(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241016BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20241016BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241016BHJP
【FI】
B41J2/14 305
H10N30/87
H10N30/20
(21)【出願番号】P 2020180873
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】相羽 貴司
(72)【発明者】
【氏名】蔵 圭司
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064156(JP,A)
【文献】特開2006-049722(JP,A)
【文献】特開2012-256791(JP,A)
【文献】特開2015-037856(JP,A)
【文献】特開2011-044528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
H10N 30/00-39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧電層と、前記第1圧電層に対して前記第1圧電層の厚み方向に沿った第1方向に積層された第2圧電層と、前記第1圧電層及び前記第2圧電層に対して前記第1方向に積層され、前記第1圧電層との間に前記第2圧電層を挟む第3圧電層と、前記第1方向において前記第1圧電層の前記第2圧電層と反対側の面に配置された第1電極層と、前記第1方向において前記第1圧電層と前記第2圧電層との間に配置された第2電極層と、前記第1方向において前記第2圧電層と前記第3圧電層との間に配置された第3電極層と、を備えた圧電アクチュエータであって、
前記第1電極層は、それぞれ第1電位及び前記第1電位と異なる第2電位のいずれかが選択的に付与される複数の駆動電極
と、前記複数の駆動電極とは別に、前記圧電アクチュエータにおける前記第1方向と直交する第2方向の端部に配置された第1端部電極と、を含み
、
前記第3電極層は、
それぞれ前記第2電位に保持される
複数の個別部であって、それぞれ前記複数の駆動電極の少なくともいずれかと前記第1方向に重なる複数の個別部と、前記複数の個別部とは別に、前記圧電アクチュエータにおける前記第2方向の端部に配置された第3端部電極と、を含み、
前記第2電極層は、
前記第1電位に保持される第1電位電極と、前記圧電アクチュエータにおける前
記第2方向の端部に配置された第2端部電極であって、前
記第1端部電極及び前
記第3端部電極と前記第1方向に重なる第2端部電極
と、を含み、
前記第2端部電極は、前記第2方向に互いに分離した複数の電極部で構成されることを特徴とする、圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記第3端部電極の前記第2方向の長さは、前記第2端部電極の前記第2方向の長さよりも長いことを特徴とする、請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2方向に互いに隣接する前記複数の電極部の間隙は、前記第1端部電極と前記第1方向に重なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記間隙は、前記第2端部電極の前記第2方向の中央に位置することを特徴とする、請求項3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記間隙は、前記第1端部電極の前記第2方向の中央と前記第1方向に重なることを特徴とする、請求項3又は4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記複数の電極部のうち、前記第2方向において前記圧電アクチュエータの前記端部の縁と前記第1端部電極の前記中央との間に配置された電極部は、
厚肉部と、
前記厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい薄肉部であって、前記第2方向において前記厚肉部と前記第1端部電極の前記中央との間に位置する薄肉部と、を有することを特徴とする、請求項5に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記複数の電極部は、第1電極部と、前記第2方向において前記圧電アクチュエータの前記端部の縁と前記第1電極部との間に配置された第2電極部とを含み、
前記第1電極部は、前記第1圧電層に形成された貫通孔を介して前記第1端部電極と電気的に接続され、かつ、前記第2圧電層に形成された貫通孔を介して前記第3端部電極と電気的に接続され、
前記第2電極部は、前記第1端部電極及び前記第3端部電極のいずれとも電気的に接続されないことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記第2電極層は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に互いに離隔した複数の前記第2端部電極を含み、
