(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】自動二輪車用シートレール
(51)【国際特許分類】
B62K 19/02 20060101AFI20241016BHJP
B62K 19/30 20060101ALI20241016BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20241016BHJP
B62J 25/06 20200101ALI20241016BHJP
【FI】
B62K19/02
B62K19/30
B62J1/12 B
B62J25/06
(21)【出願番号】P 2020175343
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】波多野 大督
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐大
(72)【発明者】
【氏名】藤田 倫暢
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179298(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/112008(WO,A1)
【文献】特開2017-030465(JP,A)
【文献】特開2018-199405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339739(US,A1)
【文献】特開2018-114844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/00 - 19/42
B62K 1/00 - 11/14
B62J 1/12
B62J 25/06
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の車体
の一部を構成する自動二輪車用シートレールであって、
前記車体
における幅方向の側方に位置し、かつ繊維強化樹脂製である上側側方部材を備え、
前記上側側方部材が、その下方縁から前記車体の幅方向に突出する下側フランジを有する、自動二輪車用シートレールにおいて、
前記上側側方部材に対して下方寄りに位置し、かつ金属製である下側側方部材を備え、
前記上側側方部材の下側フランジの下面と前記下側側方部材の上面とが接着剤によって接合されている、自動二輪車用シートレール。
【請求項2】
前記下側側方部材が、前記車体
の前後方向に延びる中空部材となっている、請求項1に記載の自動二輪車用シートレール。
【請求項3】
前記下側側方部材とフットレストブラケットとを、カラー及び締結部材を用いて締結するように構成される締結部が設けられ、
前記カラーが、その軸線に沿って延びる軸体部と、前記軸線から離れるように前記軸体部から突出する頭部と、その軸線に沿ってその軸体部の先端から基端に向かって延びるようにその軸体部に形成される雌ネジ部とを有し、
前記締結部材が、その軸線に沿って延びる雄ネジ部と、前記軸線から離れるように前記雄ネジ部から突出する頭部とを有し、
前記締結部材の雄ネジ部が、前記カラー及び前記締結部材の軸線に沿って前記カラーの雌ネジ部に前記カラーの軸体部の先端から螺合可能であり、
前記締結部に、前記カラーの軸体部を挿入可能とするように貫通孔が形成され、
前記締結部材の雄ネジ部が前記締結部の貫通孔に挿入された前記カラーの軸体部の雌ネジ部に螺合しながら、前記下側側方部材及び前記フットレストブラケットが前記カラーの頭部及び前記締結部材の頭部間で挟
み付けられるように構成されている、請求項1又は2に記載の自動二輪車用シートレール。
【請求項4】
前記車体の幅方向に間隔を空けて配置される2つの前記上側側方部材を連結するように延びる連結部材を備え、
前記連結部材が、前記車体の幅方向の両側方にそれぞれ位置する2つの側方縁を有し、
前記車体をその幅方向から見た場合に、前記締結部が、前記車体の前後方向にて前記連結部材における各側方縁の前端及び後端間の領域とオーバーラップしている、請求項3に記載の自動二輪車用シートレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の車体に設置される自動二輪車用シートレールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車に設置されるシートレールは、シート、燃料タンク等を支持する役割を担うことがある。このようなシートレールは、シート、燃料タンク等を支持するために強度を高めることが要求され、かつ乗り心地の改善等の観点から制振効果を高めることもまた要求される。このような要求を満たすため、種々の自動二輪車用シートレールが提案されている。
