(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】災害時支援システム、災害時支援方法及び災害時支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20241016BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2020133643
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055546(JP,A)
【文献】特開2017-187874(JP,A)
【文献】特開2007-238202(JP,A)
【文献】特開2012-146078(JP,A)
【文献】特開2019-160152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を監視する監視装置に接続された制御部を備えた災害時支援システムであって、
前記制御部が、
災害検知時に、前記監視装置から、前記設備の被災状況、所在者状況及び利用可能量を取得し、
前記所在者状況として、所在者人数及び所在者属性を特定し、
前記被災状況及び救済活動状況に応じて、復旧所要時間を予測し、
前記復旧所要時間に対して、前記
所在者人数、前記所在者属性及び前記利用可能量に応じて、前記設備の使用制限のための制御情報を出力する災害時モード制御処理を実行することを特徴とする災害時支援システム。
【請求項2】
前記制御部が、前記監視装置から、前記設備が取り扱うリソースの利用可能量を取得することを特徴とする請求項1に記載の災害時支援システム。
【請求項3】
設備を監視する監視装置に接続された制御部を備えた災害時支援システムを用いて災害時支援を行なう方法であって、
前記制御部が、
災害検知時に、前記監視装置から、前記設備の被災状況、所在者状況及び利用可能量を取得し、
前記所在者状況として、所在者人数及び所在者属性を特定し、
前記被災状況及び救済活動状況に応じて、復旧所要時間を予測し、
前記復旧所要時間に対して、前記
所在者人数、前記所在者属性及び前記利用可能量に応じて、前記設備の使用制限のための制御情報を出力する災害時モード制御処理を実行することを特徴とする災害時支援方法。
【請求項4】
設備を監視する監視装置に接続された制御部を備えた災害時支援システムを用いて災害時支援を行なうためのプログラムであって、
前記制御部を、
災害検知時に、前記監視装置から、前記設備の被災状況、所在者状況及び利用可能量を取得し、
前記所在者状況として、所在者人数及び所在者属性を特定し、
前記被災状況及び救済活動状況に応じて、復旧所要時間を予測し、
前記復旧所要時間に対して、前記
所在者人数、前記所在者属性及び前記利用可能量に応じて、前記設備の使用制限のための制御情報を出力する災害時モード制御処理を実行する手段として機能させることを特徴とする災害時支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時の対応を支援する災害時支援システム、災害時支援方法及び災害時支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害が発生した場合にも、被災後に建物を継続して使用する要望が増えている。例えば、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)においては、企業が、危機的状況下におかれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意する。また、家庭での生命や住環境の維持などを重視するLCP(Life Continuity Plan)も検討されている。そして、BCPやLCPの実行を支援し、特定建物等の機能維持のための管理システムが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に開示された技術においては、特定情報検出手段は、外部から供給されるライフライン要素の受給状況を検出し、供給されるライフライン要素について特定範囲内の接続状況を検出する。また、特定装置作動手段は、ライフライン要素の全部又は一部を自力供給するとともに、供給経路の開通及び遮断を操作する。管理手段は、業務を継続するために必要なライフライン要素を記憶し、自力供給装置を作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被災直後の混乱期には、多様な情報が交錯する可能性があり、的確な対応が困難である。例えば、事業や生活を継続させるためには、電気や水等のリソースを復旧まで維持させる必要がある。そして、復旧までの所要時間は、被災状況や被災者によって異なる。