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特許7571405画像読取装置、エッジ検出プログラム、エッジ検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】画像読取装置、エッジ検出プログラム、エッジ検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/12 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020125063
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021480
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】潮田 尚之
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149802(WO,A1)
【文献】特開2018-198386(JP,A)
【文献】特開2016-086217(JP,A)
【文献】特開2020-005069(JP,A)
【文献】特開2013-078059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送する原稿搬送経路と、
前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、
前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニッ
トと、
前記読み取り部により読み取った情報を処理する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態で
の前記背景部の画像データである基準データと、
原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部に
よる読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範
囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データと、を取得し、
前記制御部は、前記基準データのうち原稿搬送方向と交差する方向である幅方向におけ
る第1位置でのデータに基づく第1代表値を取得し、
前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景
部の画像データから、前記幅方向における前記第1位置に対応する第2代表値を取得し、
前記判定領域の画像データに、前記第1代表値と前記第2代表値との差を加えて補正デ
ータを取得し、前記補正データに基づき前記判定領域における原稿のエッジを検出し、
前記第1代表値と、前記第2代表値との差が第1判定値を超えた場合、原稿の搬送を停
止する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項に記載の画像読取装置において、前記原稿搬送経路において前記読み取り部の
上流に、原稿先端の通過を検出する原稿検出手段を備え、
前記第1位置は、前記幅方向において前記原稿検出手段が原稿先端を検出する位置を含
む、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項に記載の画像読取装置において、前記原稿検出手段は、前記幅方向において原
稿の中央位置に設けられる、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記原稿搬送経
路において前記第1ユニット及び前記第2ユニットの上流に、原稿を下流に搬送する搬送
ローラーを備え、
前記搬送ローラーは、前記幅方向において少なくとも二つ設けられ、
前記第1位置は、前記幅方向において二つの前記搬送ローラーの間に位置する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記制御部は、
前記判定領域の前記幅方向端部から中央に向かって前記補正データが第1閾値を超えるか
否かを判断し、
前記補正データが前記第1閾値を超えた場合、更に前記判定領域の中央に向かって、前
記補正データが前記第1閾値を適用した場合よりもエッジ検出感度が低くなる第2閾値を
超えるか否かを判断し、
前記補正データが前記第2閾値を超えた場合、前記補正データが前記第2閾値を超えた
位置を前記幅方向における原稿のエッジ位置とし、
前記補正データが前記第2閾値を超えなかった場合、前記補正データが前記第1閾値を
超えた位置を前記幅方向における原稿のエッジ位置とする、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記第1ユニッ
トが備える前記読み取り部を第1読み取り部として、前記第2ユニットは、前記第1読み
取り部による読み取り位置より前記原稿搬送経路の下流の位置で原稿の面を読み取る第2
読み取り部を備え、
前記制御部は、前記第1読み取り部により、前記基準データ及び前記判定領域の画像デ
ータを取得する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記背景部を読
み取った画像は灰色を呈している、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、前記制御部は、
前記判定領域において検出された原稿のエッジに基づき、搬送異常の有無を判定する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
原稿を搬送する原稿搬送経路と、
前記原稿搬送経路と対校して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、
前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニッ
トと、
前記読み取り部により読み取った情報を処理する制御部と、を備えた画像読取装置の前
記制御部が実行するエッジ検出プログラムであって、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の
画像データである基準データを取得するステップと、
原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部に
よる読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範
囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データを取得するステップと、
前記基準データのうち原稿搬送方向と交差する方向である幅方向における第1位置での
データに基づく第1代表値を取得し、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記
読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データから、前記幅方向における前記第1位
置に対応する第2代表値を取得し、前記判定領域の画像データに、前記第1代表値と前記
第2代表値との差を加えて補正データを取得し、前記補正データに基づき前記判定領域に
おける原稿のエッジを検出するステップと、
前記第1代表値と、前記第2代表値との差が第1判定値を超えた場合、原稿の搬送を停
止するステップと、
を含むことを特徴とするエッジ検出プログラム。
【請求項10】
原稿を搬送する原稿搬送経路と、
前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、
前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニッ
トと、を備えた画像読取装置における原稿のエッジ検出方法であって、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の
画像データである基準データを取得するステップと、
原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部に
よる読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範
囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データを取得するステップと、
前記基準データのうち原稿搬送方向と交差する方向である幅方向における第1位置での
データに基づく第1代表値を取得し、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記
読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データから、前記幅方向における前記第1位
置に対応する第2代表値を取得し、前記判定領域の画像データに、前記第1代表値と前記
第2代表値との差を加えて補正データを取得し、前記補正データに基づき前記判定領域に
おける原稿のエッジを検出するステップと、
