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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】脱酸素剤の酸素吸収能力の判定方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241016BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20241016BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20241016BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B01D53/14 311
G01N30/00 J
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020089220
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183309
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 萌
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104846(JP,A)
【文献】特開2017-104845(JP,A)
【文献】特開2017-225952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00
G01N 9/10 - 9/22
B01D 53/14 - 53/18
B01J 20/00 - 20/34
A23L 3/00 - 3/3598
B65D 81/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン、硫酸銅、及びアルカリ性化合物を含む酸素吸収組成物を多孔質の担持体に担持された造粒物と、前記造粒物の表面に付着している無機微粒子とを備える複数の複合粒子を含む粉体である脱酸素剤の酸素吸収能力の判定方法であって、
グリセリンおよび硫酸銅を含有する水溶液中における前記複合粒子の沈降速度を計測し、前記沈降速度が1個当たり2mm/秒以上である場合に、前記脱酸素剤2.0g及び500mLの空気が入れられて密封されたガスバリア性の袋内の、24時間後の酸素濃度を8%以下とする酸素吸収能力を有すると判定する、脱酸素剤の酸素吸収能力の判定方法。
【請求項2】
前記水溶液の濃度は、グリセリン100重量部に対して、硫酸銅の量が、無水物に換算して15~30質量部であり、水の量が、グリセリン100質量部に対して、30~85質量部である、請求項1に記載の脱酸素剤の酸素吸収能力の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸素剤及びその製造方法に関する。本発明はまた、脱酸素剤を含む脱酸素剤包装体及び食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の長期保存のために、食品包装容器内に脱酸素剤が封入されることがある。従来の一般的な脱酸素剤は、液状の酸素吸収物質が担持体とともに造粒された粒状物である(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4821692号公報
【文献】特開2003-144112号公報
【文献】特許第3541859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、粒状の脱酸素剤に関して、酸素吸収能力の更なる向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、グリセリン、硫酸銅、及びアルカリ性化合物を含む酸素吸収組成物を多孔質の担持体に担持された造粒物と、造粒物の表面に付着している無機微粒子を備える複数の複合粒子を含む粉体である脱酸素剤の酸素吸収能力の判定方法であって、グリセリンおよび硫酸銅を含有する水溶液中における複合粒子の沈降速度を計測し、沈降速度が1個当たり2mm/秒以上である場合に、脱酸素剤2.0g及び500mLの空気が入れられて密封されたガスバリア性の袋内の、24時間後の酸素濃度を8%以下とする酸素吸収能力を有すると判定する、脱酸素剤の酸素吸収能力の判定方法である。
【0007】
