(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】識別方法、画像表示方法、識別システム、画像表示システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241016BHJP
【FI】
G06T7/00 C
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2020178717
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】大池 匠
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽
【審査官】佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063131(JP,A)
【文献】特開2015-143966(JP,A)
【文献】特開2017-037428(JP,A)
【文献】特開平09-027969(JP,A)
【文献】国際公開第2020/173155(WO,A1)
【文献】米国特許第10452960(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第110930547(CN,A)
【文献】城殿 清澄、外2名,“高解像度レーザレーダと画像の統合による歩行者認識”,SSII2012 第18回画像センシングシンポジウム 講演論文集,日本,画像センシング技術研究会,2012年06月06日,pp.1-6
【文献】John-Ross Rizzo et al.,"Sensor fusion for ecologically valid obstacle identification: Building a comprehensive assistive technology platform for the visually impaired",2017 7th International Conference on Modeling, Simulation, and Applied Optimization (ICMSAO),米国,IEEE,2017年04月04日,pp.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00,7/00-7/90
G06V 10/00-10/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターにより、
識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得
し、
前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画
素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得し、
前記第1画像を第1サブ画像と第2サブ画像に分割し、
前記第2画像を前記第1サブ画像に対応する第3サブ画像と前記第2サブ画像に対応す
る第4サブ画像とに分割し、
前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づいて前記識別対象物の種類を識別す
る一方、前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づく識別結果の信頼度を示す指
標値を前記第1サブ画像と、前記第2サブ画像と、に基づいて算出し、
前記第1サブ画像または前記第2サブ画像の少なくとも一方は、前記識別対象物と、物
体と、が重なって撮像された画像である、
識別方法。
【請求項2】
前記コンピューターにより、
前記識別対象物の種類を前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づいて識別し
た後に、前記第1サブ画像と、前記第2サブ画像と、に基づいて前記指標値を算出し、算
出された前記指標値が閾値未満である場合には前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と
、に基づく識別結果を無効にする、請求項1に記載の識別方法。
【請求項3】
前記コンピューターにより、
前記第1サブ画像に基づいて算出された前記指標値が閾値以上である場合には前記第3
サブ画像に基づいて前記識別対象物の種類を識別し、前記第2サブ画像に基づいて算出さ
れた前記指標値が閾値以上である場合には前記第4サブ画像に基づいて前記識別対象物の
種類を識別する、請求項1に記載の識別方法。
【請求項4】
前記コンピューターにより、
前記第1サブ画像に基づく前記指標値は前記第1サブ画像を構成する各画素の画素値の
統計量であり、前記第2サブ画像に基づく前記指標値は前記第2サブ画像を構成する各画
素の画素値の統計量である、請求項1に記載の識別方法。
【請求項5】
前記コンピューターにより、
前記物体の画像と前記物体の種類を示すラベルとを対応付けた学習データを予め学習済
であり、且つ入力された画像に写っている物体の種類を示すラベルを出力する識別器、を
用いて前記識別対象物の種類を識別する、請求項1から4のうちの何れか1項に記載の識
別方法。
【請求項6】
コンピューターにより、
識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得
し、
前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画
素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得し、
前記第1画像を第1サブ画像と第2サブ画像に分割し、
前記第2画像を前記第1サブ画像に対応する第3サブ画像と前記第2サブ画像に対応す
る第4サブ画像とに分割し、
前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づいて前記識別対象物の種類を識別す
る一方、前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づく前記識別対象物の種類の識
別結果の信頼度を示す指標値を前記第1サブ画像と、前記第2サブ画像と、に基づいて算
出し、
前記第1サブ画像または前記第2サブ画像の少なくとも一方は、前記識別対象物と、物
体と、が重なって撮像された画像であり、
前記識別対象物の種類の識別結果に応じた第3画像を前記被写体に重ねて表示する、
画像表示方法。
【請求項7】
第1位置に設置され、識別対象物を含む被写体の前記第1位置からの距離を各画素の画
素値が表す第1画像を撮像する第1撮像装置と、
前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置に設置され、各画素の画素値が前記
被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を撮像する第2撮像装置と、
処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記第1撮像装置から前記第1画像を取得すること、
前記第2撮像装置から前記第2画像を取得すること、
前記第1画像を第1サブ画像と第2サブ画像に分割すること、
前記第2画像を前記第1サブ画像に対応する第3サブ画像と前記第2サブ画像に対応す
る第4サブ画像とに分割すること、及び、
前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づいて前記識別対象物の種類を識別す
る一方、前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づく前記識別対象物の種類の識
別結果の信頼度を示す指標値を前記第1サブ画像と、前記第2サブ画像と、に基づいて算
出すること、を実行し、
前記第1サブ画像または前記第2サブ画像の少なくとも一方は、前記識別対象物と、物
体と、が重なって撮像された画像である、
識別システム。
【請求項8】
第1位置に設置され、識別対象物を含む被写体の前記第1位置からの距離を各画素の画
素値が表す第1画像を撮像する第1撮像装置と、
前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置に設置され、各画素の画素値が前記
被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を撮像する第2撮像装置と、
表示装置と、
処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記第1撮像装置から前記第1画像を取得すること、
前記第2撮像装置から前記第2画像を取得すること、
前記第1画像を第1サブ画像と第2サブ画像に分割すること、
前記第2画像を前記第1サブ画像に対応する第3サブ画像と前記第2サブ画像に対応す
る第4サブ画像とに分割すること、
