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  • 特許-プラスチック射出成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】プラスチック射出成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20241016BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241016BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20241016BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/14
B32B27/00 H ZAB
B32B27/32 Z
B65D1/26 110
B65D65/02 E
C08L23/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020113883
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012219
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 広史
(72)【発明者】
【氏名】坂井 政俊
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227462(JP,A)
【文献】特開2019-182528(JP,A)
【文献】特開2001-026686(JP,A)
【文献】特開2017-193066(JP,A)
【文献】特開2009-227316(JP,A)
【文献】特開2019-014502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
B32B
B65D
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のプロピレン及びエチレンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリプロピレンと、を含んだ樹脂組成物からなり、側面の肉厚が0.5~0.9mmであり、側面でのヘイズ値が30%未満であるプラスチック射出成形品であって、
前記バイオマス由来のポリエチレンが、0.91~0.96g/cm3の密度と、15g/10min以上のメルトフローレート(190℃,2.16kgで押し出し)と、を有し、
前記化石燃料由来のポリプロピレンが、ブロックタイプのポリプロピレン樹脂であり、0.89~0.93g/cm3の密度と、30g/10min以上のメルトフローレート(JIS規格6921-2)と、を有し、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のポリエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5質量%~15質量%含むことを特徴とするプラスチック射出成形品。
【請求項2】
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のプロピレン及びエチレンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリプロピレンと、を含んだ樹脂組成物からなり、側面の肉厚が0.5~0.9mmであり、側面でのヘイズ値が30%未満であるプラスチック射出成形品であって、
前記バイオマス由来のポリエチレンが、0.91~0.96g/cm3の密度と、15g/10min以上のメルトフローレート(190℃,2.16kgで押し出し)と、を有し、
前記化石燃料由来のポリプロピレンが、ランダムタイプのポリプロピレン樹脂であり、0.89~0.93g/cm3の密度と、30g/10min以上のメルトフローレート(JIS規格6921-2)と、を有し、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のポリエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5質量%~10質量%含むことを特徴とするプラスチック射出成形品。
【請求項3】
インモールドラベル成形によりラベルが一体化されていることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック射出成形品。
【請求項4】
カップ形状を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のプラスチック射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック射出成形品に関するものであり、例えば、バイオマス由来のポリエチレンを含んだ樹脂組成物からなるプラスチック射出成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用すると再度二酸化炭素と水になることから、バイオマスエネルギーはカーボンニュートラルな再生可能エネルギーと言える。昨今、バイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0003】
バイオマス由来の樹脂としては、乳酸発酵を経由して製造されるポリ乳酸(PLA)が知られており、先行して商業生産が始まっている。しかし、生分解性であることをはじめ、プラスチックとしての性能が現在の汎用プラスチックとは大きく異なるため、製品用途や製品製造方法に限界があり広く普及するには至っていない。また、PLAに対しては、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価が行われており、PLA製造時の消費エネルギー及び汎用プラスチック代替時の等価性等について議論がなされている。
【0004】
