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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】移動体支持装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241016BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/16 147
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020050397
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021149012
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三井 太郎
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-252267(JP,A)
【文献】特開2016-122034(JP,A)
【文献】特開2019-095722(JP,A)
【文献】特開2017-058446(JP,A)
【文献】特開2011-118192(JP,A)
【文献】特開平11-065397(JP,A)
【文献】特開平05-216382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/01
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/16-21/18
G03G 21/20
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ロールで駆動され循環移動可能な移動体が巻き掛けられて従動する従動ロールと、
前記移動体と回転可能に接触して前記移動体を支持する複数の張架ロールのうち、前記移動体の移動方向上流側で前記従動ロールと隣して配置された前記張架ロールの間で、全体が平滑な上面を有し露出する前記移動体の裏面に対して少なくとも食い込んで配置され前記移動体を支持する剛体支持手段と、を備えた、
ことを特徴とする移動体支持装置。
【請求項2】
前記剛体支持手段は、前記移動体を移動方向と交差する方向に定変位させて支持する、
ことを特徴とする請求項記載の移動体支持装置。
【請求項3】
前記剛体支持手段は、前記移動体を定荷重で支持する、
ことを特徴とする請求項記載の移動体支持装置。
【請求項4】
前記剛体支持手段は、電気的に接地されている、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置。
【請求項5】
前記剛体支持手段は、接する前記張架ロールと同電位に支持されている、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置。
【請求項6】
前記剛体支持手段は、前記移動体の裏面と接触する面に前記移動体の裏面と接触しない非接触領域を有している、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置。
【請求項7】
前記移動体として、トナー像を保持して一定の速度で移動する像保持体を備えた請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置と、
前記像保持体上に保持された前記トナー像を検知する検知手段と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記張架ロールの位置決め部に対し、前記剛体支持手段および前記検知手段は共通の被位置決め部を有し、前記剛体支持手段および前記検知手段は前記位置決め部へ前記被位置決め部を介して取り付けられる、
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記検知手段は、前記像保持体の移動方向と交差する幅方向において、前記剛体支持手段に設けられた前記移動体の裏面と接触しない非接触領域と対向しない位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項又はに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体支持装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の正逆回転なローラに掛け回され、該ローラ間に位置する展張面に対して像担持体に形成されたトナー像を転写することが可能な転写ベルトと、ローラのうちで転写ベルトの駆動側に位置するローラの近傍における中間転写ベルト裏面に配置され、該中間転写ベルトの移動方向に沿って該中間転写ベルトに当接可能な当接面を有するベルト形状保持部材を備えた転写装置において、中間転写ベルトは、トナー像を転写紙へ転写した後、該中間転写ベルトの周長以下の微小所定量を以て該トナー像転写時の移動方向と逆方向に移動される転写装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-252267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、移動する移動体の表面のばたつきを抑制することができる移動体支持装置及び画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1記載の移動体支持装置は、