前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づいて前記識別対象物の種類を識別す
る一方、前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づく前記識別対象物の種類の識
別結果の信頼度を示す指標値を前記第1サブ画像と、前記第2サブ画像と、に基づいて算
出すること、及び、
前記識別対象物の種類の識別結果に応じた第3画像を前記識別対象物に重ねて前記表示
装置に表示させること、を実行し、
前記第1サブ画像または前記第2サブ画像の少なくとも一方は、前記識別対象物と、物
体と、が重なって撮像された画像である、
画像表示システム。
【請求項9】
コンピューターに、
識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得
すること、
前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画
素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得すること、
前記第1画像を第1サブ画像と第2サブ画像に分割すること、
前記第2画像を前記第1サブ画像に対応する第3サブ画像と前記第2サブ画像に対応す
る第4サブ画像とに分割すること、及び、
前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づいて前記識別対象物の種類を識別す
る一方、前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づく前記識別対象物の種類の識
別結果の信頼度を示す指標値を前記第1サブ画像と、前記第2サブ画像と、に基づいて算
出すること、
を実行させるプログラムであり、
前記第1サブ画像または前記第2サブ画像の少なくとも一方は、前記識別対象物と、物
体と、が重なって撮像された画像である、
プログラム。
【請求項10】
コンピューターに、
識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得
すること、
前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画
素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得すること、
前記第1画像を第1サブ画像と第2サブ画像に分割すること、
前記第2画像を前記第1サブ画像に対応する第3サブ画像と前記第2サブ画像に対応す
る第4サブ画像とに分割すること、
前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づいて前記識別対象物の種類を識別す
る一方、前記第3サブ画像と、前記第4サブ画像と、に基づく前記識別対象物の種類の識
別結果の信頼度を示す指標値を前記第1サブ画像と、前記第2サブ画像と、に基づいて算
出すること、及び、
前記識別対象物の種類の識別結果に応じた第3画像を前記識別対象物に重ねて表示する
こと、
を実行させるプログラムであり、
前記第1サブ画像または前記第2サブ画像の少なくとも一方は、前記識別対象物と、物
体と、が重なって撮像された画像である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、識別方法、画像表示方法、識別システム、画像表示システム、及びプログラム、に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラにより撮像された撮像画像に写っている物体の種類を識別する識別技術の一例として特許文献1に開示の技術が挙げられる。特許文献1に開示の技術では、撮像画像内に写っている物体と、データベースに保存された物体のテンプレート画像とのテンプレートマッチングにより撮像画像に写っている物体の種類が識別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、識別対象の物体の一部に他の物体が重なって写っている場合、誤った識別結果が得られる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の識別方法は、識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得し、前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得し、前記第2画像に基づいて前記識別対象物の種類を識別する一方、前記第2画像に基づく識別結果の信頼度を示す指標値を前記第1画像に基づいて算出する。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本開示の画像表示方法は、識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得し、前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得し、前記第2画像に基づいて前記識別対象物の種類を識別する一方、前記第2画像に基づく前記識別対象物の種類の識別結果の信頼度を示す指標値を前記第1画像に基づいて算出し、前記識別対象物の種類の識別結果に応じた第3画像を前記識別対象物に重ねて表示する。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本開示の識別システムは、第1位置に設置され、識別対象物を含む被写体の前記第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を撮像する第1撮像装置と、前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置に設置され、各画素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を撮像する第2撮像装置と、処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記第1撮像装置から前記第1画像を取得すること、前記第2撮像装置から前記第2画像を取得すること、及び、前記第2画像に基づいて前記識別対象物の種類を識別する一方、前記第2画像に基づく前記識別対象物の種類の識別結果の信頼度を示す指標値を前記第1画像に基づいて算出すること、を実行する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本開示の画像表示システムは、第1位置に設置され、識別対象物を含む被写体の前記第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を撮像する第1撮像装置と、前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置に設置され、各画素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を撮像する第2撮像装置と、表示装置と、処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記第1撮像装置から前記第1画像を取得すること、前記第2撮像装置から前記第2画像を取得すること、前記第2画像に基づいて前記識別対象物の種類を識別する一方、前記第2画像に基づく前記識別対象物の種類の識別結果の信頼度を示す指標値を前記第1画像に基づいて算出すること、及び、前記識別対象物の種類の識別結果に応じた第3画像を前記識別対象物に重ねて前記表示装置に表示させること、を実行する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示のプログラムは、コンピューターに、識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得すること、前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得すること、及び、前記第2画像に基づいて前記識別対象物の種類を識別する一方、前記第2画像に基づく前記識別対象の種類の識別結果の信頼度を示す指標値を前記第1画像に基づいて算出すること、を実行させる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本開示のプログラムは、コンピューターに、識別対象物を含む被写体の第1位置からの距離を各画素の画素値が表す第1画像を取得すること、前記第1位置又は前記第1位置とは異なる第2位置から撮像された画像であって、各画素の画素値が前記被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す第2画像を取得すること、前記第2画像に基づいて前記識別対象物の種類を識別する一方、前記第2画像に基づく前記識別対象物の種類の識別結果の信頼度を示す指標値を前記第1画像に基づいて算出すること、及び、前記識別対象物の種類の識別結果に応じた第3画像を前記識別対象物に重ねて表示すること、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る識別方法を実行する識別装置30Aを含む識別システム1Aの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態における被写体の一例を示す図である。