前記第3方向に互いに隣接する前記複数の第2端部電極の間隔は、前記第2方向に互いに隣接する前記複数の電極部の間隔よりも大きいことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧電層及び複数の電極層で構成される圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上部圧電層(第1圧電層)の表面に個別電極(駆動電極)、中間圧電層(第2圧電層)の表面に中間共通電極(第1電位電極)、下部圧電層(第3圧電層)の表面に下部共通電極(第2電位電極)がそれぞれ配置された圧電アクチュエータが示されている。当該圧電アクチュエータの走査方向の端部では、上部圧電層の表面に配置された5つの端子(第1端部電極)と、中間圧電層の表面に配置された5つの端子(第2端部電極)と、下部共通電極の延在部(第3端部電極)とが、積層方向(第1方向)に互いに重なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-171681号公報(
図5、
図7、
図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧電アクチュエータは、第1~第3圧電層の積層方向の中央面が中間圧電層(第2圧電層)にあり、上記圧電アクチュエータの端部では、中央面に対して上側に2つの電極(第1端部電極及び第2端部電極)、下側に1つの電極(第3端部電極)が存在する。これら電極は、それぞれ、電極焼成時の熱収縮により、圧電層を収縮させる。ここで、特許文献1の圧電アクチュエータの上記端部は、中央面に対して上側の方が下側よりも電極が多い分、上側の収縮量が多くなり、上側に反ってしまう。端部に反り上がりが生じると、流路部材等への接着時に、反り上がった部分に局所的に力が加わり、圧電アクチュエータが破損し得る。
【0005】
本発明の目的は、圧電アクチュエータの端部の反り上がりを抑制できる圧電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧電アクチュエータは、第1圧電層と、前記第1圧電層に対して前記第1圧電層の厚み方向に沿った第1方向に積層された第2圧電層と、前記第1圧電層及び前記第2圧電層に対して前記第1方向に積層され、前記第1圧電層との間に前記第2圧電層を挟む第3圧電層と、前記第1方向において前記第1圧電層の前記第2圧電層と反対側の面に配置された第1電極層と、前記第1方向において前記第1圧電層と前記第2圧電層との間に配置された第2電極層と、前記第1方向において前記第2圧電層と前記第3圧電層との間に配置された第3電極層と、を備えた圧電アクチュエータであって、前記第1電極層は、それぞれ第1電位及び前記第1電位と異なる第2電位のいずれかが選択的に付与される複数の駆動電極を含み、前記第2電極層は、前記第1電位に保持される第1電位電極を含み、前記第3電極層は、前記第2電位に保持される第2電位電極を含み、前記第2電極層は、さらに、前記圧電アクチュエータにおける前記第1方向と直交する第2方向の端部に配置された第2端部電極であって、前記第1電極層の第1端部電極及び前記第3電極層の第3端部電極と前記第1方向に重なる第2端部電極を含み、前記第2端部電極は、前記第2方向に互いに分離した複数の電極部で構成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータを含むプリンタ1の全体構成図である。
【
図6】
図5の断面におけるアクチュエータ部90の動作を示す図である。
【
図7】
図2の圧電アクチュエータ22を構成する3つの圧電層41~43のうち、最も上方の圧電層41の上面を示す平面図である。
【
図8】
図2の圧電アクチュエータ22を構成する3つの圧電層41~43のうち、中間の圧電層42の上面を示す平面図である。
【
図9】
図2の圧電アクチュエータ22を構成する3つの圧電層41~43のうち、最も下方の圧電層43の上面を示す平面図である。
【
図10】(a)は、
図8のXA-XA線に沿った断面図である。(b)は、
図8のXB-XB線に沿った断面図である。
【
図11】圧電層42の上面に端部電極64aをスクリーン印刷により形成する工程を示す
図10(a)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、Z方向は鉛直方向であり、X方向及びY方向は水平方向である。X方向及びY方向は共にZ方向と直交する。X方向はY方向と直交する。Z方向が本発明の「第1方向」に該当し、Y方向が本発明の「第2方向」に該当し、X方向が本発明の「第3方向」に該当する。
【0009】
<プリンタの全体構成>
先ず、
図1を参照し、本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータを含むプリンタ1の全体構成について説明する。
【0010】
プリンタ1は、ヘッド3と、キャリッジ2と、2つの搬送ローラ対4とを備えている。
【0011】
キャリッジ2は、Y方向に延びる2本のガイドレール5に支持され、ガイドレール5に沿ってY方向に移動可能である。
【0012】
ヘッド3は、シリアル式であって、キャリッジ2に搭載され、キャリッジ2と共にY方向に移動可能である。ヘッド3の下面(Z方向において下方を向く面)には、複数のノズル15が形成されている。
【0013】
2つの搬送ローラ対4は、X方向にキャリッジ2を挟んで配置されている。搬送ローラ対4が用紙Pを挟持した状態で回転することで、用紙PがX方向に沿った搬送方向に搬送される。
【0014】
プリンタ1の制御部(図示略)は、キャリッジ2と共にヘッド3をY方向に移動させながらノズル15からインクを吐出させる吐出動作と、搬送ローラ対4によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙Pに画像が記録される。
【0015】
<ヘッドの構成>
ヘッド3は、
図2に示すように、流路部材21と、本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータ22とを有する。流路部材21及び圧電アクチュエータ22は、共に、Z方向から見て、X方向の長さがY方向の長さよりも長い、矩形状である。
【0016】
