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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】重畳画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20241016BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20241016BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20241016BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20241016BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/0968
G02B27/01
B60R1/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020187936
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077198
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】三宅 広之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 賢二
(72)【発明者】
【氏名】守田 雄亮
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/109941(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138465(WO,A1)
【文献】特開2017-021019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G02B 27/01
B60R 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の乗員へ情報を案内する案内オブジェクトを、前記車両周辺の風景に重畳して視認させる重畳画像表示装置であって、
車両の進行方向前方に案内対象となる案内対象地点がある場合に、前記案内対象地点に対する案内を行う為の前記案内オブジェクトを、車両から風景内の前記案内オブジェクトが重畳される位置までの距離を固定して表示するオブジェクト表示手段を有し、
前記案内対象地点は車両を旋回して通過させる地点であって、
前記案内オブジェクトは、所定間隔で車両の今後の進路に沿って配列された複数のオブジェクトを含み、
前記オブジェクト表示手段は、
車両から前記案内対象地点までの距離が閾値以上である場合には、前記複数のオブジェクトを、全て直進方向に進むことを示すとともに車両の進行方向前方の路面に対して底面が並行に接した状態で視認される第1の態様で表示し、
その後に車両から前記案内対象地点までの距離が閾値未満となった場合に、前記複数のオブジェクトの内、車両から近い順に所定数のオブジェクトについては前記第1の態様で継続して表示する一方、前記所定数のオブジェクト以外のオブジェクトについては、案内対象地点を旋回して通過することを示すとともに車両の進行方向前方の路面に対して底面の少なくとも一部が離間した状態で視認される第2の態様へと表示態様を変更して表示する重畳画像表示装置。
【請求項2】
前記案内対象地点は、案内対象となる案内分岐点であって、
前記第2の態様は、前記オブジェクトが車両の進行方向前方の路面に対して前記案内分岐点での退出方向に対応した方向に傾斜した状態で視認される請求項1に記載の重畳画像表示装置。
【請求項3】
前記案内対象地点は、案内対象となる案内分岐点であって、
記オブジェクトの傾斜角度は、案内分岐点における車両の進入方向と退出方向の間の角度に基づいて設定される請求項2に記載の重畳画像表示装置。
【請求項4】
前記案内対象地点は、案内対象となる案内分岐点であって、
前記複数のオブジェクトは、前記案内分岐点における車両の退出方向を示す矢印であり、
前記オブジェクト表示手段は、
車両から前記案内対象地点までの距離が閾値以上である場合には、前記複数のオブジェクトを直進方向に沿って配列することで直進方向に進むことを示す前記案内オブジェクトを表示し、
車両から前記案内対象地点までの距離が閾値未満である場合には、前記複数のオブジェクトの内、前記所定数のオブジェクト以外のオブジェクトについて、前記退出方向へ旋回しつつ配列することで案内対象地点を旋回して通過することを示す前記案内オブジェクトを表示する請求項に記載の重畳画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行支援を行う重畳画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の乗員に対して経路案内や障害物の警告等の車両の走行支援を行う為の各種情報を提供する情報提供手段として、様々な手段が用いられている。例えば、車両に設置された液晶ディスプレイによる表示や、スピーカから出力する音声等である。そして、近年、このような情報提供手段の一つとして、乗員の周辺環境(風景、実景)に重畳する画像を表示することによって、情報の提供を行う装置がある。例えば、ヘッドアップディスプレイ、ウインドウシールドディスプレイの他、液晶ディスプレイに表示した車両周辺の撮像画像に重畳して画像を表示する方法等が該当する。
【0003】
ここで、上記周辺環境に重畳する画像を表示することによって、車両の乗員に案内対象となる案内対象地点を案内する場合には、重畳する画像を案内対象地点付近に重畳させることが効果的である。案内対象地点としては、例えば車両が右左折する案内分岐点、案内分岐点の目印となる地物(施設、看板など)、注意を促す必要のある障害物等が該当する。例えば、特開2007-121001号公報には、案内対象交差点に車両が接近すると、車両前方の実写画像に含まれる案内対象交差点周辺の道路の路面に重畳して右左折方向を示す矢印の画像を表示する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-121001号公報(第7頁、図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術は、車両が案内対象交差点に接近してから案内対象交差点を通過するまでの間、ユーザには案内対象交差点に進入する進入道路と案内対象交差点から退出する退出道路の各路面に対して並行に接した矢印の画像が視認される。その結果、矢印の画像によって案内対象地点周辺の道路が大きく覆われてしまい、今後の車両が走行すべき道路、即ち車両の進路がユーザから視認し難くなる問題があった。