IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ボール用水性接着剤 図1
  • 特許-ボール用水性接着剤 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ボール用水性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 107/02 20060101AFI20241016BHJP
   A63B 45/00 20060101ALI20241016BHJP
   C09J 121/02 20060101ALI20241016BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241016BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C09J107/02
A63B45/00 C
C09J121/02
C09J11/04
C09J11/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020114554
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012608
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 悠子
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 順則
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡明
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文哉
(72)【発明者】
【氏名】三村 耕平
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080726(JP,A)
【文献】特開2000-309766(JP,A)
【文献】特開平09-249863(JP,A)
【文献】特開2020-059838(JP,A)
【文献】特開2007-000167(JP,A)
【文献】特開昭58-098372(JP,A)
【文献】特開昭60-099149(JP,A)
【文献】特開2008-195783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10;9/00-201/10
A63B37/00-47/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールのうち、加硫剤、加硫促進剤及び無機充填剤を含むゴム組成物から形成された部分に適用する水性接着剤であって、
ゴムラテックスを主成分として含んでおり、かつ、無機充填剤の含有量が、固形分換算で0.1質量%以下であり、
スルフェンアミド系加硫促進剤をさらに含み、このスルフェンアミド系加硫促進剤の量が、固形分換算で、0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
硫黄含有量が、固形分換算で、0.5質量%以上18.0質量%以下であり、
ブルックフィールド型回転粘度計を用いて23±1℃で測定される粘度が、20cps以上20,000cps以下である、ボール用水性接着剤。
【請求項2】
上記ゴムラテックスが、天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスである、請求項1に記載の水性接着剤。
【請求項3】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤が、一般式R-S-N(-R)-Rで示される化合物であり、このR、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数3~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルフェニル基、含窒素複素環基、含硫黄複素環基又は含窒素及び硫黄複素環基である、請求項1又は2に記載の水性接着剤。
【請求項4】
上記無機充填剤が、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、マイカ、水酸化マグネシウム、ケイソウ土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、硫酸バリウム、タルク、炭酸マグネシウム及びアルミナからなる群から選択される1又は2以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の水性接着剤。
【請求項5】
pHが7.0以上12.0以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の水性接着剤。
【請求項6】
水に分散剤を添加して分散媒を調製する工程と、
ゴムラテックスに配合するための添加剤を、上記分散媒に投入して混合した後、そのpHを8.0以上12.0以下に調整して、この添加剤のスラリーを得る工程と、