<流路部材の構成>
流路部材21は、
図4に示すように、Z方向に積層された金属製の4枚のプレート31~34で構成されている。
【0017】
プレート31には、複数の圧力室10が形成されている。プレート32には、圧力室10毎に、連通路12,13が形成されている。連通路12,13は、それぞれ、対応する圧力室10のY方向の一端及び他端とZ方向に重なっている。プレート33には、連通路13毎に、連通路14が形成されている。連通路14は、対応する連通路13とZ方向に重なっている。プレート33には、さらに、12本のマニホールド流路11が形成されている。マニホールド流路11は、X方向に配列された圧力室10の列10R(
図2参照)毎に設けられている。各マニホールド流路11は、X方向に延び、対応する列10Rに属する複数の圧力室10と連通路12を介して連通している。プレート34には、複数のノズル15が形成されている。各ノズル15は、連通路14とZ方向に重なっている。
【0018】
プレート31の上面において、圧電アクチュエータ22が配置されない領域に、4つのインク供給口8が形成されている(
図2参照)。各インク供給口8は、インクカートリッジ(図示略)と連通し、かつ、3本のマニホールド流路11と連通している。インクカートリッジから各インク供給口8に供給されたインクは、3本のマニホールド流路11に供給される。各マニホールド流路11から、各列10Rに属する複数の圧力室10に、連通路12を介してインクが供給される。そして後述のように圧電アクチュエータ22が駆動することで、圧力室10内のインクに圧力が付与され、連通路13,14を通ってノズル15からインクが吐出される。
【0019】
<圧電アクチュエータの構成>
圧電アクチュエータ22は、
図4に示すように、流路部材21の上面に配置されている。圧電アクチュエータ22は、3つの圧電層41~43と、複数の駆動電極51と、高電位電極52と、低電位電極53とを有する。
【0020】
3つの圧電層41~43は、それぞれZ方向を厚み方向として、Z方向に積層されている。圧電層42は、圧電層41に対してZ方向に積層されている。圧電層43は、圧電層41及び圧電層42に対してZ方向に積層され、圧電層41との間に圧電層42を挟む。圧電層41が本発明の「第1圧電層」に該当し、圧電層42が本発明の「第2圧電層」に該当し、圧電層43が本発明の「第3圧電層」に該当する。
【0021】
各圧電層41~43の厚みは互いに同じ(略10~15μm)であり、圧電層41~43全体の厚みは略30~45μmである。3つの圧電層41~43のZ方向の中央面Xは、圧電層42内にある(
図10(a),(b)参照)。
【0022】
各圧電層41~43は、チタン酸ジルコン酸鉛等を主成分とする圧電材料からなる。
【0023】
圧電層43は、プレート31の上面に配置され、プレート31に形成された全ての圧力室10を覆っている。圧電アクチュエータ22と流路部材21とは、圧電層43とプレート31との間に配置された接着剤(図示略)により、互いに接着されている。
【0024】
複数の駆動電極51は、
図3に示すように、圧電層41の上面に、圧力室10のそれぞれに対応して配置されている。各駆動電極51は、主部51aと、突出部51bとを有する。主部51aは、対応する圧力室10の略全域とZ方向に重なっている。突出部51bは、主部51aからY方向に突出し、対応する圧力室10とZ方向に重なっていない。突出部51bには、COF(Chip On Film)(図示略)と電気的に接続される接点が設けられている。COFに実装されたドライバIC(図示略)は、制御部の制御により、COFの配線を介して各駆動電極51に対して個別に、高電位(VDD電位)及び低電位(GND電位)のいずれかを選択的に付与する。
【0025】
複数の駆動電極51は、
図7に示すように、圧電層41の上面の中央領域(圧電層41におけるX方向の両端及びY方向の両端を除く領域)において、X方向に配列されており、圧力室10の列10R(
図2参照)のそれぞれに対応する、複数の駆動電極列51Rを形成している。複数の駆動電極列51Rは、Y方向に並んでいる。
【0026】
各駆動電極列51Rに対し、X方向の一方(
図7の上方)及び他方(
図7の下方)のそれぞれに、ダミー電極59が設けられている。ダミー電極59は、対応する駆動電極列51Rに属する駆動電極51と、Z方向と直交する平面におけるサイズ及び形状が同じであり、当該駆動電極51と共にX方向に等間隔で並んでいる。ダミー電極59は、COFと電気的に接続されず、電位が付与されない。ダミー電極59を設けることで、各駆動電極列51RにおいてX方向の中央にある駆動電極51とX方向の端部にある駆動電極51とにおける電極形成による収縮量の差を抑制でき、ひいては各駆動電極列51Rに対応する複数のノズル15からの吐出量のばらつきを抑制できる。
【0027】
圧電層41の上面には、駆動電極51及びダミー電極59に加え、接続電極部54,55が設けられている。
【0028】
接続電極部54,55は、それぞれ、X方向に互いに離隔して配置された9つの端部電極54a,55aで構成されている。端部電極54a,55aは、Z方向と直交する平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じであり、圧電層41のY方向の一端(
図7の左端)及び他端(
図7の右端)のそれぞれにおいて、X方向に等間隔で並んでいる。各端部電極54a,55aは、COF23と電気的に接続されている。ドライバICは、制御部の制御により、COF23の配線を介して、各端部電極54aに高電位(VDD電位)を付与し、かつ、各端部電極55aに低電位(GND電位)を付与する。
【0029】
圧電層41のY方向の一端(
図7の左端)において、接続電極部54は、圧電層41におけるX方向の一方側(
