(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】リフレクタを備えるコネクテッドインプラント
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0507 20210101AFI20241016BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61B5/0507
G01N22/00 S
(21)【出願番号】P 2022537890
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2020087253
(87)【国際公開番号】W WO2021123331
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-04
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508296440
【氏名又は名称】ニューヴェイジヴ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シャヴァリエール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】カースペルン,ヴァレンティン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-501237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0162606(US,A1)
【文献】国際公開第2019/054442(WO,A1)
【文献】特表2013-533043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0298263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61B 10/00
G01N 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の骨の構造の推移を評価するためのシステムであって、
前記被検者の前記骨に取り付けることを意図されたインプラント体
(2
)と、前記インプラント体(2)に結合され、電磁気信号を反射するように構成され、前記インプラント体(2)が前記被検者の前記骨に取り付けられるときに前記被検者の周囲組織に埋め込まれる、少なくとも1つのリフレクタ(3)とを備える、植え込み可能な医療器具(1)と、
前記被検者の前記骨の構造を表すパラメータを計算するように構成された計算モジュールであって、前記パラメータが、前記リフレクタ(3)の特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む励起信号の、前記被検者の前記周囲組織に埋め込まれた前記リフレクタ(3)における反射に対応する反射信号から計算される、計算モジュールと、
を含み、
前記反射信号が、前記周囲組織の少なくとも1つの電気特性の変化と直接又は間接的に相関する、
システム。
【請求項2】
前記反射信号は、前記周囲組織の誘電率
(ε
)の変化と直接又は間接的に相関する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記リフレクタ(3)の前記特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む前記励起信号を放出するように構成された放出モジュールと、
前記放出モジュールによって放出された前記励起信号の、前記被検者の前記周囲組織に埋め込まれた前記リフレクタ(3)における反射に対応する、前記反射信号を受信するように構成された受信モジュールと、
をさらに含む、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記放出モジュール、前記受信モジュール、及び前記計算モジュールのうちの、少なくとも2つのモジュールが、同じ外部の非侵襲的デバイスに統合される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記リフレクタ(3)は、平面の形状又は屈曲した形状を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記インプラント体(2)に対して異なる位置に配置された少なくとも2つのリフレクタ(3)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記計算モジュールが、様々なリフレクタ(3)に関連する前記反射信号と、前記インプラント体(2)に対する各リフレクタ(3)の相対位置から、前記被検者の前記骨の構造を表す前記パラメータの幾何学的マッピングを計算するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記被検者の前記骨の構造を表す前記パラメータは、前記反射信号とモデルとの比較から計算され、前記モデルは、一方では前記リフレクタ(3)及びその周囲組織における反射信号と、他方では前記骨の構造を表す前記パラメータとの相関を確立する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記被検者の前記骨の構造を表す前記パラメータが、前記反射信号と前回取得した反射信号との比較から計算される、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記インプラント体(2)は、関節固定インプラント又は骨接合インプラントである、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記インプラント体(2)は、骨粗鬆症の進行をモニタリングするために骨に取り付けることを意図されたピンである、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記リフレクタ(3)は、前記インプラント体(2)自体である、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記インプラント体(2)は、少なくとも2つの異なる部分(2a、2b)を含み、少なくとも1つの部分に少なくとも1つのリフレクタ(3)が固定される、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