上記工程で得た添加剤のスラリーを、上記ゴムラテックスに添加して混合する工程と、を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の水性接着剤の製造方法。
【請求項7】
加硫剤、加硫促進剤及び無機充填剤を含むゴム組成物が架橋されてなる中空のコアを備えており、
上記コアが、2つの半球状のハーフコアからなり、
上記2つのハーフコアが、請求項1から5のいずれか1項に記載の水性接着剤を用いて貼り合わせられている、ボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性接着剤に関する。詳細には、本発明は、ボールの製造に用いる水性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のスポーツやトレーニングにおいて、その内部に気体が充填された中空ボールが広く用いられている。このような中空ボールの一つとして、テニスボールが挙げられる。テニスボールは、中空のコアを備えている。このコアの外周面は、2枚のダンベル状のメルトン(フェルト)で被覆されている。コアの外周面へのメルトンの接着には、接着剤が用いられる。
【0003】
通常、中空のコアは、2つの半球状のハーフコアを貼り合わせることにより形成される。この2つのハーフコアの貼り合わせにも、接着剤が用いられる。各ハーフコアは、ゴム組成物を架橋することにより形成される。ハーフコアをなすゴム組成物との親和性及び接着強度の観点から、2つのハーフコアの貼り合わせには、従来、ゴム成分、加硫剤、加硫促進剤等を有機溶剤に溶解した溶剤系接着剤が使用されている。
【0004】
近年、環境に対する影響及び作業者の負担軽減の観点から、溶剤系接着剤に代わる水性接着剤が検討されている。例えば、特開昭57-179265号公報及び特開昭57-179266号公報には、解重合処理した天然ゴムラテックス又は合成ゴムラテックスを基材とするメルトンシーム用接着剤が開示されている。特開昭58-98372号公報では、ゴムラテックスに高温分解型加硫剤を配合したメルトンダンベル用接着剤が提案されている。
【0005】
特開2007-167号公報には、コアとフェルト部との間に介在する接着層を、ポリアクリル酸金属塩を含む水系組成物を用いて形成するテニスボールの製造方法が開示されている。特開2000-309766号公報では、天然ゴムラテックスにチウラム促進剤及びスルフェンイミド促進剤を配合したテニスボールカバー用接着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭57-179265号公報
【文献】特開昭57-179266号公報
【文献】特開昭58-98372号公報
【文献】特開2007-167号公報
【文献】特開2000-309766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
テニス等のプレーでは、ボールは繰り返し打撃される。ハーフコアの貼り合わせに用いた接着剤の接着強度が弱い場合、繰り返し打撃による破損が生じるおそれがある。ハーフコア同士の接着強度が弱いボールは、耐久性に劣る。耐久性に優れたボールの製造には、接着強度の高い水性接着剤が必要である。特許文献1-5では、いずれも、コアの外周面にメルトン(フェルト)を接着するための水性接着剤が提案されている。本発明者らの知見によると、特許文献1-5の水性接着剤は、中空ボールのコアに必要な接着強度を有するものではない。
【0008】
また、テニスでは、幅広いプレーヤーの志向に対応するため、よりソフトな打球感のボールが求められている。さらに、近年では、テニスから派生して、中空ボールを使用する新たなスポーツが、世界的におこなわれている。そのため、中空ボールの硬さについても、広いバリエーション展開が必要となっている。
【0009】
従来、ゴムラテックスを用いた接着剤の接着強度向上のために、充填剤、加硫剤等の添加剤を配合する技術が知られている。しかし、これら添加剤の配合に起因して、接着剤自身が増粘するため、流動性が低下するという問題がある。また、硬化後に、これら添加剤を含む接着剤層が硬くなりすぎるため、ボールの打球感が阻害される可能性がある。
【0010】
接着強度が高く、かつ、ボールの打球感を阻害しない水性接着剤は、未だ提案されていない。本発明の目的は、接着強度に優れたボール用水性接着剤の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
テニス等のプレーでは、反発性能の高いボールが有利である。反発性能向上の目的で、コア又はハーフコアのゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、無機充填剤等が配合されている。加硫剤及び加硫促進剤は、ゴム成分の加硫反応促進に寄与する。無機充填剤は、補強性向上に寄与する。無機充填剤のうち、酸化亜鉛等の金属酸化物は、加硫反応促進にも寄与しうる。本発明者らは、鋭意検討の結果、ハーフコア中の加硫反応促進成分が、ハーフコアに塗布した水性接着剤に移行しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
