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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】送液システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20241015BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20241015BHJP
   F17D 1/14 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C02F1/00 D
G05D7/06 Z
F17D1/14
C02F1/00 B
C02F1/00 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024102433
(22)【出願日】2024-06-25
【審査請求日】2024-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】森田 正貴
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196587(JP,A)
【文献】特開2023-150007(JP,A)
【文献】特開2022-117924(JP,A)
【文献】特開2019-162569(JP,A)
【文献】特開平05-329470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
G05D 7/00- 7/06
F17D 1/00- 5/08
B01J 4/00- 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンク、前記タンクからユースポイントに液体を供給するための供給流路、及び前記ユースポイントに供給されなかった液体を前記タンクへ戻す循環流路を備える第1液体供給システムび第2液体供給システムと、
前記第1液体供給システムに液体を供給する供給源と、
前記第1液体供給システムと第2液体供給システムに接続された中継システムと、を備え、
前記中継システムは、
前記第1液体供給システムの前記タンクと前記第2液体供給システムの前記タンクとを接続する第1中継流路と、
前記第1中継流路に設けられた中継ポンプと、
前記中継ポンプの出口から前記中継ポンプの入口へ液体を循環させる第2中継流路と、を備え、
前記第2液体供給システムが液体の供給を必要とするときは、前記第1中継流路から前記第2液体供給システムに液体を供給し、
前記第2液体供給システムが液体の供給を必要としないときは、前記第1中継流路から前記第2液体供給システムに液体を供給せず、
前記第2液体供給システムが液体の供給を必要とするとき及び必要としないときの何れにおいても前記第1中継流路、前記第2中継流路で液体を循環させる
ことを特徴とする送液システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送液システムにおいて、
前記第1中継流路に、前記中継ポンプより下流に熱交換器が設けられ、
前記第2中継流路は、前記熱交換器の出口から前記中継ポンプの入口へ液体を循環させ、
前記第2液体供給システムが液体の供給を必要としないときは、前記前記第1中継流路、前記第2中継流路で液体を循環させるとともに前記熱交換器により液体を所定温度に維持する
ことを特徴とする送液システム。
【請求項3】
請求項1に記載の送液システムにおいて、
前記中継システムは、液体を貯留するタンクを有さない
ことを特徴とする送液システム。
【請求項4】
請求項1に記載の送液システムにおいて、
前記第1液体供給システム及び前記第2液体供給システムは、前記循環流路の液体の圧力及び流量が一定となるように制御する
ことを特徴とする送液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を所望の圧力、流量、又は温度で供給することができる送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や飲料食品を製造する製造プラントとしては、液体として純水等の精製水を製造する精製水製造システムと、その製造システムで製造された精製水をユースポイントに供給する装置等から構成される精製水の供給システムと、を有しているものがある。例えば、特許文献1には、精製水製造装置からユースポイントに精製水を供給するシステムが開示されている。
【0003】
一方、製造プラントでは、複数の精製水製造システムを必要とする場合がある。これはユースポイントの構成や、ユースポイントが要求する精製水の流量、圧力、温度が異なるなどの理由による。つまり、ユースポイントごとに複数の精製水製造システムが必要となる。したがって精製水製造システムの設置場所や費用などの面で合理的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-117924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、複数のユースポイントに所望の圧力及び流路の液体を送液することができる送液システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための態様は、液体を貯留するタンク、前記タンクからユースポイントに液体を供給するための供給流路、及び前記ユースポイントに供給されなかった液体を前記タンクへ戻す循環流路を備える第1液体供給システムび第2液体供給システムと、前記第1液体供給システムに液体を供給する供給源と、前記第1液体供給システムと第2液体供給システムに接続された中継システムと、を備え、前記中継システムは、前記第1液体供給システムの前記タンクと前記第2液体供給システムの前記タンクとを接続する第1中継流路と、前記第1中継流路に設けられた中継ポンプと、前記中継ポンプの出口から前記中継ポンプの入口へ液体を循環させる第2中継流路と、を備え、前記第2液体供給システムが液体の供給を必要とするときは、前記第1中継流路から前記第2液体供給システムに液体を供給し、前記第2液体供給システムが液体の供給を必要としないときは、前記第1中継流路から前記第2液体供給システムに液体を供給せず、前記第2液体供給システムが液体の供給を必要とするとき及び必要としないときの何れにおいても前記第1中継流路、前記第2中継流路で液体を循環させることを特徴とする送液システムにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のユースポイントに所望の圧力及び流路の液体を送液することができる送液システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体供給システムを含む送液システムの概略構成図である。