前記第1代表値と、前記第2代表値との差が第1判定値を超えた場合、原稿の搬送を停
止するステップと、
を含むことを特徴とするエッジ検出方法。
【請求項11】
原稿を搬送する原稿搬送経路と、
前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、
前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニッ
トと、
前記読み取り部により読み取った情報を処理する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態で
の前記背景部の画像データである基準データと、
原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部に
よる読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範
囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データと、を取得し、
前記基準データのうち原稿搬送方向と交差する方向である幅方向であって、前記幅方向
の中心位置を含む範囲における第1位置でのデータに基づく第1代表値を取得し、
前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景
部の画像データから、前記幅方向における前記第1位置に対応する第2代表値を取得し、
前記第2代表値は、前記判定領域の画像データのうち、上辺から下辺に向かって原稿の
読み取りデータが入らない位置における値であり、
前記判定領域の画像データに、前記第1代表値と前記第2代表値との差を加えて補正デ
ータを取得し、前記補正データに基づき前記判定領域における原稿のエッジを検出する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。また本発明は、画像読取装置において実行されるエッジ検出プログラムに関する。更に本発明は、画像読取装置におけるエッジ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置の一例であるスキャナーでは、特許文献1に示される様に、原稿搬送経路と対向する位置に読み取りセンサーを備え、搬送される原稿の面を読み取る様に構成されものがある。
またスキャナーでは、原稿画像と背景画像とのコントラスト差を用いて原稿のエッジを検出することが行われている。
【0003】
特許文献2には、背景画像の階調値が主走査方向に一定とはならない性質があり、その様な背景画像をそのままエッジ検出に利用すると正確に原稿のエッジを検出できないという課題が記載されている。この様な課題に鑑み特許文献2記載の画像読取装置は、原稿画像の上端または下端に、全幅が背景色である領域が生じるように画像を読み取り、全幅が背景色である領域のイメージデータにてエッジ検出用の基準データを作成する。そしてこの基準データと画像データとを比較することで、原稿のエッジ検出を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-37982号公報
【文献】特開2007-088654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるスキャナーのように、原稿搬送経路と対向する位置に読み取りセンサーを備え、搬送される原稿の面を読み取るスキャナーでは、厚紙が通された際に、読み取りセンサーが原稿搬送経路から離間する方向に移動し、厚紙が通る間隔を確保できるように構成されたものがある。しかしながらこの様に原稿搬送経路に対する読み取りセンサーの位置が変化すると、原稿の厚みによって原稿と背景とのコントラスト差が変化してしまい、エッジを正確に検出できなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為の、本発明の画像読取装置は、原稿を搬送する原稿搬送経路と、前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニットと、前記読み取り部により読み取った情報を処理する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の画像データである基準データと、原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部による読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データと、を取得し、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データと、前記基準データとに基づいて前記判定領域における原稿のエッジを検出することを特徴とする。
【0007】
また本発明のエッジ検出プログラムは、原稿を搬送する原稿搬送経路と、前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニットと、前記読み取り部により読み取った情報を処理する制御部と、を備えた画像読取装置の前記制御部が実行するエッジ検出プログラムであって、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の画像データである基準データを取得するステップと、原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部による読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データを取得するステップと、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データと、前記基準データとに基づいて前記判定領域における原稿のエッジを検出するステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
また本発明のエッジ検出方法は、原稿を搬送する原稿搬送経路と、前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニットと、を備えた画像読取装置における原稿のエッジ検出方法であって、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の画像データである基準データを取得するステップと、原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部による読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データを取得するステップと、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データと、前記基準データとに基づいて前記判定領域における原稿のエッジを検出するステップとを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】スキャナーの外観斜視図。
図2】スキャナーの外観斜視図。
図3】スキャナーの原稿搬送経路を示す側断面図。
図4】スキャナーの原稿搬送経路を示す平面図。
図5】スキャナーの制御系統を示すブロック図。
図6】判定領域の画像の一例を示す図。
図7】判定領域の画像の一例を示す図。
図8】上部センサーユニット及び下部センサーユニットの断面図。
図9】上部センサーユニット及び下部センサーユニットの断面図。
図10】異常判定処理の流れを示すフローチャート。
図11】判定領域の画像の一例を示す図。
図12】エッジ検出処理の流れを示すフローチャート。
図13】判定領域の画像の一例を示す図。
図14】エッジ付近の階調変化の一例を示すグラフ。
図15】判定領域の画像の一例を示す図。
図16】判定領域の画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る画像読取装置は、原稿を搬送する原稿搬送経路と、前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニットと、前記読み取り部により読み取った情報を処理する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の画像データである基準データと、原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部による読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データと、を取得し、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データと、前記基準データとに基づいて前記判定領域における原稿のエッジを検出することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データと、前記基準データ、つまり原稿が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に存在しない状態での前記背景部の画像データとに基づいて前記判定領域における原稿のエッジを検出するので、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間隔が変化しても、それに伴う背景色の変化を補正することができ、ひいては原稿のエッジを適切に検出することができる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、前記基準データのうち原稿搬送方向と交差する方向である幅方向における第1位置でのデータに基づく第1代表値を取得し、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データから、前記幅方向における前記第1位置に対応する第2代表値を取得し、前記判定領域の画像データに、第1代表値と前記第2代表値との差を加えて補正データを取得し、前記補正データに基づき前記判定領域における原稿のエッジを検出することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間隔の変化に伴う背景色の変化を、変化の前後で前記幅方向における同じ位置、つまり前記第1位置で把握するので、前記幅方向での前記背景色のむらに左右され難く、前記間隔の変化に伴う前記背景色の変化をより適切に把握することができる。
