(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】セキュリティ印刷物並びにセキュリティ印刷物を備えたカードおよび冊子体
(51)【国際特許分類】
B42D 25/328 20140101AFI20241016BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20241016BHJP
B42D 15/00 20060101ALI20241016BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20241016BHJP
G03H 1/18 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B42D25/328
G09F3/02 W
B42D15/00 341C
B41M3/14
G03H1/18
(21)【出願番号】P 2020102075
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(72)【発明者】
【氏名】緒方 哲治
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-140681(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090030(WO,A1)
【文献】特開2007-086252(JP,A)
【文献】特表2015-529578(JP,A)
【文献】特開2017-037272(JP,A)
【文献】国際公開第2005/006166(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3044442(JP,U)
【文献】特開2008-265248(JP,A)
【文献】米国特許第10385514(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00-25/485
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
G09F 1/00- 5/04
G03H 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の情報が印刷された基材と、
前記基材の一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えたセキュリティ印刷物であって、
前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、
前記結合情報と同じである同一情報、または前記結合情報と一義的に関連付けられる関連情報として視認可能である検証情報が、前記第1の情報および前記第2の情報の形成位置とは異なる位置にさらに形成され、
前記同一情報または前記関連情報は、前記基材にのみ形成され、
前記基材は透明性を有しており、前記第1の情報と、前記同一情報または前記関連情報とは、前記基材の前記一方の面および他方の面の互いに異なる面に形成されてい
る、セキュリティ印刷物。
【請求項2】
第1の情報が印刷された基材と、
前記基材の一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えたセキュリティ印刷物であって、
前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、
前記結合情報と同じである同一情報、または前記結合情報と一義的に関連付けられる関連情報として視認可能である検証情報が、前記第1の情報および前記第2の情報の形成位置とは異なる位置にさらに形成され、
前記同一情報または前記関連情報は、
前記第1の情報および前記第2の情報とは異なり、前記基材に形成された第3の情報と、
前記第1の情報および前記第2の情報とは異なり、前記ホログラム形成層にホログラム画像として形成された第4の情報とが結合して少なくともひとつの第2の結合情報を構成してい
る、セキュリティ印刷物。
【請求項3】
前記検証情報は、文字、顔写真画像および図形のうち少なくともひとつを含む、請求項1
または2に記載のセキュリティ印刷物。
【請求項4】
前記基材および前記ホログラム形成層の積層方向であって、当該基材および当該ホログラム形成層の両方が視認できる方向から平面視したとき、前記ホログラム形成層は、前記基材の輪郭よりも内側の領域に配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のセキュリティ印刷物。
【請求項5】
前記基材および前記ホログラム形成層の積層方向であって、当該基材および当該ホログラム形成層の両方が視認できる方向から平面視したとき、前記ホログラム形成層の輪郭を挟む前記基材の一部と前記ホログラム形成層の一部とは、所定値以下の色差である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のセキュリティ印刷物。
【請求項6】
前記同一情報または前記関連情報は、レーザ照射による部分的な凹凸形状を伴って形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のセキュリティ印刷物。
【請求項7】
前記基材の他方の面側に積層される粘着層をさらに備えた、
請求項1から6のいずれか一項に記載のセキュリティ印刷物。
【請求項8】
カード基体と、
前記カード基体の一方の面側にセキュリティ印刷物を備えたカードであって、
前記セキュリティ印刷物は、
第1の情報が印刷された基材と、
前記基材の一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えており、
前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、
前記結合情報と同じである同一情報、または前記結合情報と一義的に関連付けられる関連情報として視認可能である検証情報が、前記カード基体にさらに形成され
、
前記同一情報または前記関連情報は、前記基材にのみ形成され、
前記基材は透明性を有しており、前記第1の情報と、前記同一情報または前記関連情報とは、前記基材の前記一方の面および他方の面の互いに異なる面に形成されている、カード。
【請求項9】
冊子と、
前記冊子のいずれかのページにセキュリティ印刷物を備えた冊子体であって、
前記セキュリティ印刷物は、
第1の情報が印刷された基材と、
前記基材の一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えており、
前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、
前記結合情報と同じである同一情報、または前記結合情報と一義的に関連付けられる関連情報として視認可能である検証情報が、前記冊子にさらに形成され
、
前記同一情報または前記関連情報は、前記基材にのみ形成され、
前記基材は透明性を有しており、前記第1の情報と、前記同一情報または前記関連情報とは、前記基材の前記一方の面および他方の面の互いに異なる面に形成されている、冊子体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定が可能なセキュリティ印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カードやチケット等の真贋判定用として、偽造が困難なホログラムを当該カードやチケット等に設けることが行われている。このようなホログラムは高価であり、なるべくサイズを小さくした方がコストを抑えられるが、小さすぎるとホログラムの存在感が薄れてしまい、また、肉眼での真贋判定が困難となり得る。
【0003】
このような課題に対して、印刷物の印刷絵柄の一部とホログラムの絵柄の一部とを同調させることにより、ホログラムと印刷物とを含めたセキュリティ印刷物として真贋判定に用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、カード基材上に顔写真等の所持者表示媒体を配置し、カード基材の両面に一端が仮止めされるように、一部又は全面に透明又は半透明な ホログラム層が表側及び/ 又は裏側に形成されているオーバーシートを積層するラミネート式カードであって、カード基材に、ホログラム層と同調する印刷層が形成されているものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、基材の表面に部分的にホログラム構成層を形成した情報担持シートにおいて、ホログラム構成層及びホログラム構成層を形成していない部分の基材に連続的なエンボス模様を有し、かつ、当該情報担持シートが当該エンボス模様に同調した絵柄を有するものが開示されている。さらに、特許文献3には、基材上に印刷された画像を施してなる各種証明書であって、基材上に構成された画像の全面または一部分の上にホログラムを設けた構成であり、基材上に構成された画像の一部分をあらかじめ欠落して構成し、基材上の欠落部分の上にホログラムを設け、ホログラムには基材上のあらかじめ欠落させた部分に相当する画像を、干渉縞記録装置を用いて透明フィルムにホログラム画線として作製し、当該ホログラム画線が基材上に構成された画像と繋がって連続画線となるように、当該ホログラムを貼付するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-55880号公報
【文献】特開平8-58274号公報
【文献】特開2016-93895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印刷画像が形成された基材上にホログラムを積層して、当該印刷画像の欠落部分を当該ホログラムに形成された画像が補完して一つの結合画像を形成するようにして、実質的にホログラムのサイズを小さく抑えつつ、必要な大きさにして、肉眼等で真贋判定がしやすいセキュリティ印刷物を得ることができる。しかし、この結合画像が連続的な画像であると、製造時の印刷画像とホログラム画像との位置合わせが困難であり、どの程度のずれまでが正しい画像として許容されるかが見た目にはわかりづらい場合がある。
【0007】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、実質的にホログラムの面積を小さく抑えつつ真贋判定が容易であるセキュリティ印刷物並びにセキュリティ印刷物を備えたカードおよび冊子体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態によるセキュリティ印刷物は、一方の面に第1の情報が印刷された基材と、前記基材の前記一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えたセキュリティ印刷物であって、前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、前記第1の情報と前記第2の情報とは、それぞれが離散的に配置された状態でひとつの結合情報として認識されるものである。
【0009】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物は、一方の面に第1の情報が印刷された基材と、前記基材の前記一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えたセキュリティ印刷物であって、前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、前記結合情報と同じである同一情報、または前記結合情報と一義的に関連付けられる関連情報が、前記第1の情報および前記第2の情報の形成位置とは異なる位置にさらに形成されている。
【0010】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記基材および前記ホログラム形成層の積層方向であって、当該基材および当該ホログラム形成層の両方が視認できる方向から平面視したとき、前記ホログラム形成層は、前記基材の輪郭よりも内側の領域に配置されていてもよい。
【0011】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記基材および前記ホログラム形成層の積層方向であって、当該基材および当該ホログラム形成層の両方が視認できる方向から平面視したとき、前記ホログラム形成層の輪郭を挟む前記基材の一部と前記ホログラム形成層の一部とは、所定値以下の色差であってもよい。
【0012】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記同一情報または前記関連情報は、レーザ照射による部分的な凹凸形状を伴って形成されていてもよい。
【0013】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記同一情報または前記関連情報は、前記基材にのみ形成されていてもよい。
【0014】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記基材は透明性を有しており、前記第1の情報と、前記同一情報または前記関連情報とは、前記基材の前記一方の面および他方の面の互いに異なる面に形成されていてもよい。
【0015】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記同一情報または前記関連情報は、前記ホログラム形成層にのみ形成されていてもよい。
【0016】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記同一情報または前記関連情報は、前記基材に形成された前記第1の情報および前記第2の情報とは異なる第3の情報と、前記ホログラム形成層にホログラム画像として形成された前記第1の情報、前記第2の情報とは異なる第4の情報とが結合して少なくともひとつの第2の結合情報を構成していてもよい。
【0017】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物において、前記基材の他方の面側に積層される粘着層をさらに備えてもよい。