図2】液体供給システムの概略構成図である。
図3】現在値と設定値を示すグラフ及び制御値を示すグラフである。
図4】制御システムの動作を示すフローチャートである。
図5】制御システムの動作を示すフローチャートである。
図6】制御システムの動作を示すフローチャートである。
図7】液体供給システムの変形例を示す概略構成図である。
図8】送液システムが供給状態にあるときの動作を示す図である。
図9】送液システムが循環状態にあるときの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は液体供給システムを含む送液システムの概略構成図である。本実施形態の送液システム1は、精製水製造システム30と、ユースポイント40に精製水を供給する複数(本実施形態では2つ)の液体供給システム10、液体供給システム20と、を含む。
【0010】
精製水製造システム30は、液体として精製水を製造する装置群から構成されている。例えば、精製水製造システム30は、原水タンクと、逆浸透膜装置、電気式脱イオン装置、限外ろ過装置などの各種装置と、精製水タンクと、を含んで構成されている。精製水製造システム30は、原水タンクの原水を逆浸透膜装置などで処理して精製水とし、その精製水を精製水タンクに貯留する。精製水製造システム30は、液体供給システム10が必要とする分量の精製水を供給することが可能となっている。精製水製造システム30を構成する各種装置は公知のものであるため詳細な説明は省略する。
【0011】
ユースポイント40は、精製水が用いられる施設、装置、場所などである。図には3つのユースポイント40を例示してあるが個数に特に限定はない。ユースポイント40のそれぞれは、供給流路12から分岐して接続されており、供給流路12とユースポイント40との間には不図示のバルブが設けられている。各ユースポイント40において精製水が必要とされると、当該バルブが開放されて精製水が当該ユースポイント40に供給される。そして、各ユースポイント40において精製水が不要になれば当該バルブが閉鎖され、当該ユースポイント40への精製水の供給が停止する。
【0012】
図2は液体供給システムの概略構成図である。液体供給システム10と液体供給システム20は、ユースポイント40へ供給する精製水の圧力、流量、温度が異なるが、装置構成や制御は同じであるので同図を用いて液体供給システム10について説明する。液体供給システム10は、タンク11、供給流路12、循環流路13、ポンプ14、圧力計15、流量計16、コントロールバルブ17、インバーター18、熱交換器19、制御装置50を備えている。液体供給システム10は、メンテナンスなどの理由で製品の製造を停止しているとき以外では、ユースポイント40が精製水を必要とするか否かに関わらず、精製水をタンク11、供給流路12、循環流路13、タンク11の順で循環させる。なお、液体供給システム20は、液体供給システム10と同様に、タンク21、供給流路22、循環流路23、ポンプ24、圧力計25、流量計26、コントロールバルブ27、インバーター28、熱交換器29を備えている。制御装置50は液体供給システム10、液体供給システム20及び後述の中継システム60の制御を行うが、各システムに個別の制御装置を設けてもよい。
【0013】
タンク11は、精製水製造システム30で製造された精製水を一時的に貯留する。「一時的に貯留」とは、循環中の精製水の一定量が見かけ上、タンク11に貯留されることをいう。つまり、タンク11では精製水が貯留されているように見えるが、実際にはタンク11から供給流路12へ精製水が導出され、循環流路13からタンク11へ精製水が導入されている。その導入量と導出量の差分によりタンク11の水位が変動する。
【0014】
液体供給システム10においては、ユースポイント40に精製水を供給すればタンク11の水位は下がる。その水位が下限値になったとき精製水製造システム30から精製水がタンク11に供給されるようになっている。そしてタンク11の水位が上限値になったとき精製水製造システム30からタンク11への精製水の供給が停止するようになっている。
【0015】
液体供給システム20においては、ユースポイント40に精製水を供給すればタンク21の水位は下がる。その水位が下限値になったとき中継システム60から精製水がタンク21に供給されるようになっている。そしてタンク21の水位が上限値になったとき中継システム60からタンク21への精製水の供給が停止するようになっている。
【0016】
供給流路12は、タンク11からユースポイント40に精製水を供給するための配管から構成されている。供給流路12は途中の分岐点Aから各ユースポイント40へ分岐している。分岐点Aと各ユースポイント40との間には不図示のバルブが設けられている。当該バルブは手動により開閉する構成であってもよいし、または制御装置50により開閉が制御される構成であってもよい。本実施形態では、タンク11から最も遠い下流の分岐点Aまでを供給流路12とし、分岐点Aよりも下流を循環流路13と称する。
【0017】
循環流路13は、ユースポイント40に供給されなかった精製水をタンク11へ戻すための配管から構成されている。具体的には循環流路13は供給流路12に連結されており、供給流路12から各ユースポイント40へ供給されなかった精製水が循環流路13を経由してタンク11へ戻される。
【0018】
ポンプ14は、供給流路12に設けられ、タンク11からユースポイント40へ精製水を圧送する装置である。ポンプ14の種別に特に限定はないが、いわゆるサニタリーポンプを用いることが好ましい。またポンプ14は不図示のモーターを備えており、インバーター18は設定周波数に応じて当該モーターを制御する。インバーター18は制御装置50により制御される。詳細は後述するが、制御装置50によってインバーター18の設定周波数が適宜変更され、ポンプ14の吐出量が制御されるようになっている。
【0019】
循環流路13には、ユースポイント40からタンク11に向かって、圧力計15、流量計16、コントロールバルブ17が設けられている。圧力計15は、循環流路13を流通する精製水の圧力を計測する装置である。流量計16は、循環流路13を流通する精製水の流量を計測する装置である。コントロールバルブ17は、開度が調整可能な弁である。圧力計15及び流量計16により計測された圧力及び流量は制御装置50により参照される。また、コントロールバルブ17は制御装置50により開度が制御されるようになっている。
【0020】
熱交換器19は、循環流路13においてコントロールバルブ17と流量計16の間に設けられている。熱交換器19は精製水を不図示の熱媒と熱交換させることで所定温度にする。熱交換器19は、プレート式、シェルチューブ式の熱交換器など公知のものを採用することができる。