【
図5】輝度画像に基づく識別結果の一例を示す図である。
【
図6】距離画像に基づいて算出される統計量の一例を示す図である。
【
図7】識別装置30Aによる識別結果の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の識別方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る識別方法を実行する識別装置30Bを含む識別システム1Bの構成例を示すブロック図である。
【
図10】輝度画像に基づく識別結果の一例を示す図である。
【
図11】距離画像に基づいて算出される統計量の一例を示す図である。
【
図12】本実施形態の識別方法の流れを示すフローチャートである。
【
図13】本開示の第3実施形態に係る画像表示方法を実行する表示制御装置40を含む画像表示システム2の構成例を示すブロック図である。
【
図14】本実施形態における被写体の一例を示す図である。
【
図15】本実施形態における識別対象物である将棋の駒の移動可能なマス目の一例を示す図である。
【
図16】本実施形態の識別方法の流れを示すフローチャートである。
【
図17】本実施形態の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に述べる実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
【0013】
1.第1実施形態
図1は、本開示の第1実施形態に係る識別方法を実行する識別装置30Aを含む識別システム1Aの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、識別システム1Aは、識別装置30Aの他に、第1撮像装置10と、第2撮像装置20と、を含む。
図1に示すように、第1撮像装置10と、第2撮像装置20とは、識別装置30Aに接続される。
【0014】
詳細については後述するが、識別装置30Aは、背景となる物体の上に識別対象となる物体が配置された被写体の撮像画像に基づいて、識別対象となる物体の種類を識別する。以下では、背景となる物体のことを背景物と呼ぶ。また、識別対象となる物体のことを識別対象物と呼ぶ。背景物の上に識別対象物が配置された被写体は、本開示における識別対象物を含む被写体の一例である。
図2は、本実施形態における被写体の一例を示す図である。本実施形態における被写体では、背景物B1の上に識別対象物A1、A2及びC1が配置される。背景物B1は机である。識別対象物A1及び識別対象物A2はリンゴである。識別対象物C1は円筒状の花瓶である。
【0015】
第1撮像装置10は、ToFカメラ、構造化光カメラ又はステレオカメラ等の距離カメラである。距離カメラとは距離画像を撮像するカメラである。距離画像とは、各画素の画素値が被写体から距離カメラの設置位置までの距離を表す画像である。第1撮像装置10は、被写体を撮像する毎に撮像した距離画像を表す画像データを識別装置30Aへ出力する。以下では、距離画像を表す画像データを距離画像データと呼ぶ。
【0016】
第1撮像装置10は、
図2に示す被写体の斜め上方の位置に固定され、
図2において破線で囲った範囲を所定の時間長のフレーム期間毎に撮像する。
図3は、
図2に示す被写体を第1撮像装置10により撮像して得られる距離画像の一例を示す図である。
図3に示すように、本実施形態における距離画像はグレイスケール画像である。本実施形態の距離画像において、第1画素についての被写体からの距離が第2画素についての被写体からの距離よりも長い場合、第1画素の画素値は第2画素の画素値よりも小さくなる。つまり、第1画素は第2画素よりも黒くなる。第1撮像装置10の設置位置は本開示における第1位置の一例ある。
図2に示す被写体を第1撮像装置10により撮像
して得られる距離画像は本開示における第1画像の一例である。
【0017】
第2撮像装置20は、RGBカメラである。第2撮像装置20により撮像された画像における各画素の画素値は被写体からの反射光の輝度を表す。以下では、各画素の画素値が被写体からの反射光の輝度を表す画像を輝度画像と呼ぶ。本実施形態における第2撮像装置20はRGBカメラであるが、グレーカメラ又は赤外線カメラであってもよい。第2撮像装置20は、第1撮像装置10の近傍の位置に固定される。第2撮像装置20の設置位置は本開示における第1位置とは異なる第2位置の一例ある。第2撮像装置20により撮像される輝度画像は本開示における第2画像の一例である。
【0018】
第2撮像装置20は、第1撮像装置10と同様に、
図2に示す被写体の斜め上方から、
図2において破線で囲った範囲をフレーム期間毎に撮像する。なお、本実施形態では、第2撮像装置20による撮像タイミングと第1撮像装置10による撮像タイミングとは同じである。第2撮像装置20は、被写体を撮像する毎に撮像した輝度画像を表す画像データを識別装置30Aへ出力する。以下では、輝度画像を表す画像データを輝度画像データと呼ぶ。
図4は、
図2に示す被写体を第2撮像装置20により撮像して得られる輝度画像の一例を示す図である。
図4では、背景物B1、識別対象物A1、A2及びC1の各々の違いがハッチングの有無及びハッチングパターンで示されている。本実施形態では、第2撮像装置20におけるズームと第1撮像装置10におけるズームとは同じ値に設定される。このため、第1撮像装置10により撮像された距離画像と第2撮像装置20により撮像された輝度画像は、同じ撮像範囲を略同じ位置から略同じズームで撮像した画像となる。
【0019】
識別装置30Aは、第2撮像装置20から出力される輝度画像データに基づいて識別対象物A1、A2及びC1の種類を識別する。また、識別装置30Aは、輝度画像データに基づく識別結果の信頼度を示す指標値を、第1撮像装置10から出力される距離画像データに基づいて算出する。識別装置30Aは,この指標値に基づいて、輝度画像データに基づく識別結果を有効とするのか、無効とするのかを判定する。以下、本実施形態の特徴を顕著に示す識別装置30Aを中心に説明する。
【0020】
識別装置30Aは、例えばパーソナルコンピューターである。
図1に示すように、識別装置30Aは、通信装置300と、記憶装置310と、処理装置320と、を含む。通信装置300には、第1撮像装置10及び第2撮像装置20が接続される。通信装置300は、外部の装置とデータ通信を実行する通信インターフェースである。通信装置300は、例えば、送受信する信号を処理するインターフェース回路を備える。通信装置300の具体例としては、無線通信モジュール又は有線通信モジュールが挙げられる。通信装置300が有線通信モジュールである場合、通信装置300には、通信線を介して第1撮像装置10及び第2撮像装置20が接続される。第1撮像装置10及び第2撮像装置20と識別装置30Aとの接続は、無線アクセスポイント装置又はルーター等の中継装置を介さない直接接続であってもよいし、中継装置を介する間接接続であってもよい。通信装置300が無線通信モジュールである場合、直接接続の具体例としてはアドホック接続が挙げられ、間接接続の具体例としては無線アクセスポイント装置を介するアクセスポイント接続が挙げられる。また、通信装置300が有線通信モジュールである場合、直接接続の具体例としてはピアトゥーピア接続が挙げられ、間接接続の具体例としては有線ルーター又は有線ハブを介する接続が挙げられる。通信装置300は、第1撮像装置10から出力される距離画像データを受信する。また、通信装置300は、第2撮像装置20から出力される輝度画像データを受信する。
【0021】
記憶装置310は、処理装置320が読み取り可能な記録媒体である。記憶装置310は、例えば、不揮発性メモリーと揮発性メモリーとを含む。不揮発性メモリーは、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。揮発性メモリーは、例えば、RAM(Radom Access Memory)である。
【0022】
記憶装置310の不揮発性メモリーには、処理装置320によって実行されるプログラム311Aと、識別モジュール312と、が記憶される。記憶装置310の揮発性メモリーはプログラム311Aを実行する際のワークエリアとして処理装置320によって利用される。プログラム311Aは、「アプリケーションプログラム」、「アプリケーションソフトウェア」又は「アプリ」とも称され得る。プログラム311Aは、例えば、通信装置300を介して不図示のサーバー等から取得され、その後、記憶装置310に記憶される。プログラム311Aは、記憶装置310に予め記憶されてもよい。
【0023】
