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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】化粧シート及びその貼り付け構造
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20241016BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 1/02 20060101ALI20241016BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01Q13/08
B32B33/00
B32B15/08 D
H01Q1/40
H01Q1/12 D
H01Q1/02
H01Q21/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020173927
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065379
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 伸一
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-039912(JP,U)
【文献】特開2006-319864(JP,A)
【文献】特開平02-121503(JP,A)
【文献】実開平01-021512(JP,U)
【文献】実開平01-033209(JP,U)
【文献】国際公開第2019/150498(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0036209(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0106144(KR,A)
【文献】特開2015-199317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
B32B 33/00
B32B 15/08
H01Q 1/40
H01Q 1/12
H01Q 1/02
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に絵柄層を有する化粧シートであって、
マイクロストリップアンテナを内蔵し、
上記アンテナの放射素子が、化粧シートの面に沿って配置されたアンテナパターンとなっており、
上記放射素子は、メッシュ状のアンテナパターン形状となっていて、
上記絵柄層の絵柄の一部として、上記メッシュの目の位置を外した切断位置を特定するマーキング図柄を有する、
化粧シート。
【請求項2】
表面側に絵柄層を有する化粧シートであって、
マイクロストリップアンテナを内蔵し、
上記アンテナの放射素子が、化粧シートの面に沿って配置されたアンテナパターンとなっており、
上記放射素子は、複数の放射素子本体が縦方向及び横方向に沿って配列し、少なくとも縦方向に並んだ放射素子本体が電気的に直列に接続するアンテナパターンとなっており、
上記絵柄層の絵柄の一部として、横方向で隣り合う放射素子本体間の切断位置を特定するマーキング図柄を有する、
化粧シート。
【請求項3】
表面側に絵柄層を有する化粧シートであって、
マイクロストリップアンテナを内蔵し、
上記アンテナの放射素子が、化粧シートの面に沿って配置されたアンテナパターンとなっており、
上記放射素子は、平面視において、少なくとも上記絵柄層の幅方向両端部よりも中央側に配置される、
化粧シート。
【請求項4】
誘電体基板を構成する樹脂基板と、
上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、
上記樹脂基板の表側に形成された放射素子を有するアンテナ層と、
上記アンテナ層の表側に形成された絵柄層と、を備え、
上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って配置されたアンテナパターンとなっており
上記放射素子は、メッシュ状のアンテナパターン形状となっていて、
上記絵柄層の絵柄の一部として、上記メッシュの目の位置を外した切断位置を特定するマーキング図柄を有する、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項5】
誘電体基板を構成する樹脂基板と、
上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、
上記樹脂基板の表側に形成された放射素子を有するアンテナ層と、
上記アンテナ層の表側に形成された絵柄層と、を備え、
上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って配置されたアンテナパターンとなっており
上記放射素子は、複数の放射素子本体が縦方向及び横方向に沿って配列し、少なくとも縦方向に並んだ放射素子本体が電気的に直列に接続するアンテナパターンとなっており、
上記絵柄層の絵柄の一部として、横方向で隣り合う放射素子本体間の切断位置を特定するマーキング図柄を有する、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項6】