【0021】
制御装置50は、プログラマブルコントローラ又はシーケンサとも称される装置である。制御装置50は、CPU及びメモリを備え、メモリに記憶されたプログラムを読み取り実行する。制御装置50はプログラムを実行することで、動作状況等に応じて精製水の流量、圧力を調整する。以下、制御装置50による制御を具体的に説明する。
【0022】
制御装置50は、コントロールバルブ17、インバーター18を制御するにあたり、現在値、設定値、制御値を用いる。
【0023】
現在値とは、圧力計15、流量計16により計測された値でる。圧力計15により計測された圧力を現在圧力、流量計16により計測された流量を現在流量ともいう。
【0024】
設定値とは、循環流路13を流通する精製水があるべき流量や圧力の値である。流量については設定流量、圧力については設定圧力ともいう。これらの設定値は、制御装置50に記憶されており、設計時又は運用時に適宜設定される。
【0025】
制御値とは、コントロールバルブ17の開度やインバーター18の駆動周波数を設定するための値である。開度については制御開度といい、駆動周波数については制御周波数ともいう。制御装置50は制御開度に応じて実際にコントロールバルブ17の開度を制御する。例えば、制御装置50は、制御開度が0%であればコントロールバルブ17を全閉にし、制御値が100%であればコントロールバルブ17を全開にする。また、制御装置50は制御周波数に応じて実際にインバーター18に与える駆動周波数を制御する。例えば、制御周波数は0(停止状態)~60Hzの値であり、制御装置50はインバーター18に制御周波数を駆動周波数として動作させる。
【0026】
制御装置50は、流量計16により計測された現在流量が設定流量となるようにインバーター18の制御周波数を適宜変更し、変更後の制御周波数を実際にインバーター18に与えてポンプ14の吐出量を制御する。また制御装置50は、圧力計15により計測された現在圧力が設定圧力となるように適宜制御開度を変更し、変更後の制御開度となるようにコントロールバルブ17の開度を制御する。
【0027】
図3図6を用いて、制御装置50により実行される精製水の流量及び圧力の制御について説明する。図3(a)は現在値と設定値を示すグラフであり、図3(b)は制御値を示すグラフである。図4図6は、液体供給システム10の動作を示すフローチャートである。図3(a)及び図3(b)の横軸は時間を表している。図3(a)の縦軸は現在値を表し、図3(b)の縦軸は制御値を表している。以下、現在値を現在圧力、設定値を設定圧力、制御値を制御開度と読み替えることで、精製水を設定圧力にするためのコントロールバルブ17の開度の制御に関する説明となる。同様に、現在値を現在流量、設定値を設定流量、制御値を制御周波数と読み替えることで、精製水を設定流量にするためのインバーター18の駆動周波数の制御に関する説明となる。
【0028】
精製水の現在値を設定値にするための制御は、初期立上、緊急時、安定時、不安定時の4つに分類される。まず、初期立上げについて説明する。
【0029】
初期立上は、送液システム1を始動させてから所定時間まで時間(T0~T1)をいう。具体的には、図3(a)に示すように、現在値が設定値よりも大きく乖離しているときに行われる。また、ここでいう始動とは、精製水を製造するために送液システムを始動させることのみならず、CIP/SIPの始動も含む。
【0030】
まず、制御装置50は、送液システム1における精製水の送液プロセスの終了時に、そのときの制御値を前回終了時制御値としてメモリに記憶しておく。このとき、後述する安定時における制御値を前回終了時制御値として記憶する。なお、初めて送液システム1を始動させるときは、まだ一度も送液プロセスを実行し終えていないことから、予め適当な値を前回終了時制御値として設定しておく。
【0031】
次回に送液プロセスを始動する際には(T0)、制御装置50は、前回終了時制御値を呼出し(図4ステップS1)、前回終了時制御値を所定数(図3の例では5)で分割した量(以下、増加量)を計算する(図4ステップS2)。次に、制御装置50は、製造プラントを始動してから所定時間(T1)までの間に、前記前回終了時制御値になるまで増加量ずつ制御値を計算する(図4ステップS3)。
【0032】
図3(b)に示すように、初期立上では、T0からT1の間に段階的に制御値が増加している。この増加量は、前回終了時制御値を5で分割した値となっており、初期立上の終了時では、制御値は前回終了時制御値となっている。
【0033】
図3(a)に示すように、初期立上では、制御値を段階的に増加させていく。つまり、コントロールバルブ17については段階的に開度が大きくなり、インバーター18については段階的に駆動周波数が大きくなるため、現在値を設定値付近まで早く立ち上げることができる。また、初期立上では、開度や駆動周波数を段階的に増加させていくが、その到達点は前回終了時制御値である。前回終了時制御値は、前回の送液プロセスにおいて、現在値が設定値にほぼ等しい時におけるものである。したがって、初期立上が完了したときには、若干のオーバーシュートはあるが、すぐに現在値を設定値に安定させることができる。
【0034】
また、ある特定の設定値を実現するために必要な制御値は一定とは限らず、例えば、送液システム1の周囲の環境の変化(季節変動など)によって変動する。本発明では、前回終了時制御値は、送液プロセスのたびに更新されるものであり、初期立上ではその前回終了時制御値となるように段階的に制御値を増加させていく。これにより、初期立上の完了時には、送液システム1プラントの周囲の環境の変化に適応して最適な制御値とすることができる。
【0035】
次に、緊急時について説明する。緊急時は、現在値が上限値(設定値±Δより大きい値)を超えたときのことをいう(T6~T7)。制御装置50は、製造プラントを始動させてから所定時間を経過した後に(T1以後に)、現在値が所定の上限値よりも大きい場合は(図3のT6のとき、図4ステップS4;Yes)、緊急時と判定し、制御値を減少させる(図4ステップS5)。
【0036】
現在値が上限値を超えたとき(図3(b)T6)の制御値を90%(図3(a))にする。これにより、コントロールバルブ17の開度が小さくなり、インバーター18の駆動周波数が低くなるので、図3(a)に示すように、現在値は減少し、所定時間経過後(T7)、上限値を下回るようになる。このように、何らかの原因で上限値を超えるような緊急事態が生じても、それを検知して流量を減少させ、緊急事態を解消することができる。
【0037】
なお、T6からT7の間、コントロールバルブ17やインバーター18の制御値を減少させる方法としては、一度、制御値を減少させるだけでもよいし、一定間隔を空けて複数回に亘って制御値を減少させてもよい。また、現在値が上限値を超えたとき、直ちに、コントロールバルブ17やインバーター18の制御値を減少させてもよいし、一定時間経過後に減少させるようにしてもよい。