【0018】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物を備えたカードは、カード基体と、 前記カード基体の一方の面側にセキュリティ印刷物を備えたカードであって、前記セキュリティ印刷物は、一方の面に第1の情報が印刷された基材と、前記基材の前記一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えており、前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、前記結合情報と同じである同一情報、または前記結合情報と一義的に関連付けられる関連情報が前記カード基体にさらに形成されている。
【0019】
また、本実施の別の形態によるセキュリティ印刷物を備えた冊子体は、冊子と、前記冊子のいずれかのページにセキュリティ印刷物を備えた冊子体であって、前記セキュリティ印刷物は、一方の面に第1の情報が印刷された基材と、前記基材の前記一方の面側に積層され、第2の情報がホログラム画像として視認可能に形成されたホログラム形成層と、を備えており、前記第1の情報と前記第2の情報とが結合して少なくともひとつの結合情報を構成しており、前記結合情報と同じである同一情報、または前記結合情報と一義的に関連付けられる関連情報が、前記冊子にさらに形成されている。
【発明の効果】
【0020】
本実施の形態によれば、実質的にホログラムの面積を小さく抑えつつ真贋判定が容易であるセキュリティ印刷物並びにセキュリティ印刷物を備えたカードおよび冊子体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るセキュリティ印刷物の平面図および断面図である。
【
図2】第2実施形態に係るセキュリティ印刷物の平面図および断面図である。
【
図3】第3実施形態に係るセキュリティ印刷物の平面図である。
【
図4】第4実施形態に係るセキュリティ印刷物の平面図である。
【
図5】第5実施形態に係るセキュリティ印刷物の平面図である。
【
図6】第6実施形態に係るセキュリティ印刷物の平面図である。
【
図7】第7実施形態に係るセキュリティ印刷物の平面図である。
【
図8】第8および第9実施形態に係るセキュリティ印刷物の断面図である。
【
図9】第10実施形態に係るカードの平面図および断面図である。
【
図10】第11実施形態に係る冊子体の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面等を参照して、本開示のセキュリティ印刷物並びにセキュリティ印刷物を備えたカードおよび冊子体の一例について説明する。ただし、本開示のセキュリティ印刷物等は、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
【0023】
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0024】
1.第1実施形態
本開示のセキュリティ印刷物の第1実施形態について説明する。
図1(a)は、第1実施形態に係るセキュリティ印刷物10を説明する平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のセキュリティ印刷物10の上下方向の略中央を左右に通過するA-A線で当該セキュリティ印刷物10を切った断面を
図1(a)の下方側から見たセキュリティ印刷物10の断面図である。以下、セキュリティ印刷物10およびこれを構成する各部の詳細を説明する。
【0025】
(a)セキュリティ印刷物
図1(a)に示すように、セキュリティ印刷物10をその基材30の主面の法線方向から平面視したとき、セキュリティ印刷物10は、四隅が円弧である略長方形状の輪郭を有する基材30と、当該基材30よりも大きさが一回り小さく、その外周の各辺が当該基材30の輪郭よりもそれぞれ内側に配置される、四隅が略直角である略長方形状の輪郭を有するホログラム形成層40と、を備える。また、セキュリティ印刷物10の一方の面上に、結合情報100である「ABC12345」の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。このうち、「C123」の部分はホログラム形成層40に形成され、「AB」および「45」の部分は基材30に形成されている。
【0026】
また、
図1(b)に示すように、セキュリティ印刷物10は、下方側から剥離台紙60、粘着層50、基材30およびホログラム形成層40が、この順に積層された構成をとる。ただし、セキュリティ印刷物10は、少なくとも基材30およびホログラム形成層40を備えていれば足り、粘着層50や剥離台紙60はなくてもよい。粘着層50を備えることにより、セキュリティ印刷物10をカードや証書、物品等に貼り付けることが容易となる。この点は、後述する他の実施形態についても共通する。
【0027】
(i)基材
基材30は、その一方の面に積層されるホログラム形成層40を支持するセキュリティ印刷物10の主要構成要素である。また、基材30には、ホログラム形成層40の積層面の当該ホログラム形成層40以外の領域に、第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320を形成するための印刷層70が設けられている。印刷層70は、オフセット印刷、活版印刷、グラビア印刷、シルク印刷の他、インクジェット印刷、基材とトナーを正負に帯電させてトナーを基材に電気的に付着固定させる静電印刷や、色材を塗付したインクリボンからの選択的な熱転写等によって設けられてもよい。
【0028】
基材30としては、フィルム基材を積層してもよく、樹脂を積層してもよい。基材30をフィルム基材として用いる場合には、特に限定はされないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ弗化エチレン系フィルム、ポリ弗化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン-ビニルアルコールフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合フィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0029】
また基材30を樹脂として用いる場合には、例えば、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系およびメタアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等のうちの一種類または二種類以上を混合したもの、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。基材30の厚さには特に制限はないが、セキュリティ印刷物10にある程度の可撓性が要求される場合は、例えば、0.1μm以上、500μm以下とすることができる。
【0030】
(ii)ホログラム形成層
本開示では、ホログラム形成層40は、レリーフ型ホログラムであり、微小な凹凸が形成された樹脂層41と、これに隣接する光反射層42と、当該光反射層42の樹脂層41とは反対側の面に隣接する接着層43とから構成される。なお、ホログラム形成層40は、リップマン型ホログラムであってもよい。
【0031】
樹脂層41は、レリーフ型ホログラムとしては、例えば透明性を有する熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を硬化させた硬化樹脂層、熱可塑性樹脂層、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、サーモプラスチック、ジアゾ系感光材料、フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、サーモクロミックス材料、カルコゲンガラス等の感光材料からなる感光層等が挙げられる。硬化樹脂層の材料である熱硬化性樹脂および電離放射線硬化性樹脂、ならびに熱可塑性樹脂等の詳細については、例えば、特開2014-126799号公報等に記載されるホログラム層の樹脂材料と同様とすることができる。なお、レリーフ型ホログラムは、上述の材料の他に、一般にレリーフ型ホログラムに添加可能な任意の材料を含んでいてもよい。
【0032】
樹脂層41のレリーフ構造の形状等については、所望のホログラム再生像の発現が可能な形状であればよく、一般的なレリーフ型ホログラムのレリーフ構造と同様に適宜決定することができる。干渉縞に相当する凹凸構造、すなわちレリーフ構造を表面に有するものあればよく、公知のものを用いることができる。
【0033】
上記の樹脂層41のレリーフ構造が形成された面に光反射層42が設けられる。樹脂層41のレリーフ構造と光反射層42との作用効果により特異な光学的な意匠性を有するからである。また、光反射層42の存在により、レリーフ構造の反射および回折効率を高めることができ、高輝度なホログラム再生像を発現できる。光反射層42は不透明であることが好ましい。なお、具体的な光反射層42の構成については、例えば、特開2013-014081号公報、特開2014-092646号公報等に記載される金属反射層等を用いることができる。また、反射層は粘着性や熱接着性を備えていてもよい。
【0034】
接着層43は、基材30の一方の面に、ホログラム形成層40の全体を強固に接着させるために設けられる。接着層43の部材としては、加熱によって溶融または軟化し、接着効果を発揮する公知の感熱接着剤等が適用でき、その材質は、ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、アセタール樹脂、ブチラール樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂等が広く使用できる。また必要に応じて、各種添加剤を加えて、有機溶媒へ溶解または分散させて、接着層組成物であるインキを用意して、公知のコーティング法または印刷法で塗布および乾燥して形成できる。接着層43の膜厚は、例えば、0.1μm以上、50μm以下とすることができるが、0.5μm以上、1.5μm以下であることが好ましい。
【0035】
(iii)粘着層
粘着層50としては、一般的なラベルに用いられる各種材料が使用でき、例えば天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤等を使用することができる。また、粘着層50には、必要に応じて粘着付与剤、填料、軟化剤、老化防止剤、あるいは染料、顔料等の着色剤等を配合することもできる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。また、填料としてはシリカ、タルク、炭酸カルシウム、クレイ等が挙げられる。軟化剤としては可塑剤等が挙げられる。また、粘着層50の厚さについて特に限定はないが、例えば0.01mm以上、5.0mm以下程度としてもよい。
【0036】
(iv)剥離台紙
剥離台紙60は、セキュリティ印刷物10をカードや証書、物品等に貼り付ける前の保管状態において、粘着層50の粘着力維持のために用いるものである。剥離台紙60の材料として、粘着層50の粘着力を阻害しないで当該粘着層50に付着できるものであれば特に制限はなく、各種樹脂フィルムやコート紙、あるいはそれらの複合材料にシリコーン等の離型剤を塗布したもの等を使用することができる。
【0037】
(b)結合情報および検証情報
次に、セキュリティ印刷物10に形成される結合情報100について詳細を説明する。本実施形態の結合情報100は、「ABC12345」という文字群であるが、このうち、ホログラム形成層40に形成されている「C123」の部分は、上述したようにホログラム形成層40の中間部分に配置される干渉縞に相当する凹凸構造、すなわちレリーフ構造を有する樹脂層41および光反射層42の界面で入射光が反射されることにより視認されるホログラム画像である。
【0038】
例えば、白色光を所定角度から入射させると、所定波長の光がその入射角に応じた所定の反射角に反射する。よって、見る角度によって、「C123」の部分は、まったく視認できなかったり良好に視認できたりする。また、視認できる場合でも、見る角度の微妙な違いにより、色彩が変わって見えることがある。一方、基材30に形成されている「AB」および「45」の部分は、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されない領域に印刷等によって印刷層70として形成されている。
【0039】
上述の結合情報100である「ABC12345」の文字群を情報面から整理すると、まず基材30側に形成された、分割された二つの文字群である「AB」および「45」を、それぞれ、第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320とする。また、第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320を合わせたものを印刷部分情報300とする。さらに、ホログラム形成層40側に形成された一つの文字群である「C123」をホログラム部分情報400とする。このとき、第1印刷部分情報310、ホログラム部分情報400および第2印刷部分情報320が結合して、ひとつの一義的な意味を有する結合情報100が形成される。換言すると、第1印刷部分情報310と第2印刷部分情報320との結合情報である印刷部分情報300およびホログラム部分情報400が結合して、結合情報100が形成される。また、基材30側に形成された、「AB」および「45」は、印刷等により任意の色彩を備えることができる。ただし、印刷部分情報300は、必ずしも第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320に分離する必要はない。
【0040】
結合情報100である「ABC12345」の文字群は、当該セキュリティ印刷物10が貼り付けられる対象物、例えばカードや証書、物品等の真正性を証明するための登録コードであってもよく、当該カードや証書、物品等の所有者を特定するための会員番号等のコードであってもよい。結合情報100は、物品や所有者を一義的に特定するためのユニークなコードであってもよく、同一属性の物品群や所有者群を限定するためのコードであって、同一コードが複数存在し得るものであってもよい。
【0041】