酸素吸収組成物が、グリセリン、硫酸銅、及びアルカリ性化合物を含有し、複合粒子のグリセリンおよび硫酸銅を含有する水溶液中での沈降速度が、1個当たり2mm/秒以上となるように、造粒物の表面に無機微粒子を付着させることにより、グリセリンが本来有する酸素吸収性が発揮されて、改善された酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られる。
【0008】
本発明はまた、上記脱酸素剤と、該脱酸素剤を収容した通気性包材と、を備える、脱酸素剤包装体を提供する。本発明はさらに、この脱酸素剤包装体と、脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器と、を備える、食品包装体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、改善された酸素吸収能力を有する粒状の脱酸素剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
一実施形態に係る脱酸素剤は、多孔質の担持体、及び前記担持体に担持された酸素吸収組成物を含む、造粒物と、造粒物の表面に付着している無機微粒子から主として構成される複合粒子である。
【0012】
担持体は、酸素吸収組成物を担持できる多孔質粒子であればよい。通常、担持体に酸素吸収組成物を含浸させることで、担持体に担持される。担持体は、例えば、活性炭、ゼオライト粒子、ベントナイト粒子、活性アルミナ粒子、活性白土、ケイ酸カルシウム粒子、及び珪藻土から選ばれる。
【0013】
酸素吸収組成物は、グリセリン、硫酸銅、及びアルカリ性化合物を含有する。
【0014】
グリセリンの量は、担持体の質量100質量部に対して、通常80~200質量部であり、100~180質量部であってもよい。グリセリンの量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0015】
酸素吸収反応には、水の存在が好ましい場合がある。そこで、グリセリン100質量部に対して、30~85質量部の水、とくに30~70質量部の水を添加してもよい。水の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0016】
アルカリ性化合物は、水に溶解したときにアルカリ性の水溶液を形成する化合物である。グリセリンの水酸基をアルカリ性化合物がイオン化させることで、酸素吸収反応が活性化される。酸素吸収組成物の状態では、アルカリ性化合物の一部がグリセリンに溶解していることが多い。アルカリ性化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、第三リン酸塩、又は第二リン酸塩であってもよい。アルカリ性化合物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化ラジウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、及び第二リン酸カリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
【0017】
アルカリ性化合物の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常100~300質量部であり、150~250質量部であってもよい。アルカリ性化合物の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0018】
硫酸銅は、グリセリンの酸素吸収反応を促進するために添加される。硫酸銅は、酸素吸収組成物の状態では、グリセリンに溶解していることが多い。硫酸銅は、銅の硫酸塩であればよく、無水物であっても5水和物であっても、その他の水和物であってもよい。また、酸化数によらず、硫酸銅(I)であっても、硫酸銅(II)であってもよい。
【0019】
硫酸銅の量は、無水物に換算してグリセリンの質量100質量部に対して、15~30質量部であり、18~26質量部であってもよい。遷移金属化合物の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0020】
担持体または酸素吸収組成物は、造粒物が容易に形成できるように、バインダーを含有していてもよい。バインダーの具体例としては、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン及びセルロースが挙げられる。バインダーの量は、担持体の質量100質量部に対して、通常0~30質量部であり、10~20質量部であってもよい。
【0021】
酸素吸収組成物は、その他の物質を更に含有していてもよい。その他の物質としては、例えば、カテコール系化合物が挙げられる。その他の物質の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常、30質量部以下程度である。