誘電体基板を構成する樹脂基板と、
上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、
上記樹脂基板の表側に形成された放射素子を有するアンテナ層と、
上記アンテナ層の表側に形成された絵柄層と、を備え、
上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って配置されたアンテナパターンとなっており
上記放射素子は、平面視において、少なくとも上記絵柄層の幅方向両端部よりも中央側に配置される、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項7】
上記放射素子は、導電性インキ、ワイヤ、及び金属板のうちの少なくとも1つで構成される、ことを特徴とする請求項4~請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項8】
誘電体基板を構成する樹脂基板と、
上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、
上記樹脂基板に埋設された放射素子と、
上記樹脂基板の表側に形成された絵柄層と、を備え、
上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って延在するアンテナパターンとなっており、
上記放射素子は、メッシュ状のアンテナパターン形状となっていて、
上記絵柄層の絵柄の一部として、上記メッシュの目の位置を外した切断位置を特定するマーキング図柄を有する、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項9】
誘電体基板を構成する樹脂基板と、
上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、
上記樹脂基板に埋設された放射素子と、
上記樹脂基板の表側に形成された絵柄層と、を備え、
上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って延在するアンテナパターンとなっており、
上記放射素子は、複数の放射素子本体が縦方向及び横方向に沿って配列し、少なくとも縦方向に並んだ放射素子本体が電気的に直列に接続するアンテナパターンとなっており、
上記絵柄層の絵柄の一部として、横方向で隣り合う放射素子本体間の切断位置を特定するマーキング図柄を有する、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項10】
誘電体基板を構成する樹脂基板と、
上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、
上記樹脂基板に埋設された放射素子と、
上記樹脂基板の表側に形成された絵柄層と、を備え、
上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って延在するアンテナパターンとなっており、
上記放射素子は、平面視において、少なくとも上記絵柄層の幅方向両端部よりも中央側に配置される、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項11】
上記放射素子は、金属板、導電性の抄紙繊維、CNF、SCNFのいずれかで形成されている、ことを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項12】
上記金属板は、メッシュ状のアンテナパターン形状となっていることを特徴とする、請求項又は請求項11に記載した化粧シート。
【請求項13】
上記放射素子は、平面視において、少なくとも上記絵柄層の幅方向両端部よりも中央側に配置される、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4、請求項5、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、及び請求項12のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項14】
上記絵柄層の絵柄の一部として、上記放射素子の配置位置と非配置位置の境界を特定する端部マーキング図柄を有する、請求項3、請求項6、請求項10、及び請求項13のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項15】
上記絵柄層は、シート基材と、そのシート基材の表面に絵柄が印刷されてなる印刷層とを有し、
上記絵柄層は、熱剥離性の接着層を介して貼り付けられていることを特徴とする請求項1~請求項14のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項16】
上記放射素子の配置位置よりも上層に、水分に対しバリア性を有する防湿層を有する、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の化粧シートが複数、壁に貼り付けられ、各化粧シートのアンテナを電気的に接合するカプラ部を有する、化粧シートの貼り付け構造。
