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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】印刷装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/70 20060101AFI20241016BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20241016BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20241016BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B41J11/70
B41J11/42
B41J3/36 T
B41J29/38 204
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020051217
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146693
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】松岡 久能
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155787(JP,A)
【文献】特開2002-067413(JP,A)
【文献】特開2017-074753(JP,A)
【文献】特開2001-301258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/36
B41J 11/00-11/70
B41J 15/00-15/24
B41J 29/00-29/70
B65H 7/00-7/20
B65H 23/18-23/198
B65H 26/00-26/08
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて前記被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、
前記被印刷媒体の搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間の所定の接触位置で前記被印刷媒体と接触し、前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記カット位置よりも前記排出口側に延伸する前記被印刷媒体を前記排出口から排出させるように動作する排出部と、を含み、
前記カット部が、前記搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と前記排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置であって、
前記制御部は、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させ
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置、又は前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置よりも前記排出口の位置側である
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて前記被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、を含み、
前記カット部が、前記被印刷媒体の搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置であって、
前記制御部は、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出口の位置、又は前記搬送経路の延長上であって前記カット位置からみて前記排出口の位置よりも遠方の前記装置筐体の外部となる位置である
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記搬送経路における前記搬送部により前記被印刷媒体を搬送する位置は、前記印刷位置である
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記カット部は、前記被印刷媒体の全体をカットする第1のカッターと、前記被印刷媒体の一部をカットする第2のカッターと、を含み、
前記制御部は、前記搬送経路における前記第1のカッターにより前記被印刷媒体をカットする第1のカット位置と、前記第2のカッターにより前記被印刷媒体をカットする第2のカット位置とに基づいて、前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作、及び前記被印刷媒体を前記排出方向とは反対の方向に搬送させる前記搬送部の動作における搬送量を制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて前記被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、
前記被印刷媒体の搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間の所定の接触位置で前記被印刷媒体と接触し、前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記カット位置よりも前記排出口側に延伸する前記被印刷媒体を前記排出口から排出させるように動作する排出部と、を含み、
前記カット部が、前記搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と前記排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置の制御方法であって、
前記制御部が、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させ
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置、又は前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置よりも前記排出口の位置側である
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて前記被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、を含み、
前記カット部が、前記被印刷媒体の搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置の制御方法であって、
前記制御部が、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出口の位置、又は前記搬送経路の延長上であって前記カット位置からみて前記排出口の位置よりも遠方の前記装置筐体の外部となる位置である