また、結合情報100は、例示するような英文字と数字の組み合わせに限らず、平仮名、片仮名、漢字、英文字、ローマ数字、漢数字、記号、図形等の組み合わせでもよく、これら以外の連続調の図形やデザインであってもよい。ただし、結合情報100は、印刷部分情報300とホログラム部分情報400との結合によって形成されるため、セキュリティ印刷物10の製造時において両部分情報同士の位置ずれが多少発生しても視認性や情報の特定に問題が生じにくいことが望ましい。したがって、平仮名、片仮名、英文字、記号、丸や四角、三角のような単純な図形等の組み合わせのように、各要素が離散的に配置された結合情報100であることが好ましい。また、基材30の印刷部分情報300を形成する印刷層70は、下地とのコントラストが得られ、外部から識別可能である限り、どのような色彩で形成されても構わない。
【0042】
一方、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向からセキュリティ印刷物10を平面視したとき、さらに、セキュリティ印刷物10をそのホログラム部分情報400が視認できる所定角度から見たとき、基材30の印刷部分情報300が形成されていない下地部分の領域と、ホログラム形成層40のホログラム部分情報400が形成されていない下地部分の領域とが、所定値以下の色差であることが好ましい。所定値以下の色差とは、前述の両領域について、JIS K 5600-4-4~6に基づいて測定された、L*a*b*色空間における色差ΔE*abが所定値以下であることを指す。
【0043】
所定値は13.0以下が好ましく、6.5以下がさらに好ましい。所定値が13.0以下であることにより、基材30とホログラム形成層40とは、下地がほぼ同色と認識でき、結合情報100をコントラストよく視認できるからである。また、所定値が6.5以下であることにより、基材30とホログラム形成層40との境界がほとんど認識できず、結合情報100の視認性がより向上するからである。
【0044】
なお、前述した積層方向であって、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して、所定角度だけ傾いた方向からセキュリティ印刷物10を見たときにホログラム形成層40のホログラム部分情報400が視認できるときは、当該方向から見たときに基材30の印刷部分情報300が形成されていない下地部分の領域と、ホログラム形成層40のホログラム部分情報400が形成されていない下地部分の領域とが、上記所定値以下の色差であることが好ましい。ホログラム部分情報400が形成されていないホログラム形成層40の下地部分の領域が見る角度によって異なる色彩として視認される場合、ホログラム部分情報400が視認できる方向において基材30の下地とホログラム形成層40の下地とがほぼ同色と認識できる。これにより、基材30およびホログラム形成層40を区別することなく結合情報100をコントラストよく視認することができるからである。
【0045】
(c)セキュリティ印刷物の製造方法
次に、上述の構成を備えたセキュリティ印刷物10の製造方法について簡単に説明する。まず、基材30の一方の面上に、オフセット印刷等により下地となる領域の印刷を行う。これは例えば、光沢を有するシルバーまたはグレーのベタ印刷とすることができる。さらに、この上に、オフセット印刷等により、第1印刷部分情報310である「AB」および第2印刷部分情報320である「45」に分割された文字群「AB 45」から構成される印刷部分情報300を備える印刷層70を形成する。この印刷層70の文字群は、例えば緑色に着色することができる。なお、基材30自体が特定の色彩を有している場合は、このような下地の印刷はしなくてもよい。
【0046】
一方、前述した方法により、レリーフ型ホログラムとして機能させるための微小な凹凸が形成された樹脂層41を形成し、この凹凸面に光反射層42を真空蒸着等により形成し、当該光反射層42の樹脂層41とは反対側の面に接着層43を形成することで、ホログラム形成層40を得ることができる。なお、樹脂層41および光反射層42が形成する微小な凹凸は、例えば白色光を所定の入射角からホログラム形成層40に向けて入射させたとき、所定の反射角において、所定波長の可視光を反射させ、ホログラム形成層40のホログラム部分情報400である「C123」の文字群を視認することができる。当該文字群は、例えば所定の反射角において緑色として視認され得る。
【0047】
上記により、基材30に対してホログラム形成層40が積層され、第1印刷部分情報310である「AB」および第2印刷部分情報320である「45」に分割された文字群「AB 45」から構成される印刷層70による印刷部分情報300と、ホログラム形成層40に形成された、所定の反射角において視認できる「C123」の文字群から構成されたホログラム部分情報400とが結合してひとつの結合情報を構成するセキュリティ印刷物10が完成する。
【0048】
しかし、セキュリティ印刷物10は、これを他のカードや証書、物品等に貼り付け、これらの真正性を証明できることを容易とするため、さらに、粘着層50を付加することができる。すなわち、基材30のホログラム形成層40の積層面とは反対側の面に粘着剤をコーティングし、これに剥離台紙60を積層して乾燥させることにより、硬化した粘着剤が粘着層50を形成し、これに剥離台紙60が仮接着することによって、粘着層50の粘着力の低下を抑制しながら保管することができる。
【0049】
(d)セキュリティ印刷物の作用
上述したように、セキュリティ印刷物10は、その一方の面上に、結合情報100である「ABC12345」の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。このうち、ホログラム部分情報400である「C123」の部分はホログラム形成層40に形成され、第1印刷部分情報310である「AB」および第2印刷部分情報320である「45」の部分は基材30に形成されている。また、第1印刷部分情報310と第2印刷部分情報320とが印刷部分情報300を構成する。
【0050】
基材30に形成されている「AB」および「45」の部分、すなわち印刷部分情報300は、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されない領域に印刷等によって印刷層70として形成されている。よって、印刷部分情報300は、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向から見たとき、または当該方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、これを良好に視認することができる。この場合の所定角度は、例えば0°から90°近くまでと相当に広い範囲とすることができる。
【0051】
一方、ホログラム形成層40に形成されている「C123」の部分、すなわちホログラム部分情報400は、干渉縞に相当する凹凸構造、すなわちレリーフ構造を有する樹脂層41および光反射層42の界面で所定波長の入射光が特定反射角に向けて反射される。よって、印刷部分情報300は、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、これを良好に視認することができる。この場合の所定角度は、入射光の角度とレリーフ構造のピッチ等に依存し、反射光の波長と当該所定角度とが関連付けられることとなる。
【0052】
その結果、セキュリティ印刷物10を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報100である「ABC12345」の文字群を明確に視認することができる。さらに、当該方向から見たときに、基材30の印刷部分情報300が形成されていない下地部分の領域と、ホログラム形成層40のホログラム部分情報400が形成されていない下地部分の領域とが、前述した所定値以下の色差である場合には、ホログラム部分情報400が視認できる角度において基材30とホログラム形成層40との下地がほぼ同色と認識できる。これにより、基材30およびホログラム形成層40を区別することなく結合情報100をコントラストよく視認することができる。なお、この作用効果は、後述する他の実施形態についても共通する。
【0053】
セキュリティ印刷物10に形成された結合情報100のうち、ホログラム形成層40に形成されている「C123」のホログラム部分情報400は、レリーフ構造を有する樹脂層41および光反射層42によって、所定波長の入射光が特定反射角に向けて反射され、かつ、「C123」の文字群から構成される像がレリーフ構造の干渉縞の影響で立体視されるという特殊な光学的効果を有している。このため、セキュリティ印刷物10の印刷部分情報300である、第1印刷部分情報310の「AB」や第2印刷部分情報320の「45」が、仮に別の偽造されたセキュリティ印刷物の基材に印刷できたとしても、「C123」のホログラム部分情報400を完全な形で再現させることは技術的に困難である。このため、セキュリティ印刷物10の全体をそっくり偽造することは困難である。この作用効果についても、後述する他の実施形態に同様に適用される。
【0054】
また、通常、セキュリティ印刷物10の基材30に印刷部分情報300となる印刷層70を形成する工程は、ホログラム部分情報400が樹脂層41および光反射層42にレリーフ構造として形成されたホログラム形成層40を基材30に積層する工程の前に実施されるため、基材30に対するホログラム形成層40の積層位置がずれると、その分、印刷部分情報300とホログラム部分情報400との相対位置もずれることになる。しかし、印刷部分情報300およびホログラム部分情報400は、いずれも「AB」、「45」および「C123」のように、一文字ずつが離散的に配置された状態で、全体としてひとつの結合情報100である「ABC12345」を構成している。
【0055】
したがって、印刷部分情報300とホログラム部分情報400との相対位置が多少ずれていたとしても、印刷部分情報300およびホログラム部分情報400がいずれも連続的な絵柄等のパターンである場合と比べると、これらをひとつの結合情報100である「ABC12345」として認識することが比較的容易である。よって、セキュリティ印刷物10の基材30に形成する印刷部分情報300の位置精度や、基材30に対するホログラム形成層40の積層位置精度の許容幅を比較的大きくとることができ、製造歩留まりの向上や技術的難易度の低減が図れる。
【0056】
ところで、従来技術のように基材30を備えず、ホログラム形成層40がセキュリティ印刷物10の基材30と同等の外形寸法を有し、ホログラム形成層40に結合情報100と同様の「ABC12345」の文字群が視認できるようにレリーフ構造を形成したセキュリティ媒体を製造することが考えられる。しかし、この場合、原材料費が高価であるホログラム形成層40の面積を大きくする必要があり、セキュリティ媒体の製造コストが上がる欠点が生じる。その逆に、セキュリティ印刷物10のホログラム形成層40と同一面積のホログラム形成層40のみを備えるセキュリティ媒体を製造することが考えられる。しかし、この場合、原材料費や製造コストは上がらないが、サイズの小さいセキュリティ媒体の視認性が悪化し、真贋判定の作業効率が低下したり、これを貼り付けた当該カードや証書、物品等のセキュリティ性に関する訴求力が低下する可能性がある。
【0057】
一方、セキュリティ印刷物10は、さらに粘着層50を備えることもでき、この場合は、セキュリティ印刷物10をカードや証書、物品等に容易に貼り付けることができる。カードや証書、物品等の表面が平滑でなく、微小な凹凸や曲面を有していた場合、例えば、ホログラム形成層40のみを転写箔フィルムとしてカードや証書、物品等に対してホットスタンプ治具を当てることにより熱転写する方式と比べて、転写不良によるホログラム絵柄の欠けや、密着不良によるホログラム端部の剥がれ等の不具合を抑制できる。
【0058】
2.第2実施形態
次に、本開示のセキュリティ印刷物の第2実施形態について説明する。
図2(a)および
図2(b)は、それぞれ
図1(a)および
図1(b)に対応する、第2実施形態に係るセキュリティ印刷物11を説明する平面図および断面図である。断面図は、
図2(a)のセキュリティ印刷物11の上下方向の下方を左右に通過するB-B線で当該セキュリティ印刷物11を切った断面を
図2(a)の下方側から見たものである。以下、セキュリティ印刷物11について、第1実施形態のセキュリティ印刷物10との相違点を中心に説明する。
【0059】
(a)セキュリティ印刷物
図2(a)に示すように、セキュリティ印刷物11をその基材30の主面の法線方向から平面視したとき、セキュリティ印刷物11は、セキュリティ印刷物10と同様の構成で、基材30と、当該基材30よりも大きさが一回り小さいホログラム形成層40と、を備える。また、セキュリティ印刷物10の一方の面上に、結合情報100である「ABC12345」の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。また、基材30には、ホログラム形成層40の積層面の当該ホログラム形成層40以外の領域に、検証情報201を構成する印刷層70がさらに設けられている。また、
図2(b)に示すように、セキュリティ印刷物11は、下方側から剥離台紙60、粘着層50、基材30およびホログラム形成層40がこの順に積層されることにより形成される。
【0060】
セキュリティ印刷物11の基材30は、セキュリティ印刷物10と同様の部材や厚さを適用し得る。基材30には、ホログラム形成層40の積層面の当該ホログラム形成層40以外の領域に、第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320を形成するための印刷層70が設けられる他、検証情報201を形成するための印刷層70も設けられている。印刷層70は、セキュリティ印刷物10と同様の方法で形成できる。
【0061】
本実施形態では、第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320を形成する印刷層70と検証情報201を形成する印刷層70とは同一方法で設けられるが、これらをそれぞれ異なる印刷方式で設けてもよい。なお、図示しないが、検証情報201を形成する印刷層70の上面を透明な基材や樹脂である保護層により被覆してもよい。また、保護層を剥がそうとしたときに、当該保護層や印刷層70が脆性破壊するように構成してもよい。このようにすることにより、検証情報201を形成する印刷層70を削って別の印刷層を設ける等の偽造を抑制することができる。このことは、後述する他の実施形態の検証情報についても共通する。