特に案内対象地点が特許文献1のように案内対象交差点である場合には、案内対象交差点の退出道路が覆われることによって、案内対象交差点での車両の進路(車両が進入すべき道路)が判断し難くなることも挙げられる。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両が案内対象地点に接近した段階で、案内対象地点を旋回して通過することを示す案内オブジェクトを車両の進行方向前方の路面から離間した状態で視認させるので、案内対象地点周辺の道路の視認性を低下させることなく案内対象地点周辺における車両の進路を明確に乗員に認識させることを可能にした重畳画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明に係る重畳画像表示装置は、車両に搭載され、前記車両の乗員へ情報を案内する案内オブジェクトを、前記車両周辺の風景に重畳して視認させる重畳画像表示装置であって、車両の進行方向前方に案内対象となる案内対象地点がある場合に、前記案内対象地点に対する案内を行う為の前記案内オブジェクトを、車両から風景内の前記案内オブジェクトが重畳される位置までの距離を固定して表示するオブジェクト表示手段を有し、前記案内対象地点は車両を旋回して通過させる地点であって、前記案内オブジェクトは、所定間隔で車両の今後の進路に沿って配列された複数のオブジェクトを含み、前記オブジェクト表示手段は、車両から前記案内対象地点までの距離が閾値以上である場合には、前記複数のオブジェクトを、全て直進方向に進むことを示すとともに車両の進行方向前方の路面に対して底面が並行に接した状態で視認される第1の態様で表示し、その後に車両から前記案内対象地点までの距離が閾値未満となった場合に、前記複数のオブジェクトの内、車両から近い順に所定数のオブジェクトについては前記第1の態様で継続して表示する一方、前記所定数のオブジェクト以外のオブジェクトについては、案内対象地点を旋回して通過することを示すとともに車両の進行方向前方の路面に対して底面の少なくとも一部が離間した状態で視認される第2の態様へと表示態様を変更して表示する。
尚、「風景」とは、実際に車両から視認される風景(実景)に加えて、風景を撮像した画像、風景を再現した画像等も含む。
【発明の効果】
【0008】
前記構成を有する本発明に係る重畳画像表示装置によれば、車両から案内対象地点までの距離が離れた段階では、直進方向に進むことを示す案内オブジェクトを車両の進行方向前方の路面に対して接した状態で視認させるので、道路と対応させて案内オブジェクトによる案内の内容を明確に乗員に認識させることが可能となる。一方で、車両が案内対象地点に接近した段階で、案内対象地点を旋回して通過することを示す案内オブジェクトを車両の進行方向前方の路面から離間した状態で視認させるので、案内対象地点周辺の道路の視認性を低下させることなく案内対象地点周辺における車両の進路を明確に乗員に認識させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
図2】第1実施形態に係る走行支援処理プログラムのフローチャートである。
図3】液晶ディスプレイに表示される走行案内画面の一例を示した図である。
図4】液晶ディスプレイに表示される案内オブジェクトの画像を示した図である。
図5】案内分岐点の通過時における液晶ディスプレイに表示される案内オブジェクトの画像の推移を示した図である。
図6】案内オブジェクト表示位置決定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
図7】車両が案内分岐点から離れた状態で配置される案内オブジェクトの形状を示した図である。
図8】車両が案内分岐点に接近した状態で配置される案内オブジェクトの形状を示した図である。
図9】車両が案内分岐点から離れた状態にある場合の案内オブジェクトの配置例を示した図である。
図10】車両が案内分岐点から離れた状態にある場合の案内オブジェクトの配置例を示した図である。
図11】車両が案内分岐点に接近した状態にある場合の案内オブジェクトの配置例を示した図である。
図12】車両が案内分岐点に接近した状態にある場合の案内オブジェクトの配置例を示した図である。
図13】3次元空間に配置された案内オブジェクトを視認した視認画像の一例を示した図である。
図14】車両の走行に伴って液晶ディスプレイに表示される走行案内画面を示した図である。
図15】第2実施形態に係る重畳画像表示装置の概略構成図である。
図16】第2実施形態に係る重畳画像表示装置における案内オブジェクトの表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る重畳画像表示装置をナビゲーション装置に具体化した第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は第1実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0012】
図1に示すように第1実施形態に係るナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して進行方向前方を撮像した実景画像を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、プローブセンタやVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、を有する。また、ナビゲーション装置1はCAN等の車載ネットワークを介して、ナビゲーション装置1の搭載された車両に対して設置されたフロントカメラ19や各種センサが接続されている。
【0013】
以下に、ナビゲーション装置1が有する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記4種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0014】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部12をハードディスクの代わりにフラッシュメモリやメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。また、地図情報DB31は外部のサーバに格納させ、ナビゲーション装置1が通信により取得する構成としても良い。
【0015】
ここで、地図情報DB31は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ32、ノード点に関するノードデータ33、分岐点に関する分岐点データ34、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0016】
