(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、レーザ加工方法、レーザ加工プログラム、記録媒体、半導体チップ製造方法および半導体チップ
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20241015BHJP
【FI】
B23K26/08 D
(21)【出願番号】P 2024515755
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2022018063
(87)【国際公開番号】W WO2023203613
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳邦
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-42032(JP,A)
【文献】特開2018-152494(JP,A)
【文献】特開2000-106340(JP,A)
【文献】特開2012-256796(JP,A)
【文献】特開2012-146723(JP,A)
【文献】特開2009-123875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数の加工ラインを有する加工対象物を、前記加工ラインが所定の加工方向に平行となるように支持する支持部材と、
レーザ光を発するレーザ光源を有し、前記レーザ光源からレーザ照射位置にレーザ光を照射する加工ヘッドと、
前記支持部材および前記加工ヘッドの少なくとも一方を前記加工方向に駆動することで、前記加工対象物に対して前記レーザ照射位置を前記加工方向に相対的に移動させる加工軸駆動部と、
前記加工方向において前記加工対象物の一方側の開始地点から前記加工対象物の前記一方側の逆の他方側の終了地点まで、前記加工対象物に対して前記レーザ照射位置を前記加工軸駆動部により移動させつつ、前記複数の加工ラインのうちの一の対象ラインに沿って移動する前記レーザ照射位置に前記加工ヘッドからレーザ光を照射することで前記一の対象ラインを加工する照射位置走査を実行する制御部と
を備え、
前記照射位置走査では、前記加工方向において前記対象ラインを含む等速度区間が前記開始地点と前記終了地点との間に設定され、前記開始地点から前記等速度区間の前記一方側の端まで前記レーザ照射位置が移動する第1期間において、前記加工対象物に対する前記レーザ照射位置の前記加工方向への速度がゼロから加工速度まで上昇し、前記等速度区間の前記一方側の端から前記他方側の端まで前記レーザ照射位置が移動する第2期間を通じて、前記レーザ照射位置は前記加工対象物に対して前記加工方向へ前記加工速度で等速移動し、前記レーザ照射位置が前記等速度区間の前記他方側の端に到達してから前記終了地点に到達するまでの第3期間において、前記加工対象物に対する前記レーザ照射位置の前記加工方向への速度は前記加工速度からゼロまで低下し、
前記制御部は、前記加工方向において前記等速度区間の長さを前記対象ラインの長さに応じて設定するとともに、前記等速度区間の長さに応じて前記照射位置走査における前記加工速度を調整する速度調整処理を実行するレーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の加工ラインの間で前記対象ラインを変更しつつ前記照射位置走査を繰り返すことで複数の照射位置走査を実行し、前記複数の照射位置走査のそれぞれに対して前記速度調整処理を実行する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記照射位置走査において前記対象ラインに沿って移動する前記レーザ照射位置に照射される前記レーザ光の周波数を、前記照射位置走査における前記加工速度に応じて調整する周波数調整処理を実行する請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の加工ラインの間で前記対象ラインを変更しつつ前記照射位置走査を繰り返すことで複数の照射位置走査を実行し、前記複数の照射位置走査のそれぞれに対して前記周波数調整処理を実行する請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の加工ラインの間で前記対象ラインを変更しつつ前記照射位置走査を繰り返すことで実行される複数の照射位置走査に対して共通する前記加工速度である共通加工速度を設定して、当該共通加工速度を前記加工速度として前記複数の照射位置走査のそれぞれを実行し、
前記速度調整処理では、前記複数の照射位置走査それぞれの前記等速度区間の長さに応じて、前記共通加工速度を調整する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数の照射位置走査に対して共通する共通周波数を前記共通加工速度に応じて求めて、前記複数の照射位置走査のそれぞれにおいて前記共通周波数の前記レーザ光を前記レーザ照射位置に照射する請求項5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記加工対象物の複数のサイズのそれぞれについて、前記サイズ、前記共通加工速度および前記共通周波数の対応関係を示す対応関係情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記照射位置走査の対象となる前記加工対象物の前記サイズと前記対応関係情報とに基づき、前記共通加工速度と前記共通周波数とを調整する請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記対応関係情報は、前記サイズとして前記加工対象物の直径を示し、200mmの直径および300mmの直径のそれぞれについて、前記サイズ、前記共通加工速度および前記共通周波数の対応関係を示す請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記加工方向において、前記等速度区間の両端は、前記対象ラインの両端と一致している請求項1ないし8のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
互いに平行な複数の加工ラインを有する加工対象物を、前記加工ラインが所定の加工方向に平行となるように支持部材により支持する工程と、
レーザ光を発するレーザ光源を有し、前記レーザ光源からレーザ照射位置にレーザ光を照射する加工ヘッドおよび前記支持部材の少なくとも一方を前記加工方向に駆動することで、前記加工対象物に対して前記レーザ照射位置を前記加工方向に相対的に移動させる加工軸駆動部によって、前記加工方向において前記加工対象物の一方側の開始地点から前記加工対象物の前記一方側の逆の他方側の終了地点まで、前記加工対象物に対して前記レーザ照射位置を移動させつつ、前記複数の加工ラインのうちの一の対象ラインに沿って移動する前記レーザ照射位置に前記加工ヘッドからレーザ光を照射することで前記一の対象ラインを加工する照射位置走査を実行する工程と
を備え、
前記照射位置走査では、前記加工方向において前記対象ラインを含む等速度区間が前記開始地点と前記終了地点との間に設定され、前記開始地点から前記等速度区間の前記一方側の端まで前記レーザ照射位置が移動する第1期間において、前記加工対象物に対する前記レーザ照射位置の前記加工方向への速度がゼロから加工速度まで上昇し、前記等速度区間の前記一方側の端から前記他方側の端まで前記レーザ照射位置が移動する第2期間を通じて、前記レーザ照射位置は前記加工対象物に対して前記加工方向へ前記加工速度で等速移動し、前記レーザ照射位置が前記等速度区間の前記他方側の端に到達してから前記終了地点に到達するまでの第3期間において、前記加工対象物に対する前記レーザ照射位置の前記加工方向への速度は前記加工速度からゼロまで低下し、
前記加工方向において前記等速度区間の長さが前記対象ラインの長さに応じて設定されるとともに、
前記等速度区間の長さに応じて前記照射位置走査における前記加工速度が調整されるレーザ加工方法。
【請求項11】
前記複数の加工ラインの間で前記対象ラインを変更しつつ前記照射位置走査を繰り返すことで実行される複数の照射位置走査に対して共通する前記加工速度である共通加工速度を設定する工程がさらに設けられ、
前記複数の照射位置走査のそれぞれは、前記共通加工速度を前記加工速度として前記複数の照射位置走査のそれぞれが実行され、
前記複数の照射位置走査それぞれの前記等速度区間の長さに応じて、前記共通加工速度が調整されている請求項10に記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載のレーザ加工方法をコンピュータに実行させるレーザ加工プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のレーザ加工プログラムを、コンピュータにより読み出し可能に記録する記録媒体。
【請求項14】
加工ラインによって区分けされた複数の半導体チップが配列された半導体基板を、請求項10または11に記載のレーザ加工方法によって加工する工程と、
前記レーザ加工方法によって加工された半導体基板を粘着力によって保持するテープを拡張することで前記複数の半導体チップのそれぞれを分離する工程と
を備えた半導体チップ製造方法。
【請求項15】
加工ラインによって区分けされた複数の半導体チップが配列された半導体基板を、請求項10または11に記載のレーザ加工方法によって加工する工程と、
前記レーザ加工方法によって加工された半導体基板を粘着力によって保持するテープを拡張することで前記複数の半導体チップのそれぞれを分離する工程と
によって製造された半導体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工対象物に設けられた加工ラインにレーザ光を照射することで加工ラインを加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、半導体基板に設けられた分割予定ラインにレーザ光を照射しつつ、半導体基板に対してレーザ光を相対的に移動させることで分割予定ラインを加工するレーザ加工技術が記載されている。例えば特許文献1に示されるように、このレーザ加工技術では、往路と復路でレーザ光を照射する分割予定ラインを変更しつつ、レーザ光を往復させることで、複数の分割予定ラインに対して順番に加工が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5804716号公報
【文献】特開第5554593号公報
【文献】特開第5037082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の様なレーザ加工技術では、所定のレーザ照射位置にレーザ光を照射する加工ヘッドの当該レーザ照射位置を、加工対象物(半導体基板)に対して相対的に移動させつつレーザ照射位置にレーザ光を照射することで、加工ラインが加工される。つまり、加工対象物の一方側から他方側にレーザ光を移動させつつ、加工対象物の加工ライン(分割予定ライン)に沿って移動するレーザ照射位置にレーザ光が照射される。この際、加工ラインに対してレーザ光を一定の加工速度で移動させることが求められる。そのため、加工対象物の一方側から加工対象物に向けて移動を開始したレーザ照射位置が加工対象物に到達するまでに、レーザ照射位置の速度がゼロから加工速度まで加速される。また、加工対象物を他方側へ通過したレーザ照射位置の速度が加工速度からゼロまで減速される。
【0005】
ところで、加工ラインに沿ってレーザ光を移動させる加工を短時間で完了するには、加工速度が高いことが有利となる。しかしながら、加工速度が高いと、レーザ照射位置をゼロから加工速度まで加速するのに要する時間や、レーザ照射位置を加工速度からゼロまで減速するのに要する時間が長くなる。そのため、加工速度が不適切であるために、加工ラインの加工に時間を要してしまう場合があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、加工対象物の加工ラインに沿ってレーザ光を移動させることで加工ラインを加工するレーザ加工技術において、加工ラインの加工を効率的に実行することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザ加工装置は、互いに平行な複数の加工ラインを有する加工対象物を、加工ラインが所定の加工方向に平行となるように支持する支持部材と、レーザ光を発するレーザ光源を有し、レーザ光源からレーザ照射位置にレーザ光を照射する加工ヘッドと、支持部材および加工ヘッドの少なくとも一方を加工方向に駆動することで、加工対象物に対してレーザ照射位置を加工方向に相対的に移動させる加工軸駆動部と、加工方向において加工対象物の一方側の開始地点から加工対象物の一方側の逆の他方側の終了地点まで、加工対象物に対してレーザ照射位置を加工軸駆動部により移動させつつ、複数の加工ラインのうちの一の対象ラインに沿って移動するレーザ照射位置に加工ヘッドからレーザ光を照射することで一の対象ラインを加工する照射位置走査を実行する制御部とを備え、照射位置走査では、加工方向において対象ラインを含む等速度区間が開始地点と終了地点との間に設定され、開始地点から等速度区間の一方側の端までレーザ照射位置が移動する第1期間において、加工対象物に対するレーザ照射位置の加工方向への速度がゼロから加工速度まで上昇し、等速度区間の一方側の端から他方側の端までレーザ照射位置が移動する第2期間を通じて、レーザ照射位置は加工対象物に対して加工方向へ加工速度で等速移動し、レーザ照射位置が等速度区間の他方側の端に到達してから終了地点に到達するまでの第3期間において、加工対象物に対するレーザ照射位置の加工方向への速度は加工速度からゼロまで低下し、制御部は、加工方向において等速度区間の長さを対象ラインの長さに応じて設定するとともに、等速度区間の長さに応じて照射位置走査における加工速度を調整する速度調整処理を実行する。
【0008】
本発明に係るレーザ加工方法は、互いに平行な複数の加工ラインを有する加工対象物を、加工ラインが所定の加工方向に平行となるように支持部材により支持する工程と、レーザ光を発するレーザ光源を有し、レーザ光源からレーザ照射位置にレーザ光を照射する加工ヘッドおよび支持部材の少なくとも一方を加工方向に駆動することで、加工対象物に対してレーザ照射位置を加工方向に相対的に移動させる加工軸駆動部によって、加工方向において加工対象物の一方側の開始地点から加工対象物の一方側の逆の他方側の終了地点まで、加工対象物に対してレーザ照射位置を移動させつつ、複数の加工ラインのうちの一の対象ラインに沿って移動するレーザ照射位置に加工ヘッドからレーザ光を照射することで一の対象ラインを加工する照射位置走査を実行する工程とを備え、照射位置走査では、加工方向において対象ラインを含む等速度区間が開始地点と終了地点との間に設定され、開始地点から等速度区間の一方側の端までレーザ照射位置が移動する第1期間において、加工対象物に対するレーザ照射位置の加工方向への速度がゼロから加工速度まで上昇し、等速度区間の一方側の端から他方側の端までレーザ照射位置が移動する第2期間を通じて、レーザ照射位置は加工対象物に対して加工方向へ加工速度で等速移動し、レーザ照射位置が等速度区間の他方側の端に到達してから終了地点に到達するまでの第3期間において、加工対象物に対するレーザ照射位置の加工方向への速度は加工速度からゼロまで低下し、 加工方向において等速度区間の長さが対象ラインの長さに応じて設定されるとともに、 等速度区間の長さに応じて照射位置走査における加工速度が調整される。
【0009】
このように構成された本発明(レーザ加工装置およびレーザ加工方法)は、加工方向において加工対象物の一方側の開始地点から他方側の終了地点まで、加工対象物に対してレーザ照射位置を移動させつつ、複数の加工ラインのうちの一の対象ラインに沿って移動するレーザ照射位置に加工ヘッドからレーザ光を照射することで一の対象ラインを加工する(照射位置走査)。この照射位置走査では、加工方向において対象ラインを含む等速度区間が開始地点と終了地点との間に設定される。そして、開始地点から等速度区間の一方側の端までレーザ照射位置が移動する第1期間において、加工対象物に対するレーザ照射位置の加工方向への速度がゼロから加工速度まで上昇する。また、等速度区間の一方側の端から他方側の端までレーザ照射位置が移動する第2期間を通じて、レーザ照射位置は加工対象物に対して加工方向へ加工速度で等速移動する。さらに、レーザ照射位置が等速度区間の他方側の端に到達してから終了地点に到達するまでの第3期間において、加工対象物に対するレーザ照射位置の加工方向への速度は加工速度からゼロまで低下する。この際、加工方向において、等速度区間の長さは対象ラインの長さに応じて設定され、等速度区間の長さに応じて照射位置走査における加工速度が調整されている(速度調整処理)。したがって、第1期間、第2期間および第3期間の合計期間を抑えることができる。こうして、加工対象物の加工ラインに沿ってレーザ光を移動させることで加工ラインを加工するレーザ加工技術において、加工ラインの加工を効率的に実行することが可能となっている。
【0010】
また、制御部は、複数の加工ラインの間で対象ラインを変更しつつ照射位置走査を繰り返すことで複数の照射位置走査を実行し、複数の照射位置走査のそれぞれに対して速度調整処理を実行するように、レーザ加工装置を構成してもよい。かかる構成では、複数の加工ラインのそれぞれの加工を効率的に実行でき、加工対象物に対する加工を速やかに完了することが可能となる。
【0011】
また、制御部は、照射位置走査において対象ラインに沿って移動するレーザ照射位置に照射されるレーザ光の周波数を、照射位置走査における加工速度に応じて調整する周波数調整処理を実行するように、レーザ加工装置を構成してもよい。かかる構成では、調整後の加工速度に応じた適切な周波数のレーザ光を加工ラインに照射して、加工ラインの加工を的確に行うことができる。
【0012】
また、制御部は、複数の加工ラインの間で対象ラインを変更しつつ照射位置走査を繰り返すことで複数の照射位置走査を実行し、複数の照射位置走査のそれぞれに対して周波数調整処理を実行するように、レーザ加工装置を構成してもよい。かかる構成では、複数の加工ラインのそれぞれの加工を的確に行うことができる。
【0013】
また、制御部は、複数の加工ラインの間で対象ラインを変更しつつ照射位置走査を繰り返すことで実行される複数の照射位置走査に対して共通する加工速度である共通加工速度を設定して、当該共通加工速度を加工速度として複数の照射位置走査のそれぞれを実行し、速度調整処理では、複数の照射位置走査それぞれの等速度区間の長さに応じて、共通加工速度を調整するように、レーザ加工装置を構成してもよい。あるいは、複数の加工ラインの間で対象ラインを変更しつつ照射位置走査を繰り返すことで実行される複数の照射位置走査に対して共通する加工速度である共通加工速度を設定する工程がさらに設けられ、複数の照射位置走査のそれぞれは、共通加工速度を加工速度として複数の照射位置走査のそれぞれが実行され、複数の照射位置走査それぞれの等速度区間の長さに応じて、共通加工速度が調整されているように、レーザ加工方法を構成してもよい。かかる構成では、複数の加工ラインの間で加工速度を切り換えることなく、当該複数の加工ラインへの加工を効率的に実行でき、加工対象物に対する加工を速やかに完了することが可能となる。
【0014】
また、制御部は、複数の照射位置走査に対して共通する共通周波数を共通加工速度に応じて求めて、複数の照射位置走査のそれぞれにおいて共通周波数のレーザ光をレーザ照射位置に照射するように、レーザ加工装置を構成してもよい。かかる構成では、複数の加工ラインの間でレーザ光の周波数を切り換える必要がなく、周波数の切り換えに要する時間が加工対象物に対する加工の完了に与える影響を排除できる。
【0015】
また、加工対象物の複数のサイズのそれぞれについて、サイズ、共通加工速度および共通周波数の対応関係を示す対応関係情報を記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、照射位置走査の対象となる加工対象物のサイズと対応関係情報とに基づき、共通加工速度と共通周波数とを調整するように、レーザ加工装置を構成してもよい。かかる構成では、対応関係情報を参照することで、共通加工速度および共通周波数を簡便に調整できる。
【0016】
具体的には、対応関係情報は、サイズとして加工対象物の直径を示し、200mmの直径および300mmの直径のそれぞれについて、サイズ、共通加工速度および共通周波数の対応関係を示すように、レーザ加工装置を構成してもよい。
【0017】
また、対象ラインに対する等速度区間の設定態様は種々想定される。要するに、加工方向において等速度区間が対象ラインを含んでいればよい。したがって、加工方向において、等速度区間の両端は対象ラインの両端と一致していてもよい。
【0018】
本発明に係るレーザ加工プログラムは、上記のレーザ加工方法をコンピュータに実行させる。
【0019】
本発明に係る記録媒体は、上記のレーザ加工プログラムを、コンピュータにより読み出し可能に記録する。
【0020】