図7の上側)に配置され、接続電極部55は、圧電層41におけるX方向の他方側(
図7の下側)に配置されている。
【0030】
圧電層41のY方向の他端(
図7の右端)において、接続電極部54は、圧電層41におけるX方向の他方側(
図7の下側)に配置され、接続電極部55は、圧電層41におけるX方向の一方側(
図7の上側)に配置されている。
【0031】
高電位電極52は、
図4に示すように、圧電層42の上面に配置され、Z方向において圧電層41と圧電層42との間に配置されている。
【0032】
高電位電極52は、
図8に示すように、Y方向に延びる2つの幹部521と、各幹部521から分岐してX方向に延びる複数の枝部523と、X方向に配列されかつ枝部523によって連結された複数の個別部52aと、それぞれ接続電極部54の4つの端部電極54a(
図7参照)とZ方向に重なる2つの重複部524とを含む。各個別部52aは、各圧力室10に対応するものであり、各圧力室10のX方向の中央部分とZ方向に重なっている(
図5参照)。各幹部521は、複数の枝部523を連結している。
【0033】
2つの幹部521のうち、一方は、圧電層42のX方向の一端(
図8の上端)かつY方向の一方側(
図8の左側)に配置され、他方は、圧電層42のX方向の他端(
図8の下端)かつY方向の他方側(
図8の右側)に配置されている。一方の幹部521からは、3つの枝部523が、圧電層42のX方向の一端(
図8の上端)から他端(
図8の下端)に向かって、X方向に延びている。他方の幹部521からは、4つの枝部523が、圧電層41のX方向の他端(
図8の下端)から一端(
図8の上端)に向かって、X方向に延びている。つまり、2つの幹部521において、枝部523が延びる方向は互いに逆である。
【0034】
2つの重複部524のうち、一方は、圧電層42のX方向の一方側(
図8の上側)かつY方向の一端(
図8の左端)に配置され、他方は、圧電層42のX方向の他方側(
図8の下側)かつY方向の他端(
図8の右端)に配置されている。一方の重複部524は、一方の幹部521に接続し、かつ、一方の幹部521から分岐した複数の枝部523のうち圧電層42においてY方向の最も外側(
図8の左側)に位置する枝部523に接続している。他方の重複部524は、他方の幹部521に接続し、かつ、他方の幹部521から分岐した複数の枝部523のうち圧電層42においてY方向の最も外側(
図8の右側)に位置する枝部523に接続している。
【0035】
各重複部524は、圧電層41に形成された貫通孔41x(
図7参照)を介して、接続電極部54の4つの端部電極54aと電気的に接続されている。
【0036】
圧電層42の上面には、高電位電極52に加え、2つの接続電極部56と、2つの浮き電極部64と、2つの浮き電極部65とが設けられている。
【0037】
各接続電極部56は、X方向に互いに離隔して配置された4つの端部電極56aで構成されている。各浮き電極部64は、X方向に互いに離隔して配置された10個の端部電極64aで構成されている。端部電極56a,64aは、Z方向と直交する平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じであり、圧電層42のY方向の一端(
図8の左端)及び他端(
図8の右端)のそれぞれにおいて、X方向に等間隔D1で並んでいる。各端部電極56aは、接続電極部55の各端部電極55aとZ方向に重なり、圧電層41に形成された貫通孔41y(
図7参照)を介して各端部電極55aと電気的に接続されている。一方、浮き電極部64,65は、いずれの電極とも電気的に接続されず、電位が付与されない。
【0038】
圧電層42のY方向の一端(
図8の左端)において、接続電極部56は、圧電層42におけるX方向の他方側(
図8の下側)に配置され、浮き電極部64は、X方向において重複部524と接続電極部56との間に配置されている。
【0039】
圧電層42のY方向の他端(
図8の右端)において、接続電極部56は、圧電層42におけるX方向の一方側(
図8の上側)に配置され、浮き電極部64は、X方向において接続電極部56と重複部524との間に配置されている。
【0040】
各浮き電極部64を構成する10個の端部電極64aのうち、重複部524に近い5個の端部電極64aは、接続電極部54の5個の端部電極54a(
図7参照)とZ方向に重なり、残り5個の端部電極64aは、接続電極部55の5個の端部電極55a(
図7参照)とZ方向に重なっている。
【0041】
接続電極部56の端部電極56a、及び、浮き電極部64の端部電極64aの構成については、後に詳述する。
【0042】
各浮き電極部65は、Y方向に互いに離隔して配置された複数の端部電極65aで構成されている。端部電極65aは、Z方向と直交する平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じであり、圧電層42のX方向の一端(
図8の上端)及び他端(
図8の下端)のそれぞれにおいて、幹部521とY方向に並び、Y方向に等間隔で配置されている。
【0043】
低電位電極53は、
図4に示すように、圧電層43の上面に配置され、Z方向において圧電層42と圧電層43との間に配置されている。
【0044】
低電位電極53は、
図9に示すように、Y方向に延びる2つの幹部531と、各幹部531から分岐してX方向に延びる複数の枝部533と、X方向に配列されかつ枝部533によって連結された複数の個別部53aと、それぞれ接続電極部55の4つの端部電極55a(
図7参照)とZ方向に重なる2つの重複部534とを含む。X方向に配列された複数の個別部53aのうち、X方向の一端及び他端に位置する個別部53aを除き、各個別部53aは、X方向に互いに隣接する2つの圧力室10に跨り、当該2つの圧力室10とZ方向に重なる部分を有する(