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて前記被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、
前記被印刷媒体の搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間の所定の接触位置で前記被印刷媒体と接触し、前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記カット位置よりも前記排出口側に延伸する前記被印刷媒体を前記排出口から排出させるように動作する排出部と、を含み、
前記カット部が、前記搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と前記排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置の前記制御部に実行させるプログラムであって、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させ
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置、又は前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置よりも前記排出口の位置側である
処理を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて前記被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、を含み、
前記カット部が、前記被印刷媒体の搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置の前記制御部に実行させるプログラムであって、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出口の位置、又は前記搬送経路の延長上であって前記カット位置からみて前記排出口の位置よりも遠方の前記装置筐体の外部となる位置である
処理を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
長尺な被印刷媒体に印刷をする印刷装置には、搬送ローラにより搬送される被印刷媒体への印刷を終了した後、搬送ローラにより被印刷媒体を更に所定の搬送量だけ搬送してカットし、被印刷媒体における印刷された領域を排出するものがあるが、印刷後の被印刷媒体をカットするために搬送している途中で、被印刷媒体の終端が、被印刷媒体を搬送する搬送ローラよりも排出口側に到達してしまうことがある。このような場合には、被印刷媒体におけるカットする位置が搬送経路におけるカッターの位置に到達していない状態で被印刷媒体をカットしてしまい、搬送経路におけるカッターの位置から排出口までの区間にカットされた被印刷媒体が意図せず残留してしまうことを防止し、被印刷媒体の終端付近における印刷の制御を正常に完了させるために、被印刷媒体の終端を検出する検出器を備えたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-150774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被印刷媒体の終端を検出する検出器を備えた上述の印刷装置は、該検出器を設ける分、部品点数及び製造工程が増えるため、印刷装置の製造コストが上昇する。
【0005】
一方、被印刷媒体の終端を検出する検出器を設けていない印刷装置では、被印刷媒体におけるカットする位置が搬送経路におけるカッターの位置に到達していない状態で被印刷媒体をカットしてしまい、搬送経路におけるカッターの位置から排出口までの区間にカットされた被印刷媒体が意図せず残留してしまうことがあった。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、被印刷媒体の終端を検出する検出器を用いることなく、該被印刷媒体の終端付近で被印刷媒体をカットする処理が行われたときにカットされた被印刷媒体を排出させることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る印刷装置は、被印刷媒体を搬送する搬送部と、印刷データに基づいて前記被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、前記被印刷媒体の搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間の所定の接触位置で前記被印刷媒体と接触し、前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記カット位置よりも前記排出口側に延伸する前記被印刷媒体を前記排出口から排出させるように動作する排出部と、を含み、前記カット部が、前記搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と前記排出口の位置との間に配置され、前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置であって、前記制御部は、前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させ、前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置、又は前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置よりも前記排出口の位置側である、印刷装置である。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、被印刷媒体の終端を検出する検出器を用いることなく、該被印刷媒体の終端付近で被印刷媒体をカットする処理が行われたときにカットされた被印刷媒体を排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る印刷装置の平面図である。
図2図1の印刷装置における蓋を開いた状態の部分平面図である。
図3】一実施形態に係る印刷装置における被印刷媒体の搬送経路の一例を説明する概略図である。
図4】一実施形態に係る印刷装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図5】印刷装置が行う処理を説明するフローチャートである。
図6】一実施形態に係る印刷装置が行うラベル作成処理の一例を説明するフローチャートである。
図7】従来の印刷装置の動作の一例を説明する図である。
図8】一実施形態に係る印刷装置の動作の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る印刷装置の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、長尺な被印刷媒体に印刷を行う印刷装置の一例として、感熱式のサーマルプリンタを挙げる。また、以下の説明では、例示する印刷装置のうちの、従来の印刷装置と同様の機能、動作、及びハードウェア構成についての詳細な説明を省略する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る印刷装置の平面図である。図2は、図1の印刷装置における蓋を開いた状態の部分平面図である。