本発明に係る半導体チップ製造方法は、加工ラインによって区分けされた複数の半導体チップが配列された半導体基板を、上記のレーザ加工方法によって加工する工程と、レーザ加工方法によって加工された半導体基板を粘着力によって保持するテープを拡張することで複数の半導体チップのそれぞれを分離する工程とを備える。
【0021】
本発明に係る半導体チップは、加工ラインによって区分けされた複数の半導体チップが配列された半導体基板を、上記のレーザ加工方法によって加工する工程と、レーザ加工方法によって加工された半導体基板を粘着力によって保持するテープを拡張することで複数の半導体チップのそれぞれを分離する工程とによって製造される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加工対象物の加工ラインに沿ってレーザ光を移動させることで加工ラインを加工するレーザ加工技術において、加工ラインの加工を効率的に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るレーザ加工装置の一例を模式的に示す正面図。
【
図2】
図1のレーザ加工装置を模式的に示す平面図。
【
図3】
図1のレーザ加工装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図4】レーザ加工が実行済みのレーザ加工基板を生産する方法の一例を示すフローチャート。
【
図5】リングフレームの取り出しの一例を示すフローチャート。
【
図6】リングフレームの移載の一例を示すフローチャート。
【
図7A】
図5および
図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図7B】
図5および
図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図7C】
図5および
図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図7D】
図5および
図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図7E】
図5および
図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図8】リングフレームの収納の一例を示すフローチャート。
【
図9】リングフレームアライメントの一例を示すフローチャートであり、
【
図10】リングフレームアライメントで実行される動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図12】
図11のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図13A】キャリブレーションの一例を示すフローチャート。
【
図13B】
図13Aのキャリブレーションで実行されるステージ平面特定の一例を示すフローチャート。
【
図13C】
図13Aのキャリブレーションで実行される基板平面特定の一例を示すフローチャート。
【
図14】各分割予定ラインへのライン加工処理の基本工程を示すフローチャート。
【
図15A】
図14のフローチャートに従って実行される動作の第1例を模式的に示す図。
【
図15B】
図14のフローチャートに従って実行される動作の第2例を模式的に示す図。
【
図15C】
図14のフローチャートに従って実行される動作の第3例を模式的に示す図。
【
図15D】
図14のフローチャートに従って実行される動作の第4例を模式的に示す図。
【
図15E】
図14のフローチャートに従って実行される動作の第5例を模式的に示す図。
【
図15F】
図14のフローチャートに従って実行される動作の第6例を模式的に示す図。
【
図15G】
図14のフローチャートに従って実行される動作の第7例を模式的に示す図。
【
図16】各分割予定ラインへのライン加工処理の第1応用例を示すフローチャート。
【
図17】
図16のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図。
【
図18】各分割予定ラインへのライン加工処理の第2応用例を示すフローチャート。
【
図19A】
図18のフローチャートに従って実行される動作の第1例を模式的に示す図。
【
図19B】
図18のフローチャートに従って実行される動作の第2例を模式的に示す図。
【
図20】
図16のステップS1008あるいは
図18のステップS1104で取得される半導体基板の画像の一例を模式的に示す図。
【
図21】ライン加工処理でのレーザ加工条件の決定方法の一例を示すフローチャート。
【
図22A】レーザ加工条件の決定に関わるパラメータを示す図。
【
図22C】
図21のレーザ加工条件の決定で参照するテーブルの一例を示す図。
【
図23】半導体基板単位でのレーザ加工条件の決定方法の一例を示すフローチャート。
【
図24】
図23のレーザ加工条件の決定で参照するテーブルの一例を示す図。
【
図25】
図23のレーザ加工条件方法によって予め求められた加工条件を基板サイズに応じて設定するレーザ加工条件設定の一例を示すフローチャート。
【
図26】
図25のフローチャートで使用される対応関係テーブルを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明に係るレーザ加工装置の一例を模式的に示す正面図であり、
図2は
図1のレーザ加工装置を模式的に示す平面図である。両図および以下の図では、水平方向であるX方向と、X方向に直交する水平方向であるY方向と、鉛直方向であるZ方向とを適宜示す。さらに、X方向の(+X)側(
図2紙面の右側)と、X方向の(+X)側と逆の(-X)側(
図2紙面の左側)とを適宜示すとともに、Y方向の(+Y)側(
図2紙面の上側)と、Y方向の(+Y)側と逆の(-Y)側(
図2紙面の下側)とを適宜示す。
【0025】
レーザ加工装置1は半導体基板W(加工対象物)にレーザ光を照射することで、半導体基板Wを加工する。この半導体基板Wは、テープEを介してリングフレームFrによって保持される。テープEは、ダイシングテープあるいはボンディングテープであり、テープEの表面(上面)は粘着性を有する。リングフレームFrは、正八角形の一部を切り欠いてスリットFsを設けた外形を有し、リングフレームFrの中央には円形の開口Foが設けられている。テープEの表面は、開口Foの全体に重複するようにリングフレームFrに下側から対向し、テープEの表面の周縁がリングフレームFrの底面に粘着力により貼り付けられている。また、半導体基板WがテープEの表面に粘着力により貼り付けられている。こうして、半導体基板WはテープEを介してリングフレームFrによって保持された状態で、レーザ加工装置1内で運搬される。なお、半導体基板Wは表面と当該表面と逆の裏面を有し、半導体基板Wの表面に電子回路が形成される一方、半導体基板Wの裏面は平坦である。そして、半導体基板Wの表面が下側を向いて、テープEの表面に貼り付けられている。つまり、半導体基板Wの裏面が上側を向いた状態で、半導体基板Wは保持される。
【0026】
レーザ加工装置1は、半導体基板Wを収容する基板収容部2と、基板収容部2から取り出された半導体基板Wを保持するチャックステージ3(支持部材)とを備える。レーザ加工装置1は、平板形状のベースプレート11を備え、基板収容部2およびチャックステージ3は、ベースプレート11によって支持される。X方向において、チャックステージ3は基板収容部2の(+X)側に配置され、Y方向においてチャックステージ3は基板収容部2の(-Y)側に配置される。そして、X方向においてチャックステージ3の(-X)側であって、Y方向において基板収容部2の(-Y)側のスペースが基板受渡領域Awとなる。
【0027】
基板収容部2は、基板収容カセット21を有する。基板収容カセット21は、X方向の両側に設けられた一対の側壁22と、側壁22の間に設けられた開口23とを有し、開口23は(-Y)側(すなわち、基板受渡領域Aw側)を向く。一対の側壁22は、X方向に対して垂直に設けられた平板であり、X方向に互いに対向する。また、一対の側壁22それぞれの内側には支持突起24が設けられる。こうして、X方向に対向する一対の支持突起24が互いに同一の高さに設けられる。そして、開口23を介して(-Y)側から一対の支持突起24の上側に対して、半導体基板Wを保持するリングフレームFrを差し込むことができる。こうして差し込まれたリングフレームFrのX方向の両端が、一対の支持突起24によって下側から支持される。つまり、一対の支持突起24の上側が、リングフレームFrを収容するスロット25として機能し、開口23を介して(-Y)側からスロット25に挿入されたリングフレームFrは、当該スロット25に対応する一対の支持突起24によって支持される。したがって、基板収容カセット21のスロット25にリングフレームFrを挿入することで、リングフレームFrに支持される半導体基板Wを基板収容カセット21に収容でき、基板収容カセット21のスロット25からリングフレームFrを引き出すことで、基板収容カセット21から半導体基板Wを取り出すことができる。
【0028】
また、基板収容部2は、基板収容カセット21を支持するZ軸スライダ26と、Z軸スライダ26をZ方向に駆動するZ軸駆動機構27を有する。Z軸駆動機構27はベースプレート11に取り付けられた単軸ロボットであり、Z軸スライダ26をZ方向に移動可能に支持するZ軸駆動伝達部271と、Z軸駆動伝達部271に支持されるZ軸スライダ26をZ方向に駆動するZ軸カセットモータ272とを有する。Z軸駆動伝達部271は、Z軸カセットモータ272によって駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにZ軸スライダ26が取り付けられている。ただし、Z軸駆動機構27の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでもよい。かかるZ軸駆動機構27は、Z軸駆動伝達部271に支持されるZ軸スライダ26をZ軸カセットモータ272によって駆動することで、Z軸スライダ26に支持される基板収容カセット21をZ方向に移動させる。
【0029】
基板収容カセット21に対しては、基板挿入高さ211が設けられており、基板挿入高さ211に位置するスロット25に対して、半導体基板Wの挿入および引き出しを実行することができる。したがって、Z軸駆動機構27によって基板収容カセット21をZ方向に移動させて、複数のスロット25のうち基板挿入高さ211に位置するスロット25を変更することで、半導体基板Wの挿入および引き出しを実行するスロット25を変更できる。
【0030】
これに対して、レーザ加工装置1は、基板挿入高さ211のスロット25と基板受渡領域Awとの間でY方向にリングフレームFrを運搬するY軸運搬機構4を備える。Y軸運搬機構4は、リフトハンド41と、リフトハンド41を支持するY軸スライダ43と、Y軸スライダ43をY方向に駆動するY軸駆動機構45とを有する。Y軸駆動機構45は、付図示のフレームによってベースプレート11に取り付けられた単軸ロボットであり、Y軸スライダ43をY方向に移動可能に支持するY軸駆動伝達部451と、Y軸駆動伝達部451に支持されるY軸スライダ43をY方向に駆動するY軸リフトハンドモータ452とを有する。Y軸駆動伝達部451は、Y軸リフトハンドモータ452によって駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにY軸スライダ43が取り付けられている。ただし、Y軸駆動機構45の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでもよい。かかるY軸駆動機構45は、Y軸駆動伝達部451により支持されるY軸スライダ43をY軸リフトハンドモータ452により駆動することで、Y軸スライダ43に支持されるリフトハンド41をY方向に移動させる。
【0031】
リフトハンド41は、Y軸スライダ43に支持されるベース部411と、ベース部411から(+Y)側に突出するフォーク412とを有する。フォーク412は、基板挿入高さ211に位置し、リングフレームFrを下側から保持することができる。Y軸運搬機構4は、後述するように、Y軸駆動機構45によってリフトハンド41をY方向に駆動することで、リフトハンド41のフォーク412に保持されるリングフレームFrを、基板収容カセット21と基板受渡領域Awとの間で移動させる。
【0032】
また、レーザ加工装置1は、基板受渡領域Awに位置するリフトハンド41と、チャックステージ3との間でX方向にリングフレームFrを運搬するXZ軸運搬機構5を備える。XZ軸運搬機構5は、吸着ハンド51と、吸着ハンド51を支持するX軸スライダ53と、X軸スライダ53をX方向に駆動するX軸駆動部55とを有する。X軸駆動部55は、付図示のフレームによってベースプレート11に取り付けられた単軸ロボットであり、X軸スライダ53をX方向に移動可能に支持するX軸駆動伝達部551と、X軸駆動伝達部551に支持されるX軸スライダ53をX方向に駆動するX軸吸着ハンドモータ552とを有する。X軸駆動伝達部551は、X軸吸着ハンドモータ552によって駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにX軸スライダ53が取り付けられている。ただし、X軸駆動部55の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでもよい。かかるX軸駆動部55は、X軸駆動伝達部551に支持されるX軸スライダ53をX軸吸着ハンドモータ552によって駆動することで、X軸スライダ53に支持される吸着ハンド51をX方向に移動させる。
【0033】
また、XZ軸運搬機構5は、吸着ハンド51に取り付けられたZ軸スライダ56と、Z軸スライダ56をX軸スライダ53に対してZ方向に駆動するZ軸駆動部58とを有する。つまり、吸着ハンド51は、Z軸スライダ56およびZ軸駆動部58を介してX軸スライダ53によって支持される。Z軸駆動部58は、X軸スライダ53に取り付けられた単軸ロボットであり、Z軸スライダ56をZ方向に移動可能に支持するZ軸駆動伝達部581と、Z軸駆動伝達部581に支持されるZ軸スライダ56をZ方向に駆動するZ軸吸着ハンドモータ582とを有する。Z軸駆動伝達部581は、Z軸吸着ハンドモータ582により駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにZ軸スライダ56が取り付けられている。ただし、Z軸駆動部58の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでも良い。Z軸スライダ56は、Z軸駆動部58からX軸駆動伝達部551の下側まで延設されて、Z軸スライダ56の下端に吸着ハンド51が取り付けられている。かかるZ軸駆動部58は、Z軸駆動伝達部581に支持されるZ軸スライダ56をZ軸吸着ハンドモータ582によって駆動することで、Z軸スライダ56に支持される吸着ハンド51をZ方向に移動させる。
【0034】
吸着ハンド51は、Z軸スライダ56に支持されるベース部511と、ベース部511から(+Y)側に突出した環状吸着部材512とを有する。環状吸着部材512は、円環形状を有して、環状吸着部材512の底面513には、複数の吸着孔が開口している。この環状吸着部材512の底面513をリングフレームFrに上側から当接しつつ当該底面513の各吸着孔に発生させた負圧によりリングフレームFrを吸引することで、吸着ハンド51によってリングフレームFrを上側から保持することができる。XZ軸運搬機構5は、後述するように、X軸駆動部55によって吸着ハンド51をX方向に駆動するとともにZ軸駆動部58によって吸着ハンド51をZ方向に駆動することで、吸着ハンド51の環状吸着部材512に保持されるリングフレームFrを基板受渡領域Awとチャックステージ3との間で移動させる。
【0035】
チャックステージ3は、テープEを介して半導体基板Wを支持するリングフレームFrが載置される吸着プレート31を有する。吸着プレート31は円形を有し、吸着プレート31の上面311には複数の吸着孔が開口する。そして、吸着プレート31の上面311の各吸着孔に発生させた負圧によって当該上面311に接触するテープEを吸引することで、吸着プレート31にテープEを固定することができる。さらに、チャックステージ3は、吸着プレート31の周縁に設けられた複数のクランパ32を有する。このチャックステージ3は、吸着プレート31に載置されたリングフレームFrに対してクランパ32を上側から対向させて、クランパ32と吸着プレート31との間にリングフレームFrを挟み込むことで、リングフレームFrを吸着プレート31に固定する。また、チャックステージ3は、リングフレームFrからクランパ32を側方に退避させることで、リングフレームFrの吸着プレート31への固定を解除する。
【0036】
このように、チャックステージ3は、吸着プレート31によるテープEの吸引と、クランパ32によるリングフレームFrの固定とによって、テープEを介してリングフレームFrに支持された半導体基板Wを保持する。このようにクランパ32を併用することで、吸着プレート31によるテープEの吸引のみによって半導体基板Wを保持する場合と比べて、吸着プレート31へのテープEの吸引を弱い吸引力で実行することができ、テープEの吸引が半導体基板Wに与える影響を緩和できる。
【0037】
また、レーザ加工装置1は、チャックステージ3を支持するXYθ駆動テーブル6を備える。XYθ駆動テーブル6は、ベースプレート11上に配置されて、ベースプレート11に対してチャックステージ3をX方向、Y方向およびθ方向に駆動する。ここで、θ方向は、Z方向に平行な回転軸を中心とする回転方向である。つまり、XYθ駆動テーブル6は、Y方向に平行にベースプレート11に取り付けられたY軸ガイド61と、Y軸ガイド61によってY方向に移動可能に支持されるY軸スライダ62と、Y軸スライダ62をY方向に駆動するY軸駆動部63とを有する。Y軸駆動部63は、ベースプレート11に取り付けられた単軸ロボットであり、Y軸スライダ62をY方向に移動可能に支持するY軸駆動伝達部631と、Y軸駆動伝達部631に支持されるY軸スライダ62をY方向に駆動するY軸テーブルモータ632とを有する。Y軸駆動伝達部631は、Y軸テーブルモータ632によって駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにY軸スライダ62が取り付けられている。ただし、Y軸駆動部63の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでも良い。
【0038】
また、XYθ駆動テーブル6は、X軸スライダ64と、X軸スライダ64をY軸スライダ62に対してX方向に駆動するX軸駆動部65とを有する。X軸駆動部65は、Y軸スライダ62に取り付けられた単軸ロボットであり、X軸スライダ64をX方向に移動可能に支持するX軸駆動伝達部651と、X軸駆動伝達部651に支持されるX軸スライダ64をX方向に駆動するX軸テーブルモータ652とを有する。X軸駆動伝達部651は、X軸テーブルモータ652によって駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにX軸スライダ64が取り付けられている。ただし、X軸駆動部65の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでも良い。
【0039】
さらに、XYθ駆動テーブル6は、X軸スライダ64に取り付けられたθ軸テーブルモータ66を有する。このθ軸テーブルモータ66は、X軸スライダ64に対してチャックステージ3をθ方向に駆動する。
【0040】
このようなXYθ駆動テーブル6は、Y軸テーブルモータ632によってチャックステージ3をY方向に駆動し、X軸テーブルモータ652によってチャックステージ3をX方向に駆動し、θ軸テーブルモータ66によってチャックステージ3をθ方向に駆動することができる。
【0041】
また、レーザ加工装置1は、チャックステージ3に保持される半導体基板Wに対してレーザ加工を実行するレーザ加工部7を備える。レーザ加工部7は、チャックステージ3に保持される半導体基板Wに上側から対向する加工ヘッド71を有する。加工ヘッド71は所定の振動数のレーザ光Bを発生するレーザ光源72と、レーザ光源72から射出されたレーザ光Bを半導体基板Wに照射する光学系73(レンズおよび絞り等)とを有する。この加工ヘッド71は、所定のレーザ照射位置Lbを有して、当該レーザ照射位置LbにZ方向の上側から対向する。そして、加工ヘッド71は、レーザ光源72から射出されたレーザ光Bを光学系73によってレーザ照射位置Lbに集光することで、半導体基板Wのうちレーザ照射位置Lbに重複する部分に改質層を形成する。
【0042】
