(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】歯磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20241016BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20241016BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241016BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241016BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20241016BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/26
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/46
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020128800
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕之
(72)【発明者】
【氏名】林 貴広
(72)【発明者】
【氏名】水野 瞳
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-330230(JP,A)
【文献】特開2015-124164(JP,A)
【文献】特開2011-098920(JP,A)
【文献】特開2016-124787(JP,A)
【文献】特開2019-116442(JP,A)
【文献】特開2020-083833(JP,A)
【文献】特開2004-123684(JP,A)
【文献】特開2006-182658(JP,A)
【文献】特開2011-126785(JP,A)
【文献】特開2010-111647(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107335(WO,A1)
【文献】特開2018-087161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化アルミニウム:
1.5~
3質量%、(B)平均粒子径が80~300μmであるシリカ顆粒:
1.0~
2.8質量%、(C)アルキル硫酸塩
及びα-オレフィンスルホン酸
塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤:
1.5~
3質量%、及び(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
及びポリグリセリン脂肪酸エステ
ルから選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤:
0.3~
1.5質量%を含有し、(A)/(B)で表される、(A)成分と(B)成分との含有質量比が0.5~6である歯磨剤組成
物。
【請求項2】
(B)シリカ顆粒の平均粒子径が100~250μmである請求項1記載の歯磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化アルミニウム及びシリカ顆粒を含有する歯磨剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤組成物において、歯磨きによって歯磨き後の汚れ落ち実感等の効果実感を付与して付加価値を高めることは、歯磨きの習慣化、その効果発現に有効である。清掃力や汚れ落ち実感を付与する技術として、歯磨剤組成物に、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、顆粒、研磨性シリカ等を配合する技術が提案されている(特許文献1:特開2012-149035号公報)。
【0003】
一方、歯を美しくしたいという生活者ニーズは高く、歯磨きにより、簡便な方法で歯に光沢を付与できる技術が望まれている。さらに、口臭に対する意識は高まっており、歯磨きにより、口臭を改善する技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、使用中の清掃感及び磨き心地が良いと共に、口臭原因菌を殺菌する殺菌力及び歯に光沢を付与できる歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)酸化アルミニウム、(B)シリカ顆粒、(C)アニオン性界面活性剤及び(D)ノニオン性界面活性剤をそれぞれ特定量含有する歯磨剤組成物とすることで、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記歯磨剤組成物を提供する。
1.(A)酸化アルミニウム:0.5~5質量%、(B)シリカ顆粒:0.5~3質量%、(C)アニオン性界面活性剤:1.2~3質量%、及び(D)ノニオン性界面活性剤:0.3~2質量%を含有する歯磨剤組成物。
2.(B)シリカ顆粒の平均粒子径が80~300μmである1記載の歯磨剤組成物。
3.(C)成分が、アルキル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩及びアミノ酸系界面活性剤から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤である1又は2記載の歯磨剤組成物。
4.(D)成分が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルアルコールエーテルから選ばれる1種以上である1~3のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用中の清掃感、磨き心地が良いと共に、口臭原因菌を殺菌する殺菌力及び歯に光沢を付与できる歯磨剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は酸化アルミニウムであり、ステイン除去効果を有する。(A)成分の含有量は、歯磨剤組成物中0.5~5質量%であり、0.5~5.0質量%が好ましく、1.5~3.0質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が0.5質量%未満だと、ステイン除去効果、光沢付与効果が不十分であり、5質量%を超えると、粉っぽく、泡が重く感じ、磨き心地が悪くなる。