【請求項18】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の化粧シートが壁に貼り付けられ、上記化粧シートが有するアンテナが、上記壁を有する部屋の外に設置された基地局に電気的に接続する、化粧シートの貼り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート(壁紙など)、及びその貼り付け構造に関する。本発明は、特に、ローカル5G等の室内伝送システムのおける閉空間対応のアンテナの設置として好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ローカル5G対応の室内伝送システムとしては、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、複数の閉空間を有する施設に配置される施設内伝送システムにおいて、外部基地局と無線通信を行う親基地局と、親基地局が設置された閉空間と異なる閉空間に配置され、その親基地局と無線通信を行う子基地局と、を備える。そして、特許文献1では、親基地局と子基地局との間の、無線通信の電波の伝搬損失を低減する電波導波路を介して接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-207184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ローカル5G対応のために、各部屋毎に基地局を設置する必要がある。このため、部屋内に子基地局が設定されることになるが、その子基地局が部屋内の美観や子基地局の隠蔽性の点で問題となる。例えば、子基地局を隠蔽する場合には、電波が減衰するおそれがあり、ローカル5Gに対応できないおそれがある。
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、部屋内の美観を損なうことなく、ローカル5Gにも対応可能な平面アンテナを備えた化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題解決のために、本発明の態様は、表面側に絵柄層を有する化粧シートであって、マイクロストリップアンテナを内蔵し、アンテナの放射素子が化粧シートの平面に沿って配置されたアンテナパターンとなっている。
また、本発明の態様の化粧シートは、誘電体基板を構成する樹脂基板と、上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、上記樹脂基板の表側に形成された放射素子を有するアンテナ層と、上記アンテナ層の表側に形成された絵柄層と、を備え、上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って配置されたアンテナパターンとなっている。
【0006】
また、本発明の態様の化粧シートは、誘電体基板を構成する樹脂基板と、上記樹脂基板の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層と、上記樹脂基板に埋設された放射素子と、上記樹脂基板の表側に形成された絵柄層と、を備え、上記放射素子は、上記樹脂基板の平面に沿って延在するアンテナパターンとなっている。
また、本発明の他の態様は、上記構成の化粧シートが複数、壁に貼り付けられ、各化粧シートのアンテナを電気的に接合するカプラ部を有する、化粧シートの貼り付け構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、壁に化粧シートを貼り付けるだけで、室内の美観を損なうことなく、ローカル5Gにも対応可能なアンテナを室内に設置することができる。
なお、平面アンテナとしてマイクロストリップアンテナを用いることで、化粧シートに所定の可撓性を持たせつつ、ローカル5Gにも対応可能だけの大面積のアンテナ部(放射素子)を確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に基づく実施形態に係る化粧シートを説明する断面図である。
図2】本発明に基づく第2実施形態に係る化粧シートを説明する断面図である。
図3】化粧シートの他の例を示す断面図である。
図4】放射素子のアンテナパターンの例(b)と絵柄層の絵柄の例(a)を示す図である。
図5】放射素子のアンテナパターンの例(b)と絵柄層の絵柄の例(a)を示す図である。
図6】放射素子のアンテナパターンの例(b)と絵柄層の絵柄の例(a)を示す図である。
図7】放射素子のアンテナパターンの例(b)と絵柄層の絵柄の例(a)を示す図である。
図8】壁に本実施形態の化粧シートを複数枚、貼り付けた状態の構造例を示す図である。
図9】室内に設けた化粧シート例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、同一の構成要素については便宜上の理由がない限り同一の符号を付ける。また、各図面において、見易さのため構成要素の厚さや比率は誇張されていることがあり、構成要素の数も減らして図示していることがある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、主旨を逸脱しない限りにおいて、適宜の組合せ、変形によって具体化できる。
【0010】