汎用プラスチックとしては、ポリエチレン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン,ABS樹脂等、様々な種類のものが知られている。特にポリエチレンは、フィルム,シート,ボトル,カップ等に成形され、包装材料等の種々の用途に供されており、世界中での使用量も多い。したがって、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きいため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。こういった観点から、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレン等を再生可能な天然原料から製造する技術が、特許文献1等で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2011-506628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラスチック成形の多くには射出成形が採用されている。しかし、バイオマス由来のポリエチレンを含んだ樹脂組成物を用いて射出成形を行った場合、濃淡ムラのない高い透明性を有する射出成形品を製造することは容易でない。例えば、樹脂組成物の流動性が低いため薄肉の成形が困難であったり、濃淡ムラが生じて透明性が低下したりする。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、濃淡ムラのない高い透明性を有するとともに製造容易で環境負荷の小さいプラスチック射出成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明のプラスチック射出成形品は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のプロピレン及びエチレンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリプロピレンと、を含んだ樹脂組成物からなるプラスチック射出成形品であって、
前記バイオマス由来のポリエチレンが、0.91~0.96g/cm3の密度と、15g/10min以上のメルトフローレートと、を有し、
前記化石燃料由来のポリプロピレンが、0.89~0.93g/cm3の密度と、30g/10min以上のメルトフローレートと、を有し、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のポリエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5質量%以上含むことを特徴とする。
【0009】
第2の発明のプラスチック射出成形品は、上記第1の発明において、前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のポリエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5~30質量%含むことを特徴とする。
【0010】
第3の発明のプラスチック射出成形品は、上記第1の発明において、側面の肉厚が0.5~0.9mmであり、側面でのヘイズ値が30%未満であるプラスチック射出成形品であって、
前記化石燃料由来のポリプロピレンが、透明性を有するブロックタイプのポリプロピレン樹脂であり、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のポリエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5~15質量%含むことを特徴とする。
【0011】
第4の発明のプラスチック射出成形品は、上記第1の発明において、側面の肉厚が0.5~0.9mmであり、側面でのヘイズ値が30%未満であるプラスチック射出成形品であって、
前記化石燃料由来のポリプロピレンが、透明性を有するランダムタイプのポリプロピレン樹脂であり、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のポリエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5~10質量%含むことを特徴とする。
【0012】
第5の発明のプラスチック射出成形品は、上記第1~第4のいずれか1つの発明において、インモールドラベル成形によりラベルが一体化されていることを特徴とする。
【0013】
第6の発明のプラスチック射出成形品は、上記第1~第5のいずれか1つの発明において、カップ形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラスチック射出成形品を構成する樹脂組成物が、バイオマス由来のポリエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含む構成になっているため、カーボンニュートラルなプラスチック射出成形品を実現することができる。つまり、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。さらに、バイオマス由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリプロピレンとが、それぞれ適正な密度とメルトフローレートを有する構成になっているため、射出成形品に濃淡ムラのない高い透明性を有しながら、射出成形品の容易な製造が可能である。例えば肉厚の薄いカップであっても、樹脂組成物の高い流動性によって容易に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】プラスチック射出成形品の一実施の形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るプラスチック射出成形品等を、図面を参照しつつ説明する。図1に、一実施の形態に係るプラスチック射出成形品10の概略構造を模式的に示す。図1において、(A)はプラスチック射出成形品10を示す平面図であり、(B)はプラスチック射出成形品10を部分的に断面で示す正面図である。
