(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20241016BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20241016BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20241016BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20241016BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20241016BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20241016BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20241016BHJP
B09B 101/16 20220101ALN20241016BHJP
【FI】
H01M10/54
B09B3/35 ZAB
B09B3/40 ZAB
C22B1/00 601
C22B1/02
C22B7/00 C
C22B23/00
B09B101:16
(21)【出願番号】P 2023179529
(22)【出願日】2023-10-18
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2022170534
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506347517
【氏名又は名称】DOWAエコシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 暢之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮栄
(72)【発明者】
【氏名】田畑 奨太
(72)【発明者】
【氏名】西川 千尋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔平
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219948(JP,A)
【文献】特開2017-174517(JP,A)
【文献】国際公開第2021/157483(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/182451(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/054723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/35
B09B 3/40
B09B 101/16
C22B 1/00
C22B 1/02
C22B 7/00
C22B 23/00
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池を熱処理することにより、熱処理物を得る熱処理工程と、
前記熱処理物を破砕して得られた破砕物を分級することにより、粗粒産物1と細粒産物とを得る第1の分級工程と、
前記細粒産物を粉砕して得られた粉砕物を、第1の分級工程の分級点より小さい分級点で分級することにより、粗粒産物2と微粒産物とを得る第2の分級工程と、
前記第2の分級工程で得られた前記微粒産物を磁力選別して磁着物1と非磁着物1を得る第1の磁選工程と、
前記第1の磁選工程で得られた非磁着物1を磁力選別して磁着物2と非磁着物2を得る第2の磁選工程と、
前記磁着物1および前記磁着物2から有価物を回収する回収工程と、
を含
み、
前記第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、ドラム型磁選法または高勾配型磁選法を用いる
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項2】
前記第1の分級工程は、600μm以上2,400μm以下の分級点で行う、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項3】
前記第2の分級工程は、25μm以上1,700μm以下の分級点で行う、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項4】
前記第1の磁選工程における磁力選別の磁束密度が
0.1T以上
0.3T未満であり、
前記第2の磁選工程における磁力選別の磁束密度が
0.3T以上
2T以下である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項5】
前記非磁着物1のコバルト品位及びニッケル品位の合算値が30質量%以下である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項6】
前記非磁着物1に含まれるコバルトおよびニッケルの少なくともいずれかの個数平均粒径が50μm以下である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項7】
前記第1の磁選工
程が湿式磁選で行われる、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項8】
前記第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、回転している、磁石を有するドラムに非磁着物スラリーを投入する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
【請求項9】
前記第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、ドラムにおける3時の方向に磁石を配置し、ドラムにおける12時~2時の方向から非磁着物1スラリーを投入し、前記ドラムを反時計回りに回転させるドラム型湿式磁選法を用いる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項10】
前記第2の磁選工程が前記第1の磁選工程で得られた前記非磁着物1に分散剤を添加して行われる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項11】
前記回収工程において、前記磁着物1および前記磁着物2を洗浄し、固液分離して有価物を回収する、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項12】
前記粗粒産物2から銅を回収する、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、従来の鉛蓄電池、ニッカド二次電池などに比較して軽量、高容量、高起電力の二次電池であり、パソコン、電気自動車、携帯機器などの二次電池として使用されている。例えば、リチウムイオン二次電池の正極には、コバルトおよびニッケルなどの有価物が、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、三元系正極材(LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1))などとして使用されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、今後も使用の拡大が予想されていることから、製造過程で発生した不良品や使用機器および電池の寿命などに伴い廃棄されるリチウムイオン二次電池からリチウムなどの有価物を回収することが、資源リサイクルの観点から望まれている。リチウムイオン二次電池からリチウムなどの有価物を回収する際には、リチウムイオン二次電池に使用されている種々の金属又は不純物を分離して回収することが、回収物の価値を高める点から重要である。
【0004】