即ち、本発明に係るボール用水性接着剤は、ゴムラテックスを主成分として含んでおり、かつ、無機充填剤の含有量が、固形分換算で0.1質量%以下である。好ましくは、ゴムラテックスは、天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスである。
【0013】
好ましくは、この水性接着剤の硫黄含有量は、固形分換算で、0.5質量%以上18.0質量%以下である。
【0014】
好ましくは、この水性接着剤は、スルフェンアミド系加硫促進剤をさらに含んでいる。好ましくは、このスルフェンアミド系加硫促進剤は、一般式R-S-N(-R)-Rで示される化合物である。このR、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数3~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルフェニル基、含窒素複素環基、含硫黄複素環基又は含窒素及び硫黄複素環基である。好ましくは、このスルフェンアミド系加硫促進剤の量は、固形分換算で、0.01質量%以上5.0質量%以下である。
【0015】
好ましくは、この無機充填剤は、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、マイカ、水酸化マグネシウム、ケイソウ土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、硫酸バリウム、タルク、炭酸マグネシウム及びアルミナからなる群から選択される1又は2以上である。
【0016】
好ましくは、この水性接着剤の、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて23±1℃で測定される粘度は、20cps以上20,000cps以下である。好ましくは、この水性接着剤のpHは7.0以上12.0以下である。
【0017】
この水性接着剤の製造方法は、
(1)水に分散剤を添加して分散媒を調製する工程、
(2)ゴムラテックスに配合するための添加剤を、分散媒に投入して混合した後、そのpHを8.0以上12.0以下に調整して、この添加剤のスラリーを得る工程、
及び
(3)得られた添加剤のスラリーを、ゴムラテックスに添加して混合する工程
を含んでいる。
【0018】
本発明に係るボールは、加硫剤を含むゴム組成物が架橋されてなる中空のコアを備えている。このコアは、2つの半球状のハーフコアからなる。この2つのハーフコアは、前述したいずれかの水性接着剤を用いて貼り合わせられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る水性接着剤に含有される無機充填剤の量は0.1質量%以下である。この水性接着剤では、無機充填剤に起因する粘度増加が生じない。この水性接着剤は、流動性に優れるため、接着面に短時間で均一に塗布することができる。この水性接着剤によれば、接着面同士が十分に密着する。
【0020】
この水性接着剤を、ゴム組成物からなるハーフコアの貼り合わせに用いる場合、ハーフコア中の加硫反応促進成分が、塗布された水性接着剤に移行する。ハーフコアから移行した加硫反応促進成分により、水性接着剤の加硫反応が促進される。これにより、従来の無機充填剤を含む接着剤と同等の接着強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るボールの一部切り欠き断面図である。
図2図2の(a)及び(b)は、図1のボールのコアの形成工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に係るボール2が示されている。このボール2は、テニスボール2である。図示される通り、テニスボール2は、中空のコア4と、このコア4を被覆する2枚のフェルト部6と、この2枚のフェルト部6の間隙に位置するシーム部8とを有している。コア4の厚みは、通常、3mmから4mm程度である。コア4の内部には、圧縮ガスが充填されている。コア4の表面には、2枚のフェルト部6が接着剤により貼り付けられている。
【0024】
図2は、図1のテニスボール2が有するコア4の形成工程を説明するための断面図である。図2(a)に示される通り、このコア4の形成工程では、始めに、未加硫のゴム組成物を加熱及び加圧することにより、2つのハーフコア20が準備される。各ハーフコア20は、半球殻状であり、円環状のエッジ部21を有している。次に、各ハーフコア20のエッジ部21に、本発明に係る水性接着剤が塗布され、一方のハーフコア20に、塩化ナトリウム及び亜硝酸ナトリウムのタブレット並びに水が投入される。その後、図2(b)に示される通り、2つのハーフコア20が、互いのエッジ部21で貼り合わされる。この2つのハーフコア20からなる球体が、所定の金型に投入され、加熱及び加圧されることにより、中空のコア4が形成される。
【0025】
本発明に係る水性接着剤の主成分は、ゴムラテックスである。コア4の形成工程において、エッジ部21に塗布されたこの接着剤が加熱及び加圧されるとき、接着剤中の揮発成分(主として水分)が除去されるとともに、ゴムラテックスに由来するゴム成分の加硫反応が進行する。このゴム成分の加硫反応により接着剤が硬化して、2つのハーフコア20が接合されることにより、中空のコア4が形成される。