図5参照)。上記X方向の一端及び他端に位置する個別部53aは、1つの圧力室10とZ方向に重なる部分を有する。各幹部531は、複数の枝部533を連結している。
【0045】
2つの幹部531のうち、一方は、圧電層43のX方向の一端(
図9の上端)かつY方向の他方側(
図9の右側)に配置され、他方は、圧電層43のX方向の他端(
図9の下端)かつY方向の一方側(
図9の左側)に配置されている。一方の幹部531からは、4つの枝部533が、圧電層43のX方向の一端(
図9の上端)から他端(
図9の下端)に向かって、X方向に延びている。他方の幹部531からは、3つの枝部533が、圧電層43のX方向の他端(
図9の下端)から一端(
図9の上端)に向かって、X方向に延びている。つまり、2つの幹部531において、枝部533が延びる方向は互いに逆である。
【0046】
なお、一方の幹部531から分岐した複数の枝部533のうち、最もY方向の一方側(
図9の左側)に位置する枝部533は、他方の幹部531に接続している。換言すると、一方の幹部531から分岐した4つの枝部533のうち、最もY方向の一方側(
図9の左側)に位置する枝部533と、他方の幹部531から分岐した3つの枝部533のうち、最もY方向の他方側(
図9の右側)に位置する枝部533とは、同じである。当該枝部533は、X方向の一端が一方の幹部531に接続し、X方向の他端が他方の幹部531に接続している。
【0047】
2つの重複部534のうち、一方は、圧電層43のX方向の一方側(
図9の上側)かつY方向の他端(
図9の右端)に配置され、他方は、圧電層43のX方向の他方側(
図9の下側)かつY方向の一端(
図9の左端)に配置されている。一方の重複部534は、一方の幹部531に接続している。他方の重複部534は、他方の幹部531に接続している。
【0048】
各重複部534は、圧電層42に形成された貫通孔42y(
図8参照)を介して、接続電極部56の4つの端部電極56aと電気的に接続されている。各端部電極56aは、上述のように、圧電層41に形成された貫通孔41y(
図7参照)を介して、接続電極部55の各端部電極55aと電気的に接続されている。したがって、各重複部534は、接続電極部56(
図8参照)を介して、接続電極部55の4つの端部電極55a(
図7参照)と電気的に接続されている。
【0049】
圧電層43の上面には、低電位電極53に加え、2つのL字電極57と、2つの浮き電極部66とが設けられている。
【0050】
2つのL字電極57のうち、一方は、圧電層43のX方向の一端(
図9の上端)かつY方向の一端(
図9の左端)の角部に配置され、他方は、圧電層43のX方向の他端(
図9の下端)かつY方向の他端(
図9の右端)の角部に配置されている。2つのL字電極57は、それぞれ、Y方向に延びる部分57aと、X方向に延びる部分57bとを有する。
【0051】
2つのL字電極57の各部分57bは、高電位電極52の各重複部524(
図8参照)とZ方向に重なり、圧電層42に形成された貫通孔(図示略)を介して各重複部524と電気的に接続されている。各重複部524は、上述のように、圧電層41に形成された貫通孔41x(
図7参照)を介して、接続電極部54の4つの端部電極54aと電気的に接続されている。したがって、2つのL字電極57は、それぞれ、重複部524を介して、接続電極部54の4つの端部電極54a(
図7参照)と電気的に接続されている。
【0052】
各浮き電極部66は、X方向に互いに離隔して配置された10個の端部電極66aで構成されている。端部電極66aは、Z方向と直交する平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じであり、圧電層43のY方向の一端(
図9の左端)及び他端(
図9の右端)のそれぞれにおいて、L字電極57の部分57bと重複部534との間で、X方向に等間隔で並んでいる。
【0053】
各浮き電極部66を構成する10個の端部電極66aのうち、5個の端部電極66aは、接続電極部54の端部電極54a(
図7参照)及び浮き電極部64の端部電極64a(
図8参照)とZ方向に重なり、5個の端部電極66bは、接続電極部55の端部電極55a(
図7参照)及び浮き電極部64の端部電極64a(
図8参照)とZ方向に重なっている。 浮き電極部66は、いずれの電極とも電気的に接続されず、電位が付与されない。
【0054】
ここで、各端部電極66aのY方向の長さL2(
図9参照)は、重複部534のY方向の長さと同じであり、各端部電極56a,64aのY方向の長さL1(
図8参照)よりも長い。例えば、L2=1.4~3.0mm、L1=0.5~1.3mmである。
【0055】
<アクチュエータ部>
図5に示すように、圧電層41のうち、Z方向において駆動電極51と高電位電極52の個別部52aとに挟まれた部分を、第1活性部91という。圧電層42,43のうち、Z方向において駆動電極51と低電位電極53の個別部53aとに挟まれた部分を、第2活性部92という。第1活性部91は主に上向きに分極され、第2活性部92は主に下向きに分極されている。圧電アクチュエータ22は、圧力室10毎に、1つの第1活性部91と、X方向に第1活性部91を挟む2つの第2活性部92とから構成される、アクチュエータ部90を有する。
【0056】
ここで、
図6を参照し、あるノズル15からインクを吐出させる際の、当該ノズル15に対応するアクチュエータ部90の動作について説明する。
【0057】
プリンタ1が記録動作を開始する前は、