リチウムイオン二次電池の熱処理物の破砕物からコバルト、ニッケル等の有価物を回収する方法としては、例えば、リチウムイオン二次電池を熱処理した熱処理物を破砕し、分級して得られた細粒産物を湿式磁選するリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の有価物の回収方法は、コバルト品位およびニッケル品位が低い場合には高い回収率を達成することができなかった。即ち、コバルト品位およびニッケル品位が低い(コバルト品位及びニッケル品位の合算値が30%以下である)細粒産物(以下、「ブラックマス」と称することがある)は、コバルト金属粒子およびニッケル金属粒子の粒塊形成が進みにくく、これら粒子の平均粒径が小さいために、湿式磁選工程で非磁着物となってロスが生じてしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、磁選対象物におけるコバルト品位およびニッケル品位が低い場合であってもコバルトおよびニッケルの高い回収率を実現できるリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> リチウムイオン二次電池を熱処理することにより、熱処理物を得る熱処理工程と、
前記熱処理物を破砕して得られた破砕物を分級することにより、粗粒産物1と細粒産物とを得る第1の分級工程と、
前記細粒産物を粉砕して得られた粉砕物を、第1の分級工程の分級点より小さい分級点で分級することにより、粗粒産物2と微粒産物とを得る第2の分級工程と、
前記第2の分級工程で得られた前記微粒産物を磁力選別して磁着物1と非磁着物1を得る第1の磁選工程と、
前記第1の磁選工程で得られた非磁着物1を磁力選別して磁着物2と非磁着物2を得る第2の磁選工程と、
前記磁着物1および前記磁着物2から有価物を回収する回収工程と、
を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<2> 前記第1の分級工程は、600μm以上2,400μm以下の分級点で行う、前記<1>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<3> 前記第2の分級工程は、25μm以上1,700μm以下の分級点で行う、前記<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<4> 前記第1の磁選工程における磁力選別の磁束密度が0.1T以上0.3T未満であり、
前記第2の磁選工程における磁力選別の磁束密度が0.3T以上2T以下である、前記<1>乃至<3>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<5> 前記非磁着物1のコバルト品位及びニッケル品位の合算値が30質量%以下である、前記<1>乃至<4>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<6> 前記非磁着物1に含まれるコバルトおよびニッケルの少なくともいずれかの個数平均粒径が50μm以下である、前記<1>乃至<5>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<7> 前記第1の磁選工程および前記第2の磁選工程の少なくともいずれかが湿式磁選で行われる、前記<1>乃至<6>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<8> 前記第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、高勾配型湿式磁選法を用いる、前記<7>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<9> 前記第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、回転している、磁石を有するドラムに非磁着物スラリーを投入する前記<8>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<10> 前記第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、ドラムにおける3時の方向に磁石を配置し、ドラムにおける12時~2時の方向から非磁着物1スラリーを投入し、前記ドラムを反時計回りに回転させるドラム型湿式磁選法を用いる、前記<8>乃至<9>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<11> 前記第2の磁選工程が前記第1の磁選工程で得られた前記非磁着物1に分散剤を添加して行われる、前記<8>乃至<10>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<12> 前記回収工程において、前記磁着物1および前記磁着物2を洗浄し、固液分離して有価物を回収する、前記<1>乃至<11>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<13> 前記粗粒産物2から銅を回収する、前記<1>乃至<12>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、磁選対象物におけるコバルト品位およびニッケル品位が低い場合であってもコバルトおよびニッケルの高い回収率を実現できるリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法における処理の流れの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、ドラム型湿式磁選装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、ドラム型湿式磁選装置の他の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、高勾配型湿式磁選装置におけるマトリックス投入口の一例を示す写真である。
【
図5】
図5は、高勾配型湿式磁選装置におけるマトリックス収容容器の一例を示す写真である。
【
図6A】
図6Aは、横型のマトリックスの一例を示す図面である。
【
図6B】
図6Bは、縦型のマトリックスの一例を示す図面である。
【
図7】
図7は、横型のマトリックス3枚と縦型のマトリックス4枚を交互に重ね合わせたマトリックス部材の一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法)
本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、熱処理工程と、第1の分級工程と、第2の分級工程と、第1の磁選工程と、第2の磁選工程と、回収工程とを含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
【0012】
本発明においては、第1の磁選工程を行った後に、さらに第2の磁選工程を行うことにより、前記第1の磁選工程で非磁着物としてロスしていたコバルトおよびニッケルを第2の磁選工程で磁着物として回収することができ、コバルトおよびニッケルの高い回収率を実現できる。特に前記第1の磁選工程で得られた非磁着物1のコバルト品位およびニッケル品位の合算値で30質量%以下であっても、あるいは前記第1の磁選工程で得られた非磁着物1に含まれるコバルトおよびニッケルの少なくともいずれかの個数平均粒径が50μm以下であっても、コバルトおよびニッケルの高い回収率を実現できる。
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、対象物であるリチウムイオン二次電池から有価物を回収する方法である。
ここで、有価物とは、廃棄せずに取引対象たりうる価値のあるものを意味し、例えば、各種金属などが挙げられる。リチウムイオン二次電池における有価物としては、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、炭素(C)などが挙げられる。これらの中でも、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)が好ましい。
