(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】画像形成装置、インクセット、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20241016BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241016BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20241016BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20241016BHJP
【FI】
B41M5/00 134
B41M5/00 114
B41M5/00 120
B41J2/01 123
B41J2/01 501
C09D11/54
C09D11/322
(21)【出願番号】P 2020129081
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真未
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011464(JP,A)
【文献】特開2015-187248(JP,A)
【文献】特開2014-208928(JP,A)
【文献】特開平06-207382(JP,A)
【文献】特開昭61-006365(JP,A)
【文献】特開2010-163475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
B41J 2/01
B41J 2/165-2/215
C09D 11/00-13/00
D06P 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーインク吐出部、抜染インク吐出部、及び、制御部を含み、
前記カラーインク吐出部は、水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを布帛に吐出可能であり、
前記抜染インク吐出部は、還元剤を含む抜染インクを前記布帛に吐出可能であり、
前記制御部は、前記カラーインク吐出部及び前記抜染インク吐出部に対し、第1のステップで前記カラーインクを前記布帛に吐出させ、前記第1のステップの後、第2のステップで
前記カラーインクに含まれる前記水性樹脂エマルジョンを凝集させる前記抜染インクを前記布帛に吐出させる制御をする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2のステップにおいて、前記抜染インク吐出部に対し、前記布帛において前記カラーインクが吐出された領域に、前記抜染インクを吐出させる制御をする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カラーインクの前記水性樹脂エマルジョンは、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、及び、ポリスチレン樹脂エマルジョンからなる群から選択される少なくとも一の水性樹脂エマルジョンである、請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記水性樹脂エマルジョンは、ウレタン樹脂エマルジョンである、請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン、及び、ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンからなる群から選択される少なくとも一つのウレタン樹脂エマルジョンである、請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン、及び、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン、の少なくとも一方のウレタン樹脂エマルジョンである、請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンである、請求項5または6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ウレタン樹脂エマルジョンは、ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンである、請求項5記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記カラーインクは、前記抜染インクにより凝集するインクである、
請求項1から8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記カラーインクは、顔料を含む、請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記抜染インクの前記還元剤は、ハイドロサルファイトナトリウム、二酸化チオ尿素、ロンガリット、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及び、ピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一つの還元剤である、請求項1から10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記抜染インクの前記還元剤は、二酸化チオ尿素、及び、ロンガリット、の少なくとも一方の還元剤である、請求項11記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記抜染インクの前記還元剤は、二酸化チオ尿素である、請求項11または12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記水性樹脂エマルジョンは、ウレタン樹脂エマルジョンであり、
