(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】自動二輪車用シートレール構造
(51)【国際特許分類】
B62K 19/16 20060101AFI20241016BHJP
B62K 19/30 20060101ALI20241016BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20241016BHJP
B62J 15/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B62K19/16
B62K19/30
B62J1/12 B
B62J15/00 C
(21)【出願番号】P 2020175344
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】波多野 大督
(72)【発明者】
【氏名】生駒 恭平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/033425(WO,A1)
【文献】特開2019-180554(JP,A)
【文献】特開2020-132048(JP,A)
【文献】特開2020-124837(JP,A)
【文献】特開2008-207757(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101254803(CN,A)
【文献】特開2004-098875(JP,A)
【文献】国際公開第2020/178859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/00 - 19/42
B62K 1/00 - 11/14
B62J 1/12
B62J 25/06
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の車体
の一部を構成するシートレールを含む自動二輪車用シートレール構造であって、
前記シートレールが、前記車体の幅方向に間隔を空けて配置される2つの側方部材と、前記2つの側方部材を連結し、かつシートを載置可能とするように構成される第1連結部材とを有し、
前記2つの側方部材及び前記第1連結部材のそれぞれが、繊維強化樹脂から成る複数の層を積層した積層構造を有するように構成され、
各側方部材が、前記車体
における幅方向の側方に位置する縦壁と、前記縦壁の上方縁から前記車体の幅方向の中央に向かって突出する上側フランジとを有し、
前記第1連結部材が、前記2つの側方部材における上側フランジにそれぞれ当接する2つの上面当接部を有し、
各上面当接部が、前記車体の幅方向の外方を向く外側縁を有し、
前記第1連結部材が、前記2つの上面当接部の外側縁から下方にそれぞれ延びる2つの側面当接部を有し、
前記2つの側面当接部が、前記2つの側方部材の縦壁にそれぞれ当接し、
各上面当接部と、この上面当接部に当接する前記上側フランジとを締結した上面締結部が設けられ、
各側面当接部と、この側面当接部に当接する前記縦壁とを締結した第1側面締結部が設けられている、自動二輪車用シートレール構造。
【請求項2】
各側方部材が、前記車体
の前後方向において前方か
ら後方に向かうに従って前記車体の幅方向の中央寄りに位置するように湾曲する湾曲領域を有し、
前記車体をその幅方向から見た場合に、各上面当接部が、前記車体の前後方向にて、この上面当接部と当接する前記2つの側方部材の一方における前記湾曲領域の前端及び後端間の区域を跨ぐように配置されている、請求項1に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項3】
前記2つの側面当接部が、前記車体の後方寄りに位置する前記2つの上面当接部における外側縁の後方区域から下方にそれぞれ延びている、請求項1又は2に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項4】
前記自動二輪車の後輪の上方を覆うリアフェンダと、
前記2つの側方部材にそれぞれ当接する2つのリアフェンダブラケットと、
前記2つのリアフェンダブラケットを連結する第2連結部材と
を備え、
前記リアフェンダが、前記第2連結部材を介して前記2つのリアフェンダブラケットに取り付けられ、
各リアフェンダブラケットと、このリアフェンダブラケットに当接する前記側方部材とを締結する2つの第2側面締結部が、前記車体の前後方向にて互いに間隔を空けており、か
つ前記第1側面締結部に対して前記車体の前後方向の両側にそれぞれ配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の車体に設置されるシートレールを含む自動二輪車用シートレール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車に設置されるシートレールは、シート、燃料タンク等を支持する役割を担うことがある。このようなシートレールは、シート、燃料タンク等を支持するために強度を高めることが要求され、かつ乗り心地の改善等の観点から制振効果を高めることもまた要求される。このような要求を満たすため、種々のシートレールの構造、すなわち、種々の自動二輪車用シートレール構造が提案されている。