駆動ロールで駆動され循環移動可能な移動体が巻き掛けられて従動する従動ロールと、
前記移動体と回転可能に接触して前記移動体を支持する複数の張架ロールのうち、前記移動体の移動方向上流側で前記従動ロールと隣して配置された前記張架ロールの間で、全体が平滑な上面を有し露出する前記移動体の裏面に対して少なくとも食い込んで配置され前記移動体を支持する剛体支持手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項記載の発明は、請求項記載の移動体支持装置において、
前記剛体支持手段は、前記移動体を移動方向と交差する方向に定変位させて支持する、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項記載の発明は、請求項記載の移動体支持装置において、
前記剛体支持手段は、前記移動体を定荷重で支持する、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置において、
前記剛体支持手段は、電気的に接地されている、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置において、
前記剛体支持手段は、接する前記張架ロールと同電位に支持されている、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置において、
前記剛体支持手段は、前記移動体の裏面と接触する面に前記移動体の裏面と接触しない非接触領域を有している、
ことを特徴とする。
【0015】
前記課題を解決するために、請求項記載の画像形成装置は、
前記移動体として、トナー像を保持して一定の速度で移動する像保持体を備えた請求項1ないしのいずれか1項に記載の移動体支持装置と、
前記像保持体上に保持された前記トナー像を検知する検知手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項に記載の画像形成装置において、
前記張架ロールの位置決め部に対し、前記剛体支持手段および前記検知手段は共通の被位置決め部を有し、前記剛体支持手段および前記検知手段は前記位置決め部へ前記被位置決め部を介して取り付けられる、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項記載の発明は、請求項又はに記載の画像形成装置において、
前記検知手段は、前記像保持体の移動方向と交差する幅方向において、前記剛体支持手段に設けられた前記移動体の裏面と接触しない非接触領域と対向しない位置に配置されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、移動する移動体の表面のばたつきを抑制することができる。
【0020】
請求項2、3に記載の発明によれば、移動体との摩擦を低減しながら移動する移動体の表面のばたつきを抑制することができる。
【0021】
請求項4、5に記載の発明によれば、剛体支持手段と移動体との摩擦接触による静電気の発生を抑制することができる。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、非接触領域を有しない構成と比較して、剛体支持手段と移動体との接触抵抗を減らすことができる。
【0026】
請求項に記載の発明によれば、移動する移動体の表面のばたつきを抑制して検知手段の検知精度を向上させることができる。
【0027】
請求項に記載の発明によれば、検知手段と像保持体の間隙を一定に保持し検知手段の検知精度を向上させることができる。
【0028】
請求項に記載の発明によれば、検知手段の検知精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成の一例を示す断面模式図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の転写装置の全体構成を示す断面模式図である。
図3】ベルト形状保持体を示す断面模式図である。
図4】ベルト形状保持体とADCセンサの取り付けを説明する断面模式図である。
図5】ベルト形状保持体に設けられた非接触領域を示す図である。
図6】中間転写ベルトに作用する張力を説明する図である。
図7】変形例1に係るベルト形状保持体を示す断面模式図である。
図8】変形例2に係るベルト形状保持体を示す断面模式図である。
図9】連帳紙にインクを吐出する吐出ヘッドを備えた記録装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0031】
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
(1.1)画像形成装置の全体構成
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成の一例を示す断面模式図である。
画像形成装置1は、画像形成部10と、画像形成部10の一端に装着された用紙送り装置20と、画像形成部10の他の一端に設けられ、印刷された用紙が排紙される排紙部30と、操作情報部40と、上位機器から送信された印刷情報から画像情報を生成する画像処理部50と、を備えて構成されている。
【0032】