【0038】
次に、安定時について説明する。安定時は、現在値が設定値±Δ(+Δを増加幅、-Δを減少幅と称する)以内であるときをいう(T3~T4、T5~T6)。制御装置50は、送液システム1を始動させてから所定時間を経過した後に、現在値が設定値よりも大きい又は小さい場合は、制御値に第1の所定量を減少又は増加させる。詳細には次のように処理が行われる。
【0039】
まず、制御装置50は、緊急時でないとき(図4ステップS4;No)、現在値が設定値より大きいかを判定する(図4ステップS6)。現在値が設定値より大きい場合(図4ステップS6;Yes)、制御値を第1の所定量だけ減少させる(図5ステップS7)。
【0040】
図3(a)に示すように、安定時において、現在値が設定値を超えたとき(T10)、図3(b)に示すように、制御値から第1の所定量(例えば、そのときの制御値の0.3%)を減じる。これにより、コントロールバルブ17については開度が若干小さくなり、インバーター18については駆動周波数が若干低くなるので、図3(a)に示すように、制御値を減じてから一定時間経過後(T11)に、現在値は減少し、設定値と等しいまたは近くなっている。
【0041】
また、制御装置50は、現在値が設定値以下の場合(図4ステップS6;No)、制御値を第1の所定量だけ増加させる(図6ステップS8)。なお、加算時(図5ステップS7)の第1の所定量と減算時(図6ステップS8)の第1の所定量は異なっていてもよい。
【0042】
図3(a)に示すように、安定時において、現在値が設定値以下であるとき(例えばT12)、図3(b)に示すように、制御値から第1の所定量(例えば、そのときの制御値の0.2%)を増加する。これにより、コントロールバルブ17については開度が若干大きくなり、インバーター18については駆動周波数が若干高くなるので、図3(a)に示すように、制御値を増加してから一定時間経過後(例えばT13)に、現在値は増大し、設定値と等しいまたは近くなっている。
【0043】
このように、コントロールバルブ17を開閉したり、インバーター18の駆動周波数を変更することで、現在値が設定値とほぼ等しい安定な状態を維持することができる。
【0044】
なお、安定時において、コントロールバルブ17やインバーター18の制御値を増加又は減少させる方法としては、一度、制御値を増加又は減少させるだけでもよいし、一定間隔を空けて複数回に亘って制御値を増加又は減少させてもよい。また、現在値が設定値を超えたとき、直ちに、コントロールバルブ17やインバーター18の制御値を増加又は減少させてもよいし、一定時間経過後に増加又は減少させるようにしてもよい。
【0045】
次に、不安定時について説明する。不安定時は、現在値が設定値±Δより大きい又は小さいときをいう(T2~T3、T4~T5)。制御装置50は、製造プラントを始動させてから所定時間を経過した後に、現在値が設定値±Δよりも大きい又は小さい場合は、制御値に第2の所定量を減少又は増加させる。詳細には次のように処理が行われる。なお、第2の所定量は第1の所定量よりも大きい。
【0046】
まず、制御装置50は、現在値が設定値+Δより大きいかを判定する(図5ステップS9)。現在値が設定値+Δ以下の場合(図5ステップS9;No)、図4ステップS4に処理が戻る。一方、現在値が設定値+Δより大きい場合(図5ステップS9;Yes)、制御値を第2の所定量だけ減少させる(図5ステップS10)。そして、制御装置50は、現在値が設定値+Δ以上であるならば(図5ステップS11;No)、まだ不安定であるので、一定時間待機した後、ステップS10の処理を実行する。また、制御装置50は、現在値が設定値+Δより小さいならば(図5ステップS11;Yes)、安定状態になったので、ステップS4からの処理に戻る。
【0047】
図3(a)に示すように、不安定時において、現在値が設定値+Δを超えたとき(T4)、図3(b)に示すように、制御値から第2の所定量(例えば、そのときの制御値の3.0%)を減じる。これにより、コントロールバルブ17については開度が小さくなり、インバーター18については駆動周波数が低くなるので、図3(a)に示すように、制御値を減じてから一定時間経過後(T5)に、現在値は大きく減少し、安定状態に向かう。
【0048】
また、制御装置50は、現在値が設定値-Δより小さいかを判定する(図6ステップS12)。現在値が設定値-Δ以上の場合(図6ステップS12;No)、図4ステップS4に処理が戻る。一方、現在値が設定値-Δより小さい場合(図6ステップS12;Yes)、制御値を第2の所定量だけ増加させる(図6ステップS13)。そして、制御装置50は、現在値が設定値-Δ以下であるならば(図6ステップS14;No)、まだ不安定であるので、一定時間待機した後、ステップS13の処理を実行する。また、制御装置50は、現在値が設定値-Δより大きいならば(図6ステップS14;Yes)、安定状態になったので、ステップS4からの処理に戻る。なお、加算時(図6ステップS13)の第2の所定量と減算時(図5ステップS10)の第2の所定量は異なっていてもよい。
【0049】
図3(a)に示すように、不安定時において、現在値が設定値-Δより小さいとき(T2)、図3(b)に示すように、制御値から第2の所定量(例えば、そのときの制御値の2.0%)を増加する。これにより、コントロールバルブ17については開度が大きくなり、インバーター18については駆動周波数が低くなるので、図3(a)に示すように、制御値を増加してから一定時間経過後(T3)に、現在値は大きく増大し、安定状態に向かう。
【0050】
このように、コントロールバルブ17を開閉したり、インバーター18の駆動周波数を変更することで、現在値が不安定な状態となっても、安定状態にすることができる。
【0051】
なお、不安定時において、コントロールバルブ17やインバーター18の制御値を増加又は減少させる方法としては、一度、制御値を増加又は減少させるだけでもよいし、一定間隔を空けて複数回に亘って制御値を増加又は減少させてもよい。また、現在値が設定値±Δを超えたとき、直ちに、コントロールバルブ17やインバーター18の制御値を増加又は減少させてもよいし、一定時間経過後に増加又は減少させるようにしてもよい。
【0052】
上述したような構成及び制御を行う液体供給システム10では、供給流路12からユースポイント40へ精製水が供給されたり、精製水の供給停止が生じる。例えば手動で分岐点Aとユースポイント40との間のバルブが開閉された場合や、ユースポイント40側から制御装置50に精製水の供給やその停止を要求する旨の信号が送られ、その信号に応じて当該バルブを開閉する場合などである。
【0053】