また、リソース利用を厳しく制限したのでは、被災時における適切な行動を支援することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための災害時支援システムは、監視装置に接続された制御部を備える。そして、前記制御部が、災害検知時に、前記監視装置から、設備の被災状況、被災者状況及び設備状況を取得し、前記被災状況、救済活動状況に応じて、復旧所要時間を予測し、前記復旧所要時間に対して、前記被災者状況及び前記設備状況に応じて、前記設備の使用制限のための制御情報を出力する災害時モード制御処理を実行する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被災時に、所在者の活動を継続できるように、活動に必要な資源の管理を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】実施形態の記憶部の説明図であって、(a)は建物情報記憶部、(b)はユーザ情報記憶部、(c)は設備情報記憶部、(d)は所在者情報記憶部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図6に従って、災害時支援システム、災害時支援方法及び災害時支援プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、建物内において、建物内の被災者(所在者)の活動を支援する。このために、各種設備が通常使用可能な状態に復旧するまでに要する時間(復旧所要時間)において、限られた資源を管理する災害時支援システムとして説明する。なお、被災時の建物内にいた人だけではなく、各設備の復旧までに、出入りがある建物内にいる人を対象としてもよい。このため、以下では「所在者」を用いる。
図1に示すように、本実施形態では、ネットワークに接続された監視装置群10、管理サーバ20、管理端末30、外部システム40を用いる。
【0009】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、監視装置群10、管理サーバ20、管理端末30、外部システム40を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0010】
通信装置H11は、他の装置との間で通信ルートを確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0011】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶部H14は、監視装置群10、管理サーバ20、管理端末30、外部システム40の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0012】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、監視装置群10、管理サーバ20、管理端末30、外部システム40における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0013】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0014】
(システム構成)
次に、
図1を用いて、災害時支援システムの各機能を説明する。
監視装置群10は、いわゆるIoT(Internet of Things)機器を含み、建物の館内の各種情報を取得する。本実施形態では、設備監視装置11、監視カメラ12、通信基地局13、人感センサ14、入館管理サーバ15等が含まれる。
【0015】
設備監視装置11は、センサ等により、各種設備の状況を検知する。各種設備は、建物内で、人の活動継続に利用される資源(リソースやユーティリティ等)が含まれる。例えば、貯水タンク、燃料タンク、ガスタンク、備蓄品、排水槽等がある。貯水槽の設備監視装置11においては、例えば、建物に供給する飲料水や水洗水の供給設備の水位や稼働状況を検知する。燃料タンクの設備監視装置11においては、例えば、非常用発電に用いる燃料の供給設備の備蓄量や稼働状況を検知する。ガスタンクの設備監視装置11においては、例えば、病院内において供給する酸素、亜酸化窒素(笑気)、治療用空気、二酸化炭素等、建物内で使用されるガスの供給設備の備蓄量や稼働状況を検知する。備蓄品の設備監視装置11については、備蓄倉庫において、例えば、飲料水、非常食、清潔品、救急用品等の備蓄品に貼付されたRFIDタグを無線タグリーダで読み取り、備蓄品の備蓄量を検知する。
【0016】
監視カメラ12は、建物内の状況を撮影した画像を生成する。この撮影画像は、建物の被災状態や、建物内の被災者(所在者)の所在状況を特定する場合に用いられる。