また、リンクデータ32としては、道路を構成する各リンクに関してリンクの属する道路の幅員、勾(こう)配、カント、バンク、路面の状態、道路の車線数、車線数の減少する箇所、幅員の狭くなる箇所、踏切り等を表すデータが、コーナに関して、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口及び出口等を表すデータが、道路属性に関して、降坂路、登坂路等を表すデータが、道路種別に関して、高速道路と一般道(国道、県道、細街路等)を表すデータがそれぞれ記録される。
【0017】
また、ノードデータ33としては、実際の道路の分岐点(交差点、T字路等も含む)や各道路に曲率半径等に応じて所定の距離毎に設定されたノード点の座標(位置)、ノードが交差点に対応するノードであるか等を表すノード属性、ノードに接続するリンクのリンク番号のリストである接続リンク番号リスト、ノードにリンクを介して隣接するノードのノード番号のリストである隣接ノード番号リスト、各ノード点の高さ(高度)等に関するデータ等が記録される。
【0018】
また、分岐点データ34としては、分岐点の交差点名称、分岐点を形成するノードを特定する該当ノード情報、分岐点に接続されるリンクを特定する接続リンク情報、分岐点に接続されるリンクに対応する方面名称、分岐点の形状を特定する情報等が記憶される。また、分岐点での右左折案内を行う場合に目印となり得る構造物についても記憶される。
【0019】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の走行支援処理プログラム(図2)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU13は、処理アルゴリズムとしての各種手段を有する。例えば、オブジェクト表示手段は、車両の進行方向前方に案内対象となる案内対象地点がある場合に、案内対象地点に対する案内を行う為の案内オブジェクトを表示する。
【0020】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)を有する。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルを有する構成としても良い。また、マイクと音声認識装置を有する構成としても良い。
【0021】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、特に第1実施形態では、通常の走行時において液晶ディスプレイ15にはフロントカメラ19で撮像した撮像画像、即ち現時点の車両周辺(特に車両前方)の風景(実景画像)を表示し、更に必要に応じて風景に対して案内オブジェクトを重畳させて表示する。
【0022】
ここで、風景に重畳して表示される案内オブジェクトとしては、車両に関する情報や乗員の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば乗員に対して警告対象となる対象物(他車両、歩行者、案内標識)に対する警告、ナビゲーション装置1で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印、案内分岐点の目印を示すアイコン、案内分岐点までの距離等)、路面に表示する警告(追突注意、制限速度等)、車両が走行する車線の区画線、現在車速、シフト位置、エネルギ残量、広告画像、施設情報、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面等がある。尚、以下に説明する第1実施形態では案内オブジェクトは、車両の今後の進路とともに車両の進行方向前方にある案内分岐点における案内を行う為の案内情報とする。より具体的には車両の進行方向前方の道路の路面に重畳して表示され、車両の今後の進路(案内分岐点に接近した段階では特に案内経路に沿った案内分岐点の退出方向)を示す複数個の矢印とする。
【0023】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0024】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB31の更新等が行われる。尚、DVDドライブ17に替えてメモリーカードを読み書きする為のカードスロットを設けても良い。
【0025】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0026】
また、フロントカメラ19は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラを有する撮像装置であり、光軸方向を車両の進行方向前方に向けて設置される。そして、フロントカメラ19により撮像された撮像画像は、前述したように車両周辺(特に車両前方)の風景(実景画像)として液晶ディスプレイ15に対して表示される。
【0027】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する走行支援処理プログラムについて図2に基づき説明する。図2は第1実施形態に係る走行支援処理プログラムのフローチャートである。ここで、走行支援処理プログラムは車両のACC電源(accessory power supply)がONされた後に実行され、液晶ディスプレイ15に表示された車両周辺の風景に重畳した案内オブジェクトを視認させることによって、車両の走行支援を行うプログラムである。尚、以下の図2及び図6にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0028】
以下の説明では案内オブジェクトを用いた車両の走行支援として、ナビゲーション装置1で設定された案内経路に沿った車両の走行案内を行う例について説明する。また、表示対象となる案内オブジェクトは、車両の今後の進路とともに車両の進行方向前方にある案内分岐点における案内を行う為の案内情報とし、特に車両の進行方向前方の道路の路面に重畳して表示され、車両の今後の進路(案内分岐点に接近した段階では特に案内経路に沿った案内分岐点の退出方向)を示す複数個の矢印を案内オブジェクトとして表示する場合の処理を例に挙げて説明する。但し、ナビゲーション装置1では案内オブジェクトを用いて上記走行支援以外の案内や情報提供を行うことも可能である。また、表示対象となる案内オブジェクトは、上記矢印以外の情報とすることも可能である。例えば、案内オブジェクトとして乗員に対して警告対象となる対象物(他車両、歩行者、案内標識)に対する警告、路面に表示する警告(追突注意、制限速度等)、車両が走行する車線の区画線、現在車速、シフト位置、エネルギ残量、広告画像、施設情報、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面等を表示することも可能である。
【0029】
