(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20241016BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 300B
B60C11/12 C
(21)【出願番号】P 2020104754
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】野津 良司
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025987(JP,A)
【文献】特開2016-128272(JP,A)
【文献】特開2007-331656(JP,A)
【文献】特開2004-276861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、縦溝と横溝とにより、複数のブロックが形成されており、
前記複数のブロックは、踏面よりもタイヤ半径方向の内側かつ前記横溝の溝底よりもタイヤ半径方向の外側に位置する凹み部を有する凹み部付きブロックを少なくとも含み、
前記凹み部は、前記踏面の縁に形成された面取り部、前記踏面の縁にステップ状に凹む段差部、サイプのサイプ底が隆起した隆起部、及び、途切れ
溝からなり、
前記タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの接地面内において、前記凹み部の合計面積Arと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ar/At)が10%~20%であり、
前記トレッド部は、トレッドクラウン部とトレッドショルダー部とに区分され、
前記トレッドクラウン部は、タイヤ赤道を中心としてタイヤ軸方向の幅がトレッド幅の50%の領域であり、
前記接地面内において、
前記トレッドクラウン部の前記凹み部の合計面積Crと前記トレッドクラウン部の前記踏面の合計面積Ctとの比率(Cr/Ct)は、
前記トレッドショルダー部の前記凹み部の合計面積Srと前記トレッドショルダー部の前記踏面の合計面積Stとの比率(Sr/St)よりも大きい、
タイヤ。
【請求項2】
前記比率(Cr/Ct)は、15%~30%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記比率(Sr/St)は、6%~13%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、縦溝と横溝とにより、複数のブロックが形成されており、
前記複数のブロックは、踏面よりもタイヤ半径方向の内側かつ前記横溝の溝底よりもタイヤ半径方向の外側に位置する凹み部を有する凹み部付きブロックを少なくとも含み、
前記凹み部は、前記踏面の縁に形成された面取り部、前記踏面の縁にステップ状に凹む段差部、サイプのサイプ底が隆起した隆起部、及び、途切れ
溝からなり、
前記タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの接地面内において、前記凹み部の合計面積Arと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ar/At)が10%~20%であり、
前記接地面内における、前記段差部の合計面積Aa、前記隆起部の合計面積Ab、及び、前記面取り部の合計面積Acは、下記式(1)を充足する、
タイヤ。
Aa>Ab>Ac…(1)
【請求項5】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、縦溝と横溝とにより、複数のブロックが形成されており、
前記複数のブロックは、踏面よりもタイヤ半径方向の内側かつ前記横溝の溝底よりもタイヤ半径方向の外側に位置する凹み部を有する凹み部付きブロックを少なくとも含み、
前記凹み部は、前記踏面の縁に形成された面取り部、前記踏面の縁にステップ状に凹む段差部、サイプのサイプ底が隆起した隆起部、及び、途切れ
溝からなり、
前記タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの接地面内において、前記凹み部の合計面積Arと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ar/At)が10%~20%であり、
前記接地面内において、前記隆起部の合計面積Abと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ab/At)は、3%以上である、
タイヤ。
【請求項6】