【0062】
(b)結合情報および検証情報
セキュリティ印刷物11に形成される結合情報100および検証情報201について詳細を説明する。本実施形態の結合情報100は、「ABC12345」という文字群であり、第1実施形態のセキュリティ印刷物10に形成された結合情報100と同一である。また、第1実施形態とは異なり、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報300が形成されていない領域に、検証情報201が印刷等によって印刷層70としてさらに形成されている。本実施形態の検証情報201は、「ABC12345」という文字群であり、結合情報100の文字群と同一構成ではあるが結合情報100よりは一回り小さい文字群である。
【0063】
また、第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320の色彩は同一でもよく、異なっていてもよい。同様に、第1印刷部分情報310および検証情報201の色彩、または、第2印刷部分情報320および検証情報201の色彩についても同一でもよく、異なっていてもよい。さらには、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して、所定角度だけ傾いた方向からセキュリティ印刷物11を見たときにホログラム形成層40のホログラム部分情報400が視認できるときは、当該ホログラム部分情報400の色彩は、第1印刷部分情報310、第2印刷部分情報320、および検証情報201の少なくともいずれかの色彩と異なっていてもよい。あるいは、これらのすべての色彩が同一であり、または類似していてもよい。結合情報100や検証情報201は、その文字群等を構成する各々の文字等が他の文字等と異なる色彩を有していても、ひとつの一義的な意味を有することが明確に認識できるからである。
【0064】
検証情報201は、セキュリティ印刷物11の基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている結合情報100の真贋を判定するために設けられた情報である。すなわち、本実施形態では、「ABC12345」の文字群から構成される結合情報100が真正な情報であることを、当該結合情報100と検証情報201との相違点があるか否かを確認することによって行う。具体的には、結合情報100の文字群である「ABC12345」と検証情報201の文字群である「ABC12345」とは、文字の大きさや書体、色彩に相違があったとしても、各々の文字等の内容や当該文字等の配列が同一であることから、互いに同一情報であることが確認できる。
【0065】
ここで、検証情報201が結合情報100に対して同一情報であるとは、検証情報201から一義的に認識できる情報と、結合情報100から一義的に認識できる情報とが同一である場合をいう。この場合、結合情報100が、例えばカードや証書、物品等の真正性を証明するための登録コードや当該カードや証書、物品等の所有者を特定するための会員番号等のコードである場合は、結合情報100を一つの一義的な情報として認識するための要素は、この文字群等を構成する「A」から「5」に至る8個の離散的な文字等の種別とこれらの配列のみである。逆に言えば、これ以外の文字等の色彩や書体、各々の文字等の大きさ等は、結合情報100を一つの一義的な情報として認識するためには無関係な要素といえる。
【0066】
なお、本実施形態では、検証情報201が、基材30上のホログラム形成層40の積層面のうち、当該ホログラム形成層40以外の領域であって、印刷部分情報300が形成されていない領域に印刷層70として設けられるものとして例示した。しかし、検証情報201の配置位置はこれに限らず、例えば、ホログラム形成層40の、ホログラム部分情報400が形成されていない領域に、ホログラム部分情報400と同様の形成方法で形成、配置されていてもよい。この場合でも、本実施形態で得られる作用効果を同様に奏することができるからである。
【0067】
(c)セキュリティ印刷物の製造方法
上記の構成を備えたセキュリティ印刷物11の製造方法が、第1実施形態のセキュリティ印刷物10の製造方法と異なる点は、以下のとおりである。すなわち、基材30の一方の面上に、オフセット印刷等により第1印刷部分情報310である「AB」および第2印刷部分情報320である「45」を合わせた印刷部分情報300を構成する印刷層70を形成する。このとき、同時にまたは別工程にて、結合情報100と同一情報となる「ABC12345」の文字群である検証情報201を備える印刷層70をさらに形成する。また、上述のとおり検証情報201を形成する印刷層70の上面を透明な基材や樹脂である保護層により被覆する工程を設けてもよい。
【0068】
(d)セキュリティ印刷物の作用
セキュリティ印刷物11には、セキュリティ印刷物10と同様、その一方の面上に結合情報100である「ABC12345」の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。さらに、セキュリティ印刷物11には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報300が形成されていない領域に、検証情報201が印刷等によって印刷層70としてさらに形成されている。検証情報201として、結合情報100と同一情報を示す「ABC12345」の文字群が形成されている。
【0069】
その結果、セキュリティ印刷物11を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報100である「ABC12345」の文字群を明確に視認することができる。さらに、セキュリティ印刷物11を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して上記所定角度傾いた方向を含めた広い角度範囲を含む方向から見たとき、結合情報100に対する同一情報を示す「ABC12345」の文字群の検証情報201を明確に視認することができる。よって、結合情報100および検証情報201を比較し、相互の同一性を確認することにより、セキュリティ印刷物11の真贋が容易に判定できる。
【0070】
3.第3実施形態
続いて、本開示のセキュリティ印刷物の第3実施形態について説明する。
図3は、
図1に対応する、第3実施形態に係るセキュリティ印刷物12を説明する平面図である。以下、セキュリティ印刷物12について、第1実施形態のセキュリティ印刷物10等との相違点を中心に説明する。
【0071】
(a)セキュリティ印刷物
図3に示すように、セキュリティ印刷物12を、その基材30の主面の法線方向から平面視したとき、セキュリティ印刷物12は、セキュリティ印刷物10と同様の構成で、基材30と、当該基材30よりも大きさが一回り小さいホログラム形成層40と、を備える。また、セキュリティ印刷物12の一方の面上に、結合情報102である「大日本 一郎」の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。また、基材30には、ホログラム形成層40の積層面の当該ホログラム形成層40以外の領域に、顔写真画像である検証情報202を構成する印刷層70がさらに設けられている。
【0072】
(b)結合情報および検証情報
セキュリティ印刷物12に形成される結合情報102および検証情報202について詳細を説明する。本実施形態の結合情報102は、例えば人名である「大日本 一郎」という文字群である。この場合の結合情報102は、例えば当該セキュリティ印刷物12が貼られたカードや証書、物品等の所有者や会員であることを証明するための特定情報であってもよい。結合情報102は、基材30に印刷層70として形成された印刷部分情報302である「大日」の文字群と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報402である「本 一郎」の文字群とから構成される。
【0073】
また、第1実施形態とは異なり、基材30には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報302が形成されていない領域に顔写真画像である検証情報202がインクリボンからの熱転写等によって印刷層70としてさらに形成されている。この点は、検証情報が文字群から構成される第2実施形態とも異なる。本実施形態の検証情報202の顔写真画像は、例えば結合情報102である人名で特定される所有者を示すものであってもよい。
【0074】
検証情報202は、セキュリティ印刷物12の基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている結合情報102の真贋を判定するために設けられた情報である。すなわち、本実施形態では、「大日本 一郎」の文字群から構成される結合情報102が真正な情報であることを、当該結合情報102および検証情報202の意味する対象について相違点があるか否かを確認することによって行う。具体的には、結合情報102の文字群である「大日本 一郎」により特定される人物は、検証情報202の顔写真画像により特定される人物と同一であるとする。この場合、結合情報102と一義的に関連付けられる関連情報である当該人物の顔写真画像を検証情報202としていることにより、結合情報102と検証情報202とは同一情報ではないが、結合情報102が真正なものであることが確認できる。
【0075】
なお、検証情報202が結合情報102に対して一義的に関連付けられる関連情報であるとは、必ずしも本実施形態における特定人物の氏名と顔写真のように1対1に特定される関係のみを指すものではなく、検証情報202が結合情報102に対して複数候補があり得る情報の一つを示すものでもよく、逆に、結合情報102が検証情報202に対して複数候補があり得る情報の一つを示すものでもよい。すなわち、検証情報202が複数会員から構成される会員グループの特定番号であり、結合情報102が、当該会員グループに所属する個々の会員の番号または氏名であってもよく、その逆の関係であってもよい。
【0076】
また、検証情報202と結合情報102との関係性は、それを見ただけで当該検証情報202が当該結合情報102に対して一義的に関連付けられる関連情報であると認識できるような情報であることが好ましい。しかしながら、検証情報202と結合情報102との関係性が、それを見ただけでは判断できないとしても、何らかの対応関係がリストやデータベースによって紐づけられて管理されており、必要に応じてこれを照合することにより、検証情報202と結合情報102との関係性が確認できる状態であればよい。この場合でも、セキュリティ印刷物12の真贋判定が可能だからである。
【0077】
(c)セキュリティ印刷物の製造方法
上記の構成を備えたセキュリティ印刷物12の製造方法は、例えば第2実施形態のセキュリティ印刷物11の製造方法と同一である。検証情報202を備える印刷層70が、文字群等ではなく顔写真画像である点は相違するが、当該印刷層70は上述した各種印刷方式により、特に熱転写方式によって容易に形成することができる。
【0078】
(d)セキュリティ印刷物の作用
セキュリティ印刷物12には、その一方の面上に、一例として人名を示す結合情報102である「大日本 一郎」の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。さらに、セキュリティ印刷物12には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報302が形成されていない領域に、検証情報202が印刷等によって印刷層70としてさらに形成されている。検証情報202としては、結合情報102の人名と一義的に関連付けられる関連情報である当該人物の顔写真画像が形成されている。
【0079】
その結果、セキュリティ印刷物12を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報102である「大日本 一郎」の文字群を明確に視認することができる。さらに、セキュリティ印刷物12を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して上記所定角度傾いた方向を含めた広い角度範囲を含む方向から見たとき、結合情報102から一義的に関連付けられる関連情報である顔写真画像の検証情報202を明確に視認することができる。よって、結合情報102および検証情報202を比較し、相互の意味する対象の同一性を確認することにより、セキュリティ印刷物12の真贋が容易に判定できる。
【0080】
4.第4実施形態
次に、本開示のセキュリティ印刷物の第4実施形態について説明する。
図4は、
図1に対応する、第4実施形態に係るセキュリティ印刷物13を説明する平面図である。以下、セキュリティ印刷物13について、第1実施形態のセキュリティ印刷物10等との相違点を中心に説明する。
【0081】
(a)セキュリティ印刷物
図4に示すように、セキュリティ印刷物13をその基材30の主面の法線方向から平面視したとき、セキュリティ印刷物13は、セキュリティ印刷物10と同様の構成で、基材30と、当該基材30よりも大きさが一回り小さいホログラム形成層40と、を備える。また、セキュリティ印刷物13の一方の面上に、図形または図形の組み合わせにより構成される二つの結合情報103および109が、それぞれ、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。
【0082】
結合情報103は、
図4のホログラム形成層40の左端部付近に配置された長方形および楕円の組み合わせによる図形であり、基材30に形成された印刷部分情報303とホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報403とから構成される。また、結合情報109は、
図4のホログラム形成層40の右端部付近に配置された三角形の図形であり、基材30に形成された印刷部分情報309とホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報409とから構成される。