【0010】
[(B)成分]
本発明の(B)成分はシリカ顆粒であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。シリカ顆粒としては、湿式法のゲル法シリカ、沈降法シリカ等が好適に用いられる。シリカ顆粒の調製方法は特に限定されないが、例えば、ゲル法で4~10nm程度に一次粒子径を成長させたシリカゲルの塊を、洗浄・乾燥させた後に粉砕して平均粒子径が80~300μmであるシリカ顆粒に分級する方法、シリカヒドロゾルを空気中に噴霧させゲル化させることで顆粒を調製する方法、沈降法で一次粒子の成長を抑えながら凝集させた後に、一次粒子径を4~10nm程度に成長させる方法等が挙げられる。なお、シリカ顆粒は着色したものも使用することができる。
【0011】
シリカ顆粒の一次粒子径は3~15nm程度が好ましく、4~10nmがより好ましい。造粒したシリカ顆粒の平均粒子径は限定されないが、清掃感の点から、80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、110μm以上がさらに好ましく、磨き心地の点から、300μm以下が好ましい。なお、平均粒子径は、マイクロトラック(レーザー回折散乱法)により粒体の体積分布を測定した際、この平均粒子径を境に2つに分けた時、大きい側と小さい側が等量になる径(メジアン径(d50))であり、例えば、装置としては、日機装株式会社製マイクロトラックMT3300を用いて測定できる。
【0012】
(B)成分の含有量は、歯磨剤組成物中0.5~3質量%であり、0.5~3.0質量%が好ましく、1.0~2.8質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が0.5質量%未満だと、清掃感が不十分であり、3質量%を超えると、清掃感及び磨き心地が悪くなる。
【0013】
(A)/(B)で表される、(A)成分と(B)成分との含有質量比は0.2~6が好ましく、0.5~2.5がより好ましい。
【0014】
[(C)成分]
本発明の(C)成分はアニオン性界面活性剤であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(C)成分を配合することで、清掃感や口臭原因菌(フゾ菌:フゾバクテリウム ヌクレアタム)殺菌力が向上する。アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩及びアミノ酸系界面活性剤等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。アルキル硫酸塩は、アルキル基の炭素数が10~14のものが好ましく、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリストイル硫酸ナトリウム等が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数14~16のα-オレフィンスルホン酸のナトリウム、カリウム塩等が挙げられる。中でも、炭素数14のα-オレフィンスルホン酸塩、特に、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムが好ましい。アミノ酸型アニオン性界面活性剤としては、N-アシル-L-グルタミン酸、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム等が好ましい。中でも、アルキル硫酸塩が好ましい。
【0015】
(C)成分の含有量は、歯磨剤組成物中1.2~3質量%であり、1.2~3.0質量%が好ましく、1.3~2.8質量%がより好ましく、1.5~2.5質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が1.2質量%未満だと、口臭原因菌の殺菌力、清掃感及び磨き心地が不十分であり、使用後に口内につっぱる感じ等の違和感が生じることがある。一方、(C)成分の含有量が3質量%を超えると、磨き心地が悪くなる。
【0016】
[(D)成分]
本発明の(D)成分はノニオン性界面活性剤であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(D)成分を特定量で配合することで、口臭原因菌殺菌力及び使用中の清涼感を維持し、磨き心地を向上させることができる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアルコールエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、プルロニック(登録商標)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアルコールエーテルが好ましい。
【0017】
特に、酸化エチレンの平均付加モル数が10~60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、酸化エチレンの平均付加モル数が6~10、脂肪酸のアルキル鎖が12~14のポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレンの平均付加モル数4~10、好適には5~10、アルキル鎖12~18のポリオキシエチレンアルキルアルコールエーテルが好ましい。
【0018】
(D)成分の含有量は、歯磨剤組成物中0.3~2質量%であり、0.3~2.0質量%が好ましく、0.7~1.5質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が0.3質量%未満だと、磨き心地が悪くなり、2質量%を超えると、清掃感や磨き心地が悪くなり、口臭原因菌の殺菌力、バイオフィルム除去効果や保存安定性が低下する。
【0019】