【0014】
図1及び図2に例示した印刷装置1は、媒体アダプタ11を収容可能なアダプタ収容部201を有する装置筐体2と、装置筐体2のアダプタ収容部201を含む凹部を開閉可能な態様で装置筐体2に取り付けられた蓋4とを備える。
【0015】
装置筐体2には、アダプタ収容部201を含む凹部と隣接して、複数のキーが配置されたキーボード領域3が設けられている。キーボード領域3には、文字入力に用いるキー、カーソルキー、印刷やカットに関する設定に用いるキー、印刷実行キー等が配置されている。アダプタ収容部201には、被印刷媒体13を供給する媒体アダプタ11が収容される。媒体アダプタ11は、ロール状の被印刷媒体13を含むテープロール12を収容する容器であり、媒体アダプタ11内の被印刷媒体13は、該媒体アダプタ11に設けられた引き出し口から媒体アダプタ11の外部に引き出される。図2の媒体アダプタ11における下線が引かれた「9」という数字は、該媒体アダプタ11が9mm幅の被印刷媒体13のテープロール12を収容するアダプタであることを示している。また、図1及び図2のテープロール12における下線が引かれた「9」という数字は、該テープロール12における被印刷媒体13の幅が9mmであることを示している。図1及び図2に例示した印刷装置1は、9mm幅の被印刷媒体13に限らず、アダプタ収容部201に収容する媒体アダプタ11を変更することにより、他の幅(例えば、18mmや24mm等)の被印刷媒体13への印刷を行うこともできる。
【0016】
装置筐体2におけるアダプタ収容部201を含む凹部には、プラテンローラ6、印刷ユニット7、及びカットユニット8等が配置されている。プラテンローラ6は、被印刷媒体13を搬送する搬送ローラであり、媒体アダプタ11から引き出された被印刷媒体13は、プラテンローラ6と印刷ユニット7のサーマルヘッド701との間を通り、装置筐体2の排出口202に至る搬送経路に沿って搬送される。カットユニット8は、搬送経路におけるサーマルヘッド701により印刷を行う位置と、排出口202との間に配置される。カットユニット8は、被印刷媒体13をカットするものであり、後述するカッター801を含む。このため、装置筐体2におけるアダプタ収容部201を含む凹部は、カットユニット8のカッター801に直接触れることができないような形状になっている。
【0017】
蓋4には、表示装置5が配置されている。表示装置5は、例えば、液晶ディスプレイであり、被印刷媒体13に印刷する文字列や図形等の情報、印刷及びカットに関する設定情報等が表示される。
【0018】
なお、本実施形態に係る印刷装置1は、図1及び図2に例示した外観構成に限らず、他の外観構成であってもよい。例えば、本実施形態に係る印刷装置1は、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の外部装置と通信可能であり、該外部装置から受信した印刷データに基づいて印刷を行うものであってもよく、そのような印刷装置1の外観構成は、複数のキーが配置されたキーボード領域3や表示装置5等が省略されていてもよい。
【0019】
図3は、一実施形態に係る印刷装置における被印刷媒体の搬送経路の一例を説明する概略図である。なお、図3では、被印刷媒体13の搬送経路を直線として模式的に示している。
【0020】
本実施形態の印刷装置1における被印刷媒体13は、図3に例示したように、プラテンローラ6とサーマルヘッド701との間を通る。被印刷媒体13を搬送する際には、プラテンローラ6とサーマルヘッド701とにより被印刷媒体13を挟持した状態でプラテンローラ6を回転させる。プラテンローラ6は、図3には示していない搬送モータ(例えば、DCモータ)により回転させる。本実施形態の印刷装置1は、被印刷媒体13を排出口202に向かう第1の方向(排出方向)に搬送する第1の回転方向(正転方向)にプラテンローラ6を回転させることと、被印刷媒体13を第1の方向とは反対の第2の方向に搬送する第2の回転方向(逆転方向)にプラテンローラ6を回転させることができる。以下の説明では、プラテンローラ6を第1の回転方向に回転させて被印刷媒体13を搬送することを「正転搬送」といい、プラテンローラ6を第2の回転方向に回転させて被印刷媒体13を搬送することを「逆転搬送」という。
【0021】
印刷装置1は、被印刷媒体13を正転搬送しながら被印刷媒体13への印刷を行う。感熱式のサーマルプリンタに用いられる被印刷媒体13は、サーマルヘッド701の発熱素子から熱を印加された領域が発色又は変色することにより、文字や図形等が描画(印字)される。このため、以下の説明では、被印刷媒体13の搬送経路におけるサーマルヘッド701から被印刷媒体13に熱を印加する位置を「印刷位置」という。また、以下の説明では、被印刷媒体13の搬送経路における装置筐体2の排出口202の位置を「排出位置」という。
【0022】
被印刷媒体13の搬送経路における印刷位置と排出位置との間であって、印刷位置から距離L1である位置には、被印刷媒体13をカットするカッター801が配置される。カッター801は、図3には示していないカットモータにより作動し、被印刷媒体13の全体をカットして被印刷媒体13を2つに分離する。以下の説明では、カッター801による被印刷媒体13を2つに分離するカットを「フルカット」という。また、以下の説明では、被印刷媒体13の搬送経路におけるカッター801により被印刷媒体13をフルカットする位置を「カット位置」という。
【0023】
更に、本実施形態の印刷装置1では、被印刷媒体13の搬送経路におけるカット位置と排出位置との間であって、カット位置から距離L2である位置には、排出ローラ10が配置される。排出ローラ10は、例えば、カッター801で被印刷媒体13をフルカットすることにより得られるラベル(言い換えると、カット位置と排出位置との間に存在する印刷が行われた被印刷媒体13)の排出口202からの排出を補助するローラである。排出ローラ10は、例えば、カッター801の動作と連動しており、カッター801によるフルカットが完了するとラベルを排出方向に搬送する方向(図3では反時計回り方向)に回転する。排出ローラ10は、搬送経路におけるカット位置と排出位置との間にある位置でカッター801によりカットされた被印刷媒体13と接触し、カットされた被印刷媒体13を排出口202から排出させるように動作する排出部の一例である。以下の説明では、被印刷媒体13の搬送経路における排出ローラ10と被印刷媒体13とが接触する位置を「排出ローラ位置」という。
【0024】
なお、被印刷媒体13の搬送経路における印刷位置からカット位置までの距離L1、カット位置から排出ローラ位置までの距離L2、及び排出ローラ位置から排出位置までの距離L3は、図3に例示したような比に限らず、任意の比であってよい。
【0025】
図4は、一実施形態に係る印刷装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0026】