画像形成部10は、システム制御装置11(不図示)、露光装置12、感光体ユニット13、現像装置14、転写装置15、用紙搬送装置16a、16b、16c、定着装置17、駆動装置18(不図示)、を備えて構成され、画像処理部50から受け取った画像情報を用紙送り装置20から送り込まれた用紙P上にトナー画像として形成する。
【0033】
用紙送り装置20は、画像形成部10に対する用紙供給を行う。すなわち、種類(例えば、材質や厚さ、用紙サイズ、紙目)の異なる用紙Pを収容する複数の用紙積載部を備えており、これら複数の用紙積載部のいずれか一つから繰り出した用紙Pを画像形成部10に対して供給するように構成されている。
【0034】
排紙部30は、画像形成部10にて画像出力が行われた用紙Pの排出を行う。そのために、排紙部30は、画像出力後の用紙Pが排出される排紙収容部を備えている。なお、排紙部30は、画像形成部10から出力される用紙束に対して、裁断やステープル(針綴じ)等の後処理を行う機能を有したものであってもよい。
【0035】
操作情報部40は、各種の設定や指示の入力及び情報表示に用いられるものである。すなわち、いわゆるユーザインタフェースに相当するもので、具体的には液晶表示パネル、各種操作ボタン、タッチパネル等を組み合わせて構成されている。
【0036】
(1.2)画像形成部の構成及び動作
このような構成の画像形成装置1では、画像形成のタイミングに合わせて用紙送り装置20のうち、印刷ジョブで印刷の1枚毎に指定された用紙積載部から繰り出された用紙Pが画像形成部10へ送り込まれる。
【0037】
感光体ユニット13は、露光装置12の下方に、それぞれが並列して設けられ、回転駆動する像保持体としての感光体ドラム131を備えている。感光体ドラム131の回転方向にそって、帯電器132、露光装置12、現像装置14、一次転写ロール152、クリーニングブレード134が配置されている。
【0038】
現像装置14は、内部に現像剤が収容される現像ハウジング141を有する。現像ハウジング141内には、感光体ドラム131に対向して配置された現像ロール142が配設され、現像ロール142には、現像剤の層厚を規制する層規制部材(不図示)が近接配置されている。
それぞれの現像装置14は、現像ハウジング141に収容される現像剤を除いて略同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0039】
回転する感光体ドラム131の表面は、帯電器132により帯電され、露光装置12から出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム131上に形成された静電潜像は現像ロール142によりトナー像として現像される。
【0040】
転写装置15は、各感光体ユニット13の感光体ドラム131にて形成された各色トナー像が多重転写される像保持体の一例としての中間転写ベルト151、各感光体ユニット13にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト151に順次転写(一次転写)する一次転写ロール152、中間転写ベルト151上に重畳して転写された各色トナー像を記録媒体である用紙に一括転写(二次転写)する二次転写ベルト153とから構成されている。
【0041】
黒(K)の作像エンジンの下流側で、二次転写部TRの上流には、中間転写ベルト151上に転写された濃度測定用の基準トナー像の濃度を検出する検知手段の一例としてのADCセンサ(Auto Density Control)SRが中間転写ベルト151と対向するように配置されている。
【0042】
各感光体ユニット13の感光体ドラム131に形成された各色トナー像は、システム制御装置11により制御される電源装置等(不図示)から所定の転写電圧が印加された一次転写ロール152により中間転写ベルト151上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
【0043】
中間転写ベルト151上の重畳トナー像は、中間転写ベルト151の移動に伴って二次転写ベルト153が配置された二次転写部TRに搬送される。重畳トナー像が二次転写部TRに搬送されると、そのタイミングに合わせて用紙送り装置20から用紙Pが二次転写部TRに供給される。そして、二次転写ベルト153を介して二次転写ロール154と対向するバックアップロール165には、システム制御装置11により制御される電源装置等から所定の転写電圧が印加され、用紙Pに中間転写ベルト151上の多重トナー像が一括転写される。
【0044】
感光体ドラム131表面の残留トナーは、クリーニングブレード134により除去され、廃トナー収容部(不図示)に回収される。感光体ドラム131の表面は、帯電器132により再帯電される。
【0045】
定着装置17は一方向へ回転する無端状の定着ベルト17aと、定着ベルト17aの周面に接し、一方向へ回転する加圧ロール17bとを有し、定着ベルト17aと加圧ロール17bの圧接領域によってニップ部(定着領域)が形成される。
転写装置15においてトナー像が転写された用紙Pは、トナー像が未定着の状態で用紙搬送装置16aを経由して定着装置17に搬送される。定着装置17に搬送された用紙Pは、一対の定着ベルト17aと加圧ロール17bにより、圧着と加熱の作用でトナー像が定着される。
【0046】
定着の終了した用紙Pは、用紙搬送装置16bを経由して排紙部30に送り込まれる。