【0083】
また、基材30には、ホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報303が形成されていない領域に、二つの結合情報のうちのひとつである結合情報103の図形と略相似形である図形により構成される検証情報203が印刷層70としてさらに形成されている。ただし、検証情報203は、結合情報103の図形と略相似形である図形のみにより構成されず、結合情報103および109の図形と略相似形である2種類の図形により構成されていてもよい。
【0084】
(b)結合情報および検証情報
セキュリティ印刷物13に形成される結合情報103、109および検証情報203について詳細を説明する。本実施形態の結合情報103および109は、幾何学的な図形または図形の組み合わせによる図形情報から構成される。この場合の結合情報103や109は、例えば当該セキュリティ印刷物13が貼られたカードや証書、物品等の出所を証明するための標章であってもよい。結合情報103は、基材30に印刷層70として形成された印刷部分情報303の図形と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報403である図形との結合図形により構成される。結合情報109は、基材30に印刷層70として形成された印刷部分情報309の図形と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報409である図形との結合図形により構成される。
【0085】
なお、結合情報103や109は、幾何学的な図形としているが、これに限定せず、幾何学的ではないフリーハンドで描いたデザインやイラスト、写真画像、これらのものに文字、英数字等を結合させたものとしてもよい。
【0086】
また、基材30には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報303が形成されていない領域に、結合情報103の図形と略相似形となる図形で構成される検証情報203が印刷層70としてさらに形成されている。
【0087】
検証情報203は、セキュリティ印刷物13の基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている結合情報103の真贋を判定するために設けられた情報である。すなわち、本実施形態では、基材30に形成された印刷部分情報303の図形と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報403である図形との結合図形で構成される結合情報103が真正な情報であることを、検証情報203と比較することによって行う。具体的には、結合情報103の図形が、検証情報203の図形と略相似形の関係にあるか否かにより、両者が同一情報であるか否かを確認する。なお、結合情報109の真贋判定は、基材30に形成された印刷部分情報309の図形と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報409である図形との結合図形が、ひとつの意味のある図形を構成しているか否かを確認することによって行う。
【0088】
このように、検証情報203と結合情報103とが、いずれも図形や所定のパターンを示すものである場合には、検証情報203と結合情報103の一部とが大きさや色彩が同一である場合の他、互いに略相似形の関係にあるときは、色彩等とは無関係に検証情報203と結合情報103とは、互いに同一情報であるといえる。検証情報203から一義的に認識できる情報と、結合情報103から一義的に認識できる情報とが同一だからである。
【0089】
なお、本実施形態では、第1~第3実施形態とは異なり、結合情報103は文字群のように離散的に配置された状態でひとつの結合情報として認識できるものではない。よって、基材30に形成された印刷部分情報303の図形の位置と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報403である図形の位置とが相対的にずれた場合には、両図形がずれない場合と比べて、結合情報103から受けるイメージが変わる可能性がある。しかし、両図形がずれない場合における結合図形と略相似形の関係にある検証情報203を同時に視認することができるため、当該両図形が単に相対的にずれているだけなのか、根本的に間違っているのかを判断することが容易である。したがって、セキュリティ印刷物13の中に検証情報203が形成されている場合には、結合情報103に多少の製造上の位置ずれがあったとしても、これの真贋判定を問題なく行うことができる。
【0090】
(c)セキュリティ印刷物の製造方法
上記の構成を備えたセキュリティ印刷物13の製造方法は、例えば第2実施形態のセキュリティ印刷物11の製造方法と同一であるため、説明を省略する。
【0091】
(d)セキュリティ印刷物の作用
セキュリティ印刷物13には、その一方の面上に、一例として図形である結合情報103が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。さらに、セキュリティ印刷物13には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報303が形成されていない領域に、検証情報203が印刷等によって印刷層70としてさらに形成されている。検証情報203として、結合情報103を構成する一部の図形と略相似形の関係にある図形が形成されている。
【0092】
その結果、セキュリティ印刷物13を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報103である所定の図形を明確に視認することができる。さらに、セキュリティ印刷物13を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して上記所定角度傾いた方向を含めた広い角度範囲を含む方向から見たとき、結合情報103の一部の図形と略相似形の関係にある図形である検証情報203を明確に視認することができる。よって、結合情報103の一部および検証情報203を比較し、相互の同一性を確認することにより、セキュリティ印刷物13の真贋が容易に判定できる。
【0093】
5.第5実施形態
次に、本開示のセキュリティ印刷物の第5実施形態について説明する。
図5は、
図1に対応する、第5実施形態に係るセキュリティ印刷物14を説明する平面図である。以下、セキュリティ印刷物14について、第1実施形態のセキュリティ印刷物10等との相違点を中心に説明する。
【0094】
(a)セキュリティ印刷物
図5に示すように、セキュリティ印刷物14をその基材30の主面の法線方向から平面視したとき、セキュリティ印刷物14は、セキュリティ印刷物10と同様の構成で、基材30と、当該基材30よりも大きさが一回り小さいホログラム形成層40と、を備える。また、セキュリティ印刷物14の一方の面上に、二つの結合情報の一方である文字群から構成される結合情報104および他方である同じく文字群から構成される結合情報105が、それぞれ、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。一方、基材30には、ホログラム形成層40の積層面の当該ホログラム形成層40以外の領域に、二つの検証情報の一方である検証情報204を構成する印刷層70が設けられている。さらに、ホログラム形成層40には、当該二つの検証情報の他方である検証情報205が形成されている。
【0095】
(b)結合情報および検証情報
セキュリティ印刷物14に形成される結合情報104および105、並びに検証情報204および205について詳細を説明する。本実施形態の結合情報104は、「ABC12345」の文字群から構成され、結合情報105は、「98765pqrst」の文字群から構成される。結合情報104は、基材30に形成される第1印刷部分情報314の「AB」および第2印刷部分情報324の「45」から構成される印刷部分情報304と、ホログラム形成層40に形成されるホログラム部分情報404の「C123」とが結合したものである。また、結合情報105は、基材30に形成される第1印刷部分情報315の「987」および第2印刷部分情報325の「rst」から構成される印刷部分情報305と、ホログラム形成層40に形成されるホログラム部分情報405の「65pq」とが結合したものである。
【0096】
一方、基材30には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報304および305が形成されていない領域に、検証情報204が印刷等によって印刷層70として形成されている。検証情報204は、「ABC12345」という文字群であり、結合情報104の文字群と同一構成ではあるが結合情報104よりは一回り小さい文字群である。また、ホログラム形成層40には、ホログラム部分情報404および405が形成されていない領域に、検証情報205が形成されている。検証情報205は、「98765pqrst」という文字群であり、結合情報105の文字群と同一構成ではあるが結合情報105よりは一回り小さい文字群である。
【0097】
検証情報204および205は、セキュリティ印刷物14の基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている結合情報104および105の真贋を判定するために設けられた情報である。すなわち、本実施形態では、「ABC12345」の文字群から構成される結合情報104および「98765pqrst」の文字群から構成される結合情報105のいずれもが真正な情報であることを、結合情報104と検証情報204との相違点または結合情報105と検証情報205との相違点があるか否かを確認することによって行う。
【0098】
具体的には、結合情報104の文字群である「ABC12345」と検証情報204の文字群である「ABC12345」とは、文字の大きさや書体、色彩に相違があったとしても、各々の文字等の内容や当該文字等の配列が同一であることから、互いに同一情報であることが確認できる。結合情報105と検証情報205とについても同様である。
【0099】
(c)セキュリティ印刷物の製造方法
上記の構成を備えたセキュリティ印刷物14の製造方法は、例えば第2実施形態のセキュリティ印刷物11の製造方法と同一である。また、結合情報104および105並びに検証情報204の形成については、いずれも第2実施形態のセキュリティ印刷物11の結合情報100や検証情報201と同じ製造方法を用いることができる。また、検証情報205については、セキュリティ印刷物11のホログラム部分情報400と同じ製造方法を用いることができる。
【0100】
(d)セキュリティ印刷物の作用
セキュリティ印刷物14には、上述したように、二つの結合情報104および105の文字群が、それぞれ基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。また、セキュリティ印刷物14の基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報304および305が形成されていない領域に、二つの検証情報の一方である検証情報204が印刷等によって印刷層70として形成されている。さらに、セキュリティ印刷物14のホログラム形成層40のホログラム部分情報404および405が形成されていない領域に、二つの検証情報の他方である検証情報205が形成されている。
【0101】
その結果、セキュリティ印刷物14を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報104である「ABC12345」の文字群と、結合情報105である「98765pqrst」の文字群とを明確に視認することができる。さらに、セキュリティ印刷物14を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して上記所定角度傾いた方向を含めた広い角度範囲を含む方向から見たとき、結合情報104および105に対する同一情報を示す「ABC12345」および「98765pqrst」の文字群である検証情報204および205を明確に視認することができる。よって、結合情報104および検証情報204、並びに結合情報105および検証情報205を比較し、それぞれについて相互の同一性を確認することにより、セキュリティ印刷物14の真贋が容易に判定できる。
【0102】
本実施形態では、セキュリティ印刷物14が、基材30に形成された印刷部分情報304とホログラム部分情報404とが正しく結合した結合情報104を有し、かつ、基材30に形成された印刷部分情報305とホログラム部分情報405とが正しく結合した結合情報105を有する必要がある。さらに、結合情報104および105が、それぞれ基材30に形成された検証情報204およびホログラム形成層40に形成された検証情報205と同一情報となる必要がある。
【0103】
このためには、基材30に形成された印刷部分情報304が検証情報204の一部を構成するだけではなく、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報404が検証情報204の上記一部を除く部分を構成する必要がある。さらには、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報405が検証情報205の一部を構成するだけではなく、基材30に形成された印刷部分情報305が検証情報205の上記一部を除く部分を構成する必要がある。したがって、基材30の印刷部分情報304および305と、ホログラム部分情報404および405との高い整合性が求められる。よって、基材30およびホログラム形成層40の両方を高度な整合性を維持しつつ偽造することは困難であり、本実施形態では高いセキュリティ性を確保することができる。
【0104】
6.第6実施形態
次に、本開示のセキュリティ印刷物の第6実施形態について説明する。
図6は、
図5に対応する、第6実施形態に係るセキュリティ印刷物16を説明する平面図である。以下、セキュリティ印刷物16について、第5実施形態のセキュリティ印刷物14との相違点等を中心に説明する。
【0105】
(a)セキュリティ印刷物