図4に例示した印刷装置1は、制御部20、記憶部21、入力部22、表示部23、アダプタ検知部24、搬送部25、印刷部26、及びカット部27を含む。
【0027】
制御部20は、印刷装置1の動作を制御する。制御部20による動作の制御は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、OS(Operating System)、及び後述する処理を含むプログラム等を実行することにより行われる。記憶部21は、プロセッサが実行する各種プログラムや、プログラム実行時に用いられる各種データを記憶する。記憶部21は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。制御部20及び記憶部21の一部は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実装されてもよい。
【0028】
入力部22は、印刷装置1の動作に関する各種の操作入力を受け付ける。入力部22は、例えば、キーボード領域3(図1を参照)に配置された複数のキーを含むキーボード型の入力装置である。表示部23は、入力部22により受け付けた操作入力と対応する入力情報を含む各種情報を表示する。表示部22は、例えば、蓋4に配置された表示装置5(図1を参照)である。
【0029】
アダプタ検知部24は、アダプタ収容部201に収容された媒体アダプタ11を検知する。アダプタ検知部24は、例えば、媒体アダプタ11が収容されている場合に、どの幅の被印刷媒体13(テープロール12)の収容に適合した媒体アダプタ11であるかを検知することにより、被印刷媒体13の幅(テープ幅)を検知してもよい。
【0030】
搬送部25は、被印刷媒体13の搬送に用いるプラテンローラ6を回転させる。搬送部25は、プラテンローラ6を回転させる搬送モータ2501と、該搬送モータ2501を駆動する駆動部2502とを含む。搬送モータ2501は、例えば、DC(直流)モータである。駆動部2502は、実施する被印刷媒体13の搬送動作における搬送方向及び搬送速度に基づいて、搬送モータ2501に印加する電圧の大きさ及び電流の向きを制御する。搬送部25は、プラテンローラ6の回転量を検出するエンコーダ(図示せず)を含んでもよい。
【0031】
印刷部26は、印刷データに基づいて被印刷媒体13に印刷(印字)を行う。印刷部26は、例えば、上述した印刷ユニット7(図2を参照)である。印刷ユニット7は、サーマルヘッド701と、サーマルヘッド701を駆動する駆動部(図示せず)とを含む。サーマルヘッド701は、被印刷媒体13の搬送方向と直交する方向に並んだ複数の発熱素子を有する。印刷部26は、排出方向に搬送される被印刷媒体13の搬送速度と印刷データとに基づいて、サーマルヘッド701の複数の発熱素子のうちの発熱させる発熱素子(被印刷媒体13に熱を印加する発熱素子)を切り替えることで、被印刷媒体13に印刷を行う。
【0032】
カット部27は、カット設定に基づいて被印刷媒体13をカットする。カット部27は、例えば、上述したカットユニット8(図2を参照)である。カットユニット8は、カッター801と、カッター801を動作させるカットモータ(図示せず)と、カットモータを駆動させる駆動部(図示せず)とを含む。
【0033】
なお、本実施形態に係る印刷装置1は、図4に例示したハードウェア構成に限らず、例えば、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の外部装置と通信する通信部を含んでもよい。
【0034】
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態に係る印刷装置1が行う処理を説明する。
【0035】
図5は、印刷装置が行う処理を説明するフローチャートである。図6は、一実施形態に係る印刷装置が行うラベル作成処理の一例を説明するフローチャートである。
【0036】
印刷装置1の電源をオンにし、セルフチェック等の所定の起動処理が完了すると、該印刷装置1は、図5に例示した処理を開始することができる。印刷装置1は、まず、利用者からの操作入力に基づいて、印刷レイアウト、印刷枚数、及び自動カットの設定を行う(ステップS1)。印刷レイアウトは、印刷部26により被印刷媒体13に印刷(印字)する際の印刷部26(サーマルヘッド701)の制御に用いられる印刷データであり、例えば、印刷する文字や図形の配置、文字のフォント、余白等の情報を含む。印刷枚数は、印刷レイアウトに従って被印刷媒体13に印刷を行う回数の設定である。自動カットの設定は、カット部27(カッター801)によるフルカットを行うか否かの設定である。印刷装置1の利用者は、例えば、入力部22(キーボード領域3のキー)を操作して上記の設定を行う。ステップS1は、例えば、印刷装置1の利用者が印刷装置1とは別の情報処理装置(例えば、スマートフォン等)で設定した情報を印刷装置1で取得する処理であってもよい。
【0037】
次に、印刷装置1は、ステップS1で設定された情報に基づいて被印刷媒体13に印刷を行いラベルを作成する、ラベル作成処理(ステップS2)を行う。本実施形態の印刷装置1は、ラベル作成処理として、例えば、図6に例示したような処理を行う。
【0038】
ラベル作成処理を開始すると、印刷装置1は、まず、被印刷媒体13を逆転搬送して位置合わせを行う(ステップS201)。ステップS201は、制御部20からの制御信号に従って搬送部25が行う。搬送部25は、プラテンローラ6を所定の回転速度で逆転させ、被印刷媒体13における始端から所定の距離だけ上流側の位置を、搬送経路における印刷位置に戻す。ここで、被印刷媒体13の始端は正転搬送時に被印刷媒体13の先頭となる端部であり、被印刷媒体13における上流方向は、始端から搬送経路における排出方向とは反対側に向かう方向である。
【0039】
次に、印刷装置1は、印刷レイアウトに基づいて1枚分の印刷を行う(ステップS202)。ステップS202は、制御部20からの制御信号に従って搬送部25と印刷部26とが行う。搬送部25は、印刷時の被印刷媒体13の搬送速度の設定に基づいて、被印刷媒体13を正転搬送する。印刷部26は、正転搬送される被印刷媒体13の搬送量と印刷レイアウトとに基づいて、サーマルヘッド701の発熱させる発熱素子(被印刷媒体13に熱を印加する発熱素子)を制御する。
【0040】
1枚分の印刷が終了すると、印刷装置1は、自動カットの設定に基づいてカット部27によるフルカットを実行するか否かを判定する(ステップS203)。フルカットを実行しない場合(ステップS203;NO)、印刷装置1は、次に、設定された枚数分の印刷が終了したか否かを判定する(ステップS204)。設定された枚数分の印刷が終了していない場合(ステップS204;NO)、印刷装置1は、ステップS202の処理に戻る。設定された枚数分の印刷が終了した場合(ステップS204;YES)、印刷装置1は、ラベル作成処理を終了する。
【0041】
これに対し、フルカットを実行する場合(ステップS203;YES)、印刷装置1は、次に、被印刷媒体13のフルカットされる位置が搬送経路における印刷位置から距離L1+LLの位置まで正転搬送される搬送動作を行う(ステップS205)。距離LLは、搬送経路におけるカット位置から排出ローラまでの距離L2以上とする。ステップS205は、制御部20からの制御信号に従って搬送部25が行う。