【0003】
自動二輪車用シートレール構造の一例としては、リヤフレーム(シートレール)が、繊維強化樹脂により形成され、さらに、リヤフレームが、左右の側方壁と、これら左右の側方壁とは別に形成されると共に左右の側方壁の上縁突部間を連結する上部クロス部材と、左右の側方壁とは別に形成されると共に左右の側方壁の下縁突部間を連結する下部クロス部材とを有し、各側方壁の上縁突部と、この上縁突部と当接する上部クロス部材の左右方向の端部とが、これらに形成される貫通孔に挿入される締結手段によって結合され、かつ各側方壁の下縁突部と、この下縁突部と当接する下部クロス部材の左右方向の端部ともまた、これらに形成される貫通孔に挿入される締結手段によって結合される、構造が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、シートレールには、繊維強化樹脂から成る複数の層を積層した積層構造が採用されることがある。上述した自動二輪車用シートレール構造の一例において、このような積層構造をシートレールに採用した場合、繊維強化樹脂中の樹脂のクリープ変形を考慮すると、各側方壁の上縁突部、及びこの上縁突部と当接する上部クロス部材の左右方向の端部を締結手段によって締結するための軸力と、各側方壁の下縁突部、及びこの下縁突部と当接する下部クロス部材の左右方向の端部を締結手段によって締結するための軸力とを十分に高めることが難しい。
【0006】
シートレールにおいて締結手段の軸力を十分に高めることが難しい場合、シートレールに外部から加えられる荷重によって締結手段が貫通孔内で動くおそれがある。特に、自動二輪車の悪路走行等に起因して乗員、積載物等からシートレールの後部に荷重が加えられたときに、この荷重によってシートレールが左右方向に変形し、その結果、例えば、上述した上側クロス部材の貫通孔の周縁と締結手段とが接触するおそれがある。この接触によってシートレールに局所的な応力集中が発生するおそれがある。このような局所的な応力集中によっては、シートレールにおいて隣接して重なると共に結合された層同士が離れる「層間剥離」が発生するおそれがあり、その結果、シートレールの強度が低下するおそれがある。
【0007】
このような実情を鑑みると、自動二輪車用シートレール構造においては、シートレールの強度を効率的に向上させることを可能とし、制振効果を効率的に向上させることを可能とすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係る自動二輪車用シートレール構造は、自動二輪車の車体の一部を構成するシートレールを含む自動二輪車用シートレール構造であって、前記シートレールが、前記車体の幅方向に間隔を空けて配置される2つの側方部材と、前記2つの側方部材を連結し、かつシートを載置可能とするように構成される第1連結部材とを有し、前記2つの側方部材及び前記第1連結部材のそれぞれが、繊維強化樹脂から成る複数の層を積層した積層構造を有するように構成され、各側方部材が、前記車体における幅方向の側方に位置する縦壁と、前記縦壁の上方縁から前記車体の幅方向の中央に向かって突出する上側フランジとを有し、前記第1連結部材が、前記2つの側方部材における上側フランジにそれぞれ当接する2つの上面当接部を有し、各上面当接部が、前記車体の幅方向の外方を向く外側縁を有し、前記第1連結部材が、前記2つの上面当接部の外側縁から下方にそれぞれ延びる2つの側面当接部を有し、前記2つの側面当接部が、前記2つの側方部材の縦壁にそれぞれ当接し、各上面当接部と、この上面当接部に当接する前記上側フランジとを締結した上面締結部が設けられ、各側面当接部と、この側面当接部に当接する前記縦壁とを締結した第1側面締結部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る自動二輪車用シートレール構造においては、シートレールの強度を効率的に向上させることができ、制振効果を効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るシートレール構造を含む自動二輪車を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るシートレール構造を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るシートレール構造を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るシートレール構造を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る自動二輪車用シートレール構造について、それを適用する自動二輪車と共に以下に説明する。ここで、自動二輪車用シートレール構造(以下、必要に応じて、単に「シートレール構造」という)を適用する自動二輪車は、典型的には、1つの前輪及び1つの後輪を有するものである。しかしながら、自動二輪車は、2つの前輪及び1つの後輪を有するものも含むことができる。