ユースポイント40への精製水の供給や停止が生じると、循環流路13を流通する精製水の流量や圧力は変動する。例えば、精製水の供給が始まれば、循環流路13を流通する精製水の流量及び圧力は低下する。また、精製水の供給が停止すれば流量及び圧力が増大する。
【0054】
しかしながら、液体供給システム10は、安定時、不安定時、緊急時に示したように、現在値が設定値となるように制御値を所定量増減させる制御を実行する。すなわち、循環流路13を流通する精製水は、設定圧力及び設定流量に維持される。したがってユースポイント40への精製水の供給及び停止に伴って精製水の現在流量及び現在圧力が設定流量及び設定圧力から外れたとしても速やかに設定流量及び設定圧力に復元されるので、ユースポイント40に対してその設定圧力及び設定流量で精製水を安定して供給することができる。
【0055】
また、供給流路12及び循環流路13に精製水を循環させる構造においては、インバーター18の駆動周波数(ポンプ14の吐出量)を制御することで所望の圧力又は流量の精製水を得ることが一般的である。コントロールバルブ17とインバーター18の双方について制御を行うとしても、開度、駆動周波数の取りうる範囲を幾つかの区分(ステップ)に分け、圧力、流量が所望の値となるようにステップを選択するという制御をとることが一般的であった。しかしながらそのような制御は困難であるなどの事情から、開度又は駆動周波数の一方を固定し、他方を制御することが現実的であり、結局は圧力及び流量を所望の設定圧力及び設定流量に維持するような制御を実現することが困難であった。
【0056】
一方、本実施形態に係る液体供給システム10は、上述したように現在値が所定の設定値となるように制御値を所定量増減させるという、アナログ制御に近い制御を行うことで、従来のようなステップによる制御では困難であった流量と圧力の制御を実現することが可能となった。
【0057】
また、液体供給システム10では、循環流路13にユースポイント40からタンク11に向かって順に圧力計15、流量計16、コントロールバルブ17を配置してある。
【0058】
圧力計15の配置に関しては、ユースポイント40よりも下流側である。したがって、圧力計15により得られる現在圧力は、各ユースポイント40において精製水の供給や停止が生じたことによる圧力変動が反映された値である。このため、現在圧力を設定圧力に維持するように制御することは、ユースポイント40への精製水の供給や停止が生じて現在圧力が変動しても速やかに設定圧力に維持し、その設定圧力の精製水をユースポイント40に安定して供給できることにつながる。なお、圧力計15をユースポイント40よりも上流に配置した場合では、ユースポイント40への精製水の供給や停止が生じたことによる圧力変動が現在圧力に反映されない。このため、各ユースポイント40へ設定圧力の精製水を安定して供給することは困難である。
【0059】
流量計16の配置に関しては、ユースポイント40よりも下流側である。したがって、流量計16により得られる現在流量は、各ユースポイント40において精製水の供給や停止が生じたことによる流量変動が反映された値である。このため、現在流量を設定流量に維持するように制御することは、ユースポイント40への精製水の供給や停止が生じて現在流量が変動しても速やかに設定流量に維持し、その設定流量の精製水をユースポイント40に安定して供給できることにつながる。なお、流量計16をユースポイント40よりも上流に配置した場合では、ユースポイント40への精製水の供給や停止が生じたことによる流量変動が現在流量に反映されない。このため、各ユースポイント40へ設定流量の精製水を安定して供給することは困難である。
【0060】
コントロールバルブ17の配置に関しては、圧力計15及び流量計16よりも下流である。一般にコントロールバルブ17の開度が狭められていると、コントロールバルブ17よりも下流において精製水中に気泡が生じることがある。計測対象に気泡が含まれていると圧力計15や流量計16は正確に計測できないおそれがある。しかしながら、コントロールバルブ17は圧力計15及び流量計16よりも下流であるので、コントロールバルブ17によって生じた気泡の影響を回避することができる。したがって、圧力計15及び流量計16により得られる現在値はより正確なものとなるので、最終的に制御される精製水の現在圧力及び現在流量をより確実に設定圧力及び設定流量に維持することができる。
【0061】
また、液体供給システム10は、循環流路13に熱交換器19が設けられている。一般に熱交換器19は、熱交換される対象の液体の流量や圧力が安定していないと熱交換器19での出口温度が目標温度から乖離してしまう。これは流量や圧力の変動は熱交換器19を流通する時間に影響を及ぼすからである。しかしながら、上述したように循環流路13を流通する精製水は現在圧力及び現在流量が設定圧力及び設定流量に維持される。そのように設定圧力及び設定流量の精製水が熱交換器19にて熱交換されるので、精製水をより確実に目標とする温度に設定することができる。また、上述したように、コントロールバルブ17の下流では精製水に気泡が生じることがある。仮にコントロールバルブ17の下流に熱交換器19が配置されていると、気泡の影響により熱交換器19における温度調節が良好に行われない可能性がある。しかしながら、コントロールバルブ17は熱交換器19よりも下流であるので、熱交換器19はコントロールバルブ17によって生じた気泡の影響を受けない。このようにコントロールバルブ17の上流に熱交換器19を配置したことで、熱交換器19による温度調節を良好に行うことができる。
【0062】
上述した液体供給システム10は、流量計16を備えていたが、このような構成に限定されない。図7に液体供給システム10の変形例を示す。同図に示す液体供給システム10は、流量計を備えていない。
【0063】
制御装置50は、コントロールバルブ17の開度を管理している。すなわち上述したように制御開度がコントロールバルブの開度を表わしている。制御装置50は、制御開度に基づいてポンプ14を制御する。
【0064】
例えば、コントロールバルブ17の開度が大きければ、精製水の圧力が上がった証拠と考えられ、流量も増加する。つまり、コントロールバルブ17の開度は流量に応じた値であると考えられる。図2に示した例では流量計16の現在流量を元にインバーターの制御周波数を変更したが、流量を流量計16で直接見る必要はなく、コントロールバルブ17の開度が間接的に精製水の現在流量を示すとみなすことができる。
【0065】
したがって、制御装置50は、コントロールバルブ17の制御開度を精製水の現在流量に応じた値であるとみなし、その現在流量に基づいて制御周波数を上述したように適宜増減することでポンプ14を制御する。これにより、流量計16による直接的な現在流量の計測をしなくても、現在流量が設定流量となるようにポンプ14を制御することができる。そしてこのような変形例の液体供給システム10は、流量計を必要としないので費用を削減することができる。なお、制御装置50による制御開度を読み取り、制御開度を現在流量とみなす処理が「流量検出手段」に相当する。