識別モジュール312は、物体の輝度画像と物体の種類を示すラベルとを対応付けた学習データを用いてディープラーニング等の機械学習により生成された畳み込みニューラルネットワークである。識別モジュール312は、リンゴ、花瓶及び机について学習済である。識別モジュール312は、入力された輝度画像に写っている物体の種類を示すラベルを出力する。識別モジュール312は、本開示における識別器の一例である。
【0024】
処理装置320は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサー、即ちコンピューターを含んで構成される。処理装置320は、単一のコンピューターで構成されてもよいし、複数のコンピューターで構成されてもよい。処理装置320は、プログラム311Aの実行開始を指示する操作が不図示の入力装置に対して為されたことを契機としてプログラム311Aを不揮発性メモリーから揮発性メモリーに読み出し、プログラム311Aの実行を開始する。プログラム311Aに従って作動中の処理装置320は、
図1に示す第1取得部321、第2取得部322、識別部323A、算出部324A、及び判定部325Aとして機能する。
図1に示す第1取得部321、第2取得部322、識別部323A、算出部324A、及び判定部325Aは、処理装置320をプログラム311Aに従って動作させることで実現されるソフトウェアモジュールである。
【0025】
第1取得部321は、通信装置300により受信した距離画像データを取得する。第2取得部322は、通信装置300により受信した輝度画像データを取得する。
【0026】
識別部323Aは、第2取得部322により取得した輝度画像データの表す輝度画像と識別モジュール312とを用いて、輝度画像に写っている物体の種類を識別する。なお、識別部323Aは、第2取得部322により取得した輝度画像データの表す輝度画像が所定の大きさの矩形となるように当該輝度画像データに矩形変換を施してもよい。識別部323Aは、輝度画像データの表す輝度画像を、
図5に示すように、グリッドを用いてN行M列の合計N×M個のサブ輝度画像に分割する。
図5に示す例ではN=6である。Nは2以上の整数であればよい。
図5に示す例ではM=10である。Mは2以上の整数であればよい。N×M個のサブ輝度画像のうちの何れか一のサブ輝度画像は本開示における第3サブ画像の一例であり、当該一のサブ輝度画像とは異なるサブ輝度画像は本開示における第4サブ画像の一例である。
【0027】
以下では、サブ輝度画像のN個の行に上から下に向けて第1行、第2行…第N行と番号を付ける。サブ輝度画像のM個の列についても同様に左から右へ向けて第1列、第2列…第M列と番号を付ける。従って、
図5に示す6×10個の画素のうち左上隅のサブ輝度画像を1行1列目のサブ輝度画像となり、右下隅のサブ輝度画像を6行10列目のサブ輝度画像となる。
【0028】
識別部323Aは、N×M個のサブ輝度画像の各々を識別対象画像として当該識別対象画像を表す画像データを識別モジュール312へ入力する。識別部323Aは、識別対象画像に写っている物体の種別を示すラベルを識別モジュール312から取得することで、当該物体の種別を識別する。
図5では、N×M個のサブ輝度画像の各々について識別モジュール312から取得されるラベルが一文字のアルファベットで示されている。
図5においてAはリンゴを、Bは背景物を、Cは花瓶を夫々表すラベルである。
図5におけるDは、リンゴ、背景物及び花瓶の何れでもない物を示すラベルである。5行8列目のサブ輝度画像に対してラベルDが出力されるのは、当該サブ輝度画像には識別対象物A2の一部が写っているものの、識別対象物C1及び背景物B1も写っているため、識別モジュール312を用いた識別に失敗したからである。
【0029】
算出部324Aは、識別部323Aによる識別結果の信頼度を示す指標値を、第1取得部321により取得した距離画像データの表す距離画像に基づいて算出する。より詳細に説明すると、算出部324Aは、距離画像データの表す距離画像を、グリッドを用いてN×M個のサブ距離画像に分割する。前述したように、第1撮像装置10により撮像された距離画像と第2撮像装置により撮像された輝度画像とは同じ撮像範囲を略同じ位置から同じズームで撮像した画像であるから、N×M個のサブ距離画像の各々はN×M個のサブ輝度画像の各々に一対一に対応する。例えば、1行1列目のサブ距離画像と1行1列目のサブ輝度画像とは略同じ撮像範囲を撮像した画像となる。なお、サブ輝度画像とサブ距離画像とをより正確に対応させるため、識別部323Aは、輝度画像の輪郭が所定の大きさの矩形となるように輝度画像に矩形変換を施した後にサブ輝度画像に分割し、算出部324Aは距離画像に当該矩形変換を施した後にサブ距離画像に分割してもよい。距離画像を分割して得られるN×M個のサブ距離画像のうちの何れか一のサブ距離画像は本開示における第1サブ距離画像の一例であり、当該一のサブ距離画像とは異なるサブ距離画像は本開示における第2サブ距離画像の一例である。
【0030】
次いで、算出部324Aは、N×M個のサブ距離画像の各々を算出対象画像とし、算出対象画像を構成する画素の画素値の統計量に基づいて指標値を算出する。本実施形態では、算出部324Aは、算出対象画像を構成する各画素の画素値の統計量として、以下の式(1)に示す分散S
2を算出する。なお、式(1)においてLは算出対象画像を構成する画素の総数である。Lは2以上の整数である。x
iは、算出対象画像を構成するL個の画素におけるi番目の画素の画素値である。つまり、iは1からLまでの整数の何れかである。x
aveは算出対象画像を構成するL個の画素の画素値の加算平均値である。
【数1】
【0031】
図6はN×M個のサブ距離画像の各々について算出される統計量の一例を示す図である。
図6では、N×M個のサブ距離画像の各々について算出された分散S
2の値が各サブ距離画像内に示されている。なお、
図6では、距離を表す階調の描画は省略されている。4行8列目、4行9列目、5行8列、及び5行9列目の各サブ距離画像についての分散S
2
の値が著しく大きくなっているのは、これらのサブ距離画像には複数の物体が写っており、サブ距離画像内での距離のバラつきが大きいためである。
【0032】
算出部324Aは、上記統計量が大きいほど小さくなる指標値を算出する。本実施形態では、算出部324Aは、上記統計量の逆数を上記指標値として算出するが、予め定められた値から上記統計量を減算して得られる値であってもよい。この指標値が、識別部323Aによる識別結果の信頼度を示す理由は次の通りである。前述したように、サブ距離画像について算出される統計量が大きいということは、サブ距離画像を構成する各画素の画素値のバラつきが大きいことを意味する。サブ距離画像について算出される上記統計量が大きい場合、当該サブ距離画像には複数の物体が写っている可能性が高く、当該サブ距離画像に対応するサブ輝度画像にも複数の物体が写っている可能性が高い。複数の物体が写っているサブ輝度画像に対して識別部323Aによる物体の識別を行っても、その識別結果は誤っている可能が高い。従って、サブ距離画像を構成する画素の画素値の統計量に基づいて算出される指標値は、当該サブ距離画像に対応するサブ輝度画像に対する識別部323Aによる識別結果の信頼度を示す。
【0033】
判定部325Aは、識別部323Aによる識別結果が無効であるか否かを、算出部324Aにより算出された信頼度に基づいてサブ輝度画像毎に判定する。より詳細に説明すると、判定部325Aは、N×M個のサブ輝度画像の各々を判定対象画像として、判定対象画像に対応するサブ距離画像について算出部324Aにより算出された指標値が閾値未満であるか否かを判定する。そして、判定部325Aは、算出部324Aにより算出された指標値が閾値未満である場合には、判定対象画像に基づく識別部323Aの識別結果を無効にする。上記閾値の値は例えば0.5であるが、他の値であってもよい。上記閾値については適宜実験を行って好適な値を設定すればよい。本実施形態では、サブ距離画像について算出された分散S
2の逆数が指標値となるから、分散S
2が2.0以上のサブ距離画像については指標値が0.5未満となり、当該サブ距離画像に対応するサブ輝度画像に基づく識別結果は無効とされる。具体的には、
図6における4行8列目、4行9列目、5行8列、及び5行9列目の各サブ距離画像に対応するサブ輝度画像に基づく識別結果は無効とされる。その結果、
図7に示す識別結果が得られる。
図7では識別結果を無効とされたラベルが削除されている点が
図5と異なる。
【0034】
また、プログラム311Aに従って作動している処理装置320は、本開示の第1実施形態の識別方法を実行する。
図8は、この識別方法の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、この識別方法には、第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、識別処理SA130、算出処理SA140、及び判定処理SA150が含まれる。
【0035】
