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特許7571485異常予測システム、異常予測装置、異常予測方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】異常予測システム、異常予測装置、異常予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020188518
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077628
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 智也
(72)【発明者】
【氏名】馬場 紀行
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勇佐
(72)【発明者】
【氏名】溝口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】立花 幸子
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-108947(JP,A)
【文献】特開2001-018271(JP,A)
【文献】特開平02-305616(JP,A)
【文献】特開平03-099821(JP,A)
【文献】特開2019-059083(JP,A)
【文献】特開2004-338343(JP,A)
【文献】特開平03-143613(JP,A)
【文献】特開平07-052207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を成形する成形装置と、前記成形品の異常を予測する異常予測装置と、を備える異常予測システムであって、
前記成形装置は、
内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、
前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、
前記ゲートとの距離がそれぞれ異なる位置において、前記キャビティ内の前記成形材料の圧力を検出する複数の圧力センサと、
を有し、
前記複数の圧力センサは、
前記キャビティのうち前記成形材料が合流するウェルド領域よりも前記ゲートに近い位置に設けられる第1圧力センサと、
前記ゲートよりも前記ウェルド領域に近い位置に設けられる第2圧力センサと、
を有し、
前記異常予測装置は、
前記保圧解除動作後に、前記第1圧力センサにより検出される第1圧力と前記第2圧力センサにより検出される第2圧力とに基づいて、評価値を取得するデータ取得部と、
前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測部と、
を有し、
前記評価値は、
前記第2圧力から前記第1圧力を減算した差分に関する第1評価値と、
前記第2圧力の時間変化に関する値から前記第1圧力の時間変化に関する値を減算した差分に関する第2評価値と、
前記第2圧力の時間積分に関する値から前記第1圧力の時間積分に関する値を減算した差分に関する第3評価値と、
の少なくともひとつを含み、
前記異常予測部は、
前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされている場合に取得される前記評価値に基づいて生成される基準値よりも、予測対象となる前記成形品の成形時に取得される前記評価値の方が大きくなる場合に、前記ゲートがシールされていないことを示す前記予測情報を取得する、
異常予測システム。
【請求項2】
成形装置により成形される成形品の異常を予測する異常予測装置であって、
前記成形装置は、
内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、
前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、
前記ゲートとの距離がそれぞれ異なる位置において、前記キャビティ内の前記成形材料の圧力を検出する複数の圧力センサと、
を有し、
前記複数の圧力センサは、
前記キャビティのうち前記成形材料が合流するウェルド領域よりも前記ゲートに近い位置に設けられる第1圧力センサと、
前記ゲートよりも前記ウェルド領域に近い位置に設けられる第2圧力センサと、
を有し、
前記異常予測装置は、
前記保圧解除動作後に、前記第1圧力センサにより検出される第1圧力と前記第2圧力センサにより検出される第2圧力とに基づいて、評価値を取得するデータ取得部と、
前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測部と、
を備え、
前記評価値は、
前記第2圧力から前記第1圧力を減算した差分に関する第1評価値と、
前記第2圧力の時間変化に関する値から前記第1圧力の時間変化に関する値を減算した差分に関する第2評価値と、
前記第2圧力の時間積分に関する値から前記第1圧力の時間積分に関する値を減算した差分に関する第3評価値と、
の少なくともひとつを含み、
前記異常予測部は、
前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされている場合に取得される前記評価値に基づいて生成される基準値よりも、予測対象となる前記成形品の成形時に取得される前記評価値の方が大きくなる場合に、前記ゲートがシールされていないことを示す前記予測情報を取得する、
異常予測装置。
【請求項3】
内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、を備える成形装置により成形される成形品の異常を予測する異常予測方法であって、
前記保圧解除動作後に、前記キャビティのうち前記成形材料が合流するウェルド領域よりも前記ゲートに近い位置に設けられる第1圧力センサにより検出される前記キャビティ内の前記成形材料の第1圧力と、前記ゲートよりも前記ウェルド領域に近い位置に設けられる第2圧力センサにより検出される前記キャビティ内の前記成形材料の第2圧力と、に基づいて、評価値を取得するデータ取得工程と、
前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測工程と、
を備え、
前記評価値は、
前記第2圧力から前記第1圧力を減算した差分に関する第1評価値と、
前記第2圧力の時間変化に関する値から前記第1圧力の時間変化に関する値を減算した差分に関する第2評価値と、
前記第2圧力の時間積分に関する値から前記第1圧力の時間積分に関する値を減算した差分に関する第3評価値と、
の少なくともひとつを含み、
前記異常予測工程は、
前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされている場合に取得される前記評価値に基づいて生成される基準値よりも、予測対象となる前記成形品の成形時に取得される前記評価値の方が大きくなる場合に、前記ゲートがシールされていないことを示す前記予測情報を取得する、
異常予測方法。
【請求項4】
内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、を備える成形装置により成形される成形品の異常を予測するためのプログラムであって、
前記保圧解除動作後に、前記キャビティのうち前記成形材料が合流するウェルド領域よりも前記ゲートに近い位置に設けられる第1圧力センサにより検出される前記キャビティ内の前記成形材料の第1圧力と、前記ゲートよりも前記ウェルド領域に近い位置に設けられる第2圧力センサにより検出される前記キャビティ内の前記成形材料の第2圧力と、に基づいて、評価値を取得するデータ取得工程と、