【0012】
本実施形態において、
図1~
図5では、自動二輪車の車体1の前方(以下、必要に応じて、単に「前方」という)は片側矢印Fによって示され、かつ車体1の後方(以下、必要に応じて、単に「後方」という)は片側矢印Rによって示される。そのため、車体1の前後方向(以下、必要に応じて、単に「前後方向」という)は片側矢印F及び片側矢印Rによって示される。
図2及び
図3では、車体1の幅方向(以下、必要に応じて、単に「幅方向」という)は両側矢印Wによって示される。
図1、
図2、
図4、及び
図5では、車体1の上方(以下、必要に応じて、単に「上方」という)は片側矢印Uによって示され、かつ車体1の下方(以下、必要に応じて、単に「下方」という)は片側矢印Dによって示される。車体1の上下方向(以下、必要に応じて、単に「上下方向」という)は片側矢印U及び片側矢印Dによって示される。
【0013】
「シートレール及び自動二輪車の概略」
図1~
図5を参照して、本実施形態に係るシートレール構造10及び自動二輪車の概略について説明する。すなわち、シートレール構造10及び自動二輪車は概略的には次のように構成される。
図1に示すように、シートレール構造10は、自動二輪車の車体1に設置されるシートレール11を有する。
【0014】
図2及び
図3に示すように、シートレール11は、幅方向に間隔を空けて配置される2つの側方部材20を有する。各側方部材20は、車体1の幅方向の側方に位置する。
図2~
図5に示すように、シートレール11は、2つの側方部材20を連結する第1連結部材30を有する。第1連結部材30は、シート2(
図1に示す)を載置可能とするように構成される。2つの側方部材20及び第1連結部材30のそれぞれは、繊維強化樹脂から成る複数の層を積層した積層構造を有するように構成される。
【0015】
各側方部材20は、車体1の幅方向の側方に位置する縦壁21を有する。各側方部材20は、この側方部材20の縦壁21の上方縁から車体1の幅方向の中央に向かって突出する上側フランジ22を有する。
【0016】
第1連結部材30は、2つの側方部材20における上側フランジ22にそれぞれ当接する2つの上面当接部31を有する。各上面当接部31は、車体1の幅方向の外方を向く外側縁31aを有する。第1連結部材30は、2つの上面当接部31の外側縁31aから下方にそれぞれ延びる2つの側面当接部32を有する。2つの側面当接部32は、2つの側方部材20の縦壁21にそれぞれ当接する。
【0017】
シートレール構造10は、各上面当接部31と、この上面当接部31に当接する上側フランジ22とを締結した上面締結部12を有する。シートレール構造10はまた、各側面当接部32と、この側面当接部32に当接する縦壁21とを締結した第1側面締結部13を有する。
【0018】
さらに、本実施形態に係るシートレール構造10及び自動二輪車は概略的には次のように構成することができる。
図2~
図5に示すように、各側方部材20は、車体1の前方から車体1の後方に向かうに従って車体1の幅方向の中央寄りに位置するように湾曲する湾曲領域23を有する。
図5に示すように、車体1をその幅方向から見た場合に、各上面当接部31が、車体1の前後方向にて、この上面当接部31と当接する2つの側方部材20の一方における湾曲領域23の前端23a及び後端23b間の区域Pを跨ぐように配置されている。
【0019】
図2~
図5に示すように、2つの側面当接部32はまた、車体1の後方寄りに位置する2つの上面当接部31における外側縁31aの後方区域31bから下方にそれぞれ延びている。
【0020】
シートレール構造10は、自動二輪車の後輪3(
図1に示す)の上方を覆うリアフェンダ40を有する。シートレール構造10は、2つの側方部材20にそれぞれ当接する2つのリアフェンダブラケット50を有する。シートレール構造10は、2つのリアフェンダブラケット50を連結する第2連結部材60を有する。
【0021】
リアフェンダ40は、第2連結部材60を介して2つのリアフェンダブラケット50に取り付けられる。シートレール構造10は、各リアフェンダブラケット50と、このリアフェンダブラケット50に当接する側方部材20とを締結する2つの第2側面締結部14を有する。シートレール構造10は、その幅方向の一方側に位置する2つの第2側面締結部14と、その幅方向の他方側に位置する2つの第2側面締結部14とを有する。シートレール11の幅方向の一方側及び他方側それぞれにおける2つの第2側面締結部14は、前後方向にて互いに間隔を空けており、かつこれら2つの第2側面締結部14は、第1側面締結部13に対して上方で第1側面締結部13に対して前後方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0022】