【0042】
次に、印刷装置1は、被印刷媒体13が距離LLと一致する搬送量だけ逆転搬送される搬送動作を行う(ステップS206)。ステップS206は、制御部20からの制御信号に従って搬送部25が行う。すなわち、本実施形態の印刷装置1では、被印刷媒体13におけるフルカットされる位置が搬送経路におけるカット位置よりも更に距離LLだけ排出位置側になるよう被印刷媒体13を正転搬送した後、被印刷媒体13を逆転搬送してフルカットされる位置をカット位置に戻す。ステップS206の後、印刷装置1は、被印刷媒体13をフルカットする(ステップS207)。ステップS207は、制御部20からの制御信号に従ってカット部27が行う。
【0043】
被印刷媒体13をフルカットした後、印刷装置1は、設定された枚数分の印刷が終了したか否かを判定する(ステップS208)。設定された枚数分の印刷が終了していない場合(ステップS208;NO)、印刷装置1は、ステップS201の処理に戻る。ステップS201の処理に戻った場合、印刷装置1は、カット位置よりも印刷位置側に延伸する被印刷媒体13を印刷位置からカット位置までの距離L1に基づいて設定された搬送量、例えば、距離L1よりもわずかに(例えば、距離L1よりも印刷ライン換算で数ライン分)短い距離と一致する搬送量だけ被印刷媒体13を逆転搬送させる。一方、設定された枚数分の印刷が終了した場合(ステップS208;YES)、印刷装置1は、ラベル作成処理を終了する。
【0044】
なお、図6のフローチャートには示していないが、本実施形態の印刷装置1は、ラベル作成処理を行っているときに、プラテンローラ6とサーマルヘッド701との間に被印刷媒体13が介在しているか否かを検出し、被印刷媒体13が介在していないことを検出した場合にはラベル作成処理を中断してもよい。プラテンローラ6とサーマルヘッド701との間に被印刷媒体13が介在しているか否かは、例えば、エンコーダにより検出されるプラテンローラ6の回転量の変化等に基づいて判定する。
【0045】
上述したように、本実施形態の印刷装置1は、被印刷媒体13をフルカットする場合には、フルカットする前に、フルカットされる位置が搬送経路におけるカット位置よりも更に距離LLだけ排出位置側になるよう被印刷媒体13を正転搬送する。その後、本実施形態の印刷装置1は、被印刷媒体13を逆転搬送してフルカットされる位置をカット位置に戻し、フルカットを行う。このような動作をする本実施形態の印刷装置1の作用効果を、図7及び図8を参照して説明する。
【0046】
図7は、従来の印刷装置の動作の一例を説明する図である。図8は、一実施形態に係る印刷装置の動作の一例を説明する図である。図7及び図8において、被印刷媒体13に示した「AAAAAAAA」という文字列のうち、文字の輪郭を実線で表した袋文字(白抜き文字)である文字列は、印刷レイアウトに基づいて被印刷媒体13に印刷される文字列であり、実際にはまだ印刷されていない。また、図7及び図8に例示した被印刷媒体13における点線で示した位置1302及び1303は、印刷レイアウト及び自動カットの設定に基づいてフルカットされる位置に指定される位置である。図7及び図8では、始端1301から位置1302までの距離及び位置1302から位置1303までの距離(すなわち「AAAAAAAA」という文字列を印刷して作成される1枚のラベルの長さ)を、搬送経路のカット位置から排出ローラ位置までの距離L2よりも長くしている。
【0047】
図7の(a1)~(a8)には、従来の印刷装置により「AAAAAAAA」という文字列が印刷されたラベルを2枚作成する場合に、該印刷装置で行われる動作の概略を時系列で示している。(a1)には、印刷開始時の被印刷媒体13の残り量と搬送経路上の位置とを示している。被印刷媒体13の残り量は、始端1301から終端1304までの長さであり、2枚のラベルを作成するのに必要な始端1301から位置1303までの長さよりも長い。
【0048】
印刷開始後、印刷装置は、被印刷媒体13を正転搬送しながら該被印刷媒体13に印刷を行い、例えば、(a2)に示したように、被印刷媒体13の位置1302が印刷位置に到達すると、1枚分(1回目)の印刷を終了する。印刷終了後、印刷装置は、被印刷媒体13の位置1302で被印刷媒体13をフルカットするために、印刷位置からカット位置までの距離L1と一致する搬送量だけ被印刷媒体13が正転搬送されるように搬送部を動作させる。このとき、被印刷媒体13における位置1302から終端1304までの距離(長さ)が距離L1よりも長いと、被印刷媒体13が正常に搬送され、(a3)に示したように、被印刷媒体13の位置1302が搬送経路のカット位置に到達する。また、被印刷媒体13の始端1301の搬送経路上での位置は、排出ローラ位置よりも排出位置側になる。
【0049】
この後、印刷装置は、(a4)に示したように、被印刷媒体13における位置1302で被印刷媒体13をフルカットする。フルカット後、搬送経路のカット位置よりも排出位置側にある「AAAAAAAA」という文字列が印刷された部分は、ラベル30として印刷装置の排出口から排出される。
【0050】
位置1302で被印刷媒体13をカットした後、印刷装置は、位置1302を始端としてカット位置よりも印刷位置側に延伸している被印刷媒体13が印刷開始位置まで逆転搬送されるように搬送部を動作させる。搬送部は、例えば、始端1302の搬送経路上での位置が印刷位置よりもわずかにカット位置側になるように、被印刷媒体13を距離L1よりもわずかに短い距離と一致する搬送量だけ逆転搬送させる動作を行う。(a4)に例示したように、被印刷媒体13の残り量(始端1302から終端1304までの距離)が距離L1よりも長く、逆転搬送させる被印刷媒体13の終端1304の搬送経路上での位置が印刷位置から見てカット位置とは反対側にある場合、被印刷媒体13は、印刷位置においてプラテンローラ6とサーマルヘッド701とにより挟持されている。この場合、被印刷媒体13は正常に逆転搬送される。このため、逆転搬送後の被印刷媒体13の搬送経路上の位置は、(a5)に示したように、始端1302が印刷位置よりもわずかにカット位置側にあるような位置になる。逆転搬送後、印刷装置は、被印刷媒体13を正転搬送しながら該被印刷媒体13に印刷を行い、例えば、(a6)に示したように、被印刷媒体13の位置1303が印刷位置に到達すると、1枚分(2回目)の印刷を終了する。
【0051】