「第1実施形態」
第1実施形態の化粧シート1を説明する。
本実施形態の化粧シート1は、図1に示すように、樹脂基板10の表面にアンテナ層12が形成されると共に、樹脂基板10の裏面にメタル層11が形成されて、平面アンテナが構成される。本実施形態の平面アンテナは、例えばマイクロストリップアンテナである。
【0011】
なお、メタル層11は、化粧シート1を室内の壁20に貼り付けた際に、室外からの電波干渉を阻止する役割も有する。
更に、本実施形態の化粧シート1は、メタル層11の裏面には、第1接着層13を介して、不図示の剥離紙が設けられている。図1は、剥離紙が剥がされて、化粧シート1を壁20に貼り付けた状態を例示している。他の断面図においても同様である。
また、本実施形態の化粧シート1は、アンテナ層12の上に、第2接着層14を介して絵柄層15が形成されている。
ここで、化粧シート1の裏面側に必ずしも第1接着層13がなくても良い。すなわち、現場にて、接着剤によって、化粧シート1を貼り付ける構成でも良い。この場合には、化粧シート1は、メタル層11の裏面側に裏面プライマリ層等の樹脂層を設けておくことが好ましい。
【0012】
<メタル層11>
メタル層11は、例えば、金属箔や薄肉の金属板からなる。
金属箔の材質としては、銀、銀合金、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等が例示できる。
金属箔の表面には、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層等が形成されていてもよい。また、金属箔の表面はシランカップリング剤により処理されていてもよい。金属箔の表面の十点平均粗さは、0.2~2.5μmが好ましい。この場合、金属箔と樹脂基板10との接着性が良好となり、伝送特性に優れる。また、メタル層11は2層以上の金属箔から構成されていても良い。
【0013】
メタル層11の厚さは、例えば2μm以上30μm位置の厚さとなっている。
<樹脂基板10>
樹脂基板10は、誘電体損失の少ない樹脂材料からなる。
樹脂基板10を構成する材料は、例えばTFE系ポリマーを主成分とする樹脂材量である。主成分とは、TFE系ポリマーを例えば80~100質量%含む場合を指す。
TFE系ポリマーは、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を有するポリマーである。TFE系ポリマーは、TFEのホモポリマーであってもよく、TFEと、TFEと共重合可能な他のモノマー(コモノマー)とのコポリマーであってもよい。TFE系ポリマーは、ポリマーを構成する全単位に対して、TFE単位を90~100モル%有するのが好ましい。TFE系ポリマーのフッ素含有量は、70~76質量%が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
【0014】
TFE系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFEとエチレンとのコポリマー(ETFE)、TFEとプロピレンとのコポリマー、TFEとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)とのコポリマー(PFA)、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(FEP)、TFEとフルオロアルキルエチレン(FAE)とのコポリマー、TFEとクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマーが挙げられる。なお、コポリマーは、更に他のコモノマーに基づく単位を有していてもよい。
【0015】
<アンテナ層12>
アンテナ層12は放射素子12Aを有する。
放射素子12Aは、予め設定したアンテナパターンに、樹脂基板10の表面に形成されている。
アンテナ層12は、樹脂基板10の表面に形成され放射素子12Aを保護(封止)する保護層を有していても良い。
放射素子12Aは、例えば、導電性インキ、ワイヤ又は薄肉の金属板からなる。
放射素子12Aは、導電性インキからなる場合、樹脂基板10の表面に、導電性インキを用いて予め設定したアンテナパターンに印刷することで形成する。
導電性インキは例えば、銀ペースト、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、CNTなどを導電材料として含有する。
また、放射素子12Aは、ワイヤからなる場合、樹脂基板10の表面に、予め設定したアンテナパターンとなるように、ワイヤをグリッド状(メッシュ状)に配置して形成する。
【0016】
また、金属板からなる場合、樹脂基板10の表面に金属層を形成し、その金属層を予め設定したアンテナパターンにエッチングすることで金属板(金属箔)からなる放射素子12Aを形成する。又は、アンテナパターンにエッチングした金属板を、樹脂基板10の表面に貼り付けることで放射素子12Aとする。
又は、放射素子本体12Aaを直列に接続した放射素子12A(直列並列給電側アレー)をフィルムの上に形成し、そのフィルムを樹脂基板10の表面に貼り付けることで放射素子12Aを形成する。フィルムを上記の樹脂基板10としても良い。
【0017】