通信基地局13は、ユーザが使用する通信装置を利用したローカル無線通信の中継装置である。このローカル無線通信の中継状況は、通信装置の利用者の所在を特定する場合に用いられる。
【0017】
人感センサ14は、赤外線、超音波、可視光等を用いて、人の所在を検知するセンサである。
入館管理サーバ15は、ユーザが所持するカードや名札タグ等をリーダで読み取ることにより、建物内の居室等におけるユーザの入室状況や退室状況を管理する。この入退室状況は、ユーザの所在を特定する場合に用いられる。
【0018】
管理サーバ20は、監視装置群10から取得した各種情報を用いて、災害対応を支援するコンピュータシステムである。この管理サーバ20は、制御部21、建物情報記憶部22、ユーザ情報記憶部23、設備情報記憶部24、所在者情報記憶部25を備える。
【0019】
制御部21は、後述する処理(管理段階、取得段階、評価段階、予測段階等を含む処理)を行なう。このため、各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、管理部211、取得部212、評価部213、予測部214等として機能する。
【0020】
管理部211は、館内設備の利用を管理する処理を実行する。そして、災害発生時には、災害時モードにより制御情報を出力し、各館内設備の稼働等を管理する。本実施形態では、この災害時モードには、館内の活動状況(救助、復旧)に応じて、以下の3段階の災害時モード制御処理の切替を行なう。
【0021】
・第1モード:救助活動、復旧活動の実施を検知した場合、救助活動が行なわれている場所に対して必要量を供給する制御モード
・第2モード:救助や復旧を待機しながら、使用可能量及び復旧所要時間に応じて、供給先、供給を制限する制御モード
・第3モード:救助や復旧を待機しながら、必要最小限の活動に対応させて、供給先、供給量、供給時間を制限する制御モード
【0022】
そして、管理部211は、各災害時モードに応じて、災害に対応するためのメッセージの出力や、館内設備の制御等を行なう。
【0023】
また、管理部211は、被災レベル、復旧所要時間に基づいて、外部システム40への支援要請の要否を判定するための救助支援レベル情報を保持している。この救助支援レベル情報では、被災レベルが高い場合や復旧所要時間が長い場合に、支援要請が必要と判定する。
【0024】
取得部212は、監視装置群10等から各種情報を取得する処理を実行する。更に、取得部212は、監視カメラ12から人物の撮影画像を取得した場合、顔画像の顔認識により、ユーザ情報記憶部23に記録されたユーザ識別子を特定する。更に、取得部212は、監視カメラ12から取得した人物の撮影画像により、画像認識を用いて、性別や年齢等の属性情報を推定する。また、属性情報として、被災した社員や復旧作業者等の職種を推定してもよい。
【0025】
評価部213は、取得した情報に基づいて、被災状況を評価する処理を実行する。本実施形態では、撮影画像やセンサ情報に基づいて、各館内設備の被災レベル(被災状況)を特定する。この被災レベルの特定には、機械学習等を用いることができる。例えば、各館内設備の被災時の撮影画像やセンサ情報に対して、被災レベルを関連付けた教師データを用いた機械学習(深層学習)により、被災レベルを予測するための被災状況予測モデルを生成し、評価部213に保持させておく。そして、評価部213は、被災時に取得した撮影画像やセンサ情報に、被災状況予測モデルを適用して、被災レベルを予測する。
【0026】
予測部214は、被災レベル、復旧状況に基づいて、復旧完了までに要する所要時間を予測する処理を実行する。この予測部214は、館内設備毎の被災レベル、復旧状況に応じて、復旧所要時間を算出するための情報を保持する。
【0027】
図3(a)に示すように、建物情報記憶部22には、フロアマップ220が記録される。このフロアマップ220は、建物のレイアウトや館内設備に関する情報が登録された場合に記録される。
このフロアマップ220には、各フロアのレイアウトが設定されている。そして、レイアウトには、各センサの設置位置(例えば、座標)が記録されている。
【0028】
図3(b)に示すように、ユーザ情報記憶部23には、建物を利用するユーザについてのユーザ管理データ230が記録される。このユーザ管理データ230は、ユーザ登録が行なわれた場合に記録される。ユーザ管理データ230には、ユーザ識別子、所属、ユーザ属性に関するデータが記録される。
【0029】
ユーザ識別子データ領域には、各ユーザを特定するための識別子に関するデータが記録される。
所属データ領域には、このユーザが属する部署を特定するための識別子に関するデータが記録される。
ユーザ属性データ領域には、このユーザの属性(性別、役職等)に関するデータが記録される。また、顔認識に用いる特徴量を記録してもよい。