【0003】
自動二輪車用シートレールの一例としては、車両前後方向に延びる底面部と、この底面部の少なくとも車両幅方向両側の位置で上方に向けて立ち上がる側面部とを有する自動二輪車用シートフレームであって、これら底面部及び側面部が繊維強化樹脂から構成されている、自動二輪車用シートフレームが挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記自動二輪車用シートレールの一例のように、繊維強化樹脂から成る底面部及び左右の側面部が一体に形成される場合、底面部及び左右の側面部によって囲まれた内部空間に熱が籠り易く、この熱が、繊維強化樹脂中の樹脂を熱劣化させるおそれがある。この熱劣化は、シートレールの強度を低下させるおそれがある。
【0006】
また、一般的に繊維は引張に対しては強い一方で圧縮に対しては弱いので、このような繊維を用いた繊維強化樹脂から成るシートレールにおいては、圧縮変形に対する強度が低くなる。上記自動二輪車用シートレールの一例においては、乗員、積載物等からの荷重がシートレールの後部に加えられたときに、シートレールの下部が圧縮変形するので、シートレールの下部の強度が十分に確保できないおそれがある。
【0007】
これらの実情を鑑みると、自動二輪車用シートレールにおいては、シートレールの制振効果を十分に確保可能とし、シートレールの強度を効率的に向上させることを可能とすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係る自動二輪車用シートレールは、自動二輪車の車体の一部を構成する自動二輪車用シートレールであって、前記車体における幅方向の側方に位置し、かつ繊維強化樹脂製である上側側方部材を備え、前記上側側方部材が、その下方縁から前記車体の幅方向に突出する下側フランジを有する、自動二輪車用シートレールにおいて、前記上側側方部材に対して下方寄りに位置し、かつ金属製である下側側方部材を備え、前記上側側方部材の下側フランジの下面と前記下側側方部材の上面とが接着剤によって接合されている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る自動二輪車用シートレールにおいては、シートレールの制振効果を十分に確保することができ、シートレールの強度を効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るシートレールを含む自動二輪車を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るシートレールを、それに取り付けられるフットレストと共に概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のシートレール及びフットレストの左半分を、分解した状態で概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るシートレールを、それに取り付けられるフットレストと共に概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る自動二輪車用シートレールについて、それを設置した自動二輪車と共に説明する。ここで、自動二輪車用シートレール(以下、必要に応じて、単に「シートレール」という)を設置する自動二輪車は、典型的には、1つの前輪及び1つの後輪を有するように構成される。しかしながら、自動二輪車は、2つの前輪及び1つの後輪を有するように構成することもできる。
【0012】
本実施形態において、
図1~
図4では、自動二輪車の車体1の前方(以下、必要に応じて、単に「前方」という)は片側矢印Fによって示され、かつ車体1の後方(以下、必要に応じて、単に「後方」という)は片側矢印Rによって示される。そのため、車体1の前後方向(以下、必要に応じて、単に「前後方向」という)は片側矢印F及び片側矢印Rによって示される。
図2、
図3、及び
図5では、車体1の幅方向(以下、必要に応じて、単に「幅方向」という)は両側矢印Wによって示される。
図1~
図5では、車体1の上方(以下、必要に応じて、単に「上方」という)は片側矢印Uによって示され、かつ車体1の下方(以下、必要に応じて、単に「下方」という)は片側矢印Dによって示される。車体1の上下方向(以下、必要に応じて、単に「上下方向」という)は片側矢印U及び片側矢印Dによって示される。
【0013】
「シートレール及び自動二輪車の概略」
図1~