被検者の骨に取り付けることを意図されたインプラント体(2)と、前記インプラント体(2)に結合され、電磁気信号を反射するように構成され、前記インプラント体(2)が前記被検者の前記骨に取り付けられるときに前記被検者の周囲組織に埋め込まれる
、少なくとも1つのリフレクタ(3)とを備える、植え込み可能な医療器具(1)を使用して、被検者の骨の構造の推移を評価するための方法であって、
前記リフレクタ(3)の特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む励起信号を放出するステップと、
放出モジュールによって放出された前記励起信号の
、前記被検者の前記周囲組織に埋め込まれた前記リフレクタ(3)における反射に対応し、前記周囲組織の少なくとも1つの電気特性の変化と直接又は間接的に相関する、反射信号を受信するステップと、
前記受信した反射信号から、前記被検者の前記骨の構造を表すパラメータを計算するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え込み可能な骨器具の分野に属する。特に、本発明は、被検者の骨構造の推移を評価するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨再生は、複雑な上手く調整された生理学的骨形成プロセスであり、特に、仮骨延長術、骨再生術、及び通常の骨折治癒中に見受けられ、成人期にわたる連続的なリモデリングに関係する。
【0003】
適切な硬化を確認するための骨再生の経過観察は、一般に、非侵襲的イメージング技術を使用して行われる。X線を使用する投影X線撮影は、骨の再生と硬化を評価するのに最も一般的に用いられる技術である。その画像は、関心ある領域にX線をあて、結果として生じるビームの残影を潜像として取り込むことによって撮影される。骨と軟組織との違いは、主に、炭素がカルシウムに比べて非常に低いX線断面を有することに起因する。
【0004】
また、特許出願WO2008/119992から、最初に、身体の一部内で、広い周波数範囲にわたって放出される交流電気信号を印加及び測定し、次いで、電気信号を処理して各周波数でのインピーダンス及び位相シフトを求め、これを使用してその身体の一部の骨密度値を推定することからなる技術が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このシステムは、システムの位置が最適ではないため、信頼性のある測定値を得ることができない。このシステムは、植え込み可能ではなく、外部的なものであり、ミスが発生する可能性がある。
【0006】
最新技術のレビューは、骨組織再生の遠隔モニタリングを可能にする植え込み可能なシステムの必要性が存在することを示している。このシステムがあれば、被検者及び施術者は、骨組織の局所的な質及び推移を経時的に評価及びモニタリングすることができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検者の骨の構造の推移を評価するためのシステムであって、
被検者の骨に取り付けることを意図されたインプラント体と、インプラント体に結合され、電磁気信号を反射するように構成され、インプラント体が被検者の骨に取り付けられるときに被検者の周囲組織に埋め込まれる、少なくとも1つのリフレクタとを備える、植え込み可能な医療器具と、
被検者の骨の構造を表すパラメータを計算するように構成された計算モジュールであって、前記パラメータが、リフレクタの特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む励起信号の、被検者の周囲組織に埋め込まれたリフレクタにおける反射に対応する反射信号から計算される、計算モジュールと、
を含み、
前記反射信号が、周囲組織の少なくとも1つの電気特性の変化と直接又は間接的に相関する、
システムに関する。
【0008】
このシステムは、施術者に骨の構造の推移の指標を与えるための、少なくとも1つのパラメータ、好ましくは骨再生プロセスの様々なパラメータの測定を可能にする。
【0009】
一実施形態では、このシステムは、
リフレクタの特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む励起信号を放出するように構成された放出モジュールと、
放出モジュールによって放出された励起信号の、被検者の周囲組織に埋め込まれたリフレクタにおける反射に対応する、反射信号を受信するように構成された受信モジュールと、
をさらに含む。
【0010】
一実施形態では、放出モジュール、受信モジュール、及び計算モジュールのうちの、少なくとも2つのモジュールは、同じ外部の非侵襲的デバイスに統合される。この実施形態は、外部の非侵襲的デバイスをより便利で機能的なものにすることができる。
【0011】
一実施形態では、リフレクタは、平面の形状又は屈曲した形状を有する。リフレクタの様々な形状により、リフレクタを様々なインプラント体の表面に適合させることができる。
【0012】
一実施形態では、このシステムは、インプラント体に対して異なる位置に配置された少なくとも2つのリフレクタを含む。いくつかのリフレクタは、骨再生の正確な測定を行うことを可能にする。インプラント体上のいくつかのリフレクタは、骨の質に関する局所的な情報をモニタリングすることを可能にする。
【0013】
一実施形態では、計算モジュールは、様々なリフレクタに関連する反射信号およびインプラント体に対する各リフレクタの位置から、被検者の骨の構造を表すパラメータの幾何学的マッピングを計算するように構成される。
