(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
D21F 3/02 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
D21F3/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199068
(22)【出願日】2022-12-14
【審査請求日】2023-01-16
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】トゥーリ シロマー
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-183753(JP,A)
【文献】特開2021-183751(JP,A)
【文献】特表2022-514183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンに配置されるスリーブロールのためのベルトであって、
内面と、
外面とを備
え、
ベルトは、
本体と、
補強構造とを備え、
前記補強構造は、
ベルトの第1方向に配置されている第1ヤーンと、
ベルトの第2方向に配置されている第2ヤーンとを含み、
前記第1ヤーンは、ベルトの前記外面に最も近い最も外側のヤーンであり、
前記補強構造はさらに、ベルトの前記第1方向に平行に配置されている補助ヤーンを含み、
前記補助ヤーンは、前記本体の外面からベルトの深さ方向に各ヤーンの外面まで測定して、前記第1ヤーンの深さよりも大きい深さまで配置され、
前記補助ヤーンの直径は、前記第1ヤーンの直径よりも少なくとも20%小さい、ベルト。
【請求項2】
前記補助ヤーンは、前記本体の前記外面からベルトの前記深さ方向に各ヤーンの前記外面まで測定して、前記第1ヤーンの前記深さよりも少なくとも10%大きい深さまで配置されている、請求項1記載のベルト。
【請求項3】
前記補助ヤーンは、前記本体の前記外面からベルトの前記深さ方向に各ヤーンの中心点まで測定して、前記第1ヤーンの前記深さよりも少なくとも10%大きい深さまで配置されている、請求項1記載のベルト。
【請求項4】
前記補助ヤーンは、前記本体の前記外面からベルトの前記深さ方向に各ヤーンの底面まで測定して、前記第1ヤーンの前記深さよりも少なくとも10%大きい深さまで配置されている、請求項1記載のベルト。
【請求項5】
前記補助ヤーンのうち少なくともいくつかは、前記本体と前記第1ヤーンとの色から視覚的に認識可能な材料で形成されている、請求項1記載のベルト。
【請求項6】
前記補助ヤーンの前記直径は、0.1mmないし1mmの範囲にある、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項7】
前記補助ヤーンの数は、前記第1方向に垂直に測定して、100ないし800ヤーン/mの範囲にある、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項8】
前記補助ヤーンのm当たりの数(/m)は、前記第1方向に垂直に測定して、前記第1ヤーンのm当たりの数の少なくとも0.5倍であり、
前記補助ヤーンのm当たりの数(/m)は、前記第1方向に垂直に測定して、前記第1ヤーンのm当たりの数の3倍以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項9】
前記補助ヤーンは、前記第1ヤーンなしで、ベルトの進行方向に測定して、50kN/m以上の破断強度を与えるように配置されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項10】
前記第1ヤーンの前記直径は、0.3mmないし3mmの範囲にあり、及び/又は、
前記第2ヤーンの直径は、0.3mmないし3mmの範囲にある、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項11】
前記補助ヤーンは、前記本体の前記外面からベルトの前記深さ方向に各補助ヤーンの外面まで測定して、2mm以下の深さまで配置されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項12】
前記補助ヤーンは、以下のもの、即ち、
・ポリアミド(PA);
・芳香族ポリアミド;
・レーヨン;
・ポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・炭素繊維/熱可塑性複合材料
のうちの少なくとも1つを含むか、有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項13】
前記本体は、バイオベースポリウレタン及び/又は再生ポリウレタンを含み、及び/又は、
前記補助ヤーンは、バイオベースポリマー及び/又は再生ポリマーを含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項14】
以下の特性、即ち、
ベルトは、ベルトを伸張する力が除去された後に元の長さにもどるように、ベルトの進行方向に少なくとも1.5%で、弾性的に伸張するように構成されていることと、
ベルトの前記進行方向での2%の特定の伸び率での荷重(LASE 2%)は、28kN/m以上であり、50kN/m以下であることと、
ベルトの前記進行方向での4%の特定の伸び率での荷重(LASE 4%)は、49kN/m以上であり、80kN/m以下であることと、
ベルトは、ベルトの前記進行方向に25kN/mの力でベルトを伸張する力が除去された後、元の長さにもどるように構成されていることと、
ベルトは、摂氏20度の温度でベルトの前記進行方向に測定して、20%以上の、破断時の引張伸びを有することと
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項15】
カーブ要素を含むスリーブロールの上に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルトを備えている、構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブロールベルトに関する。本発明は、特に、スリーブロール上にスリーブロールベルトを含む構成に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機、並びにボード、パルプ、及びティッシュのマシンは、典型的には、形成区間、プレス区間及び乾燥区間を備えている。紙、パルプ、及びボードの生産では、生産効率を向上させるために、湿潤な繊維ウェブからの脱水量をいかに増加させるかが課題となっている。
【0003】
今日では、これらのマシンは、典型的には、繊維ウェブから水を除去するためにフェルトとワイヤとを有する。水は、例えば、少なくとも1つの形成ワイヤを介して形成区間で除去することができる。
【0004】
スリーブロールは、例えば、ウェブからの脱水を向上させるために、形成区間において使用することができる。スリーブロールは、スリーブロールベルトを有する必要がある。しかしながら、スリーブロールを使用して、良好な性能を発揮できるベルトを得ることは困難であった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、スリーブロールのための新規なベルトを開示する。新規な構成は、スリーブロールでのベルトを含む。
【0006】
本発明の目的は、スリーブロールのための改良されたベルトを提供することである。発明の態様は、独立の請求項に記載されたことによって特徴づけられる。本発明の様々な実施形態が、従属の請求項に開示されている。
【0007】
スリーブロールは、典型的には、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのワイヤ区間に配置されている。スリーブロールにより、ワイヤ区間の水分の除去を向上させることができる。
【0008】
本明細書によるベルト、即ち、スリーブロールベルトは、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのスリーブロールに適している。
【0009】
カーブ要素をその外面に有するスリーブロールの構造は、例えば、シュープレスの構造とは異なり、従って、スリーブロールベルトに必要とされる特性は、例えば、シュープレスベルトに必要とされる特性とは異なる。例えば、シュープレスベルトは、シュープレスの長ニップによって生じる応力に対処することができする必要がある。シュープレスの長ニップは、プレスゾーンへの進入と、プレスゾーンからの退出とについて、鋭いたわみのためにベルトに高い応力を生じさせる。スリーブロールは、前述の長ニップを有さないので、スリーブロールベルトは、この種の応力に対処する必要がない。しかしながら、スリーブロールベルトは、スリーブロールのカーブ要素によって生じる応力に対処するのに適した特性を有する必要がある。シュープレスに使用されているベルトは、スリーブロールでは正常に作動していない。従って、スリーブロールに適した改良ベルトが必要とされてきている。
【0010】
カーブ要素、特に可動なカーブ要素は、典型的には、ベルトとベルトに接触しているワイヤとの間の速度差を引き起こす。速度差は、ベルトとワイヤとの摩耗が速すぎるため、問題がある。前述の速度差は、中立軸の位置がベルトの外面の近くにあるように、ヤーンの位置及び特性を制御することによって最小限にすることができる。しかし、単にベルトの中立軸をシフトさせるだけで、新たな問題を引き起こす可能性がある。外面近くのヤーンは、ベルトの内面近くのヤーンよりも損傷しやすい場合がある。外面近くのヤーンが損傷した場合に、ベルトの強度が制御されない方法で低下する可能性があり、それにより、計画外の停止時間がマシンに生じる可能性がある。従って、マシンの生産効率は、使用中のベルトの中立軸の位置と、ベルトの強度特性との両方を制御することによって、実質的に向上させることができる。
【0011】
中立軸の位置は、補強構造に依存してよく、特に、実質的にベルトの進行方向に配置されたヤーンに依存してよい。第1ヤーンの位置でのベルトの速度は、ワイヤの速度と実質的に同じになるように制御することができる。しかしながら、ベルトの外面でのベルトの速度は、典型的には、ワイヤの速度とは異なる。この速度差を最小にするために、第1ヤーンをベルトの外面の近くに配置することができる。しかしながら、これは、ベルトの摩耗により、ベルトの外面近くのヤーンが損傷する可能性があるので、さらなる問題を引き起こす可能性がある。従って、ベルトを新しいものに変更する必要が過剰に頻繁にあることがあり、ベルトの総コストを増加させる。