【0022】
無機微粒子が付着する前の造粒物の粒径(最大幅)は、特に制限されないが、例えば0.3mm以上であってもよく、8.0mm以下、4.5mm以下、1.8mm以下、又は1.5mm以下であってもよい。造粒物の形状は、特に限定されないが、例えば円柱状や球状であってもよい。円柱状の造粒物の場合、その側面の長さは0.3mm以上であってもよく、4.5mm以下であってもよい。円柱状の底面の直径が、0.3mm以上であってもよく、1.8mm以下、又は1.5mm以下であってもよい。造粒物の粒径又はサイズが小さいと、より高い酸素吸収能力が得られる傾向がある。
【0023】
担持体及び酸素吸収組成物から構成される造粒物は、担持体と、酸素吸収組成物を構成する成分を含む混合物を造粒することにより、得ることができる。酸素吸収組成物を構成する各成分は、一括して混合してもよいし、別々に混合してもよい。混合するための混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、円筒型、V型等の容器回転型混合機であってもよいし、リボン型、水平スクリュー型、バドル型、遊星運動型等の容器固定型混合機であってもよい。
【0024】
造粒物は、例えば、押出造粒、攪拌造粒、流動層造粒、転動造粒、又は圧縮造粒によって造粒することにより、得ることができる。押出造粒は、例えば、所定の開孔を有するスクリーンを用いて行うことができる。押出造粒によって得られる造粒物は、円柱状であることが多い。
【0025】
無機微粒子は、無機物質を主成分として含む非水溶性の粒子である。無機微粒子は、その全体質量を基準として、通常、50質量部以上の無機物質を含む。無機物質は、例えば、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム、からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。無機微粒子を造粒物表面に付着させることで、造粒物の表面積を拡大させ、酸素吸収性能の向上を図ることができる。
【0026】
造粒物に付着させた無機微粒子の、酸素吸収組成物を吸収する速度が大きいほど、造粒物内部に含まれる酸素吸収組成物を、無機微粒子の方に素早く移行させることができ、より酸素吸収性能を向上させることができる。この酸素吸収組成物を吸収する速度は、無機微粒子とグリセリンおよび硫酸銅を含有する水溶液との親和性により決定される。
【0027】
無機微粒子と前記水溶液の親和性は、複合粒子の前記水溶液への沈降速度として捉えることができる。無機微粒子を付着しない造粒物は、前記水溶液に比べて密度が低く、かつ造粒物表面と前記水溶液との親和性が低いことでため沈降しない。一方、前記水溶液と親和性の高い無機微粒子を、造粒物の表面に付着させた複合粒子は、表面の無機微粒子が該水溶液を吸収し複合粒子が重くなることで沈降する。無機微粒子と前記水溶液の親和性が高いほど、該水溶液を吸収する速度が速いため沈降速度が速くなる。この親和性を、沈降速度を用いて評価することで、酸素吸収速度を評価することができる。
【0028】
前記水溶液の濃度は、グリセリン100重量部に対して、硫酸銅の量は、無水物に換算して15~30質量部であり、18~26質量部であってもよい。更に、水の量は、グリセリン100質量部に対して、30~85質量部であり、30~70質量部であってもよい。前記水溶液の濃度が、造粒物に含まれる酸素吸収組成物の濃度と同じであることが好ましい。前記水溶液と酸素吸収組成物の濃度が同じであると、酸素吸収組成物の無機微粒子部への移行のし易さをより正確に定量することができる。
【0029】
複合粒子の沈降速度は、複合粒子1個当たり2mm/秒以上であると、高い酸素吸収能力が得られる傾向がある。同様の観点から、複合粒子1個当たりの沈降速度は、2.5mm/秒以上、5mm/秒以上、又は10mm/秒以上であってもよい。沈降速度の上限は、特に制限されない。また、複合粒子の質量は、例えば、1個当たり0.3~10.0mgとすることができる。
【0030】
複合粒子の沈降速度は、グリセリンおよび硫酸銅を含む水溶液を一定容積の容器に入れ、液面に複合粒子1個を静かに置き、沈降する複合粒子が容器の底面に到達するまでに要する時間と、容器底面から液面までの距離によって決定することができる。沈降速度の測定方法の詳細は、後述の実施例において説明される。
【0031】