<絵柄層15>
絵柄層15は、シート基材15aの表面に絵柄15bが印刷された化粧シート1(壁紙)からなる。
そして、化粧シート1は、第2接着層14を介してアンテナ層12の表面に貼り付けられている。
絵柄層15は、アンテナ層12が保護層を有する場合には、その上に直接印刷することで構成されていても良い。この場合には、第2接着層14がない構成となる。
シート基材15aは、例えば防湿性を有するシート状の層とする。防湿性とは、水蒸気を通し難い性質である。そのようなシート基材15aとしては、例えば、2枚の紙基材と、2枚の紙基材の間に配置された防湿樹脂層とを備える防湿紙を使用できる。紙基材としては、例えば、セルロース繊維間に樹脂を含む紙間強化紙を使用できる。紙間強化紙としては、例えばセルロース繊維を50質量%以上含むものが好ましい。紙間強化紙の厚みは、例えば15μm以上60μm未満とする。シート基材15aの表面側の紙基材の坪量は30g/mとし、裏面側の紙基材の坪量は23g/mとする。
【0018】
防湿樹脂層は、水蒸気を通さない防湿樹脂からなる層である。防湿樹脂としては、例えば、融点が100℃以上200℃未満のオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。防湿樹脂層の厚みは、例えば、20μm以上70μm未満とする。この場合、図3(a)のように、シート基材15aが防湿層17を兼ねる。
本実施形態では、シート基材15aとして、防湿紙を用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、防湿性を有する樹脂のフィルムを用いてもよい。
【0019】
但し、アンテナに対する電波の減衰性を抑える観点から、シート基材15aは、PTFE系ポリマー、フッ化ポリイミド樹脂、液晶ポリマー(LCP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ArFRP(アラミド繊維強化プラスチック)などの単層フィルム、あるいは複数のフィルムを組み合わせた積層フィルム、又は複数の上記材材料をブレンドした材料からなる単層あるいは複数の層からなる積層フィルムが好ましい。
【0020】
また、シート基材15aは、1枚の紙基材から構成されていても良い。
絵柄15bは、シート基材15a上に印刷により形成された印刷層であって、化粧シート1に意匠性を付与する。絵柄15bとしては、例えば、木目、コルク、石目、タイル、焼き物、抽象柄等、化粧シート1を用いる箇所に適した絵柄15bを選ぶことができる。
絵柄層15の上に、PENフィルムや、PET又はナイロンフィルムにアミナまたはシリカを蒸着した防湿性を有する樹脂フィルム等からなる防湿層17を設けてもよい(図3(b)参照)。このようなフィルムを設ける代わりに、直接、絵柄層15上にアルミナやシリカを蒸着し、更に蒸着層上にウェットコーティングによりオーバーコート層を設け、防湿層17としてもよい。
【0021】
絵柄層15の上に形成する防湿層17は、絵柄15bを透視できる程度に透明又は半透明な材料(樹脂)で形成される。防湿層17を設ける代わりに、水バリア性に優れるエバール系樹脂を第2接着層14として用いても良い。
また、絵柄層15の上に、防湿層17以外に、絵柄層15の全体を被覆する表面保護層を有していても良い。表面保護層は、絵柄15bを透視できる程度に透明又は半透明な材料(樹脂)で形成する。その材料としては、例えば、熱硬化性樹脂が好ましい。
防水機能を持たせることで、水の浸入によるアンテナの腐食や共振周波数の変動を抑制可能となる。
なお、耐傷性を確保するためにハードコート層等を設けたり、上下ショートを防止するためのクッション層を別途有したりしても良い。クッション層は、例えば、ウレタンやシリコーンゴムやフッ素ゴムなどゴム材料から構成する。
【0022】
<第1接着層13、第2接着層14>
第1接着層13及び第2接着層14を構成する接着剤としては、壁紙に使用される公知の接着剤を用いれば良い。
第2接着層14には、誘電体損失の少ない樹脂材料を用いることが好ましい。例えば、樹脂基板10の表面側に形成する第2接着層14として、変性ポリイミドなどからなる接着フィルムを用いると良い。
ここで、絵柄層15を貼り付ける第2接着層14として、熱剥離性の接着剤を採用しても良い。この場合、化粧シート1表面に熱を加えることで、アンテナ機能を変更することなく、壁紙を構成する絵柄層15が剥がして、別の壁紙(絵柄層15)と貼り替えることが可能となる。
【0023】
「第2実施形態」
第2実施形態の化粧シート1を説明する。
第2実施形態の化粧シート1の基本構成は、第1実施形態と同様である。
但し、第2実施形態では、図1に示すように、独立したアンテナ層12を有せず、樹脂基板10内に放射素子12Aを埋設した点が、第1実施形態と異なる。その他は、基本的に第1実施形態と同様である。このため、相違点についてのみ説明する。
【0024】
なお、第2実施形態では、第2接着層14がないが、第2接着層14を有していても良い。また、メタル層11と樹脂基板10の間に接着層16があるが、接着層16がなくても良い。
この例では、例えば、樹脂基板10内に、導電体からなるメッシュ体(放射素子12A)を抄き込むことによって、所定のアンテナパターンの放射素子12Aを樹脂基板10内に埋設する。
