領域に相当する。図中407は、定着ニップN1から転写ニップN2の間の記録材の領域を示しており、記録材Pに形成されたトナー画像が、未定着状態で存在する領域に相当する。図中408は、転写ニップN2の搬送方向の上流側の領域であり、記録材上にはまだトナー画像が形成(転写)されていない領域に相当する。
【0042】
図7で示した状態でジャム等が発生し、画像形成を停止した場合、記録材を定着装置8や搬送路82から除去するジャム処理を行う必要がある。その際、記録材Pを409の矢印方向に引きぬき除去する場合、記録材Pの図中407に示す領域で形成されている未定着トナーが定着フィルムに付着し、その付着トナーがニップ部N1を介し加圧ローラ側にも付着する。また、410に示す矢印方向に引きぬき除去した場合は、一度定着したトナー画像が、高温状態の定着フィルムに再度接触しトナーが溶融することで付着の可能性がある。
【0043】
一方、画像形成中に停止した場合であっても、記録材Pの先端が定着装置8の定着ニップ部N1に達していない場合や、記録材Pの後端が定着装置8を通過し終えた場合は、ジャム処理過程で汚れトナーが付着しない。
【0044】
[停止後、汚れトナーが除去されない場合について]
課題の部分でも述べたとおり、画像部を選択的に加熱する定着装置において、付着したトナー(付着トナー)が、画像形成動作停止状態の解除後、画像形成に伴い定着装置に記録材が通紙されても、速やかに除去されない場合がある。具体的には、以下に挙げるケース1、ケース2の場合である。
【0045】
(ケース1:画像形成動作停止後、画像を形成する領域が変わる場合)
図8に示すように、記録材Pの搬送方向に直交する方向である長手方向に対して、未定着画像が加熱される加熱領域が多い画像を形成し、定着装置8を通過中に停止状態となる場合を想定する。かかる停止状態の解除後、
図9のような未定着画像が加熱される加熱領域が少ない画像を形成した場合、付着トナーが除去されにくい。
【0046】
図8では、記録材に対してA1からA7の加熱領域にわたって画像が形成されている。停止時に
図8に示す画像が形成された記録材が
図7に示したように定着装置の定着ニップに挟まれたまま停止した場合、ジャム処理の際に、A1からA7の加熱領域において、定着フィルム、加圧ローラへのトナー付着の可能性がある。
【0047】
図10(a)は
図9に示す未定着画像が加熱される加熱領域が少ない画像を定着処理する場合の通常の温度分布を示している。停止状態の解除後に、このような温度分布で定着処理する場合、記録材上に形成された未定着画像に対応する加熱領域A3からA5では、ヒータ300が、定着可能な高温Tfに加熱される。その結果、定着フィルムや加圧ローラに付着したトナーは記録材に移動し除去されやすい。一方、未定着画像が形成されない領域に対応する加熱領域A1、A2、A6、A7では、ヒータ300がTwの低温状態で維持されるため、付着していたトナーは、記録材に付着させて除去することができない。その後も
図8に示す画像が形成され続ける場合、付着トナーはそのまま定着フィルム202や加圧ローラ208に留まりやすい。
【0048】
(ケース2:ジャム処理時に記録材が横ずれする場合)
ケース1とは異なり、定着ニップN1を構成する加圧ローラ208の軸線方向であって、記録材Pの搬送方向と直交する方向である長手方向に対して未定着画像が加熱される加熱領域が少ない画像を形成し、定着装置8を通過中に停止状態となった場合を想定する。かかる場合であっても、ジャム処理時に記録材Pが前述の長手方向にずれる場合、付着トナーが除去されにくい。
【0049】
本実施例の定着装置8は、前述の通り、停止時にユーザーが定着ニップN1に挟まった記録材Pを容易に除去できるよう、自動的にニップ部の離間を行い、ニップ部の形成を解除する。ニップ部の離間を行う場合、定着ニップN1で記録材Pを保持する力として、ニ
ップ部に加わる加圧力が低下し弱まるため、ユーザーが記録材Pを除去するジャム処理の際に、記録材Pが前述の長手方向にずれる(横ずれする)ことが多い。その結果、ずれた方向にトナー付着の発生する領域が広がってしまう場合がある。
【0050】
ここでは、停止状態になった時と停止状態の解除後の双方共に、未定着画像が加熱される加熱領域が少ない
図9に示すような画像を形成していた場合を考える。
【0051】
図9に示す画像では、加熱領域A3からA5に画像が形成されるが、ジャム処理の際、記録材がずれると、汚れの付着範囲が加熱領域A3からA5以外にも拡大する。仮に、横ずれにより汚れの付着範囲が拡大しA1からA5の範囲に及んでいたと考えると、停止状態の解除後、
図10(a)に示した通常の温度分布で
図9に示す同じ画像を形成し続けた場合、ケース1同様、非画像領域に当たるA1、A2の加熱領域に付着したトナーは除去しにくい。