第1取得処理SA110では、処理装置320は第1取得部321として機能する。第1取得処理SA110では、処理装置320は、通信装置300により受信した距離画像データを取得する。第1取得処理SA110に後続する第2取得処理SA120では、処理装置320は、第2取得部322として機能する。第2取得処理SA120では、処理装置320は、通信装置300により受信した輝度画像データを取得する。
【0036】
第2取得処理SA120に後続する識別処理SA130では、処理装置320は、識別部323Aとして機能する。識別処理SA130では、処理装置320は、第2取得部322により取得した輝度画像データの表す輝度画像をN×M個のサブ輝度画像に分割する。次いで、処理装置320は、N×M個のサブ輝度画像の各々を識別対象画像として識別モジュール312へ入力し、識別対象画像に写っている物体の種別を示すラベルを取得する。
【0037】
識別処理SA130に後続する算出処理SA140では、処理装置320は、算出部324Aとして機能する。算出処理SA140では、処理装置320は、第1取得部321により取得した距離画像データの表す距離画像をN×M個のサブ距離画像に分割する。次いで、処理装置320は、N×M個のサブ距離画像の各々算出対象画像とし、算出対象画像における画素値の統計量に応じた指標値を算出する。
【0038】
算出処理SA140に後続する判定処理SA150では、処理装置320は、判定部325Aとして機能する。判定処理SA150では、処理装置320は、N×M個のサブ輝度画像の各々を判定対象画像として、判定対象画像に対応するサブ距離画像について算出処理SA140にて算出した指標値が閾値未満であるか否かを判定する。そして、処理装置320は、算出処理SA140にて算出した指標値が閾値未満である場合には、判定対象画像に基づく識別部323Aの識別結果を無効にする。
【0039】
本実施形態によれば、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握できる。加えて、本実施形態では、輝度画像に基づく識別結果の信頼度を示す指標値が閾値未満である場合にはその識別結果は無効とされる。本実施形態では、距離画像における画素値の統計量に応じた指標値を用いて輝度画像に基づく識別結果の有効性が判定されるので、複数の物体が写っていることに起因する識別誤りを無効とすることができる。
【0040】
2.第2実施形態
図9は、本開示の第2実施形態に係る識別システム1Bの構成例を示すブロック図である。
図9では、
図1におけるものと同じ構成要素には同じ符号が付されている。
図9と
図1とを対比すれば明らかなように、識別システム1Bは、識別装置30Aに代えて識別装置30Bを有する点において識別システム1Aと異なる。識別装置30Bは、識別装置30Aと同様に、パーソナルコンピューターである。
図9と
図1とを対比すれば明らかなように、識別装置30Bのハードウェア構成は識別装置30Aのハードウェア構成と同一である。識別装置30Bは、プログラム311Aに代えてプログラム311Bが記憶装置310に記憶されている点において、識別装置30Aと異なる。
【0041】
識別装置30Bの処理装置320は、プログラム311Bを実行することにより、
図9に示す第1取得部321、第2取得部322、識別部323B、算出部324B、及び判定部325Bとして機能する。第1取得部321、第2取得部322、識別部323B、算出部324B、及び判定部325Bは、処理装置320をプログラム311Bに従って動作させることで実現されるソフトウェアモジュールである。以下、第1実施形態との相違点である識別部323B、算出部324B、及び判定部325Bを中心に説明する。
【0042】
識別部323Bは、識別部323Aと同様に、第2取得部322により取得した輝度画像データの表す輝度画像と識別モジュール312とを用いて輝度画像に写っている物体の種類を識別する。なお、識別部323Bについても、輝度画像データの表す輝度画像に矩形変換を施した後に物体の種類の識別を行ってもよい。識別部323Bは、第2取得部322により取得した輝度画像データを識別モジュール312へ入力し、輝度画像に写っている識別対象物の種別を示すラベルと、注目領域を示すデータとを取得する。注目領域とは、Region Of Interestのことであり、輝度画像において当該識別対象物が占める領域のことをいう。注目領域は本開示における第1領域の一例である。
図10は、
図4に示す輝度画像を表す輝度画像データを識別モジュール312に入力した場合の識別結果及び注目領域の特定結果の一例を示す図である。
図10に示すように、本実施形態では、識別対象物A1について注目領域R1が特定され、ラベルとしてAが取得される。また、識別対象物A2については、注目領域R2が特定され、ラベルとしてDが取得される。そして、識別対象物C1については注目領域R3が特定され、ラベルとしてCが取得される。
【0043】
算出部324Bは、識別部323Bにより特定された注目領域に対応する距離画像の領域を算出対象画像とし、識別部323Bによる識別結果の信頼度を示す指標値を、算出対象画像における画素値の統計量に基づいて算出する。注目領域に対応する距離画像の領域は本開示における第2領域の一例である。本実施形態における指標値も、第1実施形態と同様に上記統計量の逆数である。本実施形態では、算出対象画像における画素値の統計量として前述の式(1)に示す分散S2が用いられる。本実施形態における第1実施形態と同様に、指標値が大きいほど識別部323Bによる識別結果の信頼度が高いことを意味する。なお、算出部324Bについても、距離画像データの表す距離画像に矩形変換を施した後に指標値の算出を行ってもよい。
【0044】
図11は、注目領域R1、R2及びR3の各々について、
図3に示す輝度画像に基づく統計量の算出結果を示す図である。
図11に示すように、注目領域R1については分散S
2として1.5が、注目領域R2については分散S
2として6.0が、注目領域R3については分散S
2として1.0が夫々算出される。注目領域R2について算出される分散S
2が著しく大きいのは、注目領域R2には複数の物体の画像が含まれているからである。前述したように、算出部324Bは、算出対象画像における画素値の統計量の逆数を指標値として算出するため、注目領域R1については指標値として0.67が、注目領域R2については指標値として0.16が、注目領域R3については指標値として1.0が夫々算出される。
【0045】
判定部325Bは、識別部323Bによる識別結果が無効であるか否かを、算出部324Bにより算出された信頼度に基づいて注目領域毎に判定する。より詳細に説明すると、判定部325Bは、注目領域毎に、算出部324Bにより算出された指標値が閾値未満であるか否かを判定する。そして、判定部325Bは、算出部324Bにより算出された指標値が閾値未満である注目領域については、識別部323Bの識別結果を無効にする。本実施形態では、上記閾値の値は第1実施形態と同様に0.5である。このため、本実施形態では、注目領域R1、R2及びR3のうち注目領域R2についてのみ、識別結果が無効とされる。
【0046】
また、識別装置30Bの処理装置320は、プログラム311Bに従って、本開示の第2実施形態の識別方法を実行する。
図12は、この識別方法の流れを示すフローチャートである。
図12に示すように、この識別方法には、第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、識別処理SB130、算出処理SB140、及び判定処理SB150が含まれる。以下、第1実施形態における識別方法との相違点である識別処理SB130、算出処理SB140、及び判定処理SB150を中心に説明する。
【0047】
識別処理SB130では、識別装置30Bの処理装置320は、識別部323Bとして機能する。識別処理SB130では、識別装置30Bの処理装置320は、第2取得部322により取得した輝度画像データを識別モジュール312へ入力し、輝度画像に写っている識別対象物の種別を示すラベルと、注目領域を示すデータとを取得する。
【0048】
識別処理SB130に後続する算出処理SB140では、識別装置30Bの処理装置320は、算出部324Bとして機能する。算出処理SB140では、識別装置30Bの処理装置320は、識別処理SB130にて特定した注目領域に対応する距離画像の領域を算出対象画像とし、識別処理SB130における識別結果の信頼度を示す指標値を、算出対象画像における画素値の統計量に基づいて算出する。
【0049】
算出処理SB140に後続する判定処理SB150では、識別装置30Bの処理装置320は、判定部325Bとして機能する。判定処理SB150では、識別装置30Bの処理装置320は、注目領域毎に、算出処理SB140にて算出した指標値が閾値未満であるか否かを判定し、指標値が閾値未満である注目領域についての識別結果を無効にする。
【0050】