本発明の歯磨剤組成物には、通常、歯磨組成物に使用されている公知成分を、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合できる。配合できる任意成分としては、研磨剤、粘結剤、両性界面活性剤、湿潤剤、甘味剤、香料、pH調整剤、防腐剤、薬効成分、水等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和物又は無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物;炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム系研磨剤;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。なお、(B)成分以外のシリカ系研磨剤、例えば無水ケイ酸、沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等(平均粒子径は通常、40μm以下)を配合してもよい。
【0021】
粘結剤としては、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カーボポール、ビーガム、アルギン酸プロピレングリコール等の有機粘結剤、増粘性シリカ、ケイ酸アルミニウム等の無機粘結剤が配合できる。粘結剤を配合する場合、その含有量は、歯磨剤組成物中0.8~10質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。
【0022】
両性界面活性剤としては、アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール、平均分子量200~6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコ-ル、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、トリメチルグリシン、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール、糖アルコール等が挙げられる。湿潤剤を配合する場合、その含有量は、歯磨剤組成物中10~70質量%が好ましい。
【0024】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペルラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。
【0025】
香料としては、公知の香料、例えばメントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テレピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁字油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0026】
pH調整剤としては、クエン酸、乳酸等の有機酸やその塩類;塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機化合物等が挙げられる。
【0027】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。薬効成分としては、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素;トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸塩等の抗炎症剤;塩化ナトリウム、ビタミン類等の細胞賦活剤;イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤;銅クロロフィル、グルコン酸銅等の水溶性銅化合物;ゼオライト等の歯石予防剤;ビタミンE等の血行促進剤;アラニン、グリシン、プロリン等のアミノ酸類等を配合できる。なお、薬効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0028】
さらに、任意成分として、雲母チタン、酸化チタン、ベントナイト等の無機化合物;結晶性セルロース等のセルロース系の有機粉末;寒天、ゼラチン、デンプン、グルコマンナン等の天然高分子化合物;ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン末、ポリエチレン末等の合成高分子化合物又はそれらの共重合体;カルナバワックス、ロジン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、パラフィンワックス等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ウレタン、天然ゴム等を配合することができる
【0029】
[歯磨剤組成物]
本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨、液体歯磨、潤製歯磨等として、特に練歯磨剤に調製できる。製造方法は特に限定されず、公知の歯磨剤組成物の製造方法を採用できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0031】
[実施例、比較例]
下記表に示す組成の歯磨剤組成物について、下記に示す方法で評価を行った。結果を表中に併記する。なお、実施例1、3、7、8及び11以外の実施例は参考例である。
【0032】
1.口臭原因菌殺菌力
[バイオフィルムの調製]
使用した細菌は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)より購入し、以下の方法によりプレカルチャーを行った。