【0014】
一実施形態では、被検者の骨の構造を表すパラメータは、反射信号とモデルとの比較から計算され、モデルは、一方では前記リフレクタ3及びその周囲組織における反射信号と、他方では骨の構造を表す前記パラメータとの相関を確立する。
【0015】
一実施形態では、被検者の骨の構造を表すパラメータは、反射信号と前回取得した反射信号との比較から計算される。この比較により、骨再生状態を判定することができる。
【0016】
一実施形態では、インプラント体は、関節固定インプラント又は骨接合インプラントである。関節固定インプラントは、2つの椎骨又は関節の癒合のモニタリングを可能にし、一方、骨接合インプラントは、骨折した骨の2つの端の癒合のモニタリングを可能にする。
【0017】
一実施形態では、インプラント体は、骨粗鬆症の進行をモニタリングするために骨に植え込まれるように構成されたピンである。
【0018】
一実施形態では、リフレクタは、インプラント体自体である。インプラント体は、骨再生をモニタリングするために電磁気信号を放出するように構成される。
【0019】
一実施形態では、インプラント体は少なくとも2つの異なる部分を含み、少なくとも1つの部分に少なくとも1つのリフレクタが固定される。インプラント体の第1の部分は関節固定インプラント体であり、第2の部分は、脊椎に沿って固定されるように構成されたインプラント体である。
【0020】
本発明はまた、被検者の骨に取り付けることを意図されたインプラント体と、インプラント体に結合され、電磁気信号を反射するように構成され、インプラント体が被検者の骨に取り付けられるときに被検者の周囲組織に埋め込まれる、少なくとも1つのリフレクタとを備える、植え込み可能な医療器具を使用して被検者の骨の構造の推移を評価するための方法であって、
リフレクタの特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む励起信号を放出するステップと、
被検者の周囲組織に埋め込まれたリフレクタにおける、放出モジュールによって放出された励起信号の反射に対応し、周囲組織の少なくとも1つの電気特性と直接又は間接的に相関する、反射信号を受信するステップと、
受信した反射信号から、被検者の骨の構造を表すパラメータを計算するステップと、
を含む、方法に関する。
【0021】
定義
本発明では、以下の用語は、以下の意味を有する:
・「骨癒合」は、骨断片の生理的融合を指す。境界面の骨の密度が徐々に高まり、硬化して、2つの隣接する骨断片間に強固な機械的連結が生じる。
・「リフレクタ」は、電磁気信号を反射するように構成され、インプラント体が被検者の骨に取り付けられるときに被検者の周囲組織に埋め込まれる、コンポーネントを指す。
【0022】
以下の詳細な説明は、図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。例示する目的で、システムは好ましい実施形態で示されている。しかしながら、用途は、図示した正確な配置、構造、特徴、実施形態、及び態様に限定されないことを理解されたい。図面は正確な縮尺率ではなく、請求項の範囲を図示した実施形態に限定することを意図していない。したがって、付属の請求項に記載の特徴の後に参照符号が続く場合、そのような符号は、請求項の理解を高める目的でのみ含まれ、請求項の範囲を決して限定するものではないことを理解されたい。
【0023】
本発明の特徴及び利点は、以下のシステムの実施形態の説明から明らかとなり、この説明は、単なる例として、付属の図面を参照して与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】関節固定インプラント体と1つのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の斜視図である。
【
図1b】1つのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の斜視図である。
【
図1c】関節固定インプラント体といくつかのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の斜視図である。
【
図1d】リフレクタが部分的にインプラント体自体である植え込み可能な医療器具の斜視図である。
【
図1e】2つの異なる部分を備え、各部分にリフレクタを備える、植え込み可能な医療器具の斜視図である。
【
図2a】骨接合インプラント体と1つのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の第1の斜視図である。
【
図2b】骨接合インプラント体と1つのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の第1の斜視図である。
【
図2c】骨接合インプラント体と1つのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の第2の斜視図である。
【
図3a】骨粗鬆症用インプラント体と1つのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の第1の実施形態である。
【
図3b】骨粗鬆症用インプラント体と1つのリフレクタを備える植え込み可能な医療器具の第2の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
様々な実施形態を説明及び例示しているが、詳細な説明はそれに限定されると解釈されるべきではない。請求項によって定義される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は実施形態に様々な修正を行うことができる。
【0026】
本発明の第1の態様は、被検者の骨の推移を評価し、関節固定術を行った被検者の骨再生をモニタリング及び確認するためのシステムに関する。骨再生の推移において、椎間腔内の骨の緻密化と、隣接する椎骨間の機械的連結との、2つのパラメータに非常に関心がもたれる。