【0026】
本発明に係る水性接着剤が含有する無機充填剤は、固形分換算で、0.1質量%以下である。この水性接着剤の粘性は、低い。この水性接着剤は、エッジ部21に、短時間で均一に塗布されうる。さらに、この水性接着剤は、ハーフコア20同士が貼り合わせられた後、硬化するまでの間に、各エッジ部21に存在する微細な空隙に流入しうる。これにより、ハーフコア20同士の密着性が向上する。
【0027】
ハーフコア20をなすゴム組成物には、基材ゴムとともに、加硫剤、加硫促進剤、無機充填剤等が配合されている。通常、ハーフコア20の形成には、半加硫となる条件が採用される。従って、形成されたハーフコア20は、未反応の加硫剤等を含みうる。また、無機充填剤である酸化亜鉛等の金属酸化物は、加硫剤としても機能する。本発明者らの知見によると、コア4の形成工程において、ハーフコア20に含まれる未反応の加硫剤等加硫反応促進成分が、エッジ部21に塗布された水性接着剤に作用又は移行する。これにより、水性接着剤の加硫反応が促進され、硬化後の接着強度が向上する。本発明に係る水性接着剤によれば、無機充填剤を含まない、又は、固形分換算で0.1質量%以下という少ない量にも関わらず、所定量の充填剤を含む従来の接着剤と同等の接着強度が達成される。さらに、本発明に係る水性接着剤は、硬化後の硬さが適正である。この水性接着剤は、得られるボール2の打球感を阻害しない。この水性接着剤は、ソフトな打球感のボール2の製造に適している。
【0028】
流動性及び硬化後の硬さの観点から、この水性接着剤に含まれる無機充填剤の量は0.1質量%未満が好ましい。この無機充填剤の量は少ないほど好ましく、その下限値は特に限定されない。無機充填剤を含まない水性接着剤が特に好ましい。
【0029】
この水性接着剤が無機充填剤を含む場合、その種類は特に限定されない。好ましくは、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、マイカ、水酸化マグネシウム、ケイソウ土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、硫酸バリウム、タルク、炭酸マグネシウム及びアルミナからなる群から選択される1又は2以上である。酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス等の金属酸化物がより好ましく、酸化亜鉛が特に好ましい。
【0030】
本発明の効果が得られる限り、水性接着剤に含まれるゴムラテックスの種類は特に限定されない。本願明細書において、ゴムラテックスとは、ゴム成分が水又は水溶液に微粒子状に分散したエマルジョンを意味する。天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスが好適に用いられる。
【0031】
合成ゴムラテックス中の合成ゴムとしては、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム又はこれらの変性物が例示される。変性物の例としては、カルボキシル基、アミン基、水酸基等の官能基変性ゴムが挙げられる。接着強度の観点から、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム及びイソプレンゴムからなる群から選択される1又は2以上が好ましく、少なくとも天然ゴムラテックスを含んで選択される1又は2以上がより好ましく、天然ゴムラテックスが特に好ましい。流動性及び密着性の観点から、より好ましい天然ゴムラテックスは、解重合天然ゴムラテックスである。
【0032】
ゴムラテックスの固形分濃度は、後述する各種添加剤のスラリーとの混合性の観点から、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。接着強度の観点から、ゴムラテックスの固形分濃度は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。なお、ゴムラテックスの固形分濃度は、JIS K6387-2「ゴムラテックス-第2部:全固形分の求め方」に記載の方法に準拠して求められる。
【0033】
好ましくは、この水性接着剤は加硫促進剤を含む。好ましい加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤が挙げられる。スルフェンアミド系加硫促進剤は、ゴムの加硫反応において、初期には反応遅延剤として作用し、所定時間経過後には反応促進剤として作用する。スルフェンアミド系加硫促進剤は、ハーフコア20同士の接着初期における流動性の維持と、所定時間後の大きな硬化速度とに寄与しうる。
【0034】
スルフェンアミド系加硫促進剤の好適な一例は、一般式R-S-N(-R)-Rで示される化合物である。この一般式において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数3~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルフェニル基、含窒素複素環基、含硫黄複素環基又は含窒素及び硫黄複素環基である。
【0035】