先ず、走行支援処理プログラムでは、ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU41は、後述の案内オブジェクト表示位置決定処理(図6)を行う。案内オブジェクト表示位置決定処理は、車両の現在位置から次の案内分岐点までの距離に基づいて、液晶ディスプレイ15に対して表示する案内オブジェクトの形状及び案内オブジェクトを表示する位置(範囲)を具体的に決定する処理である。尚、案内分岐点とは、ナビゲーション装置1に設定されている案内経路に従ってナビゲーション装置1が走行の案内を行う際に、右左折指示等の案内を行う対象となる分岐点(交差点)である。
【0030】
続いて、S2においてCPU41は、前記S1で決定された形状の案内オブジェクトの画像を生成し、更に液晶ディスプレイ15に対して制御信号を送信し、液晶ディスプレイ15に対して生成された案内オブジェクトの画像を前記S1で決定された位置(範囲)に対して描画する。尚、液晶ディスプレイ15には予めフロントカメラ19で撮像した撮像画像、即ち現時点の車両周辺(特に車両前方)の風景(実景画像)が表示されている。その結果、車両の乗員に風景に重畳された案内オブジェクトを視認させることが可能となる。
【0031】
図3は前記S5において液晶ディスプレイ15に表示される走行案内画面51の一例を示した図である。図3に示すように液晶ディスプレイ15には、フロントカメラ19により撮像された現時点の車両前方の風景52が表示される。そして、車両前方の風景52に重畳して案内オブジェクトの画像53が表示される。案内オブジェクトの画像53は、複数の矢印形状のオブジェクトの画像を含み、複数のオブジェクトの画像を車両の今後の進路に沿って所定間隔で位置するように表示する。より具体的には、車両が案内分岐点から離れた状態では直進方向に沿って配列され、各矢印の向きも直進方向を示す。それによって、進行方向前方にある案内分岐点までの距離がまだ遠いことを乗員に示唆する。一方で車両が案内分岐点に接近した状態では車両側の所定数のオブジェクトの画像については、同じく直進方向に沿って配列され、各矢印の向きも直進方向を示すが、それ以外の進行方向側にあるオブジェクトの画像については案内分岐点における車両の退出方向に沿って円弧状に配列され、各矢印の向きも退出方向を示す。
【0032】
また、案内オブジェクトの画像53は、基本的に車両が案内分岐点から離れた状態では、車両の進行方向前方の路面に対して底面が並行に接した状態で視認される態様(以下、第1の態様という)で表示し、車両が案内分岐点に接近した状態では、車両の進行方向前方の路面に対して底面の少なくとも一部が離間した状態で視認される態様(以下、第2の態様という)で表示する。但し、車両が案内分岐点から離れた状態では、複数のオブジェクトの画像を全て上記第1の態様で表示するが、車両が案内分岐点に接近した状態では、複数のオブジェクトの画像を全て上記第2の態様で表示するのではなく、図4に示すように車両側にある所定数のオブジェクトの画像は第1の態様で表示し、それ以外のオブジェクトの画像について第2の態様で表示する。但し、車両が案内分岐点に接近した状態において、複数のオブジェクトの画像を全て上記第2の態様で表示するようにしても良い。
【0033】
また、オブジェクトの画像は2次元の平面画像とし、第2の態様では図4に示すようにオブジェクトの画像を車両の進行方向前方の路面に対して傾斜した状態で視認されるように表示する。尚、傾斜方向は案内分岐点での退出方向に対応した方向とし、より具体的には案内分岐点での旋回方向に対して外周側(右折する場合には左側、左折する場合には右側)が高くなる傾斜方向とする。尚、具体的な傾斜角度θの値は後述のように案内分岐点の形状に基づいて設定される。また、第2の態様ではオブジェクトの画像が車両の進行方向前方の路面に対して底面が完全に離間した状態としても良いし、路面に対して底面の一部が接していても良い。
【0034】
そして、第1実施形態では車両が案内分岐点に対して接近した状態では、案内オブジェクトの画像53は特に案内分岐点に重畳する後半部分において上記第2の態様で表示されるので、走行案内画面51を車両の乗員が視認した場合に、案内オブジェクトの画像53によって案内分岐点周辺の道路の視認性を低下させることが無い。特に案内分岐点の退出道路の視認性を低下させないことによって、案内分岐点での車両の進路(車両が進入すべき道路)を乗員に確実に把握させることが可能となる。
【0035】
その後、S3においてCPU41は、車両の現在位置を現在位置検出部11の検出結果や地図情報に基づいて特定する。尚、車両の現在位置を特定する際には、車両の現在位置を地図情報にマッチングさせるマップマッチング処理についても行う。その後、CPU41はナビゲーション装置1で設定されている案内経路を読み出し、車両が前記S2で表示された案内オブジェクトによって退出方向が案内されている案内分岐点に進入したか否かを判定する。但し、車両が案内分岐点に進入したか否かの判定については車両の現在位置を用いずに、例えばフロントカメラ19で撮像した撮像画像に基づいて行っても良い。或いは、車両で行われたステアリングの操作やブレーキの操作に基づいて判定しても良い。
【0036】
そして、車両が前記S2で表示された案内オブジェクトによって退出方向が案内されている案内分岐点に進入したと判定された場合(S3:YES)には、S4へと移行する。それに対して、車両が前記S2で表示された案内オブジェクトによって退出方向が案内されている案内分岐点に進入していないと判定された場合(S3:NO)にはS1へと戻り、案内オブジェクトの表示を継続して行う。
【0037】
続いて、S4においてCPU41は、液晶ディスプレイ15に対して制御信号を送信し、図5に示すように液晶ディスプレイ15に対して表示されている案内オブジェクトの画像53を徐々に拡大する一方で、案内オブジェクトに含まれる複数の矢印形状のオブジェクトの画像の内、車両に近い位置のオブジェクトの画像から順に段階的に非表示とする。それによって、案内オブジェクトが実際に配置された案内分岐点の中を車両が通過するかのような感覚を乗員に与えることが可能となる。尚、オブジェクトの画像の非表示は、車両が案内分岐点の通過が完了するタイミングで全てのオブジェクトの画像が非表示となる態様で行う。
【0038】
その後、S5においてCPU41は、車両が案内分岐点の通過が完了したか否かを判定する。例えば現在位置検出部11で検出された車両の現在位置と地図情報に基づいて判定される。但し、車両が案内分岐点の通過を完了したか否かの判定については車両の現在位置を用いずに、例えばフロントカメラ19で撮像した撮像画像に基づいて行っても良い。或いは、車両で行われたステアリングの操作やブレーキの操作に基づいて判定しても良い。
【0039】
そして、車両が案内分岐点の通過を完了したと判定された場合(S5:YES)には、液晶ディスプレイ15に対して制御信号を送信し、液晶ディスプレイ15に表示されていた案内オブジェクトを一旦非表示とする(S6)。尚、フロントカメラ19で撮像した撮像画像、即ち現時点の車両周辺(特に車両前方)の風景(実景画像)については継続して表示される。但し、風景の画像についても非表示とし、液晶ディスプレイ15の表示画面を地図画像の表示などに切り替えても良い。