【0066】
図1に示すように、送液システム1は、液体供給システム10及び液体供給システム20が中継システム60により接続されている。中継システム60は、供給流路62と、循環流路63と、ポンプ64と、熱交換器65とを備えている。
【0067】
供給流路62は、液体供給システム10のタンク11と液体供給システム20のタンク21とを接続し、タンク11からタンク21に精製水を供給するための配管から構成されている。詳細には、供給流路62は、液体供給システム10の供給流路12のうち、タンク11とポンプ14との間の分岐点Bから分岐してタンク21に接続されている。なお、供給流路62は分岐点Bに接続されている必要はなく、タンク11に直接接続されていてもよい。供給流路62はタンク11側を上流側、タンク21側を下流側とも称する。
【0068】
供給流路62の途中には、ポンプ64が設けられている。ポンプ64は、供給流路62に設けられ、上流側から下流側に向けて精製水を圧送する装置である。ポンプ64の種別に特に限定はないが、いわゆるサニタリーポンプを用いることが好ましい。またポンプ64は不図示のモーター及びインバーターを備えており、インバーターは設定周波数に応じて当該モーターを制御する。インバーターは制御装置50により制御される。また、供給流路62には、ポンプ64より下流側に熱交換器65が設けられている。熱交換器65は、精製水を不図示の熱媒と熱交換させることで所定温度にする。熱交換器19は、プレート式、シェルチューブ式の熱交換器など公知のものを採用することができる。
【0069】
循環流路63は、ポンプ64の出口から入口へ精製水を戻すための配管から構成されている。供給流路62のうちポンプ64の出口より下流(本実施形態では熱交換器65より下流)の一部を分岐点Cとし、ポンプ64の入口より上流の一部を分岐点Dとする。循環流路63は、分岐点Cと分岐点Dに接続されている。
【0070】
供給流路62には、第1バルブV1及び第2バルブV2が設けられている。詳細には、第1バルブV1は分岐点Bと分岐点Dとの間に設けられている。第2バルブV2は分岐点Cとタンク21との間に設けられている。第1バルブV1及び第2バルブV2は供給流路62を開閉可能な構成の弁であればよい。また、これらのバルブは制御装置50により開閉が制御されるようになっているが、手動で開閉可能であってもよい。
【0071】
第1バルブV1及び第2バルブV2を開いた状態を供給状態と称する。供給状態においては、液体供給システム10から中継システム60を経由して液体供給システム20へ精製水が供給される。また、精製水の一部は循環流路63を経由して供給流路62に戻る。詳細は後述するが、液体供給システム20が精製水の供給を必要とするときは、制御装置50は中継システムを供給状態にする。
【0072】
一方、第1バルブV1及び第2バルブV2を閉じた状態を循環状態と称する。循環状態においては、精製水は、供給流路62、分岐点C、循環流路63、分岐点D、供給流路62の順に流通し、供給流路62と循環流路63との間で循環する。液体供給システム20が精製水の供給を必要としないときは、制御装置50は中継システムを循環状態にする。
【0073】
このような中継システム60を含む送液システム1の動作について説明する。ここでは、液体供給システム10は所定圧力、所定流量として3000L/hであり、温度20℃の精製水をユースポイント40に供給し、液体供給システム20は所定圧力、所定流量として3000L/hであり、温度80℃の精製水をユースポイント40に供給することを目標とする。
【0074】
図8は供給状態における送液システム1を示す図である。同図に示すように、制御装置50(図7参照)は第1バルブV1及び第2バルブV2を開放する。また制御装置50は、液体供給システム10及び液体供給システム20ではそれぞれの3000L/hの流量で精製水を循環させている。したがって、液体供給システム10のタンク11の出口では6000L/hの精製水の流量があり、分岐点Bで二分され液体供給システム10のユースポイント40には3000L/hの流量の精製水が供給され、中継システム60には3000L/hの流量の精製水が供給される。なお、制御装置50は、上述したような制御を行うことで液体供給システム10及び液体供給システム20のユースポイント40での精製水の使用状況が変動しても流量や圧力が一定に保たれるようになっている。
【0075】
中継システム60においては、精製水は熱交換器により出口温度が80℃に加熱される。そしてその精製水の一部は液体供給システム20へ供給され、残りは循環流路63を経由してポンプ64の上流側に戻り、液体供給システム10からの精製水と混合して再度ポンプ64、熱交換器65に送られる。分岐点Cでは、3000L/hの精製水が液体供給システム20へ流出し、1000L/hの精製水が循環流路63へ流出する。このような比率は、第2バルブV2の開度を調整することにより設定されている。分岐点Dでは、液体供給システム10から3000L/hの精製水が流入し、循環流路63から1000L/hの精製水が流入する。また、分岐点Cでは精製水の温度は80℃であり、分岐点Dでは精製水の温度が20℃である。
【0076】
供給状態においては、液体供給システム10では所定圧力、所定流量(3000L/h)、所定温度(20℃)の精製水が循環している。そして、中継システム60では、液体供給システム10から供給された精製水を所定圧力のまま、所定流量(3000L/h)かつ加熱した所定温度(80℃)にして液体供給システム20に供給する。
【0077】
図9は循環状態における送液システム1を示す図である。同図に示すように、制御装置50(図7参照)は、液体供給システム20において精製水の供給が不要であることを検知したとき、第1バルブV1及び第2バルブV2を閉じ、供給状態から循環状態に移行させる。液体供給システム20において精製水の供給が不要であることの検知は、例えば、タンク21に設けた水位計の値が上限値に達したことにより行うことができる。
【0078】
さらに、制御装置50は、ポンプ64を稼動させたままとする。これにより、精製水が供給流路62と循環流路63との間で循環し続ける。また、制御装置50は熱交換器65にて所定温度の80℃に精製水が維持されるように熱媒の流量や温度を制御する。
【0079】
このように循環状態においては、液体供給システム10及び液体供給システム20のそれぞれで所定圧力、所定流量、所定温度の精製水を循環させているが、液体供給システム10から中継システム60を経由して液体供給システム20へ精製水の供給は行わず、中継システム60にて精製水を循環させ続ける。