前記抜染インクの前記還元剤は、二酸化チオ尿素である、請求項1から13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
さらに、インクセットを収容可能なインクセット収容部を含み、
前記インクセットは、前記カラーインク及び前記抜染インクを含む、
請求項1から14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
カラーインクと抜染インクを含み、
前記カラーインクは、水性樹脂エマルジョンを含み、
前記抜染インクは、還元剤を含み、
請求項15記載の画像形成装置の前記インクセット収容部に収容されるインクセット。
【請求項17】
布帛に対し、水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを吐出する第1のステップと、
前記布帛に対し、還元剤を含む抜染インクを吐出する第2のステップとを含み、
前記抜染インクは、前記カラーインクに含まれる前記水性樹脂エマルジョンを凝集させるインクであり、
前記第1のステップの実施後、前記第2のステップを実施する、
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、インクセット、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類等の布帛に抜染インク及びカラーインクを吐出して画像を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記技術では、洗濯時に、カラーインクが剥がれやすくなってしまい、画像形成部の洗濯堅牢性が損なわれるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、抜染インク及びカラーインクが吐出された布帛において、画像形成部の洗濯堅牢性を向上させることが可能な画像形成装置、インクセットおよび画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、
カラーインク吐出部、抜染インク吐出部、及び、制御部を含み、
前記カラーインク吐出部は、水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを布帛に吐出可能であり、
前記抜染インク吐出部は、還元剤を含む抜染インクを前記布帛に吐出可能であり、
前記制御部は、前記カラーインク吐出部及び前記抜染インク吐出部に対し、第1のステップで前記カラーインクを前記布帛に吐出させ、前記第1のステップの後、第2のステップで前記抜染インクを前記布帛に吐出させる制御をする。
【0007】
本発明の画像形成方法は、
布帛に対し、水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを吐出する第1のステップと、
前記布帛に対し、還元剤を含む抜染インクを吐出する第2のステップとを含み、
前記第1のステップの実施後、前記第2のステップを実施する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の画像形成装置、インクセットおよび画像形成方法は、抜染インク及びカラーインクが吐出された布帛において、画像形成部の洗濯堅牢性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成装置の一例の構成を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す画像形成装置のインク吐出部及び加熱処理部の内部構造を透視的に示した平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す画像形成装置のインク吐出部及び加熱処理部の内部構造を透視的に示した側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す画像形成装置の制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施例1における、洗濯前及び洗濯後の布帛の写真である。
【
図6】
図6は、実施例1における、洗濯堅牢性の評価の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例1における、洗濯堅牢性の評価の結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例2における、洗濯堅牢性の評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の画像形成装置は、カラーインク吐出部、抜染インク吐出部、及び、制御部を含み、前記カラーインク吐出部は、水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを布帛に吐出可能であり、前記抜染インク吐出部は、還元剤を含む抜染インクを前記布帛に吐出可能であり、前記制御部は、前記カラーインク吐出部及び前記抜染インク吐出部に対し、第1のステップで前記カラーインクを前記布帛に吐出させ、前記第1のステップの後、第2のステップで前記抜染インクを前記布帛に吐出させる制御をする。