尚、用紙Pの両面に画像出力を行う場合には、用紙搬送装置16cにより当該用紙Pの表裏が反転され、再び画像形成部10における二次転写部TRへ送り込まれる。そして、トナー像の転写および転写像の定着が行われた後に、排紙部30に送り込まれることになる。排紙部30へ送り込まれた用紙Pは、必要に応じて裁断やステープル(針綴じ)等の後処理を経た後に、排紙収容部へ排出される。
【0047】
(2)転写装置
(2.1)転写装置の全体構成
図2は本実施形態に係る画像形成装置1の転写装置15の全体構成を示す断面模式図、図3はベルト形状保持体170を示す断面模式図、図4はベルト形状保持体170とADCセンサSRの取り付けを説明する断面模式図、図5はベルト形状保持体に設けられた非接触領域を示す図、図6は中間転写ベルトに作用する張力を説明する図である。以下、図面を参照しながら、転写装置15におけるベルト形状保持構造について説明する。
【0048】
転写装置15は中間転写ベルト151、一次転写ロール152、二次転写ベルト153を備えて構成されている。
【0049】
中間転写ベルト151は、図2に示すように、複数の帳架ロールで循環移動可能に張架されている。具体的には、中間転写ベルト151を循環駆動させる駆動ロール161、各感光体ドラム131の配列方向に沿って略直線状に伸びる中間転写ベルト151を支持する従動ロール162、中間転写ベルト151に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト151の蛇行を防止するテンションロール163、二次転写部TRの上流側で中間転写ベルト151を支持する複数の支持ロール164、二次転写部TRに設けられるバックアップロール165、中間転写ベルト151上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール166で循環移動可能に張架されている。
【0050】
二次転写ベルト153は、二次転写ロール154と剥離ロール155とによって張架され、中間転写ベルト151の背面側に配置されたバックアップロール165と二次転写ロール154とに挟持されて二次転写部TRを形成する。
【0051】
図3は、黒(K)の作像エンジンの下流側における中間転写ベルト151の支持構造を説明する図である。図3に示すように、黒(K)の作像エンジンの下流側には、支持ロール164と従動ロール162が互いに接して配置され、支持ロール164と従動ロール162の間には、剛体支持手段の一例としてのベルト形状保持体170が配置されている。
【0052】
ベルト形状保持体170は、剛体となる材料、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料で形成されたブロック体で、図3に示すように、移動体としての中間転写ベルト151の裏面151aに接触して移動する中間転写ベルト151を支持している。
【0053】
具体的には、ベルト形状保持体170は全体が平滑な上面170aが中間転写ベルト151の裏面151aに対して少なくとも食い込んで支持されている。本実施形態においては、食い込み量δ(図3中に示す中間転写ベルト151の裏面151aの仮想線(一点鎖線)との距離)としては、0mmより大きく0.5mm以下に設定されている。これにより、中間転写ベルト151が移動する際に、ベルト形状保持体170の上面170aの平滑な形状が中間転写ベルト151の表面151b上に現れて、ADCセンサSRの検知面との距離が均一となりやすい。
【0054】
ベルト形状保持体170は、所定の食い込み量δを維持するように、転写装置15の複数の架ロールを位置決めして支持する枠体15A、15B(図4 参照)に対して位置決めされて定変位状態で支持されている。また、ベルト形状保持体170は、定変位状態で支持される場合に限らず、定荷重状態で支持されるように構成してもよい。
【0055】
図4に示すように、ベルト形状保持体170およびADCセンサSRは共通の被位置決め部173を有し、架ロールを位置決めして支持する枠体15A、15Bに対して被位置決め部173を介して取り付けられている。これにより、中間転写ベルト151とADCセンサSRの間隙G(図4 参照)を一定に保持しADCセンサSRの検知精度を向上させることができる。
【0056】
ベルト形状保持体170の中間転写ベルト151の裏面151aと接触する上面170aには、図5(a)に示すように、中間転写ベルト151の裏面151aと接触しない非接触領域として凹部171が設けられている。凹部171は、ベルト形状保持体170の長手方向に複数形成され、中間転写ベルト151の裏面151aとの接触面積を減らすことで中間転写ベルト151との接触抵抗を減らしている。
なお、非接触領域としては、図5(b)に示すように、複数の溝172として形成してもよい。
【0057】
凹部171、溝172は、図5(a)、(b)に示すように、ADCセンサSRが配置されている領域を除いて設けられている。これにより、中間転写ベルト151の表面151bとADCセンサSRの検知面との距離が均一となりやすい。
【0058】
ベルト形状保持体170は、図3に示すように、中間転写ベルト151の移動方向における上流側において、中間転写ベルト151の裏面151aと接触する角部170bが、中間転写ベルト151の移動に対して鋭角になっていない(図3においては鈍角)形状が望ましい。これにより、中間転写ベルト151の裏面151aに付着した異物のベルト形状保持体170と中間転写ベルト151の接触部への侵入を抑制し、中間転写ベルト151の表面151bとADCセンサSRの検知面との距離が不均一となることを抑制している。