【0027】
図1a~
図1dに示すように、被検者の骨構造の推移を評価するためのシステムが提示される。このシステムは、植え込み可能な医療器具1を含み、前記植え込み可能な医療器具1は、インプラント体2とリフレクタ3を備える。これらの実施形態では、インプラント体2は、被検者の脊椎の2つの椎骨間に植え込まれる椎体間固定器具である。植え込み可能な医療器具は、それを受け入れるのに適した脊椎の任意の部分に植え込むことができる。インプラント体2は、例えば金属又はポリマー又はセラミックなどの様々な材料で作製することができる。別の実施形態では、インプラント体2はまた、カーボングラファイトファイバで作製することができる。
【0028】
インプラント体2は、上面4、下面5、前面7、後面8、外面9、及び内面11を有する。インプラント体2は、20~45センチメートルの範囲の直径を有する。インプラント体2の外面9は平滑であるが(
図1b、
図1c、
図1d)、別の実施形態では、インプラント体2の外面9は、インプラント体2の内面11及び/又は外面9上に孔又は凹部10を有する格子構造とすることができる。様々な格子構造を用いることができ、例えば、この実施形態では、孔又は凹部10は、菱形の形状を有する。他の実施形態では、孔又は凹部10の形状は、長方形、円形、又は他の形状であってもよい。孔9は、椎骨間の骨再生中に骨で塞がる。
【0029】
インプラント体2の外面9の上面4及び下面5は、インプラント体2を脊椎に機械的に固定することを可能にする階段状の形状を有する。上面4及び下面5は、鋸歯形の形状又は別の形状を有し得る。別の実施形態では、上面4及び下面5に凹凸があってもよい。
図1a~
図1dでは、上面4と下面5は同じ形状を有する。別の実施形態では、上面4及び下面5の形状は異なっていてもよい。インプラント体2の後面8は、インプラント体の前面7よりも大きい。インプラント体2の厚さは、5~25センチメートルの範囲であり得る。
【0030】
インプラント体2の後面8は、植え込み可能な医療器具1を脊椎に固定するためのねじを通すことができる2つの円筒形の穴12を備える。穴12の数に制限はない。穴12は、関連するねじとの相補的な形状を有する。別の実施形態では、ねじは必要とされない。2つのねじ穴12は、リフレクタに関して対称である(
図1c)。別の実施形態では、ねじ穴12は、植え込み可能な医療器具1の任意の部分に配置することができる。
【0031】
別の実施形態では、インプラント体2にねじ穴12はない。
【0032】
インプラント体2は、リング形である、又は概して円形の形状を有する。インプラント体2は、インプラント体を脊椎に植え込むことを可能にする正方形の形状又は別の形状を有し得る。インプラント体2は、2つの椎骨の再生を可能にするための少なくとも1つの内部凹部13を有する。
図1aでは、インプラント体2は、凹部12を2つ備えており、一方、
図1b~
図1cでは、インプラント体2は、凹部12を1つだけ備えている。別の実施形態では、インプラント体2は、内部凹部13を備えていなくてもよい。
【0033】
図1eに提示するように、インプラント体2は、2つの部分2a及び2bに分けてもよい。第1の部分2aは、被検者の脊椎の2つの椎骨間に植え込まれる椎体間固定器具である。インプラント体の第2の部分2bは、椎骨の後方に配置されるプレートである。第2の部分2bは、いくつかの形状を有し得る。
【0034】
図1a~
図1dの植え込み可能な医療器具は、植え込み可能な医療器具1の周りの骨の再生をモニタリングするためにインプラント体2上のいくつかの位置に配置された少なくとも1つのリフレクタ3をさらに備える。リフレクタ3は、インプラント体2が配置されるときに被検者の周囲組織と接触する。少なくとも1つのリフレクタ3は、1MHz~50GHzの範囲の特徴的な周波数の電磁気信号を反射するように構成される。好ましくは、特徴的な周波数は、500MHz~15GHzの範囲である。リフレクタ3は、信号雑音比を向上させるために、反射信号を増幅及び/又はフィルタリングすることができる。インプラント体2上のリフレクタ3の数に制限はない。
【0035】
図1aでは、リフレクタ3は、インプラント体2の上面4の後方に配置されている。リフレクタ3は、インプラント体2の上面4の前方などの、インプラント体2上の他の位置に配置されてもよい。
【0036】
図1bでは、リフレクタ3は、インプラント体2の内部凹部13の内面11に沿って配置されている。この実施形態では、リフレクタ3は、長手方向に沿って延びる長手方向要素である。
【0037】
図1cでは、いくつかのリフレクタ3が、インプラント体2の内部凹部13の内面11に配置されており、2つのねじ穴12の間に1つのリフレクタ3が配置され、局所的な測定値を提供するために2つのリフレクタ3が内面11で対向して配置される。この実施形態では、リフレクタ3は長方形の形状を有する。他の実施形態では、リフレクタ3は、円形又は正方形の形状などの別の形状を有し得る。いくつかのリフレクタ3は、特定の識別可能な反射信号を提供するために異なる形状を有し得る。識別可能な各リフレクタ3の相対位置は、植え込みステップで知ることができる。
【0038】
図1dでは、少なくとも1つのリフレクタ3は、部分的にインプラント体2自体である。インプラント体2の上側要素14は、電磁波を放出するように構成される。別の実施形態では、インプラント体2は、リフレクタ3自体であり得る。インプラント体2の各部分は電磁波を反射することができる。
【0039】
別の実施形態では、インプラント体2は、リフレクタ3なしで電磁気信号を反射することを可能にする、リフレクタ3の相補的な形状を有する少なくとも1つの孔を備える、リフレクタ自体であってもよい。この実施形態では、インプラント体は、例えば3Dプリントしてもよく、チタンで作製してもよい。
【0040】
図1eでは、少なくとも1つのリフレクタ3は、インプラント体2の2つの部分2a、2bのうちの1つに配置され得る。別の実施形態では、少なくとも1つのリフレクタは、インプラント体2の2つの部分2a及び2bに配置され得る。