【0011】
まず、本発明における、前記カラーインク、前記抜染インク、及び前記布帛について、説明する。
【0012】
前記カラーインクは、水性樹脂エマルジョンを含む。前記カラーインクにおいて、その他の構成は、特に制限されない。前記水性樹脂エマルジョンは、例えば、前記樹脂微粒子と、分散媒(例えば、水)とで構成されるものであり、前記樹脂微粒子は、前記分散媒に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径を持って分散している。前記水性樹脂エマルジョンは、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、及び、ポリスチレン樹脂エマルジョンがあげられる。前記水性樹脂エマルジョンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記水性樹脂エマルジョンは、例えば、ウレタン樹脂エマルジョンが好ましい。
【0013】
前記ウレタン樹脂エマルジョンは、例えば、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン、及び、ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンがあげられる。前記ウレタン樹脂エマルジョンが、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョンであることにより、例えば、画像形成部の洗濯堅牢性がより優れている。前記ウレタン樹脂エマルジョンが、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンであることにより、例えば、画像形成部の洗濯堅牢性がさらにより優れており、且つ、保存安定性が良い。前記ウレタン樹脂エマルジョンが、ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンであることにより、例えば、前記第1のステップの後、前記第2のステップを実行することにより洗濯堅牢性を向上させる効果が大きく、且つ、保存安定性が良い。
【0014】
前記樹脂エマルジョンとしては、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンとして、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)460」;三井化学(株)製の「タケラック(登録商標)W-6110」;DIC(株)製の「ハイドラン(登録商標)WLS-210」;等があげられ、ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョンとして、三洋化成工業(株)製の「ユーコート(登録商標)UWS-145」;三井化学(株)製の「タケラック(登録商標)W-5030」;DIC(株)製の「ハイドラン(登録商標)HW-920」;等があげられ、ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンとして、三井化学(株)製の「タケラック(登録商標)W-6061T」;DIC(株)製の「ハイドラン(登録商標)FCS-855」、「ハイドラン(登録商標)WLS-201」;等があげられる。
【0015】
前記カラーインクは、例えば、着色剤として、顔料、及び染料等を含んでもよい。前記カラーインクは、例えば、顔料を含む。前記顔料は、特に制限されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。これら以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、74、78、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、209、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;並びにこれらの顔料の固溶体等もあげられる。前記着色剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記カラーインク全量における前記樹脂エマルジョン及び前記着色剤の含有量は、特に制限されない。前記カラーインク全量における、前記樹脂エマルジョンに含まれる前記樹脂微粒子の含有量は、例えば、1質量%~15質量%であればよい。前記顔料の固形分含有量は、例えば、1質量%~15質量%であればよい。
【0017】
前記カラーインクは、例えば、前記抜染インクにより凝集するインクである。前記抜染インクにより凝集するインクは、例えば、前記樹脂エマルジョンとして、「スーパーフレックス(登録商標)460」、「タケラック(登録商標)W-6110」、「ハイドラン(登録商標)WLS-210」、「ユーコート(登録商標)UWS-145」、「タケラック(登録商標)W-5030」、「タケラック(登録商標)W-6061T」、「ハイドラン(登録商標)FCS-855」、「ハイドラン(登録商標)WLS-201」等を用いたインクがあげられる。前記カラーインクが、前記抜染インクにより凝集するインクであることにより、例えば、洗濯堅牢性をより向上させることができ、さらに、画像形成部の滲みを低減し、画質を向上させることができる。
【0018】
前記カラーインクは、例えば、さらに、水、並びに、湿潤剤、及び界面活性剤等のその他の成分を含んでもよい。
【0019】