【0014】
第3の態様は、第2の態様において、前記原稿搬送経路において前記読み取り部の上流に、原稿先端の通過を検出する原稿検出手段を備え、前記第1位置は、前記幅方向において前記原稿検出手段が原稿先端を検出する位置を含むことを特徴とする。
【0015】
前記第2代表値は、前記第1代表値との差を求める為の値であり、そして前記第1代表値は前記背景部を読み取った際の読み取り値である為、前記第2代表値は確実に原稿から外れた領域つまり前記背景部の読み取り値であることが必要となる。
本態様によれば、前記原稿搬送経路において前記読み取り部の上流に、原稿先端の通過を検出する原稿検出手段を備え、前記第1位置は、前記幅方向において前記原稿検出手段が原稿先端を検出する位置を含むので、前記第1位置は原稿搬送方向における原稿の位置を正確に把握し易い位置となる。この様な位置において前記第2代表値を取得するので、前記第2代表値を、確実に原稿から外れた領域つまり前記背景部の読み取り値とすることができる。
【0016】
第4の態様は、第3の態様において、前記原稿検出手段は、前記幅方向において原稿の中央位置に設けられることを特徴とする。
原稿が斜行すると、前記第2代表値に、前記背景部の読み取り値ではなく原稿の読み取り値が含まれてしまう虞がある。しかしながら本態様によれば、前記原稿検出手段は、前記幅方向において原稿の中央位置に設けられるので、前記第2代表値が、原稿の斜行の影響を受け難くなり、これにより適切な前記第2代表値を得ることができる。
【0017】
第5の態様は、第2から第4の態様のいずれかにおいて、前記第1代表値と、前記第2代表値との差が第1判定値を超えた場合、原稿の搬送を停止することを特徴とする。
前記第1代表値と、前記第2代表値との差が第1判定値を超えた場合、何らかの搬送異常が生じている可能性がある為、この様な場合に原稿の搬送を停止することで、原稿へのダメージ形成を抑制することができる。
【0018】
第6の態様は、第2から第5の態様のいずれかにおいて、前記原稿搬送経路において前記第1ユニット及び前記第2ユニットの上流に、原稿を下流に搬送する搬送ローラーを備え、前記搬送ローラーは、前記幅方向において少なくとも二つ設けられ、前記第1位置は、前記幅方向において二つの前記搬送ローラーの間に位置することを特徴とする。
【0019】
前記原稿搬送経路において前記第1ユニット及び前記第2ユニットの上流に、原稿を下流に搬送する搬送ローラーを備え、前記搬送ローラーは、前記幅方向において少なくとも二つ設けられ、前記第1位置は、前記幅方向において二つの前記搬送ローラーの間に位置するので、原稿の搬送精度が高い位置で前記第2代表値を取得することができ、これにより適切な前記第2代表値を得ることができる。
【0020】
第7の態様は、第2から第6の態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記判定領域の前記幅方向端部から中央に向かって前記補正データが第1閾値を超えるか否かを判断し、前記補正データが前記第1閾値を超えた場合、更に前記判定領域の中央に向かって、前記補正データが前記第1閾値を適用した場合よりもエッジ検出感度が低くなる第2閾値を超えるか否かを判断し、前記補正データが前記第2閾値を超えた場合、前記補正データが前記第2閾値を超えた位置を前記幅方向における原稿のエッジ位置とし、前記補正データが前記第2閾値を超えなかった場合、前記補正データが前記第1閾値を超えた位置を前記幅方向における原稿のエッジ位置とすることを特徴とする。
【0021】
原稿の地色が背景色に近い場合、つまり前記判定領域の画像データにおいて原稿の地色部分のデータと背景部分のデータとの差が小さい場合、原稿のエッジを検出することができない場合がある。一例として背景色が灰色つまりグレースケールの中間値或いはそれに近く、原稿の地色も灰色つまりグレースケールの中間値或いはそれに近いと、原稿のエッジを検出することができない場合がある。しかしながら読み取り画像において原稿のエッジ部分には影ができる場合があり、この影を検出すれば、原稿のエッジを検出することができる。
【0022】
そこで本態様においては、第1閾値と第2閾値の2つの閾値を用い、相対的にエッジ検出感度が高くなる第1閾値を用いてエッジ部分の影を検出する。次に、相対的にエッジ検出感度が低くなる第2閾値を用いてエッジ部分を検出する。原稿の地色部分の画像データと背景部分の画像データとの差が大きければ、前記第2閾値により、原稿のエッジを検出することができる。原稿の地色部分の画像データと背景部分の画像データとの差が小さければ、前記第1閾値により、原稿のエッジ部分に生じる影の位置を検出でき、その位置を原稿のエッジ位置とすることができる。
以上により、原稿の地色が背景色に近い場合、つまり前記判定領域の画像データにおいて原稿の地色部分の画像データと背景部分の画像データとの差が小さいであっても、適切に原稿のエッジを検出できる。
【0023】
第8の態様は、第1から第7の態様のいずれかにおいて、前記第1ユニットが備える前記読み取り部を第1読み取り部として、前記第2ユニットは、前記第1読み取り部による読み取り位置より前記原稿搬送経路の下流の位置で原稿の面を読み取る第2読み取り部を備え、前記制御部は、前記第1読み取り部により、前記基準データ及び前記判定領域の画像データを取得することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記第2ユニットは、前記第1読み取り部による読み取り位置より前記原稿搬送経路の下流の位置で原稿の面を読み取る第2読み取り部を備え、前記制御部は、前記第1読み取り部により、前記基準データ及び前記判定領域の画像データを取得するので、より速いタイミングで前記判定領域を取得することができる。その結果、前記判定領域に対し搬送異常の判定処理を行う場合、より速いタイミングで原稿の搬送を停止することができ、ひいては原稿に与えるダメージを抑制することができる。
【0025】
第9の態様は、第1から第8の態様のいずれかにおいて、前記背景部を読み取った画像は灰色を呈していることを特徴とする。本態様によれば、前記背景部を読み取った画像が灰色を呈している構成において、上述した第1から第8の態様のいずれかの作用効果が得られる。尚、灰色はグレースケール256階調で表現すると中間値127或いはその前後の階調値であって、具体的には階調値117~137の範囲の色である。
【0026】
第10の態様は、第1から第9の態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記判定領域において検出された原稿のエッジに基づき、搬送異常の有無を判定することを特徴とする。
本態様によれば、前記判定領域において検出された原稿のエッジに基づき、搬送異常の有無を判定するので、適切に検出された原稿のエッジに基づき、適切な搬送異常の検出が可能となる。
【0027】
第11の態様に係るエッジ検出プログラムは、原稿を搬送する原稿搬送経路と、前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニットと、前記読み取り部により読み取った情報を処理する制御部と、を備えた画像読取装置の前記制御部が実行するエッジ検出プログラムであって、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の画像データである基準データを取得するステップと、原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部による読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データを取得するステップと、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データと、前記基準データとに基づいて前記判定領域における原稿のエッジを検出するステップとを含むことを特徴とする。
本態様によれば、上述した第1の態様と同様な作用効果が得られる。