又は、キャストによって樹脂基板10内に所定のアンテナパターンの放射素子12Aを埋設する。
放射素子12Aの材料は、ワイヤでも良いし、導電性の抄紙繊維、CNF/SCNFなどでも良い。又はエッチングでアンテナパターン形状に形成した放射素子12Aとしての金属板(金属箔)を樹脂基板10内に埋設しても良い。
導電性の抄紙繊維の材料としては、銅、アルミなどの金属繊維、カーボン繊維などが例示できる。
【0025】
「アンテナパターンについて」
以下、放射素子12Aが構成するアンテナパターン例について説明する。
<第1のパターン例>
第1のパターン例は、図4(b)に示すように、メッシュ状(格子状)に線状の金属体を配置したメッシュ体(金網など)から構成する。このパターン例は、例えば、ワイヤグリッドや導電性インキによる罫線の印刷、エッチングなどで形成した金網状のメッシュ体(金属板)などで作製可能である。
メッシュ体の経線及び緯線は、それぞれ化粧シート1の端面の延在方向と平行若しくは略平行であることが好ましい。
【0026】
<第2のパターン例>
第2のパターン例では、図5(b)に示すように、放射素子12Aは、複数の放射素子本体12Aaが縦方向及び横方向に沿って配列している。そして、縦方向に並んだ放射素子本体12Aaが縦方向に電気的に直列に接続されると共に、横方向に並んだ放射素子本体12Aaが横方向に電気的に直列に接続されて構成される。
すなわち、放射素子12Aは、線状の金属体がメッシュ状に配置され、メッシュの目の部分が放射素子本体12Aaとなっている。放射素子本体12Aaは、所定の面積を持つ金属板から構成される。図では、矩形の放射素子本体12Aaが例示されている。
【0027】
<第3のパターン例>
第3のパターン例では、図6(b)に示すように、放射素子12Aは、複数の放射素子本体12Aaが縦方向及び横方向に沿って配列し、縦方向に並んだ放射素子本体12Aaが電気的に直列に接続されて、構成されている。すなわち、縦方向に並んだ放射素子本体12Aaが電気的に直列に接続された、すだれ状のアレイが、横方向に複数個並んで形成されたアンテナパターンとなっている。
ここで、アンテナパターン例は、上記のパターン例に限定されない。例えば、複数の放射素子本体12Aaとそれらを励振するための給電回路からなるアンテナパターン(マイクロストリップアンテナ)に適用されているアンテナパターンであれば、他のパターン例であってもよい。
【0028】
「絵柄15bについて」
絵柄15bの例を図4(a)、図5(a)、図6(a)に示す。
このとき、絵柄層15の絵柄15bの一部として、メッシュの目を外した切断位置や、横方向で隣り合う放射素子本体12Aa間の切断位置を特定するマーキング図柄21を有していても良い。
マーキング図柄21は、線である必要はなく、特定の絵を特定間隔で表示する構成であっても良い。マーキング図柄21は、メッシュの目の位置や、放射素子本体12Aaの位置と重なる位置に設けても良い。
なお、放射素子12Aをメッシュ体で構成した場合には、任意の位置で切断可能となるので、化粧シート1用の放射素子12Aとしては好ましい。
【0029】
「放射素子12Aの配置位置について」
放射素子12Aのアンテナパターンは、平面視において、化粧シート1の全面に配置しても良いが、図7に示すように、放射素子12Aの配置位置Hを、平面視において中央側に配置して、左右横方向や下方に、化粧シート1端部の切断代を有していても良い。切断代は、例えば5cm以上20cm以下の幅とする。
このとき、絵柄層15の絵柄15bの一部として、放射素子12Aの配置位置Hと非配置位置の境界を特定する端部マーキング図柄22を有すると良い。この場合、化粧シート1端部の切断可能位置が分かり易くなり、現場での切断代の調整が容易となる。
なお、図7において、上面に切断代を設けていないのは、同軸ケーブルなどへの接続部(不図示)を形成しておくためである。
【0030】
「化粧シート1の使用例(貼り付け構造)」
本実施形態の化粧シート1は、例えば、図8のように、室内の壁20面に沿って複数枚貼り付けて使用される。図8中、符号30はカプラ部を示す。カプラ部は、各化粧シート1のアンテナ(放射素子12A及びメタル層11(地導体板))と同軸ケーブルなどで電気的に接続して、図9のように、室外に設けた子基地局(無線ルータ)32に連結する装置である。図9の例では、符号31は同軸ケーブルを、符号33は、光ケーブルファイバを、符号34は電気ケーブルである。
【0031】
図9では、1枚の化粧シート1だけに本実施形態の化粧シート1を適用しているが、適宜選択した複数の壁20面位置(パネル位置)に対し本実施形態の化粧シート1を適用しても構わない。
なお、本実施形態の化粧シート1は、室内の壁20面以外に、天井面や、パーテーション等の間仕切りの面などに貼り付けても良い。子基地局(無線ルータ)に電気的に接続可能な面位置であれば、閉空間を画成する壁面に限定されない。
また、設備内の伝送システムの基本構成は、アンテナ部以外は、特許文献1などの構成のシステム構成を適用すればよい。
【0032】
「作用効果など」
本実施形態では、化粧シート1を壁面に貼り付けることで、簡易にローカル5G対応のアンテナを室内等に設けることが可能となる。