前記抜染インクは、還元剤を含む。前記抜染インクにおいて、その他の構成は、特に制限されない。前記還元剤は、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム、二酸化チオ尿素、ロンガリット、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及び、ピロ亜硫酸ナトリウムがあげられる。前記還元剤は、例えば、二酸化チオ尿素である。前記還元剤が、二酸化チオ尿素であることにより、例えば、臭い(例えば、ホルムアルデヒドが発生しない)、及び保存安定性等の点において優れている。
【0020】
前記抜染インク全量における前記還元剤の濃度は、特に制限されず、例えば、0.28mol/l~0.70mol/lであればよい。
【0021】
前記抜染インクは、例えば、さらに、水、並びに、湿潤剤、及び界面活性剤等のその他の成分を含んでもよい。
【0022】
前記カラーインクと前記抜染インクとの組み合わせは、特に制限されず、前述の前記カラーインクと前記抜染インクとの組み合わせとすることもできる。前記カラーインクと前記抜染インクとの組み合わせは、例えば、前記カラーインクに含まれる前記水性樹脂エマルジョンが、ウレタン樹脂エマルジョンであり、前記抜染インクに含まれる前記還元剤が、二酸化チオ尿素である組み合わせがあげられる。
【0023】
前記布帛は、編物及び織物の双方を含む。前記布帛の材質は、例えば、天然繊維があげられる。前記天然繊維としては、例えば、綿、絹等があげられる。
【0024】
つぎに、本発明の画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、一つの筐体の内部にカラーインク吐出部、抜染インク吐出部、及び、制御部を備えた一体型のものであってもよいし、別個独立したカラーインク吐出部、抜染インク吐出部、及び、制御部を含むシステムであってもよい。
【0025】
図1に、前記一体型の画像形成装置の構成の一例を示す。
図1に示すように、画像形成装置1は、インクセット収容部2、インク吐出部3、加熱処理部4、及び制御部5を含む。なお、加熱処理部4は、任意の構成であり、本装置1に含まれなくてもよい。
【0026】
インクセット収容部2は、インクセットを収容可能である。前記インクセットは、前記カラーインク及び前記抜染インクを含む。ただし、インクセット収容部2は、例えば、前記カラーインクのインクセットを収容可能なカラーインクセット収容部と、前記抜染インクのインクセットを収容可能な抜染インクセット収容部とを、それぞれ別の構成として含んでもよい。
【0027】
インク吐出部3は、前記カラーインク吐出部及び前記抜染インク吐出部を兼ねている。インク吐出部3の内部には、後述するように、インク吐出手段が設けられている。ただし、画像形成装置1は、インク吐出部3が前記カラーインク吐出部及び前記抜染インク吐出部を兼ねる形態には制限されない。すなわち、画像形成装置1は、前記カラーインク吐出部と前記抜染インク吐出部とを、それぞれ別の構成として含んでおり、前記カラーインク吐出部の内部に、カラーインク吐出手段が設けられており、前記抜染インク吐出部の内部に、抜染インク吐出手段が設けられていてもよい。
【0028】
加熱処理部4の内部には、後述するように、接触加熱手段が設けられている。
【0029】
インク吐出部3の前方の右端部には、表示装置7、及びボタン8を有する操作パネル6が設けられている。表示装置7は、例えば、液晶ディスプレイがあげられる。ボタン8は、画像形成開始信号を制御部5に入力するものである。なお、ボタン8に加えて、または代えて、例えば、タッチパネルである表示装置7が、ユーザの入力を受付けし、画像形成開始信号を制御部5に入力してもよい。インク吐出部3及び加熱処理部4の筐体9の前壁には、プラテン31及びプラテン31に保持された布帛が出入可能な開口部10が設けられている。これ以降において、前方、後方、左方及び右方は、
図1に矢印で示したとおりである。
【0030】
図2及び
図3は、
図1に示す画像形成装置1の内部構造を透視的に示す平面図及び側面図である。
図2及び
図3に示すように、インク吐出部3の内部には、インクジェットノズル列を有するインク吐出手段(液体吐出ヘッド)12と、この液体吐出ヘッド12を搭載したキャリッジ13とが設けられ、このキャリッジ13を案内する上下一対のガイドロッド14及び15が、それぞれ、左右方向に架設されている。
【0031】
ガイドロッド14及び15の右端部には、キャリッジ13を左右方向へ往復搬送するステッピングモータからなるキャリッジモータ18が設けられている。キャリッジ13は、ガイドロッド14及び15と平行に掛けられたベルト(図示省略)に連結されている。前記ベルトは、キャリッジモータ18に連結されたプーリ(図示省略)とガイドロッド14及び15の左端部に設けられたプーリ(図示省略)とに掛け渡されている。キャリッジモータ18を駆動することで、液体吐出ヘッド12及びキャリッジ13が、ガイドロッド14及び15に沿って左右方向(主走査方向)に搬送される。キャリッジ13と、ガイドロッド14及び15と、キャリッジモータ18と、前記プーリと、前記ベルトとで、液体吐出ヘッド搬送機構を構成する。
【0032】
インクセット収容部2に収容されたインク収容容器(インクカートリッジ)は、供給チューブを介して液体吐出ヘッド12に接続されている。
図1~3には、前記インク吐出手段が、それぞれ、インクジェットノズル列を有する液体吐出ヘッド12である例を示したが、前記インク吐出手段は、インクを布帛に吐出可能であればいかなる手段であってもよく、例えば、スプレー、インクを布帛に塗布するスタンプ、刷毛、ローラ等であってもよい。なお、前記カラーインクを吐出する前記インク吐出手段、及び、前記抜染インクを吐出する前記インク吐出手段は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