【0028】
第12の態様に係るエッジ検出方法は、原稿を搬送する原稿搬送経路と、前記原稿搬送経路と対向して原稿の面を読み取る読み取り部を備えた第1ユニットと、前記原稿搬送経路を挟んで前記読み取り部と対向配置された背景部を備える第2ユニットと、を備えた画像読取装置における原稿のエッジ検出方法であって、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に原稿が存在しない状態での前記背景部の画像データである基準データを取得するステップと、原稿先端が前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に入り込んで前記読み取り部による読み取り位置に達する前の前記背景部の画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿の画像とを含む判定領域の画像データを取得するステップと、前記判定領域の画像データのうち、原稿先端が前記読み取り位置に達する前の前記背景部の画像データと、前記基準データとに基づいて前記判定領域における原稿のエッジを検出するステップとを含むことを特徴とする。
本態様によれば、上述した第1の態様と同様な作用効果が得られる。
【0029】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では画像読取装置の一例として、原稿の表面及び裏面のうち少なくとも一面を読み取り可能なスキャナー1を例に挙げる。スキャナー1は、後述する読み取り部に対して原稿を搬送方向に移動させつつ読み取りを行う、所謂ドキュメントスキャナーである。
【0030】
尚、各図において示す座標系は、X軸方向が装置幅方向であり原稿の幅方向でもある。以下、単に「幅方向」と言う場合はX軸方向つまり原稿の幅方向を意味するものとする。また以下ではX軸方向を「主走査方向」と称する場合もある。またV軸方向は、後述する原稿搬送経路8に平行な方向であり、+V方向は原稿搬送方向となる。Z軸方向はX軸方向及びV軸方向に直交する方向であって読み取りが行われる原稿の面と直交する方向となる。
尚、以下では原稿が搬送されていく方向(+V方向)を「下流」といい、これと反対の方向(-V方向)を「上流」という場合がある。
【0031】
図1図3においてスキャナー1は、装置本体2と、装置本体2を回転可能に支持する支持台5とを備えている。
装置本体2は、下部ユニット3、及び上部ユニット4を備えて構成されている。
上部ユニット4は、下部ユニット3に対して不図示の回転軸を中心に回転することで開閉可能に設けられており、上部ユニット4を装置前方に開くことで後述する原稿搬送経路を露呈させることができる。
装置本体2を構成する下部ユニット3は、支持台5を構成するアーム部5aに対して回転軸5bを介して回転可能に設けられ、回転することにより姿勢変化可能に構成されている。
【0032】
上部ユニット4は前面カバー19を備え、下部ユニット3は上面カバー10を備えている。前面カバー19は、上部ユニット4に対して回転可能に設けられており、回転することで、図1に示す様に閉じた状態と、図2に示す様に開いた状態とを取り得る。前面カバー19は、開くことで、図2及び図3に示す様に読み取りが行われて排出される原稿を受ける原稿受けトレイとして機能する。
【0033】
上部ユニット4は、上面に、図2に示す様に各種読み取り設定や読み取り実行の操作を行い、また読み取り設定内容等を示す為のユーザインタフェース(UI)が実現される操作パネル7を備えている。操作パネル7は、本実施形態では表示と入力の双方が行える所謂タッチパネルであり、各種操作を行う為の操作部と、各種情報を表示する為の表示部とを兼ねる。操作パネル7は、前面カバー19を開くことで露呈する。
【0034】
下部ユニット3に設けられた上面カバー10は、下部ユニット3に対して回転可能に設けられており、回転することで、図1に示す様に閉じた状態と、図2及び図3に示す様に開いた状態とを取り得る。上面カバー10は、開くことで、図2及び図3に示す様に給送される原稿を支持する原稿支持トレイとして機能する。
装置本体2の上部には装置本体2内部に連なる給送口6が設けられており、上面カバー10に載置される原稿は、給送口6から装置本体2内部に向けて送られる。
【0035】
図2において符号12A、12Bは、原稿のX軸方向つまり幅方向のエッジをガイドするエッジガイドである。エッジガイド12A、12Bは不図示のラックピニオン機構によって一方を操作することで互いに接近し、或いは離間することが可能に設けられている。
【0036】
次に、主として図3を参照して、原稿搬送経路8について説明する。図3に示す原稿搬送経路8は、原稿搬送経路8は、下部ユニット3と上部ユニット4との間に形成される直線状の経路である。
【0037】
原稿搬送経路8の最も上流には、上述した上面カバー10が設けられており、上面カバー10の下流には、経路形成部材11が設けられている。また上面カバー10の下流には、載置された原稿を下流に向けて送る給送ローラー14と、給送ローラー14との間で原稿をニップして分離する分離ローラー15とが設けられている。給送ローラー14は、上面カバー10に載置された原稿のうち、最下位の原稿の下面と接する。従って上面カバー10に複数枚の原稿が載置された場合、最下位の原稿から順に下流に向けて給送される。上面カバー10に載置された原稿の下面が上面カバー10と対向する第1面であり、その反対の面が第2面となる。給送ローラー14は、原稿の第1面と接し、分離ローラー15は、原稿の第2面と接する。
【0038】
給送ローラー14は、本実施形態では図4に示す様に幅方向の中心位置CLに対して左右対称に配置されている。図4では中心位置CLに対し+X方向の給送ローラー14を符号14Aで、中心位置CLに対し-X方向の給送ローラーを符号14Bで、それぞれ示している。同様に分離ローラー15も、中心位置CLに対して+X方向の分離ローラー15Aと-X方向の分離ローラー15Bとで構成されている。
即ち本実施形態では、原稿幅方向の中心位置CLが、原稿の給送基準位置となる。従って本実施形態ではどの様なサイズの原稿であっても、中心位置CLは変化しない。
【0039】
図3に戻り、給送ローラー14は、ワンウェイクラッチ49を介して、給送ローラー用モーター45(図5参照)から回転トルクを得て、図3において反時計回り方向に回転する。
分離ローラー15には、分離ローラー用モーター51(図5参照)から、トルクリミッター50を介して図3の反時計回り方向に回転する回転トルクが伝達される。
【0040】
図3において符号57で示す部材はフラップであり、このフラップ57は、給送開始前は上面カバー10にセットされる原稿の、分離ローラー15への接触を防止する。フラップ57は回転軸57aを中心に回転可能であるとともに、給送開始前は下端部がセットガイド58と係合しており図3の時計回り方向への回転が止められている。給送が開始されると、セットガイド58は回転軸58aを中心に図3の反時計回り方向に回転し、これによりフラップ57が回転可能となり、上面カバー10に載置された原稿束の先端が分離ローラー15に当接する。
【0041】
給送ローラー14の下流には、搬送ローラー対16が設けられている。搬送ローラー対16は、搬送ローラー用モーター46(図5参照)により回転駆動される搬送ローラー16aと、従動回転する従動ローラー16bとを備えて成る。
給送ローラー14及び分離ローラー15によりニップされて下流に給送された原稿は搬送ローラー対16にニップされて、搬送ローラー対16の下流に位置する上部センサーユニット20A及び下部センサーユニット20Bと対向する位置に搬送される。
【0042】
上部ユニット4は、原稿搬送経路8に対して上に位置する上部センサーユニット20Aを有し、下部ユニット3は、原稿搬送経路8に対して下に位置する下部センサーユニット20Bを有している。下部センサーユニット20Bは第1ユニットの一例であり、上部センサーユニット20Aは第2ユニットの一例である。但し、上部センサーユニット20Aを第1ユニットの一例とし、下部センサーユニット20Bを第2ユニットの一例とすることもできる。
【0043】
上部センサーユニット20Aはセンサーモジュール21Aを有し、下部センサーユニット20Bはセンサーモジュール21Bを有している。本実施形態においてセンサーモジュール21A、21Bは、密着型イメージセンサーモジュール(CISM)であり、原稿の面を読み取る読み取り部の一例である。
原稿搬送経路8に対して上に位置するセンサーモジュール21Aにより、原稿の上面である第2面が読み取られ、原稿搬送経路8に対して下に位置するセンサーモジュール21Bにより、原稿の下面である第1面が読み取られる。上部センサーユニット20Aによる原稿読み取り面及び下部センサーユニット20Bによる原稿読み取り面は、原稿搬送経路8に対して平行な面を成している。
【0044】
上部センサーユニット20Aは、下部センサーユニット20Bが備えるセンサーモジュール21Bと対向する位置に背景部22Aを備え、下部センサーユニット20Bは、上部センサーユニット20Aが備えるセンサーモジュール21Aと対向する位置に背景部22Bを備えている。
背景部22A、22Bは、専らシェーディング補正の為に、対向するセンサーモジュールにより読み取られる部位である。