【0030】
図3(c)に示すように、設備情報記憶部24には、この建物で利用可能な館内設備に関する設備管理データ240が記録される。設備管理データ240は、設備監視装置11から、各館内設備の状況情報を取得した場合に更新される。設備管理データ240には、設備識別子、利用可能量、設備状況に関するデータが記録される。
【0031】
設備識別子データ領域には、各館内設備を特定するための識別子に関するデータが記録される。館内設備には、貯水槽、燃料タンク、ガスタンク、備蓄品、排水槽等がある。
利用可能量データ領域には、この館内設備の状況に関するデータが記録される。例えば、設備「貯水槽」に対しては、利用可能量として貯水量が記録される。設備「燃料タンク」に対しては、利用可能量として貯水量や外部からの供給状況が記録される。設備「ガスタンク」に対しては、利用可能量として備蓄量が記録される。設備「備蓄品」に対しては、利用可能量として各備蓄品の備蓄数が記録される。設備「排水槽等」に対しては、利用可能量として蓄積可能量や外部への排水状況が記録される。
【0032】
設備状況データ領域には、この館内設備の被災状況(被災レベル)や、管理端末30等から取得した復旧状況に関するデータが記録される。この設備状況により、災害時モードを決定する。また、設備状況には、この設備で管理される資源を利用可能な場所(例えば、資源の供給先)に関するデータを含める。
【0033】
図3(d)に示すように、所在者情報記憶部25には、建物内の所在者についての所在者管理データ250が記録される。この所在者管理データ250は、所在者を検知した場合に記録される。所在者管理データ250には、所在者識別子、所在地、所在者属性に関するデータが記録される。
【0034】
所在者識別子データ領域には、建物内の各所在者を特定するための識別子に関するデータが記録される。
所在地データ領域には、この所在者の所在位置(例えば、座標)に関するデータが記録される。
所在者属性データ領域には、所在者の属性に関するデータが記録される。監視カメラ12から取得した撮影画像の顔認識により本人を特定した場合や、入館管理サーバ15から、入室者情報を取得した場合には、この所在者属性データ領域にはユーザ識別子が記録される。また、監視カメラ12から取得した人物の撮影画像により画像認識を行なった場合には、属性(画像認識を用いて推定した性別や年齢等)が記録される。一方、人感センサ14により検知した所在者のように、本人を特定できない場合には、この所在者属性データ領域は空欄とする。
【0035】
図1に示す管理端末30は、建物の管理者が用いるコンピュータ端末である。この管理端末30を用いて、例えば、復旧活動等に関する復旧状況等を入力する。
外部システム40は、連携可能な他拠点(本支店)や救助先のコンピュータシステムである。
【0036】
(災害時支援処理)
次に、
図4~
図6を用いて、上記のように構成された管理サーバ20における災害時支援方法の処理手順を説明する。ここでは、まず、災害時支援処理に用いるデータを説明する。そして、平常時モード(
図5)、災害時モード(
図6)の順番に説明する。
【0037】
図4に示すように、災害発生時には、館内設備の利用可能量D1を取得する。利用可能量の検知には、例えば、設備監視装置11から取得したセンサ情報を用いる。
そして、館内設備の被災状況D2、復旧状況D3に応じて、復旧所要時間D4を予測する。被災状況D2の検知には、例えば、監視カメラ12の撮影画像、設備監視装置11のセンサ情報を用いて特定する。復旧状況D3の検知には、例えば、管理端末30の入力情報を用いる。
【0038】
更に、館内の所在者の所在情報D5(所在位置、所在者人数、所在者属性)に応じて、館内設備の単位時間当たりの各館内設備の利用総量を予測する。所在者の検知には、例えば、監視カメラ12の撮影画像、人感センサ14、入館管理サーバ15を用いる。
【0039】
そして、予測した復旧所要時間D4において、所在者が館内設備の利用できるように、館内設備の利用を制御する。この制御には、館内設備の利用制限や、所在者を誘導するためのメッセージ出力等が含まれる。
【0040】
(平常時モード)
まず、