アクチノマイセス ヴィスコサス(Actinomyces viscosus)ATCC43146、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)ATCC10953、ストレプトコッカス サリバリアス(Streptcoccus sarivalis)AC7073は、5mg/Lヘミン(Sigma社製)及び1mg/L ビタミンK(和光純薬工業(株)製)を含むトッドへヴィットブロス(Becton and Dickinson社製)培養液〔THBHM〕により培養した。なお、培養は、37℃で一晩嫌気培養(80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素)した。各菌液200μLを上記培養液20mLに添加し、同条件でさらに一晩嫌気培養した。培養後、菌液は遠心分離(10,000rpm、10min)により集菌した。遠心集菌した各細菌は、ベイサルメディウムムチン培養液〔BMM〕に再懸濁した後、予め同培地1,000mLを入れた培養槽に、菌数がそれぞれ1×107個/mLになるように24穴培養プレートに接種し、37℃において嫌気条件下(95vol%窒素、5vol%二酸化炭素)で二日間培養し、バイオフィルムを得た。
【0033】
[BMMの組成:1リットル中の質量で表す。]
プロテオースペプトン(Becton and Dickinson社製):4g/L
トリプトン(Becton and Dickinson社製):2g/L
イーストエキス(Becton and Dickinson社製):2g/L
ムチン(Sigma社製):5g/L
ヘミン(Sigma社製):2.5mg/L
ビタミンK(和光純薬工業(株)製):0.5mg/L
KCl(和光純薬工業(株)製):1g/L
システイン(和光純薬工業(株)製):0.2g/L
蒸留水:残部
【0034】
[フゾ選択培地]
フゾ選択培地は、以下のように調製した。精製水700mLに、トリプトン(Becton and Dickinson社製):2g/L、イーストエキス(Becton and Dickinson社製):3.5g/L、NaCl(富士フィルム和光社製):3.5g/L、グルコース(富士フィルム和光社製):3.5mg/L、L-トリプトファン(富士フィルム和光社製):0.14g/L、寒天を混合し、121℃、20分間オートクレーブした後、クリスタルバイオレット(5ml/mL)700μL、エリスロマイシン(5ml/ml)560μL、馬無菌脱繊血33mLを添加した。
【0035】
[フゾ菌(フゾバクテリウム ヌクレアタム)生菌数の測定]
サンプル溶液は次のように調製した。サンプルの歯磨剤組成物を人工唾液(50mM KCl,1mM CaCl2,0.1mM MgCl2,1mM KH2PO4,pH7.0)で10倍に希釈し、遠心分離(10,000回転、10分)した上清をサンプル溶液とした。
得られた24穴培養プレートのバイオフィルムに対して、培地吸引除去後、PBSで二回洗浄し、サンプル溶液を30秒間処置した。PBSで二回洗浄後、超音波を用いバイオフィルムを回収し、フゾ菌選択培地に播種、上記記載の嫌気条件下で二日間培養し、フゾ菌生菌数を測定した。得られたCFUから、下記評価基準に基づき口臭原因菌殺菌力を示す。
【0036】
[評価基準:口臭原因菌殺菌力]
◎:CFUが106未満
○:CFUが106以上107未満
×:CFUが107以上
【0037】
2.光沢効果
ハイドロキシアパタイト板(HAP、HOYA株式会社製、φ7mm)に以下の方法でモデルステインを付着させた。HAPを、耐水研磨紙(#400)を用いて表面を研磨した。処理したHAPを1%アルブミン溶液中で10分間1回/2秒の速さで、50℃中で回転させながらアルブミンを吸着させた。次に、粉末紅茶(柳屋茶楽社製パウティ)を人工唾液で1%に調製した溶液中、同条件で処理し、ステインを積層させた。この操作を50回繰り返したHAP(処理前)を光沢効果測定に用いた。調製したHAPを、人工だ液で歯磨剤組成物を3倍希釈したサンプル中で、200g加圧下、クリニカアドバンテージ歯ブラシ(ライオン(株)製)を用い、50回ブラッシング(宮川商店製)処理した。処理前後の光沢度を光沢度計(日本電色社製VG2000)にて測定した。得られた処理前後の光沢度から、下記評価基準に基づき光沢効果を示す。
【0038】
[評価基準:光沢効果]
◎:処理前と比較して、光沢度が20以上高くなった
○:処理前と比較して、光沢度が10以上20未満高くなった
×:処理前と比較して、光沢度が高くなったのが10未満である
【0039】
3.使用感評価
パネラー4名による使用感評価を行った。歯ブラシ(クリニカアドバンテージハブラシ、4列コンパクトふつうタイプ:ライオン(株)製)にサンプルの歯磨剤組成物1gを乗せ、3分間歯みがきを行った。使用時の「清掃感」及び「磨き心地のよさ」について下記評点で評価し、評点の平均点に基づき使用感評価を示す。
【0040】
[評点:使用中の清掃感]
1:非常によくない
2:よくない
3:どちらともいえない
4:よい
5:非常によい
[評価基準:使用中の清掃感]
◎:4人の平均点が4点以上
○:4人の平均点が3点以上4点未満
△:4人の平均点が2点以上3点未満
×:4人の平均点が2点未満
【0041】
[評点:使用中の磨き心地のよさ]
5:非常によい
4:よい
3:どちらともいえない
2:よくない
1:非常によくない
[評価基準:使用中の磨き心地のよさ]
◎:4人の平均点が4点以上
○:4人の平均点が3点以上4点未満
△:4人の平均点が2点以上3点未満
×:4人の平均点が2点未満
【0042】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
(A)日本軽金属(株)製 酸化アルミニウム
(B-1)PQコーポレーション製 BFG50
(B-2)PQコーポレーション製 BFG10
(C-1)BASFジャパン テキサポンK12GPH
(C-2)ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製 リポランLB-440
(C-3)日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL LMT
(D-1)日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL HCO-20
(D-2)日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL HCO-60
(D-3)日本エマルジョン(株)製 EMALEX 705
(D-4)阪本薬品工業(株)製 ML-750
【0043】
【0044】
【0045】