前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測工程と、
をコンピュータ装置に実行させ、
前記評価値は、
前記第2圧力から前記第1圧力を減算した差分に関する第1評価値と、
前記第2圧力の時間変化に関する値から前記第1圧力の時間変化に関する値を減算した差分に関する第2評価値と、
前記第2圧力の時間積分に関する値から前記第1圧力の時間積分に関する値を減算した差分に関する第3評価値と、
の少なくともひとつを含み、
前記異常予測工程は、
前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされている場合に取得される前記評価値に基づいて生成される基準値よりも、予測対象となる前記成形品の成形時に取得される前記評価値の方が大きくなる場合に、前記ゲートがシールされていないことを示す前記予測情報を取得する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常予測システム、異常予測装置、異常予測方法、プログラム及び学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の金型の間に形成されるキャビティへ成形材料を溶融させた融液を供給して成形品を成形する射出成形装置が知られている。例えば、特許文献1には、金型内に成形材料を射出する射出成形システムにおいて、加圧部材が進退する位置間の距離に基づいて、成形品が正常であるか否かを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-52207公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形では、金型内に成形材料を充填する充填工程と、金型内の成形材料を所定の圧力に保持する保圧工程と、金型内の成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除工程とを行う。ここで、保圧解除工程は、金型内のゲートが固化した成形材料によりシールされた後(すなわち、ゲートシール後)に行う必要がある。ゲートシールがされる前に保圧の解除を行うと、キャビティからゲートへ成形材料が逆流してキャビティ内の成形材料が少なくなり、成形品にボイド(成形品内部の隙間)やヒケ(成形品表面の凹み)、寸法縮小等の異常が生じるからである。
【0005】
このため、保圧工程の時間は、ゲートシールがされるまでの時間(ゲートシール時間)を超える時間とされる。しかしながら、サイクルタイムを短縮するために、保圧工程の時間において、ゲートシール時間からのマージンはより少なく設定される傾向にある。この場合、成形材料のロット間のばらつきや、周囲の温度及び湿度等の環境の変化により、保圧工程中にゲートシールがなされず、成形品に異常が生じるおそれがある。
【0006】
特許文献1では、加圧部材が進退する位置間の距離と、キャビティ内の樹脂圧力が対応することを利用して成形品の良否判定を行う。しかしながら、ゲートシールは、保圧工程の途中(すなわち、加圧部材が所定位置に留まっている状態)に生じるため、ゲートシールができているか否かは、加圧部材が進退した距離から把握することができない。
【0007】
そこで、本発明は、保圧解除工程時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測する異常予測システム、異常予測装置、異常予測方法、プログラム及び学習済みモデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る異常予測システムは、成形品を成形する成形装置と、前記成形品の異常を予測する異常予測装置と、を備える異常予測システムであって、前記成形装置は、内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、前記ゲートとの距離がそれぞれ異なる位置において、前記キャビティ内の前記成形材料の圧力を検出する複数の圧力センサと、を有し、前記異常予測装置は、前記保圧解除動作後に、前記複数の圧力センサによりそれぞれ検出される複数の圧力に基づいて、評価値を取得するデータ取得部と、前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測部と、
を有する、異常予測システムである。
【0009】
発明者らは、鋭意研究の結果、ゲートとの距離がそれぞれ異なる複数の圧力センサによりキャビティ内の圧力をそれぞれ検出すると、保圧解除動作時においてゲートがシールされている場合には、保圧解除動作後の複数の圧力センサ間の圧力にほとんど差異が生じないのに対し、保圧解除動作時においてゲートがシールされていない場合には、保圧解除動作後の複数の圧力センサ間の圧力に差異が生じることを発見した。
【0010】
そこで、本発明に係る異常予測システムは、複数の圧力センサによりそれぞれ検出される複数の圧力に基づいて評価値を取得し、当該評価値に基づいて保圧解除動作時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測するための予測情報を取得する。これにより、成形装置に設けられた圧力センサに基づいて取得される情報から、成形品の異常を予測することが可能となる。
【0011】
(2)好ましくは、前記評価値は、前記複数の圧力の差分又は偏差に関する第1評価値と、前記複数の圧力の時間変化に関する値の差分又は偏差に関する第2評価値と、前記複数の圧力の時間積分に関する値の差分又は偏差に関する第3評価値と、の少なくともひとつを含む。
【0012】
第1評価値R1、第2評価値R2又は第3評価値R3の値が大きいほど、保圧解除動作時においてゲートがシールされていない可能性が高い。このように、ゲートシールの有無と相関を有する値を評価値とすることで、ゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測することができる。
【0013】
(3)好ましくは、前記異常予測部は、前記成形品の状態が正常な時に取得される評価値に基づいて生成される基準値よりも、予測対象となる前記成形品の成形時に取得される前記評価値の方が大きくなる場合に、前記成形品に異常が発生していることを示す前記予測情報を取得する。このように構成することで、評価値と基準値との比較により、成形品の異常を容易に予測することができる。
【0014】
(4)好ましくは、前記異常予測部は、前記評価値と前記成形品の異常との相関関係を機械学習させた学習済みモデルへ前記評価値を入力することで、前記予測情報を取得し、前記学習済みモデルの説明変数は、前記評価値を含み、前記学習済みモデルの目的変数は、前記成形品の寸法値、前記成形品のボイドに関する値、又は前記成形品の外観に関する値を含む。機械学習を用いることで、成形条件にばらつきがある状態であっても、より正確に成形品の異常を予測することができる。
【0015】
(5)好ましくは、前記複数の圧力センサは、前記キャビティのうち前記成形材料が合流するウェルド領域よりも前記ゲートに近い位置に設けられる第1圧力センサと、前記ゲートよりも前記ウェルド領域に近い位置に設けられる第2圧力センサと、を有する。
【0016】
このように、複数の圧力センサをゲート側とウェルド領域側とに離して設置することで、ゲートがシールされていないことに起因する圧力の差分をより大きくすることができる。この結果、より精度良く異常を予測することができる。