また、レーザ加工部7は、加工ヘッド71を支持するZ軸スライダ78と、Z軸スライダ78をZ方向に駆動するZ軸駆動部79とを有する。Z軸駆動部79はベースプレートに取り付けられた単軸ロボットであり、Z軸スライダ78をZ方向に移動可能に支持するZ軸駆動伝達部791と、Z軸駆動伝達部791に支持されるZ軸スライダ78をZ方向に駆動するZ軸ヘッドモータ792とを有する。Z軸駆動伝達部791は、Z軸ヘッドモータ792によって駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにZ軸スライダ78が取り付けられている。ただし、Z軸駆動部79の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでも良い。かかるZ軸駆動部79は、Z軸駆動伝達部791に支持されるZ軸スライダ78をZ軸ヘッドモータ792によって駆動することで、Z軸スライダ78に支持される加工ヘッド71をZ方向に移動させて、赤外線カメラ81のレーザ照射位置LbをZ方向に移動させる。
【0043】
また、レーザ加工装置1は、チャックステージ3に保持される半導体基板Wを撮像する撮像部8を備える。特に、X方向においてレーザ加工部7を挟むように配置された2台の撮像部8が設けられている。これら2台の撮像部8を区別する際には、レーザ加工部7の(+X)側の撮像部8を撮像部8Aと称し、レーザ加工部7の(-X)側の撮像部8を撮像部8Bと称することとする。このように撮像部8A、レーザ加工部7および撮像部8BがX方向に配列されている。なお、撮像部8Aおよび撮像部8Bそれぞれの基本的な構成は共通する。したがって、撮像部8A、8Bで共通する構成はこれらを区別せずに説明を行うこととする。
【0044】
撮像部8は、チャックステージ3に保持される半導体基板Wに上側から対向する赤外線カメラ81を有する。この赤外線カメラ81は、所定の撮像範囲Ri(換言すれば、視野)を有して、当該撮像範囲Riに対してZ方向の上側から対向する。そして、赤外線カメラ81は、撮像範囲Riから射出される赤外線を検出することで、撮像範囲Riを撮像して、撮像範囲Riの画像を取得する。
【0045】
また、撮像部8は、赤外線カメラ81を支持するZ軸スライダ88と、Z軸スライダ88をZ方向に駆動するZ軸駆動部89とを有する。Z軸駆動部89はベースプレートに取り付けられた単軸ロボットであり、Z軸スライダ88をZ方向に移動可能に支持するZ軸駆動伝達部891と、Z軸駆動伝達部891に支持されるZ軸スライダ88をZ方向に駆動するZ軸カメラモータ892とを有する。Z軸駆動伝達部891は、Z軸カメラモータ892によって駆動されるボールネジを有し、当該ボールネジのナットにZ軸スライダ88が取り付けられている。ただし、Z軸駆動部89の具体的構成はこの例に限られず、例えばリニアモータでも良い。かかるZ軸駆動部89は、Z軸駆動伝達部891に支持されるZ軸スライダ88をZ軸カメラモータ892によって駆動することで、Z軸スライダ88に支持される赤外線カメラ81をZ方向に移動させて、赤外線カメラ81の撮像範囲RiをZ方向に移動させる。
【0046】
なお、撮像部8Aの赤外線カメラ81と、撮像部8Bの赤外線カメラ81とは互いに異なる解像度を有する。具体的には、撮像部8Aの赤外線カメラ81は、撮像部8Bの赤外線カメラ81よりも高い解像度を有し、換言すれば狭い視野を有する。ただし、撮像部8Aと撮像部8Bとで赤外線カメラ81の解像度が異なる必要はなく、これらの赤外線カメラ81が同一の解像度を有していてもよい。また、ここの例では、撮像部8Aの撮像範囲Ri、加工ヘッド71のレーザ照射位置Lbおよび撮像部8Bの撮像範囲Riそれぞれの中心がX方向に平行に並ぶ。ただし、これらがX方向に平行である必要は必ずしもなく、加工ヘッド71のレーザ照射位置Lbに対して、撮像部8Aの撮像範囲Riが(+X)側に位置し、撮像部8Bの撮像範囲Riが(-X)側に位置していればよい。
【0047】
図3は
図1のレーザ加工装置が備える電気的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、レーザ加工装置1は、
図1および
図2に示した構成を制御する制御部100を備える。制御部100は、レーザ加工装置1内で、半導体基板Wの運搬に関わる基板運搬系(基板収容部2、Y軸運搬機構4およびXZ軸運搬機構5)の制御を担当するハンドリング制御演算部110と、半導体基板Wへのレーザ加工に関わるレーザ加工系(チャックステージ3、XYθ駆動テーブル6、レーザ加工部7および撮像部8)の制御を担当するレーザ加工制御演算部120とを有する。
【0048】
また、制御部100は、ハンドリング制御演算部110からの指令に応じて、基板収容カセット21に対する半導体基板Wの挿脱動作を制御するカセット制御部111を有する。このカセット制御部111は、Z軸カセットモータ272を制御することで基板収容カセット21のZ方向の位置を調整し、Y軸リフトハンドモータ452を制御することでリフトハンド41のY方向の位置を調整する。
【0049】
さらに、制御部100は、ハンドリング制御演算部110からの指令に応じて、吸着ハンド51による半導体基板Wの運搬動作を制御するハンド制御部112を有する。ハンド制御部112は、X軸吸着ハンドモータ552を制御することで吸着ハンド51のX方向の位置を調整し、ハンド制御部112は、Z軸吸着ハンドモータ582を制御することで吸着ハンド51のZ方向の位置を調整する。さらに、ハンド制御部112は、吸着ハンド51の環状吸着部材512の底面513に開口する吸着孔を吸引する吸引ポンプ591を制御する。つまり、ハンド制御部112は、吸引ポンプ591によって吸着孔へ負圧を供給することで吸着ハンド51によってリングフレームFrを吸着し、吸引ポンプ591による吸着孔への負圧の供給を停止することで吸着ハンド51からリングフレームFrを離す。
【0050】
また、制御部100は、レーザ加工制御演算部120からの指令に応じて、チャックステージ3による基板固定動作やチャックステージ3の駆動を制御するステージ制御部121を有する。ステージ制御部121は、X軸テーブルモータ652、Y軸テーブルモータ632およびθ軸テーブルモータ66をそれぞれ制御することで、チャックステージ3のX方向、Y方向およびθ方向への位置を調整する。さらに、ステージ制御部121は、クランパ32を駆動するクランパ駆動部691を制御することで、クランパ駆動部691による吸着プレート31へのリングフレームFrの固定や、当該固定の解除を実行する。さらに、ステージ制御部121は、吸着プレート31の上面311に開口する吸着孔を吸引する吸引ポンプ692を制御する。つまり、ステージ制御部121は、吸引ポンプ692によって吸着孔へ負圧を供給することで吸着プレート31によってテープEを吸着し、吸引ポンプ692による吸着孔への負圧の供給を停止することで吸着プレート31によるテープEの吸着を解除する。
【0051】
また、制御部100は、撮像部8Aを制御するカメラ制御部122Aと、撮像部8Bを制御するカメラ制御部122Bとを有する。これらハンド制御部112A、112Bは、それぞれの対象である撮像部8A、8Bの赤外線カメラ81およびZ軸カメラモータ892に対して次の制御を実行する。つまり、カメラ制御部122A、122Bのそれぞれは、赤外線カメラ81に半導体基板Wを撮像させて半導体基板Wの画像を取得し、Z軸カメラモータ892によって赤外線カメラ81をZ方向に駆動することで赤外線カメラ81から半導体基板Wまでの距離をZ方向に調整する。
【0052】
さらに、制御部100は、レーザ加工部7を制御する加工ヘッド制御部123を有する。加工ヘッド制御部123は、レーザ光源72を駆動して、レーザ光源72からレーザ光Bを射出させ、Z軸ヘッドモータ792によって加工ヘッド71をZ方向に駆動することで、加工ヘッド71から半導体基板Wまでの距離をZ方向に調整する。また、加工ヘッド71は、半導体基板Wからの高さ(Z方向への距離)を検出する高さ検出部74を有する。この高さ検出部74は、いわゆる距離センサである。さらに、加工ヘッド71の光学系73はフォーカス調整機構75を有する。フォーカス調整機構75は、光学系73の焦点をZ方向に変位させることで、レーザ光Bを集光する位置を調整する。特に、加工ヘッド制御部123は、高さ検出部74が検出した半導体基板Wから加工ヘッド71までの高さに基づきフォーカス調整機構75を制御することで、半導体基板Wの内部の所定位置にレーザ光Bを集光する。
【0053】
なお、上述した制御部100の各機能は、CPU(Central Processing Unit)といったプロセッサやFPGA(Field
Programable Gate Array)等によって実現することができる。
【0054】
さらに、制御部100は、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSDD(Solid State Drive)といった記憶装置である記憶部190を有する。この記憶部190には、半導体基板Wのレーザ加工のためにレーザ加工装置1で実行される後述の動作を規定するレーザ加工プログラム191が保存されている。つまり、制御部100は、レーザ加工プログラム191を実行することで、
図4~
図22Cを用いて後述する各制御を実行する。なお、レーザ加工プログラム191は、レーザ加工装置1の外部の記録媒体192によって提供され、制御部100(コンピュータ)は、記録媒体192に記録されたレーザ加工プログラム191を読み出して記憶部190に保存する。かかる記録媒体192としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリや、外部のコンピュータの記憶装置等が挙げられる。
【0055】
図4はレーザ加工が実行済みのレーザ加工基板を生産する方法の一例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、レーザ加工プログラム191に基づく制御部100の制御に従って実行される。ステップS101では、リフトハンド41がリングフレームFrを基板収容カセット21から基板受渡領域Awに取り出し、ステップS102では、基板受渡領域Awの吸着ハンド51がリフトハンド41からチャックステージ3にリングフレームFrを移載する。これによって、リングフレームFrに保持される半導体基板Wが、基板収容カセット21から基板受渡領域Awに取り出されてから、基板受渡領域Awからチャックステージ3に移載される。具体的には、ステップS101では、
図5のリングフレームの取り出しが実行され、ステップS102では、
図6のリングフレームの移載が実行される。
【0056】
図5はリングフレームの取り出しの一例を示すフローチャートであり、
図6はリングフレームの移載の一例を示すフローチャートであり、
図7A~
図7Eは
図5および
図6のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図である。
【0057】
図5のステップS201では、制御部100は、リフトハンド41が空であるか、すなわちリフトハンド41にリングフレームFrが載置されていないかを確認する。リフトハンド41が空であるかの確認は、例えばリフトハンド41に実行させた動作の履歴等に基づき実行することができる。リフトハンド41が空でない場合(ステップS201で「NO」の場合)には、
図5のフローチャートを終了する一方、リフトハンド41が空である場合(ステップS201で「YES」の場合)には、ステップS201に進む。
【0058】
ステップS202では、制御部100は、リフトハンド41の少なくとも一部が基板収容カセット21内に位置するか、換言すれば基板収容カセット21の開口23よりも基板収容カセット21の内側(すなわち、(+Y)側)に位置するかを確認する。リフトハンド41の一部が基板収容カセット21内に位置するかの確認は、例えばリフトハンド41をY方向に駆動するY軸リフトハンドモータ452のエンコーダの出力が示すリフトハンド41の位置に基づき実行することができる。リフトハンド41が基板収容カセット21から(-Y)側に退避している場合(ステップS202で「NO」の場合)には、ステップS203を実行せずにステップS204に進む一方、リフトハンド41の一部が基板収容カセット21内に位置する場合(ステップS202で「YES」の場合)には、ステップS203に進む。ステップS203では、制御部100は、Y軸リフトハンドモータ452によってリフトハンド41を(-Y)側に駆動することで、リフトハンド41を基板収容カセット21から(-Y)側に引き出して、基板収容カセット21の(-Y)側に退避させる。
【0059】
ステップS204では、制御部100はZ軸カセットモータ272によって基板収容カセット21をZ方向に駆動することで、取り出し対象となるリングフレームFrを収容するスロット25を、基板挿入高さ211から所定高さだけ高い位置に位置決めする。この所定高さは、Z方向において隣接するスロット25の間隔より短い。これによって、取り出し対象となるリングフレームFrの底面が、リフトハンド41から所定高さだけ高い位置に調整される。
【0060】
ステップS205では、
図7Aに示すように、制御部100は、Y軸リフトハンドモータ452によってリフトハンド41を(+Y)側に駆動することで、リフトハンド41を基板収容カセット21の内側に挿入する。これによって、リフトハンド41は、取り出し対象となるリングフレームFrに下側から隙間を空けて対向する。
【0061】
ステップS206では、制御部100は、Z軸カセットモータ272によって基板収容カセット21をZ方向に下降させる。これによって、取り出し対象となるリングフレームFrが、リフトハンド41の上に載置されるとともに、スロット25(すなわち、スロット25を規定する一対の支持突起24)に対して上昇する。
【0062】
ステップS207では、制御部100は、Y軸リフトハンドモータ452によってリフトハンド41を(-Y)側に駆動することで、リフトハンド41を基板収容カセット21の外側に設けられた基板受渡領域Awまで引き出す。これによって、
図7Bに示すように、リフトハンド41に載置されたリングフレームFrが基板受渡領域Awに位置する。
【0063】
図6のステップS301では、制御部100は、
図7Cに示すように、X軸吸着ハンドモータ552によって吸着ハンド51のX方向の位置を調整することで、基板受渡領域Awでリフトハンド41に支持されるリングフレームFrに対して、吸着ハンド51を上側から対向させる。この際、制御部100は、Z軸吸着ハンドモータ582によって吸着ハンド51の高さを調整することで、リングフレームFrより高い位置に吸着ハンド51を調整する。したがって、吸着ハンド51は、リングフレームFrに対して間隔を空けて対向する。
【0064】
ステップS302では、制御部100は、リングフレームFrに対向する吸着ハンド51をZ軸駆動伝達部581によって下降させて、吸着ハンド51の底面513をリングフレームFrの上面に当接させる。ステップS303では、制御部100は、吸着ハンド51の底面513に設けられた吸着孔に吸引ポンプ591によって負圧を発生させ、吸着ハンド51は、この負圧によってリングフレームFrを吸着する。こうして、吸着ハンド51によってリングフレームFrが保持される。ステップS304では、制御部100は、Z軸吸着ハンドモータ582によって吸着ハンド51を上昇させる。これによって、吸着ハンド51がリフトハンド41からリングフレームFrを持ち上げる。
【0065】
ステップS305では、制御部100は、
図7Dに示すように、X軸吸着ハンドモータ552によって吸着ハンド51を(+X)側に駆動することで、リングフレームFrの移載先であるチャックステージ3に対して、吸着ハンド51を上側から対向させる。この際、制御部100は、Z軸吸着ハンドモータ582によって吸着ハンド51の高さを調整することで、吸着ハンド51に保持されるリングフレームFrをチャックステージ3より高い位置に調整する。したがって、吸着ハンド51に保持されるリングフレームFrは、チャックステージ3に対して間隔を空けて対向する。
【0066】
ステップS306では、制御部100は、Z軸吸着ハンドモータ582によって吸着ハンド51を下降させることで、吸着ハンド51により保持されるリングフレームFr(およびテープE)をチャックステージ3の吸着プレート31に載置する。ステップS307では、制御部100は、吸引ポンプ591を停止させて、吸着ハンド51によるリングフレームFrの吸着を解除する。
【0067】
ステップS308では、制御部100は、リングフレームFrの移載先がチャックステージ3であるか否かを確認する。例えば後述するステップS104のようにリングフレームFrの移載先がリフトハンド41である場合には、ステップS308で「NO」と判断されて、
図6のフローチャートが終了する。ここでは、リングフレームFrの移載先はチャックステージ3であるため、ステップS308で「YES」と判断されて、ステップS309に進む。
【0068】
ステップS309では、制御部100は、クランパ駆動部691によってクランパ32を駆動することで、チャックステージ3の吸着プレート31に載置されたリングフレームFrを、クランパ32と吸着プレート31との間に挟み込んで、リングフレームFrをクランプする。また、ステップS310では、制御部100は、吸着プレート31の上面311に設けられた吸着孔に吸引ポンプ692によって負圧を発生させ、吸着プレート31は、リングフレームFrに張り付けられたテープEをこの負圧によって吸着する。こうして、チャックステージ3によってリングフレームFrが保持される。ステップS311では、制御部100は、Z軸吸着ハンドモータ582によって吸着ハンド51を上昇させる。これによって、吸着ハンド51がチャックステージ3に保持されたリングフレームFrから上方に退避する。こうして、
図7Eに示すように、基板収容カセット21からチャックステージ3へのリングフレームFrの移載が完了する(
図4のステップS101、S102)。
【0069】
図4のステップS103では、チャックステージ3に保持される半導体基板Wをレーザ光Bによって加工する基板加工が実行されて、半導体基板Wに設けられた複数の分割予定ラインにレーザ光Bが照射される。この基板加工の詳細は後述する。
【0070】
基板加工が完了すると、ステップS104、S105が実行される。ステップS104では、吸着ハンド51がチャックステージ3から基板受渡領域Awのリフトハンド41にリングフレームFrを移載し、ステップS105では、リフトハンド41が基板受渡領域Awから基板収容カセット21にリングフレームFrを収納する。これによって、リングフレームFrに保持される半導体基板Wが、チャックステージ3から基板受渡領域Awに移載されてから、基板受渡領域Awから基板収容カセット21に収納される。具体的には、ステップS104では、
図6のリングフレームの移載が実行され、ステップS105では、
図8のリングフレームの収納が実行されて、上述の
図7A~
図7Eと逆の動作が実行される。ここで、
図8はリングフレームの収納の一例を示すフローチャートである。
【0071】
ステップS104で実行される
図6の動作は、ステップS102で実行される
図6の上述の動作と同様であるので、ここでは、上述の動作との差を中心に説明し、共通する動作については適宜説明を省略する。
図6のステップS301では、制御部100は、X軸吸着ハンドモータ552によって吸着ハンド51のX方向の位置を調整することで、チャックステージ3に載置されるリングフレームFrに対して、吸着ハンド51を上側から対向させる。そして、制御部100は、吸着ハンド51をリングフレームFrまで下降させて(ステップS302)、吸着ハンド51にリングフレームFrを吸着させる(ステップS303)。続いて、制御部100は吸着ハンド51を上昇させる(ステップS304)。これによって、吸着ハンド51がチャックステージ3からリングフレームFrを持ち上げる。
【0072】
ステップS305では、制御部100は、X軸吸着ハンドモータ552によって吸着ハンド51を(-X)側に駆動する。この際、リフトハンド41は、基板受渡領域Awで待機している、これによって、リングフレームFrの移載先である基板受渡領域Awのリフトハンド41に対して、吸着ハンド51が上側から対向する。そして、制御部100は、Z軸吸着ハンドモータ582によって吸着ハンド51を下降させることで、吸着ハンド51により保持されるリングフレームFrをリフトハンド41に載置する(ステップS306)。そして、制御部100は、吸引ポンプ591を停止させて、吸着ハンド51によるリングフレームFrの吸着を解除する(ステップS307)。ステップS308では、制御部100は、リングフレームFrの移載先がチャックステージ3であるか否かを確認する。ここでは、リングフレームFrの移載先がリフトハンド41であってチャックステージ3ではないので、ステップS308で「NO」と判断されて、
図6のフローチャートが終了する。
【0073】