【0052】
[停止状態解除後の長手温度分布の変更について]
次に、本実施例の特徴部について説明を行う、本実施例では、画像形成装置の停止状態の解除後において、ヒータ(または定着フィルム)の制御目標温度の分布を、通常時の制御目標温度の分布から変えることを最大の特徴としている。より具体的には、ジャム処理後に画像形成装置の停止状態を解除した後の制御目標温度の分布は、通常時より、画像を形成しない加熱領域の温度の上昇量を、画像を形成する加熱領域の温度の上昇量より大きくすることで温度分布を変える。なお、通常時とは、前述のジャム処理が行われなかった場合を想定している。
【0053】
本実施例における装置動作について以下で説明する。
停止状態の発生後、最初に、
図2に示す定着装置8に備えている入口記録材センサ215、及び出口記録材センサ216により、定着装置内に記録材Pが残留しているか検知する。本実施例ではこの段階で、停止状態の解除後、画像形成を行う際に、制御目標温度の分布の変更を行うかどうか決定する。つまり定着装置内に記録材Pが残留していれば、温度分布の変更を行い、残留していなければトナー付着の可能性が無いため行わない。
【0054】
その後は、ユーザーがジャム処理を行い、ドアを閉じた後、記録材Pが定着装置から除去されたことを、入口記録材センサ215、及び出口記録材センサ216が検知するまで待機する。また、画像形成装置が停止した他の原因が有れば、それが解除されるのを待機する。
【0055】
そして、停止状態の解除後、画像形成を再開する際には、前述の決定に従い、温度分布を変更する場合のみ、画像を形成しない加熱領域の温度の上昇量を画像が形成される加熱領域より上げ温度分布を変更する。
【0056】
停止後、
図9に示した画像を形成する場合を例に挙げて説明する。
図10(a)に示したジャム処理が行われなかった場合である通常時の制御目標温度の分布に対し、
図10(b)のように、未定着画像が形成された領域を加熱する加熱領域の温度上昇量413に対し、記録材上に未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域の温度上昇量414を大きくしている。
【0057】
ここで、未定着画像が形成された領域を加熱する加熱領域A3、A4、A5は、その制御目標温度(画像加熱温度)が定着可能な温度Tf(200℃)から付着トナーの除去が進むより高い温度であり、かつ画像に影響の生じないTh1(207℃)に上げた。Th1以上に温度を上げた場合は、ホットオフセットや、光沢度の上昇などの画像への影響が見られた。一方、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域A1、A2、A
6、A7は、その制御目標温度(非画像加熱温度)をTw(130℃)の低温からTh1まで上げ、上昇幅を前述の画像部より大きくした。
【0058】
このように、停止後に未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域の温度の上昇幅を大きくすることで、付着トナーは軟化又は溶融され、記録材Pへ移動し除去することができる。付着トナーの除去は、制御目標温度の分布の変更を行っても、1回の記録材の通過で完了しないことがあるため、停止の後、複数の画像形成回数まで継続しても良い。
【0059】
実際に前述のケース1の場合とケース2の場合において、
図8、
図9の画像部には黒のベタ画像を描画し、停止後、
図9に示す画像を5枚通紙した時点の付着トナーの残留状況を確認した結果は、次の通りであった。制御目標温度の分布の変更を行わない比較例では、ケース1の場合、5枚通紙後加熱領域A1、A2、A6,A7の位置に対応する加圧ローラの一部や、定着フィルム上にトナー付着が確認された。また、ケース2の場合は、ジャム処理の際に長手方向にずれた方向と一致する加熱領域A2の位置に対応する加圧ローラの一部等にトナー付着が確認された。一方、本実施例のように制御目標温度の分布を変更した場合は、5枚通紙後時点でトナー付着は確認されなかった。
【0060】
以上のように、停止状態の前と後とでヒータや定着フィルムの制御目標温度の分布を変えることで、画像部を選択的に過熱する定着装置においても、前述のケース1、ケース2のような停止後に未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域が続いた場合に、付着したトナーが長期間除去されず固着してしまう問題を防止できた。
【0061】
[本実施例のその他実施形態]
本実施例では停止後に画像形成を行う際、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域の温度の上昇量を、未定着画像が形成された領域を加熱する加熱領域の温度の上昇量より大きくした。その場合において、