【0017】
(6)本発明に係る異常予測装置は、成形装置により成形される成形品の異常を予測する異常予測装置であって、前記成形装置は、内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、前記ゲートとの距離がそれぞれ異なる位置において、前記キャビティ内の前記成形材料の圧力を検出する複数の圧力センサと、を有し、前記異常予測装置は、前記保圧解除動作後に、前記複数の圧力センサによりそれぞれ検出される複数の圧力に基づいて、評価値を取得するデータ取得部と、前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測部と、を備える、異常予測装置である。
【0018】
本発明に係る異常予測装置は、複数の圧力センサによりそれぞれ検出される複数の圧力に基づいて評価値を取得し、当該評価値に基づいて保圧解除動作時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測するための予測情報を取得する。これにより、成形装置に設けられた圧力センサに基づいて取得される情報から、成形品の異常を予測することが可能となる。
【0019】
(7)本発明に係る異常予測方法は、内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、を備える成形装置により成形される成形品の異常を予測する異常予測方法であって、前記保圧解除動作後に、前記ゲートとの距離がそれぞれ異なる位置において前記キャビティ内の前記成形材料の圧力を検出する複数の圧力センサにより検出された複数の圧力に基づいて、評価値を取得するデータ取得工程と、前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測工程と、を備える、異常予測方法である。
【0020】
本発明に係る異常予測方法によれば、複数の圧力センサによりそれぞれ検出される複数の圧力に基づいて評価値を取得し、当該評価値に基づいて保圧解除動作時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測するための予測情報を取得する。これにより、成形装置に設けられた圧力センサに基づいて取得される情報から、成形品の異常を予測することが可能となる。
【0021】
(8)本発明に係るプログラムは、内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、を備える成形装置により成形される成形品の異常を予測するためのプログラムであって、前記保圧解除動作後に、前記ゲートとの距離がそれぞれ異なる位置において前記キャビティ内の前記成形材料の圧力を検出する複数の圧力センサにより検出された複数の圧力に基づいて、評価値を取得するデータ取得工程と、前記評価値に基づいて、前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する前記成形品の異常を予測するための予測情報を取得する異常予測工程と、をコンピュータ装置に実行させる、プログラムである。
【0022】
本発明に係るプログラムを実行すれば、複数の圧力センサによりそれぞれ検出される複数の圧力に基づいて評価値を取得し、当該評価値に基づいて保圧解除動作時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測するための予測情報を取得する。これにより、成形装置に設けられた圧力センサに基づいて取得される情報から、成形品の異常を予測することが可能となる。
【0023】
(9)本発明に係る学習済みモデルは、内部にキャビティを形成し、前記キャビティ側に開口するゲートを有する金型部と、前記ゲートを経由して、前記キャビティへ溶融状態の成形材料を充填する充填動作と、前記キャビティに充填された前記成形材料の圧力を保持する保圧動作と、前記成形材料の圧力の保持を解除する保圧解除動作と、を行う射出部と、を備える成形装置により成形される成形品の前記保圧解除動作時に前記ゲートがシールされていないことに起因する異常を予測するための学習済みモデルであって、説明変数は、前記保圧解除動作後に、前記ゲートとの距離がそれぞれ異なる位置において前記キャビティ内の前記成形材料の圧力を検出する複数の圧力センサにより検出された複数の圧力に基づいて取得される評価値を含み、目的変数は、前記成形品の寸法値、前記成形品のボイドに関する値、又は前記成形品の外観に関する値を含む、学習済みモデルである。
【0024】
本発明に係る学習済みモデルに複数の圧力センサによりそれぞれ検出される複数の圧力に基づいて評価値を入力すれば、保圧解除動作時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測するための予測情報を取得することができる。これにより、成形装置に設けられた圧力センサに基づいて取得される情報から、成形品の異常を予測することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、保圧解除工程時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る異常予測システムを模式的に示すブロック図である。
図2図1に係る成形装置を概念的に示す説明図である。
図3図1に係る成形装置を概念的に示す説明図である。
図4】充填工程の終了時の様子を模式的に示す金型部の断面図である。
図5図4の矢印Vの切断線により切断した金型部を示す断面図である。
図6図4の矢印VIの切断線により切断した金型部を示す断面図である。
図7】圧力の時系列データを示すグラフの一例である。
図8】正常時における、保圧工程の開始及び終了時の様子を模式的に示す説明図である。
図9】異常時における、保圧工程の開始及び終了時の様子を模式的に示す説明図である。
図10】第1実施形態に係る学習装置の機能構成を示すブロック図である。
図11】第1実施形態に係る評価値を模式的に説明するグラフである。
図12】第1実施形態に係る異常予測装置の機能構成を示すブロック図である。
図13】第2実施形態に係る異常予測システムを模式的に示すブロック図である。
図14】第2実施形態に係る異常予測装置の機能構成を示すブロック図である。
図15】変形例に係る圧力センサの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
<異常予測システムの全体構成>
図1は、第1実施形態に係る異常予測システム10を模式的に示すブロック図である。異常予測システム10は、複数の成形装置20と、学習装置30と、異常予測装置40と、入力部50と、表示部60とを備える。
【0029】
成形装置20、学習装置30、異常予測装置40、入力部50及び表示部60は、それぞれ無線又は有線により通信可能に設けられている。学習装置30及び異常予測装置40は、演算部(例えば、CPU、GPU等)と、記憶部(例えば、HDD、SSD等)とを有する情報処理装置(コンピュータ装置)により構成されている。学習装置30及び異常予測装置40は、同一の情報処理装置により構成されてもよいし、別々の情報処理装置により構成されてもよい。
【0030】
本実施形態では複数の成形装置20が1個の学習装置30及び1個の異常予測装置40に接続され、学習装置30及び異常予測装置40は複数の成形装置20から送信される各種のデータに基づいて学習及び異常予測を行う。なお、成形装置20は学習装置30及び異常予測装置40と1対1で対応していてもよい。すなわち、異常予測システム10において、成形装置20は1個であってもよいし、学習装置30及び異常予測装置40は複数備えられていてもよい。