無機微粒子の平均粒径が、150μm以下であってもよい。無機微粒子平均粒径が150μm以下であることにより、脱酸素剤の酸素吸収能力をより一層改善することができる。造粒物の表面には、通常、微細な凹凸が形成されており、小さい粒径の無機微粒子は、造粒物表面の凹部に入り込み易い。このことが結果的に造粒物の表面積を大幅に増加させることになり、酸素吸収能力向上に寄与すると考えられる。同様の観点から、無機微粒子の平均粒径は、100μm以下、又は50μm以下であってもよい。平均粒径の下限は、特に制限されないが、ナノサイズの微粒子が高価であることと、取扱が難しくなることから、例えば、0.1μm以上であってもよい。ここでの平均粒径は、レーザー回析法により測定される二次粒子径の値である。
【0032】
無機微粒子の細孔容積が、0.5mL/g以上であってもよい。親水性無機微粒子の細孔容積が0.5mL/g以上であることにより、脱酸素剤の酸素吸収能力をより一層改善することができる。大きな細孔容積を有する無機微粒子は、多くの造粒物表面近傍の酸素吸収組成物を吸収し易いと考えられる。酸素吸収組成物が無機微粒子に吸収されると、酸素吸収組成物と環境下の酸素と接触する面積が増え、その結果、酸素吸収能力が向上すると推察される。同様の観点から、無機微粒子の細孔容積は、0.8mL/g以上、又は1.2mL/g以上であってもよい。細孔容積の上限は、特に制限されないが、例えば、10mL/g以下であってもよい。ここでの細孔容積は、窒素吸着法又は水銀圧入法により測定される値である。窒素吸着法又は水銀圧入法のうち少なくともいずれか一方の方法で測定される細孔容積が上記数値範囲内であればよい。
【0033】
以上例示した平均粒径、及び細孔容積を有する無機微粒子は、通常の方法によって製造することが可能であり、市販品の中から適宜選択して入手することもできる。
【0034】
造粒物の表面に付着している無機微粒子の量(付着量)は、造粒物の質量100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上又は3質量部以上であってもよい。無機微粒子の付着量がこれらの範囲内にあると、脱酸素剤の適切な酸素吸収能力が得られ易い。無機微粒子の付着量の上限は、特に制限されないが、造粒性等の観点から、30質量部以下、25質量部以下、15質量部以下、10質量部以下又は8質量部以下であってもよい。造粒物に付着していない単独の無機微粒子が、脱酸素剤の粒子と混在していることがあり得るが、単独の無機微粒子の量は上記付着量に含まれない。
【0035】
脱酸素剤全体を基準とした造粒物の体積比は、60%を超えていてもよい。造粒物の体積比が適切な範囲にあることで、特に高い酸素吸収能力が得られ易い。同様の観点から、造粒物の体積比は、70%以上、又は80%以上であってもよく、98%以下であってもよい。
【0036】
無機微粒子は、通常、造粒物の表面全体にわたって付着している。ただし、造粒物の表面が無機微粒子によって隙間なく被覆されている必要は必ずしもなく、無機微粒子が互いに間隔をあけながら造粒物の表面全体にわたって分布していてもよい。
【0037】
脱酸素剤は、担持体及び酸素吸収組成物を含む造粒物に、無機微粒子を付着させる工程を備える方法によって、得ることができる。例えば、造粒物と、無機微粒子とを混合し、得られた粉体混合物を振とうすることにより、造粒物に無機微粒子を付着させることができる。
【0038】
上記のような粉体同士を混ぜ合わせる方法により造粒物に付着した無機微粒子は、比較的薄い層を形成しており、この点で、本実施形態の脱酸素剤の形態は、例えば打錠成形によって得られた外郭部を有する錠剤とは一般に異なる。具体的には、造粒物の表面に付着している無機微粒子は、厚み1mm以下、又は0.7mm以下の層を形成し得る。無機微粒子の層が薄いことは、複合粒子の表面をエネルギー分散型X線分析(EDX分析)によって元素分析したときに、造粒物を構成する材料(グリセリン、アルカリ性化合物又は硫酸銅)に含まれる元素が検出されることから、確認することもできる。一般に、本実施形態に係る脱酸素剤の場合、造粒物を構成する材料に含まれる少なくとも1種の元素が、0.05原子数%以上、又は0.1原子数%以上の濃度で検出されることが多い。一方、造粒物を内包するある程度の厚さの外郭部が打錠成形によって形成されている場合、造粒物を構成する材料の元素がEDX分析によって実質的に検出されることはない。
【0039】
一実施形態に係る脱酸素包装体は、上記の実施形態に係る脱酸素剤と、この脱酸素剤を収容した通気性包材とから主として構成され得る。通気性包材は、当該技術分野で通常用いられるものから適宜選択することができる。通気性包材の具体例としては、有孔プラスチックフィルム、不織布、マイクロポーラスフィルム、紙又はこれらの組み合わせからなる基材よって形成された袋体が挙げられる。この脱酸素剤包装体は、例えば、各種の食品包装容器の中に収容して、食品の鮮度維持等の目的で使用することができる。