図5を用いて、平常時モードを説明する。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、モニタリング処理を実行する(ステップS101)。具体的には、制御部21の取得部212は、設備監視装置11から、各館内設備の状況情報を取得し、設備情報記憶部24に記録する。また、取得部212は、監視カメラ12、人感センサ14において、人を検知した場合、所在者情報記憶部25に記録する。取得部212は、監視カメラ12から取得した人物の撮影画像の顔認識により、ユーザ情報記憶部23に記録されたユーザ識別子を特定できた場合には、特定したユーザ識別子を、所在者属性として所在者情報記憶部25に記録する。また、通信基地局13や入館管理サーバ15から取得した情報により所在者を特定できた場合にも、取得部212は、ユーザ識別子に関連付けられたユーザ属性を、所在者属性として所在者情報記憶部25に記録する。一方、ユーザ識別子を特定できない場合には、撮影画像により推定した性別や年齢等の属性情報を所在者属性として記録する。また、取得部212は、通信基地局13から、ユーザの通信装置の所在地情報を取得した場合、通信装置の利用者のユーザ識別子を特定し、所在者属性として所在者情報記憶部25に記録する。また、取得部212は、入館管理サーバ15から、入退室情報を取得した場合、入室中のユーザ識別子を特定し、所在者属性として所在者情報記憶部25に記録する。
【0041】
次に、管理サーバ20の制御部21は、災害発生かどうかについての判定処理を実行する(ステップS102)。具体的には、災害が発生した場合、担当者は管理端末30に災害情報を入力する。この場合、制御部21の取得部212は、災害発生情報を取得することにより、災害発生と判定する。なお、取得部212が、他のシステム(例えば、災害情報サイトや火災報知機等)から災害発生情報を取得するようにしてもよい。
【0042】
災害発生と判定した場合(ステップS102において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、災害時モード移行処理を実行する(ステップS103)。具体的には、制御部21の管理部211は、災害時モードに切り替えて、評価部213、予測部214を起動する。
一方、災害発生でないと判定した場合(ステップS102において「NO」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、モニタリング処理(ステップS101)を継続する。
【0043】
(災害時モード)
まず、
図6を用いて、災害時モードを説明する。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、所在者の特定処理を実行する(ステップS201)。具体的には、制御部21の取得部212は、所在者情報記憶部25から、建物内の所在者の所在者管理データ250を取得する。
【0044】
次に、管理サーバ20の制御部21は、所在者の属性情報の取得処理を実行する(ステップS202)。具体的には、制御部21の取得部212は、所在者情報記憶部25に記録された所在者管理データ250から、所在者の所在位置及び所在者属性を取得する。所在者管理データ250に、所在者属性としてユーザ識別子が記録されている場合には、取得部212は、ユーザ情報記憶部23からユーザ属性を取得する。このユーザ属性は、後述する設備の利用制御処理において使用する。そして、取得部212は、建物情報記憶部22のフロアマップに、所在者の所在位置を表示したマップ画面を生成して、管理端末30に出力する。これにより、所在者状況として、建物内の所在者の人数及び属性を特定する。
【0045】
次に、管理サーバ20の制御部21は、被災状況の評価処理を実行する(ステップS203)。具体的には、制御部21の取得部212は、監視カメラ12から撮影画像や、設備監視装置11からセンサ情報(稼働状況)を取得する。そして、評価部213は、撮影画像やセンサ情報に基づいて、館内設備毎に被災レベルを特定する。そして、評価部213は、特定した被災レベルを設備状況として設備情報記憶部24に記録する。また、管理端末30において復旧状況が入力された場合には、現在日時に関連付けて復旧状況を設備状況として設備情報記憶部24に記録する。そして、取得部212は、マップ画面のフロアマップに、各館内設備の被災レベルを出力する。
【0046】
次に、管理サーバ20の制御部21は、復旧所要時間の予測処理を実行する(ステップS204)。具体的には、制御部21の予測部214は、特定した被災レベル、復旧状況に基づいて復旧所要時間を予測する。
【0047】
次に、管理サーバ20の制御部21は、設備状況の取得処理を実行する(ステップS205)。具体的には、制御部21の取得部212は、設備情報記憶部24から、各館内設備の利用可能量を取得する。ここでは、利用可能量として、各館内設備の復旧までに利用できるリソースの備蓄量や排水の蓄積可能量を取得する。
【0048】
次に、管理サーバ20の制御部21は、設備の利用制御処理を実行する(ステップS206)。具体的には、制御部21の管理部211は、災害レベル、復旧状況に応じて、運転モードを決定する。例えば、救助活動が行なわれている場合には、救助活動場所に対する必要量を提供する第1モードを実行する。
【0049】
また、第2モードにおいては、予測した復旧所要時間において、館内設備の利用を継続できるように管理する。