インク吐出部3及び加熱処理部4の左右方向中央部には、プラテン31が搭載された移動部材60を案内する左右一対のガイドレール(図示省略)が前後方向に列設されている。プラテン31の下側には、トレー63が、移動部材60に固定されている。
【0034】
左右一対のガイドレールの前端部付近には、それらの間にプラテンモータ26が設けられている。プラテンモータ26の出力軸には、プーリ16が固定されている。プラテンモータ26よりも前側の付与部の底部には、プーリ27が支持されている。プーリ16及びプーリ27には、ベルト17が掛け渡されている。プーリ27は、同軸上方にプーリ24を有する。加熱処理部4の下方には、プーリ28が回転可能に支持されている。プーリ24及びプーリ28には、ベルト25が掛け渡されている。ベルト25には、移動部材60が連結されている。プラテンモータ26の回転駆動によって、プーリ16が回転する。プーリ16の回転は、ベルト17を介してプーリ24を回転させる。プーリ24の回転は、ベルト25に伝達し、移動部材60を左右一対のガイドレールに沿って前後方向(副走査方向)に搬送する。プラテンモータ26と、左右一対のガイドレールと、プーリ16、24、27及び28と、ベルト25とで、プラテン搬送機構を構成する。
【0035】
図3に示すように、加熱処理部4の内部には、前記還元剤を含む抜染インクの付与部を接触加熱して還元反応を促進する接触加熱手段30が設けられている。接触加熱手段30は、ヒートプレス板34と、ヒートプレス板34を上下方向に摺動可能に弾性支持する弾性支持機構43と、プラテン31に保持された布帛の表面に対してヒートプレス板34を離接可能に昇降駆動する昇降駆動機構(図示省略)と、を備えている。ヒートプレス板34は、例えば、シリコンゴム発泡体製の断熱板と、前記断熱板の下面に固定されたヒートプレス部と、で構成されていてもよい。前記ヒートプレス部は、例えば、内部にニクロム線が配設されたヒートシート(発熱部)と、前記ヒートシートを挟み込むように配置された鉄製の蓄熱材と、で構成されている。
【0036】
加熱処理部4は、その内部に、さらに、非接触加熱手段を含んでもよい。前記非接触加熱手段としては、例えば、オーブン、ベルトコンベアオーブン等があげられる。前記非接触加熱手段は、加熱処理部4の内部に設けるのではなく、画像形成装置1とは別個独立に設けられてもよい。なお、接触加熱手段30に代えて、前記非接触加熱手段が、前記抜染インクの付与部の加熱を行ってもよい。
【0037】
つぎに、
図4を用いて、制御部5について説明する。制御部5は、中央演算装置(例えば、CPU(Central Processing Unit)87と、ROM(Read Only Memory)88と、RAM(Random Access Memory)89と、入力インターフェース85と、出力インターフェース90とがバス81を介して電気的に接続されている。入力インターフェース85には、ボタン8等が電気的に接続されている。出力インターフェース90には、液体吐出ヘッド12と、ヒートプレス板34と、キャリッジモータ18と、プラテンモータ26と、表示装置(ディスプレイ)7等が駆動回路91~95を介して、それぞれ、電気的に接続されている。
【0038】
CPU87は、ボタン8によって入力された信号や、ROM88及びRAM89内の各種プログラムやデータに基づいて各種演算や処理を行う。そして、出力インターフェース90を介して、インク吐出部3及び加熱処理部4の各構成部材にデータ等を送信する。RAM89は、読み出し・書き込み可能な揮発性記憶装置であって、CPU87での各種演算結果等が記憶される。
【0039】
制御部5は、前記カラーインク吐出部及び前記抜染インク吐出部に対し、第1のステップで前記カラーインクを前記布帛に吐出させ、前記第1のステップの後、第2のステップで前記抜染インクを前記布帛に吐出させる制御をする。前記第1のステップ、および前記第2のステップは、繰り返し実行されてもよい。
【0040】
本例の画像形成装置を用いた布帛へのインクの吐出は、例えば、つぎのようにして実施できる。まず、前記第1のステップとして、前記水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを、布帛に付与(吐出)する。
【0041】
具体的には、液体吐出ヘッド搬送機構及びプラテン搬送機構によりプラテン31及び液体吐出ヘッド12を搬送させながら、前記布帛の画像形成箇所に前記カラーインクを用いて画像を印刷する。画像形成装置1の制御部(コントロールユニット)5のROM88及びRAM89の少なくとも一方には、ソフトウェアによって作成された種々の画像データやTシャツ等の布帛の種類毎の各種データが格納されている。オペレータが印刷の実施を指示すると、前記画像データが出力インターフェース90を介して液体吐出ヘッド12に送信され、前記画像データに基づいて液体吐出ヘッド12からインクが吐出されて、プラテン31に保持された前記布帛への印刷が実施される。
【0042】
前記布帛への前記カラーインクの付与量は、特に制限されず、例えば、5mg/cm2~32mg/cm2であればよい。
【0043】
つぎに、前記第2のステップとして、前記第1のステップと同様にして、前記還元剤を含む抜染インクを、布帛に付与(吐出)する。
【0044】
前記布帛への前記抜染インクの付与量は、特に制限されず、例えば、5mg/cm2~32mg/cm2であればよい。
【0045】