前記接地面内において、前記面取り部の合計面積Acと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ac/At)は、1%以上である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、主溝を介して第1ブロックと第2ブロックとが隣接して配置された空気入りタイヤが記載されている。前記主溝は、第1溝部と、前記第1溝部とタイヤ周方向に交互に配される第2溝部とを有している。前記第1ブロック及び前記第2ブロックは、それぞれ、その踏面と壁面との間のコーナ部を部分的に切り欠いた凹部を有している。このような空気入りタイヤは、ノイズ性能を維持しつつマッド性能を向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ノイズ性能を悪化させることなく、さらなるマッド性能の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ノイズ性能を悪化させることなく、マッド性能を向上し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、縦溝と横溝とにより、複数のブロックが形成されており、前記複数のブロックは、踏面よりもタイヤ半径方向の内側かつ前記横溝の溝底よりもタイヤ半径方向の外側に位置する凹み部を有する凹み部付きブロックを少なくとも含み、前記タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの接地面内において、前記凹み部の合計面積Arと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ar/At)が10%~20%である。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記接地面内において、トレッドクラウン部の前記凹み部の合計面積Crと前記トレッドクラウン部の前記踏面の合計面積Ctとの比率(Cr/Ct)は、トレッドショルダー部の前記凹み部の合計面積Srと前記トレッドショルダー部の前記踏面の合計面積Stとの比率(Sr/St)よりも大きい、のが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記比率(Cr/Ct)が、15%~30%である、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、前記比率(Sr/St)が、6%~13%である、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記凹み部が、前記踏面の縁に形成された面取り部を含む、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記凹み部が、前記踏面の縁に、ステップ状に凹む段差部を含む、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記凹み部付きブロックが、少なくとも1本のサイプが形成されており、前記サイプは、サイプ底が隆起した隆起部を含み、前記凹み部は、前記隆起部を含む、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、前記凹み部付きブロックが、少なくとも1本の途切れ溝が形成されており、前記凹み部は、前記途切れ溝を含む、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記凹み部が、前記踏面の縁に形成された面取り部と、前記踏面の縁に、ステップ状に凹む段差部とを含み、前記接地面内における、前記段差部の合計面積Aa、前記隆起部の合計面積Ab、及び、前記面取り部の合計面積Acは、下記式(1)を充足する、のが望ましい。
Aa>Ab>Ac…(1)
【0015】
本発明に係るタイヤは、前記接地面内において、前記隆起部の合計面積Abと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ab/At)は、3%以上である、のが望ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤは、前記接地面内において、前記面取り部の合計面積Acと前記複数のブロックの踏面の合計面積Atとの比率(Ac/At)が、1%以上である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記の構成を採用することで、ノイズ性能を悪化させることなく、マッド性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態のトレッド部の展開図である。
【