印刷終了後、印刷装置は、被印刷媒体13の位置1303で被印刷媒体13をフルカットするために、印刷位置からカット位置までの距離L1と一致する搬送量だけ被印刷媒体13が正転搬送されるように搬送部を動作させる。しかしながら、(a6)に例示した被印刷媒体13は、フルカットされる位置1303から終端1304までの距離(長さ)が、距離L1よりも短い。このため、(a7)に例示したように、被印刷媒体13の位置1303がカット位置に到達する前に、被印刷媒体13の終端1304が印刷位置を超えて排出位置側に移動(到達)してしまう。被印刷媒体13の終端1304が印刷位置を超えてしまうと、図3に例示したような、印刷位置におけるプラテンローラ6の回転(正転)による被印刷媒体13の搬送を行うことができない。このため、従来の印刷装置では、被印刷媒体13の位置1303をフルカットするために搬送部が行う搬送動作が終了したときに、(a7)に示したように、フルカットされる位置1303が搬送経路のカット位置に到達していないことがある。このような被印刷媒体13が正常に搬送されていないことをセンサ等で検知しない印刷装置の場合、搬送部の搬送動作が終了した後、被印刷媒体13のフルカットされる位置1303がカット位置に到達しているか否かによらず、被印刷媒体13をフルカットしてしまう。このため、従来の印刷装置では、(a8)に示したように、被印刷媒体13のフルカットされる位置1303よりも始端1302側の位置で被印刷媒体13をフルカットしてしまい、搬送経路におけるカット位置と排出位置との間に短いラベル31が意図せず残留してしまうことがある。
【0052】
印刷装置におけるカット位置の周囲は、図2を参照しながら上述したように、安全面からカットユニット8(カッター801)に直接触れることができないようになっている。このため、カット位置と排出位置との間に短いラベル31が残留した場合、該ラベル31を取り除くことが難しく、手間がかかる。特に、残留したラベル31の長さがカット位置から排出ローラ位置までの距離L2と一致する長さよりも短い場合には、排出ローラ10により排出を補助することができないため、ラベル31を取り除くことが一層難しくなる。
【0053】
このように、従来の印刷装置では、被印刷媒体13をフルカットした後の残り量(始端から終端までの距離)が印刷位置からカット位置までの距離L1よりも長い場合には、該残り量が印刷位置から排出ローラ位置までの距離L1+L2よりも長いか否かによらず、被印刷媒体13に対して次の印刷及びフルカットを行う。このため、被印刷媒体13の残り量が距離L1+L2よりも短い場合には、上述したように被印刷媒体13の適切な位置をカットすることができず、搬送経路のカット位置から排出ローラ位置までの区間に短いラベルが残留してしまう。
【0054】
次に、図8を参照して、本実施形態に係る印刷装置1により「AAAAAAAA」という文字列が印刷されたラベルを2枚作成する場合の、該印刷装置1で行われる動作を説明する。図8の(b1)~(b9)には、本実施形態の印刷装置1で行われる動作の概略を時系列で示している。(b1)には、被印刷媒体13の残り量と、1枚分(1回目)の印刷が終了した時点での搬送経路上の位置とを示している。被印刷媒体13の残り量は、始端1301から終端1304までの長さであり、2枚のラベルを作成するのに必要な始端1301から位置1303までの長さよりも長い。
【0055】
印刷終了後、印刷装置1は、被印刷媒体13の位置1302で被印刷媒体13をフルカットするために、被印刷媒体13を正転搬送するように搬送部25を動作させる。このとき、本実施形態の印刷装置1における制御部20は、上述のように、被印刷媒体13のフルカットされる位置1302が印刷位置から距離L1+LL(LL≧L2)の位置まで正転搬送されるように、搬送部25を動作させる(ステップS205)。すなわち、本実施形態の印刷装置1では、印刷終了後、(b2)及び(b3)に示すように、印刷位置からカット位置までの距離L1と一致する搬送量だけ被印刷媒体13を正転搬送してフルカットする位置1302がカット位置に到達した後、被印刷媒体13を距離LLと一致する搬送量だけ更に正転搬送する。図8の(a3)には、距離LLを、カット位置から排出ローラまでの距離L2よりも長くした例(LL>L2)を示している。その後、印刷装置1の制御部20は、距離LLと一致する搬送量だけ被印刷媒体13を逆転搬送するように搬送部25を動作させる(ステップS206)。
【0056】
このとき、被印刷媒体13における位置1302から終端1304までの距離(長さ)が距離L1+LLよりも長いと、被印刷媒体13の正転搬送及び逆転搬送が正常に行われ、(b4)に示したように、被印刷媒体13の位置1302が搬送経路のカット位置に到達する。また、被印刷媒体13の始端1301の搬送経路上での位置は、排出ローラ位置よりも排出位置側になる。
【0057】
この後、印刷装置1は、(b5)に示したように、被印刷媒体13における位置1302で被印刷媒体13をフルカットする。フルカット後、搬送経路のカット位置よりも排出位置側にある「AAAAAAAA」という文字列が印刷された部分は、ラベル30として印刷装置1の排出口202から排出される。
【0058】
位置1302で被印刷媒体13をフルカットした後、印刷装置1の制御部20は、カットされた位置1302を始端としてカット位置よりも印刷位置側に延伸している被印刷媒体13が印刷開始位置まで逆転搬送されるように搬送部25を動作させる。搬送部25は、例えば、始端1302の搬送経路上での位置が印刷位置よりもわずかにカット位置側になるように、被印刷媒体13を距離L1よりもわずかに短い距離と一致する搬送量だけ逆転搬送させる動作を行う。(b5)に例示したように、被印刷媒体13の残り量(始端1302から終端1304までの距離)が距離L1よりも長く、逆転搬送させる被印刷媒体13の終端1304の搬送経路上での位置が印刷位置から見てカット位置とは反対側にある場合、被印刷媒体13は正常に逆転搬送される。このため、逆転搬送後の被印刷媒体13の搬送経路上の位置は、(b6)に示したように、始端1302が印刷位置よりもわずかにカット位置側にあるような位置になる。逆転搬送後、印刷装置1は、被印刷媒体13を正転搬送しながら該被印刷媒体13に印刷を行い、例えば、(b7)に示したように、被印刷媒体13の位置1303が印刷位置に到達すると、1枚分(2回目)の印刷を終了する。
【0059】
印刷終了後、印刷装置1の制御部20は、被印刷媒体13の位置1303で被印刷媒体13をフルカットするために、上述したステップS205の正転搬送及びS206の逆転搬送をするように搬送部25を動作させる。すなわち、制御部20は、まず、距離L1+LLと一致する搬送量だけ被印刷媒体13が正転搬送されるように搬送部25を動作させる。ここで、(b8)に例示したように、被印刷媒体13におけるフルカットされる位置1303から終端1304までの距離が距離L1+LLよりも短いと、被印刷媒体13の位置1303が搬送経路の印刷位置から距離L1+LLの位置に到達する前に、被印刷媒体13の終端1304が印刷位置を超えて排出位置側に移動(到達)してしまう。このため、正転搬送の動作の途中で、印刷位置でのプラテンローラ6による被印刷媒体13の正転搬送を正常に行うことができなくなる。更に、続けて行うステップS206の逆転搬送の動作中も被印刷媒体13を正常に搬送することができない。よって、被印刷媒体13におけるフルカットする位置1303から終端1304までの距離が距離L1+LLよりも短い場合、ステップS205の正転搬送及びS206の逆転搬送が終了して時点で、(b8)に示すように、フルカットする位置1303がカット位置に到達していないことがある。このような場合、本実施形態の印刷装置1は、(b9)に示すように、被印刷媒体13のフルカットする位置1303とは異なる位置で被印刷媒体13をフルカットしてしまうことがある。
【0060】