【0014】
<リチウムイオン二次電池>
対象物であるリチウムイオン二次電池としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムイオン二次電池の製造過程で発生した不良品のリチウムイオン二次電池、使用機器の不良、使用機器の寿命などにより廃棄されるリチウムイオン二次電池、寿命により廃棄される使用済みのリチウムイオン二次電池などが挙げられる。
【0015】
リチウムイオン二次電池の形状、構造、大きさ、および材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
リチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネート型、円筒型、ボタン型、コイン型、角型、平型などが挙げられる。
また、リチウムイオン二次電池の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バッテリーセル、バッテリーモジュール、バッテリーパックなどが挙げられる。ここで、バッテリーモジュールは、単位電池であるバッテリーセルを複数個接続して一つの筐体にまとめたものを意味する。バッテリーパックとは、複数のバッテリーモジュールを一つの筐体にまとめたものを意味する。また、バッテリーパックは、制御コントローラー又は冷却装置を備えたものであってもよい。
【0016】
リチウムイオン二次電池としては、例えば、正極と、負極と、セパレーターと、電解質および有機溶剤を含有する電解液と、正極、負極、セパレーター、および電解液を収容する電池ケースである外装容器とを備えたものなどが挙げられる。なお、リチウムイオン二次電池は、正極および負極などが脱落した状態であってもよい。
【0017】
-正極-
正極としては、コバルトおよびニッケルの少なくともいずれかを含む正極活物質を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。
【0018】
--正極集電体--
正極集電体としては、その形状、構造、大きさ、および材質などに、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。
正極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好ましい。
【0019】
正極材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムを含有する正極活物質を少なくとも含み、必要により導電剤と、結着樹脂とを含む正極材などが挙げられる。
正極活物質としては、コバルトおよびニッケルの少なくともいずれかを含むものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極活物質としては、例えば、LMO系と称されるマンガン酸リチウム(LiMn2O4)、LCO系と称されるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、3元系およびNCM系と称されるLiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、NCA系と称されるLiNixCoyAlz(x+y+z=1)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、コバルト・ニッケル酸リチウム(LiCo1/2Ni1/2O2)、チタン酸リチウム(Li2TiO3)などが挙げられる。また、正極活物質としては、これらの材料を組合せて用いてもよい。
導電剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、金属炭化物などが挙げられる。
結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、アクリロニトリル、エチレンオキシド等の単独重合体又は共重合体、スチレン-ブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0020】
-負極-
負極としては、負極活物質を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
負極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。
【0021】
--負極集電体--
負極集電体としては、その形状、構造、大きさ、および材質などに、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
負極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。
負極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、銅が好ましい。
【0022】
負極活物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラファイト、ハードカーボン等の炭素材料、チタネイト、シリコンなどが挙げられる。また、負極活物質としては、これらの材料を組合せて用いてもよい。
【0023】
なお、正極集電体と負極集電体とは積層体の構造を有しており、積層体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
-外装容器-
また、リチウムイオン二次電池の外装容器(筐体)の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレススチール、樹脂(プラスチック)などが挙げられる。
【0025】
以下、本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法における各工程について、詳細に説明する。
【0026】
<熱処理工程>
熱処理工程は、リチウムイオン二次電池を熱処理することにより、熱処理物を得る工程である。熱処理物とは、リチウムイオン二次電池を熱処理して得られたものを意味する。
熱処理工程における熱処理を行う手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の焙焼炉により対象物を加熱することにより熱処理を行うことができる。
焙焼炉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロータリーキルン、流動床炉、トンネル炉、マッフル炉等のバッチ式炉、キュポラ、ストーカー炉などが挙げられる。
【0027】
熱処理に用いる雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大気雰囲気、不活性雰囲気、還元性雰囲気、低酸素雰囲気などが挙げられる。
大気雰囲気(空気雰囲気)とは、酸素が約21体積%、窒素が約78体積%の大気(空気)を用いた雰囲気を意味する。
不活性雰囲気とは、窒素又はアルゴンからなる雰囲気を例示できる。
還元性雰囲気とは、例えば、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気中にCO、H2、H2S、SO2などを含む雰囲気を意味する。
低酸素雰囲気とは、酸素濃度が11体積%以下である雰囲気を意味する。
【0028】
熱処理の対象物を熱処理(加熱)する条件(熱処理条件)としては、対象物の各構成部品を、後述する破砕・分級工程において分離して破砕可能な状態とすることができる条件であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、熱処理条件としては、例えば、熱処理温度、熱処理時間などが挙げられる。
【0029】
熱処理温度とは、熱処理の対象物であるリチウムイオン二次電池の温度のことを意味する。熱処理温度は、熱処理中の対象物に、カップル、サーミスタなどの温度計を差し込むことにより、測定することができる。
【0030】