【0040】
また、車両が案内分岐点の通過を完了してからしばらくすると(例えば3秒後)、再びS1以降の処理が実行され案内オブジェクトの画像が液晶ディスプレイ15に再び表示されることとなる。但し、案内経路に沿った次の案内分岐点までの距離が所定距離以内(例えば1km以内)となるまで案内オブジェクトを表示しないようにしても良い。
【0041】
一方、車両が案内分岐点の通過を完了していないと判定された場合(S5:NO)にはS4へと戻り、案内オブジェクトの表示を継続して行う。
【0042】
次に、前記S1において実行される案内オブジェクト表示位置決定処理のサブ処理について図6に基づき説明する。図6は案内オブジェクト表示位置決定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0043】
先ず、S11においてCPU41は、車両の現在位置を現在位置検出部11の検出結果や地図情報に基づいて特定する。尚、車両の現在位置を特定する際には、車両の現在位置を地図情報にマッチングさせるマップマッチング処理についても行う。その後、ナビゲーション装置1で設定されている案内経路を読み出し、特定された車両の現在位置から案内経路に沿った次の案内分岐点までの距離を算出する。
【0044】
次に、S12においてCPU41は、前記S11で算出された次の案内分岐点までの距離が閾値未満か否かを判定する。尚、閾値は車両が走行する道路の道路種別によって決定され、例えば高速道路は300mとする。一方、一般道は高速道路よりも短い100m、或いは案内分岐点の手前側100m以内に他の分岐点がある場合には、案内分岐点から該他の分岐点までの距離とする。
【0045】
尚、前記S12では判定条件となる距離を固定値としているが、変動する値であっても良い。例えば、液晶ディスプレイ15に表示される案内オブジェクトの画像の少なくとも一部が案内対象地点である案内分岐点に対して重畳する距離としても良い。その場合には、案内分岐点に対して案内オブジェクトの少なくとも一部が重畳して車両の乗員に視認されるか否かを判定することとなる。
【0046】
そして、前記S11で算出された案内分岐点までの距離が閾値未満であると判定された場合(S12:YES)には、S15へと移行する。それに対して、前記S11で算出された次の案内分岐点までの距離が閾値以上であると判定された場合(S12:NO)には、S13へと移行する。
【0047】
S13においてCPU41は、表示対象とする案内オブジェクトとして、図7に示すように直進方向に沿って所定間隔で配列された複数の矢印61を案内オブジェクトに選択する。各矢印61の向きも直進方向を示す。尚、矢印61の数や配置間隔は適宜設定可能である。
【0048】
続いて、S14においてCPU41は、“案内オブジェクトを風景に対して重畳する位置”を、車両の現在位置に対して進行方向へ所定距離前方(例えば10m前方)の路面上の位置とする。その後、S17へと移行する。
【0049】
一方でS15においてCPU41は、表示対象とする案内オブジェクトとして、図8に示すように直進方向に沿って所定間隔で配列された複数の矢印61と、車両の進行方向前方にある案内分岐点における車両の退出方向(図8は右方向)に沿って円弧状に配列された複数の矢印62の組み合わせを案内オブジェクトに選択する。各矢印61、62の向きは手前側の直進方向に配列された矢印61は直進方向を示し、進行方向側の矢印62については退出方向を示す。尚、矢印61、62の数や配置間隔は適宜設定可能である。また、前記S15では退出方向を向く矢印62のみを案内オブジェクトに選択しても良い。
【0050】
続いて、S16においてCPU41は、矢印62については“案内オブジェクトを風景に対して重畳する位置”を、車両の現在位置に対して進行方向へ所定距離前方(例えば10m前方)の路面から上方に離間した位置とする。一方で、矢印61についてはS14と同様に“案内オブジェクトを風景に対して重畳する位置”を、車両の現在位置に対して進行方向へ所定距離前方(例えば10m前方)の路面上の位置とする。その後、S17へと移行する。
【0051】
次に、S17においてCPU41は、車両の現在位置周辺(特に車両進行方向の前方)に対応した3次元空間を生成する。尚、3次元空間には、道路以外に、建築物、道路標識などについてもモデリングしても良いし、道路のみをモデリングしても良い。或いは道路についてもモデリングしない地面のみがある単なる空白の3次元空間としても良い。また、3次元空間は予め3次元地図情報として地図情報DB31に格納しておき、前記S17では地図情報DB31から該当する自車位置周辺の3次元地図情報を読み出しても良い。また、フロントカメラ19で撮像した画像に基づいて3次元空間を生成しても良い。例えばフロントカメラ19で撮像した撮像画像に対して点群マッチングを行うことによって、道路や道路周辺にある構造物を検出し、3次元空間を生成することが可能である。
【0052】
また、前記S17でCPU41は、現在位置検出部11で検出されたパラメータに基づいて、生成された3次元空間における自車両の現在位置及び方位についても特定する。特に、車両に設置されたフロントカメラ19の位置を自車両の現在位置とし、フロントカメラ19の光軸方向を自車両の方位とする。尚、フロントカメラ19の位置は車両の乗員の位置、フロントカメラ19の光軸方向は車両の乗員の視線方向にも相当する。
【0053】
続いて、S18においてCPU41は、液晶ディスプレイ15に表示する対象となる案内オブジェクトを生成する。生成される案内オブジェクトの形状は、前記S13又は前記S15で選択された複数の矢印からなる形状とする(図7図8)。また、案内オブジェクトは2次元ポリゴンとし、基本的に厚みは存在しないこととする。但し、厚みを持たせた3次元ポリゴンとしても良い。また、前記S18で生成される案内オブジェクトの形状は適宜変更可能であり、直進方向や案内分岐点における退出方向を示すことができる形状であれば矢印以外の形状であっても良い。また、複数の矢印である必要もなく、1のみの矢印であっても良い。
【0054】
続いて、S19においてCPU41は、前記S18で生成された案内オブジェクトを、前記S17で生成された3次元空間に対して配置する。尚、3次元空間に対して案内オブジェクトを配置する位置は、前記S14又はS16において設定された“風景に対して案内オブジェクトを重畳する位置”に基づいて決定される。
【0055】
例えばS14において“案内オブジェクトを風景に対して重畳する位置”を、車両の現在位置に対して進行方向へ所定距離前方(例えば10m前方)の路面上の位置に設定している場合について説明する。