図8のステップ401では、制御部100は、リングフレームFrがリフトハンド41に載置されたかを確認する。リフトハンド41へのリングフレームFrの載置の確認は、例えばリングフレームFrの載置を実行する吸着ハンド51の動作履歴に基づき実行できる。リフトハンド41へのリングフレームFrの載置が確認されると(ステップS401で「YES」)、制御部100は、上述のステップS202と同様にして、リフトハンド41の少なくとも一部が基板収容カセット21内に位置するかを確認する(ステップS402)。リフトハンド41が基板収容カセット21から(-Y)側に退避している場合(ステップS402で「NO」の場合)には、ステップS403を実行せずにステップS404に進む一方、リフトハンド41の一部が基板収容カセット21内に位置する場合(ステップS402で「YES」の場合)には、ステップS403に進む。ステップS403では、制御部100は、Y軸リフトハンドモータ452によってリフトハンド41を(-Y)側に駆動することで、リフトハンド41を基板収容カセット21から(-Y)側に引き出して、基板収容カセット21の(-Y)側に退避させる。
【0074】
ステップS404では、制御部100はZ軸カセットモータ272によって基板収容カセット21をZ方向に駆動することで、リングフレームFrの収納対象となるスロット25(換言すれば、スロット25を規定する一対の支持突起24)を、基板挿入高さ211から所定高さだけ低い位置に位置決めする。これによって、収納対象となるスロット25が、リフトハンド41に支持されるリングフレームFrの底面より所定高さだけ低い位置に調整される。
【0075】
ステップS405では、制御部100は、Y軸リフトハンドモータ452によってリフトハンド41を(+Y)側に駆動することで、リフトハンド41を基板収容カセット21の内側に挿入する。これによって、収納対象となるスロット25を規定する一対の支持突起24は、リフトハンド41に支持されるリングフレームFrに下側から隙間を空けて対向する。
【0076】
ステップS406では、制御部100は、Z軸カセットモータ272によって基板収容カセット21をZ方向に上昇させる。これによって、リングフレームFrが収納対象となるスロット25を規定する一対の支持突起24の上に載置されるとともに、リフトハンド41に対して上昇する。ステップS407では、制御部100は、Y軸リフトハンドモータ452によってリフトハンド41を(-Y)側に駆動することで、リフトハンド41を基板収容カセット21の外側に引き出す。
【0077】
なお、基板収容カセット21に対するリングフレームFrの取り出しあるいは収納を実行する際には、リフトハンド41に対してリングフレームFrを位置合わせするリングフレームアライメントを適宜実行できる。
図9はリングフレームアライメントの一例を示すフローチャートであり、
図10はリングフレームアライメントで実行される動作の一例を模式的に示す平面図である。なお、
図9のフローチャートは、制御部100の制御によって実行される。
【0078】
図10では、吸着ハンド51を透かして吸着ハンド51の下側の部材(アライメント突起413等)を示している。つまり、ここの例では、リフトハンド41は、ベース部411から上方に突出する複数のアライメント突起413を有する。これら複数のアライメント突起413は、リングフレームFrの複数のスリットFsに対応する。そして、アライメント突起413とスリットFsとを用いて、リングフレームアライメントが実行される。
【0079】
このリングフレームアライメントでは、リフトハンド41上のリングフレームFrを吸着ハンド51が吸着する(ステップS501)。そして、リングフレームFrを保持する吸着ハンド51が上昇して、リングフレームFrをリフトハンド41から上側に離間させる(ステップS502)。この際、Z方向においてアライメント突起413の下端と上端との間の高さにリングフレームFrが位置するように、リングフレームFrがリフトハンド41から離間する高さは調整されている。
【0080】
ステップS503では、Z軸スライダ56に内蔵されているXYθフローティング機構561がオンにされる。このXYθフローティング機構561は、吸着ハンド51をフローティング支持するフローティング状態と、吸着ハンド51を固定支持するロック状態とを選択的にとる。ここで、フローティング支持とは、吸着ハンド51がXYθフローティング機構561に対してX方向、Y方向およびθ方向に移動可能な状態で吸着ハンド51を支持すること意味し、固定支持とは、吸着ハンド51がXYθフローティング機構561に対して固定された状態で吸着ハンド51を支持することを意味する。ステップS503でXYθフローティング機構561がオンとなると、XYθフローティング機構561は吸着ハンド51をフローティング支持し、吸着ハンド51はXYθフローティング機構561に対してX方向、Y方向およびθ方向に移動可能となる。
【0081】
ステップS504では、リフトハンド41がY方向に移動して、吸着ハンド51に保持されるリングフレームFrの周縁にリフトハンド41のアライメント突起413を当接させる。この際、アライメント突起413がリングフレームFrの周縁に追従するように吸着ハンド51がXYθフローティング機構561に対して移動する。その結果、
図10のステップS504の欄に示すように、リフトハンド41の各アライメント突起413がリングフレームFrの各スリットFsに係合して、リフトハンド41に対してリングフレームFrが位置決めされる。
【0082】
ステップS505では、XYθフローティング機構561がロックされる。これによって、吸着ハンド51がXYθフローティング機構561に固定支持される。そして、ステップS506では、吸着ハンド51によるリングフレームFrの吸着が解除されて、リングフレームFrがリフトハンド41上に載置される。ステップS507では、XYθフローティング機構561がオフにされて、吸着ハンド51はZ軸スライダ56に固定された状態で、Z軸スライダ56により支持される。こうして、リフトハンド41に対してリングフレームFrを位置決めすることができる(リングフレームアライメント)。
【0083】
続いては、基板加工の詳細について説明する。
図11は基板加工の一例を示すフローチャートであり、
図12は
図11のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す平面図である。
図11のフローチャートは、制御部100の制御によって実行される。
【0084】
図11の基板加工のステップS601では、加工対象である半導体基板Wの上面(裏面)が有する平面を求めるキャリブレーションが実行される。
図13Aはキャリブレーションの一例を示すフローチャートであり、
図13Bは
図13Aのキャリブレーションで実行されるステージ平面特定の一例を示すフローチャートであり、
図13Cは
図13Aのキャリブレーションで実行される基板平面特定の一例を示すフローチャートである。なお、
図13Aのキャリブレーションでは、吸着プレート31あるいは半導体基板Wの撮像が適宜行われる。ここの説明では、撮像部8Bによって撮像が実行されるものとする。ただし、撮像部8Aによって撮像を行っても、以下の動作を同様に実行できる。
【0085】
図13AのキャリブレーションのステップS701では、ステージ平面特定(
図13B)が実行される。
図13Bに示すように、ステージ平面特定では、チャックステージ3の吸着プレート31の上面311に設けられた複数(3個)の撮像点Ps(I)を識別するためのカウント値Iがゼロにリセットされて(ステップS801)、カウント値Iが1だけインクリメントされる(ステップS802)。撮像点Ps(I)は、例えば所定パターンを有するマークである。
【0086】
ステップS803では、制御部100は、XYθ駆動テーブル6によってチャックステージ3の位置を調整することで、撮像点Ps(I)を赤外線カメラ81に対して下側から対向させる。これによって、撮像点Ps(I)が赤外線カメラ81の視野に収まる。ステップS803では、赤外線カメラ81は、この撮像点Ps(I)を撮像して、撮像点Ps(I)を示す画像を取得する。ステップS804では、制御部100は、撮像点Ps(I)が有する所定パターンが当該画像から検知できるかを、パターンマッチング等の画像処理によって確認する。
【0087】
赤外線カメラ81のピントが撮像点Ps(I)からずれており、画像から所定パターンを検知できない場合(ステップS804で「NO」の場合)には、制御部100は、Z軸カメラモータ892によって赤外線カメラ81をZ方向に駆動することで、撮像点Ps(I)に対する赤外線カメラ81のZ方向への距離を変更する(ステップS805)。これによって、赤外線カメラ81のピントがZ方向に変更される。赤外線カメラ81のピントが撮像点Ps(I)に合って、所定パターンが検知されるまで(ステップS804で「YES」)、ステップS803~S805が繰り返される。
【0088】
ステップS806では、制御部100は、撮像点Ps(I)を撮像することで取得した画像から検知された所定パターンに基づき、撮像点Ps(I)の位置(X、Y、Z)を算出する。撮像点Ps(I)のX座標およびY座標は、画像に含まれる所定パターンの位置に基づき算出される。撮像点Ps(I)のZ座標は、所定パターンが検知できた画像を撮像した際の赤外線カメラ81のZ方向への位置に基づき算出される。
【0089】
ステップS807では、カウント値Iが2に到達したか、すなわち2個の撮像点Ps(1)、Ps(2)の位置(X、Y、Z)を取得したかが確認される。カウント値Iが2未満である場合(ステップS807で「NO」の場合)には、ステップS802に戻って、ステップS802~S806が実行される。カウント値Iが2である場合(ステップS807で「YES」の場合)には、ステップS808に進む。
【0090】
ステップS808では、2点の撮像点Ps(1)、Ps(2)を通る直線が水平となるように、θ方向にチャックステージ3を回転させるための回転角θaが算出される。そして、現在の吸着プレート31の回転角(実回転角と回転角θa)との差がゼロでない場合(ステップS809で「NO」の場合)には、チャックステージ3が回転角θaだけ回転されて(ステップS810)、ステップS801に戻る。こうして、ステップS801~S809が実行される。
【0091】
現在の吸着プレート31の回転角(実回転角と回転角θa)との差がゼロである場合(ステップS809で「YES」の場合)には、ステップS811に進む。ステップS811では、制御部100は、ステップS803と同じ要領で、赤外線カメラ81によって撮像点Ps(3)を撮像して、撮像点Ps(3)を示す画像を取得する。そして、ステップS812では、制御部100は、撮像点Ps(3)が有する所定パターンが当該画像から検知できるかを、パターンマッチング等の画像処理によって確認する。
【0092】
画像から所定パターンを検知できない場合(ステップS812で「NO」の場合)には、制御部100は、Z軸カメラモータ892によって赤外線カメラ81をZ方向に駆動することで、撮像点Ps(3)に対する赤外線カメラ81のZ方向への距離を変更する(ステップS813)。そして、所定パターンが検知されるまで(ステップS812で「YES」)、ステップS811~S813が繰り返される。
【0093】
ステップS812で所定パターンを検知できると(YES)、制御部100は、撮像点Ps(3)を撮像することで取得した画像から検知された所定パターンに基づき、撮像点Ps(3)の位置(X、Y、Z)を算出する(ステップS814)。これによって、3個の撮像点Ps(1)、Ps(2)、Ps(3)それぞれの位置(X、Y、Z)が取得される。ステップS815では、これら3個の位置(X、Y、Z)を通る平面が、チャックステージ3の平面、具体的には、吸着プレート31の上面311を表す平面として特定される。
【0094】
図13AのキャリブレーションのステップS702では、基板平面特定(
図13C)が実行される。
図13Cに示すように、基板平面特定では、半導体基板Wが有する複数(3個)の撮像点Pw(I)を識別するためのカウント値Iがゼロにリセットされて(ステップS901)、カウント値Iが1だけインクリメントされる(ステップS902)。撮像点Pw(I)は、例えば所定パターンを有する領域である。
【0095】
具体的には、
図12に示すように、半導体基板Wは互いに直交する分割予定ラインS(Sa、Sb)によって格子状に区分けされている。つまり、半導体基板Wには、互いに平行な複数の分割予定ラインSaと、互いに平行な複数の分割予定ラインSbとが設けられており、分割予定ラインSaと分割予定ラインSbとは互いに直交する。こうして、分割予定ラインSa、Sbを挟んで複数の半導体チップCが格子状に配列されている。これに対して、分割予定ラインSaと分割予定ラインSbとの交差点(換言すれば、四隅に配置された半導体チップCで囲まれた点)を含む領域が撮像点Pw(I)に設定される。なお、上述の通り、半導体基板Wの裏面が上側を向いているため、赤外線カメラ81は半導体基板Wの表面に形成された分割予定ラインSa、Sbや半導体チップCを、半導体基板Wの裏面を介して、赤外線によって撮像する。
【0096】
ステップS903では、制御部100は、XYθ駆動テーブル6によってチャックステージ3の位置を調整することで、撮像点Pw(I)を赤外線カメラ81に対して下側から対向させる。これによって、撮像点Pw(I)が赤外線カメラ81の視野に収まる。ステップS903では、赤外線カメラ81は、この撮像点Pw(I)を撮像して、撮像点Pw(I)を示す画像を取得する。ステップS904では、制御部100は、撮像点Pw(I)が有する所定パターン(例えば、分割予定ラインSaと分割予定ラインSbとが交差するパターン)が当該画像から検知できるかを、パターンマッチング等の画像処理によって確認する。
【0097】
赤外線カメラ81のピントが撮像点Pw(I)からずれており、画像から所定パターンを検知できない場合(ステップS904で「NO」の場合)には、制御部100は、Z軸カメラモータ892によって赤外線カメラ81をZ方向に駆動することで、撮像点Pw(I)に対する赤外線カメラ81のZ方向への距離を変更する(ステップS905)。これによって、赤外線カメラ81のピントがZ方向に変更される。赤外線カメラ81のピントが撮像点Pw(I)に合って、所定パターンが検知されるまで(ステップS904で「YES」)、ステップS903~S905が繰り返される。
【0098】
なお、先に実行されたステージ平面特定(
図13B)によって、吸着プレート31の上面311を表す平面(ステージ平面)は特定されている。したがって、吸着プレート31に載置される半導体基板Wが有する撮像点Pw(I)が存在する高さの範囲は、このステージ平面に基づき推測できる。したがって、ステップS805では、ステージ平面から推測される撮像点Pw(I)の存在範囲に赤外線カメラ81のピントが収まるように、赤外線カメラ81の高さが変更される。
【0099】
ステップS906では、制御部100は、撮像点Pw(I)を撮像することで取得した画像から検知された所定パターンに基づき、撮像点Pw(I)の位置(X、Y、Z)を算出する。撮像点Pw(I)のX座標およびY座標は、画像に含まれる所定パターンの位置に基づき算出される。撮像点Pw(I)のZ座標は、所定パターンが検知できた画像を撮像した際の赤外線カメラ81のZ方向への位置に基づき算出される。
【0100】
ステップS907では、カウント値Iが2に到達したか、すなわち2個の撮像点Pw(1)、Pw(2)の位置(X、Y、Z)を取得したかが確認される。カウント値Iが2未満である場合(ステップS907で「NO」の場合)には、ステップS902に戻って、ステップS902~S906が実行される。カウント値Iが2である場合(ステップS907で「YES」の場合)には、ステップS908に進む。
【0101】
ステップS908では、分割予定ラインSaがX方向(加工方向)に平行となるように、θ方向にチャックステージ3を回転させるための回転角θbが、2点の撮像点Pw(1)、Pw(2)に基づき算出される。そして、現在の吸着プレート31の回転角(実回転角と回転角θb)との差がゼロでない場合(ステップS909で「NO」の場合)には、チャックステージ3が回転角θbだけ回転されて(ステップS910)、ステップS901に戻る。こうして、ステップS901~S909が実行される。
【0102】
現在の吸着プレート31の回転角(実回転角と回転角θb)との差がゼロである場合(ステップS909で「YES」の場合)には、ステップS911に進む。ステップS911では、制御部100は、ステップS903と同じ要領で、赤外線カメラ81によって撮像点Pw(3)を撮像して、撮像点Pw(3)を示す画像を取得する。そして、ステップS912では、制御部100は、撮像点Pw(3)が有する所定パターンが当該画像から検知できるかを、パターンマッチング等の画像処理によって確認する。
【0103】
画像から所定パターンを検知できない場合(ステップS912で「NO」の場合)には、制御部100は、Z軸カメラモータ892によって赤外線カメラ81をZ方向に駆動することで、撮像点Pw(3)に対する赤外線カメラ81のZ方向への距離を変更する(ステップS913)。そして、所定パターンが検知されるまで(ステップS912で「YES」)、ステップS911~S913が繰り返される。この際、赤外線カメラ81の高さを変更する範囲は、上述と同様に、ステージ平面に基づき設定される。
【0104】
ステップS912で所定パターンを検知できると(YES)、制御部100は、撮像点Pw(3)を撮像することで取得した画像から検知された所定パターンに基づき、撮像点Pw(3)の位置(X、Y、Z)を算出する(ステップS914)。これによって、3個の撮像点Pw(1)、Pw(2)、Pw(3)それぞれの位置(X、Y、Z)が取得される。ステップS915では、これら3個の位置(X、Y、Z)を通る平面が、半導体基板Wを表す平面として特定される。
【0105】
図11に戻って説明を続ける。上記のキャリブレーションの実行により、分割予定ラインSaがX方向に平行となるように半導体基板Wが位置決めされて、半導体基板Wを表す平面が特定されると(ステップS601)、各分割予定ラインSaへのライン加工処理(ステップS602)が実行される。つまり、対象の分割予定ラインSaに沿ってレーザ照射位置LbをX方向に移動させつつレーザ照射位置Lbにレーザ光Bを照射するライン加工処理を、複数の分割予定ラインSaのうちで対象の分割予定ラインSaを変更しつつ実行することで、複数の分割予定ラインSaのそれぞれにレーザ光Bによる加工が実行される。特に
図12のステップS602の欄に示すように、X方向の(+X)側にレーザ照射位置Lbを移動させるライン加工処理と、X方向の(-X)側にレーザ照射位置Lbを移動させるライン加工処理とが交互に実行される。
【0106】
この際、分割予定ラインSaに対するレーザ光Bの(+X)側への移動は、半導体基板Wを保持するチャックステージ3をX軸駆動部65によって(-X)側に駆動することで実行され、分割予定ラインSaに対するレーザ光Bの(-X)側への移動は、半導体基板Wを保持するチャックステージ3をX軸駆動部65によって(+X)側に駆動することで実行される。また、ライン加工処理の対象の分割予定ラインSaの変更は、半導体基板Wを保持するチャックステージ3をY軸駆動部63によってY方向に駆動することで実行される。また、ステップS601のキャリブレーションで特定された半導体基板Wを表す平面に基づき、Z軸ヘッドモータ792によって加工ヘッド71のZ方向の位置を調整する制御が制御部100によって実行される。これによって、レーザ光Bの集光位置が半導体基板Wの内部に調整されて、分割予定ラインSaに沿って半導体基板Wの内部に改質層が形成される。
【0107】
こうして、複数の分割予定ラインSaのそれぞれへのライン加工処理が完了すると(ステップS602)、半導体基板Wを保持するチャックステージ3がθ軸テーブルモータ66によってθ方向に90度だけ回転される。これによって、レーザ加工が実行された複数の分割予定ラインSaがX方向に平行に位置決めされた状態(
図12の「S602_e」の欄)から、複数の分割予定ラインSbがX方向に平行に位置決めされた状態(
図12の「S603」の欄)へと切り換わる。
【0108】
ステップS604では、上記のステップS601と同様にして、キャリブレーションが実行される。また、ステップS605では、上記のステップS602と同様にして、複数の分割予定ラインSbのそれぞれに対してライン加工処理が実行される。
【0109】
図14は各分割予定ラインへのライン加工処理の基本工程を示すフローチャートであり、
図15Aは
図14のフローチャートに従って実行される動作の第1例を模式的に示す図である。
図15Aでは、半導体基板Wに対して相対的に移動するレーザ照射位置Lbの軌跡が点線で示されるとともに、分割予定ラインS1、S2、S3に沿って分割予定ラインS1、S2、S3の両外側の間でX方向に平行に延設された仮想直線Sv1、Sv2、Sv3が一点鎖線で示される。なお、レーザ照射位置Lbの軌跡と仮想直線Sv1、Sv2、Sv3とが重複する部分では、レーザ照射位置Lbの軌跡を示す点線が優先して示される。
【0110】
図15Aに示す例では、X方向において半導体基板Wの(-X)側の位置Pb1にレーザ照射位置Lbが停止している状態から、
図14のフローチャートが開始される。この位置Pb1は、分割予定ラインS1に沿った仮想直線Sv1上に設けられ、換言すれば、X方向から分割予定ラインS1に対向する位置である。ただし、
図14のフローチャートを開始する際のレーザ照射位置Lbの位置は、ここの例に限られず、適宜変更できる。