【0017】
プラスチック射出成形品10は、図1に示すようにカップ形状を有しており、好ましい側面の肉厚dは0.5~0.9mmであり、好ましい側面でのヘイズ値は30%未満である。ここでは、側面の肉厚d=0.7mm、カップの高さh=100mmのサイズを有し、インモールドラベル成形によりラベルが一体化されたものを想定しているが、成形体サイズ,射出成形方式等はこれらに限らない。
【0018】
なお、インモールドラベル成形とは、射出成形時にラベルを金型に挿入して、成形と同時にラベリングする技術である。ラベルには、グラビア印刷等で美麗な印刷が施されたり、バリア性を有するフィルムが積層されたりする。そのラベリングによって、射出成形容器に意匠及び機能(バリア性)が付与される。それに対して、一般的な射出成形品への絵付けでは、射出成形後に直接印刷(ドライオフセット印刷),シュリンク加工等の2次加工が必要になる。
【0019】
プラスチック射出成形品10は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン(PE)と、化石燃料由来のプロピレン及びエチレンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリプロピレン(PP)と、を含んだ樹脂組成物からなっており、その樹脂組成物には、バイオマス由来のポリエチレンが樹脂組成物全体に対して5質量%以上含まれている。このようにバイオマス由来のポリエチレンを5質量%以上含むことによって、カーボンニュートラルなプラスチック射出成形品を実現することができる。つまり、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0020】
射出成形を行うには、樹脂の密度とメルトフローレート(MFR)を適正に設定する必要がある。つまり、射出成形を行う上で、バイオマス由来のポリエチレンは、0.91~0.96g/cm3の密度と、15g/10min以上のメルトフローレートと、を有することが好ましく、また、化石燃料由来のポリプロピレンは、0.89~0.93g/cm3の密度と、30g/10min以上のメルトフローレートと、を有することが好ましい。これらの密度範囲は、適度な成形体強度と透明性が得られ、かつ、容易に入手可能なバイオマス由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリプロピレンを網羅しており、これらのMFR範囲は、射出成形に適した流動性の範囲を示している。
【0021】
バイオマス由来のポリエチレンのメルトフローレートが15g/10min未満の場合、樹脂組成物の流動性が悪くなって、薄肉容器(カップ等)の成形が困難になる。主要材料である化石燃料由来のポリプロピレンのメルトフローレートが30g/10min未満の場合も同様であり、薄肉容器(カップ等)の成形が困難になる。このように、バイオマス由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリプロピレンを、それぞれ適正な密度とメルトフローレートを有する構成にすることによって、射出成形品に濃淡ムラのない高い透明性を有しながら、射出成形品の製造を容易にすることが可能になる。例えば肉厚の薄いカップであっても、樹脂組成物の高い流動性によって容易に製造することが可能である。
【0022】
バイオマス由来のポリエチレンは、化石燃料由来のポリプロピレンと比較して樹脂の流動性が悪い。例えば、プラスチック射出成形品10のサイズが、側面の肉厚d=0.5mm,カップの高さh=100mmの場合、バイオマス由来のポリエチレンを樹脂組成物全体に対して30質量%を超えて添加すると、カップのフランジまで樹脂が流れず成形不良になるおそれがある。しかも、側面でのヘイズ値が30%以上になった場合、成形品の中身を見せたい用途に使用することが困難になる。そのため、樹脂組成物全体に対するバイオマス由来のポリエチレンの添加量は、30質量%以下であることが望ましい。つまり、樹脂組成物が、バイオマス由来のポリエチレンを樹脂組成物全体に対して5~30質量%含むことが望ましい。
【0023】
透明なプラスチック射出成形品を得る場合、一般的にはランダムタイプのポリプロピレン樹脂が用いられるが、ランダムタイプのポリプロピレン樹脂にバイオマス由来のポリエチレンを添加すると、ランダム結合が阻害されて透明性が著しく低下する。それに対して、透明性を有するブロックタイプのポリプロピレンでは、ブロック結合部にポリエチレンが入り込むことで透明性の低下が抑えられるため、ランダムタイプのポリプロピレン樹脂よりも透明なプラスチック射出成形品が得られる。したがって、成形品の中身を見せたい用途では、透明性を有するブロックタイプのポリプロピレン樹脂とのブレンドが望ましい。
【0024】
上記のように、用いる化石燃料由来のポリプロピレンのタイプ(ブロックタイプ,ランダムタイプ)に応じて透明性(ヘイズ値)が異なることから、バイオマス由来のポリエチレンの含有量を化石燃料由来のポリプロピレンのタイプに応じた設定にすることが、透明性の観点から好ましい。また、一般的な射出成形品(カップ形状の容器等)では、強度と成形性とのバランスから側面の肉厚dを0.5~0.9mmとするのが好ましく、チルド飲料用カップやデザート用カップ等の射出成形品を想定した場合、その中身が見えるように(内容物の視認性を確保)するため、側面でのヘイズ値を30%未満とするのが好ましい。
【0025】
したがって、側面の肉厚dが0.5~0.9mmであり、側面でのヘイズ値が30%未満であるプラスチック射出成形品にあっては、化石燃料由来のポリプロピレンが、透明性を有するブロックタイプのポリプロピレン樹脂である場合、樹脂組成物がバイオマス由来のポリエチレンを樹脂組成物全体に対して5~15質量%含むことが好ましく、化石燃料由来のポリプロピレンが、透明性を有するランダムタイプのポリプロピレン樹脂である場合、樹脂組成物がバイオマス由来のポリエチレンを樹脂組成物全体に対して5~10質量%含むことが好ましい。