【0045】
背景部22Aは基準板23Aを有し、背景部22Bは基準板23Bを備えている。基準板23A、23Bは、一例として白色を成している。但し基準板23A、23Bは原稿搬送経路8からやや離れた位置にある為、基準板23A、23Bを読み取ることで得られる画像の色は、灰色を呈する。尚、灰色はグレースケール256階調で表現すると中間値127或いはその前後の階調値であって、具体的には階調値117~137の範囲の色である。
【0046】
上部センサーユニット20Aは、図8及び図9に示す様に筐体27Aの内部に上述した基準板23Aとセンサーモジュール21Aとを備え、センサーモジュール21Aはライトガイド24A、レンズ25A、及びラインセンサ26Aを備えている。下部センサーユニット20Bも同様に、筐体27Bの内部に上述した基準板23Bとセンサーモジュール21Bとを備え、センサーモジュール21Bはライトガイド24B、レンズ25B、及びラインセンサ26Bを備えている。
【0047】
以下、上部センサーユニット20Aの構成を代表として詳説する。基準板23A、ライトガイド24A、レンズ25A、ラインセンサ26A、のこれらは主走査方向に延びる形状を成している。
ライトガイド24Aは、原稿搬送経路8に向けて光を照射する為の導光部材であり、光源の一例であるLEDモジュール(不図示)から主走査方向に発せられた光を、原稿搬送経路8を照射する様に導く。
上部センサーユニット20Aから原稿搬送経路8に向けて照射された光は、反射してレンズ25Aを介してラインセンサ26Aに到達し、ラインセンサ26Aで測光される。
【0048】
ラインセンサ26Aは主走査方向に沿って光電変換素子の一例であるフォトダイオードが配列されて成り、1つの光電変換素子が1つの画素に対応し、光電変換素子が測光した読み取りデータを出力する。本実施形態においてラインセンサ26Aは、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサーである。
上記の上部センサーユニット20Aの構成は、下部センサーユニット20Bでも同様であるので、以下ではその説明は省略する。
【0049】
本実施形態において上部センサーユニット20Aは、原稿搬送経路8に対して進退可能に設けられているとともに、不図示の押圧部材、例えば圧縮コイルばねによって原稿搬送経路8に向けて押圧されている。これにより上部センサーユニット20Aは、図8図9との対比で示す様に、上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に入り込む原稿の厚みに応じて変位する。図9に示す原稿P2は、図8に示す原稿P1よりも厚みが厚い。原稿P2を搬送する際の上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔d2は、原稿P1を搬送する際の上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔d1よりも大きくなる。尚、下部センサーユニット20Bは、上部センサーユニット20Aとは異なり固定的に設けられている。
【0050】
筐体27Aにおいて原稿搬送経路8と対向する面の上流にはガイド斜面28Aが形成されており、同様に筐体27Bにおいて原稿搬送経路8と対向する面の上流にはガイド斜面28Bが形成されている。これにより搬送ローラー対16から上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に向かう原稿は、いずれかのセンサーユニットに引っ掛かることなく上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に入り込むことができる。
【0051】
図3に戻り、原稿は第1面及び第2面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた後、排出ローラー対17にニップされて、排出口18から排出される。
排出ローラー対17は、搬送ローラー用モーター46(図5参照)により回転駆動される排出ローラー17aと、従動回転する従動ローラー17bとを備えて成る。
【0052】
続いて、図5を参照しつつスキャナー1における制御系統について説明する。図5において、制御部40は原稿の給送、搬送、排出制御及び読み取り制御を含め、その他スキャナー1の各種制御を行う。制御部40には、操作パネル7からの信号が入力される。
制御部40は、給送ローラー用モーター45、搬送ローラー用モーター46、分離ローラー用モーター51、のこれらモーターを制御する。本実施形態では各ローラーはDCモーターである。
【0053】
制御部40には、上部センサーユニット20A及び下部センサーユニット20Bからの読み取りデータが入力され、また、上部センサーユニット20A及び下部センサーユニット20Bを制御する為の信号が制御部40から読取部20に送信される。
制御部40には、後述する重送検出部30、第1原稿検出部31、第2原稿検出部32、及びその他の検出手段からの信号も入力される。
また制御部40には、給送ローラー用モーター45の回転量を検出するエンコーダー(不図示)や搬送ローラー用モーター46の回転量を検出するエンコーダー(不図示)の検出値も入力され、これにより制御部40は各ローラーによる原稿送り量を把握できる。
【0054】
制御部40は、CPU41、フラッシュROM42、RAM43を備えている。CPU41はフラッシュROM42に格納されたプログラム44に従って各種演算処理を行い、スキャナー1全体の動作を制御する。フラッシュROM42は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリであり、後述するエッジ検出や搬送異常の判定に必要なデータ等も格納されている。また操作パネル7を介してユーザーが入力した各種設定情報も、フラッシュROM42に記憶される。
【0055】
フラッシュROM42に格納されたプログラム44は、必ずしも一つのプログラムを意味するものではなく、複数のプログラムで構成され、それには後述するエッジ検出や搬送異常の判定を行う為のプログラム、原稿の搬送及び読み取りに必要な各種制御プログラムなどが含まれる。RAM43は揮発性メモリであり、CPU41の作業領域等に用いられる。
【0056】
またスキャナー1は外部コンピューター55と接続可能に構成されており、制御部40には、外部コンピューター55から情報が入力される。外部コンピューター55は、不図示の表示部を備えている。この表示部には、外部コンピューター55が備える不図示の記憶手段に格納された制御プログラムによりユーザインタフェース(UI)が実現される。
【0057】
続いて、各検出手段について説明する。
載置検出部33は、経路形成部材11(図3参照)に設けられた検出部である。制御部40は、載置検出部33から送信される信号により、上面カバー10上の原稿の有無を検知できる。
第1原稿検出部31は、給送ローラー14(図3参照)の下流に設けられた検出部である。第1原稿検出部31は、一例として光学式センサーとして構成され、図3に示す様に原稿搬送経路8を挟んで対向配置される発光部31aと、受光部31bとを備えて成り、受光部31bが制御部40に検出光の強度を示す電気信号を送信する。搬送される原稿が発光部31aから発せられる検出光を遮ることにより、前記検出光の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿の先端或いは後端の通過を検知できる。
【0058】
第1原稿検出部31の下流には、原稿の重送を検出する重送検出部30が配置されている。重送検出部30は、図3に示す様に原稿搬送経路8を挟んで対向配置される超音波発信部30aと、超音波を受信する超音波受信部30bとを備えて成り、超音波受信部30bが制御部40に検出した超音波の強度に応じた出力値を送信する。原稿の重送が生じると、前記超音波の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿の重送を検知できる。
【0059】
重送検出部30の下流であって更に搬送ローラー対16の下流には、第2原稿検出部32が設けられている。第2原稿検出部32は、レバーを有する接触式センサーとして構成されており、原稿の先端或いは後端の通過に伴いレバーが回動すると、第2原稿検出部32から制御部40に送られる電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿の先端或いは後端の通過を検知できる。
第2原稿検出部32は、本実施形態において図4に示す様に幅方向において中心位置CLで原稿を検出する。
制御部40は、第2原稿検出部32の検出信号と搬送ローラー用モーター46の回転量を検出するエンコーダー(不図示)の検出信号とをもとに、原稿搬送経路8における原稿の位置を把握することができる。
【0060】
続いて原稿の搬送異常を判定する判定処理、及び判定処理に必要なエッジ検出処理について説明する。
図6において符号70で示す画像は原稿の搬送異常を判定する為の判定領域の画像である。制御部40は、搬送される原稿の下流エッジが読み取り位置T3(後述)に到達する前の背景部22Aと、搬送される原稿の下流エッジを含む先端部とを読み取り、図6に示す判定領域70の画像データを取得する。尚、制御部40は、原稿幅方向において原稿幅よりも広い範囲を読み取る為、判定領域70は原稿に対し幅方向の両側に背景部22Aの画像を含んでいる。