【0080】
そして、制御装置50は、液体供給システム20において精製水の供給が必要であることを検知したとき、図8に示したように、第1バルブV1及び第2バルブV2を開け、循環状態から供給状態に移行させる。液体供給システム20において精製水の供給が必要であることの検知は、例えば、タンク21に設けた水位計の値が下限値に達したことにより行うことができる。
【0081】
上述したような構成及び制御を行う送液システム1では、液体供給システム10及び液体供給システム20が中継システム60で接続されている。そして液体供給システム20が精製水を必要とするか否かに応じて供給状態と循環状態との2つの運転モードを切り替える。具体的には、液体供給システム20が精製水の供給を必要とするときは、液体供給システム10から液体供給システム20に精製水を供給する。一方、液体供給システム20が精製水の供給を必要としないときは、液体供給システム10から液体供給システム20に精製水を供給せず、供給流路62、循環流路63で液体を循環させる。
【0082】
液体供給システム10と液体供給システム20のユースポイント40は、異なる圧力、流量、温度が要求される。それゆえ液体供給システム10及び液体供給システム20の二つのシステムを用いてその要求を満たした精製水を各ユースポイント40に供給する。このように二つのシステムを有しながらも、精製水製造システム30は共通して一つである。したがってユースポイント40ごとに異なる流量、温度、圧力の精製水を供給することを可能としながらも、精製水製造システム30の設置場所や費用を低減することができる。
【0083】
ここで、液体供給システム20が精製水の供給を必要としないときにおいて、精製水を循環させず、中継システム60に設けたタンクに精製水を貯留する構成を仮定する。この場合、特に医薬の製造プラントにおける基準では、配管内に精製水が滞留した場合では精製水のサニタリー性が担保されず、廃棄した上で配管内をCIP及びSIPを実施する必要がある。つまり、液体供給システム20で精製水が不要となったときには、中継システム60の供給流路62や循環流路63に精製水を滞留させ、次の需要に応じて供給することはできない。結局、中継システム60にある精製水を廃棄する必要があり、精製水が無駄になってしまう。
【0084】
しかしながら、本発明の送液システム1は、供給状態及び循環状態のいずれにおいても中継システム60において精製水を循環させ続けている。このように精製水を循環させ続けているので、精製水のサニタリー性を担保することができる。
【0085】
また、医薬の製造プラントにおける基準では、加熱して所定温度にした精製水は、温度が低下し(例えば元の20℃)、その後に再加熱した場合はサニタリー性が担保されないとされる。しかしながら、中継システム60は、循環状態においても熱交換器65により所定温度に精製水を維持する。このように一度加熱した精製水はその温度が維持されるように循環させるので、精製水のサニタリー性を担保することができる。
【0086】
また、本発明の送液システム1の中継システム60には、供給流路62及び循環流路63に精製水を貯留するタンクが設けられていない。このため、タンクを設けるための設置場所や費用を低減することができる。なお、サニタリー性の基準によっては、供給先で精製水が不要となればタンクに精製水を貯留し、供給先で精製水が必要となればタンクから精製水を供給する構成を採用することが一般的である。しかし本発明の送液システム1では供給先となる液体供給システム20における需要に関わらず精製水を循環させる構成としたので、精製水を貯留するタンクが不要となる。
【0087】
また、本発明の送液システム1では、液体供給システム10及び液体供給システム20のそれぞれにおいて精製水の流量及び圧力が一定となるように制御する。これにより、中継システム60のポンプ64や熱交換器65には一定圧力、一定流量の精製水が供給されることになるので、ポンプ64により熱交換器65に圧送される精製水の圧力及び流量も一定となることから、熱交換器65の出口における精製水の温度をより確実に目標とする温度にすることができる。
【0088】
なお、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0089】
例えば、上記実施形態では、液体として精製水を例示したがこれに限定されない。液体としては飲料や液状の医薬品などであっても本発明を適用することができる。ユースポイント40について3個の場合を例示したがこれに限定されず、ユースポイント40の個数は任意である。
【0090】
また、循環流路13には、ユースポイント40からタンク11へ向けて圧力計15、流量計16の順で配置されていたが、逆でもよい。なお、上記実施形態のとおりの圧力計15、流量計16の順としたほうが、流量計16、圧力計15の順にするよりも制御結果の反応が早いという効果がある。
【0091】
この効果について補足する。圧力計15が隔膜式の機械構造であり、流量計16はコリオリ式の機械構造であり、圧力計15の方が流量計16よりも若干動作が鈍く、反応速度が遅い。したがって、圧力計15は、精製水の圧力変動の原因となるユースポイント40から遠いほど反応速度も遅くなる。精製水の圧力変動に対する反応速度が遅ければ、圧力計15に基づくコントロールバルブ17の制御に影響を及ぼす。すなわち、圧力計15に基づいたコントロールバルブ17の制御によって現在圧力が設定圧力に追従するまでの時間が遅れる。そこで、圧力計15をユースポイント40に近い方に配置すれば、反応速度の遅さの程度は小さくなり、現在圧力が設定圧力に追従するまでの時間の遅れも小さい、あるいは無視できるものとなる。
【0092】
上述した実施形態では送液システム1は液体供給システム10及び液体供給システム20の2つのシステムを有しているが、2つに限定されず2つ以上の液体供給システムを有していてもよい。この場合、液体供給システム、中継システム、液体供給システム、中継システム、液体供給システム・・・のように直列的に液体供給システムと中継システムとが接続されていてもよいし、一つの中継システムから複数の液体供給システムに並列的に精製水を供給する構成としてもよい。
【0093】
また、液体供給システム10と液体供給システム20のそれぞれで精製水に要求される流量や温度は例示であり、任意の流量や温度でも本発明を適用することができる。また、液体供給システム10の精製水の温度(上記実施形態では20℃)は、液体供給システム20の精製水の温度(上記実施形態では80℃)よりも低い例を示したが、逆であってもよい。すなわち、中継システム60の熱交換器65は入口温度よりも出口温度が低くなるように精製水を冷却してもよい。
【0094】