【0041】
別の実施形態では、リフレクタ3は、受動型の植え込み可能なリフレクタであり、特定の実施形態では、リフレクタ3は共振器であり得る。例えば、共振器は、スプリットリング共振器又はダイポールアンテナであり得る。
【0042】
1つの好ましい実施形態によれば、骨の推移を評価するためのシステムは、被検者の骨の構造を表すパラメータを計算するように構成された計算モジュール(図面に示されていない)をさらに含む。
【0043】
放出モジュールは、少なくとも1つの周波数を含む励起信号を放出し、リフレクタ3は、被検者の周囲組織の中で励起信号を受信し、信号を計算モジュールへ反射する。
【0044】
反射信号は、骨の構造を表すパラメータをもたらす。測定後に、計算モジュールは、前記パラメータを以前の測定と比較する。この比較は、
図1a、
図1b、
図1c、
図1d、
図1eに示される、関節固定ケージの周りの骨の構造の推移の指標をもたらす。別の実施形態では、計算モジュールは、骨再生の推移の指標を決定するべく、前記パラメータをモデル又は事前定義された閾値と比較する。
【0045】
一実施形態では、計算モジュールは非侵襲的デバイスである。別の実施形態では、計算モジュールは、例えば植え込み可能な医療器具1と組み合わされた侵襲的デバイスであり得る。パラメータは、周囲組織と接触しているリフレクタ3での励起信号の反射に対応する、反射信号から計算される。反射信号は、周囲組織の誘電率などの少なくとも1つの電気特性を表す。より正確には、反射信号は、周囲組織の少なくとも1つの電気特性の変化と直接又は間接的に相関する。反射信号は、例えば、周囲組織の誘電率εの変化と直接又は間接的に相関し得る。「直接に」又は「間接的に」の概念は、反射信号を、反射信号と直接相関させるか、又は代替として、前記反射信号の関数と、若しくは前記反射信号に基づく若しくは含む若しくは依存するパラメータと、相関させる可能性があることを指す。
【0046】
骨組織の誘電パラメータは、その組成とよく相関する。例えば、100kHz~5MHzの周波数での比誘電率は、疎構造をもつ組織とは異なる。小柱構造の表面に関連する微細構造パラメータが、比誘電率の主な決定因子であることが見出されている。これは、様々な微細構造要素の変化が、様々な電気パラメータによって検出され得ることを示唆する。
【0047】
電磁波が人間の組織に入射するとき、エネルギーの一部は透過し、一部はインピーダンスの不一致により反射される。反射係数及び透過係数は、組織ごとに異なり、誘電率、導電率、導電率及び周波数に依存する。
【0048】
反射される電磁波は、組織の誘電特性に依存し、反射される電磁波の周波数分析は、組織の分化又は対比の検出をもたらす。
【0049】
骨組織の再生が起こるとき、反射波分析(周波数又は時間)によってモニタリングすることができる誘電特性の推移が存在する。
【0050】
例えば、骨粗鬆症は、密度の減少と骨組織構造の脆弱化を主な症状とする深刻な健康状態に進行する疾患である。骨組織は、一般に、2つの層からなり、外層は皮質骨であり、内層は海綿骨である。骨粗鬆症によって骨組織が損傷すると、海綿骨からカルシウムが溶出する。結果として、徐々に形成された細孔及び亀裂に、液体成分、すなわち、脂肪及び骨髄が入り込む。結果として、骨粗鬆症の発症は、海綿骨の物理的特徴、特に、複素誘電率の変化をもたらす。
【0051】
別の実施形態によれば、骨の推移を評価するためのシステムは、励起信号を放出するように構成された放出モジュールを含み、励起信号は、リフレクタ3の特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む。
【0052】
このシステムはまた、反射信号を受信するように構成された受信モジュールを含み、反射信号は、被検者の周囲組織と接触しているリフレクタ3における、放出モジュールによって放出された励起信号の反射に対応する。放出モジュール及び受信モジュールは、1つの非侵襲的デバイスであり得る。別の実施形態では、放出モジュール、受信モジュール、及び計算モジュールは、1つの非侵襲的デバイスに結合される。
【0053】
一実施形態では、非侵襲的デバイスは、植え込み可能な医療器具1の各リフレクタ3の反射信号を個々に識別するように構成される。別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、骨再生の推移のパラメータを表示するように構成される。パラメータは、植え込み可能な医療器具の各リフレクタ3について計算される。この実施形態の利点は、より関心の高い場所に配置された特定のリフレクタ3によって提供される測定に基づいて、施術者が診断を行うことができることである。別の実施形態では、パラメータは、いくつかのリフレクタ3の異なる反射信号の合成に基づいて計算されてもよい。この実施形態の利点は、骨再生の推移の全体的な情報を表す各リフレクタ3によって提供される測定の組に基づいて、施術者が診断を行うことができることである。
【0054】
別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、インプラントの凹部13に骨ブリッジが完全に再生及び形成されるまでの残りの推定時間を表示するように構成される。そのような情報により、被検者は、それに応じて自分の日常生活の活動を適応させることができる。
【0055】
植え込み可能な医療器具を被検者の脊椎に植え込んだ後に、椎骨間で骨再生プロセスが期待される。骨再生プロセスの推移により、リフレクタ3で反射される励起信号が変化し得る。施術者が非侵襲的デバイスを使用するとき、植え込み可能な医療器具は励起にさらされる。測定は、例えば毎月行うことができる。別の実施形態では、測定は連続的である。測定の頻度は、時間に制限されない。
【0056】
測定は、2つの実施形態で実現することができる。第1の実施形態は、患者が1つの位置にある状態で実現され、各測定は、被検者が同じ位置にある状態で実現される。第2の実施形態は、患者がいくつかの位置にある状態で実現され、被検者の各位置で1つの測定が実現される。第2の実施形態では、被検者が第1の位置にある(例えば、被検者が直立している)状態で第1の測定が実現され、被検者が第2の位置にある(例えば、被検者が屈んでいる)状態で第2の測定が実現される。