制御部40は判定領域70に対してエッジ検出処理を行い、検出され原稿エッジに基づいて搬送異常の判定処理を行う。符号71、72、73、74は、それぞれ判定領域70の上辺、下片、右辺、左辺であり、判定領域70の画像データは上辺71から下辺72に向かって取得される。
符号Pは原稿であり、符号Pf1は原稿Pの下流エッジつまり先端を示し、符号Pe1は原稿Pの右エッジを示し、符号Pe2は原稿Pの左エッジを示している。尚、図の左方向が+X方向に対応し、図の右方向が-X方向に対応している。
【0061】
制御部40は、第2原稿検出部32により原稿Pの先端Pf1を検出してから所定のタイミングで、下部センサーユニット20Bにより判定領域70を構成する画像データの取得を開始する。図8において位置T1、T2、T3、T4は原稿搬送方向における位置を示しており、位置T1は第2原稿検出部32が原稿Pの先端Pf1を検出する位置であり、一例として制御部40は原稿Pの先端Pf1が位置T1より下流の位置T2に達したと判断できるタイミングで画像データの取得を開始する。
【0062】
位置T3は下部センサーユニット20Bによる読み取り位置であり、位置T4は上部センサーユニット20Aによる読み取り位置である。位置T3は位置T4よりも上流にあることから、より速いタイミングで搬送異常の判定を行う為、本実施形態では下部センサーユニット20Bによる読み取りデータによって搬送異常を判定する為の判定領域70を取得する。より速いタイミングで搬送異常の判定を行うことができれば、より速いタイミングで原稿の搬送を停止することができ、ひいては原稿に与えるダメージを抑制することができる。
判定領域70には、原稿Pの先端Pf1が上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に入り込んで位置T3に達する前の背景部22Aの画像と、原稿Pの先端Pf1から下端に向かって所定範囲の原稿の画像が含まれることとなる。また判定領域70には原稿Pの幅方向両側に位置する背景部22Aの画像も含まれる。
【0063】
尚、位置T2は、ガイド斜面28A及びガイド斜面28Bの下流端位置であり、原稿Pの先端Pf1が位置T2に達した後は、上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔が原稿Pの厚みに応じた間隔で概ね安定する。尚、原稿搬送方向におけるガイド斜面28Aの位置とガイド斜面28Bの位置とがずれている場合、位置T2は、ガイド斜面28A及びガイド斜面28Bのうち下流に位置するガイド斜面の下流端位置とする。
但し、第2原稿検出部32により原稿Pの先端Pf1を検出したタイミングで画像データの取得を開始した上で、原稿Pの先端Pf1が位置T2に達するまでの画像データを破棄することで判定領域70を取得しても良い。
【0064】
図6に戻り、制御部40は、判定領域70を構成する画像データを上辺71から下辺72に向かって取得する。制御部40は、例えば原稿Pの先端Pf1が、理論上少なくとも原稿搬送方向において上辺71と下辺72との間の中間位置よりも上辺71寄りの位置となる様に画像データを取得し、判定領域70を構成する。
【0065】
判定領域70の取得に際し、制御部40は下部センサーユニット20BのLEDモジュール(不図示)を点灯状態にする。これにより背景部22Aを読み取った際の色つまり背景色は、グレースケール256階調であれば中間値つまり灰色となる。
【0066】
この様にして判定領域70を取得すると、制御部40は、判定領域70における原稿Pのエッジを検出する。原稿Pのエッジ検出の結果、制御部40は搬送異常の判定を行い、一例として図7に示す様に原稿Pが斜行していたり、或いは図示は省略するが形状が方形ではなく変形している様な場合には、搬送異常として原稿Pの搬送を停止し、また搬送異常が生じた旨のアラートを発する。従って原稿Pの搬送異常を適切に検出する為には、適切なエッジ検出が必要となる。尚、図7において符号Psは、斜行が生じていない場合の原稿を示しており、図6に示す原稿Pに対応する。
【0067】
図10を参照して搬送異常の判定の流れを説明する。制御部40は、図10に示す処理を実行する為のプログラムを有している。図10において制御部40は、スキャンジョブが開始されると、校正タイミングであるかを判断する(ステップS101)。校正タイミングは、例えばスキャンジョブの開始前や、予め定められた所定の時間間隔に設定することができる。
【0068】
制御部40は、校正タイミングである場合(ステップS101においてYes)、基準データBGo(x)を取得する(ステップS102)。値xは主走査方向における画素の位置を示すものである。基準データBGo(x)は、下部センサーユニット20BのLEDモジュール(不図示)を点灯状態にして取得する。基準データBGo(x)は、上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に原稿Pが存在しない状態で背景部22Aを読み取ることで得る。基準データBGo(x)は、専らシェーディング補正用として取得されるが、詳しくは後述するが本実施形態では原稿Pのエッジ検出にも利用される。
【0069】
次に、制御部40は原稿給送動作を開始し(ステップS103)、第2原稿検出部32が原稿Pを検出すると(ステップS104においてYes)、所定タイミングの後に画像データの取得を開始し、画像データGAZO1(x,y)を取得する(ステップS105)。画像データGAZO1(x,y)は、判定領域70を構成する画像データである。値yは原稿搬送方向における画素の位置を示すものである。
続いて制御部40は判定領域70における原稿Pのエッジを検出するエッジ検出処理を行い(ステップS106)、次いでエッジ検出処理により検出された原稿Pのエッジに基づいて搬送異常の判定処理を行う(ステップS107)。その結果、搬送異常と判定される場合(ステップS108においてYes)、原稿Pの搬送を停止し(ステップS109)、異常が生じた旨のアラートを発する(ステップS110)。搬送異常と判定されない場合(ステップS108においてNo)、以降の原稿Pの搬送と読み取りが実行される。
【0070】
以上の様にして原稿Pの搬送異常の判定がなされるが、ステップS106での、判定領域70における原稿Pのエッジ検出に際しては、幾つかの課題が存在する。以下、その課題と、解決手段について説明する。
【0071】
[背景領域の色むらの補正]
先ず、主走査方向における、ライトガイド24Bやレンズ25Bの収差、LEDモジュール(不図示)からの距離の違い、ラインセンサ26Bの感度むら等により、判定領域70における背景領域の画像には色むらが生じる。特に本実施形態では、基準板23Aを読み取ることで得られる画像の色は灰色になるので、色むらが生じ易い。図6では背景領域の色つまり灰色をハッチングで表現し、また背景領域の色むらをハッチングの密度を利用して簡易的に表現している。例えば領域B1は領域B2に比べて階調が高く、領域B2は領域B3に比べて階調が高い。尚、実際には背景領域の色むらは、主走査方向に沿って明確な濃度の境界がないグラデーション状となる。そして背景領域の色むらは主走査方向に生じ、原稿搬送方向には殆ど生じない。
【0072】
この様な背景領域の色むらは、背景領域と原稿領域との色の差を利用してエッジ検出を行う場合、悪影響を及ぼすこととなる。しかしながらシェーディング補正を行う為に取得した基準データBGo(x)を用いることで、原稿Pのエッジ検出を適切に行うことができる。
具体的には、画像データGAZO1(x,y)と、基準データBGo(x)との差D(x,y)を判断する。差D(x,y)の絶対値は、例えば原稿の領域内であれば、予め定められた許容値以上となり、逆に背景領域であれば、予め定められた許容値未満となる。この様に差D(x,y)の絶対値が予め定められた許容値未満となる領域は背景領域であると判断できるので、その様に背景領域であると判断できる画像データGAZO1(x,y)から基準データBGo(x)を減算し、更に所定の値Fを加算することで、主走査方向に色むらの少ない適切な背景領域を得ることができる。尚、上記所定の値Fは、画像データGAZO1(x,y)及び基準データBGo(x)がグレースケール256階調の値であれば、一例として中間値である値127を採用することができる。
【0073】
[背景領域の全体的な明度変化の補正]
次に、図8及び図9の対比で示す様に上部センサーユニット20Aが変位すると、画像データGAZO1(x,y)のうち背景領域のデータも変化し、上述した画像データGAZO1(x,y)と、基準データBGo(x)との差D(x,y)の判断が正しく行えず、結果的にエッジ検出を適切に行えない虞がある。従って画像データGAZO1(x,y)を補正して補正データGAZO2(x,y)を取得し、補正データGAZO2(x,y)と基準データBGo(x)との差を、上述した差D(x,y)とすることがより好適である。以下、補正データGAZO2(x,y)の求め方について説明する。
【0074】