【0111】
ステップS1001では、位置Pb1に停止するレーザ照射位置Lbが、X方向の(+X)側に向けて加速を開始して、X方向に平行に移動する。これによって、レーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1に沿って(+X)側に移動する。そして、レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(+X)側へ等速移動する(ステップS1002)。
【0112】
さらに、レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が点灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が開始される(ステップS1003)。また、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が消灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が終了する(ステップS1004)。こうして、ステップS1003~S1004までの期間では、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS1に沿って(+X)側に移動しつつ、レーザ照射位置Lbにレーザ光Bが照射されて、分割予定ラインS1に対してレーザ加工が実行される(ライン加工処理)。
【0113】
レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS1を(+X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(+X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(+X)側の位置Pb2にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb2は、Y方向において仮想直線Sv1に隣接する仮想直線Sv2上に設けられ、換言すれば、X方向から分割予定ラインS2に対向する位置である。つまり、ステップS1005~S1006では、レーザ照射位置LbはX方向への減速と並行して、仮想直線Sv1から仮想直線Sv2までY方向へ移動する。
【0114】
ところで、撮像部8A、8Bの撮像範囲Ri(
図1)と加工ヘッド71のレーザ照射位置Lbとの位置関係は固定されている。そのため、ステップS1001~S1006において、レーザ照射位置Lbが半導体基板Wに対して相対的に移動するのに伴って、撮像範囲Riも半導体基板Wに対して相対的に移動する。そして、レーザ照射位置Lbが位置Pb2に停止した状態では、撮像部8Bの撮像範囲Riが撮像点Pw(S2)を少なくとも含む位置で停止する。この撮像点Pw(S2)は、半導体基板Wにおいて分割予定ラインS2とこれに直交する分割予定ラインSとが交差する交差点である。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Bに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S2)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS2の位置を示す画像を取得できる。
【0115】
ステップS1007では、X方向に平行な複数の分割予定ラインSに対してレーザ加工を完了したか否かが確認される。これらの分割予定ラインSのうち、未加工の分割予定ラインSがある場合(ステップS1007で「NO」の場合)には、ステップS1001に戻る。
【0116】
図15Aの例では、ステップS1001において、位置Pb2に停止するレーザ照射位置Lbが、X方向の(-X)側に向けて加速を開始して、X方向に平行に移動する。これによって、レーザ照射位置Lbが仮想直線Sv2に沿って(-X)側に移動する。そして、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(-X)側へ等速移動する(ステップS1002)。
【0117】
ここで、X方向において、分割予定ラインS1を(+X)側に通過したレーザ照射位置Lbが減速を開始する位置(換言すれば、(+X)側への等速移動を終了するX座標)と、分割予定ラインSに向かって(-X)側に加速するレーザ照射位置Lbが加速を終了する位置(換言すれば、(-X)側への等速移動を開始するX座標)とは、一致する。つまり、n番目にライン加工処理が実行される分割予定ラインSnを通過したレーザ照射位置Lbが等速移動を終了するとともに減速を開始するX座標と、n+1番目にライン加工処理が実行される分割予定ラインSn+1に向かうレーザ照射位置Lbが加速を終了して等速移動を開始するX方向とは一致する。
【0118】
さらに、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が点灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が開始される(ステップS1003)。また、レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が消灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が終了する(ステップS1004)。こうして、ステップS1003~S1004までの期間では、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2に沿って(-X)側に移動しつつ、レーザ照射位置Lbにレーザ光Bが照射されて、分割予定ラインS2に対してレーザ加工が実行される(ライン加工処理)。
【0119】
レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2を(-X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(-X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(-X)側の位置Pb3にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb3は、Y方向において仮想直線Sv2に隣接する仮想直線Sv3上に設けられ、換言すれば、X方向から分割予定ラインS3に対向する位置である。つまり、ステップS1005~S1006では、レーザ照射位置LbはX方向への減速と並行して、仮想直線Sv2から仮想直線Sv3までY方向へ移動する。
【0120】
また、レーザ照射位置Lbが位置Pb3に停止した状態では、撮像部8Aの撮像範囲Riが撮像点Pw(S3)を少なくとも含む位置で停止する。この撮像点Pw(S3)は、半導体基板Wにおいて分割予定ラインS3とこれに直交する分割予定ラインSとが交差する交差点である。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Aに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S3)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS3の位置を示す画像を取得できる。
【0121】
そして、X方向に平行な複数の分割予定ラインS(S1、S2、S3、…)に対してレーザ加工を完了したと確認されるまで(ステップS1007で「YES」)、ステップS1001~S1007が繰り返される。
【0122】
続いては、
図15Aの「X方向への速度変化」および「Y方向への速度変化」を参照しつつ、レーザ照射位置Lbの速度変化について説明する。ここで、速度Vxは、半導体基板Wに対してレーザ照射位置LbがX方向に移動する速度を示し、速度Vyは、半導体基板Wに対してレーザ照射位置LbがY方向に移動する速度を示す。また、加工速度Vxdは、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインSに沿ってX方向に等速移動する速度(すなわち、速度Vx)を示し、(+X)側への移動あるいは(-X)側への移動によらずに絶対値で表される。
【0123】
分割予定ラインS1に沿ってレーザ光Bを(+X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts1(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。また、分割予定ラインS2に沿ってレーザ光Bを(-X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts2(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。
【0124】
また、ライン加工期間Ts1からライン加工期間Ts2に切り換わる切換期間Tc(ステップS1005、S1006、S1001)では、次の動作が実行される。つまり、X軸駆動部65(加工軸駆動部)は、X方向(加工方向)において、分割予定ラインS1(第1の加工ライン)を(+X)側(第1の側)に通過したレーザ照射位置Lbを(+X)側に向けて減速させて停止させてから(ステップS1005)、(-X)側に向けて加速することで(ステップS1001)、レーザ照射位置Lbを分割予定ラインS2(第2の加工ライン)へ到達させる反転駆動を実行する。この反転駆動と並行して、Y軸駆動部63(送り軸駆動部)は、分割予定ラインS1に沿って分割予定ラインS1の外側までX方向に延設された仮想直線Sv1(第1の仮想直線)から、分割予定ラインS2(第2の加工ライン)に沿って分割予定ラインS2の外側までX方向に延設された仮想直線Sv2(第2の仮想直線)まで、レーザ照射位置LbをY方向(送り方向)へ移動させる。
【0125】
特に、切換期間Tcは、X方向にレーザ照射位置Lbを減速させる減速期間Td(ステップS1005)と、X方向にレーザ照射位置Lbを加速させる加速期間Ta(ステップS1001)とを含み、レーザ照射位置LbのY方向への移動は、減速期間Tdおよび加速期間Taのうち、減速期間Tdの間に実行される。具体的には、減速期間Tdが開始した後にレーザ照射位置LbのY方向への移動が開始し、減速期間Tdが終了する前にレーザ照射位置LbのY方向への移動が終了する。さらに言えば、加速期間Taにおいてレーザ照射位置LbはY方向に移動しない。
【0126】
ここで、減速期間Tdの開始時点は、X方向へのレーザ照射位置Lbの減速(換言すれば、速度Vxの絶対値の加工速度Vxdからの減少)が開始した時点を示し、減速期間Tdの終了時点は、X方向へのレーザ照射位置Lbの速度(換言すれば、速度Vx)がゼロになった時点を示す。加速期間Taの開始時点は、X方向へのレーザ照射位置Lbの加速(換言すれば、速度Vxの絶対値のゼロからの増加)が開始した時点を示し、加速期間Taの終了時点は、X方向へのレーザ照射位置Lbの加速が終了した時点(換言すれば、速度Vxの絶対値が加工速度Vxdになった時点)を示す。
【0127】
また、加速期間Taから減速期間Tdへ移行する途中に設けられた停止期間Ttでは、レーザ照射位置LbのX方向への速度VxおよびY方向への速度Vyの両方がゼロとなり、レーザ照射位置Lbは位置Pb2において半導体基板Wに対して停止している。この停止期間Ttでは、撮像部8A、8Bの撮像範囲Riも半導体基板Wに対して停止しており、特に撮像部8Bの撮像範囲Riは、半導体基板Wの(+X)側に位置するレーザ照射位置Lbの(-X)側に位置して、半導体基板Wに重複する。そこで、停止期間Ttにおいては、撮像部8Bの赤外線カメラ81が半導体基板Wのうち撮像範囲Riに重複する部分を撮像する(ステップS1006)。
【0128】
図15Bは
図14のフローチャートに従って実行される動作の第2例を模式的に示す図である。
図15Bでの表記は
図15Aのそれと同様である。
図15Bにおいても、
図15Aと同様に
図14のフローチャートに従って、分割予定ラインS1、S2、S3に対してレーザ加工処理が順番に実行される。ただし、レーザ加工処理の対象となる分割予定ラインSを変更する切換期間Tcでの動作が
図15Bと
図15Aとで異なる。そこで、
図15Aとの差を中心に説明し、共通する動作については相当符号を付して適宜説明を省略する。
【0129】
分割予定ラインS1へのレーザ加工の終了に伴って、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS1を(+X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(+X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(+X)側の位置Pb2にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb2は、仮想直線Sv1上に設けられる。また、レーザ照射位置Lbが位置Pb2に停止した状態では、撮像部8Bの撮像範囲Riが撮像点Pw(S2)を少なくとも含む位置で停止する。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Bに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S2)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS2の位置を示す画像を取得できる。
【0130】
続いて、位置Pb2に停止するレーザ照射位置Lbが、X方向の(-X)側に向けて加速を開始する(ステップS1001)。そして、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(-X)側へ等速移動する(ステップS1002)。また、レーザ照射位置Lbが加速を開始してから加工速度Vxdでの等速移動を開始するまでの期間において、レーザ照射位置Lbは、仮想直線Sv1から仮想直線Sv2へY方向に移動する。つまり、ステップS1001~S1002では、レーザ照射位置LbはX方向への加速と並行して、仮想直線Sv1から仮想直線Sv2までY方向へ移動する。これによって、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2に到達して、分割予定ラインS2へのライン加工を開始することができる。
【0131】
分割予定ラインS2へのレーザ加工の終了に伴って、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2を(-X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(-X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(-X)側の位置Pb3にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb3は、仮想直線Sv2上に設けられる。また、レーザ照射位置Lbが位置Pb3に停止した状態では、撮像部8Aの撮像範囲Riが撮像点Pw(S3)を少なくとも含む位置で停止する。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Aに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S3)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS3の位置を示す画像を取得できる。
【0132】
続いては、
図15Bの「X方向への速度変化」および「Y方向への速度変化」を参照しつつ、レーザ照射位置Lbの速度変化について説明する。分割予定ラインS1に沿ってレーザ光Bを(+X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts1(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。また、分割予定ラインS2に沿ってレーザ光Bを(-X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts2(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。
【0133】
また、ライン加工期間Ts1からライン加工期間Ts2に切り換わる切換期間Tc(ステップS1005、S1006、S1001)では、上述と同様にX方向において反転駆動を行うのと並行して、仮想直線Sv1から仮想直線Sv2までレーザ照射位置LbをY方向(送り方向)へ移動させる。特に、切換期間Tcに含まれる減速期間Tdおよび加速期間Taのうち、レーザ照射位置LbのY方向への移動は、加速期間Taの間に実行される。具体的には、加速期間Taが開始した後にレーザ照射位置LbのY方向への移動が開始し、加速期間Taが終了する前にレーザ照射位置LbのY方向への移動が終了する。さらに言えば、減速期間Tdにおいてレーザ照射位置LbはY方向に移動しない。
【0134】
また、加速期間Taから減速期間Tdへ移行する途中に設けられた停止期間Ttでは、レーザ照射位置LbのX方向への速度VxおよびY方向への速度Vyの両方がゼロとなり、レーザ照射位置Lbは位置Pb2において半導体基板Wに対して停止している。この停止期間Ttでは、撮像部8A、8Bの撮像範囲Riも半導体基板Wに対して停止しており、特に撮像部8Bの撮像範囲Riは、半導体基板Wの(+X)側に位置するレーザ照射位置Lbの(-X)側に位置して、半導体基板Wに重複する。そこで、停止期間Ttにおいては、撮像部8Bの赤外線カメラ81が半導体基板Wのうち撮像範囲Riに重複する部分を撮像する(ステップS1006)。
【0135】
図15Cは
図14のフローチャートに従って実行される動作の第3例を模式的に示す図である。
図15Cでの表記は
図15Aのそれと同様である。
図15Cにおいても、
図15Aと同様に
図14のフローチャートに従って、分割予定ラインS1、S2、S3に対してレーザ加工処理が順番に実行される。ただし、レーザ加工処理の対象となる分割予定ラインSを変更する切換期間Tcでの動作が
図15Cと
図15Aとで異なる。そこで、
図15Aとの差を中心に説明し、共通する動作については相当符号を付して適宜説明を省略する。
【0136】
分割予定ラインS1へのレーザ加工の終了に伴って、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS1を(+X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(+X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(+X)側の位置Pb2にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb2は、Y方向において、仮想直線Sv1と仮想直線Sv2との間に設けられる。つまり、ステップS1005~S1006では、レーザ照射位置LbはX方向への減速と並行して、仮想直線Sv1から位置Pb2までY方向へ移動する。また、レーザ照射位置Lbが位置Pb2に停止した状態では、撮像部8Bの撮像範囲Riが撮像点Pw(S2)を少なくとも含む位置で停止する。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Bに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S2)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS2の位置を示す画像を取得できる。
【0137】
続いて、位置Pb2に停止するレーザ照射位置Lbが、X方向の(-X)側に向けて加速を開始する(ステップS1001)。そして、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(-X)側へ等速移動する(ステップS1002)。また、レーザ照射位置Lbが加速を開始してから加工速度Vxdでの等速移動を開始するまでの期間において、レーザ照射位置Lbは、位置Pb2から仮想直線Sv2へY方向に移動する。つまり、ステップS1001~S1002では、レーザ照射位置LbはX方向への加速と並行して、位置Pb2から仮想直線Sv2までY方向へ移動する。これによって、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2に到達して、分割予定ラインS2へのライン加工を開始することができる。
【0138】