図5を参照して、本実施形態に係るシートレール10及び自動二輪車の概略について説明する。すなわち、シートレール10及び自動二輪車は概略的には次のように構成される。
図1に示すように、シートレール10(
図1にて破線により示す)は、自動二輪車の車体1に設置される。
【0014】
図2に示すように、シートレール10は、車体1の幅方向の側方に位置する側方部材組立体11を有する。詳細には、シートレール10は、車体1の幅方向の両側方にそれぞれ位置する2つの側方部材組立体11を有する。2つの側方部材組立体11は、幅方向に互いに間隔を空けている。
図2~
図4に示すように、各側方部材組立体11は、繊維強化樹脂製である上側側方部材12を有する。各側方部材組立体11の上側側方部材12は、幅方向の側方に位置する。
【0015】
ここで、本実施形態に係るシートレール10は、2つの側方部材組立体11の両方が以下に詳細を述べる構成要素を有するように構成される。2つの側方部材組立体11における構成要素は幅方向にて略対称になっている。しかしながら、シートレールは、2つの側方部材組立体11の一方のみが以下の構成要素を有するように構成することもできる。これらを踏まえた上で、以下においては、特に、2つの側方部材組立体11及びこれら2つの側方部材組立体11に関連する構成要素を具体的に説明しない限り、2つの側方部材組立体11の一方における構成要素を代表的に説明しているものとする。
【0016】
図2~
図5を参照すると、各上側側方部材12は、その下方縁から幅方向に突出する下側フランジ12aを有する。各側方部材組立体11は、その上側側方部材12に対して下方寄りに位置する下側側方部材13を有する。各側方部材組立体11の下側側方部材13は金属製である。各側方部材組立体11における上側側方部材12の下側フランジ12aの下面12bと、この側方部材組立体11における下側側方部材13の上面13aとは、接着剤Gによって接合されている。
【0017】
さらに、本実施形態に係るシートレール10及び自動二輪車は概略的には次のように構成することができる。
図2~
図5を参照すると、各下側側方部材13は、前方から後方に向かって延びる中空部材となっている。各側方部材組立体11には、フットレスト本体21及びフットレストブラケット22を有するフットレスト組立体20が取り付けられている。具体的には、各側方部材組立体11には、フットレスト組立体20のフットレストブラケット22が締結されている。
図3及び
図5に示すように、シートレール10は、各側方部材組立体11の下側側方部材13と、この側方部材組立体11に取り付けられるフットレストブラケット22とを、カラー15及び締結部材16を用いて締結するように構成される締結部14を有する。
【0018】
図5に示すように、カラー15は、その軸線15aに沿って延びる軸体部15bを有する。カラー15はまた、その軸線15aから離れるように軸体部15bから突出する頭部15cを有する。カラー15は、その軸線15aに沿って軸体部15bの先端から基端に向かって延びるように軸体部15bに形成される雌ネジ部15dを有する。締結部材16は、その軸線16aに沿って延びる雄ネジ部16bを有する。締結部材16はまた、その軸線16aから離れるように雄ネジ部16bから突出する頭部16cを有する。例えば、締結部材16は、ボルトとすることができる。しかしながら、締結部材は、ボルトに限定されない。
【0019】
締結部材16の雄ネジ部16bは、カラー15及び締結部材16の軸線15a,16aに沿ってカラー15の雌ネジ部15dにカラー15の軸体15bの先端から螺合可能となっている。締結部14には、カラー15の軸体部15bを挿入可能とするように貫通孔114aが形成される。この貫通孔14aは、下側側方部材13の貫通孔13bと、フットレストブラケット22の貫通孔22aとから構成される。締結部材16の雄ネジ部16bが、締結部14の貫通孔14aに挿入されたカラー15の軸体部15bの雌ネジ部15dに螺合しながら、下側側方部材13及びフットレストブラケット22が、カラー15の頭部15c及び締結部材16の頭部16c間で挟まれるようになっている。
【0020】
図2~
図4に示すように、シートレール10は、幅方向に間隔を空けて配置される2つの上側側方部材12を連結するように延びる連結部材17を有する。連結部材17は、幅方向の両側方にそれぞれ位置する2つの側方縁17aを有する。
図4に示すように、車体1をその幅方向から見た場合に、締結部14は、前後方向にて連結部材17における各側方縁17aの前端17b及び後端17c間の領域Pとオーバーラップしている。
【0021】
「自動二輪車の詳細」