【0012】
本発明者は、驚くべきことに、第1ヤーンとともに補助ヤーンを使用することが可能であることを見出した。補助ヤーンにより、第1ヤーンが損傷してもベルトの強度は許容可能なレベルに維持できる。その一方、補助ヤーンはベルトの中立軸の位置に過大な影響を与えないことが可能である。従って、ベルト(及びワイヤ)の摩耗レベルは、好適なレベルに維持されることができる。
【0013】
スリーブロールのベルトは、内面と外面とを備えてよい。使用中に、外面が繊維ウェブに面し、内面がスリーブロールに面してよい。
【0014】
ベルトは、好ましくは弾性的な本体である本体と、補強構造とを備えてよい。補強構造は、弾性的な本体を支持する支持構造としてよい。
【0015】
補強構造は、第1ヤーンと第2ヤーンとを含んでよい。第1ヤーンはベルトの第1方向に配置され、第2ヤーンはベルトの第2方向に配置されている。
【0016】
第1方向は、ベルトの進行方向に平行又は実質的に平行であってよい。
【0017】
ベルトの第1ヤーンは、好ましくは、ベルトの外面の近くにある。第1ヤーンは、ベルトの外面に最も近い最も外側のヤーンであってよい。この技術的効果は、ベルトの中立軸がベルトの外面の近くにある可能性があることである。これにより、ベルトの摩耗を大幅に低減でき、ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0018】
第2方向は、第1方向に垂直又は実質的に垂直であってよい。さらに第2方向は、ベルトの回転軸に平行又は実質的に平行であってよい。
【0019】
ベルトの補強構造は、補助ヤーンをさらに備えている。補助ヤーンは、ベルトの第1方向に平行又は実質的に平行に配置されてよい。従って、補助ヤーンは、第1ヤーンに平行又は実質的に平行に配置されてよい。さらに、補助ヤーンは、ベルトの進行方向に平行又は実質的に平行に配置されてよい。
【0020】
補助ヤーンは、第1ヤーンよりも細くてよい。例えば、補助ヤーンの直径が第1ヤーンの直径よりも小さい場合に、補助ヤーンは第1ヤーンよりも柔軟であってよい。補助ヤーンは、第1ヤーンの直径よりも少なくとも20%小さい直径、好ましくは30%以上小さい直径を有してよい。従って、補助ヤーンは、少なくとも所定の時間にわたって適当な強度を与えることができるが、ベルトの中立軸に過大な影響を与えないことが可能である。さらにまた、直径の減少により、補助ヤーンは、コスト効率がよく、環境に優しい解決策となることができる。
【0021】
第1ヤーンの直径は、例えば、0.3mmないし3.0mmの範囲にあってよい。補助ヤーンの直径は、0.1mmないし1.5mmの範囲、好ましくは、0.3mmないし1.0mmの範囲にあってよい。
【0022】
第1ヤーンは、弾性的な本体の外面からベルトの深さ方向に第1ヤーンの底部まで測定して、3mm以下の深さまで配置されてよい。従って、第1ヤーン層の第1ヤーンは、弾性的な本体の中に部分的に又は完全に配置されてよい。従って、第1ヤーンは、弾性的な本体の材料によって完全に取り囲まれてよい。
【0023】
有利には、第1ヤーンは、弾性的な本体の外面からベルトの深さ方向に各第1ヤーンの外面まで測定して、2.0mm未満の深さ、さらに好ましくは1.5mm以下の深さ、又は0.8mm以下の深さ、最も好ましくは少なくとも0.5mmの深さまで配置されている。この技術的効果は、ベルトの摩耗が低減できるようにするためにベルトの外面近くにベルトの中立軸を提供することである。これにより、ベルトの寿命が他のベルトと比較して長くなることが可能である。さらに、本体材料は、ヤーンを損傷から保護することができる。
【0024】
補助ヤーンは、各ヤーンの外面からベルトの深さ方向に判定して、第1ヤーンの深さよりも少なくとも10%大きい深さ、好ましくは少なくとも20%大きい深さまで、ベルト内に配置してよい。従って、補助ヤーンは、たとえ第1ヤーンが損傷された場合でも、ベルトの進行方向においてベルトの強度を、許容可能なレベルに維持することができる。さらに、各補助ヤーンの直径は、各第1ヤーンの直径よりも小さくすることができ、従って、ベルト(及びワイヤ)の摩耗レベルを好適なレベルに維持することができる。
【0025】
補助ヤーンは、本体の材料によって完全に取り囲まれてよい。補助ヤーンは、本体の外面からベルトの深さ方向に各ヤーンの底部まで測定して、2mm以下、好ましくは1.5mm以下の深さまで配置してよい。この技術的効果は、ベルトの摩耗が低減できるように、ベルトの外面近くにベルトの中立軸を提供することである。
【0026】
補助ヤーンは、本体の外面からベルトの深さ方向に各ヤーンの中心点まで測定して、第1ヤーンの深さ以上の深さまで配置してよい。
【0027】
有利には、補助ヤーンは、各第1ヤーンの外面からベルトの深さ方向に各補助ヤーンの外面まで測定して、第1ヤーンの深さよりも少なくとも0.1mm大きく、さらに好ましくは0.3mm以上大きく、最も好ましくは0.5mm以上大きい深さまで配置されている。この技術的効果は、補助ヤーンが、第1ヤーンが使用中に損傷された後、一層長い時間の間、ベルトの強度を好適なレベルに維持することができることである。さらに、補助ヤーンは、各第1ヤーンの外面からベルトの深さ方向に各補助ヤーンの外面まで測定して、第1ヤーンの深さよりも1.2mm未満、さらに好ましくは1.0mm未満、最も好ましくは0.8mm未満の深さまで配置してよい。この技術的効果は、ベルトの摩耗が低減できるようにベルトの外面近くに中立軸を維持することである。他のベルトと比較して、ベルトの寿命が長くなることが可能である。
【0028】
補助ヤーンは、本体の外面からベルトの深さ方向に各ヤーンの外面まで測定して、第1ヤーンの深さよりも少なくとも10%大きい深さ、好ましくは少なくとも20%大きい深さ、最も好ましくは少なくとも30%大きい深さまで配置されている。
【0029】
有利には、補助ヤーンは、第1ヤーンの直径に依存する深さまで配置されている。各第1ヤーンと各補助ヤーンとの間の深さの差は、第1ヤーンの直径の30%ないし100%の範囲、好ましくは第1ヤーンの直径の40%ないし90%の範囲、さらに好ましくは第1ヤーンの直径の40%ないし80%の範囲にあってよい。ここで深さの差は、各第1ヤーンの外面からベルトの深さ方向に各補助ヤーンの外面まで判定される。この技術的効果は、補助ヤーンが、第1ヤーンが使用中に損傷された後に、ベルトの強度を好適なレベルに維持することができることである。さらに、ベルトの摩耗の低減を可能にするために、ベルトの外面近くに中立軸を維持することができる。これにより、ベルトの寿命が他のベルトと比較して長くなることが可能である。
【0030】
補助ヤーンの数は、補助ヤーンの方向に垂直に測定して、200ないし800ヤーン/mの範囲にあってよい。補助ヤーンのm当たりの数(/m)は、第1ヤーンのm当たりの数の0.5倍ないし3倍の範囲にあり、好ましくは第1ヤーンのm当たりの数の1倍ないし2倍の範囲にあってよい。従って、ベルトは、第1ヤーンが損傷された後でも、スリーブロールに対して良好な伸び及び強度特性を有することができる。
【0031】
補助ヤーンは、第1ヤーンなしで、ベルトの進行方向に測定して、50kN/m以上の破断強度を与えるように配置されてよい。この技術的効果は、ベルトは、第1ヤーンが破断した後でも、スリーブロールベルトの進行方向にスリーブロールに適した強度を有することができることである。
【0032】
従って、補助ヤーンは、第1ヤーンなしで、ベルトの進行方向に測定して、50kN/m以上、好ましくは70kN/mないし200kN/mの範囲の破断強度を与えるように配置されている。
【0033】
補助ヤーンは、以下のもの、即ち、
・ポリアミド(PA);
・芳香族ポリアミド;
・レーヨン;
・ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・炭素/熱可塑性複合材料
のうちの少なくとも1つを含むか、有してよい。
【0034】
これらの材料は、補助ヤーンに十分な強度特性と寸法安定性とを提供するために使用してよい。好ましくは、補助ヤーンは、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含むか、又はこれからなる。従って、補助ヤーンの寸法安定性は、向上されたレベルにあることが可能である。
【0035】
環境上の理由から、補助ヤーンは、バイオポリマー(バイオベースポリマー)を含んでよく、又は、これからなっていてよい。これに代えて、又はこれに加えて、補助ヤーンは、再生ポリマーを含んでよく、又は、これからなっていてよい。
【0036】
スリーブロールベルトは、以下の特性、即ち、
・ベルトは、ベルトを伸張する力が除去された後に元の長さにもどるように、ベルトの進行方向に少なくとも1.5%、好ましくは、ベルトの進行方向に1.8%ないし3.0%の範囲で、弾性的に伸張するように構成されていることと、
・ベルトの進行方向での2%の特定の伸び率での荷重(LASE 2%)は、28kN/m以上であり、好ましくは50kN/m以下であることと、
・ベルトの進行方向での4%の特定の伸び率での荷重(LASE 4%)は、49kN/m以上であり、好ましくは80kN/m以下であることと、
・ベルトは、ベルトの進行方向に25kN/mの力でベルトを伸張する力が除去された後、元の長さにもどるように構成され、好ましくはベルトは、ベルトの進行方向に30kN/mの力でベルトを伸張する力が除去された後、元の長さにもどるように構成されていることと、
・ベルトは、摂氏20度の温度でベルトの進行方向に測定して、20%以上、例えば20ないし25%の範囲の、破断時の引張伸びを有することと
のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは全てを有するように構成されてよい。
【0037】
従って、ベルトは、スリーブロールのための向上された特性を有することが可能である。
【0038】
新しい解決により、改良されたスリーブロールベルトを得ることができる。新規な補強構造は、補助ヤーンを含み、補助ヤーンは、第1ヤーンよりも細くてよい。
【0039】