分割予定ラインS2へのレーザ加工の終了に伴って、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2を(-X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(-X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(-X)側の位置Pb3にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb3は、Y方向において仮想直線Sv2と仮想直線Sv3との間に設けられる。つまり、ステップS1005~S1006では、レーザ照射位置LbはX方向への減速と並行して、仮想直線Sv2から位置Pb3までY方向へ移動する。また、レーザ照射位置Lbが位置Pb3に停止した状態では、撮像部8Aの撮像範囲Riが撮像点Pw(S3)を少なくとも含む位置で停止する。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Aに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S3)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS3の位置を示す画像を取得できる。
【0139】
続いては、
図15Cの「X方向への速度変化」および「Y方向への速度変化」を参照しつつ、レーザ照射位置Lbの速度変化について説明する。分割予定ラインS1に沿ってレーザ光Bを(+X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts1(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。また、分割予定ラインS2に沿ってレーザ光Bを(-X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts2(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。
【0140】
また、ライン加工期間Ts1からライン加工期間Ts2に切り換わる切換期間Tc(ステップS1005、S1006、S1001)では、上述と同様にX方向において反転駆動を行うのと並行して、仮想直線Sv1から仮想直線Sv2までレーザ照射位置LbをY方向(送り方向)へ移動させる。特に、このレーザ照射位置Lbの移動は位置Pb2を経由して実行される。つまり、切換期間Tcに含まれる減速期間Tdおよび加速期間Taのうち、減速期間Tdにおいてレーザ照射位置Lbは仮想直線Sv1から位置Pb2までY方向に移動し、加速期間Taにおいてレーザ照射位置Lbは位置Pb2から仮想直線Sv2までY方向に移動する。具体的には、減速期間Tdが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1から位置Pb2への移動を開始し、減速期間Tdが終了するのと同時にレーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達する。また、加速期間Taが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが位置Pb2から仮想直線Sv2への移動を開始し、加速期間Taが終了するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv2に到達する。
【0141】
また、加速期間Taから減速期間Tdへ移行する途中に設けられた停止期間Ttでは、レーザ照射位置LbのX方向への速度VxおよびY方向への速度Vyの両方がゼロとなり、レーザ照射位置Lbは位置Pb2において半導体基板Wに対して停止している。この停止期間Ttでは、撮像部8A、8Bの撮像範囲Riも半導体基板Wに対して停止しており、特に撮像部8Bの撮像範囲Riは、半導体基板Wの(+X)側に位置するレーザ照射位置Lbの(-X)側に位置して、半導体基板Wに重複する。そこで、停止期間Ttにおいては、撮像部8Bの赤外線カメラ81が半導体基板Wのうち撮像範囲Riに重複する部分を撮像する(ステップS1006)。
【0142】
なお、切換期間Tcにおいて、仮想直線Sv1から位置Pb2までY方向に移動させてから、位置Pb2から仮想直線Sv2までY方向に移動させる具体的な態様は、
図15Cの例に限られず、例えば
図15D、
図15Eおよび
図15Fに示す態様でこの移動を実行してもよい。
【0143】
図15Dは
図14のフローチャートに従って実行される動作の第4例を模式的に示す図であり、
図15Eは
図14のフローチャートに従って実行される動作の第5例を模式的に示す図であり、
図15Fは
図14のフローチャートに従って実行される動作の第6例を模式的に示す図である。
図15D~
図15Fでの表記は
図15Cのそれと同様である。
図15D~
図15Fと
図15Cとの差は、切換期間Tcにおけるレーザ照射位置Lbの移動態様である。そこで、
図15Cとの差を中心に説明し、共通する動作については相当符号を付して適宜説明を省略する。
【0144】
図15Dに示す第4例では、減速期間Tdが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1から位置Pb2へのY方向への移動を開始し、減速期間Tdが終了するより前に、Y方向においてレーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達して当該位置Pb2で停止する(すなわち、速度Vyがゼロ)。ただし、Y方向においてレーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達した後、減速期間Tdは継続しており、レーザ照射位置LbはX方向への移動を継続する。また、加速期間Taが開始した後にレーザ照射位置Lbが位置Pb2から仮想直線Sv2へのY方向への移動を開始し、加速期間Taが終了するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv2に到達する。つまり、減速期間Tdの途中から加速期間Taの途中までの期間ΔTyにおいて、レーザ照射位置LbはY方向において停止する(すなわち、速度Vyがゼロ)。
【0145】
図15Eに示す第5例では、減速期間Tdが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1から位置Pb2へのY方向への移動を開始し、減速期間Tdが終了するより前に、Y方向においてレーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達して当該位置Pb2で停止する(すなわち、速度Vyがゼロ)。ただし、Y方向においてレーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達した後、減速期間Tdは継続しており、レーザ照射位置LbはX方向への移動を継続する。また、加速期間Taが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが位置Pb2から仮想直線Sv2へのY方向への移動を開始し、加速期間Taが終了するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv2に到達する。つまり、減速期間Tdの途中から加速期間Taの開始までの期間ΔTyにおいて、レーザ照射位置LbはY方向において停止する(すなわち、速度Vyがゼロ)。
【0146】
図15Fに示す第5例では、減速期間Tdが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1から位置Pb2へのY方向への移動を開始する。ただし、減速期間Tdの終了時点では、Y方向においてレーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達しない。なお、減速期間Tdの終了時点で、X方向においてはレーザ照射位置Lbの位置(すなわち、X座標)と位置Pb2の位置(すなわち、X座標)とは一致している。したがって、レーザ照射位置Lbは、減速期間Tdの終了後も位置Pb2に向けてY方向へ移動を継続する。また、減速期間Tdの終了からレーザ照射位置Lbが位置Pb2に向かってY方向に移動する間は、レーザ照射位置LbはX方向において停止している(すなわち、速度Vxがゼロ)。そして、レーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達すると同時に、加速期間Taが開始されるとともに、レーザ照射位置Lbが位置Pb2から仮想直線Sv2へのY方向への移動を開始する。また、加速期間Taが終了すると同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv2に到達する。
【0147】
図15Gは
図14のフローチャートに従って実行される動作の第7例を模式的に示す図である。
図15Gでの表記は
図15Aのそれと同様である。
図15Gにおいても、
図15Aと同様に
図14のフローチャートに従って、分割予定ラインS1、S2、S3に対してレーザ加工処理が順番に実行される。ただし、レーザ加工処理の対象となる分割予定ラインSを変更する切換期間Tcでの動作が
図15Gと
図15Aとで異なる。そこで、
図15Aとの差を中心に説明し、共通する動作については相当符号を付して適宜説明を省略する。
【0148】
分割予定ラインS1へのレーザ加工の終了に伴って、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS1を(+X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(+X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(+X)側の位置Pb2にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb2は、Y方向において、仮想直線Sv1と仮想直線Sv2との間の区間の外側(仮想直線Sv2に対して仮想直線Sv1の逆側)に設けられる。つまり、ステップS1005~S1006では、レーザ照射位置LbはX方向への減速と並行して、仮想直線Sv1から仮想直線Sv2を超えて位置Pb2までY方向へ移動する。また、レーザ照射位置Lbが位置Pb2に停止した状態では、撮像部8Bの撮像範囲Riが撮像点Pw(S3)を少なくとも含む位置で停止する。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Bに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S3)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS3の位置を示す画像を取得できる。
【0149】
続いて、位置Pb2に停止するレーザ照射位置Lbが、X方向の(-X)側に向けて加速を開始する(ステップS1001)。そして、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(-X)側へ等速移動する(ステップS1002)。また、レーザ照射位置Lbが加速を開始してから加工速度Vxdでの等速移動を開始するまでの期間において、レーザ照射位置Lbは、位置Pb2から仮想直線Sv2までY方向に移動する。つまり、ステップS1001~S1002では、レーザ照射位置LbはX方向への加速と並行して、位置Pb2から仮想直線Sv2までY方向へ移動する。これによって、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2に到達して、分割予定ラインS2へのライン加工を開始することができる。
【0150】
分割予定ラインS2へのレーザ加工の終了に伴って、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2を(-X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(-X)側に向けて減速を開始し(ステップS1005)、X方向において半導体基板Wの(-X)側の位置Pb3にレーザ照射位置Lbが停止する(ステップS1006)。この位置Pb3は、Y方向において、仮想直線Sv2と仮想直線Sv3との間の区間の外側(仮想直線Sv3に対して仮想直線Sv2の逆側)に設けられる。つまり、ステップS1005~S1006では、レーザ照射位置LbはX方向への減速と並行して、仮想直線Sv2から仮想直線Sv3を超えて位置Pb2までY方向へ移動する。また、レーザ照射位置Lbが位置Pb3に停止した状態では、撮像部8Aの撮像範囲Riが撮像点Pw(S4)を少なくとも含む位置で停止する。そこで、ステップS1006では、制御部100は、撮像部8Aに撮像範囲Riを撮像させて、撮像点Pw(S4)を含む画像を取得する。これによって、制御部100は、未加工の分割予定ラインS4の位置を示す画像を取得できる。
【0151】
続いては、
図15Gの「X方向への速度変化」および「Y方向への速度変化」を参照しつつ、レーザ照射位置Lbの速度変化について説明する。分割予定ラインS1に沿ってレーザ光Bを(+X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts1(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。また、分割予定ラインS2に沿ってレーザ光Bを(-X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts2(ステップS1002~S1004)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。
【0152】
また、ライン加工期間Ts1からライン加工期間Ts2に切り換わる切換期間Tc(ステップS1005、S1006、S1001)では、上述と同様にX方向において反転駆動を行うのと並行して、仮想直線Sv1から仮想直線Sv2までレーザ照射位置LbをY方向(送り方向)へ移動させる。特に、このレーザ照射位置Lbの移動は、Y方向において仮想直線Sv1と仮想直線Sv2との間の区間の外側に設けられた位置Pb2を経由して実行される。つまり、切換期間Tcに含まれる減速期間Tdおよび加速期間Taのうち、減速期間Tdにおいてレーザ照射位置Lbは仮想直線Sv1から仮想直線Sv2を超えて位置Pb2までY方向に移動し、加速期間Taにおいてレーザ照射位置Lbは位置Pb2から仮想直線Sv2までY方向に移動する。具体的には、減速期間Tdが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1から位置Pb2への移動を開始し、減速期間Tdが終了するのと同時にレーザ照射位置Lbが位置Pb2に到達する。また、加速期間Taが開始するのと同時にレーザ照射位置Lbが位置Pb2から仮想直線Sv2への移動を開始し、加速期間Taが終了するのと同時にレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv2に到達する。
【0153】
また、加速期間Taから減速期間Tdへ移行する途中に設けられた停止期間Ttでは、レーザ照射位置LbのX方向への速度VxおよびY方向への速度Vyの両方がゼロとなり、レーザ照射位置Lbは位置Pb2において半導体基板Wに対して停止している。この停止期間Ttでは、撮像部8A、8Bの撮像範囲Riも半導体基板Wに対して停止しており、特に撮像部8Bの撮像範囲Riは、半導体基板Wの(+X)側に位置するレーザ照射位置Lbの(-X)側に位置して、半導体基板Wに重複する。そこで、停止期間Ttにおいては、撮像部8Bの赤外線カメラ81が半導体基板Wのうち撮像範囲Riに重複する部分を撮像する(ステップS1006)。
【0154】
ところで、上記の例では、位置Pb2は、Y方向において仮想直線Sv2に対して仮想直線Sv1の逆側に設けられている。しかしながら、Y方向において仮想直線Sv1に対して仮想直線Sv2の逆側に位置Pb2を設けてもよい。この場合、減速期間Tdにおいて、レーザ照射位置Lbは、仮想直線Sv1から位置Pb2にY方向へ移動し、加速期間Taにおいて、レーザ照射位置Lbは位置Pb2から仮想直線Sv1を超えて仮想直線Sv2にY方向へ移動する。位置Pb3に対しても同様の変更が可能である。
【0155】
図16は各分割予定ラインへのライン加工処理の第1応用例を示すフローチャートであり、
図17は
図16のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図である。
図17での表記は
図15A~
図15Gの表記と同様である。
図16の例と
図14の例とは、ライン加工処理の実行中に半導体基板Wを撮像するステップS1008の有無において異なり、他のステップS1001~S1007において共通する。したがって、
図16の例においては、
図15A~
図15Gに示す各動作(第1例~第7例)のいずれかが実行される。なお、
図17では、切換期間Tcにおけるレーザ照射位置Lbの軌跡を示していないが、
図15A~
図15Gのいずれかに示す軌跡をレーザ照射位置Lbが移動することができる。
【0156】
図16のステップS1008は次のように実行される。つまり、分割予定ラインS1に沿ったレーザ照射位置Lbの移動中に半導体基板Wが撮像される(ステップS1008)。具体的には、(+X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(+X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Aの撮像範囲Ri)が撮像される。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の撮像点Pw(S11)を含む画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS1のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。
【0157】
つまり、ステップS1003、S1108、S1104の実行期間では、分割予定ラインS1に対してライン加工処理が実行されるのと並行して、当該ライン加工処理の対象である分割予定ラインS1のうちの未加工部分の画像が撮像される。
【0158】
また、分割予定ラインS2に沿ったレーザ照射位置Lbの移動中に半導体基板Wが撮像される(ステップS1008)。具体的には、(-X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(-X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Bの撮像範囲Ri)が撮像される。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の撮像点Pw(S21)を含む画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS2のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。
【0159】
つまり、ステップS1003、S1108、S1104の実行期間では、分割予定ラインS2に対してライン加工処理が実行されるのと並行して、当該ライン加工処理の対象である分割予定ラインS2のうちの未加工部分の画像が撮像される。
【0160】
さらに、分割予定ラインS3に沿ったレーザ照射位置Lbの移動中に半導体基板Wが撮像される(ステップS1008)。具体的には、(+X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(+X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Aの撮像範囲Ri)が撮像される。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の撮像点Pw(S31)を含む画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS3のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。
【0161】
つまり、ステップS1003、S1108、S1104の実行期間では、分割予定ラインS3に対してライン加工処理が実行されるのと並行して、当該ライン加工処理の対象である分割予定ラインS3のうちの未加工部分の画像が撮像される。
【0162】
そして、X方向に平行な複数の分割予定ラインS(S1、S2、S3、…)に対してレーザ加工を完了したと確認されるまで(ステップS1007で「YES」)、ステップS1001~S1007が繰り返される。
【0163】
図18は各分割予定ラインへのライン加工処理の第2応用例を示すフローチャートであり、
図19Aは
図18のフローチャートに従って実行される動作の第1例を模式的に示す図である。
図19Aでは、半導体基板Wに対して相対的に移動するレーザ照射位置Lbの軌跡が点線で示されるとともに、分割予定ラインS1、S2、S3に沿って分割予定ラインS1、S2、S3の両外側の間でX方向に平行に延設された仮想直線Sv1、Sv2、Sv3が一点鎖線で示される。なお、レーザ照射位置Lbの軌跡と仮想直線Sv1、Sv2、Sv3とが重複する部分では、レーザ照射位置Lbの軌跡を示す点線が優先して示される。