図11の上の図は、図8の原稿P1を搬送した際の判定領域70Aを示し、図11の下の図は、図9の原稿P2を搬送した際の判定領域70Bを示している。図9の原稿P2を搬送した場合、上部センサーユニット20Aが、図8の原稿P1を搬送した場合よりも下部センサーユニット20Bから離間しているので、図11に示す様に判定領域70Bにおける背景領域の色と、判定領域70Aにおける背景領域の色とは異なるものとなる。具体的には、判定領域70Bにおける背景領域の色は判定領域70Aにおける背景領域の色よりも階調値が低くなる。
【0075】
以下、背景領域の色補正について図12を参照して詳説する。図12は、図10に示したエッジ検出処理(ステップS106)の詳細な内容を示すものである。制御部40は、図12に示す処理を実行する為のプログラム、即ちエッジ検出プログラムを有している。
先ず、制御部40は基準データBGo(x)から第1代表値BGPを取得する(ステップS201)。
【0076】
第1代表値BGPは、基準データBGo(x)のうち第1位置でのデータに基づく値である。本実施例では、第1位置は図11に示す様に幅方向の中心位置CLを中心として幅方向の左右にある程度の幅を有する範囲となる。例えば、基準データBGo(x)の取得幅が640画素とすると、第1位置は、中心位置CLを中心として左右に20画素、つまり幅が40画素の範囲とすることができる。そして第1代表値BGPはこの第1位置の範囲にある基準データBGo(x)の平均値とすることができる。但し、第1代表値BGPは、中心位置CLでの基準データBGo(x)の値そのものであっても良い。
尚、本実施形態において中心位置CLは、図4に示す様に第2原稿検出部32が原稿Pの先端Pf1を検出する位置である。
【0077】
次いで制御部40は、第2代表値BGQを取得する(ステップS202)。第2代表値BGQは、図11に示す様に画像データGAZO1(x,y)のうち、上辺71から下辺72に向かって距離Kの位置y1における画像データ、つまり画像データGAZO1(x,y1)の中の、第1位置に対応する値である。
具体的には、判定領域70の幅を640画素とすると、第2代表値BGQは、中心位置CLを中心として左右に20画素、つまり幅が40画素の範囲での、画像データGAZO1(x,y1)の平均値とすることができる。
上辺71から下辺72に向かって距離Kの位置y1は、原稿Pの先端Pf1から上辺71に向かって充分離れた位置となる様に設定する。つまり、画像データGAZO1(x,y1)に、原稿Pの読み取りデータが入らない様に設定する。
【0078】
仮に、判定領域70の画像データである画像データGAZO1(x,y)を取得した際の上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔が、基準データBGo(x)を取得した際の上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔と同じであれば、第1代表値BGPと第2代表値BGQは理論上同じ値となる。
【0079】
次に制御部40は、画像データGAZO1(x,y)を補正したデータである補正データGAZO2(x,y)を、以下の式により取得する。
[GAZO2(x,y)=GAZO1(x,y)-BGo(x)-BGQ+BGP+C]
【0080】
ここで、値Cは定数であり、仮に値Cがゼロの場合、補正データGAZO2(x,y)はゼロを中心としたプラス或いはマイナスの値で推移する。つまり、補正データGAZO2(x,y)では背景領域が黒となるので、もとの灰色の値に戻すため、値C=BGPとすることが好適である。或いは、各データがグレースケール256階調で表現されていれば、例えば値C=127としても良い。
そして制御部40は、補正データGAZO2(x,y)に基づき、判定領域70での原稿エッジを検出する(ステップS204)。
【0081】
以上のように制御部40は、上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に原稿Pが存在しない状態での背景部22Aの画像データである基準データBGo(x)を取得する。また、原稿先端が上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に入り込んで下部センサーユニット20Bによる読み取り位置T3に達する前の背景部22Aの画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿Pの画像とを含む判定領域70の画像データGAZO1(x,y)とを取得する。そして判定領域70の画像データGAZO1(x,y)のうち、原稿先端が読み取り位置T3に達する前の背景部22Aの画像データと、基準データBGo(x)とに基づいて、判定領域70における原稿Pのエッジを検出する。
【0082】
またエッジ検出プログラム及びエッジ検出方法は、上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に原稿Pが存在しない状態での背景部22Aの画像データである基準データBGo(x)を取得するステップ(図10においてステップS102)を含む。また更に、原稿先端が上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間に入り込んで下部センサーユニット20Bによる読み取り位置T3に達する前の背景部22Aの画像と、原稿先端から下端に向かって所定範囲の原稿Pの画像とを含む判定領域70の画像データGAZO1(x,y)とを取得するステップ(図10においてステップS105)を含む。そして更に判定領域70の画像データGAZO1(x,y)のうち、原稿先端が読み取り位置T3に達する前の背景部22Aの画像データと、基準データBGo(x)とに基づいて、判定領域70における原稿Pのエッジを検出するステップ(図12においてステップS201~S204)を含む。
以上により、上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔が変化しても、それに伴う背景色の変化を補正することができ、ひいては原稿Pのエッジを適切に検出することができる。
【0083】
また制御部40は、基準データBGo(x)のうち幅方向における第1位置でのデータに基づく第1代表値BGPを取得し、判定領域70の画像データのうち、原稿Pの先端Pf1が読み取り位置に達する前の背景部22Aの画像データから、幅方向における第1位置に対応する第2代表値BGQを取得し、判定領域70の画像データGAZO1(x,y)に、第1代表値BGPと第2代表値BGQとの差を加えて補正データGAZO2(x,y)を得る。つまり階調値が低下したぶん、画像データGAZO1(x,y)を底上げする。そしてこの補正データGAZO2(x,y)に基づいて、原稿Pのエッジを検出する。
つまり、上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔の変化に伴う背景色の変化を、変化の前後で幅方向における同じ位置、つまり第1位置で把握するので、幅方向での背景領域の色むらに左右され難く、前記間隔の変化に伴う背景色の変化を、より適切に把握することができる。
尚、上述した例では上部センサーユニット20Aの変位に伴う背景画像の階調値の低下量を、画像データGAZO1(x,y)に加算することとしたが、エッジ検出の為の閾値から階調値の低下量を減算しても良い。例えば、図14を参照して後に説明する第1閾値及び第2閾値から、上部センサーユニット20Aの変位に伴う背景画像の階調値の低下量を減算しても良い。
【0084】
また、原稿搬送方向において上部センサーユニット20A及び下部センサーユニット20Bの上流に、原稿先端の通過を検出する原稿検出手段である第2原稿検出部32を備え、前記第1位置は、幅方向において第2原稿検出部32が原稿を検出する位置を含んでいる。第2代表値BGQは、第1代表値BGPとの差を求める為の値であり、そして第1代表値BGPは背景部22Aを読み取った際の読み取り値である為、第2代表値BGQは確実に原稿Pから外れた領域つまり背景部22Aの読み取り値であることが必要となる。
そして上述の様に前記第1位置は、幅方向において第2原稿検出部32が原稿を検出する位置を含むので、前記第1位置は原稿搬送方向における原稿Pの先端Pf1の位置を正確に把握し易い位置となる。この様な位置において第2代表値BGQを取得するので、第2代表値BGQを、確実に原稿Pから外れた領域つまり背景部の読み取り値とすることができる。
【0085】
また原稿Pが斜行すると、第2代表値BGQに、背景部22Aの読み取り値ではなく原稿Pの読み取り値が含まれてしまう虞がある。しかしながら第2原稿検出部32は、図4に示した様に幅方向において原稿Pの中央位置である中心位置CLに設けられる。これにより第2代表値BGQが、原稿Pの斜行の影響を受け難くなる。例えば、図7に示す様に原稿Pが斜行すると、中心位置CLよりも右側の領域では左側の領域に比べて先端部分が下流に進むので、この様な領域で第2代表値BGQを取得すると、第2代表値BGQに原稿Pの読み取り値が含まれてしまう可能性が高くなる。また斜行の方向が図7の例とは逆であれば、中心位置CLよりも左側の領域が右側の領域に比べて先端部分が下流に進むため、この様な領域で第2代表値BGQを取得すると、第2代表値BGQに原稿Pの読み取り値が含まれてしまう可能性が高くなる。しかしながら原稿Pの先端を検出する第2原稿検出部32が幅方向において中心位置CLに設けられることで、第2代表値BGQが原稿Pの斜行の影響を受け難くなり、これにより適切な第2代表値BGQを得ることができる。