熱処理における温度(熱処理温度)としては、400℃以上1,080℃以下が好ましく、660℃以上1,080℃以下がより好ましく、750℃以上900℃以下が特に好ましい。熱処理温度を400℃以上とすることにより、正極活物質に含まれるコバルト酸化物およびニッケル酸化物のメタルへの還元が生じる。また、これらのメタルを後段の磁選において磁着し易い粒径まで成長させることができる。この粒径成長はより高温度で熱処理するほど生じやすい。また、熱処理温度を660℃以上とすることにより、LIBパックやセルの外装ケースを構成するアルミニウムを熔融してそれ以外の部材から分離回収することが可能となる。また、熱処理温度を750℃以上とすることにより、正極活物質中のLi(Ni/Co/Mn)O2や電解質中のLiPF6におけるリチウムを、フッ化リチウム(LiF)、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化リチウム(Li2O)等のリチウムが水溶液に可溶な形態の物質にすることができ、スラリー化処理の際に分散媒に浸出させることができる。
また、リチウムイオン二次電池の外装容器には、熱処理温度より高い融点を有する材料が用いられることが好ましい。
リチウムイオン二次電池の外装容器に熱処理温度より低い融点を有する材料が用いられる場合は、酸素濃度11体積%以下の低酸素雰囲気下、又は、少なくとも焙焼中のリチウムイオン二次電池内部(特に、リチウムイオン二次電池の外装容器内に配置された正極集電体と負極集電体)において酸素濃度が11体積%以下となるように、熱処理することが好ましい。
【0031】
また、低酸素雰囲気の実現方法としては、例えば、リチウムイオン二次電池の正極又は負極を、酸素遮蔽容器に収容し熱処理してもよい。酸素遮蔽容器の材質としては、熱処理温度以上の融点である材質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱処理温度が800℃である場合は、この熱処理温度よりも高い融点を有する鉄、ステンレス鋼などが挙げられる。
リチウムイオン二次電池又は積層体中の電解液等の燃焼等により生じるガスのガス圧を放出するために、酸素遮蔽容器には開口部を設けることが好ましい。開口部の開口面積は、開口部が設けられている外装容器の表面積に対して12.5%以下となるように設けることが好ましい。開口部の開口面積は、開口部が設けられている外装容器の表面積に対して6.3%以下であることがより好ましい。開口部は、その形状、大きさ、および形成箇所などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
リチウムイオン二次電池の熱処理時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間以上10時間以下が好ましく、1分間以上3時間以下がより好ましい。熱処理時間はコバルトおよびニッケルが金属化する所望の温度まで到達する熱処理時間であればよく、保持時間は金属化が進む時間が確保できればよい。熱処理時間が好ましい範囲内であると、熱処理にかかるコストの点で有利である。
したがって、熱処理を400℃以上1,080℃以下で1時間以上行うことが好ましい。
【0032】
<第1の分級工程>
第1の分級工程は、熱処理物を破砕して得られた破砕物を分級することにより、粗粒産物1と細粒産物とを得る工程である。
熱処理物の破砕処理は、熱処理物を破砕して破砕物が得られる処理であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、破砕物とは、熱処理物を破砕したものを意味する。
破砕処理としては、例えば、熱処理物を衝撃により破砕して破砕物を得ることが好ましい。また、リチウムイオン二次電池の外装容器が熱処理中に溶融しない場合には、熱処理物に衝撃を与える前に、切断機により熱処理物を切断する予備破砕しておくことがより好ましい。
【0033】
衝撃により破砕を行う方法としては、例えば、回転する打撃板により熱処理物を投げつけ、衝突板に叩きつけて衝撃を与える方法、回転する打撃子(ビーター)により熱処理物を叩く方法などが挙げられ、例えば、ハンマークラッシャーなどにより行うことができる。また、衝撃により破砕を行う方法としては、例えば、セラミックなどのボールにより熱処理物を叩く方法でもよく、この方法は、ボールミルなどにより行うことができる。また、衝撃による破砕は、例えば、圧縮による破砕を行う刃幅、刃渡りの短い二軸破砕機等を用いて行うこともできる。
さらに、衝撃により破砕を行う方法としては、例えば、回転させた2本のチェーンにより、熱処理物を叩いて衝撃を与える方法なども挙げられ、例えば、チェーンミルなどにより行うことができる。
【0034】
衝撃により熱処理物を破砕することで、正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))の破砕が促進されるが、形態が著しく変化していない負極集電体(例えば、銅(Cu))は、箔状などの形態で存在する。そのため、破砕処理において、負極集電体は切断されるにとどまるため、第1の分級工程(分級処理)において、正極集電体由来の有価物(例えば、アルミニウム)と負極集電体由来の有価物(例えば、銅(Cu))とを、効率的に分離できる状態の破砕物を得ることができる。
【0035】
破砕処理における破砕時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、リチウムイオン二次電池1kgあたりの破砕時間としては、1秒間以上30分間以下が好ましく、2秒間以上10分間以下がより好ましく、3秒間以上5分間以下が特に好ましい。
【0036】
第1の分級工程は、前記熱処理物を破砕して得られた破砕物を600μm以上2,400μm以下の分級点で分級することにより、粗粒産物1と細粒産物とを得る処理を含み、850μm以上1,700μm以下の分級点で分級することが好ましい。
第1の分級工程としては、破砕物を分級して粗粒産物1(篩上産物)と細粒産物(篩下産物)を得ることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
分級方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、サイクロン、JIS Z8801の標準篩、湿式振動テーブル、エアーテーブルなどを用いて行うことができる。分級により、銅(Cu)、鉄(Fe)等を粗粒産物1中に分離でき、リチウム、コバルト、ニッケル、又は炭素を細粒産物中に濃縮できる。
分級の粒度(分級点、篩の目開き)としては、分級により、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)等を粗粒産物1中に分離し、炭素(C)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)等を細粒産物中に濃縮する点から、600μm以上2,400μm以下の分級点で行われる。
【0038】
また、分級方法として篩を用いる場合に、篩上に解砕促進物として、例えば、ステンレス球又はアルミナボールを載せて分級を行うことにより、大きな破砕物に付着している小さな破砕物を、大きな破砕物から分離させることで、大きな破砕物と小さな破砕物を、より効率的に分離することができ、回収する金属の品位をさらに向上させることができる。
上記のように、第1の分級工程において分級処理と同時に破砕処理を進行させることもできる。例えば、熱処理工程で得られた熱処理物を破砕しながら、破砕物を粗粒産物1と細粒産物とに分級する破砕・分級工程(破砕・分級)として行ってもよい。
なお、第1の分級工程(分級処理)で細粒産物の比率が低い場合には、粗粒産物1は熱処理物を破砕する工程に戻すことができる。これにより、Fe、Cu以外の有価物の回収率を向上できる。
【0039】
<第2の分級工程>
第2の分級工程は、前記第1の分級工程で得られた細粒産物を粉砕して得られた粉砕物を、第1の分級工程の分級点より小さい分級点で分級することにより、粗粒産物2と微粒産物とを得る工程である。