制御部5は、前記第1のステップの後、前記第2のステップを実行すればよく、前記各ステップの間隔時間は、特に制限されず、例えば、1~60秒である。
【0046】
制御部5は、例えば、前記第2のステップにおいて、前記抜染インク吐出部に対し、前記布帛において前記カラーインクが吐出された領域に、前記抜染インクを吐出させる制御をしてもよい。
【0047】
なお、さらに、例えば、前記第1のステップ及び前記第2のステップの後、前記インクを前記布帛に熱定着させる熱処理工程を行ってもよい。前記熱処理工程は、例えば、つぎのようにして実施できる。プラテンモータ26の駆動により、布帛及びプラテン31を加熱処理部4へ移動させた後、前記昇降駆動機構により接触加熱手段30を下降させ、所定温度のヒートプレス板34により布帛を所定時間押圧した状態とし、前記カラーインク及び前記抜染インクの付与部を接触加熱して還元反応を促進する。前記還元反応促進における加熱温度及び加熱時間は、特に制限されず、適宜設定できる。
【0048】
本発明による抜染インク及びカラーインクが吐出された布帛の洗濯堅牢性向上のメカニズムは、例えば、つぎのように推察される。すなわち、従来の方法では、まず、布帛に抜染インクを吐出し、その後、カラーインクを吐出する。この方法では、布帛に先に吐出された抜染インクにカラーインクが接触することで、カラーインクと抜染インクとの凝集が生じやすくなる。そして、カラーインクが布帛に浸透するよりも前に前記凝集が生じる等により、カラーインクと布帛繊維との絡みが弱くなる。このため、洗濯時にカラーインクが洗い流されてしまい、洗濯堅牢性が低下すると推察される。これに対し、本発明は、まず、布帛にカラーインクを吐出し、その後、抜染インクを吐出することで、カラーインクが布帛に浸透し、布帛繊維と絡みやすくなり、洗濯堅牢性が向上すると推察される。ただし、本発明は、前記推察に限定されない。
【0049】
本発明は、画像形成方法も提供可能である。本発明の画像形成方法は、布帛に対し、水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを吐出する第1のステップと、前記布帛に対し、還元剤を含む抜染インクを吐出する第2のステップとを含み、前記第1のステップの実施後、前記第2のステップを実施する。
【0050】
本発明の画像形成方法は、例えば、前述の
図1~4に示す画像形成装置を用いて実施できる。前記第1のステップ、及び前記第2のステップは、前述の通りである。
【0051】
本発明の画像形成方法は、例えば、さらに、前記第1のステップ及び前記第2のステップの後、前記インクを前記布帛に熱定着させる熱処理工程を含んでもよい。前記熱処理工程は、前述の通りである。
【0052】
本発明は、画像形成のためのプログラムも提供可能である。本発明のプログラムは、前記本発明の画像形成方法の各工程(ステップ)を、手順として、コンピュータである画像形成装置に実行させるためのプログラムである。本発明において、「手順」は、「処理」と読み替えてもよい。また、本実施形態のプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。前記記録媒体としては、特に限定されず、例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク(HD)、光ディスク等が挙げられる。
【0053】
本発明は、さらに、画像を有する布帛の製造方法も提供可能である。本発明の布帛の製造方法は、画像を有する布帛の製造方法であって、本発明の画像形成方法により前記布帛に画像を形成する工程を有することを特徴とする。
【0054】
本発明の画像形成方法及び布帛の製造方法によれば、抜染インク及びカラーインクが吐出された布帛において、画像形成部の洗濯堅牢性を向上させることができる。
【実施例】
【0055】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
【0056】
[実施例1]
(カラーインク)
カラーインクとして、市販のカラーインクのインクセットA~Cに含まれる各色のインク(色:イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を用いた。なお、前記インクセットA~Cに含まれる、マゼンタのカラーインクを、以下、それぞれ、カラーインクA~Cともいう。
【0057】
カラーインクA~Cを分析し、カラーインクA及びCが、ウレタン樹脂を含むこと、並びにカラーインクBが、アクリル樹脂を含むことを確認した。
【0058】
(抜染インク)
抜染インク1として、下記組成の抜染インクを調製した。また、抜染インク2として、0.6mol/lのロンガリット水溶液を調製した。
(抜染インク1)
二酸化チオ尿素 6.5重量%
アクリルアミド 8.4重量%
2-アミノ-2-メチル-アミノプロパノール 17.5重量%
水、その他 残部
【0059】
(画像形成)
布帛として、黒色の市販のTシャツA及びB(材質:綿100%)を用いた。前記布帛に、まず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、グリーン、及びブルーの各色となるように、インクセットA~Cに含まれる各色のカラーインクをそれぞれ付与した。なお、前記レッド、グリーン、及びブルーについては、前記各色のカラーインクを混色して用いた。その後、前記カラーインクの付与部に、前記抜染インク(抜染インク1または2)を付与した。さらに、前記カラーインク及び前記抜染インクの付与部に対し、接触加熱を行い、熱定着させた。前記接触加熱は、ヒートプレス機を用いて、180℃、90秒の条件で行った。また、比較例として、まず、前記抜染インクを付与し、その後、前記カラーインクを付与した以外は同様にして、布帛への画像形成を行った。