【0057】
第2の実施形態では、モニタリングされる骨が癒合した場合、相対運動は不可能であり、反射信号は第1の測定と第2の測定の間で変化しない。モニタリングされる骨が癒合していない場合、椎骨間に相対運動が存在し、反射信号は第1の測定と第2の測定の間で変化する。シフトの方向は、隙間を埋める媒体の性質によって異なる。血液の場合、反射信号の周波数スペクトルは、より高い周波数へシフトする。空気の場合、反射信号の周波数スペクトルは、より低い周波数へシフトする。
【0058】
別の実施形態では、数日/数週間/数か月の間隔で相対運動による反射信号のシフト振幅の比較を測定することができる。この実施形態では、反射信号の第1及び第2のシフトは、被検者について同じ条件で測定される。第2のシフト測定は、例えば、第1のシフト測定から3か月後に実現される。第1のシフトと第2のシフトの比較が実現され、シフトが同じである場合、癒合は進んでおらず、一方、シフトが減少する場合、癒合が進んでいる。
【0059】
本発明の第2の態様は、骨接合術での被検者の骨再生をモニタリング及び確認するための植え込み可能な医療器具1に関する。
【0060】
図2a~
図2cに示すように、骨接合のための植え込み可能な医療器具1は、2つの部分に分けられるインプラント体2を備え、前記2つの部分のうち、1つの部分はプレート形状であり、もう1つの部分はねじ端を有する。骨接合のための植え込み可能な医療器具1はまた、リフレクタ3を備える。インプラント体2は、骨折した骨、より好ましくは、例えば、橈骨、尺骨、手の骨、足の骨、手首の骨、下顎骨又は上顎骨などの顔の骨に配置される。インプラント体2は、例えば金属又はポリマー又はセラミックなどの様々な材料で作製することができる。別の実施形態では、インプラント体2は、カーボングラファイトファイバで作製することができる。
【0061】
図2aには、インプラント体2の第1の部分が示されている。インプラント体2の第1の部分は、長円形の形状を有するが、長方形、正方形、円形、又は別の形状を有し得る。この実施形態では、インプラント体2の第1の部分は、骨接合プレートである。インプラント体2の第1の部分の寸法は、モニタリングする骨折した骨に応じて変化する。インプラント体2の第1の部分は、それを骨折した骨にねじ込むことができるようにするための穴12を備える。
図2aでは、インプラント体2の第1の部分は、インプラント体2の両方の側部に配置された6つの穴12を有する。インプラント体2の穴12の数に制限はない。穴12は、円形であるが、別の形状を有していてもよく、形状は、関連するねじと相補的である。
【0062】
有利なことに、植え込み可能な医療器具1は、治癒させる骨折した骨断片に配置される。別の実施形態では、植え込み可能な医療器具1は、修復し骨折をモニタリングすることを可能にするすべての骨に固定することができる。
【0063】
図2b及び
図2cには、インプラント体2の第2の部分が示されている。インプラント体2の第2の部分は骨接合ねじである。ねじは、インプラント体2の第1の部分を通り、穴12を通り、骨折した骨と交差し、骨再生の推移に関する情報を提供する。別の実施形態では、インプラント体2の第1の部分は、標準的なねじと共に用いることができる。
【0064】
図2b及び
図2cでは、インプラント体2の第2の部分は、ねじ端を有し、ねじ部分を直接ねじ込むことで骨に挿入することを可能にする。この実施形態では、インプラント体2は、インプラント体2の前端16によってねじ込まれる。インプラント体2の後端15はねじ切りされており、前端16の移動後に、植え込み可能な医療器具1の植え込みを可能にする。後端15は、インプラント体の第1の部分を骨に係止するために、前端16よりも大きな直径を有する。後端15は、骨折した骨の外側にある。後端15は、この実施形態では、インプラント体の第1の部分の穴12の1つに係止される。別の実施形態では、インプラント体の第2の部分は、骨折した骨の2つの端を互いに圧迫するために、インプラント体の第1の部分なしに用いられる。
【0065】
図2a~
図2cでは、植え込み可能な医療器具1は、骨折した骨の再生をモニタリングするために、インプラント体2の様々な部分の様々な位置に配置された少なくとも1つのリフレクタ3を備える。リフレクタ3は、インプラント体2の様々な部分が配置されるときに被検者の周囲組織と接触する。少なくとも1つのリフレクタ3は、1MHz~50GHzの範囲の特徴的な周波数の電磁気信号を反射するように構成される。好ましくは、特徴的な周波数は、500MHz~15GHzの範囲である。リフレクタ3は、信号雑音比を向上させるために、反射信号を増幅及び/又はフィルタリングすることができる。インプラント体2上のリフレクタ3の数に制限はない。
【0066】
図2aでは、リフレクタ3は、インプラント体2の第1の部分の上面4の中央に固定されているが、別の実施形態では、リフレクタ3は、別の位置、例えば、インプラント体2の上面4の後部又は前部にあってもよい。リフレクタ3は、インプラント体2の上面4及び下面5に固定されてもよい。
【0067】
図2b及び
図2cでは、リフレクタ3は、インプラント体2の第2の部分の中央部に固定されている。中央部は、ねじ切りされておらず、平滑である。中央部は、例えば、凹形、凸形、又は平面であり得る。
図2bでは、リフレクタ3は、長方形であり、インプラント体2に沿って延びている。
図2cでは、リフレクタ3は、インプラント体2の中央部の周りにねじ山のように巻かれている。リフレクタ3は、インプラント体2の中央部の形状にフィットするように作製される。
【0068】
他の実施形態では、リフレクタ3は、円形又は正方形の形状などの他の形状を有し得る。いくつかのリフレクタ3は、特定の識別可能な反射信号を提供するために異なる形状を有し得る。識別可能な各リフレクタ3の相対位置は、植え込みステップで知ることができる。