図3】(a)、(b)は、凹み部を説明するための模式的な凹み部付きブロックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図1には、好ましい態様として、四輪駆動用の乗用車用空気入りタイヤが示される。但し、本発明は、ライトトラック用や重荷重用等のタイヤ1にも適用し得る。また、本発明は、他のカテゴリーのタイヤ1にも適用し得る。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、縦溝3と横溝4とによって、複数のブロック5が形成されている。
【0021】
複数のブロック5は、踏面5aよりもタイヤ半径方向の内側かつ横溝4の溝底4sよりもタイヤ半径方向の外側に位置する凹み部10を有する凹み部付きブロック6を少なくとも含んでいる。このような凹み部10は、泥土や泥濘地などのマッド路面に対してせん断力を発揮する一方、乾燥アスファルト路面での走行時では、路面との間で空気を圧縮してポンピング音を生じさせる。
【0022】
そして、本実施形態では、正規荷重負荷状態の接地面2a内において、凹み部10の合計面積Arと複数のブロック5の踏面5aの合計面積Atとの比率(Ar/At)が、10%~20%とされている。比率(Ar/At)が10%以上であるので、マッド路面に対するせん断力が大きくなり、マッド性能を向上することができる。比率(Ar/At)が20%以下であるので、ポンピング音が大きくなることが抑制され、ノイズ性能が維持される。
図1には、正規荷重負荷状態の接地面2aの一例が斜線で示される。
【0023】
前記「正規荷重負荷状態」とは、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた状態である。前記「正規状態」とは、タイヤ1が、正規リム(図示省略)にリム組されかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。
【0024】
前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0025】
前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
正規荷重負荷状態において、接地面2aの最もタイヤ軸方向の両外側の接地位置がトレッド端Te、Teとして定められる。正規状態において、トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWとして定義される。特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0027】
縦溝3とは、溝幅の最小値が4mm以上であり、かつ、タイヤ周方向に対する角度が45度以下で延びる溝をいう。また、横溝4とは、溝幅の最小値が4mm以上であり、かつ、タイヤ周方向に対する角度45度を超えて延びる溝をいう。また、本明細書では、前記「溝」とは、溝幅が2mm以上の溝状体であり、後述される幅が2mm未満の切込み状のサイプとは区別される。
【0028】
トレッド部2は、トレッドクラウン部2cとトレッドショルダー部2sとに区分される。トレッドクラウン部2cは、本実施形態では、タイヤ赤道Cを中心としてタイヤ軸方向の幅Laがトレッド幅TWの45%~55%の領域である。トレッドショルダー部2sは、本実施形態では、トレッドクラウン部2cのタイヤ軸方向の両外側に配され、かつ、トレッドクラウン部2cに隣接している領域である。
【0029】
トレッドクラウン部2cは、トレッドショルダー部2sに比して、直進走行時、大きな接地圧が作用する。このため、トレッドクラウン部2cに凹み部10を大きく設けることで、マッド路面に対して効果的にせん断力を発揮することができる。また、トレッドショルダー部2sで生じたポンピング音は、トレッドクラウン部2cで生じたポンピング音よりもノイズ性能に影響を与えると考えられる。このため、正規荷重負荷状態の接地面2a内において、トレッドクラウン部2cの凹み部比率(Cr/Ct)は、トレッドショルダー部2sの凹み部比率(Sr/St)よりも大きいのが望ましい。凹み部比率(Cr/Ct)は、トレッドクラウン部2cの凹み部10の合計面積Crとトレッドクラウン部2cのブロック5の踏面5aの合計面積Ctとの比率である。凹み部比率(Sr/St)は、トレッドショルダー部2sの凹み部10の合計面積Srとトレッドショルダー部2sのブロック5の踏面5aの合計面積Stとの比率である。
【0030】
上述のような作用を効果的に発揮させるために、トレッドクラウン部2cの凹み部比率(Cr/Ct)は、好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは22%以上であり、好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは26%以下である。また、トレッドショルダー部2sの凹み部比率(Sr/St)は、好ましくは6%以上であり、さらに好ましくは10%以上であり、好ましくは13%以下であり、さらに好ましくは12%以下である。