【0031】
入力部50は、例えばキーボードやマウスであり、作業者からの各種の入力を受付ける。表示部60は、例えばディスプレイやスピーカであり、異常予測システム10における各種の情報を表示する。入力部50及び表示部60は、例えばタッチパネルのように一体となっていてもよい。また、入力部50及び表示部60は、携帯型の端末装置として、成形装置20、学習装置30及び異常予測装置40から離れた場所に移動可能に設けられていてもよい。
【0032】
<成形装置の概略構成>
図2及び図3は、成形装置20を概念的に示す説明図である。図2及び図3において、断面として示す部分にはハッチングを付す。成形装置20は、ベッド21と、射出部22と、型締め部23と、金型部24と、複数の圧力センサ25a、25bと、温度センサ26と、制御盤27とを有する。図2は、金型部24が開放されている状態の成形装置20を示しており、図3は、金型部24が組み合わされている状態の成形装置20を示している。成形装置20は、型締め式の射出成形を行う装置である。
【0033】
制御盤27は、制御部271と、通信部272とを有する。制御部271は成形装置20の各駆動部(モータ237等)と電気的に接続し、当該各駆動部へ動作指令を出力する。また、制御部271は成形装置20の各センサ(圧力センサ25a等)と電気的に接続し、当該各センサにより検出された信号が制御部271へ入力される。制御部271は、演算部(例えば、CPU、GPU等)と、記憶部(例えば、HDD、SSD等)とを有する情報処理装置により構成されている。
【0034】
通信部272は、異常予測システム10の他の各部(学習装置30等)と通信を行う。通信部272は、例えば、当該各センサにより検出された信号を学習装置30又は異常予測装置40へ送信する。また、通信部272は、後述の判定情報及び予測情報を異常予測装置40から受信する。
【0035】
型締め部23は、固定盤231と、可動盤232と、タイバー233と、ボールねじ234と、支持盤235と、型締め力センサ236と、モータ237とを有する。固定盤231及び支持盤235は、ベッド21に固定されている。支持盤235はボールねじ234を支持している。ボールねじ234はモータ237と接続している。制御部271の動作指令によりモータ237が回転されると、ボールねじ234は移動する。ボールねじ234のうち、モータ237と接続されている端部とは反対側の端部には、可動盤232が固定されている。
【0036】
ここで、成形装置20において、ボールねじ234が移動する方向を「軸方向」と称する。ボールねじ234に対してモータ237が位置する側を軸方向の「一方側」と称し、ボールねじ234に対して可動盤232が位置する側を軸方向の「他方側」と称する。
【0037】
可動盤232は、ボールねじ234の移動に伴って、軸方向に移動する。可動盤232には、軸方向に貫通している貫通孔232aが形成されている。タイバー233は、軸方向一方側の端部が支持盤235に固定され、軸方向他方側の端部が固定盤231に固定されている。タイバー233は可動盤232の貫通孔232aに挿入されている。これにより、タイバー233は、可動盤232の軸方向の移動を案内する。
【0038】
型締め力センサ236は、ボールねじ234から支持盤235に加えられる圧力(型締め力の反力)を検出する。型締め力センサ236は、圧力に関する検出信号を、制御部271に出力する。なお、型締め力センサ236は、後述の金型部24における型締め力を検出できる位置であれば、他の位置に設置されていてもよい。固定盤231には、軸方向他方側に径が広がる貫通孔231aが形成されている。貫通孔231aには、後述のシリンダ222が挿入される。
【0039】
金型部24は、複数の金型241、242を有する。金型241は、可動盤232に固定されている。ボールねじ234が軸方向に移動すると、可動盤232とともに金型241も軸方向に移動する。すなわち、金型241は可動金型である。金型242は、固定盤231に固定されている。すなわち、金型242は固定金型である。金型242には、流路243が形成されている。
【0040】
図3を参照する。ボールねじ234により金型241が軸方向他方側に移動し、金型241が金型242に接触すると(すなわち、複数の金型241、242が組み合わされると)、金型241、242の間にはキャビティC1が形成される。本実施形態のキャビティC1は、成形材料が充填される円環状の空間である。
【0041】
図2を参照する。射出部22は、ホッパ221と、シリンダ222と、スクリュ223と、ボールねじ225と、モータ226と、与圧センサ227と、移動量センサ228と、ヒータ229とを有する。ホッパ221は、シリンダ222と接続しており、シリンダ222内に成形材料を供給する。シリンダ222は軸方向に延びる中空の円筒形状を有する部材である。シリンダ222の軸方向一方側の端部は、径方向一方側の最端に近づくにつれて径が狭くなっており、シリンダ222の軸方向一方側の最端にはノズル224が設けられている。ノズル224は、金型242の流路243と接続している。
【0042】
スクリュ223は、シリンダ222の軸方向他方側の端部からシリンダ222内に挿入されている。スクリュ223の軸方向他方側にはボールねじ225が接続されており、ボールねじ225の軸方向他方側にはモータ226が接続されている。制御部271の動作指令によりモータ226が回転すると、ボールねじ225は軸方向に移動する。これに伴いスクリュ223も軸方向に移動する。このとき、スクリュ223は、軸方向を中心軸とする周方向に回転する。
【0043】
与圧センサ227は、ボールねじ225からモータ226へ加えられる圧力(スクリュ223の押込み力の反力)を検出する。すなわち、与圧センサ227は、スクリュ223が成形材料から受ける圧力を検出する。与圧センサ227は、圧力に関する検出信号を、制御部271に出力する。なお、与圧センサ227は、スクリュ223の押込み力を検出できる位置であれば、他の位置に設置されていてもよい。
【0044】
移動量センサ228は、ボールねじ225の軸方向の移動量を検出する。移動量センサ228は、移動量に関する検出信号を、制御部271に出力する。なお、移動量センサ228は、ボールねじ225の軸方向の移動量を検出できる位置であれば、他の位置に設置されていてもよい。
【0045】
ヒータ229は、例えば抵抗線をコイル状に巻回した抵抗加熱ヒータである。ヒータ229は、制御部271の動作指令により当該抵抗線へ電流が流されることで、抵抗熱によりシリンダ222内を加熱する。
【0046】
複数の圧力センサ25a、25bは、金型241、242のうちキャビティC1に露出する面にそれぞれ設置されている。より具体的には、圧力センサ25aは、キャビティC1に露出する面のうち後述するゲート243b(図4)に近接する面に設置されている。また、圧力センサ25bは、キャビティC1のうち成形材料が合流するウェルド領域に露出する面に設置されている。
【0047】
なお、圧力センサ25a、25bの位置は上記に限定されないが、圧力センサ25aはウェルド領域よりもゲート243bに近い位置に設けられ、圧力センサ25bはゲート243bよりもウェルド領域に近い位置に設けられていることが好適である。すなわち、圧力センサ25aは、ゲート243bとウェルド領域との中間よりもゲート243b側に位置し、圧力センサ25bは、当該中間よりもウェルド領域側に位置することが好適である。