図6(a)に示すように、各駆動電極51に低電位(GND電位)が付与されている。このとき、駆動電極51と高電位電極52との電位差によって、第1活性部91にその分極方向に等しい上向きの電界が生じ、第1活性部91が面方向(X方向及びY方向に沿った方向)に収縮している。これにより、圧電層41~43からなる積層体における圧力室10とZ方向に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓んでいる。このとき圧力室10は、上記積層体がフラットな場合と比べ、容積が小さくなっている。
【0058】
プリンタ1が記録動作を開始し、あるノズル15からインクが吐出させる際には、先ず、
図6(b)に示すように、当該ノズル15に対応する駆動電極51の電位が低電位(GND電位)から高電位(VDD電位)に切り替えられる。このとき、駆動電極51と高電位電極52との電位差がなくなることで、第1活性部91の収縮が解消される。一方、駆動電極51と低電位電極53との電位差が生じることで、第2活性部92にその分極方向に等しい下向きの電界が生じ、第2活性部92が面方向に収縮する。ただし、第2活性部92は、クロストーク(ある圧力室10におけるアクチュエータ部90の変形に伴う圧力変動が、当該圧力室10にX方向に隣接する別の圧力室10に伝わる現象)を抑制する機能を有するものであり、アクチュエータ部90の変形にほとんど寄与しない。つまり、このとき上記積層体は、圧力室10とZ方向に重なる部分が圧力室10から離れる方向に(上向きに)凸となるように撓まず、フラットな状態となる。これにより、圧力室10の容積は、
図6(a)に比べて大きくなる。
【0059】
その後、
図6(a)に示すように、当該ノズル15に対応する駆動電極51の電位が高電位(VDD電位)から低電位(GND電位)に切り替えられる。このとき、駆動電極51と低電位電極53との電位差がなくなることで、第2活性部92の収縮が解消される。一方、駆動電極51と高電位電極52との電位差が生じることで、第1活性部91にその分極方向に等しい上向きの電界が生じ、第1活性部91が面方向に収縮する。これにより、上記積層体における圧力室10とZ方向に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓む。このとき、圧力室10の容積が大きく減少することで、圧力室10内のインクに大きな圧力が付与され、ノズル15からインクが吐出される。
【0060】
<本発明の説明>
圧電層41の上面(Z方向において圧電層41の圧電層42と反対側の面)に配置された、駆動電極51、ダミー電極59、及び、接続電極部54,55の端部電極54a,55aが、第1電極層71を構成する(
図7参照)。圧電層42の上面(Z方向において圧電層41と圧電層42との間)に配置された、高電位電極52、接続電極部56の端部電極56a、及び、浮き電極部64,65の端部電極64a,65aが、第2電極層72を構成する(
図8参照)。圧電層43の上面(Z方向において圧電層42と圧電層43との間)に配置された、低電位電極53、L字電極57、及び、浮き電極部66の端部電極66aが、第3電極層73を構成する(
図9参照)。第1電極層71、第2電極層72及び第3電極層73を構成する各電極のZ方向の厚みは、0.5~1.5μmである。
【0061】
高電位が本発明の「第1電位」に該当し、高電位電極52が本発明の「第1電位電極」に該当する。低電位が本発明の「第2電位」に該当し、低電位電極53が本発明の「第2電位電極」に該当する。
【0062】
浮き電極部64を構成する10個の端部電極64a(
図8参照)は、本発明の「第2端部電極」に該当する。この場合、10個の端部電極64aのそれぞれとZ方向に重なる接続電極部54の5個の端部電極54a及び接続電極部55の5個の端部電極55a(
図7参照)が本発明の「第1端部電極」に該当し、10個の端部電極64aのそれぞれとZ方向に重なる10個の端部電極66a(
図9参照)が本発明の「第3端部電極」に該当する。
【0063】
接続電極部56を構成する4つの端部電極56a(
図8参照)も、本発明の「第2端部電極」に該当する。この場合、4つの端部電極56aのそれぞれとZ方向に重なる接続電極部55の4つの端部電極55a(
図7参照)が本発明の「第1端部電極」に該当し、4つの端部電極56aとZ方向に重なる重複部534(
図9参照)が本発明の「第3端部電極」に該当する。
【0064】
10個の端部電極64aは、
図8に示すように、それぞれ、Y方向に互いに分離した2つの電極部64axで構成されている。Y方向に互いに隣接する2つの電極部64axの間隔D2は、X方向に互いに隣接する端部電極64aの間隔D1よりも小さい。例えば、D2=0.05~0.14mm、D1=0.15~0.25mmである。
【0065】
4つの端部電極56aも、同様に、それぞれ、Y方向に互いに分離した2つの電極部56axで構成されている。Y方向に互いに隣接する2つの電極部56axの間隔(上記間隔D2と同じ。)は、X方向に互いに隣接する端部電極56aの間隔(上記間隔D1と同じ。)よりも小さい。
【0066】
各電極部64ax,56axのZ方向と直交する平面におけるサイズ及び形状は、互いに同じである。
【0067】
各電極部64ax,56axは、
図10(a),(b)に示すように、厚肉部64t,56tと、厚肉部64t,56tよりもZ方向の厚みが小さい薄肉部64s,56sとを有する。これは、各電極部64ax,56axがスキージを用いたスクリーン印刷により形成されることに起因する。
【0068】
例えば、電極部64axを形成する際には、
図11に示すように、圧電層42の上面に、電極部64axに対応する孔101xが形成されたマスク101を配置し、スキージ100を移動させて、スクリーン印刷により電極部64axを形成する。このときスキージ100は、その移動方向(Y方向に沿った方向)の下流側に電極の材料(例えば、銀、ニッケル、金等)110を保持しつつ、移動する。当該材料110が孔101xに入り込むことで、厚肉部64tが形成される。さらにこのとき、電極部64axにおける上記移動方向の下流側の端部に材料110が流れ込むことで、滲みAが生じる。この滲みAが、薄肉部64sとして形成される。