このような化合物の具体例として、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等が挙げられる。N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド及びN-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドからなる群から選択される1又は2以上がより好ましい。
【0036】
水性接着剤に含まれるスルフェンアミド系加硫促進剤の量は、固形分換算で、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤の量は、固形分換算で、5.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。
【0037】
本発明の効果が阻害されない範囲で、この水性接着剤が、スルフェンアミド系加硫促進剤に代えて、又はスルフェンアミド系加硫促進剤とともに、他の加硫促進剤を含んでもよい。本発明の効果が顕著であることから、スルフェンアミド系加硫促進剤との併用が好ましい。併用しうる加硫促進剤としては、例えば、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、モルホリン系加硫促進剤、アルデヒド-アミン系加硫促進剤、アルデヒド-アンモニア系加硫促進剤、イミダゾリン系加硫促進剤、キサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。
【0038】
スルフェンアミド系加硫促進剤と他の加硫促進剤とを併用する場合、全加硫促進剤中、スルフェンアミド系加硫促進剤の割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0039】
この水性接着剤は、必要に応じて、加硫剤を含みうる。好適な加硫剤として、例えば、粉末硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄等の硫黄;モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の硫黄化合物が挙げられる。水性接着剤中の加硫剤の量は特に限定されないが、固形分換算で、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が特に好ましい。加硫剤の量は、固形分換算で、40.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下が特に好ましい。
【0040】
本発明の効果が阻害されない限り、水性接着剤が、さらに、加硫促進助剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤、着色剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0041】
水性接着剤に含まれる全固形分の濃度(固形分濃度)は特に限定されない。接着強度の観点から、その固形分濃度は、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましい。流動性の観点から、その固形分濃度は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0042】
好ましくは、この水性接着剤は硫黄を含んでいる。この硫黄は、単体としての硫黄であってもよく、硫黄化合物を構成する硫黄原子でもよい。この硫黄が、加硫剤又は加硫促進剤に由来するものであってもよい。水性接着剤に含まれる硫黄は、架橋構造の形成に寄与しうる。接着強度向上の観点から、水性接着剤中の硫黄含有量は、固形分換算で、0.5質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が特に好ましい。硫黄含有量は、18.0質量%以下が好ましく、10.0質量%がより好ましく、7.0質量%が特に好ましい。本願明細書において、水性接着剤中の硫黄含有量は、第17改正日本薬局方、一般試験法に記載の酸素フラスコ燃焼法に準じて測定される硫黄元素の量である。
【0043】
接着面への付着性の観点から、水性接着剤の粘度は、20cps以上が好ましく、50cps以上がより好ましく、100cps以上が特に好ましい。塗布性及び流動性の観点から、水性接着剤の粘度は、20,000cps以下が好ましく、10,000cps以下がより好ましく、6,000cps以下がさらに好ましく、2,000cps以下が特に好ましい。この水性接着剤の粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて、測定温度23±1℃で測定される。測定方法の詳細は、実施例にて後述する。
【0044】
ラテックスの安定性の観点から、水性接着剤のpHは、好ましくは7.0以上12.0以下、より好ましくは7.5以上11.5以下、特に好ましくは8.0上10.5以下に調整される。pHの測定方法は、実施例にて後述する。
【0045】
本発明に係る水性接着剤の製造方法は、
(1)水に分散剤を添加して分散媒を調整する工程、