例えば、管理部211は、所在者状況(所在者人数、所在者属性)に応じて、単位時間当たりの各館内設備の利用総量を予測する。管理部211は、単位時間当たりの利用総量と復旧所要時間との乗算値と、各館内設備の利用可能量とを比較して、利用制限の要否を判定する。利用制限が必要と判定した場合、復旧所要時間で館内設備を利用できるように、供給量の制限等を行なう。この供給制限には、例えば、電力の制御装置(配電装置、照明、冷暖房等の利用機器)等を制御することにより、電力供給を制限する。また、水やガスについては供給設備において、バルブ操作を行なうことにより、供給を制限する。
また、復旧所要時間が基準値よりも長い場合には、第3モードにより、供給先や供給量、供給時間を制限する。
【0050】
次に、各モードに応じて、所在者に対して、館内設備の利用制限についてのメッセージを送信する。このメッセージは、所在者のユーザ端末に対してブロードキャストや、館内放送設備、パブリックスペースにおける表示装置への送信により出力される。このメッセージには、例えば、被災状況、復旧状況(救援活動状況)、リソースの制限状況、リソースの利用可能な場所に関する情報、避難要請、推奨行動の提案等を含める。
【0051】
次に、管理サーバ20の制御部21は、システム連携処理を実行する(ステップS207)。具体的には、制御部21の管理部211は、救助支援レベル情報を用いて、各館内設備の被災レベル、利用可能量に基づいて救助要請の要否を判定する。そして、支援要請が必要と判定した場合、管理部211は、外部システム40に対して、救助要請を送信する。ここで、取得部212が、外部システム40から、支援可能なリソースに関する支援情報(提供可能量、提供時期)を取得するようにしてもよい。この場合には、取得部212が、設備情報記憶部24の設備管理データ240に、復旧状況として支援情報を記録する。
【0052】
次に、管理サーバ20の制御部21は、災害時支援の完了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS208)。具体的には、制御部21の管理部211は、設備情報記憶部24に記録されたすべての設備管理データ240の設備状況において、復旧完了情報が記録されている場合には、災害時支援の完了と判定する。一方、復旧完了情報が記録されていない館内設備が残っている場合には、災害時支援の未完了と判定する。
【0053】
災害時支援の未完了と判定した場合(ステップS208において「NO」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、ステップS101と同様に、モニタリング処理を実行する(ステップS209)。そして、管理サーバ20の制御部21は、ステップS201以降の処理を継続する。
【0054】
一方、災害時支援の完了と判定した場合(ステップS208において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、平常時モード移行処理を実行する(ステップS210)。具体的には、制御部21の管理部211は、平常時モードに移行し、各館内設備の利用制限を解除する。この場合、通常利用可能な範囲で各館内設備を利用することができる。
【0055】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、モニタリング処理を実行する(ステップS101、S209)。これにより、館内設備の状況や所在者の状況を把握することができる。
【0056】
(2)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、所在者の特定処理(ステップS201)、所在者の属性情報の取得処理(ステップS202)を実行する。これにより、所在者の属性を特定して、属性に応じて対応を行なうことができる。
【0057】
(3)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、被災状況の評価処理を実行する(ステップS203)。これにより、制限対象の館内設備を特定することができる。
(4)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、復旧所要時間の予測処理を実行する(ステップS204)。これにより、館内設備の利用制限が必要な時間を特定することができる。
【0058】
(5)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、設備状況の取得処理を実行する(ステップS205)。これにより、各館内設備の利用可能量を特定することができる。
【0059】