本実施形態によっても、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握できる。本実施形態においても、距離画像における画素値の統計量に応じた指標値を用いて輝度画像に基づく識別結果の有効性が判定されるので、複数の物体が写っていることに起因する識別誤りを無効とすることができる。また、本実施形態によれば、注目領域についてのみ指標値が算出されるので、第1実施形態に比較して指標値の算出に要する処理負荷を低減できる。
【0051】
3.第3実施形態
図13は、本開示の第3実施形態に係る画像表示方法を実行する表示制御装置40を含む画像表示システム2の構成例を示すブロック図である。
図13に示すように画像表示システム2は、表示制御装置40の他に、第1撮像装置10と、第2撮像装置20と、表示装置50と、を含む。
図13に示すように、第1撮像装置10、第2撮像装置20、及び表示装置50は、表示制御装置40に接続される。以下、第1実施形態との相違点である表示装置50及び表示制御装置40について説明する。
【0052】
表示装置50は、表示制御装置40による制御の下、画像を表示する。本実施形態における表示装置50はプロジェクターである。
【0053】
表示制御装置40は、識別装置30A又は識別装置30Bと同様にパーソナルコンピューターである。表示制御装置40は、表示装置50による画像の投写先となる物体の種類を第2撮像装置20により撮像される輝度画像に基づいて識別する。そして、表示制御装置40は、輝度画像に基づく識別結果に応じた画像を投写するように表示装置50を制御する。つまり、本実施形態では、表示装置50からの画像の投写先となる物体が識別対象物となる。
図14は、本実施形態における被写体を示す図である。
図14に示すように本実施形態の被写体は将棋の各駒が配置された将棋盤である。本実施形態では、将棋の9種類の駒が識別対象物であり、将棋盤が背景物である。なお、
図14では、各駒の名称が一文字で略記されている。例えば、
図14における「歩」は将棋の駒のうちの「歩兵」を意味し、「玉」は将棋の駒のうちの「玉将」を意味する。本実施形態では、識別モジュール312は、将棋盤、及び将棋の9種類の駒について学習済である。
【0054】
表示制御装置40は、第1撮像装置10により撮像される距離画像に基づいて、被写体における何れかの駒へのユーザーのタッチを検出し、タッチされた駒の種類を識別する。そして、表示制御装置40は、ユーザーのタッチした駒が移動可能なマス目を示す画像を被写体に重ねて表示するように、表示装置50を制御する。なお、第1撮像装置10により撮像される距離画像は、第1及び第2実施形態と同様に、輝度画像に基づく物体の種類の識別結果の有効性の判定にも利用される。
【0055】
図13と
図1とを比較すれば明らかなように、表示制御装置40のハードウェア構成は識別装置30Aのハードウェア構成と同一である。即ち、表示制御装置40は、通信装置300と、記憶装置310と、処理装置320と、を含む。通信装置300には、第1撮像装置10、第2撮像装置20、及び表示装置50が接続される。通信装置300は、第1撮像装置10から出力される距離画像データを受信する。また、通信装置300は、第2撮像装置20から出力される輝度画像データを受信する。また、通信装置300は、識別対象物に投写する画像を表す画像データを表示装置50へ出力する。
【0056】
表示制御装置40の記憶装置310には、プログラム311Cと、識別モジュール312と、テーブル313とが記憶されている。以下、第1実施形態との相違点であるテーブル313及びプログラム311Cについて説明する。
【0057】
テーブル313には、将棋の駒の種類毎に、移動可能なマス目を示すデータが格納されている。例えば、「歩」については
図15に示すように前方の1マスを示すデータが、「銀」については右斜め前、前方、左斜め前、右斜め後ろ、及び左斜め後ろの各1マスを示すデータがテーブル313に格納されている。なお、
図15では、「歩」及び「銀」の各々の移動可能なマス目がハッチングで示されている。
【0058】
表示制御装置40の処理装置320は、プログラム311Cに従って作動することにより、第1取得部321、第2取得部322、識別部323A、算出部324C、判定部325A、検出部326、及び表示制御部327として機能する。つまり、第1取得部321、第2取得部322、識別部323A、算出部324C、判定部325A、検出部326及び表示制御部327は、処理装置320をプログラム311Cに従って作動させることにより実現されるソフトウェアモジュールである。以下、第1実施形態との相違点である算出部324C、検出部326及び表示制御部327を中心に説明する。
【0059】
検出部326は、第1取得部321により取得された距離画像データに基づいて、被写体に対するユーザーの指先のタッチを検出する。より詳細に説明すると、検出部326は、距離画像データの表す距離画像を構成する各画素について、事前に保持した基準距離と、現在の画素値が表す距離との差分ΔDを算出する。基準距離とは、被写体を単独で撮像して得られた距離画像における画素値の表す距離である。検出部326は、差分ΔDがより大きく、かつ所定の閾値よりも小さい画素があった場合に、ユーザーのタッチがあったと判定し、当該画素の位置をタッチ位置として検出する。本実施形態では上記閾値は1cmである。
【0060】
算出部324Cは、第1実施形態における算出部324Aと同様に、識別部323Aによる識別結果の信頼度を示す指標値を、第1取得部321により取得した距離画像データの表す距離画像に基づいて算出する。より詳細に説明すると、算出部324Cは、距離画像データの表す距離画像を、背景物である将棋盤のマス目に合わせて9×9個のサブ距離画像に分割する。本実施形態ではN=9且つM=9であり、9×9個のサブ距離画像は将棋盤の9×9個のマス目に一対一に対応する。算出部324Cは、9×9個のサブ距離画像の各々について、以下の式(2)に示す指標値Cを算出する。式(2)においてGtは算出対象画像を構成する画素の総数であり、Geは算出対象画像を構成する画素のうち基準画像からの画素値の変動量が所定の閾値を超える画素の数である。つまり、算出部324Cと算出部324Aとでは、指標値の計算式のみが異なる。
【数2】
同様に、識別部323Aでは、輝度画像は将棋盤の9×9個のマス目に一対一に対応する9×9個のサブ輝度画像に分割され、サブ輝度画像毎に識別対象物の種類が識別される。
【0061】
表示制御部327は、検出部326により検出されたタッチ位置に対応するサブ輝度画像についての識別結果が判定部325Aにより有効と判定された場合に、タッチ位置に対応する駒が移動可能なマス目をテーブル313を参照して特定する。そして、表示制御部327は、特定したマス目を示す画像データを表示装置50に与え、当該画像データの示す画像を被写体に重ねて表示させる。
【0062】
また、表示制御装置40の処理装置320は、プログラム311Cに従って、本開示の第3実施形態の画像表示方法を実行する。
図16は、この画像表示方法の流れを示すフローチャートである。
図16に示すように、この画像表示方法には、第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、検出処理SC125、識別処理SA130、算出処理SC140、判定処理SA150、及び表示制御処理SC160が含まれる。
【0063】
第1取得処理SA110では、表示制御装置40の処理装置320は第1取得部321として機能する。第1取得処理SA110では、処理装置320は、通信装置300により受信した距離画像データを取得する。第1取得処理SA110に後続する第2取得処理SA120では、表示制御装置40の処理装置320は、第2取得部322として機能する。第2取得処理SA120では、処理装置320は、通信装置300により受信した輝度画像データを取得する。
【0064】
検出処理SC125では、表示制御装置40の処理装置320は検出部326として機能する。検出処理SC125では、表示制御装置40の処理装置320は、第1取得部321により取得された距離画像データの示す距離画像に基づいて、識別対象物へのユーザーのタッチ位置を検出する。以下では、
図14において1行5列目に配置される「王」、即ち「王将」を使う側のユーザーが3行7列目の「歩」を動かすために当該「歩」にタッチした場合を例にとって説明する。
【0065】
識別処理SA130では、表示制御装置40の処理装置320は、識別部323Aとして機能する。識別処理SA130では、表示制御装置40の処理装置320は、9×9個のサブ輝度画像の各々に基づいて識別対象物の種類を識別する。
図17には、将棋盤の1行目に対応する9個のサブ輝度画像の各々に基づく識別結果が示されている。
図17に示す例では、1行6列目についての識別結果は「香」、即ち「香車」であるが、
図14に示すように実際に配置されている駒は「金」、即ち「金将」である。また、
図17に示す例では、1行7列目についての識別結果は「角」、即ち「角行」であるが、
図14に示すように実際に配置されている駒は「銀」である。また、
図17に示す例では、1行8列目についての識別結果は「飛」、即ち「飛車」であるが、
図14に示すように実際に配置されている駒は「桂」、即ち「桂馬」である。つまり、