【0031】
図2は、トレッド部2の展開図である。
図2に示されるように、縦溝3は、本実施形態では、一対のクラウン縦溝3Aと、各クラウン縦溝3Aのタイヤ軸方向の外側に配される一対のショルダー縦溝3Bとを含んでいる。クラウン縦溝3A及びショルダー縦溝3Bは、本実施形態では、タイヤ周方向に連続してジグザグ状に延びている。なお、縦溝3は、このような態様に限定されるものではない。
【0032】
横溝4は、本実施形態では、クラウン横溝4Aと、ミドル横溝4Bと、ショルダー横溝4Cとを含んでいる。
【0033】
本実施形態のクラウン横溝4Aは、一対のクラウン縦溝3A、3Aを継いで延びている。クラウン横溝4Aは、例えば、第1クラウン横溝7aと、第1クラウン横溝7aよりもタイヤ周方向に対して大きな角度で傾斜する第2クラウン横溝7bとを含んでいる。第1クラウン横溝7aと第2クラウン横溝7bとは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0034】
本実施形態のミドル横溝4Bは、クラウン縦溝3Aとショルダー縦溝3Bとを継いで延びている。ミドル横溝4Bは、例えば、第1ミドル横溝8aと、第1ミドル横溝8aよりもタイヤ周方向に対して大きな角度で傾斜する第2ミドル横溝8bとを含んでいる。第1ミドル横溝8aと第2ミドル横溝8bとは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0035】
本実施形態のショルダー横溝4Cは、ショルダー縦溝3Bとトレッド端Teとを継いで延びている。ショルダー横溝4Cは、例えば、第1ショルダー横溝9aと、第1ショルダー横溝9aよりもタイヤ軸方向の長さが大きい第2ショルダー横溝9bとを含んでいる。第1ショルダー横溝9aと第2ショルダー横溝9bとは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0036】
第1クラウン横溝7a、第1ミドル横溝8a及びショルダー横溝4Cは、本実施形態では、溝底が隆起した溝底隆起部kを含んでいる。
【0037】
これにより、トレッド部2のブロック5は、クラウンブロック5Aと、ミドルブロック5Bと、ショルダーブロック5Cとをそれぞれ複数含んでいる。クラウンブロック5Aは、一対のクラウン縦溝3Aと第1クラウン横溝7aと第2クラウン横溝7bとによって区分される。ミドルブロック5Bは、クラウン縦溝3Aとショルダー縦溝3Bと第1ミドル横溝8aと第2ミドル横溝8bとによって区分される。ショルダーブロック5Cは、ショルダー縦溝3Bとトレッド端Teと第1ショルダー横溝9aと第2ショルダー横溝9bとによって区分される。
【0038】
図3(a)は、本実施形態の凹み部10を説明するための模式的な凹み部付きブロック6の断面図である。
図3(a)に示されるように、凹み部付きブロック6は、踏面6aと、踏面6aよりもタイヤ半径方向の内側に形成され、かつ、縦溝3(
図2に示す)又は横溝4の溝底4sから延びる壁面6bとを含んでいる。
【0039】
凹み部10は、本実施形態では、面取り部11、段差部12、隆起部(
図3(b)に示す)13及び途切れ溝(
図2に示す)14を含んでいる。
【0040】
本実施形態の面取り部11は、踏面6aの縁に形成されている。面取り部11は、例えば、踏面6aと壁面6bとの間のコーナ部に、壁面6bよりもタイヤ半径方向に対して緩やかに傾斜する面として形成される。面取り部11は、本実施形態では、踏面6aからタイヤ半径方向の内側に向かって延びている。面取り部11のタイヤ半径方向の高さh1は、この面取り部11が隣接する縦溝3又は横溝4の溝深さhaの15%~40%であるのが望ましい。
【0041】
本実施形態の段差部12は、踏面6aの縁に、ステップ状に凹むように形成される。段差部12は、例えば、タイヤ半径方向の内外に延びる少なくとも1つの半径方向面12aと、半径方向面12aに連なりかつ踏面6aに沿って延びる少なくとも1つの外向面12bとを含んで形成される。この実施形態では、半径方向面12aは、踏面6aに連なっている。段差部12の最もタイヤ半径方向の外側に位置する外向面12bと踏面6aとの間のタイヤ半径方向の高さh2は、例えば、この段差部12が隣接する縦溝3又は横溝4の溝深さhaの25%~35%であるのが望ましい。
【0042】
図3(b)は、本実施形態の凹み部10を説明するための模式的な他の凹み部付きブロック6の断面図である。
図3(b)に示されるように、本実施形態の凹み部付きブロック6は、サイプ15が設けられている。サイプ15は、例えば、その一端が踏面6a内で終端し、他端が横溝4に連なっている。このようなサイプ15は、ブロック5の剛性の低下を抑制する。なお、サイプ15は、このような態様に限定されるものではなく、サイプ15の両端が縦溝3又は横溝4に連通するものでもよいし、サイプ15の両端が踏面6a内で終端するものでもよい。