図6に示すように、セキュリティ印刷物16をその基材30の主面の法線方向から平面視したとき、セキュリティ印刷物16は、セキュリティ印刷物14と同様の構成で、基材30と、当該基材30よりも大きさが一回り小さいホログラム形成層40と、を備える。また、セキュリティ印刷物16の一方の面上に、セキュリティ印刷物14とは異なり、ひとつの結合情報である文字群から構成される結合情報106が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。一方、基材30には、ホログラム形成層40の積層面の当該ホログラム形成層40以外の領域に、印刷部分検証情報506を構成する印刷層70が設けられている。さらに、ホログラム形成層40には、ホログラム部分検証情報606が形成されている。ホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506を結合することにより、ひとつの意味のある検証情報206が構成できる。
【0106】
(b)結合情報および検証情報
セキュリティ印刷物16に形成される結合情報106並びに印刷部分検証情報506およびホログラム部分検証情報606について詳細を説明する。本実施形態の結合情報106は、「ABC12345」の文字群から構成される。結合情報106は、基材30に形成される第1印刷部分情報316の「AB」および第2印刷部分情報326の「45」から構成される印刷部分情報306と、ホログラム形成層40に形成されるホログラム部分情報406の「C123」とが結合したものである。
【0107】
一方、基材30には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報306が形成されていない領域に、印刷部分検証情報506が印刷等によって印刷層70として形成されている。印刷部分検証情報506は、結合情報106の「ABC12345」という文字群の一部である「2345」という文字群である。また、ホログラム形成層40には、ホログラム部分情報406が形成されていない領域に、ホログラム部分検証情報606が形成されている。ホログラム部分検証情報606は、結合情報106の「ABC12345」という文字群の一部である「C123」という文字群である。ホログラム部分検証情報606と印刷部分検証情報506とを結合させた文字群「ABC12345」が、結合情報106と同一情報となる。また、ホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506は、いずれも、結合情報106の「ABC12345」という文字群の各文字と比べて一回り小さい文字を有する文字群を構成している。
【0108】
ホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506は、セキュリティ印刷物16の基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている結合情報106の真贋を判定するために設けられた情報である。すなわち、本実施形態では、「ABC12345」の文字群から構成される結合情報106が真正な情報であることを、結合情報106と、ホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506を結合させた文字群等との相違点があるか否かを確認することによって行う。
【0109】
具体的には、結合情報106の文字群である「ABC12345」と、ホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506を結合した文字群である「ABC12345」とは、文字の大きさや書体、色彩に相違があったとしても、各々の文字等の内容や当該文字等の配列が同一であることから、互いに同一情報であることが確認できる。
【0110】
(c)セキュリティ印刷物の製造方法
上記の構成を備えたセキュリティ印刷物16の製造方法は、前述した第5実施形態のセキュリティ印刷物14の製造方法と同一である。
【0111】
(d)セキュリティ印刷物の作用
セキュリティ印刷物16には、上述したように、ひとつの結合情報106の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。また、セキュリティ印刷物16の基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報306が形成されていない領域に、検証情報206の一部を構成する印刷部分検証情報506が印刷等によって印刷層70として形成されている。さらに、セキュリティ印刷物16のホログラム形成層40のホログラム部分情報406が形成されていない領域に、検証情報206の残りの一部を構成するホログラム部分検証情報606が形成されている。
【0112】
その結果、セキュリティ印刷物16を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報106である「ABC12345」の文字群と、ホログラム部分検証情報606である「ABC1」と、印刷部分検証情報506である「2345」と、を明確に視認することができる。さらに、セキュリティ印刷物16を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して上記所定角度傾いた方向を含めた広い角度範囲を含む方向から見たとき、結合した文字群が結合情報106に対する同一情報を示す「ABC1」および「2345」の文字群であるホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506を明確に視認することができる。よって、結合情報106と、ホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506を結合した検証情報206とを比較し、相互の同一性を確認することにより、セキュリティ印刷物16の真贋が容易に判定できる。
【0113】
本実施形態では、基材30に形成された印刷部分情報306とホログラム部分情報406とが正しく結合した結合情報106を形成する必要がある。また、結合情報106が、基材30に形成された印刷部分検証情報506およびホログラム形成層40に形成されたホログラム部分検証情報606を結合した情報に対して同一情報となる必要がある。このためには、基材30に形成された印刷部分情報306およびホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報406のそれぞれが、ホログラム部分検証情報606および印刷部分検証情報506の結合した情報の一部を構成する必要がある。
【0114】
すなわち、印刷部分情報306は、基材30に形成された印刷部分検証情報506の一部だけでなく、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分検証情報606の一部をも含む必要がある。さらには、ホログラム部分情報406は、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分検証情報606の一部だけでなく、基材30に形成された印刷部分検証情報506の一部をも含む必要がある。したがって、基材30の印刷部分情報306とホログラム部分情報406との高い整合性が求められる。よって、基材30およびホログラム形成層40の両方を高度な整合性を維持しつつ偽造することは困難であり、本実施形態では高いセキュリティ性を確保することができる。
【0115】
7.第7実施形態
次に、本開示のセキュリティ印刷物の第7実施形態について説明する。
図7は、
図4に対応する、第7実施形態に係るセキュリティ印刷物17を説明する平面図である。以下、セキュリティ印刷物17について、第4実施形態のセキュリティ印刷物13等との相違点を中心に説明する。
【0116】
(a)セキュリティ印刷物
図7に示すように、セキュリティ印刷物17をその基材30の主面の法線方向から平面視したとき、セキュリティ印刷物17は、セキュリティ印刷物13と同様の構成で、基材30と、当該基材30よりも大きさが一回り小さいホログラム形成層40と、を備える。また、セキュリティ印刷物17の一方の面上に、結合情報107および108を構成する二つの図形が、それぞれ、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。ただし、セキュリティ印刷物13とは異なり、結合情報107は、単なる図形ではなく2次元バーコードである。
【0117】
結合情報107は、印刷部分情報307とホログラム部分情報407とから構成され、
図7のホログラム形成層40の左端部付近に配置される。印刷部分情報307とホログラム部分情報407との結合により、ひとつの2次元バーコードが形成される。また、結合情報108の図形は、印刷部分情報308とホログラム部分情報408との結合により形成される、
図7のホログラム形成層40の右端部付近の二重円形状のものである。
【0118】
また、基材30には、ホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報303が形成されていない領域に、所定の文字群等から構成される検証情報207が印刷層70としてさらに形成されている。ただし、本実施形態のようにセキュリティ印刷物17には結合情報108を設けなくてもよく、あるいは結合情報107および108に加えて、他の2次元バーコードや図形等がさらに形成されてもよい。また、検証情報207として2次元バーコードを例示しているが、これに代えて1次元のバーコードやその他の図形コードとしてもよい。
【0119】
(b)結合情報および検証情報
セキュリティ印刷物17に形成される結合情報107および108並びに検証情報207について詳細を説明する。本実施形態の結合情報107は、上記のとおり2次元バーコードである。この場合の結合情報107は、例えば当該セキュリティ印刷物17が貼られたカードや証書、物品等に関係する情報が存在する特定ホームページのURLを示すものである。具体的には、「http://1234567890」という文字群からなるURLを意味する。ただし、結合情報107は、対象とするカードや証書、物品等の真正性を証明するための登録コードであってもよく、当該カードや証書、物品等の所有者を特定するための会員番号等のコードであってもよい。
【0120】
検証情報207は、セキュリティ印刷物17の基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている結合情報107の真贋を判定するために設けられた情報である。すなわち、本実施形態では、基材30に形成された印刷部分情報307の図形と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報407である図形との結合図形が構成する2次元バーコードの読み取り情報が真正な情報であることを、検証情報207と比較することによって行う。具体的には、結合情報107が示す情報は特定ホームページのURLであり、結合情報107を2次元バーコードとして読み取った情報と、検証情報207の「http://1234567890」の文字群であるURL情報とを比較し、相互の同一性を確認することにより、セキュリティ印刷物17の真贋が容易に判定できる。
【0121】
(c)セキュリティ印刷物の製造方法
上記の構成を備えたセキュリティ印刷物17の製造方法は、第4実施形態のセキュリティ印刷物13等の製造方法と同一であるため、説明を省略する。
【0122】
(d)セキュリティ印刷物の作用
セキュリティ印刷物17には、その一方の面上に、2次元バーコードを含む図形である結合情報107および108が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。さらに、セキュリティ印刷物17には、基材30のホログラム形成層40と対向する面上の、ホログラム形成層40が載置されておらず、かつ、印刷部分情報307や308が形成されていない領域に、検証情報207が印刷等によって印刷層70としてさらに形成されている。検証情報207として、結合情報107を構成する2次元バーコードと同一情報の関係にあるURL情報が形成されている。
【0123】
その結果、セキュリティ印刷物17を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報107である所定の2次元バーコードと、結合情報108である所定の図形とを明確に視認することができる。また、適切な方向に2次元バーコードリーダを傾けて、結合情報107である2次元バーコードを読み取ることにより、当該2次元バーコードの読み取り情報を機械的に確認することができる。
【0124】
本実施形態では、基材30に形成された印刷部分情報307とホログラム部分情報407とが正しく結合した2次元バーコードである結合情報107を形成する必要がある。また、基材30に形成された印刷部分情報308とホログラム部分情報408とが正しく結合した図形である結合情報108を形成する必要がある。さらには、結合情報107を2次元バーコードリーダで読み取った情報が、基材30に形成された検証情報207に対して同一情報となる必要がある。
【0125】
このためには、基材30に形成された印刷部分情報307および検証情報207と、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報407および検証情報207との高い整合性が求められる。印刷部分情報308およびホログラム部分情報408との整合性も同様である。したがって、基材30およびホログラム形成層40の両方を高度な整合性を維持しつつ偽造することは困難であり、本実施形態では高いセキュリティ性を確保することができる。
【0126】
8.第8実施形態
次に、本開示のセキュリティ印刷物の第8実施形態について説明する。
図8(a)は、
図2(b)に対応する、第8実施形態に係るセキュリティ印刷物11Aを説明する断面図である。以下、セキュリティ印刷物11Aについて、第2実施形態のセキュリティ印刷物11等との相違点を中心に説明する。
【0127】
(a)セキュリティ印刷物
セキュリティ印刷物11Aは、検証情報201が形成される印刷層71の配置場所が異なること以外は、
図2(a)および