図17に示す例では、1行6列目、1行7列目、及び1行8列目の各サブ輝度画像に基づく識別結果は誤っている。これは、3行7列目の「歩」にタッチする際にユーザーの腕が将棋盤の1行6列目、1行7列目、及び1行8列目の上を横切り、ユーザーの腕が重なった状態で撮像された輝度画像に基づいて識別対象物の識別が行われたことに起因する。
【0066】
識別処理SA130に後続する算出処理SC140では、表示制御装置40の処理装置320は、算出部324Cとして機能する。算出処理SC140では、表示制御装置40の処理装置320は、9×9個のサブ距離画像の各々に基づいて指標値を算出する。
図17には、将棋盤の1行目に対応する9個のサブ距離画像の各々に基づいて算出された指標値が示されている。
図17に示す例において、1行6列目、1行7列目、及び1行8列目の指標値が0となっているのは、これらのサブ距離画像においては、ユーザーの腕が重なった状態で撮像された影響で、全ての画素について基準画像からの画素値の変動が大きくなるからである。
【0067】
算出処理SA140に後続する判定処理SA150では、表示制御装置40の処理装置320は、判定部325Aとして機能する。判定処理SA150では、表示制御装置40の処理装置320は、9×9個のサブ輝度画像の各々について、対応するサブ距離画像に基づいて算出された指標値が閾値未満であるか否かを判定し、指標値が閾値未満である場合には、識別処理SA130の識別結果を無効にする。
図17には、将棋盤の1行目に対応する9個のサブ輝度画像の各々についての判定結果が
示されている。前述したように上記閾値は0.5であるため、
図17に示す例では、1行1列目~1行5列目及び1行9列目についての識別結果は有効と、1行6列目~1行8列目についての識別結果は無効とされる。以下では、9×9個のサブ輝度画像のうち1行6列目~1行8列目の3つのサブ輝度画像については識別結果が無効とされるものの、他の78個のサブ輝度画像の各々に基づく識別結果は有効とされた場合について説明する。なお、タッチ位置に対応するサブ輝度画像に基づく識別結果が無効であった場合には、過去のフレーム期間において有効となった識別結果を利用すればよい。
【0068】
表示制御処理SC160では、表示制御装置40の処理装置320は、表示制御部327として機能する。表示制御処理SC160では、処理装置320は、判定処理SA150にて有効と判定された識別結果に応じた画像を表示装置50に表示させる。本実施形態では、ユーザーのタッチ位置として3行7列目のマス目が検出処理SC125で検出されている。このマス目に配置されている駒は「歩」であるから、移動可能なマス目として一つ前方のマス目、即ち4行7列目のマス目が特定される。本実施形態では、3行7列目のマス目についての識別結果は有効とされるので、4行7列目のマス目を所定の色で塗りつぶす画像を被写体に重ねて表示装置50に表示させる。その結果、ユーザーの目には
図18に示す画像が映る。
図18に示す例では、ユーザーのタッチした駒が移動可能なマス目を示す色がハッチングで示されている。
【0069】
本実施形態によっても、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握できる。本実施形態では、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を示す指標値が閾値未満である識別結果は無効とされるので、タッチ位置に対応する駒の種別が誤って識別された場合であっても、誤った識別結果に基づいて移動可能なマス目が誤って表示されることを回避できる。
【0070】
4.変形例
各実施形態は、以下のように変更されてもよい。
(1)第1、第2及び第3施形態では、第1取得処理SA110に後続して第2取得処理SA120が実行されたが、第1取得処理SA110と第2取得処理SA120の実行順が入れ替わってもよい。また、第1実施形態における識別処理SA130と算出処理SA140の実行順が入れ替わってもよい。識別処理SA130に先立って算出処理SA140を実行する態様は、算出処理SA140にて算出された指標値が所定の閾値以上であるサブ輝度画像についてのみ識別処理SA130を実行されるように変更されてもよい。第3実施形態の画像表示方法についても同様に識別処理SA130に先立って算出処理SC140が実行されるように変更されてもよい。識別処理SA130に先立って算出処理SC140が実行される場合、算出処理SC140にて算出された指標値が所定の閾値以上であるサブ輝度画像についてのみ識別処理SA130を実行されるように変更されてもよい。
【0071】
同様に、第2実施形態における識別処理SB130と算出処理SB140の実行順が入れ替わってもよい。識別処理SB130に先立って算出処理SB140を実行する場合には、距離画像に基づいて注目領域を特定すればよい。具体的には、輝度画像にエッジ検出を施し、検出されたエッジを注目領域の輪郭線とすればよい。エッジとは画像の水平走査方向又は垂直走査方向に画素値をサンプリングしたときに画素値が急激に変化する画素のことをいう。被写体の距離画像において識別対象物に対応する画素と背景物に対応する画素とでは画素値が異なることが通常である。つまり、被写体の距離画像において識別対象物の輪郭線はエッジとなっていることが通常である。このため、被写体の距離画像からエッジを検出することで、距離画像に写っている識別対象物の輪郭線を検出することができ、この輪郭線で囲まれた領域が注目領域となる。なお、識別処理SB130に先立って算出処理SB140が実行される態様は、算出処理SB140にて算出された指標値が所定の閾値以上であるサブ輝度画像についてのみ識別処理SB130を実行されるように変更されてもよい。
【0072】
(2)識別装置30A、識別装置30B、及び表示制御装置40は、パーソナルコンピューターであったが、スマートフォン又はタブレット端末であってもよい。また、上記第1及び第3実施形態における統計量は分散であったが、標準偏差であってもよく、平均値、最大値、最小値、中央値、最頻出値又は四分位値であってもよい。また、算出対象画像を構成する各画素の画素値の統計量ではなく、各画素の画素値を畳み込みカーネルを用いて畳み込んだ演算値が、指標値とされてもよい。また、識別モジュール312は、畳み込みニューラルネットワークには限定されず、画像特徴量を用いた機械学習等、大量のデータから識別パラメーターを構成する非ルールベースの手法で構成された識別器であればよい。また、第3実施形態における表示装置50はプロジェクターであったが、被写体に含まれる識別対象物の種類に応じた画像を被写体の画像に重ねて表示する液晶ディスプレイであってもよい。表示装置50が液晶ディスプレイの場合、被写体の輝度画像に対して、輝度画像内に写っている識別対象物の位置及び種類に応じたコンテンツを重畳するARのような使い方が可能になる。
【0073】
(3)上記各実施形態では、距離画像と輝度画像とを各々別個のカメラで撮像した。しかし、第1撮像装置10と第2撮像装置20とに代えて、距離画像の撮像機能と輝度画像の撮像機能とを兼ね備えた1台のカメラを用いてもよい。距離画像の撮像機能と輝度画像の撮像機能とを兼ね備えた1台のカメラを用いる場合、第2位置は第1位置と同じ位置になる。
【0074】
(4)第1実施形態における第1取得部321、第2取得部322、識別部323A、算出部324A、及び判定部325Aはソフトウェアモジュールであったが、第1取得部321、第2取得部322、識別部323A、算出部324A、及び判定部325Aの一部又は全部がハードウェアであってもよい。このハードウェアの一例としては、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。第1取得部321、第2取得部322、識別部323A、算出部324A、及び判定部325Aの一部又は全部がハードウェアであっても、第1実施形態と同一の効果が奏される。第2実施形態における識別部323B、算出部324B、及び判定部325Bについても同様に一部又は全部がハードウェアであってもよい。第3実施形態における算出部324C、検出部326及び表示制御部327についても同様に一部又は全部がハードウェアであってもよい。
【0075】
(5)第1実施形態及び第3実施形態における判定部325A及び判定処理SA150と、第2実施形態における判定部325B及び判定処理SB150とは必須ではなく、省略可能である。算出部324Aによりサブ輝度画像毎に算出された指標値又は算出部324Bにより注目領域毎に算出された指標値を表示装置に表示させることによっても、識別結果の信頼度をユーザーに把握させることができるからである。同様に第3実施形態における検出部326及び検出処理SC125も省略可能である。移動可能なマス目の表示を所望する駒を表示制御装置40に指示する方法は、当該駒へのタッチには限定されず、当該駒が配置されているマス目の行数及び列数を示す数値を入力装置へ入力する態様であってもよいからである。
【0076】