【0043】
本実施形態の隆起部13は、サイプ15のサイプ底15sが隆起した部分である。このような隆起部13は、接地時にサイプ15が大きく開くことを抑制して、泥濘地よりも固い硬い泥土に対する引っ掻き力を高めるのに役立つ。隆起部13の高さh3は、サイプ15の深さdaの30%~60%であるのが望ましい。
【0044】
また、本実施形態の隆起部13は、隙間16を介して複数設けられている。隆起部13は、本実施形態では、1つのサイプ15に2つ設けられている。各隆起部13の長さL3の合計(ΣL3)は、サイプ15の長さLbの40%~80%であるのが望ましい。
【0045】
図2に示されるように、本実施形態の途切れ溝14は、縦溝3又は横溝4から延びて凹み部付きブロック6内で終端する溝である。このような途切れ溝14も、泥濘地に対するせん断力を高める。途切れ溝14は、例えば、その内端14iから縦溝3又は横溝4に向かって溝幅が徐々に大きくなる拡大部14aを含んでいる。このような拡大部14aは、その内部に溜まった泥土をスムーズに縦溝3又は横溝4に排出し得る。
【0046】
図1に示されるように、正規荷重負荷状態の接地面2a内において、段差部12の合計面積Aa、隆起部13の合計面積Ab、及び、面取り部11の合計面積Acは、下記式(1)を充足するのが望ましい。
Aa>Ab>Ac…(1)
段差部12は、隆起部13に比して、泥濘地に対して大きなせん断力を発揮する。また、隆起部13は、面取り部11に比して、泥土に対して大きな引掻き力を有する。このため、上記式(1)のように規定されると、マッド性能とノイズ性能とがバランス良く向上することができる。
【0047】
上述の作用をより効果的に発揮させるために、正規荷重負荷状態の接地面2a内において、隆起部13の合計面積Abと複数のブロック5の踏面5aの合計面積Atとの比率(Ab/At)は、3%以上であるのが望ましく、5%以上であるのがさらに望ましい。同様の観点より、面取り部11の合計面積Acと複数のブロック5の踏面5aの合計面積Atとの比率(Ac/At)は、1%以上であるのが望ましく、2.5%以上であるのがさらに望ましい。また、比率(Ab/At)は、11%以下であるのが望ましく、9%以下であるのがさらに望ましい。同様に、比率(Ac/At)は、5%以下であるのが望ましく、3.5%以下であるのがさらに望ましい。
【0048】
図4は、
図2のトレッド部2の拡大図である。
図4に示されるように、本実施形態の凹み部付きブロック6は、クラウンブロック5A、ミドルブロック5B及びショルダーブロック5Cを構成している。なお、凹み部付きブロック6は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、クラウンブロック5Aのみを構成する態様でも良く、クラウンブロック5A及びミドルブロック5Bを構成しても良い。
【0049】
本実施形態のクラウンブロック5Aには、面取り部11と段差部12と隆起部13と途切れ溝14とが設けられている。クラウンブロック5Aの段差部12は、一対のクラウン縦溝3Aのそれぞれに隣接する一対の縦溝段差部12Aと、第2クラウン横溝7bに隣接する横溝段差部12Bとを含んでいる。本実施形態の縦溝段差部12Aは、それぞれ、1つの外向面12bを有している。本実施形態の横溝段差部12Bは、タイヤ半径方向の位置が異なる2つの外向面12bを有している。
【0050】
クラウンブロック5Aの隆起部13は、一対のクラウン縦溝3Aに連通する1本のサイプ15に2つ設けられている。クラウンブロック5Aの途切れ溝14は、一方のクラウン縦溝3Aに連通するように設けられている。クラウンブロック5Aの面取り部11は、途切れ溝14とクラウン縦溝3Aとに連なるように設けられている。
【0051】
本実施形態のミドルブロック5Bは、段差部12と隆起部13とが設けられた第1ミドルブロック17Aと、段差部12と隆起部13と途切れ溝14とが設けられた第2ミドルブロック17Bとを含んでいる。第1ミドルブロック17Aと第2ミドルブロック17Bとは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0052】
第1ミドルブロック17Aの段差部12は、第1ミドル横溝8aに隣接するミドル第1段差部12Cと、第2ミドル横溝8bに隣接するミドル第2段差部12Dとを含んでいる。ミドル第1段差部12Cは、1つの外向面12bを有している。ミドル第2段差部12Dは、タイヤ半径方向の位置が異なる2つの外向面12bを有している。第1ミドルブロック17Aの隆起部13は、第1ミドルブロック17Aに設けられた2本のサイプ15、15のそれぞれに2つずつ配されている。
【0053】
図5は、
図2のトレッド部2の拡大図である。
図5に示されるように、第2ミドルブロック17Bの段差部12は、例えば、ミドル第3段差部12Eと、ミドル第4段差部12Fと、ミドル第5段差部12Gとを含んでいる。