「自動二輪車の詳細」
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係る自動二輪車は、詳細には次のように構成することができる。
図1に示すように、自動二輪車の車体1は荷台4を有する。
図1に示すように、荷台4は、シート2の後方に位置する。荷台4は、前後方向にてシート2に隣接する。
【0023】
図1及び
図2を参照すると、シート2及び荷台4は、シートレール11によって下方から支持される。具体的には、シート2の前後方向の後部は、シートレール11の第1連結部材30によって下方から支持される。荷台4もまた、シートレール11の第1連結部材30によって下方から支持される。
図1に示すように、車体1は燃料タンク5を有する。燃料タンク5は、シート2の前方に位置する。燃料タンク5はまた、前後方向にてシート2に隣接する。
【0024】
車体1はメインフレーム6を有する。メインフレーム6は、シートレール11の前方に位置し、かつ燃料タンク5の下方に位置する。メインフレーム6はまた、前後方向にてシートレール11に隣接する。
図1及び
図2を参照すると、シートレール11の前後方向の前端部11aは、メインフレーム6に取り付けられる。
【0025】
図1に示すように、車体1はアウターパネル7を有する。アウターパネル7は、シート2の下方に位置する。アウターパネル7はまた、上下方向にてシート2と隣接する。アウターパネル7は、幅方向の両外方からシートレール11の上部11bを覆っている。詳細には、アウターパネル7は、幅方向の外方から各側方部材20の上部20aを覆っている。しかしながら、車体は、アウターパネルを有さないように構成することができる。この場合、車体は、側方部材を外装部材として車体の外部に露出させるように構成することもできる。
【0026】
「シートレール構造の詳細」
図2~
図5を参照すると、本実施形態に係るシートレール構造10は、詳細には次のように構成することができる。シートレール構造10のシートレール11は、第1連結部材30に対して後方に位置する第3連結部材70を有する。
【0027】
第3連結部材70は、2つの側方部材20を連結する。詳細には、第3連結部材70は、2つの側方部材20における前後方向の後端部20bを連結する。第3連結部材70の幅方向の両端部71は、2つの側方部材20の上側フランジ22とそれぞれ当接する。第3連結部材70の両端部71はまた、2つの側方部材20の縦壁21とそれぞれ当接する。第3連結部材70の両端部71は、2つの側方部材20の後端部20bにそれぞれ取り付けられる。
【0028】
図5に示すように、シートレール構造10において、上面締結部12、第1側面締結部13、及び第2側面締結部14のそれぞれは、雄ネジ部及び頭部を有する締結部材12a,13a,14aと、この締結部材12a,13a,14aの雄ネジ部(図示せず)に螺合する雌ネジ部を有する被締結部材(図示せず)とを含む。さらに、上面締結部12、第1側面締結部13、及び第2側面締結部14のそれぞれは、複数の被締結部材に形成される貫通孔(図示せず)に挿入される締結部材12a,13a,14aの雄ネジ部を被締結部材の雌ネジ部に螺合した状態で、締結部材12a,13a,14aの頭部及び被締結部材間で複数の被締結部材を締め付けるように構成されている。例えば、締結部材12a,13a,14aをボルトとし、かつ被締結部材をナットとすることができる。しかしながら、上面締結部、第1側面締結部、及び第2側面締結部の締結手法は、これに限定されない。
【0029】
「側方部材の詳細」
図2~
図5を参照すると、各側方部材20は、詳細には次のように構成することができる。2つの側方部材20は、幅方向にて略対称に構成されている。側方部材20の湾曲領域23は、シートレール11の後端部11cと、シートレール11の前後方向の中間部11dとの間に位置する。詳細には、側方部材20の湾曲領域23は、この側方部材20の後端部20bと、この側方部材20の車両前後方向の中間部20cとの間に位置する。
【0030】
各側方部材20の縦壁21は、前後方向をその長手方向とするように細長形状に形成される。各側方部材20の縦壁21は、車体1の幅方向の外方を向く外方面21aを有する。第1連結部材30の2つの側面当接部32は、2つの縦壁21の外方面21aにそれぞれ当接する。2つのリアフェンダブラケット50は、2つの縦壁21の外方面21aにそれぞれ当接する。第3連結部材70の両端部71は、2つの縦壁21の外方面21aにそれぞれ当接する。
【0031】
各側方部材20の上側フランジ22は、前後方向をその長手方向とするように細長形状に形成される。各側方部材20の上側フランジ22は、上方を向く上面22aを有する。第1連結部材30の2つの上面当接部31は、2つの上側フランジ22の上面22aにそれぞれ当接する。第3連結部材70の両端部71は、2つの上側フランジ22の上面22aにそれぞれ当接する。