【0060】
(洗濯)
前記Tシャツについて、前記各インクの付与部を含む一部を切り取り、前記切り取った布帛について、AATCC 61IIA法に準拠して、洗濯及び乾燥を1サイクルとして、計5サイクル行った。
【0061】
(洗濯堅牢性の評価)
前記洗濯後、及び未洗濯の前記布帛について、X-Rite社製のCIE1976L*a*b*色空間スケール測色計X-Rite939を用いて、カラーインクA~Cの付与部の測色を行い、光学濃度OD値を算出した。ΔOD値の算出は、式:ΔOD値=未洗濯OD値-洗濯済OD値 とした。なお、ΔOD値がより小さい値であれば、洗濯前後での数値変化がより小さいといえ、インク剥がれが少なく、洗濯堅牢性が良いと判断することができる。
【0062】
図5に、インクセットAを用いた場合の、前記布帛の写真を示す。
図5は、(A)比較例、及び(B)実施例のインクの付与順序における、洗濯前及び洗濯後の前記布帛の写真であり、それぞれにおいて、上が洗濯前、左が洗濯後であり、左から、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、グリーン、及びブルーの結果を示す。また、図中一番右は、抜染インク1のみを用いた結果を示す。
【0063】
図5(A)及び(B)に示すように、洗濯前において、実施例及び比較例の布帛を目視で確認したところ、色合いに明らかな差異はみられなかった。また、洗濯前の光学濃度(OD値)を比較したところ、ほぼ同じ値であった。このことから、本発明において、カラーインクを抜染インクよりも先に付与しても、カラーインクの着色能力及び抜染インクの抜染能力への影響はみられなかった。また、
図5(A)及び(B)に示すように、洗濯後において、実施例及び比較例の布帛を目視で確認したところ、比較例においては、いずれの色においても、洗濯前と比べてインクの剥がれが確認できた。一方、実施例においては、洗濯前と比べてほとんどインクの剥がれが確認できなかった。
【0064】
つぎに、洗濯堅牢性の評価の結果を
図6に示す。
図6は、カラーインクA、並びに抜染インク1及び2を用いた場合のΔOD値を示すグラフであり、(A)は、TシャツAを用いた場合の結果を示し、(B)は、TシャツBを用いた場合の結果を示す。各図中、横軸は、抜染インク1及び2を示し、それぞれにおいて、左が比較例、右が実施例の結果を示し、縦軸は、ΔOD値を示す。
【0065】
図6に示すように、いずれの条件においても、実施例において、比較例よりもΔOD値が減少していた。このことから、前記還元剤として二酸化チオ尿素およびロンガリットのいずれを含む抜染インクを用いた場合においても、本発明のインクの付与順序とすることにより、洗濯堅牢性が向上することが示された。
【0066】
また、
図6に示すように、特に、前記還元剤として二酸化チオ尿素を含む抜染インク1を用いた場合、TシャツA及びBのいずれにおいても、実施例において、比較例よりもΔOD値が大きく減少していた。このことから、前記還元剤として二酸化チオ尿素を含む抜染インクを用いた場合、本発明のインクの付与順序とすることにより、洗濯堅牢性がより大きく向上することが示された。
【0067】
つぎに、前記抜染インクとして、抜染インク1を用い、さらに、カラーインクとして、ウレタン樹脂を含むカラーインクA及びC、並びにアクリル樹脂を含むカラーインクBを用いた以外は同様にして、それぞれの前記ΔOD値を算出した。
【0068】
この結果を
図7に示す。
図7は、カラーインクA~Cを用いた場合のΔOD値を示すグラフであり、(A)は、TシャツAを用いた場合の結果を示し、(B)は、TシャツBを用いた場合の結果を示す。各図中、横軸は、カラーインクA~Cを示し、それぞれにおいて、左が比較例、右が実施例の結果を示し、縦軸は、ΔOD値を示す。
【0069】
図7に示すように、いずれの条件においても、実施例において、比較例よりもΔOD値が減少していた。このことから、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂のいずれの前記水性樹脂エマルジョンを含むカラーインクを用いた場合においても、本発明のインクの付与順序とすることにより、洗濯堅牢性が向上することが示された。
【0070】
また、
図7に示すように、特に、前記水性樹脂エマルジョンとしてウレタン樹脂を含むカラーインクA、及びCを用いた場合、TシャツA及びBのいずれにおいても、実施例において、比較例よりもΔOD値が大きく減少していた。このことから、前記水性樹脂エマルジョンとしてウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合、本発明のインクの付与順序とすることにより、アクリル樹脂を含むカラーインクを用いた場合と比較して、洗濯堅牢性がより向上することが示された。
【0071】
[実施例2]
(カラーインクの調製)
カラーインクとして、下記表1に示す組成の樹脂水溶液を調製した。まず、樹脂として、下記表2に示すウレタン樹脂(UC001~UC009)を用い、前記組成比となるように、前記樹脂と純水とを、均一に混合することにより、水性樹脂エマルジョンを含むインク溶媒を得た。前記ウレタン樹脂の種類は、UC001~UC003が、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、UC004~UC006が、ポリエステル系ウレタン樹脂、及びUC007~UC009が、ポリエーテル系ウレタン樹脂とした。つぎに、顔料である着色剤(色:マゼンタ)を用い、前記組成比となるように、前記着色剤に前記インク溶媒を加え、均一に混合し、各ウレタン樹脂(UC001~UC009)に対応するカラーインクU1~U9を得た。