粉砕処理は、細粒産物を粉砕して所定のサイズの粉砕物を得ることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄球等の媒体を用いた媒体攪拌型粉砕機(アトライター、ビーズミル、タワーミル)、ローラーミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(ハンマーミル,ピンミル)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル)などが挙げられる。
【0040】
粉砕処理は、湿式および乾式のいずれでもよく、目的に応じて適宜選択することができるが、湿式で行うことが好ましい。湿式で粉砕を行うことにより、各工程での発塵によるコバルト(Co)およびニッケル(Ni)の回収率の低下を抑制でき、周囲大気への粉塵飛散を防止する手段が不要になる。湿式粉砕を行う場合には、第1の分級工程の後に得られた細粒産物を水に浸けることにより、スラリー状の液体(細粒産物スラリー)を得るスラリー化処理を行うことが好ましい。
スラリー化処理としては、第1の分級工程において回収した細粒産物を水に浸ける(浸す、水に入れる)ことにより、水に細粒産物を分散させてスラリー(懸濁液)を得ることができる処理であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
粉砕物の粒度(90%粒径)としては、1,000μm以下が好ましく、750μm以下がより好ましく、500μm以下が特に好ましい。前記90%粒径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定して得られた粒度積算分布で90%になる粒径のことである。
また、粉砕物に含まれるコバルトおよびニッケルの少なくともいずれかまたは両方の個数平均粒径が100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。前記個数平均粒径は、例えば、電子顕微鏡観察によりコバルト粒子およびニッケル粒子の粒径を合計100個測定し、算出した平均値である。
90%粒径または個数平均粒径が小さいほうが、コバルトおよびニッケルの他構成物からの単体分離が促進され、第1の磁選工程および第2の磁選工程で回収される磁着物1および磁着物2のコバルトおよびニッケル品位を向上できる。なお、90%粒径または個数平均粒径が小さい場合であっても第1の磁選工程と第2の磁選工程でのコバルトおよびニッケルの回収率をより高くすることができることから、必要に応じて第3の磁選工程等さらなる回収工程を設けてもよい。
【0041】
細粒産物をスラリー化する分散媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、工業用水、水道水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。
【0042】
ここで、スラリー化処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単に細粒産物を水に投入しておく手法、細粒産物を水に投入して攪拌する手法、細粒産物を水に投入して超音波を当てながら緩やかに攪拌する手法、細粒産物に水を添加する方法などが挙げられる。これらの中でも、細粒産物を水に投入して攪拌する手法が好ましく、細粒産物を水に投入して超音波を当てながら緩やかに攪拌する手法がより好ましい。
【0043】
スラリー化処理における固液比(水に対する細粒産物の濃度(質量比率))は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。固液比が1質量%未満であると、本来磁着物として回収されるコバルトおよびニッケルが磁選機で回収されず非磁着物へロスしてしまい、コバルトおよびニッケルの回収率が低下する可能性が高い。固液比が50質量%を超えると、磁着物に巻き込まれる不純物が増え、コバルト品位およびニッケル品位が低下する場合がある。
スラリー化処理における水の攪拌速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、200rpmとすることができる。
スラリー化処理における浸出時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1時間とすることができる。
【0044】
第2の分級工程は、粉砕処理で得られた粉砕物を、第1の分級工程の分級点より小さく、且つ75μm以上1,200μm以下の分級点で分級することにより、粗粒産物2と微粒産物を得る。
例えば、粉砕処理で得られた粉砕物を分級点が500μmのJIS Z8801の標準篩を用いて第2の分級工程を行う場合、前記分級点が500μmの標準篩の篩上産物が粗粒産物2であり、篩下産物が微粒産物である。なお、粗粒産物2から銅を濃縮して回収することができる。
【0045】
第2の分級工程で用いる分級点としては、25μm以上1,700μm以下が好ましく、75μm以上1,200μm以下がより好ましく、75μm以上850μm以下が更に好ましく、106μm以上600μm以下が特に好ましい。分級点が1,700μmを超えると、微粒産物中への銅の混入が増加し、コバルト品位およびニッケル品位が低下することがあり、分級点が25μmを下回ると、コバルトおよびニッケルを微粒産物に回収するための粉砕エネルギーが過大となることがある。
【0046】
第2の分級工程における分級処理は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、サイクロン、JIS Z8801の標準篩、湿式振動テーブル、エアーテーブルなどが挙げられる。
前記第2の分級工程は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、湿式で行うことが好ましい。湿式分級を行う場合には、湿式粉砕処理で得られた粉砕物スラリーをそのまま供給してもよく、粉砕物スラリーに分散媒(水)を加えて希釈し固液比を調整してもよい。
また、第2の分級工程を湿式で行い、振動篩もしくは多段式振動篩を用いる場合は、篩上部から分散媒(水)をシャワーリングすることで、分級中の粉砕物の凝集を抑制し、良好な分級成績を得ることができる。また、振動篩のウェイトの位相角は30°以上90°以下が好ましく、40°以上80°以下がより好ましく、50°以上70°以下が特に好ましい。この位相角に設定することで、粉砕物や分級後の産物の篩装置外への過剰排出(篩上滞留時間の過少)を防ぎ、良好な分級成績を得ることができる。
【0047】
<第1の磁選工程>
第1の磁選工程は、第2の分級工程で得られた微粒産物を磁力選別して磁着物1と非磁着物1を得る工程である。
【0048】
磁着物1とは、磁力(磁界)を発生させる磁力源(例えば、磁石、電磁石など)が発生させた磁力により、当該磁力源との間で引力を生じて、当該磁力源側に吸着可能なものを意味する。磁着物1としては、例えば、強磁性体の金属などが挙げられる。強磁性体の金属としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などが挙げられる。
非磁着物1とは、上記磁力源が発生させた磁力では、当該磁力源側に吸着されないものを意味する。非磁着物としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができる。また、金属の非磁着物としては、例えば、常磁性体又は半磁性体の金属などが挙げられる。常磁性体又は半磁性体の金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などが挙げられる。
【0049】
第1の磁選工程は、乾式磁選および湿式磁選のいずれでもよいが、以下の点から湿式磁選が好ましい。
第2の分級工程で得られた微粒産物を磁選する際に、例えば、乾式で磁選した場合、粒子間の付着水分により粒子の凝集が生じ、負極集電体由来金属粒子および微粒産物に10%以上含まれる負極活物質微粒子とコバルト粒子およびニッケル粒子を十分に分離できない場合がある。このため、本発明においては、湿式磁選を行い、負極活物質由来の物質と負極集電体由来金属を非磁着物スラリーに分離し、コバルトおよびニッケルを磁着物1として回収することが好ましい。