しかしながら、本実施形態の印刷装置1は、上述したように、被印刷媒体13のフルカットされる位置1302が搬送経路のカット位置に到達するように被印刷媒体13を搬送する処理において、距離L1+LLと一致する搬送量だけ正転搬送させたのち、距離LLと一致する搬送量だけ逆転搬送させる。距離LLはカット位置から排出ローラ位置までの距離L2以上であるため、上記の正転搬送及び逆転搬送が正常に行われた場合、フルカット後の次の印刷に使用される被印刷媒体13の残り量は、印刷位置から排出ローラ位置までの距離L1+L2以上であることが保証される。このため、次の印刷が行われた後のフルカットを行うための正転搬送の途中で被印刷媒体13の終端1304が印刷位置を超えた場合、(b8)に示したように、被印刷媒体13の始端1302は排出ローラ位置よりも排出位置側に到達している。したがって、被印刷媒体13のフルカットされる位置1303が搬送経路のカット位置に到達するように搬送部25が動作している途中でプラテンローラ6による被印刷媒体13の搬送が行われなくなった場合であっても、フルカット後、カット位置よりも排出位置側にあるラベル32を、排出ローラ10の補助により排出位置(装置筐体2の排出口202)から排出させることができる。
【0061】
このように、本実施形態の印刷装置1では、被印刷媒体13に印刷する処理と被印刷媒体13をフルカットする処理との間に、印刷位置から排出ローラ位置までの距離以上の所定の距離だけ被印刷媒体13が正転搬送され、その後被印刷媒体13が逆転搬送される搬送動作を搬送部25に行わせる。このため、搬送部25の該搬送動作により被印刷媒体13が正常に搬送された場合には、その後、被印刷媒体13の残り量が搬送経路の印刷位置から排出ローラ位置までの距離以上であることが保証された状態で、被印刷媒体13に対する印刷及びフルカットを行ってラベルを作成することができる。また、被印刷媒体13に印刷する処理の後の被印刷媒体13を正転搬送させる動作の途中で、動作中の搬送部25による被印刷媒体13の搬送が行われなくなった場合であっても、該被印刷媒体13の始端は排出ローラ位置よりも排出位置側に到達している。このため、被印刷媒体13に印刷する処理と被印刷媒体13をフルカットする処理との間で行われる正転搬送が正常に行われなかった場合であっても、フルカット後、カット位置よりも排出位置側にあるラベル32を、排出ローラ10の補助により排出位置(装置筐体2の排出口202)から排出させることができる。したがって、本実施形態の印刷装置1では、搬送経路におけるカット位置から排出口までの区間にカットされたラベル(被印刷媒体13)が意図せず残留してしまうことを防げる。
【0062】
また、本実施形態の印刷装置1では、上述したように、印刷する処理とフルカットする処理との間に行われる被印刷媒体13の搬送動作を、正転搬送と逆転搬送とを組み合わせた動作にすることで、被印刷媒体13の残り量が搬送経路の印刷位置から排出ローラ位置までの距離以上になることを保証する。このため、本実施形態の印刷装置1では、例えば、特許文献1に開示されたような被印刷媒体の終端を検出する検出器を用いることなく、被印刷媒体の終端付近で被印刷媒体をカットする処理が行われたときにカットされた被印刷媒体を排出させることができる。
【0063】
また、上述した排出ローラ10を含む印刷装置1では、ステップS205の被印刷媒体13を正転搬送する処理において付加する距離LLをカット位置から排出位置までの距離よりも短くすることで、フルカット後に次の印刷をすることが可能な被印刷媒体13の残り量を短くすることができ、ラベルの作成に使用することができず無駄になる被印刷媒体の量を減らすことができる。
【0064】
なお、図8には「AAAAAAAA」という文字列の印刷を2回連続して行う場合の動作を例示したが、フルカットしてラベル30を排出する動作(b5)と、印刷開始時の動作(b6)とは、単一のラベル作成処理において連続して行われる動作でなくてもよい。例えば、(b6)の印刷開始時の動作は、「AAAAAAAA」という文字列が印刷されたラベル30を作成するラベル作成処理が終了した後、ステップS1で別の印刷レイアウト、印刷枚数、及び自動カットの設定をすることによって実行される別のラベル作成処理における印刷開始時の動作であってもよい。この場合、被印刷媒体13には「AAAAAAAA」とは別の文字列、図形等が印刷(印字)されてもよい。
【0065】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。印刷装置、制御方法、及びプログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0066】
例えば、印刷装置1は、図3に例示したような排出ローラ10を含まないものであってもよい。排出ローラ10を含まない印刷装置1の場合、例えば、ステップS205の被印刷媒体13を正転搬送する処理において付加する距離LLを、搬送経路のカット位置から排出位置までの距離(図3の距離L2+L3)以上とする。この場合、ステップS205において、被印刷媒体13のカットされる位置(例えば、図8の(b3)に例示した位置1302)が搬送経路における排出位置、又は搬送経路の延長上であって、カット位置から見て排出位置よりも遠方となる位置に到達するように、搬送部25は動作する。言い換えると、ステップS205において、制御部20は、被印刷媒体13のカットされる位置が装置筐体2の排出口202に到達するように、又は排出口202を超えて装置筐体2の外部に排出されるように、搬送部25を動作させる。これにより、カット位置と排出位置との間に排出ローラ10が配置されていない印刷装置1であっても、図6のステップS205~S207の処理が正常に行われた場合には、フルカット後の被印刷媒体13の残り量が印刷位置から排出位置までの距離以上であることが保証された状態で、次の印刷を行うことができる。このため、次の印刷が行われた後の正転搬送(ステップS205)の途中で被印刷媒体13の終端が印刷位置を超えてしまった場合、被印刷媒体13の始端は装置筐体2の排出口202に到達し、又は排出口202を超えて装置筐体2の外部に突出した状態となる。したがって、フルカット後にカット位置よりも排出位置側に意図せず残留したラベル(被印刷媒体)を容易に取り除くことができる。
【0067】
また、印刷装置1は、被印刷媒体13の全体をカット(フルカット)するカッター801とは別の、被印刷媒体13の一部のみをカット(ハーフカット)するカッターを備えたものであってもよい。ハーフカットするカッターを備えた印刷装置1の場合、搬送経路における印刷位置からハーフカットする位置までの距離は、印刷位置からフルカットするカット位置までの距離L1とは異なる距離となる。このため、印刷後に被印刷媒体13をハーフカットする場合には、例えば、図6のステップS205及びS206と類似した処理であって、正転搬送及び逆転搬送における搬送量を印刷位置からハーフカットする位置までの距離L1’とハーフカットする位置から排出ローラ位置までの距離L2’とに基づいて変更した処理を行ってから、ハーフカットする。なお、ハーフカットは、上記のように被印刷媒体13の一部をカットする処理であるため、ハーフカットをする場合には、ステップS205及びS206と類似した処理を行わず、従来の印刷装置と搬送動作によって被印刷媒体13を搬送してもよい。
【0068】