新規なスリーブロールベルトは、たとえ第1ヤーンが破断された場合でも、適当な強度を有することができる。さらに、ベルトの中立軸は、ベルトの外面の近くにあってよい。従って、ベルトの摩耗を低減することができる。さらに、ベルトとベルトに接触するワイヤとの速度差が小さくできるので、ワイヤの摩耗が少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下では、本発明は、下記の図面に図示される。
【0041】
【0042】
図は、縮尺通りでない場合がある例示である。同様の部分を同じ参照番号で図中に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本出願の全ての実施形態は、例示的な実施形態として示される。これらは限定的なものと考えないものとする。
【0044】
[用語]
本出願で、「ベルト」及び「スリーブロールベルト」という用語は、別段の断りのない限り、スリーブロールに適したベルトを指す。スリーブロールベルト10は抄紙機のスリーブロールに適している。スリーブロールベルト10は、ボード、パルプ又はティッシュのマシンに適している。スリーブロールベルト10はスリーブロール100上に配置してよい。スリーブロール100は、例えば、紙、ボード、パルプ、又はティッシュのマシンのワイヤ区間に配置されてよい。スリーブロールベルトは、ワイヤ区間での非常に湿潤な繊維ウェブからの水分除去を向上させるために使用してよい。スリーブロールベルト10は、不透過性ベルトであってよい。
【0045】
本出願で、「ヤーン」という用語は、相対的に小さな断面を有する長い構造を意味する。ヤーンは、撚りの有無にかかわらず、繊維及び/又はフィラメントから構成してよい。ヤーンは、複数の合撚糸としてよい。ヤーンは、合成ポリマーをベースとしてよい。用語「フィラメント」は、大きな長さの繊維を意味する。
【0046】
用語「第1ヤーン層」及び「第1ヤーン」は、第1方向に配置されたヤーンを指す。
【0047】
用語「第2ヤーン層」及び「第2ヤーン」は、第2方向に配置されたヤーンを指す。
【0048】
従って、本出願で、用語「第1方向」D1は、第1ヤーンが配置される方向を指す。さらに、用語「第2方向」D2は、第2ヤーンが配置される方向を指す。第1方向は、好ましくは、ベルトの進行方向に平行又は実質的に平行である。第2方向は、好ましくは、ベルトの交差方向に平行又は実質的に平行である。
【0049】
用語「進行方向」MDは、使用中のスリーブロールベルトの回転方向を指す。用語「交差方向」CDは、典型的にはベルト10の進行方向MDに対して横切る、長手方向を指す。使用時、交差方向は、スリーブロールベルトの回転軸に平行である。従って、交差方向は、使用中のスリーブロールベルトの回転軸に平行な方向を指す。
【0050】
第1ヤーンは、スリーブロールベルトの進行方向に実質的に平行に配置されてよい。第2ヤーンは、スリーブロールベルトの交差方向に実質的に平行に配置されてよい。
【0051】
本出願で、用語「実質的に平行な」とは、1つの方向が、10度を超えて前述の実質的に平行な方向から逸脱しないこと、さらに有利には、5度を超えて前述の実質的に平行な方向から逸脱しないこと、最も好ましくは、3度を超えて前述の実質的に平行な方向から逸脱しないことを意味する。従って、例えば、本出願で、「進行方向に実質的に平行な」とは、1つの方向が、10度を超えて進行方向から逸脱しないこと、さらに有利には、5度を超えて進行方向から逸脱しないこと、最も好ましくは、3度を超えて進行方向から逸脱しないことを意味する。さらに、例えば、本出願で、「交差方向に実質的に平行な」とは、1つの方向が、10度を超えて交差方向から逸脱しないこと、さらに有利には、5度を超えて交差方向から逸脱しないこと、最も好ましくは、3度を超えて交差方向から逸脱しないことを意味する。
【0052】
本明細書において、用語「弾性」とは、ベルトを伸ばしたり押したりした後、即ち、力が除去されたときに、ベルトが元の形状にもどる能力を指す。弾性率(%)は、ベルトがどれだけ弾性的に伸びるかを示す値である。
【0053】
特定の伸び率での荷重(LASE, load at specific elongation)は、決定された伸びに必要な荷重、即ち、特定の伸びにかかる荷重を指す。たとえば、LASE 2%は伸びが2%の場合の測定荷重として定義される値である。特定の伸び率での荷重は、標準SFS(フィンランド規格協会)2983に基づいて決定される。これらの値は、Lorentzen & Wettre AB(スウェーデン)のAlwetron TCT20デバイスを使用して決定してよい。
【0054】
また、本技術分野では、特定の力で伸びることを指して、EASFという用語を使用する。EASFは、LASEと同様の目的で使用してよいが、EASF(特定の力での伸び)はLASE(特定の伸び率での荷重)とは異なる。
【0055】
破断強度は、標準SFS2983に基づいて決定されてよい。これらの値は、Lorentzen & Wettre AB(スウェーデン)のAlwetron TCT20デバイスを使用して決定されてよい。
【0056】
また、ベルトの深さ方向を指して、ベルトの厚みという用語を使用する。
【0057】
[紙、ボード、パルプ及びティッシュのマシン]
典型的には、紙、ボード、パルプ及びティッシュのマシンでは、繊維ウェブは、プロセスラインに連続的に配置されたいくつかの装置によって形成されたアセンブリで、生産及び処理される。典型的な生産ラインは、ヘッドボックスとワイヤとを含んだ形成区間、プレス区間、乾燥区間、最後にリールアップを含む。さらに、生産ラインは、典型的には、例えば、顧客用のロールを形成するための少なくとも1つのワインダを含む。
【0058】
形成区間では、典型的には、ヘッドボックスを使用して繊維ウェブを形成する。さらに、一部の水は、少なくとも1つの形成ワイヤを介して除去することができる。スリーブロール100は、中の水分除去を向上させるために、形成区間内に配置することができる。本発明は、スリーブロール100のためのベルト10に関する。
【0059】
[スリーブロール]
図1a及び
図1bを参照すると、スリーブロール100は、カーブ要素110と、支持軸102とを含んでよい。
【0060】
作用では、スリーブロールベルトは、典型的には、カーブ要素での脱水ゾーンを通って延びる。カーブ要素110は、カーブ要素110でのスリーブロールベルトを伸張する力を増大させることができる。カーブ要素110は、可動であってよく、即ち、カーブ要素110の表面でのスリーブロールベルトの曲率半径は、スリーブロールの中心に向かって、又はスリーブロールの外面から外側に向かって、カーブ要素110を移動させることによって制御することができる。従って、スリーブロールベルト10の伸張は、通常の伸び率(rate)から高い伸び率まで変化してよい。
【0061】
さらにスリーブロール100は、スリーブロール100の外面の周囲に典型的に配置されたスリーブロールベルト10を含む。スリーブロールベルト10は、支持軸102の周囲を囲むように導くことができる。
【0062】
さらに、スリーブロール100は、支持軸102上で互いに距離をおいて配置された支持要素を含んでよい。スリーブロールの外面の周囲を囲むことができるスリーブロールベルト10は、支持要素によって支持することができる。
【0063】
スリーブロールベルト10は、その外面12が繊維ウェブに面し、その内面11がスリーブロールに面するように、スリーブロール100に関連して配置されているか、又は配置されてよい。従って、スリーブロール100は、ループの形状を有するスリーブロールベルト10によって囲むことができる。
【0064】
スリーブロールベルトの円周は、可動なカーブ要素110によって、ベルトの動作時間中に増加及び減少されてよい。従って、スリーブロールのカーブ要素110によって生じる伸びに対応できるように、スリーブロールベルトは高い弾性を有してよい。さらに、スリーブロールベルトは、容易に破損しないように良好な強度特性を有することができる。
【0065】
スリーブロール100は、典型的には少なくとも2つの部分曲線C1,C2を含む少なくとも1つの曲線状脱水ゾーンC1,C2を含んでよい。その結果、第1部分曲線C1の曲率半径は、スリーブロールベルトの進行方向MDに第1部分曲線に続く第2部分曲線C2の曲率半径よりも大きくてよい。これにより、繊維ウェブからの水の除去を向上させることができる。
【0066】
曲線状脱水ゾーンC1,C2は、スリーブロール100のカーブ要素110によって形成されてよい。カーブ要素110の曲率の程度は、カーブ要素110での少なくとも1つの曲線状脱水ゾーンC1,C2でのワイヤ間を移動する繊維ウェブに増大する脱水圧力が加えられるように、ベルト10の進行方向に増大してよい。カーブ要素110での曲線状脱水ゾーンC1,C2は、曲率半径が好ましくはワイヤの走行方向に減少するように、いくつかの曲線を含んでよい。これにより、繊維ウェブからの水の除去を向上させることができる。
【0067】
スリーブロール100は、スリーブロールベルト10の内面11とスリーブロール100の外面との間に、潤滑剤を含んでよい。従って、スリーブロールは、例えば、前述のベルト10とスリーブロールの外面との間のギャップに潤滑剤を注入するために使用が可能な潤滑用ポンプを含んでよい。
【0068】
カーブ要素110は、2つ、又は2つ以上の位置の間で移動されてよい。従って、カーブ要素110は、カーブ要素110でのベルト10の曲率半径を制御するために使用できる。
【0069】
カーブ要素110の第1位置は、カーブ要素上に第1表面110aを形成してよい。第1表面110aは、カーブ要素の近くの表面と同じ曲率半径を有してよい。
【0070】
カーブ要素110の第2位置では、カーブ要素の外面が外側に移動されてよい。従って、カーブ要素110の第2位置は、カーブ要素上に第2表面110bを形成してよい。カーブ要素の近くの表面と比較して、第2表面110bは、減少された曲率半径を有してよい。
【0071】
カーブ要素110の第2位置では、スリーブロールベルト10は、カーブ要素110のために伸びる必要がある可能性がある。さらに、カーブ要素100が可動である場合に、カーブ要素が第1位置にもどされるときに、スリーブロールベルト10を元の形状にもどす必要がある可能性がある。従って、スリーブロールベルト10は、良好な弾性を有し、また、好適な強度特性を有する必要がある可能性がある。
【0072】