(6)上述した第1実施形態では、プログラム311Aが記憶装置310に記憶済であった。しかし、プログラム311Aを単体で製造又は配布してもよい。プログラム311Aの具体的な配布方法としては、フラッシュROM(Read Only Memory)等のコンピューター読み取り可能な記録媒体に上記プログラム311Aを書き込んで配布する態様、又はインターネット等の電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様が考えられる。第2実施形態におけるプログラム311B、及び第3実施形態におけるプログラム311Cについても同様である。
【0077】
5.各実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様
本開示は、上述した各実施形態及び変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実現することができる。例えば、本開示は、以下の態様によっても実現可能である。以下に記載した各態様中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、或いは本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0078】
以上に説明した課題を解決するため、本開示の識別方法の一態様は、第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、識別処理SA130、及び算出処理SA140を含む。第1取得処理SA110では、机等の背景物B1の上に識別対象物である識別対象物A1、A2及びC1が配置された被写体、即ち識別対象物A1、A2及びC1を含む被写体を、第1位置に設置される第1撮像装置10により撮像して得られる第1画像が取得される。第1撮像装置10は距離カメラであり、第1画像は距離画像である。第1画像における各画素の画素値は、第1位置から被写体までの距離を表す。第2取得処理SA120では、第1位置又は第1位置とは異なる第2位置に設置される第2撮像装置20により被写体を撮像して得られる第2画像が取得される。第2画像は輝度画像である。第2画像における各画素の画素値は被写体からの反射光の輝度を少なくとも表す。識別処理SA130では、第2画像に基づいて識別対象物の種類が識別される。算出処理SA140では、第2画像に基づく識別結果の信頼度を示す指標値が第1画像に基づいて算出される。本態様によれば、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握できる。なお、識別処理SA130に代えて識別処理SB130を設けてもよく、算出処理SA140に代えて算出処理SB140を設けてもよい。本態様によっても、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握できる。
【0079】
より好ましい態様の識別方法では、識別処理SA130に後続して算出処理SA140が実行されてもよい。つまり、識対象物の種類が第2画像に基づいて識別され、その後、第1画像に基づいて指標値が算出されてもよい。更に好ましい態様の識別方法は、算出された指標値が閾値未満であるか否かを判定し、閾値未満である場合には、第2画像に基づく識別結果は無効にする判定処理SA150を含んでもよい。
【0080】
更に好ましい態様における識別方法では、第2画像において識別対象物の画像が占める注目領域が第1画像又は第2画像に基づいて識別されてもよい。この態様においては、識別対象物の種類が注目領域の画像に基づいて識別され、第1画像において注目領域に対応する領域の画像に基づいて指標値が算出される。
【0081】
別の好ましい態様における識別方法では、第1画像は第1サブ画像と第2サブ画像とに分割される。第2画像も第1サブ画像に対応する第3サブ画像と前記第2サブ画像に対応する第4サブ画像とに分割される。本態様では、第3サブ画像と第4サブ画像の各々について識別対象物の識別が試みられ、第1サブ画像と第2サブ画像の各々に基づいて指標値が算出される。そして、第1サブ画像に基づいて算出された指標値が閾値未満である場合には第3サブ画像に基づく識別結果は無効とされる。同様に、第2サブ画像に基づいて算出された指標値が閾値未満である場合には第4サブ画像に基づく識別結果は無効とされる。
【0082】
好ましい態様における識別方法では、第1画像は第1サブ画像と第2サブ画像とに分割され、第2画像も第1サブ画像に対応する第3サブ画像と第2サブ画像に対応する第4サブ画像とに分割される。本態様では、まず、第1サブ画像と第2サブ画像の各々に基づいて指標値が算出される。そして、第1サブ画像に基づいて算出された指標値が閾値以上である場合には第3サブ画像に基づいて識別対象物の種類が識別される。第2サブ画像に基づいて算出された指標値が閾値以上である場合には第4サブ画像に基づいて識別対象物の種類が識別される。
【0083】
更に好ましい態様の識別方法では、第1サブ画像に基づく指標値は、第1サブ画像を構成する各画素の画素値の統計量である。同様に、第2サブ画像に基づく指標値は、第2サブ画像を構成する各画素の画素値の統計量である。
【0084】
識別処理SA130又は識別処理SB130では、物体の画像と物体の種類を示すラベルとを対応付けた学習データを予め学習済であり、且つ入力された画像に写っている物体の種類を示すラベルを出力する識別器を用いて、識別対象物の種類が識別されてもよい。
【0085】
また、以上に説明した課題を解決するため、本開示の画像表示方法の一態様は、前述の第1取得処理SA110と、第2取得処理SA120と、識別処理SA130と、算出処理SC140と、判定処理SA150と、表示制御処理SC160を含む。表示制御処理SC160では、識別対象物の種類の識別結果に応じた第3画像が被写体に重ねて表示される。
【0086】
また、以上に説明した課題を解決するため、本開示の識別システムの一態様は、第1位置に設置される第1撮像装置10と、第1位置又は第1位置とは異なる第2位置に設置される第2撮像装置20と、処理装置320と、を備える。処理装置320は、前述の第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、識別処理SA130及び算出処理SA140を実行する。本態様によっても、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握できる。なお、識別処理SA130を識別処理SB130に置き換え、且つ算出処理SA140を算出処理SB140に置き換えても同じ効果が得られる。
【0087】
また、以上に説明した課題を解決するため、本開示の画像表示システムの一態様は、第1位置に設置される第1撮像装置10と、第1位置又は第1位置とは異なる第2位置に設置される第2撮像装置20と、表示装置の一例である表示装置50と、処理装置320と、を備える。処理装置320は、前述の第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、識別処理SA130、算出処理SC140、及び表示制御処理SC160を実行する。本態様によれば、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握でき、識別対象物の識別結果に応じた第3画像を被写体に重ねて表示することができる。
【0088】
また、以上に説明した課題を解決するため、本開示のプログラムの一態様は、コンピューターの一例である処理装置320に、前述の第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、識別処理SA130及び算出処理SA140を実行させる。本態様によっても、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握できる。なお、識別処理SA130を識別処理SB130に置き換え、且つ算出処理SA140を算出処理SB140に置き換えても同じ効果が得られる。また、本開示のプログラムの別の態様は、コンピューターの一例である処理装置320に、前述の第1取得処理SA110、第2取得処理SA120、識別処理SA130、算出処理SC140、及び表示制御処理SC160を実行させる。本態様によれば、輝度画像に基づく識別対象物の識別結果の信頼度を、輝度画像とは別個の距離画像から把握でき、識別対象物の識別結果に応じた第3画像を被写体に重ねて表示することができる。
【符号の説明】
【0089】
1A,1B…識別システム、2…画像表示システム、10…第1撮像装置、20…第2撮像装置、30A、30B…識別装置、40…表示制御装置、50…表示装置、300…通信装置、310…記憶装置、320…処理装置、321…第1取得部、322…第2取得部、323A、323B…識別部、324A、324B、324C…算出部、325A、325B…判定部、326…検出部、327…表示制御部、311A、311B、311C…プログラム、312…識別モジュール、313…テーブル、A1、A2、C1…識別対象物、B1…背景物。