【0059】
このように、循環移動する中間転写ベルト151の裏面151aに所定の食い込み量δで接触して配置されるベルト形状保持体170は、図3に模式的に示すように、電気的に接地(アース接続)されている。中間転写ベルト151は、所定の電気抵抗値を有する材料で形成されており、ベルト形状保持体170と接触しながら移動することで、摩擦による静電気が発生する虞があり、ベルト形状保持体170は、電気的に接地(アース接続)されていることで、静電気の発生を抑制することができる。
また、ベルト形状保持体170は、隣接する支持ロール164又は従動ロール162と同電位になるように、支持ロール164又は従動ロール162と電気的に接続して配置されてもよい。
【0060】
(2.3)ベルト形状保持体の作用
図6(b)には、ベルト形状保持体170を備えていない比較例の転写装置における中間転写ベルト151に作用する張力を示している。比較例の転写装置においては、テンションロール163の中間転写ベルト移動方向における上流側で張力T1で従動ロール162に巻き掛けられた中間転写ベルト151には、従動ロール162の上流側で従動ロール162による法線力N1と従動ロール162との摩擦係数μ1に基づく張力T2が作用している。また、支持ロール164の上流側では、支持ロール164に支持されて支持ロール164による法線力N2と支持ロール164との摩擦係数μ2に基づく張力T3が作用している。
【0061】
中間転写ベルト151は、図6(b)に示すように、張力がT1>T2>T3の関係を保つことで循環移動しているが、例えば、従動ロール162のグリップ力が強く、張力T1が張力T2に比べて極めて大きくなる場合(T1>>T3)、従動ロールT2と支持ロール164との間で作用する張力T2が安定せず、従動ロールT2と支持ロール164との間で中間転写ベルト151の表面151bが波打ちやすく平滑性が低下してADCセンサSRの検知値がばらつく虞があった。
【0062】
図6(a)には、本実施形態に係るベルト形状保持体170を備えた転写装置15における中間転写ベルト151に作用する張力を示している。
転写装置15においては、テンションロール163の中間転写ベルト移動方向における上流側で張力T1で従動ロール162に巻き掛けられた中間転写ベルト151には、従動ロール162の上流側で従動ロール162による法線力N1と従動ロール162との摩擦係数μ1に基づく張力T21が作用している。
【0063】
そして、従動ロール162と支持ロール164との間には、ベルト形状保持体170が中間転写ベルト151の裏面151aに接触して配置されているために、ベルト形状保持体170の上流側では、ベルト形状保持体170による法線力NBとベルト形状保持体170との摩擦係数μBに基づく張力T22が作用している。また、ベルト形状保持体170の上流側では、支持ロール164に支持されて支持ロール164による法線力N2と支持ロール164との摩擦係数μ2に基づく張力T3が作用している。
【0064】
中間転写ベルト151は、図6(a)に示すように、張力がT1>T21>T22>T3の関係を保つことで循環移動しているが、従動ロール162と支持ロール164との間では、中間転写ベルト151に作用する張力がT21、T22に分散されることで、従動ロール162と支持ロール164との間で中間転写ベルト151の表面151bの波打ちが抑制されてADCセンサSRの検知値のばらつきを抑制することができる。
【0065】
「変形例1」
図7は変形例1に係るベルト形状保持体170Aを示す断面模式図である。図7に示すように、黒(K)の作像エンジンの下流側には、支持ロール164と従動ロール162が互いに隣接して配置され、支持ロール164と従動ロール162の間には、剛体支持手段の一例としてのベルト形状保持体170Aが配置されている。
【0066】
ベルト形状保持体170Aは、剛体となる材料、例えば、ステンレス(SUS)、リン青銅鋼等の金属材料で形成された薄板状スクレーパで、図7に示すように、移動体としての中間転写ベルト151の裏面151aに定変位状態で接触して循環移動する中間転写ベルト151を支持している。ベルト形状保持体170Aの先端部170Aa(中間転写ベルト151の裏面151aに接触する部分)は、高硬度のコート層、具体例としては、テトラヘドラルアモルファスカーボン層、ダイヤモンドライクカーボン層などによって被覆されていることが好ましい。
【0067】
ベルト形状保持体170Aは先端部170Aaが中間転写ベルト151の裏面151aに対して少なくとも食い込んで支持されている。本実施形態においては、食い込み量δ(図7中に示す中間転写ベルト151の裏面151aの仮想線(一点鎖線)との距離)としては、0mmより大きく0.5mm以下に設定されている。
【0068】
中間転写ベルト151の裏面151aは、ベルト形状保持体170Aと移動方向と交差する幅方向において、線接触することになり、ブロック体のベルト形状保持体170に比べて、接触抵抗が小さく、中間転写ベルト151が移動する際に、従動ロール162と支持ロール164との間で中間転写ベルト151の表面151bの波打ちを抑制することができる。また、高硬度のコート層を有する先端部170Aaが、相対移動する中間転写ベルト151の裏面151aと線接触することで、中間転写ベルト151の裏面151aをクリーニングして付着した異物等を除去することができる。