上述のように、スリーブロールベルト10は、スリーブロール100の周囲を走行するように配置されてよい。スリーブロールベルト10の内面11は、スリーブロール100の外面に対してスライドされてよい。処理される繊維ウェブは、典型的にはワイヤのような1つ又は1つ以上のファブリックによって支持されて、スリーブロールベルト10に導くことができる。従って、ワイヤは、曲線状脱水ゾーンC1,C2を介して導くことができ、この脱水ゾーンは、スリーブロールベルト10によって支持されてよい。
【0073】
[スリーブロールベルト]
スリーブロールベルト10は、抄紙機のワイヤ区間でのスリーブロールなどのターゲットに、取り付けられるか、取り付けられるように意図されている。
【0074】
ベルト10は、長さ、周囲、及び厚みを有する。厚みは、最小寸法である。周囲及び長さは、ベルトをスリーブロール100に適合させるために選択してよい。スリーブロールベルト10の周囲は、動作中のスリーブロールベルト10の内径がスリーブロールに適するように決定される。
【0075】
交差方向のベルトの長さは、マシン幅に応じて決定され、例えば、1.5mないし12.6mの範囲にある。
【0076】
スリーブロールベルト10の周囲、即ち1回転の長さは、2.2m以上であり、例えば3.0m以上であり、又は3.4m以上であってよい。また、ベルト10の周径は、好ましくは6.3m以下であり、例えば6.0m以下であり、又は5.8m以下である。
【0077】
スリーブロールベルトの厚みは、少なくとも2mmであり、さらに好ましくは少なくとも2.5mmであり、最も好ましくは少なくとも3mmであってよい。従って、少なくともいくつかのヤーンをベルト内に配置することが可能である。さらに、スリーブロールベルトの厚みは、7mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下であり、最も好ましくは4mm以下であり、例えば、2.5mmないし5mmの範囲にあってよい。この厚みは、補助ヤーンを有するスリーブロールに特に適する可能性がある。さらに、前述の厚みは、ベルトの材料及び補強構造とともに、スリーブロールベルトに良好な強度特性を与えることができる。
【0078】
スリーブロールベルトの外面12は、
図3aないし
図3dに示すように、平滑であってよく、少なくとも実質的に平滑であってよい。従って、スリーブロールベルトの外面12は、例えば、溝を有していなくてよい。平滑な外面を有するベルトは、0.4mmを超える深さを伴う溝又はパターニングを有していなくてよい。特に、平滑な表面は、0.4mmを超える深さを伴う10mm
2を超える面積を有していなくてよい。
【0079】
ベルト10の外面12での偏差は、例えば、0.3mm未満であってよく、例えば、0.2mm以下であってよい。従って、外面12の平滑さを向上させることができる。さらに、平滑な、又は少なくとも実質的に平滑な外面12のために、第1ヤーンをベルトの外面12の近くに配置してよい。従って、スリーブロールベルトの特性は、ベルト及びその中のワイヤの表面摩耗が低減できるように向上させることができる。
【0080】
スリーブロールベルトの外面12は、わずかなパターン形成、即ち、いわゆるバフ研磨(buffing)を含んでよい。スリーブロールベルト10の外面12でのバフ研磨の深さは、例えば、0ないし100μm、好ましくは0.01μmないし50μmであってよい。スリーブロールベルトの外面の適当な粗さは、抄紙機のファブリック、特にワイヤとともにその作用に有利な効果を発揮することができる。
【0081】
第1ヤーン31をベルトの表面近くに配置することによって、ベルトの摩耗を低減することができる。第1ヤーンが損傷された後に十分な強度を与える補助ヤーン31b,31cにより、第1ヤーン31をベルトの外面の近くに配置することが可能である。
【0082】
スリーブロールベルトの内面11は、実質的に平滑であってよい。スリーブロールベルト10は、ベルト10の内面11上にパターンを有してよく、又は有さなくてよい。内面11は、わずかなパターン形成、即ち、いわゆるバフ研磨を含んでよい。バフ研磨の深さは、例えば、0ないし40μm、好ましくは0.05μmないし10μmであってよい。前述のベルトの内面の粗さは、スリーブロールベルトの耐久性に、相当な効果を発揮することができる。例えば、特に潤滑油膜の均一性が損なわれている場合には、スリーブロール100の外面とベルト10の粗い内面11との組み合せは、スリーブロール100の平滑な金属面とスリーブロールベルトの平滑な内面11との組み合せよりも、減速に対する感度が低くなる。このような状況では、バフ研磨済みの内面11を有するスリーブロールベルトは、平滑な内面を有するベルトほど容易に損傷しないことが可能である。
【0083】
ベルト10は、曲げ可能であってよい。即ち、ベルトは、破損することなく、少なくとも所定の曲率半径まで曲げ可能であってよい。所定の曲率半径は、カーブ要素110の任意の位置で、カーブ要素110の表面の曲率半径よりも小さいことが可能である。そのため、ベルトは容易に損傷しないことが可能である。
【0084】
スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの進行方向に測定して、100kN/m以上、好ましくは140kN/m以上、最も好ましくは160kN/m以上、例えば170kN/mないし230kN/mの破断強度を有するように構成してよい。従って、特殊な場合に、例えばマシンの非常停止による場合や、又は例えば、マシンのダウンタイムの後にスリーブロールを始動することにより、スリーブロール100の外面とスリーブロールベルトの内面11との間の油が少ない場合でも、ベルトは容易に損傷しないことが可能である。さらに、ベルトの破断強度は、スリーブロールを保護するために、スリーブロールの破断強度よりも小さくすることができる。またさらに、前述のベルトの破断強度は、スリーブロールベルトに良好な弾性を与えることができる。
【0085】
さらに、スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの進行方向に測定し、第1ヤーンなしで判定して、50kN/m以上、好ましくは60kN/m以上、さらに好ましくは70kN/m以上、例えば70kN/mないし200kN/mの破断強度を有するように構成してよい。従って、第1ヤーンが、例えば、ベルトの摩耗に起因して破断された場合には、ベルトが損傷されないことがある。さらに、前述のベルトの破断強度は、スリーブロールを保護するために、スリーブロールの破断強度よりも小さくすることができる。
【0086】
特定の伸び率での荷重(LASE, load at specific elongation)と、破断強度とは、標準SFS2983に基づいて決定してよい。これらの値は、Lorentzen & Wettre AB(スウェーデン)のAlwetron TCT20デバイスを使用して決定してよい。一定の伸び率(CRE, rate of elongation)を使用して試験値を決定した。荷重の付与は、試料の伸び率が一定に保たれるように行う。コンピュータ制御システムを使用して、一定の力を維持することができる。サンプルに適用される伸び率は10mm/分である。測定の間、固定クランプと移動クランプとの間の試料を、単位時間当たり一定の距離(10mm/分)だけ伸ばし、そのために必要な力を測定する。破断伸びはクランプ変位から計算されている。
【0087】
試料の全長は、240mm×30ないし40mmであり、試料の長さは、240mmであり、試料の幅は、試料の両端で40mmであり、試料の中央で30mmである。クランプに接触する試料の幅は40mmである。測定中、最大荷重が1.7kN未満である試料については、2kN±0.1%の荷重を使用する。また、最大荷重が1.7kN以上である試料には20kN±0.1%の荷重を使用する。
【0088】
スリーブロールベルトは、28kN/mないし50kN/mの範囲でLASE 2%を有するように構成してよい。LASE 2%は、スリーブロールベルトの進行方向に判定して、28kN/m以上、典型的には30kN/m以上、最も好ましくは35kN/m以上であってよい。また、LASE 2%は、スリーブロールベルトの進行方向に判定して、50kN/m以下、又は40kN/m以下であってよい。従って、ベルトは、スリーブロールベルトに対して良好な伸縮性レベルを有することができる。
【0089】
スリーブロールベルトは、47kN/mないし80kN/mの範囲でLASE 4%を有するように構成してよい。LASE 4%は、スリーブロールベルトの進行方向に判定して、47kN/m以上(又は49kN/m以上)、典型的には50kN/m以上、最も好ましくは52kN/m以上であってよい。さらに、LASE 4%は、スリーブロールベルトの進行方向に判定して、80kN/m未満、例えば70kN/m以下であってよい。この技術的効果は、ベルトが高荷重で良好に機能し、良好な伸縮性と良好な寸法安定性とを有することができることである。さらに、前述の特定の伸び(LASE 2%及びLASE 4%)を有するベルトは、良好な予測可能性を有する可能性がある。即ち、ベルトの伸びは、異なる応力において予測できる。
【0090】
スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの進行方向に30kN/mの力で伸張し、ベルトを伸張する力が除去された後、元の長さにもどるように構成してよい。従って、ベルトは、ベルトの進行方向について良好な伸縮性及び弾性を有することができる。
【0091】
スリーブロールベルトは、ベルトを伸張する力が除去された後に元の長さにもどるように、ベルトの進行方向に、1.5%以上、例えば1.5%(又は1.8%)ないし少なくとも3.0%、又は2.0%ないし5.0%の範囲で、伸張するように構成してよい。好ましくは、スリーブロールベルトは、ベルトを伸張する力が除去された後に元の長さにもどるように、ベルトの進行方向に、少なくとも2.0%、さらに好ましくは少なくとも2.2%、伸張するように構成してよい。
【0092】
新規なスリーブロールベルトは、第2方向よりも少なくとも10%多く、弾性的に第1方向に伸張するように構成してよい。有利には、第2方向のベルトの弾性は、第1方向のベルトの弾性よりも少なくとも20%小さいことが可能である。
【0093】
スリーブロールベルトは、その中のヤーンと同様に、それ自体公知の方式で生産されてよい。スリーブロールベルトは、例えば、以下のことにより生産されてよい。
・いくつかのヤーンを供給すること;