【0050】
湿式磁選では、湿式の第2の分級工程で得られた微粒産物スラリーをそのまま供給してもよく、微粒産物スラリーを沈降分離等の固液分離により濃縮もしくは希釈し固液比を調整してもよい。また、微粒産物スラリーに水を加えて希釈し固液比を調整してもよい。
湿式磁選に供給するスラリーの固液比(微粒産物の水に対する濃度(質量比率))は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%以上67質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。固液比が5質量%未満であると、湿式磁選機内でのコバルトおよびニッケルの磁着物として回収率が低下することがある。固液比が67質量%を超えると、スラリー供給時のポンプの閉塞などの問題が生じやすく、またコバルトおよびニッケル(磁着物)とカーボン等の非磁着物の分離成績が低下することがある。
スラリーの供給方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タンク内のスラリーを攪拌しながらポンプで供給してもよい。
【0051】
第1の磁選工程は、特に制限はなく、公知の磁力選別機(磁選機)などを用いて行うことができ、例えば、ドラム型磁選機、高勾配型磁選機などが挙げられる。これらの中でも、ドラム型磁選機が好ましい。
【0052】
第1の磁選工程における磁力選別の磁束密度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
0.05T以上
0.9T以下が好ましく、
0.075T以上
0.6T以下がより好ましく、
0.1T以上
0.3T未満がさらに好ましく、
0.1T以上
0.2T以下が特に好ましい。磁束密度が
0.05T未満であると、コバルトおよびニッケルの微粒子を磁着しにくく、コバルトおよびニッケルの磁着物への回収率が低下し易くなる。磁束密度が
0.9Tを超えると、コバルトおよびニッケル以外の不純物の磁着物1への回収率が増加し、磁着物1中のコバルトおよびニッケル品位が低下することがある。
前記第1の磁選工程におけるドラム型湿式磁選法としては、例えば、(1)
図2に示すように、ドラムにおける6時の方向に磁石を配置し、3時の方向(側部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを時計回りに回転させる方法、(2)
図3に示すように、ドラムにおける3時の方向付近に磁石を配置し、ドラムの12時~2時の方向(上部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを反時計回りに回転させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、コバルトおよびニッケルが高品位の磁着物が得られる点から、(1)
図2に示すドラム型湿式磁選法が好ましい。
【0053】
<第2の磁選工程>
第2の磁選工程は、第1の磁選工程で得られた非磁着物1を磁力選別して磁着物2と非磁着物2を得る工程である。なお、第2の磁選工程は、第1の分級工程で得られる細粒産物の移送時に発生する集塵ダストを回収している場合には、前記集塵ダストを磁選対象とすることもできる。
【0054】
第1の磁選工程で得られた非磁着物1に含まれるコバルトおよびニッケルの品位の合算値は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下が特に好ましい。
コバルト品位およびニッケル品位の合算値が30%以下である非磁着物1であっても、第2の磁選工程で磁着物として回収することができ、コバルトおよびニッケルの回収率を向上させることができる。
ただし、非磁着物のコバルトおよびニッケルの品位が高いほうが磁着物にコバルトおよびニッケルを回収しやすいことは公知の事実である。
第1の磁選工程で得られた非磁着物1に含まれるコバルトおよびニッケルの少なくともいずれかの個数平均粒径が50μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが特に好ましい。前記個数平均粒径は、例えば、電子顕微鏡観察によりコバルト粒子およびニッケル粒子の粒径を合計100個測定し、算出した平均値である。個数平均粒径が小さいほうが、コバルトおよびニッケルの他構成物からの単体分離が促進され、第2の磁選工程で回収される磁着物2のコバルトおよびニッケル品位を向上できる。なお、第2の磁選工程でのコバルトおよびニッケルの回収率をより高くすることができることから、必要に応じて第3の磁選工程等さらなる回収工程を設けてもよい。
個数平均粒径が50μm以下のコバルト粒子およびニッケル粒子であっても、第2の磁選工程で磁着物として回収することができ、プロセス全体でのコバルトおよびニッケルの回収率を向上させることができる。
【0055】
第2の磁選工程は、特に制限はなく、公知の磁力選別機(磁選機)などを用いて行うことができ、例えば、ドラム型磁選機、高勾配型磁選機などが挙げられる。
【0056】
第2の磁選工程における磁力選別の磁束密度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3T以上2T以下が好ましく、0.4T以上1.8T以下がより好ましく、0.6T以上1.2T以下が特に好ましい。磁束密度が0.3T未満であると、コバルトおよびニッケルの微粒子を磁着しにくく、コバルトおよびニッケルの磁着物への回収率が低下し易くなる。磁束密度が2Tを超えると、コバルトおよびニッケル以外の不純物の磁着物2への回収率が増加し、磁着物2中のコバルトおよびニッケル品位が低下することがある。
【0057】
第2の磁選工程は乾式磁選および湿式磁選のいずれでもよいが、湿式磁選であることが好ましい。
第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、高勾配型湿式磁選法を用いることが好ましい。高勾配型湿式磁選法は2回以上繰り返して行うこともできる。
高勾配型湿式磁選法においては、磁束密度の変化を大きくするため、マトリックスを用いることが好ましい。
マトリックスとしては、例えば、
図6Aに示す横型の鉄製マトリックス(線幅:2mm、厚さ:4mm、横200mm×縦50mm)と、
図6Bに示す縦型の鉄製マトリックス(菱形の最大長さ:22mm、菱形の最小長さ:10mm、厚さ:4mm、横200mm×縦50mm)とを用い、
図6Aの横型マトリックス3枚と、
図6Bの縦型マトリックス4枚とを交互に重ねて束ねた
図7に示すマトリックス部材(横200mm×縦50mm×厚さ:28mm)などを用いることができる。
【0058】
第2の磁選工程が湿式磁選で行われ、ドラム型湿式磁選法を用いることが好ましい。
前記第2の磁選工程におけるドラム型湿式磁選法としては、例えば、回転している、磁石を有するドラムに非磁着物スラリーを投入する方法が挙げられる。
前記回転の方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、時計回りでもよいし、逆時計回りでもよい。
前記ドラムにおける磁石の位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非磁着物スラリーの投入位置と同じ位置でもよいし、非磁着物スラリーの投入位置と異なる位置でもよい。
前記第2の磁選工程におけるドラム型湿式磁選法の具体例としては、例えば、(1)
図2に示すように、ドラムにおける6時の方向に磁石を配置し、3時の方向(側部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを時計回りに回転させる方法、(2)