上記実施形態の精製水製造システム30は「供給源」の一例であり、液体供給システム10は「第1液体供給システム」の一例であり、液体供給システム20は「第2液体供給システム」の一例である。供給流路62は「第1中継流路」の一例であり、循環流路63は「第2中継流路」の一例であり、ポンプ64は「中継ポンプ」の一例である。流量計16、流量計26は「流量検出手段」の一例である。
【0095】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
好適な態様である態様1に係る液体供給システムは、液体を貯留するタンクと、前記タンクからユースポイントに液体を供給するための供給流路と、前記ユースポイントに供給されなかった液体を前記タンクへ戻す循環流路と、前記供給流路に設けられたポンプと、前記循環流路に設けられた圧力計、及びコントロールバルブと、前記循環流路の液体の流量を検出する流量検出手段と、前記ポンプの駆動周波数を変更するインバータと、前記インバータの駆動周波数及び前記コントロールバルブの開度を設定するための制御値により前記駆動周波数及び前記開度を調節する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記圧力計及び前記流量検出手段により得られた現在値である現在圧力及び現在流量が所定の設定圧力及び設定流量となるように前記制御値を所定量増減させ、前記循環流路には、前記ユースポイントから前記タンクに向かって、前記圧力計、前記コントロールバルブがこの順に設けられている。
【0096】
態様1の具体例である態様2において、前記流量検出手段は、前記循環流路に設けられた流量計であり、前記循環流路には、前記ユースポイントから前記タンクに向かって、前記圧力計、前記流量計、前記コントロールバルブがこの順に設けられている。
【0097】
態様1の具体例である態様3において、前記流量検出手段は、前記循環流路に設けられた前記コントロールバルブの前記開度を検出し、前記制御装置は、前記開度が液体の流量に応じた現在流量であるとみなし、前記圧力計及び前記流量検出手段により得られた現在圧力及び現在流量が所定の設定圧力及び設定流量となるように前記制御値を所定量増減させる。
【0098】
態様1の具体例である態様4において、 前記循環流路には、前記コントロールバルブよりも前記タンク側に、液体を所定温度にする熱交換器が設けられている。
【0099】
態様1から態様4の具体例である態様5において、 前記制御装置は、運転終了時に、前記制御値を前回終了時制御値として記憶し、運転開始してから所定時間までの間に、前記前回終了時制御値になるまで所定量ずつ前記制御値を増加させ、 前記所定量は、前記前回終了時制御値を所定数で分割した量である。
【0100】
態様5の具体例である態様6において、前記制御装置は、 前記現在圧力及び前記現在流量が前記設定圧力及び前記設定流量よりも大きい場合は、前記制御値から第1の所定量を減少させ、 前記現在圧力及び前記現在流量が前記設定圧力及び前記設定流量よりも小さい場合は、前記制御値から第1の所定量を増加させる。
【0101】
態様6の具体例である態様7において、 前記設定圧力及び設定流量に対して所定の増加幅又は減少幅が設定されており、 前記制御装置は、運転開始から所定時間を経過した後に、 前記現在圧力及び前記現在流量が前記設定圧力及び前記設定流量に前記増加幅を加算した値よりも大きい場合は、前記制御値から前記第1の所定量よりも大きい第2の所定量を減少させ、 前記現在圧力及び前記現在流量が前記設定圧力及び前記設定流量から前記減少幅を減算した値よりも小さい場合は、前記制御値から前記第1の所定量よりも大きい第2の所定量を増加させる。
【0102】
好適な態様である態様8に係る送液システムは、液体を貯留するタンク、前記タンクからユースポイントに液体を供給するための供給流路、及び前記ユースポイントに供給されなかった液体を前記タンクへ戻す循環流路を備える第1液体供給システムび第2液体供給システムと、前記第1液体供給システムに液体を供給する供給源と、前記第1液体供給システムと第2液体供給システムに接続された中継システムと、を備え、前記中継システムは、前記第1液体供給システムの前記タンクと前記第2液体供給システムの前記タンクとを接続する第1中継流路と、前記第1中継流路に設けられた中継ポンプと、前記中継ポンプの出口から前記中継ポンプの入口へ液体を循環させる第2中継流路と、を備え、前記第2液体供給システムが液体の供給を必要とするときは、前記第1中継流路から前記第2液体供給システムに液体を供給し、前記第2液体供給システムが液体の供給を必要としないときは、前記第1中継流路から前記第2液体供給システムに液体を供給せず、前記第2液体供給システムが液体の供給を必要とするとき及び必要としないときの何れにおいても前記第1中継流路、前記第2中継流路で液体を循環させる。
【0103】
態様8の具体例である態様9おいて、前記第1中継流路に、前記中継ポンプより下流に熱交換器が設けられ、前記第2中継流路は、前記熱交換器の出口から前記中継ポンプの入口へ液体を循環させ、前記第2液体供給システムが液体の供給を必要としないときは、前記前記第1中継流路、前記第2中継流路で液体を循環させるとともに前記熱交換器により液体を所定温度に維持する。
【0104】
態様8の具体例である態様10において、前記中継システムは、液体を貯留するタンクを有さない。
【0105】
態様8の具体例である態様11において、前記第1液体供給システム及び前記第2液体供給システムは、前記循環流路の液体の圧力及び流量が一定となるように制御する。
【符号の説明】
【0106】
1…送液システム、10、20…液体供給システム、11、21…タンク、12、22、62…供給流路、13、23、63…循環流路、14、24、64…ポンプ、15、25…圧力計、16、26…流量計、17、27…コントロールバルブ、18、28…インバーター、19、29、65…熱交換器、30…精製水製造システム、40…ユースポイント、50…制御装置
【要約】
【課題】複数のユースポイントに所望の圧力及び流路の液体を送液することができる送液システムを提供する。
【解決手段】精製水を貯留するタンク、タンクからユースポイントにを供給するための供給流路、及びユースポイントに供給されなかった精製水をタンクへ戻す循環流路を備える液体供給システム10び液体供給システム20と、液体供給システム10と液体供給システム20に接続された中継システム60と、を備え、中継システム60は、液体供給システム20が精製水の供給を必要とするときは、供給流路62から液体供給システム20に精製水を供給し、液体供給システム20が精製水の供給を必要としないときは供給流路62から液体供給システム20に精製水を供給せず、精製水の要不要に関わらず供給流路62と循環流路63で精製水を循環させる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9