(6)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、設備の利用制御処理を実行する(ステップS206)。これにより、館内設備の利用可能量、復旧所要時間を考慮して、利用を制限することができる。更に、救助活動状況に応じて、リソースの供給先や供給量を調整することができる。
【0060】
(7)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、システム連携処理を実行する(ステップS207)。これにより、必要に応じて、他のシステムに支援要請を行なうことができる。
【0061】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、館内の災害時支援に適用するが、災害時支援の対象はこれに限定されるものではない。例えば、オフィス内や、所定の地域内の複数の建物について、災害時支援を行なうようにしてもよい。また、建物の属性に応じて、各災害時モード制御処理の切替条件を変更するようにしてもよい。この場合には、管理部211に、建物の属性に応じた切替条件を保持させておく。
【0062】
・上記実施形態では、所在者を検知するために、監視カメラ12、通信基地局13、人感センサ14、入館管理サーバ15を用いる。人の検知手段は、これらに限定されるものではない。
【0063】
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、被災状況の評価処理を実行する(ステップS203)。この被災状況は、監視カメラ12から取得した撮影画像や、設備監視装置11から取得したセンサ情報(稼働状況)により特定する。被災状況を特定するための情報は、これらに限定されるものではない。例えば、管理端末30に入力された被災状況を取得するようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、館内設備として、貯水槽、燃料タンク、ガスタンク、備蓄品、排水槽等を想定する。人の活動に利用されるリソースやユーティリティであれば、利用を制限する対象はこれらに限定されるものではない。また、館内設備は複数に限定されることなく、一つであってもよい。この場合には、監視装置群である必要はなく、この設備の監視装置から情報を取得する。
【0065】
・上記実施形態では、第1~第3モードにより、災害時対応を行なう。各館内設備の運転モードは、これらに限定されるものではない。
・上記実施形態では、管理部211は、所在者状況(所在者人数、所在者属性)に応じて、単位時間当たりの各館内設備の利用総量を予測する。ここで、利用総量の予測において、所在者人数及び所在者属性を用いる場合に限定されない。所在者状況として、いずれか一方(例えば、所在者人数のみ)を用いて、利用総量を予測するようにしてもよい。また、所在者人数についても、「10人以上20人未満」のように人数範囲により特定してもよい。
・上記実施形態では、災害時モード制御処理において、リソースの供給先、供給量、供給時間を制御する。制御内容はこれに限定されるものではない。例えば、ユーザ属性に応じて、制限内容を変更するようにしてもよい。例えば、ユーザ属性に応じて、優先度を決定しておき、この優先度に応じてリソースの利用を許容してもよい。
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、復旧所要時間の予測処理を実行する(ステップS204)。ここでは、特定した被災レベル、復旧状況に基づいて復旧所要時間を予測する。これに代えて、機械学習を用いて、被災時に取得した撮影画像やセンサ情報から復旧所要時間を予測してもよい。この場合には、被災状況に応じた復旧所要時間を教師データとして、復旧所要時間の予測モデルを作成する。
【0066】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記制御部が、前記災害時モード制御において、前記設備から提供されるリソースの供給先、供給量、供給時間の少なくとも一つを制御することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の災害時支援システム。
【0067】
(b)前記制御部が、前記災害時モード制御において、所在者を誘導するメッセージを出力することを特徴とする請求項1~5の何れか一項又は(a)に記載の災害時支援システム。
【符号の説明】
【0068】
10…監視装置群、11…設備監視装置、12…監視カメラ、13…通信基地局、14…人感センサ、15…入館管理サーバ、20…管理サーバ、21…制御部、211…管理部、212…取得部、213…評価部、214…予測部、22…建物情報記憶部、23…ユーザ情報記憶部、24…設備情報記憶部、25…所在者情報記憶部、30…管理端末、40…外部システム。