【0032】
「第1連結部材の詳細」
図2~
図5を参照すると、第1連結部材30は、詳細には次のように構成することができる。第1連結部材30は、2つの上面当接部31を連結する第1連結部材本体33を有する。第1連結部材本体33は、略コの字形状に形成されている。
【0033】
「リアフェンダ、リアフェンダブラケット、及び第2連結部材の詳細」
図2~
図5を参照すると、リアフェンダ40、リアフェンダブラケット50、及び第2連結部材60は、詳細には次のように構成することができる。リアフェンダ40は、自動二輪車の後輪3の上方を覆うリアフェンダ本体41を有する。リアフェンダ40は、それをシートレール11に取り付けるために用いられる車体側取付部42を有する。車体側取付部42は、リアフェンダ本体41の前後方向の前端部に位置する。リアフェンダ40の車体側取付部42は、2つのリアフェンダブラケット50及び第2連結部材60と共に、シートレール11の後端部11cに下方から取り付けられるように配置される。
【0034】
各リアフェンダブラケット50は、リアフェンダ40の車体側取付部42に第2連結部材60を介して取り付けられる連結側取付部51を有する。具体的には、2つのリアフェンダブラケット50の連結側取付部51が、第2連結部材60の幅方向の端部61にそれぞれ取り付けられ、かつ第2連結部材60の幅方向の中間部62が、リアフェンダ40の車体側取付部42に取り付けられる。
【0035】
各リアフェンダブラケット50は、このリアフェンダブラケット50の連結側取付部51から立ち上がる側面当接部52を有する。2つのリアフェンダブラケット50の側面当接部52は、2つの側方部材20の縦壁21にそれぞれ当接する。詳細には、2つのリアフェンダブラケット50における側面当接部52は、2つの側方部材20における縦壁21の外方面21aにそれぞれ当接する。
【0036】
各側面当接部52は、それと当接する縦壁21と、この縦壁21に締結される2つの第2側面締結部14における締結部材14aの頭部又は被締結部材(図示せず)とに挟まれるように配置される。各側面当接部52は、それと当接する縦壁21に締結される2つの第2側面締結部14間で延びるように細長形状に形成される。
【0037】
以上、本実施形態に係るシートレール10構造は、自動二輪車の車体1に設置されるシートレール11を含むシートレール構造10であって、前記シートレール11が、前記車体1の幅方向に間隔を空けて配置される2つの側方部材20と、前記2つの側方部材20を連結し、かつシート2を載置可能とするように構成される第1連結部材30とを有し、前記2つの側方部材20及び前記第1連結部材30のそれぞれが、繊維強化樹脂から成る複数の層を積層した積層構造を有するように構成され、各側方部材20が、前記車体1の幅方向の側方に位置する縦壁21と、前記縦壁21の上方縁から前記車体1の幅方向の中央に向かって突出する上側フランジ22とを有し、前記第1連結部材30が、前記2つの側方部材20における上側フランジ22にそれぞれ当接する2つの上面当接部31を有し、各上面当接部31が、前記車体1の幅方向の外方を向く外側縁31aを有し、前記第1連結部材30が、前記2つの上面当接部31の外側縁31aから下方にそれぞれ延びる2つの側面当接部32を有し、前記2つの側面当接部32が、前記2つの側方部材20の縦壁21にそれぞれ当接し、各上面当接部31と、この上面当接部31に当接する前記上側フランジ22とを締結した上面締結部12が設けられ、各側面当接部32と、この側面当接部32に当接する前記縦壁21とを締結した第1側面締結部13が設けられている。
【0038】
このようなシートレール構造10においては、第1連結部材30が、各側方部材20の上側フランジ22に当接かつ締結される上面当接部31と、この上面当接部31とは異なる方向に配向され、かつ各側方部材20の縦壁21に当接かつ締結される側面当接部32とを用いて、2つの側方部材20に結合されている。そのため、自動二輪車の悪路走行、自動二輪車の段差乗り上げ等に起因して乗員、積載物等からシートレール11の後部に荷重が加えられる場合であっても、特定の振動モードにおける振動が1つの方向に増幅されることを抑制できる。その結果、このような振動がシート2を介して乗員に伝わることを抑制できる。すなわち、制振効果を効率的に向上させることができ、さらには、乗員の乗り心地を改善することができる。
【0039】
また、第1連結部材30の2つの側面当接部32によって、シートレール11が車体1の幅方向に開くように変形すること、例えば、シートレール11が車体1の正面から見て略ハの字形状に変形することを抑制できる。この場合、上面締結部12及び第1側面締結部13に加えられるせん断荷重を抑制できる。その結果、例えば、上面締結部12が、締結部材12aを貫通孔(図示せず)に挿入するように構成される場合であっても、シート2から加えられる荷重によって上面締結部12における締結部材12aと貫通孔の周縁(図示せず)とが接触することに起因して、この接触部分及びその周辺にて層間剥離が発生することを抑制できる。