図2(b)に示す第2実施形態のセキュリティ印刷物11と同一の構成を備える。セキュリティ印刷物11Aの印刷層71は、
図8(a)に示すように、基材30の粘着層50側、すなわち図示されないが基材30のホログラム形成層40とは反対側に形成される点がセキュリティ印刷物11と相違する。なお、本実施形態において基材30は少なくとも部分的に透明性を有している。透明性は着色の有無とは関係なく、例えば基材30について、波長が380nm以上、780nm以下の可視光の透過率が30%以上あれば透明性を有するものといえる。
【0128】
(b)セキュリティ印刷物の作用
このように、セキュリティ印刷物11Aは、セキュリティ印刷物11とは異なり、検証情報201を形成する印刷層71が、
図1(b)や
図2(a)に示す、基材30に対する印刷部分情報300の形成面とは反対側の面に形成されている。よって、セキュリティ印刷物11Aを、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向から見たとき、検証情報201は、透明性のある基材30を透かして視認することができる。これにより、結合情報100に対する同一情報を示す検証情報201は、セキュリティ印刷物11Aの印刷部分情報300の形成面と同一面に存在しないため、印刷部分情報300および検証情報201の両方を同時に偽造することが困難となる。
【0129】
特に、セキュリティ印刷物11Aが粘着層50を有する場合には、セキュリティ印刷物11Aを、粘着層50を介してカードや証書、物品等に貼り付けることにより、検証情報201を形成する印刷層71を除去および書き換えることは、一層困難となる。損傷しないようにセキュリティ印刷物11Aを当該カードや証書、物品等から剥がし、かつ粘着層50を除去しなければ検証情報201の偽造ができないからである。なお、基材30を、粘着層50の剥離強度より小さい外力で材破する部材で形成しておくことにより、セキュリティ印刷物11Aの偽造はさらに難しくなる。
【0130】
なお、図示はしないが、本実施形態において、セキュリティ印刷物11Aは、検証情報201に加えて
図2(a)に示す印刷部分情報300である第1印刷部分情報310や第2印刷部分情報320についても、基材30の粘着層50側、すなわち基材30のホログラム形成層40とは反対側に形成されてもよい。基材30が全面的に透明性を有していれば、セキュリティ印刷物11Aを、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向から見たとき、検証情報201だけでなく印刷部分情報300も、透明性のある基材30を透かして視認することができるからである。
【0131】
この場合は、セキュリティ印刷物11Aが粘着層50を有していれば、セキュリティ印刷物11Aを、粘着層50を介してカードや証書、物品等に貼り付けることにより、検証情報201および、結合情報100を構成する印刷部分情報300の両方がセキュリティ印刷物11Aの表面に露出していない。したがって、これらを形成する印刷層を除去および書き換えることは、さらに一層困難となる。
【0132】
本実施形態のように、検証情報201である印刷層71を基材30の粘着層50側、すなわち基材30のホログラム形成層40とは反対側の面に形成することは、第2実施形態以外の他の実施形態にも適用され得る。すなわち、検証情報が文字群等である場合に限らず、図形等でもよいことはいうまでもない。印刷部分情報300である印刷層70を基材30の粘着層50側、すなわち基材30のホログラム形成層40とは反対側の面に形成することについても同様である。
【0133】
9.第9実施形態
続いて、本開示のセキュリティ印刷物の第9実施形態について説明する。
図8(b)は、
図2(b)や
図8(a)に対応する、第9実施形態に係るセキュリティ印刷物11Bを説明する断面図である。以下、セキュリティ印刷物11Bについて、第2実施形態のセキュリティ印刷物11等との相違点を中心に説明する。
【0134】
(a)セキュリティ印刷物
セキュリティ印刷物11Bは、検証情報201が印刷層ではなく、レーザ照射に対する発色性を有する基材31の発色部分であるレーザ印字部80により形成されていることが、セキュリティ印刷物11とは異なる。基材31は、例示した基材30として使用可能な基材材料に金属粒子等の機能性顔料を添加したものである。基材31に所定周波数のレーザ光を照射すると、当該基材31が含有する機能性顔料がレーザエネルギーを吸収して発熱し、周囲の基材を炭化させることでその一部を例えば黒色または茶色に不可逆的に変色させることができる。さらに、レーザ照射によって、基材31の表面には部分的な凹凸が形成される、
【0135】
よって、
図8(b)に示すように、例えば半導体レーザ、ファイバーレーザ、CO
2レーザ、YAGレーザ、YVO
4レーザ等のレーザ照射が可能なレーザ照射機から、可視光、近赤外線等の所定波長のレーザ照射700を行い、レーザ光の焦点を適宜移動させながら基材31の表面を描画することにより、例えば
図2(a)に示す検証情報201である文字群や
図3に示す検証情報202である顔写真画像、
図4に示す検証情報203である図形等を、部分的な凹凸形状を伴って形成することができる。
【0136】
(b)セキュリティ印刷物の作用
このように、セキュリティ印刷物11Bは、セキュリティ印刷物11や11Aとは異なり、検証情報201を形成する層が印刷によってではなく、レーザ発色した部位であるレーザ印字部80により形成されている。また、レーザ照射がされた基材31の所定部位は、表面が切削されたように部分的な凹凸形状を伴っている。これはレーザ照射のエネルギーによって、基材31の表面の一部が蒸発し、削り取られたようになるからである。これにより、結合情報100に対する同一情報を示す検証情報201は、基材31の内部が発色することにより形成され、かつ、その表面が部分的な凹凸形状を伴っているため、当該検証情報201を除去し、異なる番号等を印字し直すような偽造を行うことは困難である。
【0137】
なお、本実施形態についても、第8実施形態と同様、基材31を透明性のある基材として、検証情報201であるレーザ印字部80を基材31の粘着層50側、すなわち基材31のホログラム形成層40とは反対側の面に形成することができる。この場合、レーザ印字部80の偽造がより一層困難になることはいうまでもない。また、本実施形態は、第2実施形態以外の他の実施形態にも適用され得る。
【0138】
10.第10実施形態
次に、本開示のセキュリティ印刷物を備えたカードである第10実施形態について説明する。
図9(a)は、第10実施形態に係るセキュリティ印刷物10を備えたカード800を説明する平面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のカード800のICモジュール860の上下方向の略中央を左右に通過し、検証情報208およびセキュリティ印刷物10の上下方向の略中央を左右に通過する階段状の一点鎖線であるC-C線で当該カード800を切った断面を
図9(a)の下方側から見たカード800の断面図である。以下、カード800およびこれを構成する各部の詳細を説明する。
【0139】
(a)カード
図9(a)に示すように、カード800をそのカード基体810の主面の法線方向から平面視したとき、カード800は、四隅に円弧を有する略長方形状の輪郭で構成されたカード基体810と、当該カード基体810の内側の領域であって、略左上の領域に配置される略長方形状の輪郭を有するICモジュール860と、略中央下の領域に配置される「ABC12345」の文字群により構成される検証情報208と、略右下の領域に配置されるセキュリティ印刷物10と、を備える。
【0140】
また、
図9(b)に示すように、カード800のカード基体810は、下方側からオーバーシート層850と、コア層840と、コア層830と、オーバーシート層820とがこの順に積層された構造を有する。カード基体810の表裏の一方の面であるオーバーシート層820の表面に隣接してレーザ印字部81から形成される検証情報208と、第1実施形態で説明したセキュリティ印刷物10が設けられている。なお、セキュリティ印刷物10は、粘着層50を介して、オーバーシート層820と接着固定されている。本実施形態では、カード基体810が2層のコア層と2層のオーバーシート層との計4層の積層体であるものとして説明するが、カード基体810の層構成はこれに限らない。すなわち、カード基体810は、コア層の表裏にオーバーシート層がそれぞれ積層される3層構成や、コア層2層のみの2層構成、コア層1層のみの構成であってもよく、5層以上の層構成であってもよい。
【0141】
一方、カード基体810には、オーバーシート層820の表面からコア層840の途中に至る所定深さの凹部863が設けられており、その内部にICモジュール860が、その露出面がオーバーシート層820の表面と略同一面となるように埋設されている。カード800は、外部接触端子861を備えた接触式ICカードである。
【0142】
(i)コア層
カード基体810を構成するコア層830および840としては、白色または着色された各種のプラスチックシートを幅広く使用することができ、以下にあげる単独のフィルムあるいはそれらの複合フィルムを使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET-G(テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、等である。コアシートの厚さは、カードの全体厚さを勘案して適宜に選択することができるが、例えば、0.25mm以上、0.38mm以下程度とすることができる。
【0143】
(ii)オーバーシート層
また、上記コア層830および840とともにカード基体810を構成するオーバーシート層820および850としては、通常、コア層830および840と同質の材料を使用するが、厚さが0.05mm以上、0.10mm以下程度の透明材料が使用されることが多い。コア層およびオーバーシート層の積層体を熱プレス等で一体化する際のカールの発生を防止する観点からは、オーバーシート層820および850の厚さが同一であることが好ましいが、必ずしも同一ではなくてもよい。
【0144】
オーバーシート層820および850の材料は、熱により接着性を有するものであればよいが、オーバーシート層自体が熱による接着性を有しない場合でも、熱等により接着力を発生させる公知の接着剤の層をコア層およびオーバーシート層の間に追加形成することで両者を一体化できる。また、カード800を磁気カードとしても使用する場合には、オーバーシート層820および850のいずれかまたは両方について、コア層830および840とは反対の主面側に磁気ストライプを熱転写等によりあらかじめ埋め込んでおいてもよい。
【0145】
(iii)ICモジュール
ICモジュール860は、
図9(a)および
図9(b)に示すように、角に丸みを有する略長方形状の平板状の基板の一方の面に外部接触端子861を備え、他方の面上にICチップを内包するように被覆した突起状部位であるモールド部862を備えている。ここで、平板状の基板は、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の可撓性を有する樹脂フィルムの一方の面に銅箔が接着剤を介して貼り込まれ、当該銅箔について所定パターンを形成するように残存させたものである。具体的には、当該樹脂フィルムの一方の銅箔面に外部接触端子861を形成するように、感光材料の塗付、所定パターンが形成されたフィルム版の載置、露光、非感光部位のエッチング除去、を順次行う。また、基板には、あらかじめ、外部接触端子861へのワイヤボンディングのための図示しない貫通孔を複数箇所設けている。
【0146】
また、基板の外部接触端子861の形成面とは反対側の面に、ICチップが接着剤を介して接着、固定される。ICチップは、接触通信制御や各種制御、演算、メモリへのアクセス等の動作を行うCPUと、RAMやEEPROM、フラッシュメモリー等のメモリと、外部接触端子861を介して外部機器と接触通信を行うインターフェース回路等の各種回路と、を備えている。ICチップの回路面にあるパッドと外部接触端子861の各端子区画とが、基板の貫通孔を通る金ワイヤ等で結線されている。
【0147】
上述のICチップが搭載され、ワイヤが結線された基板のICチップの搭載面には、ICチップやワイヤを外力負荷や環境負荷から保護するために、これらを被覆する突起状部位が設けられ、内部のICチップを含めたモールド部862が形成される。モールド部862の被覆部材として紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂等が使用される。なお、ICモジュール860は、カード基体810に設けられた凹部863の中に埋設され、基板の外部接触端子861とは反対側の面が接着剤864を介してカード基体810と接着固定される。
【0148】
(b)結合情報と検証情報
カード800に貼り付けられたセキュリティ印刷物10には、
図1(a)に示すとおり、「ABC12345」の文字群で構成される結合情報100が形成されている。結合情報100は、「AB」および「45」の文字群である、第1印刷部分情報310および第2印刷部分情報320を基材30上に形成された印刷層70として備え、「C123」の文字群であるホログラム部分情報400をホログラム形成層40側に形成されたレリーフ層として備えている。なお、第1印刷部分情報310と第2印刷部分情報320とが印刷部分情報300を構成する。結合情報100の文字群は、例えば当該カード800の真正性を証明するための登録コードまたは当該カード800の所有者を特定するための会員番号等のコードであってもよい。また、結合情報100または検証情報208と、同一情報または一義的に関連付けられる関連情報となる情報が、ICモジュール860が備えるICチップのメモリや磁気ストライプに記憶または記録されていてもよい。
【0149】
(c)カードの製造方法
次に、セキュリティ印刷物10を備えたカード800の製造方法について簡単に説明する。まず、カード800の領域が縦横方向に沿って多面付けされたコア層830および830と、オーバーシート層820および850を準備する。具体的には、白色のコア層830および840の、積層時にそれぞれオーバーシート層820および850と隣接する側の面に、オフセット印刷等によってカード800の絵柄が縦横方向に沿って多面付されたデザインとなるように印刷する。また、必要があれば、透明なオーバーシート層820および850のいずれかまたは両方について、あらかじめ磁気ストライプを熱転写しておく。