【0026】
バイオマス由来のポリエチレンの原料となるバイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。バイオマス由来のエタノールとしては、例えば、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールが挙げられ、植物原料としては、例えば、トウモロコシ,サトウキビ,ビート,マニオク等が挙げられる。バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料から得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物又はその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールである。培養液からのエタノールの精製には、蒸留,膜分離,抽出等の従来公知の方法を用いることができる。そして、触媒を用いた従来公知の方法によりエタノールの脱水反応を行うと、エチレン,水及び少量の未反応エタノールの混合部が得られ、その混合部から気液分離により水やエタノールを除くと、バイオマス由来のエチレンが得られる。バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法についても、従来公知の方法により行うことができる。
【0027】
バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。したがって、原料のモノマーはバイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。例えば、化石燃料由来のエチレンやα-オレフィンを更に含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンを更に含んでもよい。α-オレフィンとしては、例えば炭素数3~20のものを用いることができ、製造等における観点から好ましいものとしては、ブチレン,ヘキセン及びオクテンが挙げられる。
【0028】
バイオマス由来のポリエチレンにおけるバイオマス由来のエチレン濃度(以下「バイオマス度」ともいう。)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量として測定することができる。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。例えば、バイオマス由来のポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioとして、式:Pbio(%)=PC14/105.5×100で算出することができる。
【0029】
ポリエチレンの原料として全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%となるため、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100%となる。樹脂組成物の一部にでもバイオマス由来のポリエチレンを用いれば、化石燃料の使用量が削減されるため、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100%である必要がない。ただし、通常のバイオマス由来のポリエチレンであれば、樹脂組成物全体に対して5質量%以上含むようにすると化石燃料の使用量の削減効果が顕著になるため、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【実施例
【0030】
以下、本発明を実施したプラスチック射出成形品等を、実施例及び比較例を挙げて更に具体的に説明する。表1に、比較例1,2と実施例1~10(側面の肉厚d=0.7mm,カップの高さh=100mm)について、化石燃料由来のポリプロピレン(PP)の具体名、バイオマス由来のポリエチレン(PE)の具体名、各樹脂のブレンド比(PP/PE)、側面でのヘイズ値(%)及び外観を示す。また表2に、比較例1,2と実施例1~10について、成形条件と成形性・条件変更を示す。なお、比較例1,2は、バイオマス由来のポリエチレンが無添加(PP/PE=100/0)であるため、環境負荷の大きい例である。
【0031】
化石燃料由来のポリプロピレンとして、サンアロマー(株)社製、商品名:CMA70V(透明ブロックPP,密度:0.90g/cm3,MFR:50g/10min(JIS規格6921-2))と、日本ポリプロ(株)社製、商品名:MG05ES(ランダムPP,密度:0.90g/cm3,MFR:45g/10min(JIS規格6921-2))と、を用いた。
【0032】
バイオマス由来のポリエチレンとして、Braskem社製、商品名:SHA7260(密度:0.955g/cm3,MFR20g/10min(190℃,2.16kgで押し出し),バイオマス度:94%)を用いた。なお、バイオマス度とは、前述したように放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量の値である。
【0033】
表1中の「外観」では、○:濃淡ムラが無く透明である、△:部分的にムラが見える、×:透明・不透明の濃淡ムラが全体に見える、と評価した。表2中、「成形性」では成形できなかったもののみを示し、「条件変更」では比較例1,2の保圧力等を基準として示した。樹脂の流動性を良くする場合、樹脂温度を上げて対応するのが一般的であるが、ポリエチレンを添加した場合、樹脂温度を210℃以上にすると、ポリエチレンが焼けて炭化異物が発生するため、保圧力と保圧切替位置を変更し、金型に樹脂を押し込んだ条件で対応した。なお、インモールドラベル成形の採用は評価結果に影響しない。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【符号の説明】
【0036】
10 プラスチック射出成形品
図1