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係る自動二輪車は、詳細には次のように構成することができる。
図1に示すように、自動二輪車の車体1は、シート2、荷台3、及び燃料タンク4を有する。シート2は、シートレール10によって下方から支持される。
図1及び
図2を参照すると、シート2は、シートレール10の連結部材17によって下方から支持される。
【0022】
図1に示すように、荷台3は、シート2の後方に位置する。荷台3は、前後方向にてシート2に隣接する。燃料タンク4は、シート2の前方に位置する。燃料タンク4はまた、前後方向にてシート2に隣接する。
【0023】
自動二輪車の車体1はメインフレーム5を有する。メインフレーム5は、シートレール10の前方に位置し、かつ燃料タンク4の下方に位置する。メインフレーム5はまた、前後方向にてシートレール10に隣接する。
図1及び
図2を参照すると、シートレール10の前後方向の前端部10aは、メインフレーム5に取り付けられる。詳細には、シートレール10における上側及び下側側方部材12,13の前後方向の前端部12c,13cが、メインフレーム5に取り付けられる。
【0024】
図1に示すように、自動二輪車の車体1はアウターパネル6を有する。アウターパネル6は、シート2の下方に位置する。アウターパネル6はまた、上下方向にてシート2と隣接する。アウターパネル6は、幅方向の両外方からシートレール10を覆っている。しかしながら、車体は、アウターパネルを有さないように構成することができる。この場合、車体は、上側側方部材を外装部材として車体の外部に露出させるように構成することもできる。
【0025】
「シートレールの詳細」
図2~
図5を参照すると、本実施形態に係るシートレール10は、詳細には次のように構成することができる。
図2~
図4に示すように、シートレール10は、上述した連結部材17に加えて、2つの上側側方部材12を連結するように延びる追加の連結部材18を有する。追加の連結部材18は、連結部材17に対して後方に位置する。以下においては、必要に応じて、連結部材17を前方連結部材17と呼び、かつ追加の連結部材18を後方連結部材18と呼ぶ。シートレール10が複数の連結部材を有する場合において、前方連結部材17は、これら複数の連結部材の中で最前方に位置することができる。後方連結部材18は、これら複数の連結部材の中で最後方に位置することができる。
【0026】
前方連結部材17は、前後方向にてシートレール10の前端部10a寄りに位置する。上述のように、かかる前方連結部材17は、シート2の前後方向の前部を下方から支持する。後方連結部材18は、前後方向にてシートレール10の後端部10b寄りに位置する。後方連結部材18は、前後方向にてシートレール10の後端部10bに対応するように位置することができる。後方連結部材18は、シート2の前後方向の後部及び荷台3を下方から支持する。前方及び後方連結部材17,18は、互いに前後方向に間隔を空けている。
【0027】
フットレスト組立体20は、ピリオンライダー用として構成されている。フットレスト組立体20のフットレスト本体21は、フットレストブラケット22の上下方向の下端部から車体1の幅方向の外方に向かって突出するように形成されている。
図2~
図5に示すように、フットレストブラケット22は、それを下側側方部材13に取り付けるように構成される取付部22bを有する。この取付部22bは、フットレストブラケット22の上下方向の上端部に配置されている。上述したフットレストブラケット22の貫通孔22aは、取付部22bを貫通するように形成される。
【0028】
図3に示すように、各側方部材組立体11には、2つの締結部14が上述のように設けられている。この場合、下側側方部材13は2つの貫通孔13bを有し、かつフットレストブラケット22は2つの貫通孔22aを有する。各側方部材組立体11には、2つのカラー15及び2つの締結部材16を有する。このような2つの締結部14は前後方向に互いに間隔を空けている。しかしながら、各側方部材組立体に、1つ又は3つ以上の締結部を設けることもできる。
【0029】
「側方部材組立体11の詳細」
図2~
図5を参照すると、側方部材組立体11は詳細には次のように構成することができる。側方部材組立体11の上側側方部材12に用いられる繊維強化樹脂は、連続繊維強化樹脂又は不連続繊維強化樹脂となっている。このような繊維強化樹脂は、所定の樹脂材料と、複数の繊維とを含有する。
【0030】