【0048】
また、本実施形態において、2個の圧力センサ25a、25bは金型242に設けられるが、これに限定されない。圧力センサは3個以上であってもよいし、金型241に設けられてもよい。
【0049】
複数の圧力センサ25a、25bは、キャビティC1内の圧力を検出する。特に、圧力センサ25a、25bは、キャビティC1内に供給された成形材料(溶融状態もしくは固化状態、又は溶融状態と固化状態とが混在した状態)の圧力を検出する。圧力センサ25a、25bは、圧力に関する検出信号を制御部271に出力する。
【0050】
温度センサ26は、金型241に内蔵されており、金型241の温度を検出する。温度センサ26は、温度に関する検出信号を制御部271に出力する。なお、温度センサ26は、金型241のうちキャビティC1に面する領域に設置されてもよいし、金型242に設置されてもよい。また、温度センサ26は、シリンダ222内に設置されてもよい。すなわち、温度センサ26は、キャビティC1内に供給される成形材料の温度を直接的に又は間接的に検出することができればよい。
【0051】
<成形装置による製造方法>
図2から図5を適宜参照しながら、成形装置20による成形品の製造方法について説明する。成形装置20による成形品の製造方法は、前工程ST1と、型締め工程ST2と、充填工程ST3と、保圧工程ST4と、保圧解除工程ST5と、離型工程ST6とが、この順で実行される。本実施形態において、成形品は、転がり軸受に用いられる樹脂製の保持器である。しかしながら、これは成形品の一例であり、本発明に係る成形装置により成形される成形品は、その他の形状及び用途の成形品であってもよい。
【0052】
図2を参照する。はじめに、前工程ST1が実行される。前工程ST1では、モータ226によりスクリュ223が回転し、ヒータ229によりシリンダ222内が加熱されている状態で、ホッパ221から成形材料のペレットがシリンダ222内へ供給される。成形材料のペレットは、スクリュ223の回転に伴う摩擦熱と、ヒータ229による加熱とにより、シリンダ222内において溶融し、溶融状態の成形材料L1となる。シリンダ222内に、所定量の成形材料L1が貯留されると、前工程ST1が終了する。
【0053】
次に、型締め工程ST2が開始されると、図2の状態の成形装置20において、制御部271の動作指令によりボールねじ234が軸方向他方側に移動し、図3に示すように金型241を金型242に接触させる。このように金型241と金型242とを組み合わせた状態で、さらにボールねじ234が軸方向他方側へ所定の型締め力により金型241を金型242へ押さえつける。すなわち、複数の金型241、242を締め付ける。これにより、複数の金型241、242の間に円環状のキャビティC1が形成される。以上により、型締め工程ST2が終了する。
【0054】
ここで、型締め力は、成形条件のひとつであり、金型241、242の形状等、その他の成形条件に応じて決定される。型締め力は、型締め力センサ236により検出される。
【0055】
続いて、充填工程ST3が開始されると、上記の型締め力を維持している状態で、ボールねじ225が軸方向一方側へ移動する。これにより、スクリュ223が軸方向一方側へ成形材料L1を押し、シリンダ222のノズル224から金型242の流路243を介してキャビティC1へ溶融状態の成形材料L1が射出される(充填動作)。
【0056】
図4は、充填工程ST3の終了時の様子を模式的に示す金型部24の断面図である。図5は、図4の矢印Vの切断線により切断した金型部24の断面図である。図6は、図4の矢印VIの切断線により切断した金型部24の断面図である。
【0057】
図4を参照する。流路243は、ノズル224側に開口する第1開口部243aと、キャビティC1側に開口する第2開口部243bとを有する。第2開口部243bは、流路243からキャビティC1内へ成形材料L1を供給するゲートとして機能するため、以下、「ゲート243b」と称する。
【0058】
図5を参照する。本実施形態において、キャビティC1は環状に形成されている。また、本実施形態において、圧力センサ25aは、キャビティC1のうちゲート243bに最も近接する領域に面するように設置されている。例えば、圧力センサ25aは、図5のように軸方向にキャビティC1を見たとき、ゲート243bが向かう方向(本実施形態ではキャビティC1の径方向)に近接して設置されている。
【0059】
圧力センサ25bは、キャビティC1のうちゲート243bから最も遠い領域に面するように設置されている。当該領域は、ゲート243bから供給される成形材料L1が最後に到達する領域である。また、本実施形態のように環状のキャビティC1の場合、ゲート243bから供給される成形材料L1は、ゲート243bを始点にキャビティC1を時計回りに流れるとともに、ゲート243bを始点にキャビティC1を反時計回りにも流れる。そして、時計回り及び反時計回りにそれぞれ流れる成形材料L1が、ゲート243bから最も遠い領域において合流する。このため、当該領域は、ウェルド領域である。
【0060】
図6を参照する。本実施形態において、ゲート243bは円形状の内周面を有する。また、ゲート243bは、流路243の他の部分の内径よりも小さい内径を有する。このように構成することで、成形品を成形した際の良好なゲートカット(キャビティC1部分の成形品と、流路243部分のランナーとの接続を切断すること)を実現することができる。一方で、ゲート243bは流路243の他の部分よりも内径が小さいために、摩耗しやすいという特性を有する。ゲート243bの摩耗は、成形品の品質に特に影響を及ぼすため、ある程度ゲート243bが摩耗すると、金型部24を交換する必要が生じる。
【0061】
図4図5及び図6に示すように、流路243からキャビティC1へ成形材料L1が供給され、キャビティC1内がすべて成形材料L1により充填されると、充填工程ST3が終了する。充填工程ST3において、溶融状態の成形材料L1は、金型241、242の表面付近から徐々に固化しながらキャビティC1内へ供給される。
【0062】
図3を参照する。続いて、保圧工程ST4が開始されると、スクリュ223がさらに軸方向一方側へ成形材料L1を押し、シリンダ222のノズル224からキャビティC1へ成形材料L1がさらに射出される。これにより、キャビティC1内に充填されている成形材料L1に所定の圧力(例えば、数十~数百MPa)が印加される。そして、スクリュ223はこの状態を所定時間保持することで、所定の圧力を所定時間(例えば、数秒間)だけ成形材料L1に与え続ける(保圧動作)。スクリュ223がキャビティC1へ成形材料L1を押し出す圧力(与圧)は、与圧センサ227により検出される。
【0063】
続いて、保圧解除工程ST5が開始されると、スクリュ223は軸方向他方側へ移動し、成形材料L1の圧力の保持を解除する(保圧解除動作)。保圧解除動作後、所定時間が経過してキャビティC1内の成形材料L1の圧力が所定値以下になると、保圧解除工程ST5が終了する。その後、離型工程ST6が開始されると、金型部24が冷却されることで、キャビティC1内の成形材料L1が固まり、成形品が形成される。そして、ボールねじ234が軸方向一方側へ移動し、金型241が金型242から離れることで、成形品が取り出される。なお、金型部24の冷却は、保圧解除工程ST5と同時に開始されてもよい。
【0064】