図9のように3次元空間における車両64の進行方向前方の道路の路面上で且つ車両64の現在位置に対して所定距離前方の位置に案内オブジェクトである複数(図9に示す例では7個)の矢印61を所定間隔で配置する。特に、複数の矢印61の内、車両の現在位置から最も車両側にある矢印61までの距離が所定距離(例えば10m)となる位置に配置する。更に、複数の矢印61は車両の今後の進路に沿った位置に配置され、車両の現在位置から案内分岐点までの距離が閾値以上の場合には図9に示すように直線方向に沿って配置される。また、各矢印61は図10に示すように路面に対して底面が並行に接した状態で夫々配置される。
【0056】
一方で、S16において矢印62について“案内オブジェクトを風景に対して重畳する位置”を、車両の現在位置に対して進行方向へ所定距離前方(例えば10m前方)の路面から上方に離間した位置に設定している場合について説明する。
図11のように3次元空間における車両64の進行方向前方の道路の路面上で且つ車両64の現在位置に対して所定距離前方の位置に案内オブジェクトである複数(図11に示す例では7個)の矢印61、62を所定間隔で配置する。特に、複数の矢印61、62の内、車両の現在位置から最も車両側にある矢印61、62までの距離が所定距離(例えば10m)となる位置に配置する。更に、複数の矢印61、62は車両の今後の進路に沿った位置に配置され、車両の現在位置から案内分岐点までの距離が閾値未満の場合には図11に示すように車両側の複数個の矢印61は直線方向に沿って配置され、それ以外の進行方向側の矢印62は案内分岐点65の退出方向(図11では右方向)に沿って円弧状に配置される。また、矢印61は図10に示すように路面に対して底面が並行に接した状態で夫々配置される一方で、矢印62は図12に示すように路面に対して底面の少なくとも一部が離間した状態で配置される。
【0057】
更に、矢印62は路面に対して傾斜した状態で配置する。尚、傾斜方向は案内分岐点での退出方向に対応した方向とし、より具体的には案内分岐点での旋回方向に対して外周側(右折する場合には左側、左折する場合には右側)が高くなる傾斜方向とする。また、傾斜角度θの値は案内分岐点の形状に基づいて設定される。具体的には案内分岐点における車両の進入方向と退出方向の間の角度に基づいて設定し、進入方向と退出方向の間の角度が大きい(即ち通過時の車両の旋回角度が大きい)ほど、傾斜角度θをより大きく設定する。例えば進入方向と退出方向の間の角度が90度である場合には傾斜角度θを30度とし、進入方向と退出方向の間の角度が120度である場合には傾斜角度θを45度とし、進入方向と退出方向の間の角度が45度である場合には傾斜角度θを15度とする。また、矢印62は路面に対して底面が完全に離間した状態としても良いし、路面に対して底面の一部が接していても良い。
【0058】
次に、S20においてCPU41は、先ず案内オブジェクトが配置された3次元空間を、前記S17で特定された車両の位置(視点に相当する)から車両の進行方向に視認した画像(以下、視認画像という)を取得する。例えば、図13図11に示す態様で車両並びに案内オブジェクトが配置された場合に取得される視認画像66を示した図である。特に車両の位置はフロントカメラ19の位置とするので、取得された視認画像66は3次元空間に配置された案内オブジェクトをフロントカメラ19の視点から車両の進行方向に視認した際に視認できる像となるが、車両の乗員の視界にも相当する。
【0059】
その後、CPU41は、視認画像66に含まれる案内オブジェクトの形状及び案内オブジェクトの位置を、液晶ディスプレイ15により表示対象とする案内オブジェクトの形状及び案内オブジェクトの位置として記憶する。ここで、前記S20で記憶される案内オブジェクトの形状は、3次元空間に配置された案内オブジェクトを車両(より正確にはフロントカメラ19)の視点から視認した際に視認できる案内オブジェクトの形状である。また、前記S20で記憶される案内オブジェクトの位置は、3次元空間に配置された案内オブジェクトを車両(より正確にはフロントカメラ19)の視点から視認した際に視認できる案内オブジェクトの位置である。
【0060】
その後、S21においてCPU41は、前記S20で記憶された案内オブジェクトの形状及び案内オブジェクトの位置に基づいて、液晶ディスプレイ15において案内オブジェクトを表示する範囲を決定する。尚、案内オブジェクトの表示範囲は、前記S20で記憶される形状を有する案内オブジェクトが、3次元空間において配置された案内オブジェクトと同位置に表示される範囲となる。その後、S2へと移行し、前述したように液晶ディスプレイ15に対して制御信号を送信し、液晶ディスプレイ15に対して前記S20で記憶された形状の案内オブジェクトの画像を、前記S21で決定された表示範囲に表示する。
【0061】
その結果、車両の走行に伴って液晶ディスプレイ15に表示される走行案内画面51は図14のような画面となる。先ず、車両から案内分岐点までの距離が閾値以上の状態では、案内オブジェクトの画像53が第1の態様によりフロントカメラ19で撮像した車両の進行方向前方の風景52に重畳して表示される。尚、案内オブジェクトの画像53が重畳する位置は例えば車両の10m前方となる。第1の態様では乗員には車両の進行方向前方の路面に対して底面が並行に接した状態で案内オブジェクトの画像53が視認されることとなる。また、案内オブジェクトの画像53は複数個の矢印の画像が直進方向に沿って配列された状態で視認される。それによって、進行方向前方にある案内分岐点までの距離がまだ遠いことを乗員に示唆する。尚、車両に対する相対位置は固定されるので、表示される案内オブジェクトの画像53の表示サイズも固定となる。
【0062】
その後、車両が案内分岐点に接近し、車両から案内分岐点までの距離が閾値未満の状態となると、案内オブジェクトの画像53の内、車両側にある所定数の矢印の画像は第1の態様で継続して表示し、それ以外の矢印の画像の表示態様は第1の態様から第2の態様へと切り替わる。第2の態様では乗員には車両の進行方向前方の路面に対して底面の少なくとも一部が離間した状態で案内オブジェクトの画像53が視認されることとなる。特に路面に対して傾斜した状態で視認される。また、案内オブジェクトの画像53の内、第2の対象で表示される矢印の画像については、退出方向に沿って配列された状態で視認される。それによって、進行方向前方近くにある案内分岐点の退出方向を乗員に示唆する。
【0063】
その後、車両が案内分岐点に進入した後は、案内分岐点の通過に伴って案内オブジェクトの画像53は徐々に大きくなる。また、車両に近い位置の矢印の画像から順に非表示となり(S4)、車両が案内分岐点を通過したタイミングで案内オブジェクトの画像53は液晶ディスプレイ15から消失する(S6)。消失後しばらくすると、再び第1の態様で案内オブジェクトの画像53が表示されることとなる。
【0064】
その結果、車両の乗員は走行案内画面51を視認した場合に、車両から案内分岐点までの距離が離れた段階では、道路と対応させて案内オブジェクトの画像53による案内の内容を明確に乗員に認識させることが可能となる。一方で、車両が案内分岐点に接近した段階では、案内オブジェクトの画像53を車両の進行方向前方の路面から離間した状態で視認させるので、案内分岐点周辺の道路の視認性を低下させることなく案内分岐点周辺における車両の進路を明確に乗員に認識させることが可能となる。特に案内分岐点の退出道路の視認性を低下させないことによって、案内分岐点での車両の進路(車両が進入すべき道路)を乗員に確実に把握させることが可能となる。