【0069】
別の実施形態では、インプラント体2は、リフレクタ3自体であり得る。インプラント体2の各部分がリフレクタ要素であり得る。別の実施形態では、リフレクタ3は、受動型の植え込み可能なリフレクタであり、特定の実施形態では、リフレクタ3は共振器であり得る。例えば、共振器は、スプリットリング共振器又はダイポールアンテナであり得る。別の実施形態では、インプラント体2は、リフレクタ3なしで電磁気信号を反射することを可能にし、リフレクタ3の相補的な形状を有する少なくとも1つの孔を備える、リフレクタ自体であってもよい。この実施形態では、インプラント体は、例えば3Dプリントしてもよく、チタンで作製してもよい。
【0070】
1つの好ましい実施形態によれば、骨の推移を評価するためのシステムは、被検者の骨の構造を表すパラメータを計算するように構成された計算モジュール(図面に示されていない)をさらに含む。
【0071】
放出モジュールは、少なくとも1つの周波数を含む励起信号を放出し、リフレクタ3は、被検者の周囲組織の中で励起信号を受信し、信号を計算モジュールへ反射する。
【0072】
反射信号は、骨の構造を表すパラメータをもたらす。測定後に、計算モジュールは、パラメータを以前の測定と比較する。この比較は、骨折した骨の推移をもたらす。別の実施形態では、計算モジュールは、骨再生の推移を判断するべく、パラメータをモデル又は事前定義された閾値と比較する。
【0073】
一実施形態では、計算モジュールは非侵襲的デバイスである。別の実施形態では、計算モジュールは、例えば植え込み可能な医療器具と組み合わされた侵襲的デバイスであり得る。パラメータは、周囲組織と接触しているリフレクタ3での励起信号の反射に対応する、反射信号から計算される。反射信号は、周囲組織の誘電率などの少なくとも1つの電気特性を表す。より正確には、反射信号は、周囲組織の少なくとも1つの電気特性の変化と直接又は間接的に相関する。この電気特性の変化は、例えば、誘電率εの変化であり得る。
【0074】
骨接合での骨再生の推移において非常に関心がもたれるパラメータは、骨折した骨の緻密化である。
【0075】
別の好ましい実施形態によれば、システムは、励起信号を放出するように構成された放出モジュールを含み、励起信号は、リフレクタ3の特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む。
【0076】
システムはまた、反射信号を受信するように構成された受信モジュールを含み、反射信号は、周囲組織と接触しているリフレクタ3での、放出モジュールによって放出された励起信号の反射に対応する。放出モジュール及び受信モジュールは、1つのみの非侵襲的デバイスであり得る。別の実施形態では、放出モジュール、受信モジュール、及び計算モジュールは、1つの非侵襲的デバイスに結合される。
【0077】
別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、インプラント体2の各リフレクタ3の反射信号を個々に識別するように構成される。別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、骨折した骨の骨再生の推移の特定の指標を表示するように構成される。特定の指標は、インプラント体2の各リフレクタ3について計算される。この実施形態の利点は、より関心の高い場所に配置された特定のリフレクタ3によって提供される測定に基づいて、施術者が診断を行うことができることである。別の実施形態では、特定の指標は、いくつかのリフレクタ3の異なる反射信号の合成に基づいて計算されてもよい。この実施形態の利点は、骨再生の推移の全体的な情報を表す各リフレクタ3によって提供される測定の組に基づいて、施術者が診断を行うことができることである。
【0078】
別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、骨折した骨が完全に再生及び形成されるまでの残りの推定時間を表示するように構成される。そのような情報により、被検者は、それに応じて自分の日常生活の活動を適応させることができる。
【0079】
植え込み可能な医療器具1を被検者の骨折した骨に植え込んだ後に、骨折した骨の2つの骨折端間で骨再生プロセスが期待される。骨再生プロセスの推移により、リフレクタ3で反射される励起信号が変化し得る。施術者が非侵襲的デバイスを使用するとき、インプラント体2は励起にさらされる。測定は、例えば毎月行うことができる。別の実施形態では、測定は連続的である。測定の頻度は、時間に制限されない。
【0080】
本発明の第3の態様は、骨粗鬆症を患っている被検者の骨の構造をモニタリングするための、植え込み可能な医療器具1に関する。骨構造及び組成をモニタリングすることで、臨床医は、骨粗鬆症を診断し、被検者が遭遇する骨折のリスクを評価することができる。この情報に基づいて、施術者は、骨折を防ぐために骨変性に応じて適切なレベルの治療を実施することができる可能性がある。本発明はまた、被検者が骨粗鬆症の症状のために受けた医療処置が期待される結果をもたらすかどうか、及び、骨の変性が遅くなるかどうかを評価することを可能にする。実際、治療により骨の質が改善されれば、骨はより硬く緻密になる。
【0081】
図3a及び
図3bに示すように、被検者の骨構造の推移を評価するためのシステムが提示される。システムは、植え込み可能な医療器具1を含み、前記植え込み可能な医療器具1は、インプラント体2とリフレクタ3を備える。これらの実施形態では、インプラント体2は、骨粗鬆症用インプラントである。植え込み可能な医療器具1は、例えば、膝、腰、大腿骨頚部、踵、椎骨、手首、及び肋骨、又は骨粗鬆症の検査が可能なすべての骨に配置され得る。インプラント体2は、例えば金属又はポリマー又はセラミックなどの様々な材料で作製することができる。別の実施形態では、インプラント体2はまた、カーボングラファイトファイバで作製することができる。
【0082】
図3a及び