また、本発明に係る印刷装置は、上述した感熱式のサーマルプリンタに限らず、熱転写式のサーマルプリンタであってもよい。更に、本発明に係る印刷装置は、上述した印刷装置1と同様の被印刷媒体をカットする機構を有するものであればよく、カットする機構は、制御部20からの制御信号に従って自動で被印刷媒体をカットする自動カット機構に限らず、印刷装置の利用者がカッターを作動させる手動カット機構であってもよい。
【0069】
また、上述した印刷装置1は、プラテンローラ6とサーマルヘッド701とで被印刷媒体13を挟持した状態でプラテンローラ6を回転させることにより、搬送経路における印刷位置で被印刷媒体13を搬送している。しかしながら、本発明に係る印刷装置は、このような構成に限らず、搬送経路における印刷位置とは異なる位置で被印刷媒体13と接触するプラテンローラ6等の搬送部品により被印刷媒体13を搬送するものであってもよい。搬送部品により被印刷媒体13を搬送する位置が印刷位置とは異なる場合には、上述した印刷位置からカット位置までの距離L1の代わりに、搬送する位置からカット位置までの距離に基づいて、上述したステップS205の正転搬送を行う。
【0070】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、を含み、
前記カット部が、前記被印刷媒体の搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置であって、
前記制御部は、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させる、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記2]
付記1に記載の印刷装置であって、
前記搬送経路における前記カット位置と前記排出口の位置との間の所定の接触位置で前記被印刷媒体と接触し、前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記カット位置よりも前記排出口側に延伸する前記被印刷媒体を前記排出口から排出させるように動作する排出部、を更に備え、
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置、又は前記排出部と前記被印刷媒体との前記接触位置よりも前記排出口の位置側である
ことを特徴とする印刷装置。
[付記3]
付記1に記載の印刷装置において、
前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作における前記所定の位置は、前記搬送経路における前記排出口の位置、又は前記搬送経路の延長上であって前記カット位置からみて前記排出口の位置よりも遠方の前記装置筐体の外部となる位置である
ことを特徴とする印刷装置。
[付記4]
付記1~3のいずれか1つに記載の印刷装置において、
前記搬送経路における前記搬送部により前記被印刷媒体を搬送する位置は、前記印刷位置である
ことを特徴とする印刷装置。
[付記5]
付記1~4のいずれか1つに記載の印刷装置において、
前記カット部は、前記被印刷媒体の全体をカットする第1のカッターと、前記被印刷媒体の一部をカットする第2のカッターと、を含み、
前記制御部は、前記搬送経路における前記第1のカッターにより前記被印刷媒体をカットする第1のカット位置と、前記第2のカッターにより前記被印刷媒体をカットする第2のカット位置とに基づいて、前記被印刷媒体を前記排出方向に搬送させる前記搬送部の動作、及び前記被印刷媒体を前記排出方向とは反対の方向に搬送させる前記搬送部の動作における搬送量を制御する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記6]
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、を含み、
前記カット部が、前記被印刷媒体の搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置の制御方法であって、
前記制御部が、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させる、
ことを特徴とする制御方法。
[付記7]
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
印刷データに基づいて被印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷が行われた前記被印刷媒体をカットするカット部と、
前記搬送部、前記印刷部、及び前記カット部の動作を制御する制御部と、を含み、
前記カット部が、前記被印刷媒体の搬送経路における前記印刷部による印刷が行われる印刷位置と装置筐体に設けられた前記被印刷媒体の排出口の位置との間に配置され、
前記搬送部が、前記搬送経路における前記カット部により前記被印刷媒体をカットするカット位置よりも前記印刷位置側に配置された印刷装置の前記制御部に実行させるプログラムであって、
前記印刷部による所定の印刷が完了した後、前記被印刷媒体が前記搬送経路における前記印刷位置から前記排出口の位置に向かう排出方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カット部によりカットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置よりも前記排出口の位置側の所定の位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記所定の位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送され、前記被印刷媒体における前記カットされる位置が前記搬送経路における前記カット位置に到達するように、前記搬送部を動作させ、
前記被印刷媒体における前記カットされる位置を前記搬送経路における前記カット位置に到達させる前記搬送部の動作が完了した後、前記被印刷媒体をカットするように前記カット部を動作させ、
前記カット部によりカットされた前記被印刷媒体のうちの前記搬送経路における前記カット位置よりも前記印刷位置側に延伸する前記被印刷媒体に対する印刷を行う前に、該被印刷媒体が前記排出方向とは反対の方向に搬送されるように、前記搬送部を動作させる、
処理を含むことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0071】
1 印刷装置
2 装置筐体
201 アダプタ収容部
202 排出口
3 キーボード領域
4 蓋
5 表示装置
6 プラテンローラ
7 印刷ユニット
701 サーマルヘッド
8 カットユニット
801 カッター
10 排出ローラ
11 媒体アダプタ
12 テープロール
13 被印刷媒体
1301 始端
1304 終端
20 制御部
21 記憶部
22 入力部
23 表示部
24 アダプタ検知部
25 搬送部
2501 搬送モータ
2502 駆動部
26 印刷部
27 カット部
30,31,32 ラベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8