【0065】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係るナビゲーション装置1、案内オブジェクトの画像の描画方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムによれば、車両の進行方向前方に案内対象となる案内対象地点がある場合に、案内対象地点に対する案内を行う為の案内オブジェクトを表示する(S2)一方で、案内オブジェクトを表示する際には、車両から案内対象地点までの距離が閾値以上である場合には、車両の進行方向前方の路面に対して底面が並行に接した状態で視認される第1の態様で案内オブジェクトを表示し、車両から案内対象地点までの距離が閾値未満である場合には、車両の進行方向前方の路面に対して底面の少なくとも一部が離間した状態で視認される第2の態様で案内オブジェクトを表示する(S11~S21)。従って、車両から案内対象地点までの距離が離れた段階では、案内オブジェクトを車両の進行方向前方の路面に対して接した状態で視認させるので、道路と対応させて案内オブジェクトによる案内の内容を明確に乗員に認識させることが可能となる。一方で、車両が案内対象地点に接近した段階で、案内オブジェクトを車両の進行方向前方の路面から離間した状態で視認させるので、案内対象地点周辺の道路の視認性を低下させることなく案内対象地点周辺における車両の進路を明確に乗員に認識させることが可能となる。
また、案内対象地点は、案内対象となる案内分岐点であって、第2の態様は、案内オブジェクトが車両の進行方向前方の路面に対して案内分岐点での退出方向に対応した方向に傾斜した状態で視認されるので、案内分岐点周辺の道路の視認性を低下させることなく且つ案内分岐点における退出方向を視覚的に容易に乗員に認識させることが可能となる。
また、案内対象地点は、案内対象となる案内分岐点であって、案内オブジェクトの傾斜角度は、案内分岐点における車両の進入方向と退出方向の間の角度に基づいて設定されるので、案内分岐点周辺の道路の視認性を低下させることなく且つ案内分岐点における退出方向を視覚的に容易に乗員に認識させることが可能となる。
また、案内オブジェクトは、所定間隔で車両の今後の進路に沿って配列された複数のオブジェクトを含み、車両から案内対象地点までの距離が閾値以上である場合には、複数のオブジェクトを全て第1の態様で表示し、車両から案内対象地点までの距離が閾値未満である場合には、複数のオブジェクトの内、車両側にある所定数のオブジェクトは第1の態様で表示し、それ以外のオブジェクトを第2の態様で表示する。従って、車両が案内対象地点に接近した場合において、特に案内対象地点に重畳する案内オブジェクトの部分を車両の進行方向前方の路面から離間した状態で視認させることが可能となる。
また、案内対象地点は、案内対象となる案内分岐点であって、複数のオブジェクトは、案内分岐点における車両の退出方向を示す矢印であり、第1の態様は、直進方向に沿って配列された状態で視認され、第2の態様は、退出方向に沿って配列された状態で視認されるので、車両が案内分岐点に接近した段階では、案内対象地点周辺の道路の視認性を低下させることなく且つ案内オブジェクトの矢印の方向によって案内対象地点における車両の退出方向を明確に乗員に認識させることが可能となる。
また、車両が案内対象地点を通過するのに伴って、車両に近い位置のオブジェクトから順に非表示とするので、案内オブジェクトが実際に配置された案内対象地点の中を車両が通過するかのような感覚を乗員に与えることが可能となる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る重畳画像表示装置について図15及び図16に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記図1乃至図14の第1実施形態に係る重畳画像表示装置の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る重畳画像表示装置等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0067】
この第2実施形態に係る重畳画像表示装置の概略構成は、第1実施形態に係る重畳画像表示装置とほぼ同じ構成である。また、各種制御処理も第1実施形態に係る重畳画像表示装置とほぼ同じ制御処理である。
ただし、第1実施形態に係る重畳画像表示装置が、ナビゲーション装置1の液晶ディスプレイ15に対してフロントカメラ19で撮像した撮像画像を表示し、更に液晶ディスプレイ15に対して案内オブジェクトを表示することによって、車両周辺の風景に案内オブジェクトを重畳させて表示するのに対して、第2実施形態に係る重畳画像表示装置は車両周辺の風景に重畳する画像を表示する手段としてヘッドアップディスプレイシステムを用いる点で異なる。
【0068】
以下に第2実施形態に係る重畳画像表示装置の概略構成について図15を用いて説明する。図15は第2実施形態に係る重畳画像表示装置101の概略構成図である。
図15に示すように重畳画像表示装置101は、車両102に搭載されたナビゲーション装置103と、同じく車両102に搭載されるとともにナビゲーション装置103と接続されたフロントディスプレイ104とを基本的に有する。尚、フロントディスプレイ104は車両102のフロントガラス105とともにヘッドアップディスプレイとして機能し、車両102の乗員106に対して様々な情報の提供を行う情報提供手段となる。
【0069】
ここで、フロントディスプレイ104は、車両102のダッシュボード107内部に設置され、前面に設けられた画像表示面に対して画像を表示する機能を有する液晶ディスプレイである。バックライトとしては例えばCCFL(冷陰極管)や白色LEDが用いられる。尚、フロントディスプレイ104としては、液晶ディスプレイ以外に、有機ELディスプレイや液晶プロジェクタとスクリーンの組み合わせを用いても良い。
【0070】
そして、フロントディスプレイ104は車両102のフロントガラス105とともにヘッドアップディスプレイとして機能し、フロントディスプレイ104から出力される画像を、運転席の前方のフロントガラス105に反射させて車両102の乗員106に視認させるように構成されている。尚、フロントディスプレイ104には、必要に応じて案内オブジェクトを表示する。尚、以下に説明する第2実施形態では案内オブジェクトは、第1実施形態と同様に車両の今後の進路とともに車両の進行方向前方にある案内分岐点における案内を行う為の案内情報とする。より具体的には車両の進行方向前方の道路の路面に重畳して表示され、車両の今後の進路(案内分岐点に接近した段階では特に案内経路に沿った案内分岐点の退出方向)を示す複数個の矢印等とする。