【0069】
「変形例2」
図8は変形例2に係るベルト形状保持体170Bを示す断面模式図である。図8に示すように、黒(K)の作像エンジンの下流側には、支持ロール164と従動ロール162が互いに接して配置され、支持ロール164と従動ロール162の間には、剛体支持手段の一例としてのベルト形状保持体170Bが配置されている。
【0070】
ベルト形状保持体170Bは、剛体となる材料、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料で形成された金属ロールで、図8に示すように、移動体としての中間転写ベルト151の裏面151aに接触して循環移動する中間転写ベルト151を支持している。
【0071】
ベルト形状保持体170Bは金属ロールの外周面170Baが中間転写ベルト151の裏面151aに対して少なくとも食い込んで支持されている。本実施形態においては、食い込み量δ(図8中に示す中間転写ベルト151の裏面151aの仮想線(一点鎖線)との距離)としては、0mmより大きく0.5mm以下に設定されている。
【0072】
中間転写ベルト151の裏面151aは、ベルト形状保持体170Bと移動方向と交差する幅方向において、線接触することになり、ブロック体のベルト形状保持体170に比べて、接触抵抗が小さく、中間転写ベルト151が移動する際に、従動ロール162と支持ロール164との間で中間転写ベルト151の表面151bの波打ちを抑制することができる。なお、ベルト形状保持体170Bは、転写装置15の複数の架ロールを支持する枠体(不図示)に定変位状態で位置決めして固定されてもよいが、回転可能に取り付けてもよい。これにより、接触抵抗をより小さくすることができる。
【0073】
本実施形態においては、剛体支持手段として、移動体としての中間転写ベルト151を隣接する帳架ロールの間で中間転写ベルト151の裏面151aに接触して中間転写ベルト151を支持するベルト形状保持体170について説明したが、移動体としては、中間転写ベルト151に限られない。図9には、移動体の一例としての連続紙Sにインクを吐出する吐出ヘッド206を備えた記録装置2の一例を示している。
【0074】
記録装置2は、画像記録ユニット200に供給する連続紙Sが収容される前処理ユニット210と、前処理ユニット210から画像記録ユニット200へ供給される連続紙Sの搬送量等を調整するバッファユニット220と、を備えている。バッファユニット220は、画像記録ユニット200と前処理ユニット210との間に配置されている。
【0075】
記録装置2は、画像記録ユニット200から排出される連続紙Sを収容する後処理ユニット230と、画像記録ユニット200から後処理ユニット230へ排出される連続紙Sの搬送量等を調整するバッファユニット240と、を備えている。バッファユニット240は、画像記録ユニット200と後処理ユニット230との間に配置されている。
【0076】
記録装置2は、画像記録ユニット200とバッファユニット240との間に配置され、画像記録ユニット200から搬出される連続紙Sを冷却する冷却ユニット250を備えている。
【0077】
画像記録ユニット200は、例えば、連続紙Sを連続紙Sの搬送経路201に沿って案内するロール部材202と、連続紙Sの搬送経路201に沿って搬送される連続紙Sにインク(インクの液滴)を吐出して画像を記録する吐出装置205とを備えている。吐出装置205は、連続紙Sにインクを吐出する吐出ヘッド206を備え、例えば、有効な記録領域が連続紙Sの幅以上とされた長尺状の記録ヘッドである。
【0078】
連続紙Sの搬送経路201には、各吐出ヘッド206に向かい合う位置に、搬送される連続紙Sの裏面Saに接触して連続紙Sを支持する剛体支持手段の一例としての用紙形状保持体170Cが配置されている。用紙形状保持体170Cは、剛体となる材料、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料で形成されたブロック体で、表面は摩擦係数が低い、例えばPTFE樹脂がコーティングされ、移動体としての連続紙Sの裏面Saに接触して移動する連続紙Sを支持している。
これにより、連続紙Sが搬送経路201に沿って移動する際に、用紙形状保持体170Cの上面170Caの平滑な形状が連続紙Sの表面Sb上に現れて、各吐出ヘッド206との距離が均一となりやすい。
【符号の説明】
【0079】
1・・・画像形成装置
2・・・記録装置
200・・・画像記録ユニット
10・・・画像形成部
11・・・システム制御装置
12・・・露光装置
13・・・感光体ユニット
14・・・現像装置
15・・・転写装置
151・・・中間転写ベルト
152・・・一次転写ロール
153・・・二次転写ベルト
154・・・二次転写ロール
161・・・駆動ロール
162・・・従動ロール
163・・・テンションロール
164・・・支持ロール
165・・・バックアップロール
166・・・クリーニングバックアップロール
170、170A、170B・・・ベルト形状保持体
170C・・・用紙形状保持体
16a、16b、16c・・・用紙搬送装置
17・・・定着装置
20・・・用紙送り装置
30・・・排紙部
40・・・操作情報部
50・・・画像処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9