繊維強化樹脂の樹脂材料としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリプロピレン等を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。繊維強化樹脂の繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維等とすることができる。繊維強化樹脂が不連続繊維強化樹脂である場合、補強効果の観点によれば、1本の繊維の長さは10mm以上であるとよい。しかしながら、1本の繊維の長さは、これに限定されない。
【0031】
上側側方部材12は、繊維強化樹脂から成る複数の層を積層する積層構造体として構成されたパネル材料をプレス成形することによって作製される。しかしながら、上側側方部材の作製手法は、これに限定されない。
【0032】
図3及び
図5に示すように、上側側方部材12の下側フランジ12aには、カラー15の頭部15cを挿入可能とするように貫通する貫通孔12dが形成されている。下側フランジ12aの貫通孔12dは、締結部14の貫通孔14aに対応するように配置されている。特に、上側側方部材12と下側側方部材13との取付時において、これらを位置決めするように、カラー15の頭部15cが下側フランジ12aの貫通孔12dに嵌合すると好ましい。
【0033】
図2~
図4に示すように、上側側方部材12の下側フランジ12aは、この上側側方部材12の下方縁から車体1の幅方向の中央に向かって突出する。下側フランジ12aは、前後方向を長手方向とするように細長形状に形成されている。このような上側側方部材12における下側フランジ12aの下面12bの全体が、下側側方部材13の上面13aに当接し、かつ接着剤Gによって下側側方部材13の上面13aと接合されている。
【0034】
上側側方部材12は、その上方縁から幅方向に突出する上側フランジ12eを有する。上側側方部材12の上側側方部材12はまた、この上側側方部材12の上方縁から車体1の幅方向の中央に向かって突出することができる。前方及び後方連結部材17,18は、このような上側フランジ12eの上面12fに当接し、かつ上側フランジ12eの上面12fに取り付けられている。下側及び上側フランジ12a,12eは、上下方向で見てオーバーラップするように配置されている。
【0035】
側方部材組立体11の下側側方部材13に用いられる金属は、アルミニウム、鉄等、及びその合金から選択することができる。しかしながら、下側側方部材に用いられる金属は、これに限定されない。
【0036】
図2~
図4に示すように、下側側方部材13は、前後方向を長手方向とするように細長形状に形成されている。下側側方部材13の上面13aは、下側フランジ12aの下面12bと当接する当接区域13dを有する。下側側方部材13の当接区域13dは、下側フランジ12aの下面12bの全体に対応するように形成されている。下側側方部材13の前端部13cは、上側側方部材12の前端部12cから前方に突出している。下側側方部材13の前端部13cは、下側側方部材13の当接区域13dの前方に位置する。
【0037】
側方部材組立体11に用いられる接着剤Gは、合成系接着剤とすることができる。例えば、合成系接着剤としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、EVA系接着剤、エポキシ系接着剤、及びその他の接着剤が挙げられる。しかしながら、接着剤は、これに限定されない。
【0038】
側方部材組立体11において、接着剤Gは、上側側方部材12の下側フランジ12aの下面12bと、下側側方部材13の上面13aとの間に塗布され、これによって、接着剤Gは接着層23を形成する。しかしながら、接着剤は、上側側方部材の下側フランジの下面と、下側側方部材の上面との間に挟まれる接着テープに用いられることもできる。
【0039】
以上、本実施形態に係るシートレール10は、自動二輪車の車体1に設置される自動二輪車用シートレール10であって、前記車体1の幅方向の側方に位置し、かつ繊維強化樹脂製である上側側方部材12を備え、前記上側側方部材12が、その下方縁から前記車体1の幅方向に突出する下側フランジ12aを有する、自動二輪車用シートレール10において、前記上側側方部材12に対して下方寄りに位置し、かつ金属製である下側側方部材13を備え、前記上側側方部材12の下側フランジ12aの下面12bと前記下側側方部材13の上面13aとが接着剤Gによって接合されている。
【0040】