【0086】
尚、第1代表値BGPと、第2代表値BGQとの差が第1判定値を超えるか否かを判断し、超えた場合、原稿Pの搬送を停止する様にしても良い。即ち、第1代表値BGPと、第2代表値BGQとの差が第1判定値を超える場合、何らかの搬送異常が生じている可能性がある為、この様な場合に原稿Pの搬送を停止することで、原稿Pへのダメージ形成を抑制することができる。
また、第1代表値BGPと、第2代表値BGQとの差が第1判定値を超えた場合、原稿Pの搬送を停止することに代えて、搬送異常の判定をスキップする様にしても良い。
【0087】
また図4に示す様に搬送ローラー16aは、幅方向において二つ設けられ、前記第1位置は、幅方向において二つの搬送ローラー16aの間に位置する。これにより、原稿Pの搬送精度が高い位置で第2代表値BGQを取得することができ、適切な第2代表値BGQを得ることができる。
【0088】
[原稿の地色が背景色に近い場合]
続いて図13及び図14を参照して、補正データGAZO2(x,y)に基づくエッジ検出の課題と解決手段について説明する。
原稿Pの地色が背景色に近い場合、つまり判定領域70の画像データにおいて原稿Pの地色部分のデータと背景部分のデータとの差が小さい場合、原稿Pのエッジを検出することができない場合がある。しかしながら読み取り画像において原稿Pのエッジ部分には影ができる場合があり、この影をもとに、原稿Pのエッジを検出することができる。
図13に示す様に、原稿Pの右エッジPe1と左エッジPe2には、エッジに沿って影Shが形成される。尚、本実施形態では判定領域70を取得する際、図8に示す様にライトガイド24Bは原稿搬送方向の下流から上流に向けて光を照射するので、原稿Pの先端Pf1には、影は形成され難い。
【0089】
図14の上のグラフは、原稿Pの地色と背景色とが明確に異なり、例えば原稿Pの地色が白色の場合の、左エッジPe2付近の階調値変化を示すものである。図14に示すグラフは、縦軸が階調値を示し、横軸が幅方向位置を示している。階調値はグラフの右方向に向かって、背景領域では中間値付近で推移し、影Shの領域で落ち、そして原稿領域で最大値付近となる。
これに対し図14の下のグラフは、原稿Pの地色と背景色とが近く、例えば原稿の地色が灰色の場合の、左エッジPe2付近の階調値変化を示すものである。この場合階調値はグラフの右方向に向かって、背景領域では中間値付近で推移し、影Shの領域で落ち、そして原稿領域では背景領域と同様に中間値付近で推移する。
【0090】
この様にいずれの場合でも、影Shの領域では階調値が低下する為、第1閾値thL、thHと、これよりエッジ検出感度が低くなる第2閾値thLL、thHHとの、2つの閾値を用いることとする。具体的には、判定領域70の幅方向端部から中央に向かって補正データGAZO2(x,y)が第1閾値thL、thHの範囲を超えた場合、更に判定領域70の中央に向かって、補正データGAZO2(x,y)が第2閾値thLL、thHHの範囲を超えるか否かを判断する。
その結果、補正データGAZO2(x,y)が図14の上の図で示す様に第2閾値thLL、thHHの範囲を超えた場合、補正データGAZO2(x,y)が第2閾値thLL、thHHの範囲を超えた位置を左エッジPe2の位置とする。これに対し図14の下の図で示す様に、補正データGAZO2(x,y)が第2閾値thLL、thHHを超えなかった場合、補正データGAZO2(x,y)が第1閾値thL、thHの範囲を超えた位置を左エッジPe2の位置とする。右エッジPe1についても、同様にして検出することができる。
【0091】
この様にして原稿Pの地色が背景色に近い場合、つまり判定領域70の画像データにおいて原稿Pの地色部分のデータと背景部分のデータとの差が小さいであっても、適切に原稿Pのエッジを検出できる。
尚、上記の実施例では原稿Pの幅方向エッジの検出に際して第1閾値と第2閾値の2つの閾値を適用したが、原稿Pの先端エッジに影が生じる場合には、原稿Pの先端エッジの検出を同様にして求めても良い。
【0092】
[紙粉等の異物の影響]
次に、図15及び図16を参照して、紙粉等の異物によるエッジ誤検出の抑制について説明する。図15において符号75、76は、判定領域70における、紙粉等の異物に起因する縦筋を示している。尚、図15及び図16では、図6等で示した背景領域の色むらを示すハッチングは便宜上省略している。
判定領域70にこの様な縦筋75、76が存在する場合、探索ラインSC1、SC2のように幅方向端部から中央に向かってエッジを探索していくと、縦筋75、76の位置をエッジ位置であると誤検出する虞がある。
【0093】
そこで図16に示す様に、幅方向にエッジを探索するのではなく原稿搬送方向に原稿エッジを探索する。具体的には、中心位置CLから幅方向端部に向かって、探索ラインSC1、SC2のように上辺71から下辺72に向かってエッジを探索していく。このとき、探索ラインが異物に起因する縦筋の位置に一致し、異常値となる場合があるが、異常値の幅が予め定められた幅より狭い場合には異物であるとして読み飛ばす。この様にして中心位置CLから幅方向端部に向かって、原稿Pの先端Pf1を探索していく。
【0094】
符号SC3で示す探索ラインのように、探索ラインが原稿Pの先端Pf1から外れると、上辺71から下辺72に向かってエッジを探索していく際に、予め定められた長さを超えても先端Pf1を発見できない状態となる。この様な場合、その探索ラインの位置を左エッジPe2の仮の位置とする。
次に、左エッジPe2とした位置を幅方向の起点として、符号SC4、SC5で示す探索ラインのように幅方向中央に向かってエッジを探索する。これにより、図16の例では縦筋75、76の影響を排除できる。
以上のようにしてエッジを検出する際の探索ラインを設定することで、紙粉等の異物により生じる縦筋がエッジ検出に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0095】
[エンボスの影響]
原稿Pがキャッシュカードなどの様に、読み取り面にエンボス文字が形成されている場合、原稿Pを搬送する途中で上部センサーユニット20Aと下部センサーユニット20Bとの間隔が変動し、それによって適切にエッジ検出ができない虞がある。
従って原稿Pの厚みを把握し、原稿Pの厚みが予め定められた厚みを超える場合にエンボス文字を含む原稿Pであると判断し、その様な場合は搬送異常の判定をスキップしても良い。原稿Pの厚みは、図13及び図14を参照して説明した、エッジに生じる影Shの幅をもとに判断することができる。
また、原稿Pの幅方向サイズが予め定められたサイズより小さい場合、エンボス文字を含む原稿Pであると判断し、その様な場合は搬送異常の判定をスキップしても良い。原稿Pの幅方向サイズは、判定領域70の画像をもとに判断することができる。
【0096】
[原稿のスリップの影響]
搬送ローラー対16において原稿Pのスリップが生じると、判定領域70における下流エッジPf1の原稿搬送方向における位置が下辺72寄りとなって現れ、それが原因で搬送異常であると誤判定する虞がある。
従って例えば、中心位置CLにおいて上辺71から下辺72に向かって下流エッジPf1を探索し、予め定められた長さを探索しても下流エッジPf1を発見できない場合は、搬送異常の判定をスキップしても良い。
【0097】
本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
1…スキャナー、2…装置本体、3…下部ユニット、4…上部ユニット、5…支持台、6…給送口、7…操作パネル、8…原稿搬送経路、10…上面カバー、11…経路形成部材、12A、12B…エッジガイド、14A、14B…給送ローラー、15A、15B…分離ローラー、16…搬送ローラー対、16a…搬送ローラー、16b…従動ローラー、17…排出ローラー対、17a…排出ローラー、17b…従動ローラー、18…排出口、19…前面カバー、20A…上部センサーユニット、20B…下部センサーユニット、21A、21B…センサーモジュール、22A、22B…背景部、23A、23B…基準板、24A、24B…ライトガイド、25A、25B…レンズ、26A、26B…ラインセンサ、27A、27B…筐体、28A、28B…ガイド斜面、30…重送検出部、30a…超音波発信部、30b…超音波受信部、31…第1原稿検出部、31a…発光部、31b…受光部、32…第2原稿検出部、33…載置検出部、40…制御部、41…CPU、42…フラッシュROM、43…メモリ、44…プログラム、45…給送ローラー用モーター、46…搬送ローラー用モーター、49…ワンウェイクラッチ、50…トルクリミッター、51…分離ローラー用モーター、55…外部コンピューター、57…フラップ、57a…回転軸、58…セットガイド、58a…回転軸、70…判定領域、71…上辺、72…下辺、73…右辺、74…左辺、75、76…縦筋、P…原稿、Pf1…先端、Pe1…右エッジ、Pe2…左エッジ、CL…中心位置、Sh…影
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