図3bのインプラント体2は、スティックインプラントに対応している。インプラント体2は、端に丸みがある円筒形の形状を有する。インプラント体2は、端に丸みがある長方形の形状又は別の形状を有していてもよい。インプラント体2は、モニタリングする骨又は関節への植え込み可能な医療器具1の挿入を容易にするために、スパイク状の端を有していてもよい。
【0083】
図3a及び
図3bの植え込み可能な医療器具1は、骨粗鬆症の状態をモニタリングするためにインプラント体2に少なくとも1つのリフレクタ3をさらに備える。リフレクタ3は、インプラント体2が配置されるときに被検者の周囲組織と接触する。少なくとも1つのリフレクタ3は、1MHz~50GHzの範囲の特徴的な周波数の電磁気信号を反射するように構成される。好ましくは、特徴的な周波数は、500MHz~15GHzの範囲である。リフレクタ3は、信号雑音比を向上させるために、反射信号を増幅及び/又はフィルタリングすることができる。インプラント体2上のリフレクタ3の数に制限はない。
【0084】
図3a及び
図3bでは、リフレクタ3は、インプラント体2の外面上に配置されており、リフレクタ3は、インプラント体2に沿って延びている。中央部は、例えば、凹形、凸形、又は平面である。
図3aでは、リフレクタ3は長方形であり、インプラント体2に沿って延びている。
図3bでは、リフレクタ3は、インプラント体2の中央部の周りにねじ山のように巻かれている。リフレクタ3は、インプラント体2の中央部の形状にフィットするように作製される。骨の質に関する局所的な情報をモニタリングするために、いくつかのリフレクタ3がインプラント体2に配置されてもよい。
【0085】
他の実施形態では、リフレクタ3は、円形又は正方形の形状などの他の形状を有し得る。いくつかのリフレクタ3は、特定の識別可能な反射信号を提供するために異なる形状を有し得る。識別可能な各リフレクタ3の相対位置は、植え込みステップで知ることができる。
【0086】
別の実施形態では、インプラント体2は、リフレクタ自体であり得る。インプラント体2の各部分がリフレクタ要素であり得る。別の実施形態では、リフレクタ3は、受動型の植え込み可能なリフレクタであり、特定の実施形態では、リフレクタ3は共振器であり得る。例えば、共振器は、スプリットリング共振器又はダイポールアンテナであり得る。別の実施形態では、インプラント体2は、リフレクタ3なしで電磁気信号を反射することを可能にし、リフレクタ3の相補的な形状を有する少なくとも1つの孔を備える、リフレクタ自体であってもよい。この実施形態では、インプラント体は、例えば3Dプリントしてもよく、チタンで作製してもよい。
【0087】
1つの好ましい実施形態によれば、骨の質を評価するためのシステムは、被検者の骨の構造を表すパラメータを計算するように構成された計算モジュール(図面に示されていない)をさらに含む。
【0088】
放出モジュールは、少なくとも1つの周波数を含む励起信号を放出し、リフレクタ3は、被検者の周囲組織の中で励起信号を受信し、信号を計算モジュールへ反射する。
【0089】
反射信号は、骨の構造を表すパラメータをもたらす。測定後に、計算モジュールは、パラメータを以前の測定と比較する。この比較は、骨の質の推移をもたらす。別の実施形態では、計算モジュールは、パラメータをモデル又は事前定義された閾値と比較する。
【0090】
一実施形態では、計算モジュールは非侵襲的デバイスである。別の実施形態では、計算モジュールは、例えば植え込み可能な医療器具と組み合わされた侵襲的デバイスであり得る。パラメータは、周囲組織と接触しているリフレクタ3での励起信号の反射に対応する、反射信号から計算される。反射信号は、周囲組織の誘電率などの少なくとも1つの電気特性を表す。より正確には、反射信号は、周囲組織の少なくとも1つの電気特性の変化と直接又は間接的に相関する。この電気特性の変化は、例えば、誘電率εの変化であり得る。
【0091】
別の好ましい実施形態によれば、システムは、励起信号を放出するように構成された放出モジュールを含み、励起信号3は、リフレクタの特徴的な周波数範囲内の少なくとも1つの周波数を含む。
【0092】
システムはまた、反射信号を受信するように構成された受信モジュールを含み、反射信号は、周囲組織と接触しているリフレクタ3での、放出モジュールによって放出された励起信号の反射に対応する。放出モジュール及び受信モジュールは、1つのみの非侵襲的デバイスであり得る。別の実施形態では、放出モジュール、受信モジュール、及び計算モジュールは、1つの非侵襲的デバイスに結合される。
【0093】
別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、インプラント体2の各リフレクタ3の反射信号を個々に識別するように構成される。別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、時間の経過に伴う骨の質の特定の指標を表示するように構成される。特定の指標は、インプラント体2の各リフレクタ3について計算される。この実施形態の利点は、より関心の高い場所に配置された特定のリフレクタ3によって提供される測定に基づいて、施術者が診断を行うことができることである。別の実施形態では、特定の指標は、いくつかのリフレクタ3の異なる反射信号の合成に基づいて計算されてもよい。この実施形態の利点は、骨の質の全体的な情報を表す各リフレクタ3によって提供される測定の組に基づいて、施術者が診断を行うことができることである。
【0094】
別の実施形態では、非侵襲的デバイスは、例えば骨折までの残りの推定時間を表示するように構成される。そのような情報により、被検者は、それに応じて自分の日常生活の活動を適応させることができる。
【0095】
植え込み可能な医療器具1を骨又は関節に植え込んだ後に、骨質変性プロセスが期待される。骨変性プロセスの推移により、リフレクタ3で反射される励起信号が変化し得る。施術者が非侵襲的デバイスを使用するとき、インプラント体2は励起にさらされる。測定は、例えば毎月行うことができる。別の実施形態では、測定は、連続的である。測定の頻度は、時間に制限されない。