・少なくとも1つのエラストマー材料をモールド表面に形作ることにより、スリーブロールベルト用の弾性的な本体を形成すること;
・フレームを硬化すること。
【0094】
スリーブロールベルトは、好ましくはその中のワイヤ区間に、ボードマシン、抄紙機、パルプマシン、又はティッシュマシンのスリーブロールに取り付けることが意図されている。さらにスリーブロールベルトは、例えば、ベルトの取り付けのためのベルトの複数の取り付け点60を備えてよい。
【0095】
スリーブロールベルト10は、無端ループのように形成されてよい。
【0096】
[ベルトの本体]
紙、ボード、パルプ及びティッシュのマシンに適した材料であり、ワイヤを傷つけず、適当な伸縮性及び強度を有する材料から、スリーブロールベルト10は作成されてよい。
【0097】
スリーブロールベルトは、ポリマーを含んでよい。本体15は、エラストマー材料を含んでよく、又は、エラストマー材料からなってよい。エラストマー材料は、好ましくは、スリーブロールベルトの主原料である。
【0098】
ベルトの本体は、以下を含んでよく、又は以下からなってよい。
・ポリウレタン、及び/又は
・天然ゴム(NR)及び/又は
・合成ゴム(SR)。
【0099】
前述の材料の総量は、ベルトの総重量から計算して、少なくとも50重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは80重量%以上であってよい。従って、ベルトの弾性、及び曲げ性を向上させることができる。これらの材料は、ベルトの良好な強度及び弾性特性を得るために使用することができ、従って、ベルトは、破損することなく、運転時間中に伸張及び屈曲できる可能性がある。さらに、スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの総重量から計算して、99.9重量%未満、さらに有利には97重量%未満、好ましくは95重量%未満の前述の材料を含んでよい。例えば、補強構造は、典型的には、他の材料を含む。
【0100】
ベルトの本体15はポリウレタンを含んでよい。好ましくは、本体15はポリウレタンからなるか、主にポリウレタンを含む。有利には、スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの総重量から計算して、少なくとも50重量%、さらに有利には少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%のポリウレタンを含む。さらに、スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの総重量から計算して、99.9重量%未満、さらに有利には97重量%未満、好ましくは95重量%未満のポリウレタンを含んでよい。ポリウレタンは、弾性及び曲げ性のようなスリーブロールベルトの特性を向上させることができ、カーブ要素110を有するスリーブロール100と組み合わせた使用に特に適している。
【0101】
現在、ポリウレタンの生産に使用されるほとんどのポリオールは、石油化学製品に由来する。環境上の理由から、ベルトは、バイオベースの成分を含むポリウレタンを含んでよい。好ましくは、ベルトの本体は、バイオベースポリウレタン及び/又は再生ポリウレタンを含むか、又は主として含むか、又はそれらからなる。バイオベースポリウレタンは、20ないし100%のバイオベースの成分を含んでよい。
【0102】
[ベルトの補強構造]
上述したように、スリーブロールベルト10は、良好な強度特性を得るために、補強構造30を備えてよい。しかしながら、スリーブロールベルトの弾性は、実質的に高い必要がある可能性がある。従って、補強構造は、スリーブロールベルトの弾性を過度に低下させるべきではない。
【0103】
スリーブロール100のカーブ要素110は、スリーブロールベルトに高い応力を生じさせる可能性がある。従って、スリーブロールベルト10は、好適な補強構造を有する必要がある可能性がある。しかしながら、典型的にはスリーブロールベルトを強制的に伸張及び/又は圧縮させるカーブ要素110に起因して、スリーブロールベルトは良好な強度と良好な弾性との両方を有する必要がある可能性がある。従来、このようなベルトは、カーブ要素110でのベルトの伸張を防止することなく、ベルトに良好な強度特性を与える補強構造を有する必要があるため、スリーブロールのためのベルトを得ることは困難であった。ベルトの伸張レベルは、スリーブロールベルトの補強構造30によって制御することができる。
【0104】
新規なスリーブロールベルトは、良好な強度特性、並びに好適な弾性及び伸張能力を有することができる。スリーブロールベルトの補強構造30は、弾性的な本体の材料がヤーンを囲むようにベルトの中に配置されたヤーンを含んでよい。ベルトは、ベルトの外面の近くに配置されたヤーンを含んでよい。
【0105】
補強構造30は、ヤーン31,31b,31c,32によって形成されたベルトの支持構造であってよい。
図3aないし
図3d及び
図4は、本体15、第1ヤーン31、第2ヤーン32、及び補助ヤーン31b,31cを含むベルト10の構造例を示す。ベルトは、隣接するヤーン31,31b,31c,32の間に本体15の材料を含んでよい。
【0106】
ヤーン31,32,31b,31cは、好ましくは、弾性的な本体15中に層状に配置されている。補強構造30は、スリーブロールベルトに好適な強度特性を与えるとともに、カーブ要素110によって生じる伸張の後にその元の形状をもどす能力を提供することができる。
【0107】
補強構造30は、第1方向D1に配置された第1ヤーン31と、少なくとも実質的に第1方向D1に配置された補助ヤーン31b,31cとを含んでよい。補強構造30は、さらに、第2方向D2に配置された第2ヤーン32を含んでよい。
【0108】
第2ヤーン32は、第1ヤーン31に垂直又は実質的に垂直に配置されてよい。さらに、第2ヤーン32は、補助ヤーン31b,31cに垂直又は実質的に垂直に配置されてよい。この技術的効果は、スリーブロールベルトの進行方向と交差方向とに良好な強度特性を与えることである。実施形態によると、第1ヤーンと補助ヤーンとは第1ヤーン層を形成し、第2ヤーンは第2ヤーン層を形成する。従って、実施形態では、合計2つの補強ヤーン層31,31b,31c,32が提供される。
【0109】
従って、説明したように、スリーブロールベルト10の補強構造30は、第2方向D2に配置された第2ヤーン32を含んでよい。第2ヤーン32と交差方向CDとの間の角度は、好ましくは15度未満であり、さらに好ましくは10度未満であり、最も好ましくは5度未満である。第2方向は、スリーブロールベルトの交差方向CDに対して平行又は実質的に平行であってよい。第2ヤーン32は、ベルトが交差方向に実質的に伸張しないので、高い伸縮性を有する必要がなくてよい。従って、第2ヤーン32の弾性は、第1ヤーン31の弾性よりも小さくてよい。しかしながら、第2ヤーン32は、良好な強度を有する必要があってよい。第2ヤーン32の技術的効果は、交差方向でのスリーブロールベルトの寸法安定性を向上させることであってよい。
【0110】
第1方向D1は、スリーブロールベルトの進行方向MDに、平行又は実質的に平行であってよい。第1ヤーン31とベルトの進行方向MDとの間の角度は、好ましくは15度未満であり、さらに好ましくは10度未満であり、最も好ましくは5度未満である。従って、スリーブロールベルト10の進行方向に対して良好な補強構造を形成することができる可能性がある。第1ヤーン31は、スリーブロールのカーブ要素110とともに良好に機能するように高い伸縮性を有してよい。さらに、第1ヤーンは、良好な強度特性を有してよい。従って、第1ヤーン31は、ベルトの支持構造のための良好な伸縮性及び/又は弾性、並びにベルトの進行方向でのベルトのための十分な強度を与えることができる。
【0111】
有利には、第1ヤーン31と補助ヤーン31b,31cとは、第2ヤーン32に対して実質的に垂直に配置されている。第1ヤーンと第2ヤーンとの間の角度は、好ましくは約90度であり、例えば、80度ないし100度の範囲にある。さらに、補助ヤーンと第2ヤーンとの間の角度は、好ましくは約90度であり、例えば、80度ないし100度の範囲にある。
【0112】
有利には、補強構造は、前述の第1ヤーンと、第2ヤーンと、補助ヤーンとからなる。
【0113】
第2ヤーン32は、弾性的な本体の材料がヤーン32の周囲に沈降する(settled,たまる,注入される)ように、互いに距離をおいて互いに隣接して配置されてよい。
【0114】
第1ヤーン31は、弾性的な本体の材料がヤーンの周囲に沈降するように、互いに距離をおいて互いに隣接して配置されてよい。さらに、補助ヤーンは、第1ヤーンの間及び/又は第1ヤーンの下方に配置されてよい。
【0115】
異なる層の中のヤーンは、次の層のヤーンと接触するか、又はそれらに接合されてよく、又は互いにスペースをおいてよい。好ましくは、互いの頂部にある補強ヤーン層は、互いに分離されている。従って、ヤーン層を、いかなる方式でも、互いに固定したり、互いに結合したりする必要はない。さらに、隣接するヤーンを、いかなる方式でも、互いに固定したり、互いに結合したりする必要はない。
【0116】
有利には、補強構造30は、弾性的な本体15中の2つの層に配置されたヤーンを含み、これらの層は実質的に互いに垂直に配置されている。第1ヤーン層は、第1ヤーンと補助ヤーンとを含むか、又はこれらからなってよい。第2ヤーン層は、第2ヤーンを含むか、又はこれからなってよい。
【0117】
第1ヤーンと補助ヤーンとは、第2ヤーン層の上方に、例えば第2ヤーン層から小さな距離で、配置されてよい。第1ヤーンと補助ヤーンとは、0mmないし2.0mm、好ましくは0.2mmないし1.0mmだけ第2ヤーンの上方に配置されてよい。
【0118】
補強ヤーンは、互いに隣接した別々のヤーンであってよく、あるいは、例えば、螺旋状に平行に配置された1つ以上のヤーンで形成されてよい。好ましくは、補強ヤーンの間の領域が弾性的な本体の材料を含むか、又はこれからなるように、隣接する補強ヤーンは、例えば0.5ないし3mmのスペースをおいてよい。
【0119】