また、本実施形態では、平面アンテナを採用することで、化粧シート1内に大面積のアンテナを埋設させることが可能となって、ローカル5Gに対応可能となる。
また、平面アンテナのうち、放射素子12Aをメッシュ体にしたり、複数の放射素子本体12Aaからなるマイクロストリップアンテナを採用したりすると、アンテナパターンによっては、化粧シート1にアンテナを埋設しても、化粧シート1の可撓性を持たせることが可能となる。
【0033】
なお、メタル層11は、室外からの電波干渉を防止する機能も有する。メタル層11の構成を、絶縁層を挟んだ2層以上の構造とし、裏面側のメタル層は同軸ケーブルに接続しない(アンテナを構成しない)ような構成としてもよい。この場合、裏面側のメタル層は、例えば、可撓性への悪影響を抑制するためにメッシュ体で構成する。
また、マーキング図柄21などを設けておくと、現場にて化粧シート1を切断する際に、最適な切断位置を選択しやすくなる。
【0034】
また、第2接着層14の材料として、公知の熱剥離性接着剤を用いることで、化粧シート1を貼り付けたあとで、アンテナ機能の位置を変えることなく、任意の絵柄層(壁紙)への貼り替えが可能となる。
また、室内に配置にアンテナ部を壁紙で構成するため、子基地局(無線ルータ)を室外に配置することも可能となる。
なお、本明細書に記載された作用・効果は、あくまでも例示であって限定されるものではなく、本明細書に記載されたもの以外の効果があっても良い。
本開示は、以下のような構成も取ることができる。
【0035】
「その他」
(1)本実施形態の化粧シート1は、表面側に絵柄層15を有する化粧シート1であって、マイクロストリップアンテナを内蔵し、上記アンテナの放射素子12Aが、化粧シート1の面に沿って配置されたアンテナパターンとなっている。
(2)また、本実施形態の化粧シート1は、誘電体基板を構成する樹脂基板10と、上記樹脂基板10の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層11と、上記樹脂基板10の表側に形成された放射素子12Aを有するアンテナ層12と、上記アンテナ層12の表側に形成された絵柄層15と、を備え、上記放射素子12Aは、上記樹脂基板10の平面に沿って配置されたアンテナパターンとなっている。
【0036】
(3)このとき、例えば、上記放射素子12Aは、導電性インキ、ワイヤ、及び金属板のうちの少なくとも1つで構成される。
(4)また、本実施形態の化粧シート1は、誘電体基板を構成する樹脂基板10と、上記樹脂基板10の裏面側に形成され地導体板を構成するメタル層11と、上記樹脂基板10に埋設された放射素子12Aと、上記樹脂基板10の表側に形成された絵柄層15と、を備え、上記放射素子12Aは、上記樹脂基板10の平面に沿って延在するアンテナパターンとなっている。
(5)この時、例えば、上記放射素子12Aは、金属板、導電性の抄紙繊維、CNF、SCNFのいずれかで形成されている。
【0037】
(6)上記金属板は、例えば、メッシュ状のアンテナパターン形状となっている。
また、上記放射素子12Aは、メッシュ状のアンテナパターン形状となっていて、上記絵柄層15の絵柄15bの一部として、上記メッシュの目の位置を外した切断位置を特定するマーキング図柄21を有する、構成でもよい。
(7)また、上記放射素子12Aは、複数の放射素子本体12Aaが縦方向及び横方向に沿って配列し、少なくとも縦方向に並んだ放射素子本体12Aaが電気的に直列に接続するアンテナパターンとなっている、構成でも良い。
【0038】
(8)また、上記絵柄層15の絵柄15bの一部として、横方向で隣り合う放射素子本体12Aa間の切断位置を特定するマーキング図柄21を有する、構成でもよい。
また、上記放射素子12Aは、平面視において、少なくとも上記絵柄層15の幅方向両端部よりも中央側に配置される、構成でもよい。
(9)また、上記絵柄層15の絵柄15bの一部として、上記放射素子12Aの配置位置と非配置位置の境界を特定する端部マーキング図柄22を有する、構成でもよい。
【0039】
(10)また、 上記絵柄層15は、シート基材15aと、そのシート基材15aの表面に絵柄が印刷されてなる印刷層15bとを有し、上記絵柄層15は、熱剥離性の接着層を介して貼り付けられている、構成でもよい。
また、上記放射素子12Aの配置位置よりも上層に、水分に対しバリア性を有する防湿層17を有する、構成でもよい。
(11)また、本実施形態は、上記に記載の化粧シート1が複数、壁20に貼り付けられ、各化粧シート1のアンテナを電気的に接合するカプラ部を有する、化粧シート1の貼り付け構造である。
(12)また、本実施形態は、上記に記載の化粧シート1が壁20に貼り付けられ、上記化粧シート1が有するアンテナが、上記壁20を有する部屋の外に設置された基地局に電気的に接続する、化粧シート1の貼り付け構造である。
【符号の説明】
【0040】
1 化粧シート
10 樹脂基板
11 メタル層
12 アンテナ層
12A 放射素子
12Aa 放射素子本体
15 絵柄層
15a シート基材
15b 絵柄
16 接着層
17 防湿層
20 壁
21 マーキング図柄
22 端部マーキング図柄
30 カプラ部
32 子基地局(無線ルータ)
H 配置位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9