(2)ゴムラテックスに配合するための添加剤を、この分散媒に投入して混合した後、そのpHを8.0以上12.0以下に調整することにより、この添加剤のスラリーを得る工程、
及び
(3)得られた添加剤のスラリーを、このゴムラテックスに添加して混合する工程、
を含んでいる。
【0046】
ゴムラテックスに配合する添加剤としては特に限定されず、加硫剤、加硫促進剤、無機充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤、着色剤等が適宜選択されて用いられる。2種以上の添加剤を併用してもよい。前述した通り、本発明に係る水性接着剤では、添加剤として無機充填剤を配合しなくてもよい。無機充填剤を配合する場合、その量が、固形分換算で、0.1質量%以下となるように調整される。
【0047】
分散媒は、添加剤のスラリーを作製するために用いられる。スラリー中での添加剤の分散安定性を向上させるために、分散剤が用いられる。分散剤の種類は特に限定されず、添加剤の種類及びスラリーの濃度に応じて、アニオン型、ノニオン型及びカチオン型の界面活性剤から適宜選択される。アニオン型界面活性剤としては、炭素数8~20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタレンスルホン酸ナトリウム-ホルムアルデヒド縮合物、ロジン酸のアルカリ金属塩等が例示される。ノニオン型界面活性剤の例としては、芳香族ポリグリコールエーテル、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート等が挙げられる。カチオン型界面活性剤としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド等が例示される。アニオン型又はノニオン型の界面活性剤が好ましい。2種以上の界面活性剤を併用してもよい。
【0048】
スラリーの安定性の観点から、分散媒中の分散剤の濃度は0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。得られる接着剤の接着強度の観点から、分散媒中の分散剤の濃度は20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0049】
ラテックスの分散安定性の観点から、好ましくは、この製造方法は、添加剤を添加する前に、予め、分散媒のpHを8.0以上12.0以下に調整する工程をさらに含んでいる。例えば、精製水に分散剤を溶解した後、所定のpHが得られるまでアンモニア水等を添加することにより分散媒を調製してもよい。
【0050】
この製造方法では、添加剤が所定の固形分濃度となるように分散媒に投入され、そのpHが8.0以上12.0以下に調整された後、ボールミル等で均一に混合されることにより、添加剤のスラリーが得られる。得られた添加剤のスラリーが、ゴムラテックスに添加されて均一に混合されることにより、本発明に係る水性接着剤が製造される。
【0051】
この製造方法において、2種以上の添加剤を配合する場合、各添加剤について、それぞれスラリーを作製した後、各スラリーを所定量ゴムラテックスに添加してもよく、2種以上の添加剤を所定の組成で含むスラリーを作製後、このスラリーをゴムラテックスに添加してもよい。この製造方法が、ゴムラテックスに各添加剤のスラリーを配合した後、水等の希釈剤を添加してその固形分濃度を調整する工程をさらに含んでもよい。
【0052】
以下、この実施形態におけるテニスボール2が備えるコア4(ハーフコア20)の好ましいゴム組成物の詳細について順次説明するが、コア4(ハーフコア20)のゴム組成物は、本発明の目的が達成される範囲内で変更されうる。
【0053】
コア4のゴム組成物の基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体及びアクリルゴムが例示される。より好ましい基材ゴムは、天然ゴム及びポリブタジエンである。基材ゴムとして、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
コア4のゴム組成物は、加硫剤及び加硫促進剤を含む。水性接着剤に関して前述された加硫剤及び加硫促進剤が適宜選択されて用いられ得る。加硫剤又は加硫促進剤として、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
コア4のゴム組成物における加硫剤及び加硫促進剤の量は、その種類に応じて適宜調整される。反発性能の観点から、加硫剤の量は、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。加硫剤の量は5.0質量部以下が好ましい。反発性能の観点から、加硫促進剤の量は、基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましい。加硫促進剤の量は、6.0質量部以下が好ましい。
【0056】
コア4のゴム組成物は、さらに充填剤を含みうる。好適な充填剤として、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物、タルク、カオリンクレー、グラファイト、グラフェン、ベントナイト、ハロサイト、モンモリロナイト、マイカ、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ノントロナイト、バーミキュライト、イライト、アロフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等が例示される。2種以上が併用されてもよい。