【0072】
【0073】
抜染インクは、前記実施例1の抜染インク1及び2を用いた。洗濯は、前記各インクの付与部を含む一部を切り取り、前記切り取った布帛について、家庭用洗濯機及び乾燥機を用い、洗濯及び乾燥を1サイクルとして、計5サイクル行った。
【0074】
カラーインクU1~U9を用いた場合について、洗濯堅牢性の評価を、前記実施例1と同様にして行った。
【0075】
つぎに、カラーインクU1~U9を、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含むカラーインクU1~U3(カーボネート)、ポリエステル系ウレタン樹脂を含むカラーインクU4~U6(エステル)、及びポリエーテル系ウレタン樹脂を含むカラーインクU7~U9(エーテル)の各群に群分けし、前記各群について、ΔOD値の平均値を算出した。
【0076】
この結果を
図8に示す。
図8は、前記各群のカラーインクを用いた場合のΔOD値の平均値を示すグラフである。
図8(A)は、Tシャツの種類ごとの結果を示し、横軸は、前記カーボネート、エステル、及びエーテルの各群を示し、それぞれにおいて、左から、TシャツAを用いた比較例、TシャツAを用いた実施例、TシャツBを用いた比較例、及びTシャツBを用いた実施例を示し、縦軸は、ΔOD値の平均値を示す。
図8(B)は、TシャツA及びBの結果の平均値を示し、横軸は、前記カーボネート、エステル、及びエーテルの各群を示し、それぞれにおいて、左から、比較例、及び実施例を示し、縦軸は、ΔOD値の平均値を示す。
【0077】
図8(A)に示すように、いずれの条件においても、実施例において、比較例よりもΔOD値が減少していた。このことから、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリエーテル系のいずれのウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合においても、本発明のインクの付与順序とすることにより、洗濯堅牢性が向上することが示された。
【0078】
また、
図8(B)に示すように、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合、ポリエステル系ウレタン樹脂、およびポリエーテル系ウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合と比較して、実施例におけるΔOD値がより低く、洗濯堅牢性が良好であることが示された。ポリエステル系ウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合、ポリエーテル系ウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合と比較して、実施例におけるΔOD値がより低く、洗濯堅牢性が良好であることが示された。また、ポリエーテル系ウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、およびポリエステル系ウレタン樹脂を含むカラーインクを用いた場合と比較して、本発明のインクの付与順序とすることによるΔOD値の減少量がより大きく、本発明のインクの付与順序により、洗濯堅牢性がより大きく向上することが示された。
【0079】
[実施例3]
(凝集試験)
カラーインクとして、前記実施例1のカラーインクA、及び前記実施例2のカラーインクU1~U9を用い、抜染インクとして、前記実施例1の抜染インク1及び2を用いた。
た。
【0080】
市販の試験管に、2mlの前記抜染インクを入れ、前記試験管に、20ulの前記カラーインクを滴下した。前記滴下後、1分間静置し、10umのメンブレンフィルターを用いて、前記試験管の内容物を吸引ろ過した。前記フィルター表面に残った前記内容物を、光学顕微鏡を用いて50倍の倍率に拡大して観察し、画像を取得した。前記フィルター表面における300um以上の凝集物の有無を肉眼により確認し、さらに、画像解析ソフトを用いて、前記画像における前記凝集物の面積率(前記画像の面積における前記凝集物の面積の割合(%))を算出した。
【0081】
この結果を表3及び表4に示す。表3は、カラーインクA、及び、抜染インク1または2を用いた場合の凝集物の有無及び面積率を示す表である。表4は、カラーインクU1~9のいずれか、及び、抜染インク1を用いた場合の凝集物の有無及び面積率を示す表である。
【表3】
【表4】
【0082】
表3に示すように、カラーインクA及び抜染インク1を用いた場合、凝集物が確認された。一方、抜染インク2を用いた場合、凝集物は確認されなかった。
【0083】
また、表4に示すように、カラーインクU1~5、またはU7~9のいずれか、及び抜染インク1を用いた場合、凝集物が確認された。一方、カラーインクU6を用いた場合、凝集物は確認されなかった。凝集物が確認されたインクは、例えば、画像形成部の滲みを低減することから、画質の品質が高いといえる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明の画像形成装置は、抜染インク及びカラーインクが吐出された布帛において、画像形成部の洗濯堅牢性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 画像形成装置
2 インクセット収容部
3 インク吐出部
4 加熱処理部
5 制御部