図7は、充填工程ST3、保圧工程ST4及び保圧解除工程ST5において、成形装置20の各センサにより検出される圧力の時系列データを示すグラフの一例である。図7(a)は保圧工程ST4においてゲートシールがなされた時(正常時)のグラフを示し、図7(b)は保圧工程ST4においてゲートシールがなされなかった時(異常時)のグラフを示す。図7において、縦軸は圧力Pであり、横軸は時間tである。グラフ線F0は、与圧センサ227により検出される圧力の時系列データである。
【0065】
図7(a)のグラフ線Fa1は正常時に圧力センサ25aにより検出される圧力の時系列データであり、グラフ線Fb1は正常時に圧力センサ25bにより検出される圧力の時系列データである。図7(b)のグラフ線Fa2、Fb2は、それぞれ異常時に圧力センサ25a、25bにより検出される圧力の時系列データである。
【0066】
本実施形態において、時間の原点(t=0)は、制御部271がモータ226へスクリュ223の軸方向他方側への移動を動作指令した時点である。すなわち、充填工程ST3において射出部22が金型部24へ成形材料L1の供給を開始した時点である。なお、時間の原点(t=0)はこれに限られず、与圧センサ227が所定の圧力を検出した時点であってもよいし、移動量センサ228が所定の移動量を検出した時点であってもよい。
【0067】
グラフ線F0に着目する。グラフ線F0は、正常時、異常時にかかわらず、成形条件(型締め力、与圧、保圧時間等)が同一であれば、略同一のグラフが取得される傾向がある。このため、グラフ線F0は図7(a)、図7(b)においてほとんど差異がなく、与圧センサ227により正常時であるか異常時であるかを判断するのは困難である。
【0068】
グラフ線F0は、充填工程ST3において圧力Ps1まで立ち上がる。ここで、圧力Ps1は、保圧工程ST4の「設定圧力」である。すなわち、保圧工程ST4の間、与圧センサ227により検出される圧力がPs1に維持されるように、制御部271がモータ226をフィードバック制御する。このため、保圧工程ST4の間、与圧センサ227により検出される圧力はPs1で略一定となる。保圧工程ST4は、時点X1に開始され、時点X2に終了する。すなわち、保圧時間は、(X2-X1)である。その後、保圧解除工程ST5において圧力は低下する。保圧解除工程ST5は、時点X2から開始される。すなわち、保圧解除動作は、時点X2に実行される。
【0069】
次に、図7(a)のグラフ線Fa1、Fb1に着目する。グラフ線Fa1、Fb1は、充填工程ST3においてグラフ線F0が立ち上がった後に立ち上がり、保圧工程ST4において圧力がそれぞれのピークまで上昇し、その後圧力が減少していき、保圧解除工程ST5において圧力が急激に低下する。正常時の保圧工程ST4及び保圧解除工程ST5において、グラフ線Fa1、Fb1にほとんど差異はなく、複数の圧力センサ25a、25bによりそれぞれ検出される圧力の時系列データはほとんど等しくなる。
【0070】
次に、図7(b)のグラフ線Fa2、Fb2に着目する。グラフ線Fb2は、正常時のグラフ線Fb1とほとんど傾向が変わらない。これに対し、グラフ線Fa2では、グラフ線Fa1と異なり、保圧解除工程ST5において圧力がより急激に低下している。
【0071】
このように、異常時において、グラフ線Fb2の保圧解除動作後の圧力の傾きよりも、グラフ線Fa2の保圧解除動作後の圧力の傾きの方が、負の方向に大きくなる傾向がある。この原因について、図8及び図9を用いて説明する。
【0072】
図8は、図5のゲート243bを含む領域のゲートシール正常時の様子を説明する図である。図8(a)は、充填工程ST3が終了し、保圧工程ST4が開始される時点(時点X1)の様子を示している。図8(b)は、保圧工程ST4が終了し、保圧解除工程ST5が開始される時点(時点X2)の様子を示している。
【0073】
ゲート243bの内径d1は、成形品の品質に影響を及ぼさない正常な内径である。時点X1において、キャビティC1内及び流路243内の成形材料L1はほとんど溶融状態である。保圧工程ST4の間、成形材料L1は、金型242により熱が奪われることで、流路243の縁の部分において一部が凝固し、凝固体S1となる。そして、保圧工程ST4が終了するまでに凝固体S1がゲート243bを全て覆い、図8(b)に示すようにキャビティC1と流路243とが凝固体S1により寸断される「ゲートシール状態」となる。
【0074】
ゲートシール状態になった後、保圧解除動作が行われることで、キャビティC1内の成形材料L1はキャビティC1内に留まったまま凝固及び収縮する。これにより、保圧解除動作後のゲート243b付近の成形材料L1の圧力(圧力センサ25aの圧力)とウェルド領域付近の成形材料L1の圧力(圧力センサ25bの圧力)は、図7のグラフ線Fa1、Fb1に示されるように、同じように減少する。
【0075】
図9は、図5のゲート243bを含む領域のゲートシール異常時の様子を説明する図である。図9(a)は時点X1の様子を示し、図9(b)は時点X2の様子を示している。ゲート243bの内径d2は、正常時の内径d1よりも大きく、成形品の品質に影響を及ぼす異常な内径である。例えば、摩耗等の経年劣化により初期の内径d1が異常な内径d2まで広がる場合がある。
【0076】
図9(a)に示すように、時点X1(保圧工程ST4の開始時)において、キャビティC1内及び流路243内の成形材料L1はほとんど溶融状態である。保圧工程ST4の間、成形材料L1は、金型242により熱が奪われることで、流路243の縁の部分において一部が凝固し、凝固体S1となる。しかしながら、内径d2が正常時よりも大きいため、保圧工程ST4が終了するまでに凝固体S1はゲート243bを全て覆いつくせない。このため、図9(b)に示すように、ゲート243bの凝固体S1に隙間G1が残り、キャビティC1と流路243とが凝固体S1により寸断されない。このような状態を、「ゲートシール未了状態」と称する。
【0077】
なお、図9では、ゲート243bが摩耗により広がることでゲートシール未了状態となる例を挙げたが、ゲートシール未了状態はその他の原因によっても生じうる。例えば、成形材料L1の粘度や含有水分のばらつき、成形装置20の周囲の温度、湿度の違いにより、成形材料L1が正常時よりも凝固しにくくなる場合がある。このような場合、ゲート243bが正常な内径d1であるときでも、保圧時間中にゲートシールがなされず、時間X2においてゲートシール未了状態となる場合がある。
【0078】
そして、ゲートシール未了状態のまま、保圧解除動作が行われることで、キャビティC1内の成形材料L1が流路243へ(すなわち、矢印AR1の方向へ)逆流する。また、キャビティC1内に残った成形材料L1は、凝固及び収縮する。成形材料L1が流路243に逆流することに起因する圧力変化は、ゲート243bに近いほど顕著に生じる。このため、ゲートシール未了状態のまま保圧解除動作が行われると、キャビティC1内にはゲート243bに近いほど圧力が低くなる圧力の分布が生じる。
【0079】
すなわち、図7(b)のグラフ線Fa2に示されるように、ゲート243bにより近い圧力センサ25aが検出する圧力は、成形材料L1の流路243への逆流により保圧解除動作後に急激に減少する。これに対し、図7(b)のグラフ線Fb2に示されるように、ゲート243bからより遠い圧力センサ25bが検出する圧力は、ウェルド領域の成形材料L1がゲート243b付近の成形材料L1と比べて逆流しにくいため、保圧解除動作後にグラフ線Fa2ほど急激には減少しない。
【0080】