【0057】
コア4のゴム組成物における充填剤の量は、その種類によって適宜調整されるが、反発性能及び耐久性の観点から、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、その量は、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下が特に好ましい。
【0058】
本発明の効果を阻害しない範囲で、コア4のゴム組成物が、加硫助剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤、着色剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0059】
本発明の目的が達成される限り、このゴム組成物を製造する方法は、特に限定されない。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等既知の混練機に、基材ゴムと、適宜選択された添加剤とを投入して混練して得られる混練物を加熱及び加圧することにより、このゴム組成物が製造されてもよい。混練条件及び加硫条件は、ゴム組成物の配合により選択される。好ましい混練温度は50℃以上180℃以下である。好ましい加硫温度は、140℃以上180℃以下である。加硫時間は2分以上60分以下が好ましい。
【0060】
このゴム組成物を用いて得られるコア4を備えたテニスボール2を製造する方法も、特に限定されない。例えば、予めダンベル状に裁断され、その裏面に接着剤が塗布され、その断面にシーム糊が付着させられたフェルト部6を、コア4の表面に貼り合わせることにより、テニスボール2が得られる。フェルト部6を貼り合わせる前に、コア4の表面に接着剤が塗布されてもよい。フェルト部6の貼り合わせ及びシーム糊には、既知の接着剤が適宜選択されて用いられ得る。
【実施例
【0061】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0062】
[実施例1]
始めに、100質量部の精製水に、1.6質量部のナフタレンスルホン酸ナトリウム-ホルムアルデヒド縮合物(BASF社製の商品名「タモールNN9104」)及び0.6質量部の芳香族ポリグリコールエーテル(LANXCESS社製の商品名「エマルビンWA」)を溶解し、市販のアンモニア水(28質量%)でpH8.0以上12.0以下に調整することにより、分散媒を準備した。次に、イオウ(三新化学社製の商品名「サンフェルEX」)及び加硫促進剤CBS(三新化学社製の商品名「サンセラーCM」)のそれぞれに、前述の分散媒を添加し、ボールミルで8時間以上撹拌した後、前述のアンモニア水を用いてpH8.0以上12.0以下に調整することにより、イオウ(20%オイル含有)のスラリー(固形分濃度40質量%)及び加硫促進剤CBSのスラリー(固形分濃度20質量%)を得た。最後に、100質量部の天然ゴムラテックス(HYTEX-HA、固形分濃度60質量%)に、6質量部のイオウスラリー及び3質量部の加硫促進剤CBSのスラリーを添加して均一に混合することにより、実施例1の水性接着剤を製造した。
【0063】
[比較例1]
比較例1では、実施例1で前述したイオウ(20%オイル含有)のスラリー(固形分濃度40質量%)及び加硫促進剤CBSのスラリー(固形分濃度20質量%)と同様にして、酸化チタンのスラリー(固形分濃度40質量%)及び酸化亜鉛のスラリー(固形分濃度40質量%)を準備した。次に、100質量部の天然ゴムラテックス(HYTEX-HA、固形分濃度60質量%)に、38質量部の酸化チタンスラリー、8質量部の酸化亜鉛スラリー、2質量部のイオウスラリー及び2質量部の加硫促進剤CBSのスラリーを添加して均一に混合することにより、比較例1の水性接着剤を製造した。
【0064】
[実施例2-6及び比較例2]
ラテックス及び各スラリーの配合量を下表1-2に示されるものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2-6及び比較例2の水性接着剤を製造した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1-2に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。な表1-2の左欄の括弧内は、固形分濃度を示している。
天然ゴム:HYTEX-HA(野村貿易社)(固形分濃度60質量%)
SBゴム:JSR社製のスチレン-ブタジエンゴムラテックス(固形分濃度50質量%)
酸化チタン:石原産業社製の商品名「A220」
酸化亜鉛:正同化学社製の商品名「酸化亜鉛2種」
イオウ:三新化学社製の不溶性硫黄、商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有
CBS:三新化学社製の加硫促進剤、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、商品名「サンセラーCM」