【0069】
厚肉部64t,56tのZ方向の厚みは1μm程度であり、薄肉部64s,56sのZ方向の厚みは0.1μm以下である。また、薄肉部64s,56sのY方向の長さは、例えば、10~100μmである。
【0070】
本実施形態では、上記のように形成される薄肉部64s,56sを考慮して、Y方向に互いに隣接する2つの電極部64ax,56axの間隙Gが、当該端部電極64a,56aのY方向の中央に位置するように、かつ、端部電極54a,55aのY方向の中央OとZ方向に重なるように、厚肉部64t,56tのY方向の長さやY方向の位置が設定される。
【0071】
具体的には、10個の端部電極64aのうち、接続電極部54の端部電極54aとZ方向に重なる端部電極64aにおいては、
図10(a)に示すように、Y方向に互いに隣接する2つの電極部64axの間隙Gが、当該端部電極64aのY方向の中央に位置し、かつ、端部電極54aのY方向の中央OとZ方向に重なっている。10個の端部電極64aのうち、接続電極部55の端部電極55aとZ方向に重なる端部電極64aにおいては、Y方向に互いに隣接する2つの電極部64axの間隙Gが、当該端部電極64aのY方向の中央に位置し、かつ、端部電極55aのY方向の中央とZ方向に重なっている。端部電極56aにおいては、
図10(b)に示すように、Y方向に互いに隣接する2つの電極部56axの間隙Gが、当該端部電極56aのY方向の中央に位置し、かつ、端部電極55aのY方向の中央OとZ方向に重なっている。
【0072】
図10(a)に示す2つの電極部64axのうち、Y方向において圧電アクチュエータ22のY方向の端部の縁22eと端部電極54aの中央Oとの間に配置された電極部(
図10(a)左側の電極部)64axにおいては、Y方向において厚肉部64tと中央Oとの間に薄肉部64sが位置している。当該薄肉部64sが中央OとZ方向に重ならないように、厚肉部64tのY方向の長さやY方向の位置が設定される。
【0073】
図10(b)に示す2つの電極部56axのうち、Y方向において圧電アクチュエータ22のY方向の端部の縁22eと端部電極55aの中央Oとの間に配置された電極部(
図10(b)左側の電極部)56axにおいては、Y方向において厚肉部56tと中央Oとの間に薄肉部56sが位置している。当該薄肉部56sが中央OとZ方向に重ならないように、厚肉部56tのY方向の長さやY方向の位置が設定される。
【0074】
なお、電極部64ax,56axのみでなく、圧電アクチュエータ22を構成する電極の全てが、スキージを用いたスクリーン印刷により形成されるが、電極部64ax,56ax以外の電極の厚肉部及び薄肉部については、図示を省略している。
【0075】
また、
図10(b)に示す2つの電極部56axのうち、右側の電極部56ax(第1電極部)は、端部電極55a及び重複部534と電気的に接続されているのに対し、左側の電極部56x(第2電極部)は、端部電極55a及び重複部534のいずれとも電気的に接続されていない。右側の電極部56ax(第1電極部)は、圧電層41に形成された貫通孔41yを介して端部電極55aと電気的に接続され、かつ、圧電層42に形成された貫通孔42yを介して重複部534と電気的に接続されている。
【0076】
<本実施形態の構成及び効果>
以上に述べたように、本実施形態によれば、
図10(a),(b)に示すように、圧電層41~43のZ方向の中央面Xが圧電層42内にある。圧電アクチュエータ22のY方向の端部において、
図10(a)に示す断面では、中央面Aに対して上側に2つの電極(端部電極54a及び端部電極64a)、中央面Aに対して下側に1つの電極(端部電極66a)が存在する。圧電アクチュエータ22のY方向の端部において、
図10(b)に示す断面では、中央面Aに対して上側に2つの電極(端部電極55a及び端部電極56a)、中央面Aに対して下側に1つの電極(重複部534)が存在する。つまり、
図10(a),(b)に示す断面では、それぞれ、中央面Aに対して上側の方が下側よりも電極量が多い。そこで本実施形態では、端部電極64aをY方向に互いに分離した複数の電極部64axで構成し、端部電極56aをY方向に互いに分離した複数の電極部56axで構成している。これにより、電極焼成時の熱収縮力がY方向に分散され、圧電アクチュエータ22の端部の反り上がりを抑制できる。
【0077】
なお、圧電アクチュエータ22の変位量向上のため、圧電層41~43の厚みを小さくすることが好ましいが、圧電層41~43の厚みを小さくするほど、圧電層41~43に対する電極層71~73の体積比率が大きくなり、電極焼成時の熱収縮による反り上がりの課題が顕著化し得る。この点、本実施形態では、端部電極56a,64aを複数の電極部56ax,64axで構成したことで上記課題を解決できるため、圧電層41~43の薄層化(ひいては、圧電アクチュエータ22の変位量向上)を実効的に実現できる。
【0078】
端部電極66aのY方向の長さL2(
図9参照)は、端部電極64aのY方向の長さL1(
図8参照)よりも長い。重複部534のY方向の長さ(
図9参照)は、端部電極56aのY方向の長さ(
図8参照)よりも長い。この場合、中央面Aよりも下側に配置された電極(端部電極66a及び重複部534)のサイズを大きくして収縮量を大きくすることで、中央面Aに対する上側と下側との収縮量のバランスが整い、反り上がりをより確実に抑制できる。
【0079】
Y方向に互いに隣接する2つの電極部64a,56axの間隙Gは、端部電極54a,55aとZ方向に重なっている(