図10(b)に示すように双方の領域の温度が同じ温度とした例を示したが、必ずしも同じ温度にする必要は無い。
図11(a)に示した温度分布のように、付着トナーの除去が促進されれば、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域の温度を、画像を形成する領域の温度やTfよりは低いTmとし、電力の削減と両立させても良い。また、画像を形成する領域の温度についても、必ずしもTfから上げる必要はない。
【0062】
一方で、
図11(b)に示すように、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域の制御目標温度を、未定着画像が形成された領域で画像への影響が表れない温度Th1を超えるより高い温度Th2としても良い。未定着画像が形成されていない領域では温度が高くても画像への影響が表れる画像の光沢度の上昇や、ホットオフセットが発生する心配が無い。また、付着した汚れトナーも前述の通りほとんど加圧ローラ側に移動するため、汚れトナー起因のホットオフセットも発生しにくい。温度を上げることで、汚れトナーの除去促進できる利点がある。
【0063】
また、連続通紙中に停止状態になった場合、装置の搬送路内に複数の記録材が留まったまま停止する場合も考えられる。その場合、停止後にユーザーが除去しきれず残留した記録材を自動的に搬送し排出する動作を行うこともできる。この場合、停止状態の発生時点で、自動排紙する記録材の1つ前に先行していた記録材も搬送途中であった場合、先行していた記録材をユーザーが除去する際に定着フィルムや加圧ローラにトナー汚れが付着した可能性がある。
【0064】
そのため、自動搬送された記録材が定着ニップを通過する際の温度分布も、正常に動作していた場合に記録材が定着ニップを通過するときの温度分布(例えば
図10(a)のよ
うな通常時の温度分布)から変更する。すなわち、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域の温度を
図10の(b)のように高くすることにより、トナー汚れの除去を早めることも可能である。
【0065】
尚、本実施例では停止状態の発生前後とでヒータの制御目標温度の分布を変える例を説明したが、ヒータと直接接する定着フィルムの温度は絶対値が異なるものの連動し、同じ温度分布を形成する。そのため、同様に定着フィルムの制御目標温度の分布を変えることにしても良い。
【0066】
(実施例2)
本実施例は停止状態発生時の画像の画像情報に応じて、停止状態の解除後の画像形成時にヒータの制御目標温度の分布を変えることを特徴としている。
【0067】
前述の通り記録材Pを定着装置8から除去するジャム処理の際、記録材Pが前述の長手方向にずれ、未定着トナーが、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域に対応する定着フィルムや加圧ローラの一部にも付着することがある。一方で、長手方向にずれる量は限られ、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域のうち、未定着トナーが付着する領域は、画像を形成する加熱領域に隣接する部分に収まることが多い。停止時に定着フィルム202と加圧ローラ208が離間したとしても、その隙間は狭いため、記録材Pが長手方向に全く自由には動けないためである。
【0068】
そこで、本実施例では、停止後に画像を形成する際、取得部129-1で取得された停止状態発生時に形成されていた画像の画像情報を用い、次のように制御目標温度の分布の変更を行った。つまり、まず、停止後に画像が形成されない記録材上の領域を加熱する加熱領域であり、かつ、停止状態発生時に画像が形成されており、ジャム処理後に定着装置8で定着処理がされる記録材上の領域を加熱する加熱領域を第1加熱領域とする。次に、それに隣接する加熱領域であって、停止後に画像が形成されない記録材上の領域を加熱する加熱領域であり、停止状態発生時に画像が形成されない領域を加熱する加熱領域を第2加熱領域とする。これら第1加熱領域と第2加熱領域とが重なる加熱領域のみ温度を上げ、付着トナーが除去されやすくした。以下では、図を用いながら詳述する。
【0069】
停止状態発生時に
図12に示す画像が形成されており、停止状態の解除後に
図9に示す画像を形成する場合を考える。すると、
図12において、画像形成される領域を加熱する加熱領域はA3、A4、A5、A6であり、それに隣接する加熱領域はA2、A7である。停止後に画像を形成する際に、停止時の画像に関するこれらの情報と、停止後の