【0054】
本実施形態のミドル第3段差部12Eは、第1ミドル横溝8aに隣接している。ミドル第3段差部12Eは、例えば、1つの外向面12bを有している。本実施形態のミドル第4段差部12Fは、ミドル第3段差部12Eとはタイヤ周方向の反対側に配されている。ミドル第4段差部12Fは、第2ミドル横溝8bに隣接する第1部分20aと、クラウン縦溝3Aに隣接する第2部分20bと、ショルダー縦溝3Bに隣接する第3部分20cとを含んでいる。第1部分20aないし第3部分20cは、それぞれ1つの外向面12bを有し、これら外向面12bが連なっている。本実施形態のミドル第5段差部12Gは、ショルダー縦溝3Bに隣接している。ミドル第5段差部12Gは、例えば、タイヤ半径方向の位置が異なる2つの外向面12bを有している。
【0055】
第2ミドルブロック17Bの隆起部13は、第2ミドルブロック17Bに設けられた2本のサイプ15、15のそれぞれに2つずつ配されている。第2ミドルブロック17Bの途切れ溝14は、ショルダー縦溝3Bに連通するように設けられている。第2ミドルブロック17Bの途切れ溝14は、ミドル第4段差部12Fの第3部分20cに連なっている。
【0056】
本実施形態のショルダーブロック5Cには、段差部12と隆起部13とが設けられている。ショルダーブロック5Cは、1つの段差部12が設けられた第1ショルダーブロック18Aと、2つの段差部12が設けられた第2ショルダーブロック18Bとを含んでいる。第1ショルダーブロック18Aと第2ショルダーブロック18Bとは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0057】
第1ショルダーブロック18Aの段差部12は、ショルダー縦溝3Bに隣接している。第1ショルダーブロック18Aの段差部12は、タイヤ半径方向の位置が異なる3つの外向面12bを有している。3つの外向面12bは、タイヤ周方向に並べられている。第1ショルダーブロック18Aの隆起部13は、第1ショルダーブロック18Aに設けられた2本のサイプ15、15のそれぞれに2つずつ配されている。
【0058】
第2ショルダーブロック18Bの段差部12は、ショルダー縦溝3Bに隣接するショルダー第1段差部12Hと、トレッド端Teに隣接するショルダー第2段差部12Iとを含んでいる。ショルダー第1段差部12Hは、タイヤ半径方向の位置が異なる3つの外向面12bを有している。3つの外向面12bは、タイヤ周方向に並べられている。ショルダー第2段差部12Iは、タイヤ半径方向の位置が異なる3つの外向面12bを有している。3つの外向面12bは、タイヤ軸方向に並べられている。
【0059】
第2ショルダーブロック18Bの隆起部13は、第2ショルダーブロック18Bに設けられた2本のサイプ15、15のそれぞれに2つずつ配されている。
【0060】
以上、本発明の特に好ましい形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0061】
図1の基本パターンを有するサイズ265/70R17の四輪駆動車用のタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤのマッド性能及びノイズ性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0062】
<マッド性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量5300ccの四輪駆動車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、マッド路面のテストコースでこの車両を走行させて、このときのトラクションや走行安定性、旋回性等に関する走行特性を官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
リム:17×8.0J(全輪)
内圧:410kPa(前輪)、520kPa(後輪)
La/TW:50%
【0063】
<ノイズ性能>
乾燥アスファルト路面のテストコースにおいて、上記テスト車両を60km/hの速度で走行させたときの車内騒音が測定された。結果は、騒音の大きさ(db)で判断され、比較例1の値を100とする指数で示されている。数値が小さい程、ノイズ性能に優れていることを示す。
テストの結果などが表1に示される。
【0064】
【0065】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、ノイズ性能が維持されつつマッド性能が向上していることが確認できた。
【0066】
1 タイヤ
2a 接地面
3 縦溝
4 横溝
4s 溝底
5 ブロック
5a 踏面
6 凹み部付きブロック
10 凹み部