図10(a),(b)参照)。この場合、端部電極54a,55aの収縮による下側に凸となる位置と、各電極部64a,56axの収縮による下側に凸となる位置とがY方向に分散される。これにより、反り上がりをより確実に抑制できる。
【0080】
Y方向に互いに隣接する2つの電極部64a,56axの間隙Gは、当該端部電極64a,56aのY方向の中央に位置する(
図10(a),(b)参照)。この場合、各電極部64a,56axの収縮量が均等になることで、偏った収縮を抑制でき、ひいては反りの発生を抑制できる。
【0081】
Y方向に互いに隣接する2つの電極部64a,56axの間隙Gは、端部電極54a,55aのY方向の中央OとZ方向に重なっている(
図10(a),(b)参照)。この場合、端部電極54a,55aの収縮による下側に凸となる位置と、各電極部64a,56axの収縮による下側に凸となる位置とが、Y方向に等間隔に分散される。これにより、反り上がりをより一層抑制できる。
【0082】
図10(a)に示す2つの電極部64axのうち、Y方向において圧電アクチュエータ22のY方向の端部の縁22eと端部電極54aの中央Oとの間に配置された電極部(
図10(a)左側の電極部)64axにおいては、Y方向において厚肉部64tと中央Oとの間に薄肉部64sが位置している。
図10(b)に示す2つの電極部56axのうち、Y方向において圧電アクチュエータ22のY方向の端部の縁22eと端部電極55aの中央Oとの間に配置された電極部(
図10(b)左側の電極部)56axにおいては、Y方向において厚肉部56tと中央Oとの間に薄肉部56sが位置している。各電極部64ax,56axは、スクリーン印刷により形成され、滲みAが薄肉部64s,56sとなる(
図11参照)。本実施形態では、薄肉部64s,56sを考慮して、
図10(a),(b)左側の電極部64ax,56axにおいて、薄肉部64s,56sが中央OとZ方向に重ならないように、厚肉部64t,56tのY方向の長さやY方向の位置が設定される。これにより、間隙Gが端部電極54a,55aのY方向の中央OとZ方向に重なるという構成を確実に実現できる。
【0083】
図10(b)に示す2つの電極部56axのうち、右側の電極部56ax(第1電極部)は、圧電層41,42に形成された貫通孔41y,42yを介して端部電極55a及び重複部534と電気的に接続されているのに対し、左側の電極部56x(第2電極部)は、端部電極55a及び重複部534のいずれとも電気的に接続されていない。仮に、左側(圧電アクチュエータ22の縁22eに近い側)の電極部56x(第2電極部)を端部電極55a及び重複部534と電気的に接続させると、縁22aの近傍に圧電層41,42の貫通孔を形成することになる。縁22aの近傍では、焼成時に貫通孔が収縮し易いため、貫通孔のサイズや形状が設計したものとは異なるものとなり、電気的接続に不具合が生じ得る。この点、本実施形態では、右側(圧電アクチュエータ22の縁22eから遠い側)の電極部56ax(第1電極部)を、端部電極55a及び重複部534と電気的に接続させたことで、上記問題を抑制できる。
【0084】
X方向に互いに隣接する端部電極64aの間隔D1は、Y方向に互いに隣接する2つの電極部64axの間隔D2よりも大きい(
図8参照)。この場合、間隔D1を大きくしたことで、圧電アクチュエータ22におけるY方向の縁(
図10に示す縁22e)を、Y方向から見て、平坦ではなく、波状に形成することができる。これにより、接着剤の拡がりを促進し、かつ、空気を逃がしつつ、流路部材21のプレート31と圧電アクチュエータ22との接着を行うことができ、良好な接着を実現できる。
【0085】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0086】
上述の実施形態(
図10(b)参照)では、2つの電極部56axのうち右側の電極部56axのみを端部電極55a及び重複部534と電気的に接続させているが、2つの電極部56axの両方を端部電極55a及び重複部534と電気的に接続させてもよい。
【0087】
第2端部電極は、上述の実施形態では2つの電極部で構成されるが、3以上の電極部で構成されてよい。ただし、電極部の数(分割数)が多くなるほど、圧電アクチュエータの端部の強度が弱まり、割れが生じ易くなるため、電極部の数は2又は3程度が好ましい。
【0088】
第1電位が高電位、第2電位が低電位であることに限定されず、これとは逆(即ち、第1電位が低電位、第2電位が高電位)であってもよい。この場合、高電位電極52が最下層、低電位電極53が中間層に位置してよい。
【0089】
圧電アクチュエータを構成する圧電層の数は、上述の実施形態では3つであるが、4つ以上であってもよい。また、第3圧電層(上述の実施形態の圧電層43)と、流路部材21のプレート(上述の実施形態のプレート31)との間に、別の圧電層が配置されてもよい。
【0090】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。さらに、本発明に係る圧電アクチュエータは、液体吐出装置以外の任意の装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
22 圧電アクチュエータ
22e 縁
41 圧電層(第1圧電層)
42 圧電層(第2圧電層)
43 圧電層(第3圧電層)
51 駆動電極
52 高電位電極(第1電位電極)
53 低電位電極(第2電位電極)
534 重複部(第3端部電極)
54a,55a 端部電極(第1端部電極)
56a 端部電極(第2端部電極)
56ax 電極部
56t 厚肉部
56s 薄肉部
64a 端部電極(第2端部電極)
64ax 電極部
64t 厚肉部
64s 薄肉部
66a 浮き電極(第3端部電極)
71 第1電極層
72 第2電極層
73 第3電極層
G 間隙
D1,D2 間隔
L1,L2 長さ
O 中央
X 中央面