【0164】
図19Aに示す例では、X方向において半導体基板Wの(-X)側の位置Pb1にレーザ照射位置Lbが停止している状態から、
図18のフローチャートが開始される。この位置Pb1は、分割予定ラインS1に沿った仮想直線Sv1上に設けられ、換言すれば、X方向から分割予定ラインS1に対向する位置である。ただし、
図18のフローチャートを開始する際のレーザ照射位置Lbの位置は、ここの例に限られず、適宜変更できる。
【0165】
ステップS1101では、位置Pb1に停止するレーザ照射位置Lbが、X方向の(+X)側に向けて加速を開始して、X方向に平行に移動する。これによって、レーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1に沿って(+X)側に移動する。そして、レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(+X)側へ等速移動する(ステップS1102)。
【0166】
さらに、レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が点灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が開始される(ステップS1103)。これによって、分割予定ラインS1に沿ってX方向の(+X)側に移動するレーザ照射位置Lbに対してレーザ光Bが照射されて、分割予定ラインS1が加工される(ライン加工処理)。
【0167】
また、この例では、分割予定ラインS1に沿ったレーザ照射位置Lbの移動中に半導体基板Wが撮像される(ステップS1104)。具体的には、(+X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(+X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Aの撮像範囲Ri)が撮像される。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の撮像点Pw(S11)を含む画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS1のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。
【0168】
そして、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が消灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が終了する(ステップS1105)。こうして、ステップS1103~S1105までの期間では、分割予定ラインS1に対してライン加工処理が実行されるのと並行して、当該ライン加工処理の対象である分割予定ラインS1のうちの未加工部分の画像が撮像される。
【0169】
レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS1を(+X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(+X)側に向けて減速を開始する(ステップS1106)。ステップS1107では、X方向に平行な複数の分割予定ラインSに対してレーザ加工を完了したかが確認される。そして、これらの分割予定ラインSのうち、未加工の分割予定ラインSがある場合(ステップS1107で「NO」の場合)には、ステップS1101に戻る。
【0170】
その結果、X方向の(+X)側に減速したレーザ照射位置LbのX方向への速度Vxがゼロになるのに続いて、レーザ照射位置LbがX方向の(-X)側に加速する(ステップS1101)。そして、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(-X)側へ等速移動する(ステップS1102)。
【0171】
このように、
図18および
図19Aの例においても、上述と同様にX方向に反転駆動が実行される。また、この反転駆動と並行して、レーザ照射位置Lbが仮想直線Sv1から仮想直線Sv2までY方向に移動する。これによって、X方向においてレーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdに増加するまでに、Y方向においてレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv2まで移動して、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2に到達する。
【0172】
ただし、ここの例では、レーザ照射位置LbのY方向への移動態様が上述と異なる。つまり、レーザ照射位置LbがX方向において減速、停止および加速を行う反転駆動と並行して、レーザ照射位置Lbは、分割予定ラインSb1から分割予定ラインSb2へのY方向への移動を継続的に実行する(継続送り駆動)。特に、反転駆動によってX方向へのレーザ照射位置Lbの速度Vxがゼロになる時点の前後に渡って、レーザ照射位置LbのY方向への継続送り駆動が実行される。したがって、レーザ照射位置LbのX方向への速度VxおよびY方向への速度Vyの両方がゼロになるタイミングは、この例では存在しない。
【0173】
レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が点灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が開始される(ステップS1103)。これによって、分割予定ラインS2に沿ってX方向の(-X)側に移動するレーザ照射位置Lbに対してレーザ光Bが照射されて、分割予定ラインS2が加工される(ライン加工処理)。
【0174】
また、この例では、分割予定ラインS2に沿ったレーザ照射位置Lbの移動中に半導体基板Wが撮像される(ステップS1104)。具体的には、(-X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(-X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Bの撮像範囲Ri)が撮像される。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の撮像点Pw(S21)を含む画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS2のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。
【0175】
そして、レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が消灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が終了する(ステップS1105)。こうして、ステップS1103~S1105までの期間では、分割予定ラインS2に対してライン加工処理が実行されるのと並行して、当該ライン加工処理の対象である分割予定ラインS2のうちの未加工部分の画像が撮像される。
【0176】
レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS2を(-X)側に通過すると、レーザ照射位置LbがX方向の(-X)側に向けて減速を開始する(ステップS1106)。ステップS1107では、X方向に平行な複数の分割予定ラインSに対してレーザ加工を完了したかが確認される。そして、これらの分割予定ラインSのうち、未加工の分割予定ラインSがある場合(ステップS1107で「NO」の場合)には、ステップS1101に戻る。
【0177】
その結果、X方向の(-X)側に減速したレーザ照射位置LbのX方向への速度Vxがゼロになるのに続いて、レーザ照射位置LbがX方向の(+X)側に加速する(ステップS1101)。そして、レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するまでに、レーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加すると、レーザ照射位置Lbは加工速度VxdでX方向の(+X)側へ等速移動する(ステップS1102)。
【0178】
この際、上述と同様に、X方向への反転駆動と並行してY方向の継続送り駆動がレーザ照射位置Lbに対して実行される。これによって、X方向においてレーザ照射位置Lbの速度Vxが加工速度Vxdまで増加するまでに、Y方向においてレーザ照射位置Lbが仮想直線Sv3まで移動して、レーザ照射位置Lbが分割予定ラインS3に到達する。
【0179】
レーザ照射位置Lbが(-X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が点灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が開始される(ステップS1103)。これによって、分割予定ラインS3に沿ってX方向の(+X)側に移動するレーザ照射位置Lbに対してレーザ光Bが照射されて、分割予定ラインS3が加工される(ライン加工処理)。
【0180】
また、この例では、分割予定ラインS3に沿ったレーザ照射位置Lbの移動中に半導体基板Wが撮像される(ステップS1104)。具体的には、(+X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(+X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Aの撮像範囲Ri)が撮像される。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の撮像点Pw(S31)を含む画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS3のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。
【0181】
そして、レーザ照射位置Lbが(+X)側の半導体基板Wの端に到達するタイミングに合わせて、レーザ光源72が消灯して、加工ヘッド71からレーザ照射位置Lbへのレーザ光Bの照射が終了する(ステップS1105)。こうして、ステップS1103~S1105までの期間では、分割予定ラインS3に対してライン加工処理が実行されるのと並行して、当該ライン加工処理の対象である分割予定ラインS3のうちの未加工部分の画像が撮像される。
【0182】
続いては、
図19Aの「X方向への速度変化」および「Y方向への速度変化」を参照しつつ、レーザ照射位置Lbの速度変化について説明する。分割予定ラインS1に沿ってレーザ光Bを(+X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts1(ステップS1103~S1105)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。また、分割予定ラインS2に沿ってレーザ光Bを(-X)側に移動させるライン加工処理を実行するライン加工期間Ts2(ステップS1103~S1105)では、レーザ照射位置Lbは、一定の加工速度VxdでX方向に移動しつつ、Y方向には移動しない。
【0183】
また、ライン加工期間Ts1からライン加工期間Ts2に切り換わる切換期間Tc(ステップS1106、S1101)では、次の動作が実行される。つまり、X軸駆動部65(加工軸駆動部)は、X方向(加工方向)において、分割予定ラインS1(第1の加工ライン)を(+X)側(第1の側)に通過したレーザ照射位置Lbを(+X)側に向けて減速させて停止させてから(ステップS1106)、(-X)側に向けて加速することで(ステップS1101)、レーザ照射位置Lbを分割予定ラインS2(第2の加工ライン)へ到達させる反転駆動を実行する。この反転駆動と並行して、Y軸駆動部63(送り軸駆動部)は、分割予定ラインS1に沿って分割予定ラインS1の外側までX方向に延設された仮想直線Sv1(第1の仮想直線)上から、分割予定ラインS2に沿って分割予定ラインS2の外側までX方向に延設された仮想直線Sv2(第2の仮想直線)上まで、レーザ照射位置LbをY方向(送り方向)へ継続的に移動させる継続送り駆動を実行する。
【0184】
特に、制御部100は、X軸駆動部65が反転駆動でレーザ照射位置LbをX方向に停止させるより前にY軸駆動部63が継続送り駆動を開始し、X軸駆動部65が反転駆動でレーザ照射位置LbをX方向に停止させた後にY軸駆動部63が継続送り駆動を終了するように、X軸駆動部65およびY軸駆動部63を制御する。このように、X軸駆動部65が反転駆動でレーザ照射位置LbをX方向において停止させる期間においてY軸駆動部63がレーザ照射位置LbをY方向に移動させる。
【0185】
換言すれば、切換期間Tcは、X方向にレーザ照射位置Lbを減速させる減速期間Td(ステップS1006)と、X方向にレーザ照射位置Lbを加速させる加速期間Ta(ステップS1001)とを含む。これに対して、Y軸駆動部63は、レーザ照射位置LbのY方向への移動を、減速期間Tdから加速期間Taへ移行する移行期間Txの前後に渡って継続的に実行する(すなわち、Y方向においてレーザ照射位置Lbを停止させることなく実行する)。なお、移行期間Txの間、X方向においてはレーザ照射位置Lbが停止している(すなわち、速度Vxがゼロ)。
【0186】
図19Bは
図18のフローチャートに従って実行される動作の第2例を模式的に示す図である。
図19Bが
図19Aと異なるのは、ライン加工処理と並行して半導体基板Wを撮像する回数である。つまり、
図19Bの例では、分割予定ラインS1へのライン加工処理の実行のために、(+X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(+X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Aの撮像範囲Ri)の撮像が複数回(ここの例では2回)実行される(ステップS1104)。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の2個の撮像点Pw(S11)、Pw(S12)をそれぞれ含む2枚の画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS1のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。
【0187】
同様に、分割予定ラインS2へのライン加工処理の実行のために、(-X)側に移動するレーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側(すなわち、(-X)側)に位置する撮像範囲Ri(すなわち、撮像部8Bの撮像範囲Ri)の撮像が複数回(ここの例では2回)実行される(ステップS1104)。これによって、レーザ照射位置Lbよりも当該レーザ照射位置Lbの移動側の2個の撮像点Pw(S21)、Pw(S22)をそれぞれ含む2枚の画像が取得される。こうして、ライン加工処理を実行中の分割予定ラインS2のうち、未加工部分の位置を示す画像を取得できる。また、分割予定ラインS3へのライン加工処理においても、同様に複数回の撮像が実行される(ステップS1104)。
【0188】
図20は
図16のステップS1008あるいは
図18のステップS1104で取得される半導体基板の画像の一例を模式的に示す図である。上記の例では、互いに直交する2本の分割予定ラインSの交差点を含む領域が撮像されて画像IMが取得される。この際、撮像範囲Riが半導体基板Wに対してX方向に移動しつつ、画像IMが取得されるため、画像IMでは、輝度がX方向に平均化されて表れる。その結果、分割予定ラインSに対応してX方向に平行に延びる高輝度な高輝度領域と、半導体チップCに対応してX方向に平行に延びる高輝度領域より低輝度な低輝度領域とが表れる。特に、Y方向において、2個の低輝度領域に高輝度領域が挟まれる。したがって、制御部100は、分割予定ラインSに対応する高輝度領域に基づき、分割予定ラインSのY方向への位置を確認することができる。
【0189】
図21はライン加工処理でのレーザ加工条件の決定方法の一例を示すフローチャートであり、
図22Aはレーザ加工条件の決定に関わるパラメータを示す図であり、
図22Bはレーザ加工条件の時間的影響を示す図であり、
図22Cは
図21のレーザ加工条件の決定で参照するテーブルの一例を示す図である。このテーブルは記憶部190に予め記憶されている。
【0190】
図22Aでは、ライン加工処理において、レーザ照射位置LbがX方向に移動する速度Vxと時間との関係を表す上のグラフと、レーザ照射位置LbがX方向に移動する速度Vxとレーザ照射位置LbのX方向への位置(すなわち、X座標)との関係を表す下のグラフとが示されている。
【0191】
下のグラフに示されるように、分割予定ラインSに対してライン加工処理を実行するためには、分割予定ラインSの一方側の開始地点Xsから他方側(一方側の逆)の終了地点Xeまでレーザ照射位置LbをX方向に移動させつつ、分割予定ラインSに重複するレーザ照射位置Lbにレーザ光Bを照射する照射位置走査が実行される。つまり、照射位置走査は、X軸駆動部65によってレーザ照射位置Lbを開始地点Xsから終了地点XeまでX方向に移動させつつ、分割予定ラインSに重複するレーザ照射位置Lbに加工ヘッド71からレーザ光Bを照射する。こうして、上述のライン加工処理は、照射位置走査に伴って実行される。
【0192】
この照射位置走査では、分割予定ラインSに対して等速度区間SCが設定される。この等速度区間SCは、X方向において、開始地点Xsと終了地点Xeとの間に位置して、分割予定ラインSを含むように設定される。ここの例では、X方向において等速度区間SCの両端が分割予定ラインSの両端と一致しており、換言すれば、等速度区間SCは分割予定ラインSと一致する。ただし、等速度区間SCの設定態様はここの例に限られず、分割予定ラインSの両端から外側にオフセットを加えて等速度区間SCを設定してもよい。この場合、等速度区間SCは分割予定ラインSより長くなる。オフセットの長さは、所定の一定値でもよいし、分割予定ラインSの長さに所定の倍率(例えば1%)を乗じた値でもよい。かかる等速度区間SCの長さは分割予定ラインSの長さに応じて設定され、具体的には、分割予定ラインSが長くなるほど等速度区間SCが長くなる(換言すれば、分割予定ラインSが短くなるほど等速度区間SCが短くなる)。
【0193】
この照射位置走査では、X方向において、等速度区間SCの一方側に設けられた開始地点Xsから等速度区間SCの他方側に設けられた終了地点Xeまでレーザ照射位置Lbが移動する。また、X方向において、レーザ照射位置Lbが開始地点Xsから等速度区間SCの一方側の端Xssに移動する加速期間Taでは、レーザ照射位置LbはX方向において加速度Aで加速して、レーザ照射位置LbのX方向の速度Vxはゼロから加工速度Vxdまで増加する。また、X方向において、レーザ照射位置Lbが等速度区間SCの一方側の端Xssから他方側の端Xseまで移動する等速度期間Tsc(ここの例では、ライン加工期間Tsに一致)では、レーザ照射位置LbはX方向に一定の加工速度Vxdで移動する。さらに、X方向において、レーザ照射位置Lbが等速度区間SCの他方側の端Xseから終了地点Xeまで移動する減速期間Tdでは、レーザ照射位置LbはX方向に加速度Aで減速し、レーザ照射位置LbのX方向の速度Vxは加工速度Vxdからゼロまで減少する。
【0194】
この際、加速期間Taは、速度Vxが加速度Aでゼロから加工速度Vxdまで増加するのに要する期間(Vxd/A)となり、等速度期間Tscは、等速度区間SCの長さである等速度距離Lscを加工速度Vxdで移動するのに要する期間(Lsc/Vxd)となり、減速期間Tdは、速度Vxが加速度Aで加工速度Vxdからゼロまで減少するのに要する期間(Vxd/A)となる。したがって、照射位置走査に要する走査時間tは、
t=2×Vxd/A+Lsc/Vxd
となる。そのため、加工速度Vxdと走査時間tとの間には、
図22Bに示す関係が成立する。つまり、加工速度VxdがVxd_min(=(Lsc×A/2)
1/2)のとき、走査時間tが最小値となる。したがって、等速度区間SCの長さ(等速度距離Lsc)に応じて加工速度Vxdを設定することで、ライン加工処理を効率的に実行できる。
【0195】
ただし、加工速度Vxdを変更した場合には、レーザ光源72から射出するレーザ光Bの周波数を変更する必要がある。具体的には、加工速度Vxdを速くするほど、レーザ光Bの周波数を高くする必要がある。これに対して、レーザ光Bの周波数は、段階的に変えることしかできず、連続的には変えられない。そこで、