【0040】
一実施形態に係る食品包装体は、上記脱酸素剤包装体と、この脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器とを備える。食品包装容器は、食品包装の分野で通常用いられるものから適宜選択することができ、密封可能な容器が好適である。食品包装容器としては、袋体、深絞り包装体、トレイ包装体、ストレッチ包装体等が挙げられる。
【実施例
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
1.造粒物
表1に示す原料を密封状態で均一に混合して、活性炭と、活性炭に担持された脱酸素剤、アルカリ化合物、遷移金属塩及びバインダーを含む酸素吸収組成物とを含有する混合物を得た。得られた混合物をスクリーン孔径1.0mmφ、開孔率22.6%のスクリーンを設けた押出し造粒機により造粒し、顆粒状の造粒物からなる造粒物粉体を得た。表1は、各原料の配合量を質量部で示す。
【0043】
【表1】
【0044】
2.無機微粒子
以下の無機微粒子を準備した。
・サイロページ720(親水性二酸化ケイ素粉末、富士シリシア化学製)
・ニップシールSS-50B(疎水性二酸化ケイ素粉末、東ソー・シリカ製)
・水酸化カルシウム(関東化学製)
【0045】
3.脱酸素剤
(実施例1)
酸素バリア性の袋に、30gの造粒物と、親水性二酸化ケイ素粉末であるサイロページ720を1.5g入れ、袋をヒートシールして密封した。袋を振とうして、無機微粒子によって造粒物が被覆された脱酸素剤を形成させた。袋を開け、内部の空気を追い出すように再びヒートシールして、脱酸素剤を保管した。
(実施例2)
酸素バリア性の袋に30gの造粒物と、サイロページ720を2.4g入れた以外は、実施例1と同様に脱酸素剤を形成させて保管した。
(比較例1)
酸素バリア性の袋に30gの造粒物と、水酸化カルシウムを6g入れた以外は、実施例1と同様に脱酸素剤を形成させて保管した。
(比較例2)
酸素バリア性の袋に30gの造粒物と、水酸化カルシウムを1.5g入れた以外は、実施例1と同様に脱酸素剤を形成させて保管した。
(比較例3)
酸素バリア性の袋に30gの造粒物と、疎水性二酸化ケイ素を1.5g入れた以外は、実施例1と同様に脱酸素剤を形成させて保管した。
(比較例4)
酸素バリア性の袋に30gの造粒物を入れ、無機微粒子を入れずに袋をヒートシールして保管した。
【0046】
4.沈降速度
無機微粒子が付着した造粒物(複合粒子)の沈降速度を、以下の手順で測定した。
(1)グリセリン100質量部に対して、硫酸銅(II)5水和物が30質量部、水が40質量部の水溶液を作製し、溶液Aとした。この溶液Aを25℃に保温した。
(2)前記脱酸素剤を目開き1mmのふるいに通し、ふるい上に残り1mm以上の粒径を要する複合粒子を選別した。
(3)直径30mmの開口を有した円筒状のガラス瓶に、底面からの距離が50mmまで溶液Aを注ぎ入れた。
(4)(2)で得た複合粒子1個をピンセットでつまみ、(3)の溶液Aの液面に静かに置き、複合粒子が沈降してガラス瓶の底面に到達するまでの時間を計測した。
(5)以下の式により、沈降速度を計算した。異なる複合粒子5個を用いて計測した値の平均値を採用した。
沈降速度[mm/s]=50[mm]/底面までの到達時間[s]
【0047】
5.酸素吸収能力
脱酸素剤2.0gを、有孔包材によって形成された袋(縦60mm、横60mm)に収納し、脱酸素剤包装体を作製した。有効包材として、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/紙/ポリエチレンから構成される積層材料を用いた。脱酸素剤包装体を、ショ糖44%水溶液を浸した脱脂綿(水分活性0.95)とともに、ガスバリア性の袋の中に入れた。袋を密封し、その中に空気500mLを注入してから、袋を25℃の雰囲気に放置した。24時間後の袋内の酸素濃度を測定した。酸素濃度が8%以下で「〇」、13%以下で「△」、13%より大きいとき「×」と判定した。酸素濃度が低いことは、酸素吸収能力が高いことを意味する。
【0048】
6.結果
表2は、無機微粒子の種類と、無機微粒子が付着した複合粒子の沈降速度(n=5の平均値)及び酸素吸収能力の評価結果を示す。参考例は、造粒物を無機微粒子によって被覆せず、そのまま脱酸素剤として用いた例である。沈降速度が2mm/秒以上である脱酸素剤にて、優れた酸素吸収能力を示すことが確認された。
【0049】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、食品保存等に用いる脱酸素剤に有用である。