【0040】
特に、第1側面締結部13を、上側フランジ22及び縦壁21間の角部からできる限り下方に離すように配置できるので、シートレール11に加えられる荷重負荷を、上面締結部12よりも第1側面締結部13に多く分担させることができ、その結果、特に、上面締結部12及びその周辺の局所的な応力集中を抑制できる。よって、シートレール11の強度を効率的に向上させることができる。
【0041】
本実施形態に係るシートレール構造10においては、各側方部材20が、前記車体1の前方から前記車体1の後方に向かうに従って前記車体1の幅方向の中央寄りに位置するように湾曲する湾曲領域23を有し、前記車体1をその幅方向から見た場合に、各上面当接部31が、前記車体1の前後方向にて、この上面当接部31と当接する前記2つの側方部材20の一方における前記湾曲領域23の前端23a及び後端23b間の区域Pを跨ぐように配置されている。
【0042】
多くの場合、シートレール11の内部空間の前部にバッテリが配置されるので、この内部空間の前部をその後部よりも広く確保する必要がある。その一方で、シートレール11をその内部空間の前部をその内部空間の後部よりも広くするように形成すると、シートレール11に湾曲領域23が形成され、シートレール11がこの湾曲領域23を中心に曲がり易くなるおそれがある。
【0043】
これに対して、本実施形態に係るシートレール構造10においては、各側方部材20に締結される第1連結部材30の上面当接部31が、車体1の前後方向にて、この側方部材20における湾曲領域23の前端23a及び後端23b間の区域Pを跨ぐように配置される。そのため、シートレール11の内部空間の前部をその後部よりも広く確保することを可能としながら、第1連結部材30の上面当接部31によって、側方部材20の湾曲領域23及びその周辺を補強でき、その結果、シートレール11がこの湾曲領域23を中心に曲がることを防止できる。よって、シートレール11の強度を効率的に向上させることができる。
【0044】
本実施形態に係るシートレール構造10においては、前記2つの側面当接部32が、前記車体1の後方寄りに位置する前記2つの上面当接部31における外側縁31aの後方区域31bから下方にそれぞれ延びている。
【0045】
一般的に、自動二輪車の走行時において、シートレールの後部がその前部よりも乗員からの荷重を受け易い。これに対して、本実施形態に係るシートレール構造10においては、第1連結部材30における上面当接部31の外側縁31aの後方区域31bから下方に延びる側面当接部32と、側方部材20の縦壁21とを締結した第1側面締結部13を、上側フランジ22及び縦壁21間の角部からできる限り下方に離すように配置できるので、シートレール11に加えられる荷重負荷を、上面締結部12よりも第1側面締結部13に多く分担させることができる。その結果、例えば、上面締結部12が締結部材12aを貫通孔(図示せず)に挿入するように構成される場合であっても、シート2から加えられる荷重によって上面締結部12における締結部材12aと貫通孔の周縁(図示せず)とが接触することに起因して、この接触部分及びその周辺にて層間剥離が発生することを抑制できる。
【0046】
本実施形態に係るシートレール構造10は、前記自動二輪車の後輪3の上方を覆うリアフェンダ40と、前記2つの側方部材20にそれぞれ当接する2つのリアフェンダブラケット50と、前記2つのリアフェンダブラケット50を連結する第2連結部材60とを備え、前記リアフェンダ40が、前記第2連結部材60を介して前記2つのリアフェンダブラケット50に取り付けられ、各リアフェンダブラケット50と、このリアフェンダブラケット50に当接する前記側方部材20とを締結する2つの第2側面締結部14が、前記車体1の前後方向にて互いに間隔を空けており、かつ前記第1側面締結部13に対して上方で前記第1側面締結部13に対して前記車体1の前後方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0047】
このようなシートレール構造10においては、第1側面締結部13から側方部材20の縦壁21に加えられる荷重を、2つの第2側面締結部14によって分散させることができる。そのため、特に、側方部材20の下部における応力集中を抑制することができる。よって、シートレール11の強度を効率的に向上させることができる。
【0048】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…車体、2…シート、3…後輪
10…シートレール構造、11…シートレール、12…上面締結部、13…第1側面締結部、14…第2側面締結部
20…側方部材、21…縦壁、22…上側フランジ、23…湾曲領域、23a…前端、23b…後端
30…第1連結部材、31…上面当接部、31a…外側縁、31b…後方区域、32…側面当接部
40…リアフェンダ
50…リアフェンダブラケット
60…第2連結部材
P…区域