【0071】
また、フロントガラス105を反射して乗員106がフロントディスプレイ104に表示された映像を視認した場合に、乗員106にはフロントガラス105の位置ではなく、フロントガラス105の先の遠方の位置にフロントディスプレイ104に表示された映像が虚像110として視認されるように構成される。また、虚像110は車両前方の周辺環境(風景、実景)に重畳して表示されることとなり、例えば車両前方に位置する任意の対象物(路面、建築物、警告対象となる物等)に重畳させて表示させることも可能である。
【0072】
ここで、虚像110を生成する位置、より具体的には乗員106から虚像110までの距離(以下、結像距離という)Lについては、フロントディスプレイ104の位置によって決定される。例えば、フロントディスプレイ104において映像の表示された位置からフロントガラス105までの光路に沿った距離(光路長)によって結像距離Lが決定される。例えば結像距離Lが1.5mとなるように光路長が設定されている。
【0073】
また、車両のフロントバンパの上方やルームミラーの裏側等にはフロントカメラ111が設置される。フロントカメラ111は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラを有する撮像装置であり、光軸方向を車両の進行方向前方に向けて設置される。そして、フロントカメラ111により撮像された撮像画像に対して画像処理が行われることによって、フロントガラス越しに乗員106に視認される前方環境(即ち虚像110が重畳される環境)の状況等が検出される。尚、フロントカメラ111の代わりにミリ波レーダ等のセンサを用いても良い。
【0074】
また、車両のインストルメントパネルの上面には車内カメラ112が設置される。車内カメラ112は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラを有する撮像装置であり、光軸方向を運転席に向けて設置される。車内において一般的に乗員の顔が位置すると予想される範囲を検出範囲(車内カメラ112の撮像範囲)として設定し、運転席に座った乗員106の顔を撮像する。そして、車内カメラ112により撮像された撮像画像に対して画像処理が行われることによって、乗員106の目の位置(視線開始点)や視線方向を検出する。
【0075】
そして、第2実施形態に係る重畳画像表示装置は、前述した走行支援処理プログラム(図2)のS5において、図16に示すようにフロントディスプレイ104に対して案内オブジェクトの画像120を表示する。その結果、図16に示すようにフロントディスプレイ104に表示された案内オブジェクトの画像120を車両の乗員が視認することによって、フロントガラス105越しの風景に重畳して案内オブジェクトの画像120の虚像121が視認される。
【0076】
それによって、第1実施形態に係る重畳画像表示装置と同様に、車両の進路や、右左折対象となる案内分岐点の位置や、案分岐点における退出方向を正確に把握できる。尚、第2実施形態に係る重畳画像表示装置では、前記S1の案内オブジェクト表示位置決定処理において、フロントディスプレイ104に対して表示する案内オブジェクトの形状及び案内オブジェクトを表示する位置(範囲)を決定する。また、前記S17で3次元空間に特定する自車両の現在位置及び方位は、車両の乗員の位置及び車内カメラ112を用いて検出した乗員の視線方向とするのが望ましい。
【0077】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば車両周辺の風景に重畳する画像を表示する手段として、第1実施形態では実景画像の表示された液晶ディスプレイ15を用い、第2実施形態ではヘッドアップディスプレイシステムを用いているが、フロントガラスに対して画像を表示するウインドウシールドディスプレイ(WSD)を用いても良い。WSDでは、フロントガラスをスクリーンとしてプロジェクタから映像を表示しても良いし、フロントガラスを透過液晶ディスプレイとしても良い。WSDによってフロントガラスに対して表示された画像は、車両周辺の風景に重畳する画像となる。
【0078】
また、第1及び第2実施形態では、案内オブジェクトは車両の今後の進路とともに車両の進行方向前方にある案内分岐点における車両の進行方向を示す複数の矢印の画像としているが、他の画像としても良い。例えば、案内オブジェクトを一の矢印の画像としても良い。また、案内オブジェクトは車両の乗員への警告対象となる対象物(例えば他車両、歩行者、案内標識)に対する警告画像、車両が走行する車線の区画線の画像などでも良い。
【0079】
また、第1及び第2実施形態では、案内オブジェクトを用いて案内分岐点の案内を行っているが、案内オブジェクトにより案内対象とする地点は案内分岐点に限られることなく、例えば車線減少地点や合流区間等の車両の乗員に注意を促す他の地点としても良い。また、案内対象地点の種類によって表示する案内オブジェクトの内容を変更するのが望ましい。
【0080】
また、第1及び第2実施形態では、案内オブジェクトを用いた走行支援は、高速道路の走行時と一般道の走行時の両方で行っているが、高速道路の走行時のみ或いは一般道の走行時のみで行うようにしても良い。
【0081】
また、第1実施形態では、ナビゲーション装置1の液晶ディスプレイ15に対してフロントカメラ19で撮像した実景画像や案内オブジェクトを表示しているが、実景画像や案内オブジェクトを表示するディスプレイとしては車両内に配置されたディスプレイであれば、液晶ディスプレイ15以外のディスプレイであっても良い。
【0082】
また、第2実施形態では、フロントディスプレイ104によって車両102のフロントガラス105の前方に虚像を生成する構成としているが、フロントガラス105以外のウィンドウの前方に虚像を生成する構成としても良い。また、フロントディスプレイ104により映像を反射させる対象はフロントガラス105自身ではなくフロントガラス105の周辺に設置されたバイザー(コンバイナー)であっても良い。
【0083】
また、第1及び第2実施形態では、走行支援処理プログラム(図2)の処理をナビゲーション装置1のナビゲーションECU13が実行する構成としているが、実行主体は適宜変更することが可能である。例えば、液晶ディスプレイ15の制御部、車両制御ECU、その他の車載器が実行する構成としても良い。
【符号の説明】
【0084】
1…ナビゲーション装置、15…液晶ディスプレイ、19…フロントカメラ、41…CPU、42…RAM、43…ROM、51…走行案内画面、52…風景、53…案内オブジェクトの画像、61、62…矢印(案内オブジェクトの一例)、64…車両、65…案内分岐点(案内対象地点の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16