【0150】
次に、オーバーシート層850と、コア層840と、コア層830と、オーバーシート層820とをこの順に積層し、その表裏をステンレス板で挟み込んで、上下から所定の熱プレスおよび冷却を行う。これにより、積層されたコア層およびオーバーシート層は、互いに融着して一体化した積層体を形成する。その後、この積層体を各々のカード単位に打ち抜く。
【0151】
一方、これとは別に、前述した方法で粘着層50を備えたセキュリティ印刷物10を製造する。その後、先ほどのカード単位に打ち抜かれた個片の積層体に対して、エンドミル等の切削工具を備える切削装置により所定形状の凹部863を形成してカード基体810とする。また、これにICモジュール860を埋設し、接着剤864を塗布するか、貼り付けることによりICモジュール860をカード基体810と一体化させる。
【0152】
さらに、ICモジュール860が埋設固定されたカード基体810の外部接触端子861が視認できる面側の所定場所に、セキュリティ印刷物10を、粘着層50を介して貼り付け、レーザ照射機を用いた所定波長のレーザ光の照射により、検証情報208を構成するレーザ印字部81を形成する。これにより、本実施形態の接触式ICカードであるカード800が完成する。
【0153】
なお、上述した工程のうち、個片の積層体に凹部863を形成する工程、これにICモジュール860を埋設固定する工程、カード基体810の所定場所にセキュリティ印刷物10を貼り付ける工程、およびカード基体810の所定場所に検証情報208を構成するレーザ印字部81を形成する工程については、凹部863の形成後にICモジュール860を埋設固定するという順番が固定される以外は、工程順番を任意に組み替えることができる。
【0154】
また、上記の製造工程に、結合情報100または検証情報208と、同一情報または一義的に関連付けられる関連情報となる情報を、ICモジュール860が備えるICチップのメモリや磁気ストライプに記憶させる、または記録する工程を備えていてもよい。
【0155】
(d)カードの作用
カード800は、その一方の面上にセキュリティ印刷物10を備え、当該セキュリティ印刷物10には、結合情報100である「ABC12345」の文字群が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。このうち、ホログラム部分情報400である「C123」の部分はホログラム形成層40に形成され、印刷部分情報300を構成する第1印刷部分情報310である「AB」および第2印刷部分情報320である「45」の部分は基材30に印刷層70として形成されている。また、カード800の一方の面上であってセキュリティ印刷物10の配置領域ではないカード基体810の領域には、検証情報208である「ABC12345」の文字群がレーザ印字部81として形成されている。
【0156】
その結果、セキュリティ印刷物10を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報100を明確に視認することができる。さらに、セキュリティ印刷物10に形成された結合情報100、およびカード800のカード基体810の面上に形成された検証情報208を比較し、相互に同一情報であること、または相互に関連情報であることを確認することにより、セキュリティ印刷物10の真贋も含めたカード800の真贋が容易に判定できる。
【0157】
これより、カード800を偽造するには、セキュリティ印刷物10に形成された結合情報100、およびカード800のカード基体810の面上に形成された検証情報208の両情報を同一にするか、関連付ける必要があり、困難を伴う。
【0158】
さらに、カード800において、結合情報100または検証情報208と、同一情報または一義的に関連付けられる関連情報となる情報が、ICモジュール860が備えるICチップのメモリや磁気ストライプに記憶または記録されている場合には、上記の結合情報100および検証情報208の比較照合に加え、リーダライターによるICチップからのメモリ情報の読み出しや、磁気ストライプの書き込み情報の読み出しによる、読み出し情報との比較照合を行ってもよい。すなわち、これらの読み出し情報と結合情報100または検証情報208との比較照合を行うことで、結合情報100や検証情報208の改ざんの有無だけでなく、ICチップや磁気ストライプの改ざんの有無も判断できるようになり、一層精度の高い真贋判定が可能となるとともに偽造を困難にする。
【0159】
また、カード800の製造工程において、カード基体810の所定場所に、セキュリティ印刷物10を、粘着層50を介して貼り付けたとき、セキュリティ印刷物10は、ホログラム形成層40に形成されたホログラム部分情報400のみを有しており、基材30上には印刷部分情報300が形成されていなくてもよい。この場合、カード基体810へのICモジュール860の埋設後の発行工程において、発行装置のカード搬送の上流側でカードのICモジュール860のメモリまたは磁気ストライプに所定の固有番号等を書き込み、下流側で当該固有番号と同一情報またはこれと一義的に関連付けられる関連情報となる情報をレーザ照射機で検証情報208として印字し、かつ、セキュリティ印刷物10への印刷部分情報300としての印刷を行ってもよい。
【0160】
このようにすれば、ICモジュール860のメモリまたは磁気ストライプに記憶または記録される情報と、カード基体810へレーザ印字される検証情報208と、セキュリティ印刷物10に印刷される印刷部分情報300を含む結合情報100と、が互いに同一情報または関連情報となるように整合性を図ることが容易であり、情報の不一致等の間違いが抑制される。各工程が、同一装置の同一ライン内で一度に完結できるからである。ただし、発行工程は、ICモジュール860のメモリに所定の固有番号等を書き込むことに代えて、あらかじめICモジュール860のメモリに書き込まれている所定の固有番号等を読み出し、これに対応する情報を検証情報208および印刷部分情報300として形成してもよい。
【0161】
上述の場合、セキュリティ印刷物10のホログラム部分情報400はあらかじめ形成されている必要があるので、この部分を固有番号の中の共通の番号体系としておくことが好ましい。また、印刷部分情報300として可変情報を印刷する必要があるため、印刷部分情報300の印刷はインクジェット印刷や静電印刷、熱転写方式等を用いることが好ましい。
【0162】
なお、本実施形態のカード800は、接触通信を行うICチップを備えた接触式ICカードについて例示したが、本開示に係るカード800はこれに限らず、非接触通信用アンテナと、当該アンテナの両端が電気的に接続されたICチップとを備えた非接触式ICカードであってもよく、接触式および非接触式の兼用のICカードであってもよい。その場合においても、上述したカード800と同様の作用効果が得られることはいうまでもない。
【0163】
また、本実施形態では、セキュリティ印刷物として第1実施形態のセキュリティ印刷物10を備えるものとして説明したが、結合情報および検証情報の態様は、他の実施形態にて説明したすべての態様が適用可能である。例えば、第3実施形態において、検証情報202を除外したセキュリティ印刷物12の態様を本実施形態のセキュリティ印刷物10の態様に代えて適用し、かつ、検証情報208の態様に代えて、検証情報202の顔写真画像の態様を適用することができる。その他の実施形態の適用についても同様である。
【0164】
11.第11実施形態
続いて、本開示のセキュリティ印刷物を備えた冊子体である第11実施形態について説明する。
図10は、第11実施形態に係るセキュリティ印刷物10を備えた冊子体900を説明する斜視図である。冊子体は、略長方形の表紙920および裏表紙930を有し、両者の間に略同形状の1枚または複数枚のページ940を挟んでそれらの一辺に沿って綴じた冊子910を構成し、その内部のいずれかの場所にセキュリティ印刷物10を備えたものである。冊子体900として、例えば電子パスポートや貯金通帳等が例示される。
【0165】
(a)冊子体
冊子910を構成するページ940は、紙、樹脂、または紙成分と樹脂との複合体から構成され、典型的には、耐久性の観点からポリカーボネート、ポリエステルやこれらのアロイが好適に用いられる。また、各ページ940の綴じ代の部分には、繰り返しの曲げに対する耐久性や柔軟性が求められるため、編物構造の樹脂や布材を追加で用いることもある。本実施形態では、特定のページ940において、同一面上にセキュリティ印刷物10と、「ABC12345」の文字群から構成される検証情報209とが配置されている。なお、セキュリティ印刷物10は、粘着層50を介して、ページ940に接着固定されている。検証情報209は、印刷により形成されてもよく、レーザ発色により形成されてもよい。また、冊子体900が電子パスポートである場合は、セキュリティ印刷物10と検証情報209とが配置されているページ940は、さらに非接触通信用のICチップおよびこれに両端が電気的に接続されたアンテナを備えていてもよい。
【0166】
(b)結合情報と検証情報
冊子体900のページ940に貼り付けられたセキュリティ印刷物10には、
図1(a)に示すとおり、「ABC12345」の文字群で構成される結合情報100が形成されており、上述した印刷部分情報300を基材30上に形成された印刷層70として備え、ホログラム部分情報400をホログラム形成層40側に形成されたレリーフ層として備えている。結合情報100は、例えば当該冊子体900の真正性を証明するためのコードまたは当該冊子体900の所有者を特定するためのコードであってもよい。また、結合情報100または検証情報209と、同一情報または一義的に関連付けられる関連情報となる情報が、ページ940が備えるICチップのメモリに記憶されていてもよい。
【0167】
(c)冊子体の製造方法
次に、セキュリティ印刷物10を備えた冊子体900の製造方法について簡単に説明する。まず、冊子910の構成部材となる、表紙920、裏表紙930、およびこれらの間に挟まれる1枚または複数枚で構成されるページ940のそれぞれを準備する。すなわち、各部材には必要な印刷や加工を行い、ページ940の少なくとも一部には、ICチップおよびアンテナを設けてもよい。次に、これらの各構成部材を丁合して所定の一辺に沿って綴じ部材により綴じてひとつの冊子910を形成する。その後、冊子910の特定のページ940を開いて、当該ページ940にセキュリティ印刷物10を貼り付け、検証情報209を構成する印刷層またはレーザ印字部を形成し、ICチップのメモリに必要な情報の書き込みを行うことにより、冊子体900が完成する。
【0168】
なお、本実施形態の製造工程において、ページ940の丁合工程の前にセキュリティ印刷物10の貼り付けや検証情報209を構成する印刷層またはレーザ印字部の形成をしてもよく、各工程の順番は任意に決められる。
【0169】
(d)冊子体の作用
冊子体900は、その冊子910に含まれるいずれかのページ940の一方の面上にセキュリティ印刷物10を備え、当該セキュリティ印刷物10には、結合情報100が、基材30およびホログラム形成層40の両方にまたがるように形成されている。このうち、ホログラム部分情報400はホログラム形成層40に形成され、印刷部分情報300は基材30に印刷層70として形成されている。また、ページ940の当該一方の面上であってセキュリティ印刷物10の配置領域ではない領域には、検証情報209が印刷層またはレーザ印字部として形成されている。
【0170】
その結果、冊子体900の特定のページ940の面上に形成されたセキュリティ印刷物10を、基材30およびホログラム形成層40の積層方向であって、少なくとも、基材30およびホログラム形成層40の両方が視認できる方向に対して所定角度傾いた方向から見たとき、結合情報100を明確に視認することができる。さらに、結合情報100、および、当該面上に同じく形成された検証情報209を比較し、相互に同一情報であること、または相互に関連情報であることを確認することにより、セキュリティ印刷物10の真贋も含めた冊子体900の真贋が容易に判定できる。
【0171】
さらに、冊子体900において、結合情報100または検証情報209と、同一情報または一義的に関連付けられる関連情報となる情報が、ICチップのメモリに記憶されている場合には、上記の結合情報100および検証情報209の比較照合に加え、リーダライターによるICチップからのメモリ情報の読み出しによる、読み出し情報との比較照合を行ってもよい。すなわち、読み出し情報と結合情報100または検証情報209との比較照合を行うことで、結合情報100や検証情報209の改ざんの有無だけでなく、ICチップの改ざんの有無も判断できるようになり、一層精度の高い真贋判定が可能となるとともに偽造を困難にする。なお、本実施形態についても、第10実施形態で説明したとおり、第1実施形態のセキュリティ印刷物10に代えて他の実施形態のセキュリティ印刷物および検証情報の態様が適用可能である。
【符号の説明】
【0172】
10、11、11A、11B、12、13、14、16、17 セキュリティ印刷物
30 基材
31 (レーザ発色)基材
40 ホログラム形成層
41 樹脂層
42 光反射層
43 接着層
50 粘着層
60 剥離台紙
70、71 印刷層
80、81 レーザ印字部
100、102、103、104、105、106、107、108、109 結合情報
200、201、202、203、204、205、206、207、208、209 検証情報
300、302、303、304、305、306、307、308、309 印刷部分情報
310、313、314、315、316 第1印刷部分情報
320、323、324、325、326 第2印刷部分情報
400、402、403、404、405、406、407、408、409 ホログラム部分情報
506 印刷部分検証情報
606 ホログラム部分検証情報
700 レーザ照射
800 カード
810 カード基体
820、850 オーバーシート層
830、840 コア層
860 ICモジュール
861 外部接触端子
862 モールド部
863 凹部
864 接着剤
900 冊子体
910 冊子
920 表紙
930 裏表紙
940 ページ