TBBS:三新化学社製の加硫促進剤、N-(t-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、商品名「サンセラーNS」
MBS:三新化学社製の加硫促進剤、N-オキソジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、商品名「サンセラーNOB」
【0068】
[粘度測定]
ブルックフィールド型回転粘度計(東機産業社製のTVC-10型粘度計、ローターNo.2)を用いて、JIS Z8803「液体の粘度測定方法」の記載に準じて、実施例1-6及び比較例1-2の水性接着剤の粘度を測定した。温度23±1℃、回転数20rpmにて3回測定した時の平均値が粘度(cps)として下表3-4に示されている。
【0069】
[pH測定]
pHメーター(東興化学研究所製のTPX-999)を用いて、温度23℃にて実施例1-6及び比較例1-2の水性接着剤のpHを測定した。各3回測定したときの平均値がpHとして下表3-4に示されている。
【0070】
[接着力]
(試験用コアの作製)
100質量部の天然ゴム(Astlett Rubber社の商品名「SMR CV60」)、15質量部のカーボンブラック(キャボットジャパン社製の商品名「N330」)、4質量部のシリカ(東ソー・シリカ社製の商品名「ニプシールVN3」)、30質量部のカオリンクレー(イメリス社製の商品名「ECKALITE 120」)、17質量部の炭酸マグネシウム(神島化学工業社製の商品名「金星」)及び5質量部の酸化亜鉛(正同化学社製の商品名「酸化亜鉛2種」)をバンバリーミキサーに投入して、90℃で5分間混練した。得られた混練物に、0.5質量部のサリチル酸(東京化成社製)、2.3質量部の1,3-ジフェニルグアニジン(三新化学社製の商品名「サンセラーD」)及び3.5質量部のイオウ(前述の商品名「サンフェルEX」)を添加して、オープンロールを用いて50℃で3分間混練することによりゴム組成物を得た。
【0071】
得られたゴム組成物を金型に投入して、140℃で4分間プレスすることにより、2枚のハーフコアを形成した。各ハーフコアのエッジ部を紙やすり(#100)で処理した後、実施例1の水性接着剤をエッジ部に塗布し、室温下で2時間以上乾燥した。その後、一方のハーフコアに、0.5mlの水を投入した後、他方のハーフコアと貼り合わせて、150℃で6分間加熱することにより、試験用コア1を作製した。同様に、実施例2-6及び比較例1-2の水性接着剤を用いて、試験用コア2-6及び比較試験用コア1-2を作製した。
【0072】
(引張試験)
試験用コア1-6及び比較試験用コア1-2から、各3枚のJIS3号ダンベル片(厚さ2mm)を試験片として切り出した。このとき、2枚のハーフコアの接着面がダンベル片の中央部に位置するように、各試験片を切り出した。
【0073】
引張試験機(島津製作所製の商品名「オートグラフAGS-X」)を用いて、引張速度500mm/分で、各試験片の引張試験をおこない、破断後の試験片の断面を観察した。各3枚の試験片について、基材破壊(接着面以外で破断)したものを「良好」とし、界面破壊(いずれかのエッジ部で破断)又は凝集破壊(接着層で破断)したものを「不良」として判定することにより、接着力(接着強度)を評価した。「良好」と判定された試験片の数が、下表3-4に示されている。数値が大きいほど評価が高い。3枚中3枚が「良好」であったものをA、3枚中2枚が「良好」であったものをB、3枚中1枚が「良好」であったものをCとして、接着力を評価した。
【0074】
[打球感]
接着力の評価に関して前述した方法と同様にして、実施例1-6及び比較例1-2の水性接着剤を用いて、それぞれ、試験用コアを作成した。各コアの表面に、その断面にシーム糊を付着させたフェルト部2枚を貼り合わせることにより、テニスボールを製造した。
【0075】
製造後、大気圧下、気温20℃、相対湿度60%の環境下に24時間静置した各テニスボールを、50名のプレーヤーにテニスラケットで打撃させ、その打球感を聞き取った。「打球感が柔らかく良好である」と回答したプレーヤーの数に基づき、以下の格付けをおこなった。この結果が、下表3-4に示されている。
A:40人以上
B:30-39人
C:20人以下
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
表3に示されるように、実施例1の粘度は、無機充填剤以外の組成及びpHが同じ比較例1よりも、低い。さらに、表3-4に示されるように、実施例の水性接着剤では、無機充填剤が配合されない、又はごく少量であるにもかかわらず、無機充填剤含量の多い比較例の水性接着剤と同等の接着力が得られた。さらに、実施例の水性接着剤では、柔らかい打球感が阻害されなかった。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明された水性接着剤は、ゴム組成物を用いて得られる種々のボールの製造に適用されうる。
【符号の説明】
【0080】
2・・・ボール
4・・・コア
6・・・フェルト部
8・・・シーム部
20・・・ハーフコア
21・・・エッジ部
図1
図2