図3に示すように、ドラムにおける3時の方向付近に磁石を配置し、ドラムの12時~2時の方向付近(上部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを反時計回りに回転させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、コバルトおよびニッケルが高回収率で得られる点から、(2)
図3に示すドラム型湿式磁選法が好ましい。なお、(2)
図3に記載の方法においては、磁石に吸着された磁着物はドラムの回転により9時の方向に運ばれて回収され、非磁着物スラリー2は3時~6時方向のドラム表面を流れて、6時方向から排出される。
【0059】
第2の磁選工程は、第1の磁選工程で得られた非磁着物1スラリーに分散剤を添加して行うことができる。非磁着物1スラリーに分散剤を添加することにより第2の磁選工程の磁選効率を向上させることができる。
分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、染料、顔料、農薬、無機質の分野で用いられている分散剤を使用することができる。
分散剤としては、例えば、芳香族スルホン酸とホルマリンの縮合物、特殊カルボン酸型高分子界面活性剤を主成分とする陰イオン性界面活性剤(例えば、花王株式会社製の「デモール」シリーズの界面活性剤)などが挙げられる。
【0060】
なお、磁着物1および磁着物2もしくはそのいずれかに対し追加の磁選を行ってもよく、非磁着物1および非磁着物2もしくはそのいずれかに対し追加の磁選を行ってもよい。
【0061】
湿式磁選で得られる磁着物中のコバルト品位及びニッケル品位の合算値は、細粒産物中のコバルト品位及びニッケル品位の合算値から1.3倍以上に濃縮されることが好ましく、1.5倍以上に濃縮されることがより好ましい。
【0062】
<回収工程>
回収工程は、磁着物1および磁着物2から有価物を回収する工程である。
回収工程では、磁着物1および磁着物2を固液分離して有価物を回収する。固液分離前に磁着物1および磁着物2を洗浄してもよい。洗浄により、磁着物に含まれるフッ素などの不純物の品位を低減できる。
洗浄に用いる洗浄水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、工業用水、水道水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。
第1および第2の磁選工程で回収した磁着物1および磁着物2には水分が含まれるため、これらを濾紙、フィルタープレス、又は遠心分離機などを用いて固液分離すること、風乾することや、乾燥機での加熱乾燥により水分を除去してもよい。
【0063】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥工程、精製工程などが挙げられる。
【0064】
<実施形態の一例>
ここで、図面を参照して、本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法における実施形態の一例について説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法の実施形態における処理の流れの一例を示す図である。
【0065】
まず、廃棄リチウムイオン二次電池(LIB;Lithium Ion Battery)に対して熱処理(熱処理工程)を行い、熱処理物を得る(熱処理工程)。
次に、熱処理物を破砕して得られた破砕物を600μm以上2,400μm以下の分級点で分級し、粗粒産物1と細粒産物とを得る(第1の分級工程)。ここで、粗粒産物1から、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)などを分離することができる。
【0066】
続いて、細粒産物を水に浸けることにより、細粒産物スラリーを得る。このとき、リチウム(酸化リチウム又は炭酸リチウム)を水に浸出すると共に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)を含む残渣が、細粒産物スラリー中に形成される。
【0067】
次に、得られた細粒産物スラリーを湿式粉砕し、粉砕物スラリーを得る。
次に、得られた粉砕物スラリーを25μm以上1,700μm以下の分級点で湿式分級することにより、粗粒産物スラリー2と微粒産物スラリーを得る(第2の分級工程)。
【0068】
次に、得られた微粒産物スラリーを磁力選別して、磁着物1と非磁着物スラリー1とを得る(第1の磁選工程)。
次に、得られた非磁着物スラリー1を磁力選別して、磁着物2と非磁着物スラリー2とを得る(第2の磁選工程)。
得られた磁着物1および磁着物2を固液分離してニッケル(Ni)およびコバルト(Co)を回収する。また、非磁着物スラリー2を固液分離することにより、カーボンおよび銅を回収することができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
-熱処理工程-
被処理対象である廃棄リチウムイオン二次電池(約300kg)を、熱処理装置としてエコシステム秋田株式会社のバッチ式バーナー炉を用い、熱処理温度750℃(20℃から15分間かけて750℃に昇温後、3時間保持)、大気雰囲気下の条件で、熱処理を行うことにより熱処理物を得た。
【0071】
-破砕工程-
次いで、破砕装置として、チェーンミル(クロスフローシュレッダーS-1000、佐藤鉄工株式会社製)を用い、50Hz(チェーン先端速度:約60m/秒間)、滞留時間が50秒の条件で、熱処理を行ったリチウムイオン二次電池を破砕し、リチウムイオン二次電池の破砕物を得た。
【0072】
-第1の分級工程-
続いて、篩目の目開きが1.2mmの振動篩(直径200mm、東京スクリーン株式会社製)を用いて、リチウムイオン二次電池の破砕物を篩分けした。篩分け後の1.2mmの篩上産物(粗粒産物1)と篩下産物(細粒産物)をそれぞれ採取した。細粒産物(ブラックマス)のコバルト品位は6.2%、ニッケル品位は13.5%であり、合算した品位は19.7%であった。
【0073】
-スラリー化工程-
得られた細粒産物62.5kgを250Lの水に浸けて、固液比25%、攪拌速度400rpm、浸出時間1時間の条件でスラリー化処理し、細粒産物スラリーを得た。
【0074】
-湿式粉砕工程-
得られた細粒産物スラリーと10kgの粉砕媒体(鉄球)を媒体攪拌型粉砕機(タワーミル NE008、日本アイリッヒ株式会社製)を用い、前記細粒産物スラリーを20回に分けて供給し、1回あたり回転数716rpm(周速3m/sec)で30分間湿式粉砕を行った。
【0075】
-第2の分級工程-
次に、得られた細粒産物スラリーを篩目の分級点(目開き)が500μmと250μmのJIS Z8801の標準篩を用いて湿式分級を行い、目開き500μmの篩上産物(粗粒産物2)と目開き250μmの篩下産物(微粒産物スラリー)をそれぞれ採取した。なお、目開き250μmの篩上に発生した中間産物は前段の湿式粉砕工程に戻し、すべて250μmの篩目を通過するまで繰り返し粉砕した。
【0076】
-第1の磁選工程-
得られた微粒産物スラリー(スラリー濃度15質量%)を、
図2に示すドラム型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:WD L-8ラボモデル)を用い、磁束密度が
0.15T、ドラム回転速度40rpmで第1の磁選工程を行い、磁着物1と非磁着物スラリー1を回収した。
図2に示すドラム型湿式磁選装置は、ドラムにおける6時の方向に磁石を配置し、ドラムにおける3時の方向(側部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを時計回りに回転させながら磁選を行う装置である。
得られた非磁着物スラリー1について、電子顕微鏡観察によりコバルト粒子およびニッケル粒子の粒径を合計100個測定し、個数平均粒径を求めたところ10μmであった。
また、非磁着物スラリー1に含まれる非磁着物1のコバルト品位は3.4%、ニッケル品位は8.2%であり、合算した品位は11.6%であった。
【0077】
-第2の磁選工程-
第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:30質量%)を、