ゲートシール未了状態のまま保圧解除動作が行われると、成形材料L1の流路243への逆流がある分だけ、キャビティC1内の成形材料L1の充填量が減少するため、成形品の寸法、重量、品質(例えば、強度)のばらつきが大きくなるという悪影響が生じる。また、成形材料の充填量が減少すると、成形品にボイド(成形品の内部に生じる意図しない空間)、ヒケ(成形品の外面に生じる意図しない凹み)、ソリ(成形品の意図しない変形)、といった不良が生じるおそれがある。このため、ゲート243bの異常を成形装置20においてセンシングし、自動的に判定できる技術が重要となる。
【0081】
以上に説明したように、発明者らは、鋭意研究の結果、ゲート243bとの距離がそれぞれ異なる複数の圧力センサ25a、25bによりキャビティC1内の圧力をそれぞれ検出すると、時点X2においてゲートシール状態の場合には、保圧解除動作後の圧力センサ25a、25b間の圧力にほとんど差異が生じないのに対し、時点X2においてゲートシール未了状態の場合には、保圧解除動作後の圧力センサ25a、25b間の圧力に差異が生じることを発見した。そして、発明者らは、当該差異が生じるか否かに基づいて、時点X2においてゲートシールができているか否かを判定する発明を着想した。
【0082】
そこで、本実施形態に係る異常予測システム10では、学習装置30において、複数の圧力センサ25a、25bの圧力に基づいて取得される後述の評価値Rと、成形品の状態との相関関係を学習させた学習済みモデルTm1を生成し、異常予測装置40において学習済みモデルTm1と評価値Rとに基づいて、保圧解除工程ST5時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測するための予測情報を取得する。以下、学習装置30及び異常予測装置40について説明する。
【0083】
<学習装置の説明>
図10は、本実施形態に係る学習装置30の機能構成を示すブロック図である。学習装置30は、訓練データ取得部31と、学習演算部32と、成形情報記憶部33と、学習済みモデル記憶部34とを有する。これらの各部は、CPU等の演算部とHDD等の記憶部とを有するコンピュータ装置により実現される。
【0084】
成形情報記憶部33には、各種の成形情報が記憶されている。成形情報は、例えば各種の第1情報と第2情報とを対応付けしたテーブル形式の情報である。例えば、第1情報が金型の種類である場合、第2情報には金型の各種寸法、キャビティC1の容積が含まれる。第1情報が成形材料の種類又はロット番号である場合、第2情報には成形材料の物性(粘度、含有水分等)が含まれる。
【0085】
訓練データ取得部31は、異常予測システム10の各部から訓練データに関する情報を取得する。訓練データは、上記の成形情報と、後述の評価値R及び成形品情報とを含む。訓練データは、例えば学習対象の成形品を成形した際に、異常予測システム10の各部(例えば、圧力センサ25a、25b)において検出されるデータに基づいて取得される。
【0086】
訓練データ取得部31は、学習対象の成形品を成形装置20にて実際に成形した際に、複数の圧力センサ25a、25bにおいてそれぞれ検出された時点X2(保圧解除動作時点)以降の圧力の時系列データに基づいて、評価値Rを取得する。
【0087】
図11は、本実施形態に係る評価値Rについて模式的に説明するグラフである。図11(a)は、図7(b)の時点X2以降のグラフ線Fa2、Fb2を拡大して示すグラフである。図11(b)は、グラフ線Fa2、Fb2の差分Fc(t)(ここで、Fc(t)=Fb2-Fa2)を示すグラフである。評価値Rは、第1評価値R1、第2評価値R2又は第3評価値R3を含む。なお、訓練データ取得部31は、第1評価値R1、第2評価値R2及び第3評価値R3のすべてを取得してもよいし、いずれか2つを取得してもよい。
【0088】
第1評価値R1は、複数の圧力センサ25a、25bによりそれぞれ検出される複数の圧力の差分に関する値である。例えば、第1評価値R1は、時点X2から所定時間t1が経過した時点X5(X5=X2+t1)における圧力センサ25aの圧力Pa2と、時点X5における圧力センサ25bの圧力Pb2との差分Fc(X5)(ここで、Fc(X5)=Pb2-Pa2)である。
【0089】
なお、第1評価値R1は、時間X2後の複数の時点X3、X4、X5における圧力の差分Fc(X3)、Fc(X4)、Fc(X5)の平均値又は中央値であってもよい。また、第1評価値R1は、時点X2から時点X5までの差分Fc(t)を時間積分した値∫Fc(t)dtであってもよい。
【0090】
ここで、図11では、圧力の時系列データを曲線として表示しているが、実際には圧力の時系列データは複数の点により構成されている。そして、所定時点の点が他の隣接する点よりも極端に異なる値をとる「スパイクノイズ」が発生する場合がある。例えば、時点X5においてグラフ線F2aに増加方向のスパイクノイズが生じて、偶然、圧力の差分Fc(X5)が小さくなる場合がある。このような場合、正確な第1評価値R1を取得できない。これに対し、保圧解除動作後の圧力の時系列データにおいて、所定時間ごとに複数の差分Fc(X3)、Fc(X4)、Fc(X5)を取得し、当該複数の差分の平均値又は中央値を第1評価値R1とすることで、スパイクノイズの影響を低減することができる。同様に、差分Fc(t)を時間積分した値∫Fc(t)dtを第1評価値R1とすることによっても、スパイクノイズの影響を低減することができる。
【0091】
第2評価値R2は、複数の圧力センサ25a、25bによりそれぞれ検出される複数の圧力の時間変化に関する値の差分に関する値である。時間変化に関する値は、例えば傾きや変化量である。例えば、第2評価値R2は、圧力センサ25aにより検出される圧力の時点X2から時点X5までの変化量Δa1(=Pa2-Pa1)と、圧力センサ25bにより検出される圧力の同時点間の変化量Δb1(=Pb2-Pb1)との差分(Δb1-Δa1)である。
【0092】
なお、第2評価値R2は、圧力センサ25aにより検出される圧力の時点X2から時点X3まで、時点X3から時点X4まで、時点X4から時点X5までのそれぞれの変化量Δa2、Δa3、Δa4の平均値AvΔa(又は中央値)と、圧力センサ25bにより検出される圧力の同時点間のそれぞれの変化量Δb2、Δb3、Δb4の平均値AvΔb(又は中央値)と、の差分(AvΔb-AvΔa)であってもよい。また、訓練データ取得部31は、第2評価値R2を算出する際、上記の変化量に代えて、圧力の傾き(例えば、Δa1/t1)を用いてもよい。
【0093】
第3評価値R3は、複数の圧力センサ25a、25bによりそれぞれ検出される複数の圧力の時間積分に関する値の差分に関する値である。例えば、第3評価値R3は、圧力センサ25aにより検出される圧力の時点X2から時点X5までの時間積分値∫Fa2dtと、圧力センサ25bにより検出される圧力の同時点間の時間積分値∫Fb2dtとの差分(∫Fb2dt-∫Fa2dt)である。
【0094】
時間積分値∫Fa2dtは、厳密には図11(a)のグラフにおいてグラフ線Fa2の時点X2から時点X5までの区間で囲まれる面積であるが、時点X2から時点X5までの複数時点Xnにおけるグラフ線Fa2の値(Pan)の和(ΣPan)として算出してもよい。
【0095】
第1評価値R1、第2評価値R2又は第3評価値R3の値が大きいほど、グラフ線Fa2、Fb2の保圧解除動作後の差異が大きく、時点X2においてゲートシール未了状態である可能性が高い。このように、評価値Rには時点X2におけるゲートシール未了状態の有無と相関があるため、評価値Rに基づいて、時点X2におけるゲートシール未了状態の有無を予測することができる。
【0096】