図9に示す画像が形成されない領域を加熱する加熱領域A1、A2、A6、A7を照合し、重なる加熱領域A2、A6、A7のみ温度を上げる。すなわち、上述の第1加熱領域に相当する加熱領域は、
図12では未定着画像が形成されており、かつ、停止後に相当する
図9では未定着画像が形成されていない領域であるA6となる。また、上述の第2加熱領域に相当する加熱領域は、
図12と
図9のいずれにおいても、未定着画像が形成されていない領域を加熱する加熱領域A2、A7となる。
【0070】
図13(a)は本実施例の停止後に
図9に示す画像を形成する際のヒータの制御目標温度の分布を示したものである。このようにすることで、ジャム処理でトナーが付着する可能性が高い領域のみ温度を上げ、それ以外の領域が温度を上げずに済むため、付着トナーの除去効率を上げながら消費電力が削減できる。
【0071】
尚、停止時における定着フィルムと加圧ローラとの間の離間の有無や離間量、加圧力低減の程度に応じて、ジャム処理時のずれ量が変わる。これらの離間の有無や程度に応じて温度分布の変更実施の有無や、温度変更を行う加熱領域の範囲を決定しても良い。
【0072】
例えば、定着装置が停止時に離間を行わない場合、すなわち、定着ニップ部N1の形成を解除したり、定着ニップ部N1に加わる加圧力を維持し続ける場合には、ユーザーのジャム処理時に、記録材が記録材長手方向に殆どずれない事も考えられる。その場合は、
図13(b)に示した温度分布のように、停止時に画像の形成された加熱領域であり、かつ、停止後に画像を形成しないA6の加熱領域のみ、すなわち上述の第1加熱領域のみ制御目標温度を上げれば良い。
【0073】
(実施例3)
本実施例は停止状態発生時の画像の画像情報、及び、記録材が停止したタイミング(又は位置)に応じて、停止状態が解除された後の画像形成時のヒータの制御目標温度の分布を変えることを特徴としている。
【0074】
停止時に定着装置8に挟まれた記録材Pを除去するジャム処理の際、トナー付着の可能性が生じるのは、
図7に示す領域のうち、主に停止状態の発生時点で定着ニップN1と転写ニップN2の間にある、定着処理を終えていない搬送方向の領域である。つまり、その領域に画像があれば、トナーは未定着の状態であるため、トナー付着の可能性がある。
【0075】
そこで、停止状態が発生し装置の動作が停止した場合、そのタイミングを検知することにより、記録材Pの搬送位置を検出する。例えば記録材Pの先端が、
図2に示す入口記録材センサ215を通過してから停止状態が発生したタイミングまでの時間が分かると、停止時点で記録材Pの定着処理を終えた領域と、定着処置が行っていない領域の搬送方向の長さが分かる。その後は、定着処理を行っていない領域における各加熱領域の画像の有無に応じて、実施例2同様に制御目標温度分布の変更を行えばよい。
【0076】
すなわち、記録材上の領域のうち、定着処理がされていない未定着画像が形成された領域を未加熱画像領域とし、その未加熱画像領域を加熱することになる加熱領域を第3加熱領域とする。また、定着処理がされていない記録材上の領域のうち、未定着画像が形成されていない領域を未加熱非画像領域として、その未加熱非画像領域を加熱することになる加熱領域のうち、前述の第3加熱領域に隣接する加熱領域を第4加熱領域とする。すると、第3加熱領域ではまだ未定着画像が加熱されていない状態なので、ジャム処理の際にトナーが付着する可能性がある。また、第3加熱領域に隣接する第4加熱領域においても、記録材が横ずれした際に、トナーが付着する可能性がある。そこで、この第3加熱領域と第4加熱領域における、未定着画像が形成されていない記録材上の領域を加熱する際の制御目標温度を、未定着画像が形成された領域を加熱する際の制御目標温度に合わせて設定する。このように制御目標温度を設定することで、トナー付着する可能性がある領域のトナーのみを記録材に移動させて除去することができる。
【0077】
例えば、
図14に示す画像413が記録材Pに形成されている場合に、画像413のL1、L2における位置がそれぞれ定着ニップN1、転写ニップN2を通過中に停止状態が発生した場合を考える。L1からL2の定着処理を終えていない搬送方向における記録材上の領域において、画像が形成される加熱領域はA3、A4、A5である。つまり、汚れが付着する領域は、A3~A5、又はその隣接領域であるA2、A6と考えられる。そのため、実施例2と同様、停止後の形成される画像に応じて、画像を形成しない加熱領域のうち温度を上げる加熱領域を決定すれば良い。
【0078】
本実施例によれば、トナー付着の発生する加熱領域をより正確に把握できるため、付着トナーの除去効率を上げながら消費電力が削減できる。
【符号の説明】
【0079】
1…画像形成装置、8…定着装置、202…定着ベルト、208…加圧ローラ、300…ヒータ、P…記録材、N1…定着ニップ、N2…転写ニップ