第2ヤーン層は、スリーブロールベルト10の内面11に最も近い最も内側のヤーン層であってよい。第2ヤーン層は、別々のヤーンからなってよい。従って、隣接するヤーンは互いにスペースをおいてよい。好ましくは、第2ヤーンは、均等に又は実質的に均等にスペースをおいて配置されている。従って、各第2ヤーンは、隣接するヤーンから等距離でスペースをおいて配置されてよい。隣接する第2ヤーンは、例えば、0.5ないし3.5mmのスペースをおいて配置されてよい。好ましくは、隣接する第2ヤーンの間の領域は、弾性的な本体の材料からなる。
【0120】
第1ヤーン層は、別々のヤーンからなってよい。従って、隣接するヤーンは互いにスペースをおいてよい。好ましくは、第1ヤーンは、均等に又は実質的に均等にスペースをおいて配置されている。従って、各第1ヤーンは、隣接するヤーンから等距離でスペースをおいて配置されてよい。隣接する第1ヤーンは、例えば、0.5ないし3.5mmのスペースをおいて配置されてよい。隣接する第1ヤーンの間の領域は、弾性的な本体の材料と補助ヤーンとからなってよい。
【0121】
第1及び第2ヤーンは、太さが等しいか又は異なってよい。好ましくは、第2ヤーンは、実質的に互いに等しい太さである。好ましくは、さらに、第1ヤーンは、実質的に互いに等しい太さである。第1ヤーンは、第2ヤーンと等しい太さであってよい。
【0122】
各第1ヤーンの直径は、例えば、0.3mmないし3.0mmの範囲、好ましくは0.5mmないし2mmの範囲にあってよい。この技術的効果は、ベルトの進行方向について良好な寸法安定性と同様に、良好な強度特性を得ることである。
【0123】
各第2ヤーンの直径は、例えば、0.3mmないし3.0mmの範囲、好ましくは1mmないし2mmの範囲にあってよい。この技術的効果は、ベルトの交差方向について良好な寸法安定性と同様に、良好な強度特性を得ることである。従って、スリーブロールベルトをスリーブロールに強固に取り付けることができる。
【0124】
第2ヤーンは、第1ヤーンの内面から第2ヤーンの外面まで判定して、0ないし2mmの範囲の深さを有するように配置されてよい。
【0125】
第1ヤーン31は、ベルト10の弾性的な本体15中に配置することができる。第1ヤーン31は、ベルトの外面12からベルトの深さ方向に第1ヤーン31の外面31-oまで測定して、0mmないし3.0mmの範囲の深さまで配置されてよい。好ましくは、第1ヤーン31は、ベルトの外面からベルトの深さ方向に第1ヤーン31の外面31-oまで測定して、0.2mm以上の深さ、さらに好ましくは0.5mm以上の深さ、最も好ましくは1.0mm以上の深さまで配置されている。前述の深さは、ベルトの外面12からベルトの深さ方向に第1ヤーン31の外面31-oまで測定して、2.5mm以下であり、さらに好ましくは2.0mm以下であり、最も好ましくは1.5mm以下であり、0.5mmないし1.5mmの範囲にあってよい。この技術的効果は、ベルトの中立軸がスリーブロールベルトの外面の近くにできることである。従って、使用時には、ベルトの外面と、ベルトに接触するワイヤの表面との間の速度差を小さくすることができる。また、ベルトとワイヤとの摩擦を低減することができる。従って、ベルトの表面摩耗、並びにワイヤの表面摩耗を低減することができる。第1ヤーン31が、少なくとも実質的にベルトの進行方向に整列され、ベルトの外面の近くに配置される場合に、ベルトの摩耗及びワイヤの摩耗を著しく減少させることが可能である。従って、ベルトに起因するコストは、低減されることができる。
【0126】
ベルトは、第2方向に配置された状態で第2方向に垂直に測定して、200ないし700の第2ヤーン/mを含んでよい。第2ヤーン32の数/mは、第2方向に配置された状態で第2方向に垂直に測定して、好ましくは260ヤーン/m以上であり、さらに好ましくは少なくとも270ヤーン/mであり、最も好ましくは280ヤーン/m以上である。さらに、第2ヤーンの数は、第2方向に配置された状態で第2方向に垂直に測定して、好ましくは600ヤーン/m以下であり、さらに好ましくは500ヤーン/m未満であり、最も好ましくは400ヤーン/m以下である。従って、ベルトの交差方向について、良好な寸法安定性とともに、良好な強度特性を有するスリーブロールベルトを得ることができる。従って、スリーブロールベルトをスリーブロールに強固に固定することができる。
【0127】
ベルトは、第1方向に配置された状態で第1方向に垂直に測定して、200ないし700の第1ヤーン/mを含んでよい。第1ヤーンの数は、第1方向に配置された状態で第1方向に垂直に測定して、好ましくは210ヤーン/m以上、さらに好ましくは少なくとも230ヤーン/m以上、最も好ましくは260ヤーン/m以上である。さらに、第1ヤーンの数は、第1方向に配置された状態で第1方向に垂直に測定して、好ましくは600ヤーン/m以下、さらに好ましくは500ヤーン/m未満、最も好ましくは400ヤーン/m以下である。従って、ベルトの進行方向について、好適な寸法安定性とともに、良好な弾性を得ることができる。
【0128】
ヤーンは、同一の材料又は異なる材料で作られてよい。ヤーン31,32,31b,cは、モノフィラメントヤーン及び/又はマルチフィラメントヤーンを含んでよい。従って、各ヤーンは、モノフィラメント又はマルチフィラメントであってよい。モノフィラメントは、1ヤーン当たり1本のフィラメントしか存在しないことを意味する。マルチフィラメントとは、1ヤーン当たり複数のフィラメントが存在することを意味する。
【0129】
マルチフィラメント構造は、互いに撚られたフィラメントを有してよい。有利には、これらのヤーンは、マルチフィラメントヤーンを含むか、又はマルチフィラメントヤーンからなる。ヤーン31,32,31b,cは、最も好ましくは、撚りを有するマルチフィラメントヤーンである。しかしながら、フィラメントが互いに撚られたマルチフィラメント構造は、ヤーンの外面が損傷されたときに、ヤーン全体が破断される可能性がある。第1ヤーンの外面が損傷し、その結果第1ヤーンがその強度を失った場合でも、補助ヤーンにより、ベルトの強度特性は、十分なレベルに留まることができる。
【0130】
フィラメントの数は、ヤーンの特性の効果を有する。好ましくは、ヤーンは、1ヤーン当たり5ないし10000フィラメントを有するマルチフィラメントヤーンである。これらのヤーンは、1ヤーン当たり5フィラメント以上、さらに好ましくは1ヤーン当たり200フィラメント以上、最も好ましくは1ヤーン当たり600フィラメント以上を有してよい。さらに、ヤーンは、1ヤーン当たり10000フィラメント以下、さらに好ましくは1ヤーン当たり4000フィラメント以下、最も好ましくは1ヤーン当たり2000フィラメント以下を有してよい。
【0131】
ヤーンは、高強度、高モジュラス及び高弾性モジュラスを有する合成繊維を含んでよい。ヤーンは、以下の少なくとも1つを含んでよい。
・ポリアミド(PA)、例えばナイロン;
・ポリプロピレン(PP);
・ポリエチレン(PE)、好ましくはいわゆる高強度ポリエチレン;
・レーヨン;
・ビスコース;
・ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリビニルアルコール(PVA,PVOH);
・ポリアラミド;
・ポリフェニレンスルフィド(PPS);
・液晶プラスチック(LCP);
・ポリイミド;
・炭素繊維、好ましくは炭素繊維/熱可塑性複合材料;
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)。
【0132】
前述の材料の総量は、ヤーンの総重量から計算して、好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%である。従って、上述の材料からなる、又はそれらからなるヤーンは、ベルトを硬化させることができるが、ベルトの必要なレベルの曲げ及び伸張を可能にすることができる。例えば、ポリエステル及び例えばポリアミドは、ベルトに適当な支持体を提供することができる。さらに、炭素繊維は、ベルトの強度、特にベルトの交差方向の強度を向上させるために使用することができる。さらに、炭素繊維及び炭素繊維/熱可塑性複合材料を使用して、ベルトの交差方向の伸張を最小限にすることができる。
【0133】
各第1ヤーン31の比応力(N/tex)は、例えば、0.4N/texないし4N/texの範囲にあってよい。従って、ベルトの進行方向について好適な強度特性を得ることができる。
【0134】
各第2ヤーン32の比応力(N/tex)は、例えば、0.5N/texないし4N/texの範囲にあってよい。N/texは、tex当たりのニュートンを表す。従って、ベルトの交差方向について良好な強度特性を得ることができる。
【0135】
スリーブロールベルトの単位面積を参照すると、第2ヤーンの引張強さは、第1ヤーンの引張強さよりも高くてよく、好ましくは少なくとも4%高くてよく、さらに好ましくは少なくとも8%高くてよい。
【0136】
スリーブロールベルトは、ベルトの第2方向D2よりも第1方向D1に軽い補強構造を有することができ、従って、新規なスリーブロールベルトは、第2方向に高い伸縮性を有することができる。従って、第1ヤーンと補助ヤーンとは、スリーブロールベルトが、例えば伸張する必要があるように、カーブ要素110上で曲げられたときに、降伏し、従って、それらの長手方向に伸張することができる。しかしながら、補強構造は、ベルトの伸張レベルを制御することが可能である。従って、新規なスリーブロールベルトは、ベルトが補強構造を持たない場合ほど容易に損傷しないことが可能である。
【0137】
第1ヤーン、又は少なくともいくつかの第1ヤーンは、視覚的に識別可能な材料で形成されてよく、本体の色から視覚的に認識可能である。従って、補助ヤーンが損傷する前にベルトを交換することができるように、ベルトの摩耗レベルに容易に気付くことができる。
【0138】
[補助ヤーン]
上述したように、ベルトは、補助ヤーン31b,31cを含む。補助ヤーンにより、第1ヤーン31が損傷された場合にベルトに適した強度を維持することができる。補助ヤーンは、第1ヤーンよりも小さな直径を有してよい。従って、ベルトの中立軸は、補助ヤーンによって実質的にシフトされなくてよいが、補助ヤーンが第1ヤーンの深さよりも大きい深さまで配置された場合でも、ベルトの表面摩耗は、低減されたレベルに維持されることができる。
【0139】
補助ヤーン31b,31cは、好ましくは、第1方向D1に平行又は少なくとも実質的に平行に配置されている。補助ヤーン31b,cとベルトの第1方向D1との間の角度は、好ましくは15度未満であり、さらに好ましくは10度未満であり、最も好ましくは5度未満である。これにより、第1ヤーンが破断しても、スリーブロールベルト10の進行方向に好適な補強構造を得ることができる可能性がある。