図22Cのテーブルが用いられる。このテーブルは、等速度距離Lsc(ここの例では、分割予定ラインSの長さ)と、加工速度Vxdと、レーザ光Bの周波数fcとの関係を規定する。具体的には、等速度距離LscがLsc(1)以下である場合には、加工速度VxdがVxd(1)に設定され、レーザ光Bの周波数がfc(1)に設定され、等速度距離LscがLsc(1)より大きくLsc(2)以下である場合には、加工速度VxdがVxd(2)に設定され、レーザ光Bの周波数がfc(2)に設定されるといったレーザ加工条件がテーブルに規定される。
【0196】
つまり、
図21のレーザ加工条件決定では、ライン加工処理の対象となる分割予定ラインSに対して設定される等速度区間SCの長さ(等速度距離Lsc)が取得される(ステップS1201)。そして、ステップS1201で取得された等速度距離Lscと
図22Cのテーブルとに基づき、加工速度Vxdが決定されるとともに(ステップS1202)、レーザ光Bの周波数fcが決定される(ステップS1203)。こうして
図21によって決定されたレーザ加工条件(加工速度Vxdおよび周波数fc)に従って、照射位置走査が実行される。
【0197】
ところで、照射位置走査は、X方向に平行な複数の分割予定ラインSに対して順番に実行される。換言すれば、互いに異なる分割予定ラインSを対象とする複数の照射位置走査が実行される。これに対して、
図21のレーザ加工条件決定は、複数の照射位置走査のそれぞれに対して実行され、各照射位置走査は、それを対象として決定されたレーザ加工条件に従ってレーザ照射位置Lbの移動とレーザ光Bの照射とを実行する。
【0198】
特に、上記の例のようにX方向に平行な複数の分割予定ラインSが形成された半導体基板Wが円形である場合には、円の中心からY方向に遠ざかるほど分割予定ラインSが短くなり、当該分割予定ラインSに設定される等速度距離Lscも短くなる。つまり、照射位置走査で設定される等速度距離Lscは、当該照射位置走査が対象とする分割予定ラインSのY方向の位置に応じて異なる。そこで、複数の分割予定ラインSに対して順番に実行される照射位置走査のそれぞれに対して、レーザ加工条件決定を実行することが適当となる。
【0199】
なお、レーザ加工条件決定は、当該レーザ加工条件決定が対象とする照射位置走査の開始前の任意のタイミングで実行できる。例えば、X方向に平行な複数の分割予定ラインSにそれぞれ対応する複数の照射位置走査を開始する前に、当該複数の照射位置走査の全てに対してレーザ加工条件決定を実行してもよい。あるいは、一の照射位置走査を行うのに続いて次の照射位置走査を行う場合に、一の照射位置走査の実行中に、次の照射位置走査に対するレーザ加工条件決定を実行してもよい。
【0200】
以上に説明する実施形態では、X方向(加工方向)において半導体基板W(加工対象物)の一方側の開始地点Xsから他方側の終了地点Xeまで、半導体基板Wに対してレーザ照射位置Lbを移動させつつ、複数の分割予定ラインS(加工ライン)のうち対象となる分割予定ラインS(一の対象ライン)に沿って移動するレーザ照射位置Lbに加工ヘッド71からレーザ光Bを照射することで分割予定ラインSを加工する(照射位置走査)。この照射位置走査では、X方向において分割予定ラインS(対象ライン)を含む等速度区間SCが開始地点Xsと終了地点Xeとの間に設定される。そして、開始地点Xsから等速度区間SCの一方側の端Xssまでレーザ照射位置Lbが移動する加速期間Ta(第1期間)において、半導体基板Wに対するレーザ照射位置LbのX方向への速度がゼロから加工速度Vxdまで上昇する。また、等速度区間SCの一方側の端Xssから他方側の端Xseまでレーザ照射位置Lbが移動する等速度期間Tsc(第2期間)を通じて、レーザ照射位置Lbは半導体基板Wに対してX方向へ加工速度Vxdで等速移動する。さらに、レーザ照射位置Lbが等速度区間SCの他方側の端Xseに到達してから終了地点Xeに到達するまでの減速期間Td(第3期間)において、半導体基板Wに対するレーザ照射位置LbのX方向への速度は加工速度Vxdからゼロまで低下する。この際、X方向において、等速度区間SCの長さ(等速度距離Lsc)は分割予定ラインSの長さに応じて設定され、等速度区間SCの長さ(等速度距離Lsc)に応じて照射位置走査における加工速度Vxdが調整されている(速度調整処理、ステップS1202)。したがって、加速期間Ta、等速度期間Tscおよび減速期間Tdの合計期間(走査時間t)を抑えることができる。こうして、半導体基板Wの分割予定ラインSに沿ってレーザ光Bを移動させることで分割予定ラインSを加工するレーザ加工技術において、分割予定ラインSの加工を効率的に実行することが可能となっている。
【0201】
また、制御部100は、複数の分割予定ラインSの間で対象となる分割予定ラインS(対象ライン)を変更しつつ照射位置走査を繰り返すことで複数の照射位置走査を実行する。そして、制御部100は、複数の照射位置走査のそれぞれに対して速度調整処理(ステップS1202)を実行する。かかる構成では、複数の分割予定ラインSのそれぞれの加工を効率的に実行でき、半導体基板Wに対する加工を速やかに完了することが可能となる。
【0202】
また、制御部100は、照射位置走査において対象となる分割予定ラインS(対象ライン)に沿って移動するレーザ照射位置Lbに照射されるレーザ光Bの周波数を、照射位置走査における加工速度Vxdに応じて調整する周波数調整処理(ステップS1203)を実行する。かかる構成では、調整後の加工速度Vxdに応じた適切な周波数のレーザ光Bを分割予定ラインSに照射して、分割予定ラインSの加工を的確に行うことができる。
【0203】
また、制御部100は、複数の分割予定ラインSの間で対象となる分割予定ラインS(対象ライン)を変更しつつ照射位置走査を繰り返すことで複数の照射位置走査を実行する。そして、制御部100は、複数の照射位置走査のそれぞれに対して周波数調整処理(ステップS1203)を実行する。かかる構成では、複数の分割予定ラインSのそれぞれの加工を的確に行うことができる。
【0204】
なお、
図22Cに示すように、加工速度Vxdの調整は、複数の離散的な加工速度Vxd(1)、Vxd(2)、Vxd(3)、Vxd(4)のうちから1つを選択することで実行され、発信周波数fcの調整は、複数の離散的な発信周波数fc(1)、Vxd(2)、Vxd(3)、Vxd(4)のうちから1つを選択することで実行される。つまり、レーザ加工条件決定では、等速度距離Lscが
図22Cに示す複数(4個)の範囲のいずれに属するかに応じて、加工速度Vxdおよび発信周波数fcが選択される。この際、複数の照射位置走査のそれぞれに対してレーザ加工条件決定を実行して加工速度Vxdおよび発信周波数fcを調整した際に、連続して実行される2回のレーザ照射位置走査の間で等速度距離Lscの属する範囲が同じ場合には、加工速度Vxdおよび発信周波数fcは維持される。一方、連続して実行される2回のレーザ照射位置走査の間で等速度距離Lscの属する範囲が異なる場合には、加工速度Vxdおよび発信周波数fcとは変更される(換言すれば、切り換えられる)。つまり、加工速度Vxdの調整には、加工速度Vxdの維持と、加工速度Vxdの変更(切換)とが含まれ、発信周波数fcの調整には、発信周波数fcの維持と、発信周波数fcの変更(切換)とが含まれる。
【0205】
ところで、上記の例では、1本の分割予定ラインSに対して実行される照射位置走査毎に
図21のレーザ加工条件決定が実行される。しかしながら、レーザ加工条件(加工速度Vxdおよびレーザ光Bの周波数fc)を決定する単位は、1回の照射位置走査である必要は無く、1枚の半導体基板Wであってもよい。つまり、制御部100は、
図21のフローチャートに代えて、次の
図23のフローチャートを実行してもよい。
【0206】
図23は半導体基板単位でのレーザ加工条件の決定方法の一例を示すフローチャートであり、
図24は
図23のレーザ加工条件の決定で参照するテーブルの一例を示す図である。このテーブルは記憶部190に予め記憶されている。ここの例では、チャックステージ3に保持された半導体基板Wが有するX方向に平行な複数の分割予定ラインSをカウントするカウント値nが付される。例えば、X方向に平行な20本の分割予定ラインSを半導体基板Wが有する場合には、カウント値nは1~20の値を取る。
【0207】
ステップS1301では、カウント値nがゼロにリセットされ、ステップS1302では、カウント値nがインクリメントされる。ステップS1303では、n番目の分割予定ラインSに対して設定された等速度区間SCの長さである等速度距離Lsc(n)が取得される。そして、n番目の分割予定ラインSに対する照射位置走査に要する走査時間t(n)が次式
t(n)=2×Vxd/A+Lsc(n)/Vxd
に基づき算出される(ステップS1304)。
【0208】
ステップS1305では、カウント値nがその最大値nx(半導体基板Wが有するX方向に平行な分割予定ラインSの本数に相当)に到達したか否かが判断される。カウント値nが最大値nxに到達しない場合(ステップS1305で「NO」の場合)には、ステップS1302~S1304が繰り返される。こうして、カウント値nが最大値nxに到達するまでステップS1302~S1304が繰り返されることで、半導体基板Wが有するX方向に平行な複数の分割予定ラインSの全てについて、走査時間t(n)が算出される。
【0209】
カウント値nが最大値nxに到達すると(ステップS1305で「YES」)、走査総時間Ttlが次式
Ttl=t(1)+t(2)+…t(nx-1)+t(nx)
=Σt(n)
に基づき算出される(ステップS1306)。
【0210】
この走査総時間Ttlは、加工速度Vxdの関数となる。これに対して、ステップSS1307では、走査総時間Ttlが最小となる加工速度Vxdが最適加工速度Vxgとして算出される。ステップS1308では、こうして算出された最適加工速度Vxgと
図24のテーブルとを用いて、加工条件(加工速度Vxdおよびレーザ光Bの周波数fc)が決定される。
【0211】
図24のテーブルは、最適加工速度Vxgと、加工速度Vxdと、レーザ光Bの周波数fcとの関係を規定する。具体的には、最適加工速度VxgがVxg(1)以下である場合には、加工速度VxdがVxd(11)に設定され、レーザ光Bの周波数がfc(11)に設定され、最適加工速度VxgがVxg(1)より大きくVxg(2)以下である場合には、加工速度VxdがVxd(12)に設定され、レーザ光Bの周波数がfc(12)に設定されるといったレーザ加工条件がテーブルに規定される。
図22Cのテーブルと同様に、
図24のテーブルに従うことで、加工速度Vxdが速くなるほど、レーザ光Bの周波数が高くなる。
【0212】
つまり、ここの例では、チャックステージ3に保持された1枚の半導体基板Wが有するX方向に平行な複数の分割予定ラインSに照射位置走査を実行する期間を通じて、加工速度Vxdおよびレーザ光Bの周波数fcを変更しない。これによって、レーザ光Bの周波数fcの変更に要する時間が、半導体基板Wへの加工完了に及ぼす影響を排除できる。
【0213】
なお、最適加工速度Vxdは、nx本の分割予定ラインSそれぞれに設定された等速度距離Lscと相関を有する。このような最適加工速度Vxdに基づき加工速度Vxdを決定する上記制御は、nx本の分割予定ラインSそれぞれに設定された等速度区間SCの長さ(等速度距離Lsc)に応じて照射位置走査における加工速度Vxdを調整する処理に相当する。また、このような最適加工速度Vxdに基づきレーザ光Bの周波数fcを決定する上記制御は、レーザ照射位置Lbに照射されるレーザ光Bの周波数fcを、照射位置走査における加工速度Vxdに応じて調整する処理に相当する。
【0214】
このように、制御部100は、複数の分割予定ラインSの間で、を変更しつつ照射位置走査を繰り返すことで実行される複数の照射位置走査に対して共通する加工速度Vxd(共通加工速度)を設定する(ステップS1308)。そして、複数の照射位置走査のそれぞれは、ステップS1308で設定された加工速度Vxdに基づき実行される。特に、ステップS1308(速度調整処理)では、複数の照射位置走査それぞれの等速度区間SCの長さである等速度距離Lsc(n)を反映した走査総時間Ttlに応じて、加工速度Vxdが調整される。かかる構成では、複数の分割予定ラインSの間で加工速度Vxdを切り換えることなく、当該複数の分割予定ラインSへの加工を効率的に実行でき、半導体基板Wに対する加工を速やかに完了することが可能となる。
【0215】
また、制御部100は、複数の分割予定ラインSに共通に設定された加工速度Vxdに応じて、複数の照射位置走査に対して共通する周波数fcを求める(ステップS1308)。そして、複数の照射位置走査のそれぞれにおいて、共通の周波数fcのレーザ光Bをレーザ照射位置Lbに照射する。かかる構成では、複数の分割予定ラインSの間でレーザ光Bの周波数fcを切り換える必要がなく、周波数fcの切り換えに要する時間が半導体基板Wに対する加工の完了に与える影響を排除できる。
【0216】
なお、
図24に示すように、加工速度Vxdの調整は、複数の離散的な加工速度Vxd(1)、Vxd(2)、Vxd(3)、Vxd(4)のうちから1つを選択することで実行され、発信周波数fcの調整は、複数の離散的な発信周波数fc(1)、Vxd(2)、Vxd(3)、Vxd(4)のうちから1つを選択することで実行される。つまり、レーザ加工条件決定では、最適加工速度Vxdが
図24に示す複数(4個)の範囲のいずれに属するかに応じて、加工速度Vxdおよび発信周波数fcが選択される。この際、複数の半導体基板Wのそれぞれに対してレーザ加工条件決定を実行して加工速度Vxdおよび発信周波数fcを調整した際に、連続して加工される2枚の半導体基板Wの間で最適加工速度Vxdの属する範囲が同じ場合には、加工速度Vxdおよび発信周波数fcは維持される。一方、連続して加工される2枚の半導体基板Wの間で最適加工速度Vxdの属する範囲が異なる場合には、加工速度Vxdおよび発信周波数fcとは変更される(換言すれば、切り換えられる)。つまり、加工速度Vxdの調整には、加工速度Vxdの維持と、加工速度Vxdの変更(切換)とが含まれ、発信周波数fcの調整には、発信周波数fcの維持と、発信周波数fcの変更(切換)とが含まれる。
【0217】
ところで、上で説明する例では、チャックステージ3に保持された1枚の半導体基板Wが有するX方向に平行な複数の分割予定ラインSに照射位置走査を実行する期間を通じて、加工速度Vxdおよびレーザ光Bの周波数fcを変更しない。換言すれば、分割予定ラインSの単位ではなく、半導体基板Wの単位で、レーザ加工条件(加工速度Vxdおよびレーザ光Bの周波数)が調整される。この際、レーザ加工装置1で使用される半導体基板Wの直径が想定される場合がある。このような場合には、これら半導体基板Wの直径について、
図23のレーザ加工条件決定方法を予め実行することで、各直径に対応する加工条件(加工速度Vxdとレーザ光Bの周波数fc)を求めて記憶部190に保存しておいてもよい。
【0218】
図25は
図23のレーザ加工条件方法によって予め求められた加工条件を基板の直径に応じて設定するレーザ加工条件設定の一例を示すフローチャートであり、
図26は
図25のフローチャートで使用される対応関係テーブルを模式的に示す図である。ここの例では、レーザ加工装置1で使用される直径200mmの半導体基板Wおよび直径300mmの半導体基板Wそれぞれに対して、
図23のレーザ加工条件決定が予め実行されて、加工速度Vxdおよびレーザ光Bの周波数fcが求められている。こうして半導体基板Wの各直径について求められた加工速度Vxdおよびレーザ光Bの周波数fcは、対応関係テーブルTsvfとして、記憶部190に保存されている。
【0219】
つまり、
図26の対応関係テーブルTsvfでは、直径200mmの半導体基板Wに対して加工速度Vxd(=V_200)およびレーザ光Bの周波数fc(=fc_200)が対応付けられ、直径300mmの半導体基板Wに対して加工速度Vxd(=V_300)およびレーザ光Bの周波数fc(=fc_300)が対応付けられている。
【0220】
ステップS1401では、レーザ加工制御演算部120は、照射位置走査の対象となる半導体基板Wのサイズ(直径)を取得する。そして、レーザ加工制御演算部120は、ステップS1401で取得した半導体基板Wのサイズに対応付けられた加工速度Vxdを対応関係テーブルTsvfから読み出して、読み出した加工速度Vxdを照射位置走査の実行時の加工速度Vxdに設定する(ステップS1402)。また、レーザ加工制御演算部120は、ステップS1401で取得した半導体基板Wのサイズに対応付けられたレーザ光Bの周波数fcを対応関係テーブルTsvfから読み出して、読み出した周波数fcを照射位置走査の実行時の周波数fcに設定する(ステップS1403)。
【0221】
かかる構成では、例えば、200mmの半導体基板Wに照射位置走査を実行する場合には、チャックステージ3に保持された当該半導体基板Wが有するX方向に平行な複数の分割予定ラインSそれぞれに対する照射位置走査が、加工速度Vxdが加工速度V_200で、レーザ光Bの周波数fcがfc_200のレーザ加工条件で実行される。
【0222】
上記の例では、半導体基板Wの複数の直径(サイズ)のそれぞれについて、直径、加工速度Vxd(共通加工速度)および周波数fc(共通周波数)の対応関係を示す対応関係テーブルTsvf(対応関係情報)が記憶部190に記憶されている。そして、レーザ加工制御演算部120(制御部)は、照射位置走査の対象となる半導体基板Wの直径と対応関係テーブルTsvfとに基づき、加工速度Vxdとレーザ光Bの周波数fcとを調整する(ステップS1402、S1403)。かかる構成では、レーザ加工制御演算部120は、対応関係テーブルTsvfを参照することで、加工速度Vxdとレーザ光Bの周波数fcとを簡便に調整できる。
【0223】
このように上記の実施形態では、レーザ加工装置1が本発明の「レーザ加工装置」の一例に相当し、チャックステージ3が本発明の「支持部材」の一例に相当し、X軸駆動部65が本発明の「加工軸駆動部」の一例に相当し、加工ヘッド71が本発明の「加工ヘッド」の一例に相当し、レーザ光源72が本発明の「レーザ光源」の一例に相当し、制御部100が本発明の「制御部」の一例に相当し、制御部100が本発明の「コンピュータ」の一例に相当し、レーザ加工プログラム191が本発明の「レーザ加工プログラム」の一例に相当し、記録媒体192が本発明の「記録媒体」の一例に相当し、レーザ光Bが本発明の「レーザ光」の一例に相当し、レーザ照射位置Lbが本発明の「レーザ照射位置」の一例に相当し、分割予定ラインSが本発明の「加工ライン」の一例に相当し、等速度区間SCが本発明の「等速度区間」の一例に相当し、加速期間Taが本発明の「第1期間」の一例に相当し、減速期間Tdが本発明の「第3期間」の一例に相当し、等速度期間Tscが本発明の「第2期間」の一例に相当し、加工速度Vxdが本発明の「加工速度」の一例に相当し、半導体基板Wが本発明の「加工対象物」の一例に相当し、X方向が本発明の「加工方向」の一例に相当し、終了地点Xeが本発明の「終了地点」の一例に相当し、開始地点Xsが本発明の「開始地点」の一例に相当し、端Xssが本発明の「一方側の端」の一例に相当し、端Xseが本発明の「他方側の端」の一例に相当し、ステップS1202が本発明の「速度調整処理」の一例に相当し、ステップS1203が本発明の「周波数調整処理」の一例に相当する。
【0224】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施例では、撮像した画像の用途は特に説明していない。ただし、かかる画像は種々の用途に用いることができる。例えば、分割予定ラインSへのレーザ加工に伴って、未加工の分割予定ラインSがY方向に変位する場合がある。そこで、制御部100は、半導体基板Wを撮像した画像に基づき、未加工の分割予定ラインSのY方向への変位量を算出して、ライン加工処理の対象となる分割予定ラインSとレーザ照射位置Lbとの位置合わせを、当該変位量に基づき行うことができる。
【0225】
また、上記の例では、撮像部8は互いに直交する2本の分割予定ラインSの交差点を撮像するが、撮像部8の撮像対象はこれに限られず、例えば半導体チップCに付されたアライメントマーク等でも良い。
【0226】
また、レーザ照射位置Lbを半導体基板Wに対して相対的に移動させる具体的構成は、上記のXYθ駆動テーブル6に限られず、例えば加工ヘッド71をX方向およびY方向に駆動する駆動機構でも構わない。
【0227】
また、撮像部8の台数は2台に限られず、例えば1台でも構わない。
【0228】
また、上記に示したレーザ加工方法(
図11の基板加工等)によって、個々に分離された半導体チップCを製造してもよい(半導体チップ製造方法)。この半導体チップ製造方法では、上記のレーザ加工方法によって半導体基板Wの分割予定ラインSに対してライン加工処理を行って、改質層が形成される(レーザ加工工程)。続いて、半導体基板Wを保持するテープEを引き延ばして、当該テープEを拡張することで、複数の半導体チップCのそれぞれが分離される(エキスパンド工程)。
【符号の説明】
【0229】
1…レーザ加工装置
3…チャックステージ(支持部材)
65…X軸駆動部(加工軸駆動部)
71…加工ヘッド
72…レーザ光源
100…制御部(コンピュータ)
191…レーザ加工プログラム
192…記録媒体