図2に示すドラム型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:WD REX1.5φ×12W)を用い、磁束密度が
0.6T、ドラム回転速度5rpmで第2の磁選工程を行い、磁着物2と非磁着物スラリー2を回収した。
図2に示すドラム型湿式磁選装置は、ドラムにおける6時の方向に磁石を配置し、ドラムにおける3時の方向(側部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを時計回りに回転させながら磁選を行う装置である。
【0078】
次に、以下のようにして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0079】
<コバルト品位およびニッケル品位の測定>
得られた粗粒産物2、微粒産物、磁着物1、非磁着物1、および磁着物2の質量を105℃で1時間乾燥後に電磁式はかり(品名:GX-8K、エー・アンド・デイ株式会社製)を用いて測定した後、前記微粒産物、磁着物1、非磁着物1、および磁着物2を王水に加熱溶解させ、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(SPECTROGREEN FMX46、株式会社日立ハイテクサイエンス製)により分析を行い、コバルト品位およびニッケル品位を求めた。
【0080】
<コバルトおよびニッケルの回収率の計算>
粗粒産物2、磁着物1、非磁着物1、および磁着物2に含まれるコバルト総量およびニッケルの総量をそれぞれ100%とし、磁着物1および磁着物2に回収されたコバルトおよびニッケルの回収率を計算した。
【0081】
(実施例2)
実施例1において、第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:30質量%)を、
図3に示すドラム型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:WD REX1.5φ×12W)を用い、磁束密度が
0.6T、ドラム回転速度5rpmで第2の磁選工程を行った以外は、実施例1と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
図3に示すドラム型湿式磁選装置は、ドラムにおける3時の方向に磁石を配置し、ドラムにおける12時~2時の方向(上部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを反時計回りに回転させながら磁選を行う装置である。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0082】
(実施例3)
実施例1において、第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:30質量%)を、
図3に示すドラム型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:WD REX1.5φ×12W)を用い、磁束密度が
0.6T、ドラム回転速度20rpmで第2の磁選工程を行った以外は、実施例1と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
図3に示すドラム型湿式磁選装置は、ドラムにおける3時の方向に磁石を配置し、ドラムにおける12時~2時の方向(上部)から非磁着物1スラリーを投入し、ドラムを反時計回りに回転させながら磁選を行う装置である。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0083】
(実施例4)
実施例1において、第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:15質量%)を、
図3に示すドラム型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:WM REX1.5φ×12W)を用い、磁束密度が
0.6T、ドラム回転速度5rpmで第2の磁選工程を行った以外は、実施例1と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0084】
(実施例5)
実施例1において、第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:15質量%)を、
図3に示すドラム型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:WM REX1.5φ×12W)を用い、磁束密度が
0.6T、ドラム回転速度20rpmで第2の磁選工程を行った以外は、実施例1と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0085】
(実施例6)
実施例1において、第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:15質量%)を、高勾配型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:L-4)を用い、空芯磁束密度が
0.3Tで第2の磁選工程を行った以外は、実施例1と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
高勾配型湿式磁選装置としては、
図6Aに示す横型の鉄製マトリックス(線幅:2mm、厚さ:4mm、横200mm×縦50mm)3枚と、
図6Bに示す縦型の鉄製マトリックス(菱形の最大長さ:22mm、菱形の最小長さ:10mm、厚さ:4mm、横200mm×縦50mm)4枚とを交互に重ねて束ねた
図7に示すマトリックス部材(横200mm×縦50mm×厚さ:28mm)を、
図5に示す収容容器に入れ、
図4に示すマトリックス投入口から装着したものを用いた。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0086】
(実施例7)
実施例6において、第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:15質量%)を、高勾配型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:L-4)を用い、空芯磁束密度が0.6Tで第2の磁選工程を行った以外は、実施例6と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0087】
(実施例8)
実施例6において、第1の磁選工程で得られた非磁着物スラリー1(スラリー濃度:15質量%)を、高勾配型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:L-4)を用い、空芯磁束密度が1.2Tで第2の磁選工程を行った以外は、実施例6と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0088】
(実施例9)
実施例1において、
図2に示すドラム型湿式磁選装置(日本エリーズマグネチックス株式会社製、型式:WM REX1.5φ×12W)を用い、磁束密度が
0.6T、ドラム回転速度40rpmで第1の磁選工程を行った以外は、実施例1と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0089】
(比較例1)
実施例1において、第2の磁選工程を行わない以外は、実施例1と同様にして、コバルトおよびニッケルの回収を行った。
次に、実施例1と同様にして、コバルト品位およびニッケル品位、ならびにコバルトおよびニッケルの回収率を測定した。結果を表1および表2に示した。
【0090】
【0091】
表1および表2の結果から、磁選対象物である微粒産物スラリーのコバルト品位およびニッケル品位が低い場合であっても、実施例1~8では第1の磁選後に第2の磁選を行うことにより、高い回収率でコバルトおよびニッケルを回収できることがわかった。