【0140】
補助ヤーンは、第1ヤーンよりも大きな伸縮性を有することができ、ベルトの中立軸の位置に対するそれらの効果を減少させることができる。補助ヤーン31b,cは、たとえ第1ヤーンが損傷された場合でも、ベルトの進行方向にベルトに好適な伸縮性と十分な強度とを提供することができる。
【0141】
補助ヤーン31b,31cは、ベルトの進行方向に平行又は少なくとも実質的に平行に配置することができる。補助ヤーン31b,cとベルトの進行方向との間の角度は、10度未満であってよく、さらに好ましくは5度未満であってよく、最も好ましくは2度未満であってよい。これにより、第1ヤーンが破断しても、スリーブロールベルト10の進行方向に好適な補強構造を得ることができる可能性がある。上述したように、補助ヤーン31b,cは、たとえ第1ヤーンが損傷されていても、ベルトの進行方向について良好な伸縮性と十分な強度とをベルトに与えることができる。
【0142】
一実施形態では、進行方向に関する補助ヤーンの角度、即ちスリーブロールベルトの回転方向は、有利には、2度以下である。例えば0度ないし2度、さらに有利には1度を超えず、好ましくは0.0度ないし0.5度のように、0.5度を超えない。このようにして、補助ヤーンは、第1ヤーンとともに使用する場合に特に効果的になってよい。
【0143】
補助ヤーン又は少なくともいくつかの補助ヤーンは、本体15と第1ヤーン31との色から視覚的に認識可能な、視覚的に識別可能な材料で作ることができる。従って、補助ヤーンが損傷される前にベルトを交換することができるように、ベルトの摩耗レベルに容易に気付くことができる。
【0144】
第1ヤーンが、本体の色から視覚的に認識可能な材料で形成され、補助ヤーンが、本体と第1ヤーンとの色から視覚的に認識可能な材料で形成されている場合に、ベルトの摩耗レベルは、一層正確に決定されることができる。さらに、この実施形態では、第1ヤーンと補助ヤーンとをベルト摩耗インジケータとして使用することができる。従って、いかなる他の種類のベルト摩耗インジケータも必要としなくてよい。
【0145】
一実施形態では、ベルトは、以下を備えている。
本体と第1ヤーン31との色から視覚的に認識可能な材料で形成されている、第1補助ヤーン31bと;
本体と第1補助ヤーンと第1ヤーンとの色から視覚的に認識可能な材料で形成されている、第2補助ヤーン31cと;
任意には、本体と補助ヤーン31b、31cとの色から視覚的に認識可能な材料で形成されている、第1ヤーン31。
【0146】
従って、この実施形態では、ベルトの摩耗レベルは、いかなる他の種類のベルト摩耗インジケータがなくても、正確に決定されることができる。
【0147】
補助ヤーンは、互いに距離をおいて互いに隣接して配置することができる。補助ヤーンの直径と、補助ヤーンの材料及び数とは、スリーブロールベルトの特性に影響を与えてよい。
【0148】
ベルトは、第1方向に垂直に測定して、100ないし800ヤーン/mの補助ヤーンを含んでよい。補助ヤーンの数は、第1方向に垂直に測定して、好ましくは200ヤーン/m以上、さらに好ましくは少なくとも250ヤーン/m、最も好ましくは300ヤーン/m以上である。さらに、補助ヤーンの数は、第1方向に垂直に測定して、好ましくは700ヤーン/m以下、さらに好ましくは600ヤーン/m未満、最も好ましくは500ヤーン/m以下である。従って、たとえ第1ヤーンが破断した場合でも、ベルトの進行方向に十分な強度を与えるだけでなく、良好な弾性を得ることができる。
【0149】
ベルト中のヤーンの相対的な数RNYは、以下のように計算できる。
RNY=N(31)/N(31b+31c)
ここで、N(31)は、m当たりの第1ヤーンの数Nを表し、
N(31b+31c)は、m当たりの補助ヤーンの数Nを表す。
【0150】
ヤーンの相対的な数RNY、即ち、補助ヤーンの数/mに対しての、第1ヤーンの数/mの割合は、0.5以上であってよく、例えば、0.5ないし3の範囲にあってよく、好ましくは1ないし2.5の範囲にあってよく、最も好ましくは1ないし2の範囲にあってよい。
【0151】
一実施形態では、(第1方向に対して垂直に判定して)隣接する2つの第1ヤーンの間に1本ないし3本の補助ヤーンがあり、(第1方向に対して垂直に判定して)隣接する2つの補助ヤーンの間に1本ないし3本の第1ヤーンがある。従って、第1ヤーンを伴って、またさらに、第1ヤーンが損傷した後にも、ベルトの進行方向での十分な強度特性と寸法安定性とを得ることが可能である。
【0152】
第1ヤーンと補助ヤーンとは、隣接するヤーンと接触するか、又は接合されてよく、又は互いにスペースをおいてよい。好ましくは、補助ヤーンと第1ヤーンとは互いに分離されている。従って、第1ヤーンは、いかなる方式でも、補助ヤーンに固定したり結合したりする必要はない。これは、第1ヤーンが損傷した場合に、ベルトの強度特性を向上させることが可能である。
【0153】
各第1ヤーン及び各補助ヤーンは、隣接するヤーンから等しい又は実質的に等しい距離だけ、スペースをあけるように配置してよい。
【0154】
隣接する補助ヤーンは、例えば、第1方向に垂直に判定して、0.2ないし2mmのスペースをあけてよい。補助ヤーンを、いかなる方式でも、互いに固定したり、互いに結合したりする必要はない。
【0155】
補助ヤーンは、互いに等しい又は異なる太さであってよい。少なくとも第1補助ヤーン31bは、互いに実質的に等しい太さであってよい。さらに、第2補助ヤーン31cは、これが使用される場合に、互いに実質的に等しい太さであってよい。従って、補助ヤーンは、互いに等しい直径を有するヤーンを含んでよい。又は直径が変化してよい。
【0156】
補助ヤーンは、第1補助ヤーンを含むか、又は第1補助ヤーンからなってよい。全ての第1補助ヤーンは実質的に同じ直径を有する。また、補助ヤーンは、第2補助ヤーンを含んでよい。全ての第2補助ヤーンは実質的に同じ直径を有する。第2補助ヤーンは、第1補助ヤーンとは異なる直径を有してよい。
【0157】
図3c,3d,4を参照すると、補助ヤーン31b,31cは、第1補助ヤーン31bと第2補助ヤーン31cとを含むか、又はこれらからなってよい。ここで、
・全ての第1補助ヤーン31bは、互いに実質的に同じ直径を有する。
・全ての第2補助ヤーン31cは、互いに実質的に同じ直径を有する。
・第1補助ヤーン31bは、第2補助ヤーン31cと異なる直径を有する。
【0158】
従って、補助ヤーン、又は少なくとも第1補助ヤーンは、互いに実質的に等しい太さであってよい。さらに、第2補助ヤーンは、これが使用される場合に、実質的に互いに等しい太さであってよい。これは、特にベルトが摩耗し始めたときに、強度特性の制御性と、ベルトの中立軸の位置の制御性とを向上させることができる。
【0159】
図3aないし
図3d及び
図4を参照すると、補助ヤーン31b,31cは、ベルトの外面からベルトの深さ方向にヤーンの外面31-o,31b-oまで判定して、第1ヤーンの深さよりも大きい深さまで配置されてよい。好ましくは、補助ヤーン31b,31cは、ベルトの外面からベルトの深さ方向に前述のヤーンの外面31-o,31b-oまで判定して、第1ヤーンの深さよりも、少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%大きい深さまで配置されている。補助ヤーンの外面は、第1ヤーンの外面よりも大きい深さにすることができ、従って、補助ヤーンは、たとえ第1ヤーンがベルトの摩耗によって損傷を受けた場合でも、ベルトの進行方向にベルトの強度を許容可能なレベルに維持することができる。従って、ベルトの強度特性は、第1ヤーンの外面が損傷し、第1ヤーンがその強度を失った場合でも、十分なレベルに留まることができる。
【0160】
補助ヤーン31b,31cは、ベルトの外面からベルトの深さ方向にヤーンの内面31-i,31b-iまで判定して、第1ヤーンの深さよりも大きい深さまで配置されてよい。好ましくは、補助ヤーン31b,31cは、ベルトの外面からベルトの深さ方向に前述のヤーンの内面31-i,31b-iまで判定して、第1ヤーンの深さよりも、少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%大きい深さまで配置されている。従って、ベルトの強度特性は、たとえ第1ヤーンが全面的に損傷されていても、一層長い時間、十分なレベルに留まることができる。
【0161】
補助ヤーンは、ベルトの外面からベルトの深さ方向にヤーンの中心点まで判定して、第1ヤーンの深さよりも少なくとも10%大きい深さまで弾性的な本体の中に配置されてよい。さらに好ましくは、補助ヤーンは、ベルトの外面からベルトの深さ方向にヤーンの中心点まで判定して、第1ヤーンの深さよりも少なくとも20%大きい深さまで弾性的な本体の中に配置されている。最も好ましくは、補助ヤーンは、ベルトの外面からベルトの深さ方向にヤーンの中心点まで判定して、第1ヤーンの深さよりも少なくとも30%大きい深さまで弾性的な本体の中に配置されている。補助ヤーンが前述の深さにさらに配置される場合に、補助ヤーンは、第1ヤーンが損傷した後にベルトに十分な強度を与えることができる可能性がある。
【0162】
補助ヤーンは、第1ヤーンの外面31-oからベルトの深さ方向に補助ヤーンの外面31b-oまで測定して、0.1mm以上の深さ、さらに好ましくは0.2mm以上の深さ、最も好ましくは0.4mm以上の深さまで配置されてよい。さらに、補助ヤーンは、第1ヤーンの外面31-oからベルトの深さ方向に補助ヤーンの外面31b-oまで測定して、2mm以下の深さ、さらに好ましくは1.5mm以下の深さ、最も好ましくは1mm以下の深さまで配置されてよい。従って、補助ヤーンは、ベルトの外面から過度に遠くなくてよく、従って、ベルトの中立軸は、スリーブロールベルトの外面の近くに留まることができる。さらに、補助ヤーンは、例えば、ベルトの摩耗によって引き起こされた損傷のために、第1ヤーンが強度を維持することができない場合には、ベルトの強度をあるレベルに維持することができる可能性がある。
【0163】
さらに、ベルトの中立軸を制御するために、補助ヤーンを弾性的な本体の中に配置してよい。これにより、補助ヤーン全体が、ベルトの深さ方向に判定して、第2ヤーンの深さよりも小さな深さにあるようにする。
【0164】