このようなシートレール10において、金属製の下側側方部材13の熱伝導率が高くなっており、シートレール10の内部空間の熱を、繊維強化樹脂製の上側側方部材12からこの下側側方部材13に効率的に逃がすことができる。そのため、シートレール10の内部空間に熱が籠ることを抑制でき、上側側方部材12を構成する繊維強化樹脂中の樹脂の熱劣化を抑制することができ、その結果、シートレール10の強度を向上させることができる。また、金属製の下側側方部材13の強度は、繊維強化樹脂製の上側側方部材12の強度よりも高くなっており、乗員、積載物等からの荷重がシートレール10の後部に加えられたときに生じるシートレール10の下部の圧縮変形に対する強度を向上させることができる。よって、シートレール10の強度を効率的に向上させることができる。
【0041】
さらに、繊維強化樹脂製の上側側方部材12の制振効果は、金属製の下側側方部材13の制振効果よりも高くなっており、このような上側側方部材12が金属製の下側側方部材13よりもシート2寄りに配置されるので、シートレール10の制振効果を十分に確保することができる。また、上側側方部材12の下側フランジ12aの下面12bと下側側方部材13の上面13aとの間における接着剤Gはまた減衰性能を有するので、シートレール10の制振効果を確実に確保することができる。
【0042】
本実施形態に係るシートレール10においては、前記下側側方部材13が、前記車体1の前方から前記車体1の後方に向かって延びる中空部材となっている。そのため、下側側方部材13の減衰性能を高めることができ、その結果、シートレール10の制振効果を確実に確保することができる。
【0043】
本実施形態に係るシートレール10においては、前記下側側方部材13とフットレストブラケット22とを、カラー15及び締結部材16を用いて締結するように構成される締結部14が設けられ、前記カラー15が、その軸線15aに沿って延びる軸体部15bと、前記軸線15aから離れるように前記軸体部15bから突出する頭部15cと、その軸線15aに沿ってその軸体部15bの先端から基端に向かって延びるようにその軸体部15bに形成される雌ネジ部15dとを有し、前記締結部材16が、その軸線16aに沿って延びる雄ネジ部16bと、前記軸線16aから離れるように前記雄ネジ部16bから突出する頭部16cとを有し、前記締結部材16の雄ネジ部16bが、前記カラー15及び前記締結部材16の軸線15a,16aに沿って前記カラー15の雌ネジ部15dに前記カラー15の軸体部15bの先端から螺合可能であり、前記締結部14に、前記カラー15の軸体部15bを挿入可能とするように貫通孔14aが形成され、前記締結部材16の雄ネジ部16bが前記締結部14の貫通孔14aに挿入された前記カラー15の軸体部15bの雌ネジ部15dに螺合しながら、前記下側側方部材13及び前記フットレストブラケット22が前記カラー15の頭部15c及び前記締結部材16の頭部16c間で挟まれるように構成されている。
【0044】
このようなシートレール10においては、自動二輪車の悪路走行等に起因して乗員、積載物等からシートレール10の後部に加えられる荷重によって生じる接着剤Gの部分における前後方向のせん断変形を、上記締結部14によって抑制できる。よって、シートレール10の強度を効率的に向上させることができる。付随的には、下側側方部材13から突出するカラー15の頭部15cを、上側側方部材12を下側側方部材13に取り付けるときの位置決めに用いることができる。よって、シートレール10の製造効率を効率的に向上させることができる。
【0045】
本実施形態に係るシートレール10は、前記車体1の幅方向に間隔を空けて配置される2つの前記上側側方部材12を連結するように延びる連結部材17を備え、前記連結部材17が、前記車体1の幅方向の両側方にそれぞれ位置する2つの側方縁17aを有し、前記車体1をその幅方向から見た場合に、前記締結部14が、前記車体1の前後方向にて前記連結部材17における各側方縁17aの前端17b及び後端17c間の領域Pとオーバーラップしている。
【0046】
このようなシートレール10においては、自動二輪車の悪路走行等に起因して乗員、積載物等からシートレール10の後部に加えられる荷重によって生じる接着剤Gの部分における前後方向のせん断変形を、上記連結部材17によって抑制できる。よって、シートレール10の強度を効率的に向上させることができる。
【0047】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…車体
10…シートレール
12…上側側方部材、12a…下側フランジ、12b…下面
13…下側側方部材、13a…上面
14…締結部、14a…貫通孔
15…カラー、15a…軸線、15b…軸体部、15c…頭部、15d…雌ネジ部
16…締結部材、16a…軸線、16b…雄ネジ部、16c…頭部
17…連結部材(前方連結部材)、17a…側方縁、17b…前端、17c…後端、P…領域
22…フットレストブラケット
G…接着剤