ベルトの中立軸をベルトの外面の近くに配置することにより、ベルトの外面12の摩耗が少なくなる可能性があり、ベルトの内面11の摩耗が大きくなる可能性がある。しかしながら、スリーブロール100の外面とベルトの内面11との間には、典型的には油層のような潤滑剤層が存在するので、これはベルトに問題を生じないことが可能である。従って、ベルトとスリーブロールとの間の摩擦は、典型的に非常に低い。よって、ベルトの中立軸がベルトの外面の近くにあっても、ベルトの内面があまり摩耗しないことが可能である。
【0165】
ベルトの外面の近くでのベルトの中立軸を維持するために、補助ヤーン31b,31cは、好ましくは、第1ヤーン31よりも細い。従って、補助ヤーンの直径は、好ましくは、第1ヤーンの直径よりも小さい。さらに、補助ヤーンは、第2ヤーン32よりも細くてよい。
【0166】
補助ヤーン31b、31cは、ヤーンの直径から判定して、第1ヤーンよりも少なくとも20%細くてよく、好ましくは第1ヤーン31よりも30%以上細くてよく、さらに好ましくは第1ヤーン31よりも40%以上細くてよく、最も好ましくは第1ヤーン31よりも50%以上細くてよく、例えば第1ヤーン31よりも30%ないし70%細くてよい。このようにして、ベルトの中立軸の位置を(実質的に)維持しながら、第1ヤーンが損傷された場合でも、スリーブロールベルトの進行方向に関する好適な強度特性を得ることが可能である。従って、補助ヤーンの直径は、第1ヤーンの直径よりも実質的に小さくすることができ、従って、ベルト(及びワイヤ)の摩耗レベルは、使用中に好適なレベルに維持することができる。さらに、直径の減少により、補助ヤーンは、コスト効率がよく、環境に優しい解決策となることができる。
【0167】
補助ヤーンの直径は、0.1mmないし1.5mmの範囲にあってよい。補助ヤーンの直径は、好ましくは1.2mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下、最も好ましくは0.9mm以下である。さらに、補助ヤーンの直径は、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上、最も好ましくは0.3mm以上である。この技術的効果は、スリーブロールベルトの中立軸の位置に過大な影響を与えることなく、第1ヤーンが損傷された場合でも、スリーブロールベルトの進行方向に十分な強度特性を得ることである。
【0168】
図3c及び
図3dを参照すると、ベルトは、第1補助ヤーンと第2補助ヤーンとを含んでよい。
【0169】
第2補助ヤーンの直径は、使用される場合に、第1補助ヤーンの直径から判定して、10%ないし90%、好ましくは20%ないし80%であってよい。この実施形態では、第2補助ヤーンは、好ましくは、各ヤーンの外面から判定して、第1補助ヤーンの深さよりも大きい深さにある。この技術的効果は、スリーブロールベルトの中立軸の位置に過大な影響を与えることなく、第1補助ヤーンのいくつかが損傷された場合でも、スリーブロールベルトの進行方向に十分な強度特性を得ることである。さらに、ヤーンが、本体と第1ヤーンとの色から視覚的に認識可能な材料で形成されている場合に、ベルトの摩耗レベルは、いかなる他の種類のベルト摩耗インジケータがなくても決定されることができる。
【0170】
補助ヤーン31b、31cは、好ましくは、撚り合ったマルチフィラメントヤーンである。好ましくは、補助ヤーンは、1ヤーン当たり20ないし2000フィラメントを有するマルチフィラメントヤーンである。補助ヤーンは、1ヤーン当たり60フィラメント以上、さらに好ましくは1ヤーン当たり100フィラメント以上、最も好ましくは1ヤーン当たり200フィラメント以上を有してよい。さらに、補助ヤーンは、1ヤーン当たり1500フィラメント以下、さらに好ましくは1ヤーン当たり1000フィラメント以下、最も好ましくは1ヤーン当たり700フィラメント以下を有してよい。これは、ベルトの中立軸の位置に過大な影響を与えることなく、特に第1ヤーンが損傷した後に、ベルトの強度特性を向上させることができる。
【0171】
上述したように、スリーブロールベルト10は、スリーブロールのカーブ要素110上で伸張されて、小さな半径で曲げられたときに、高い応力を受ける。従って、補助ヤーンは、弾性材料から作られてよい。弾性材料は、スリーブロールベルトがカーブ要素の表面110a、110b上を通過するのを助けるように、スリーブロールベルトを一定の曲率半径で曲げることを許容することができる。第1ヤーンと補助ヤーンとは、第2ヤーンよりも大きい伸縮性、例えば、少なくとも4%大きい、さらに好ましくは、少なくとも8%大きい伸縮性を有することができる。従って、ベルトは、スリーブロールのカーブ要素上で容易に伸張するように構成できる。
【0172】
補助ヤーンは、以下の少なくとも1つを含んでよく、又は少なくとも1つからなってよい。
・ポリアミド(PA)、例えばナイロン;
・ポリプロピレン(PP);
・ポリエチレン(PE)、好ましくはいわゆる高強度ポリエチレン;
・レーヨン;
・ビスコース;
・ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリビニルアルコール(PVA,PVOH);
・ポリアラミド;
・ポリフェニレンスルフィド(PPS);
・液晶プラスチック(LCP);
・ポリイミド;
・炭素繊維、好ましくは炭素繊維/熱可塑性複合材料;
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)。
【0173】
これらの材料は、補助ヤーンに十分な強度特性と寸法安定性とを提供するために使用してよい。補助ヤーンが炭素繊維複合体を含む場合に、ベルトは、ある場合には、他の材料を伴う場合と同様に、伸びないことがある。しかしながら、炭素繊維複合体はベルトの強度を向上させることができる。
【0174】
好ましくは、補助ヤーンは、以下の少なくとも1つを含んでよく、又は少なくとも1つからなってよい。
・ポリアミド(PA);
・芳香族ポリアミド;
・ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・レーヨン;
・炭素/熱可塑性複合材料。
【0175】
これらの材料は、補助ヤーンのための向上された強度特性と寸法安定性とを提供するために使用してよい。
【0176】
さらに好ましくは、補助ヤーンは、以下を含むか、又は以下で構成される。
・ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・レーヨン。
【0177】
これらの材料は、補助ヤーンの伸縮性と寸法安定性との向上された組み合せを提供するために使用してよい。
【0178】
最も好ましくは、補助ヤーンは、ポリエステルを含むか、又はポリエステルからなる。従って、補助ヤーンの強度、伸縮性及び寸法安定性を、コスト効率的に向上させることができる。
【0179】
環境上の理由から、補助ヤーンは、バイオポリマー(バイオベースポリマー)を含んでよく、又は、これからなっていてよい。及び/又は、補助ヤーンは、再生ポリマーを含んでよく、又は、これからなっていてよい。
【0180】
一実施形態によると、補助ヤーンは、再生の及び/又はバイオベースのポリエステル及び/又はポリアミドを含むか、又はこれらで作られている。従って、補助ヤーンは、例えば、バイオベースのポリアミドから作られてよい。
【0181】
補助ヤーンは、第1ヤーンよりも弾性的に可撓的であってよい。さらに、補助ヤーンは、第1ヤーンよりも細くてよい。
【0182】
各補助ヤーン31b,31cの比応力(N/tex)は、例えば、0.3N/texないし4N/texの範囲にあってよい。従って、たとえ第1ヤーンが損傷された場合でも、ベルトの進行方向に好適な強度特性を得ることが可能である。
【0183】
スリーブロールベルトの単位面積を参照すると、第1ヤーンの引張強さは、補助ヤーンの引張強さよりも高くてよく、好ましくは少なくとも10%高くてよく、さらに好ましくは少なくとも15%高くてよい。従って、補助ヤーンは、ベルトの中立軸の位置に過大な影響を与えないことが可能である。
【0184】
スリーブロールベルトにより、スリーブロール100のカーブ要素110での曲率半径を、従来よりも小さくすることができる。従って、ベルトに非常に小さな曲率半径を生じさせることができる、このようなカーブ要素が使用できる可能性がある。これは、スリーブロール100の有効性を向上させることができる。
【0185】
さらに、新規な解決により、補助ヤーンをベルト内に配置することができ、第1ヤーンが損傷した場合でもベルトの強度を許容可能なレベルに維持することができる。補助ヤーンは、ベルトの中立軸に過大な影響を与えないことが可能であり、従って、ベルト(及びワイヤ)の摩耗レベルは、補助ヤーンにもかかわらず、好適なレベルに維持することができる。
【0186】
さらに、補助ヤーンにより、第1ヤーンはまた、非常に小さな直径を有することができ、ベルトの進行方向でのベルトの伸張を向上させることができる。この場合に、ベルトの向上された伸び特性のために、スリーブロールのカーブ要素110を、一層高い水除去率が得ることができるように使用することができる。
【0187】
利点が典型的に、良好に実現されるほど、一層多くの好ましい特徴が、スリーブロールベルト10の中で実施される。
【0188】
本発明は、例示と例とを使用して記載している。本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内で変形が可能である。
【符号の説明】
【0189】
10 ベルト
11 ベルトの内面
12 ベルトの外面
15 本体
30 補強構造
31 第1ヤーン
31b 補助ヤーン、第1補助ヤーン
31c 補助ヤーン、第2補助ヤーン
32 第2ヤーン
31-i ベルトの深さ方向での第1ヤーンの底部、即ち第1ヤーンの最内面
31-o ベルトの深さ方向での第1ヤーンの外面、即ち第1ヤーンの最外面
31b-i ベルトの深さ方向での補助ヤーンの底部、即ち補助ヤーンの最内面
31b-o ベルトの深さ方向での補助ヤーンの外面、即ち補助ヤーンの最外面
60 スリーブロールベルトの取り付け点
D1 ベルトの第1方向
D2 ベルトの第2方向
MD ベルトの進行方向
CD ベルトの交差方向
100 スリーブロール
102 スリーブロールの支持軸
110 スリーブロールのカーブ要素
110a 第1位置にある可動なカーブ要素の表面
110b 第2位置にある可動なカーブ要素の表面
C1 スリーブロールの第1曲線
C2 スリーブロールの第2曲線