また、訓練データ取得部31は、成形品の寸法値、成形品のボイドに関する値、又は成形品の外観に関する値を、成形品情報として取得する。成形品の寸法値は、例えば成形品の各部の幅、真円度、曲率である。成形品のボイドに関する値は、例えば成形品のボイドの程度を数値化した値(例えば、ボイド3個以上=2、ボイド1個=1、ボイドなし=0)である。成形品の外観に関する値は、例えば成形品の異常な外観(例えば、ヒケ)の程度を数値化した値(例えば、所定面積を超えるヒケあり=2、所定面積以下のヒケあり=1、ヒケなし=0)である。
【0097】
訓練データ取得部31は、作業者の入力により成形品情報を取得する。例えば、成形装置20により学習対象の成形品を成形した後、作業者が測定装置を用いて当該成形品の真円度を計測する。そして、作業者は入力部50に計測した真円度を入力する。これにより、訓練データ取得部31は、成形品の真円度を成形品情報として取得する。なお、測定装置と学習装置30とを通信接続し、測定装置により計測された成形品の寸法値が自動的に訓練データ取得部31に取得されてもよい。
【0098】
また、訓練データ取得部31は、ゲート243bの摩耗状態を示す摩耗情報を、訓練データとして取得してもよい。ゲート243bの摩耗状態は、例えばゲート243bの内径、又はゲート243bの摩耗量である。学習対象の成形品を成形した後、作業者は金型部24を例えば定規により確認し、ゲート243bの内径を計測する。そして、作業者は計測したゲート243bの内径を入力部50に入力する。これにより、訓練データ取得部31は、ゲート243bの内径を摩耗情報として取得する。
【0099】
また、ゲート243bの摩耗量を摩耗情報として取得する場合、はじめに、作業者は、金型部24の初期状態(例えば、1回も成形を行っていない状態)におけるゲート243bの内径(初期内径)を計測する。次に、学習対象の成形品を成形した後、作業者は定規によりゲート243bの内径を測定し、当該内径からゲート243bの初期内径を減算する。これにより、ゲート243bの初期内径からの摩耗量が取得される。そして、作業者は入力部50へゲート243bの摩耗量を入力する。これにより、訓練データ取得部31は、ゲート243bの摩耗量を摩耗情報として取得する。
【0100】
なお、訓練データ取得部31は図示省略する記憶部にゲート243bの初期内径を記憶し、作業者が入力部50に入力したゲート243bの内径と、当該初期内径とに基づいて、訓練データ取得部31がゲート243bの摩耗量を算出するように構成してもよい。
【0101】
また、訓練データ取得部31は、複数の環境値を、訓練データとして取得してもよい。環境値は、例えば、学習対象の成形品を成形した際に、温度センサ26において検出された温度に関する値である。環境値は、学習対象の成形品を成形した際に、図示省略するその他のセンサ(例えば、湿度センサ)において検出された成形装置20の周辺及び成形装置20の内部の環境に関する値をさらに含んでいてもよい。
【0102】
図10を参照する。訓練データ取得部31は、入力部50に作業者が入力する情報と、成形情報記憶部33とに基づいて、成形情報を取得する。例えば、学習対象の成形品を成形する際に、作業者は当該成形品に関する成形材料のロット番号を入力する。訓練データ取得部31は、当該ロット番号に対応する成形材料の物性(例えば、粘度)に関する成形情報を、成形情報記憶部33から取得する。
【0103】
訓練データ取得部31は、例えば学習対象の成形品を1個成形するごとに、1組の訓練データ(当該成形品の成形の際に取得される評価値R、環境値、成形情報、成形品情報及び摩耗情報のセット)を取得する。訓練データ取得部31は、学習対象の成形品を所定回数成形することで、所定回数分の複数組の訓練データを取得する。
【0104】
学習演算部32は、複数組の訓練データに基づいて、教師あり機械学習を行う演算をすることで、評価値R及び成形品情報の相関関係をモデル化した学習済みモデルTm1と、評価値R及び摩耗情報の相関関係をモデル化した学習済みモデルTm2とを生成する。本実施形態では、機械学習モデルとして、畳み込みニューラルネットワーク(CCN:Convolutional Neural Network)を用いるが、その他のモデルを用いてもよい。例えば、データのグループ分けに関するモデルである回帰木モデルであってもよい。
【0105】
具体的には、学習済みモデルTm1を生成する際、評価値R、環境値及び成形情報(これらの情報を「入力情報」と総称する。)を説明変数とし、成形品情報を目的変数とすることで、入力情報と成形品情報との相関関係をモデル化する。すなわち、学習演算部32は、入力情報に入力した際に、当該入力情報に対応する成形品情報を出力層から出力するための中間層を構成する学習済みモデルTm1を生成する。
【0106】
また、学習済みモデルTm2を生成する際、入力情報を説明変数とし、摩耗情報を目的変数とすることで、入力情報と摩耗情報との相関関係をモデル化する。すなわち、学習演算部32は、入力情報に入力した際に、当該入力情報に対応する摩耗情報を出力層から出力するための中間層を構成する学習済みモデルTm2を生成する。
【0107】
なお、学習済みモデルTm1、Tm2を生成する際、入力情報には評価値Rが含まれていればよく、環境値及び成形情報が含まれていなくてもよい。但し、環境値及び成形情報のばらつきが大きい場合や、当該ばらつきによるゲートシールへの影響が大きい場合には、入力情報に対応する成形品情報又は摩耗情報をより正確に予測するために、学習済みモデルTm1、Tm2を生成する際に入力情報に環境値及び成形情報を含ませることが好適である。
【0108】
学習演算部32により生成された学習済みモデルTm1、Tm2は、学習済みモデル記憶部34に記憶される。学習済みモデル記憶部34に記憶された学習済みモデルTm1、Tm2は、学習装置30に新たな情報が入力され、訓練データ取得部31において新たな訓練データが取得されると、当該訓練データの内容に応じて適宜更新される。また、学習済みモデルTm1、Tm2は、学習装置30から後述の異常予測装置40へ送信され、異常予測装置40の学習済みモデル記憶部45にも記憶される。
【0109】
<学習済みモデルの生成方法>
次に、学習装置30による学習済みモデルTm1、Tm2の生成方法について説明する。学習済みモデルTm1、Tm2の生成方法は、訓練データ取得工程と、学習演算工程とを備える。これらの工程は、学習装置30を構成するコンピュータ装置が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0110】
はじめに、訓練データ取得工程が開始されると、訓練データ取得部31は、複数組の訓練データを取得する。例えば、複数の圧力センサ25a、25bにより検出された複数の圧力の時系列データに基づいて、評価値Rを取得する。
【0111】
次に、当該評価値Rが取得された成形品を作業員が実際に検査し、当該検査値が入力部50に入力されることで、訓練データ取得部31は成形品情報を取得する。また、当該成形品を成形した金型部24を作業員が実際に検査し、当該検査値が入力部50に入力されることで、訓練データ取得部31は摩耗情報を取得する。以上により、訓練データ取得工程が終了する。
【0112】
次に、学習演算工程が開始されると、学習演算部32は、複数組の訓練データに基づいて入力情報と成形品情報との対応を学習し、学習済みモデルTm1を生成する。また、学習演算部32は、複数組の訓練データに基づいて入力情報と摩耗情報との対応を学習し、学習済みモデルTm2を生成する。学習済みモデルTm1、Tm2は学習済みモデル記憶部34に記憶される。以上により、学習演算工程が終了する。
【0113】
<異常予測装置の説明>
図12は、本実施形態に係る異常予測装置40の機能構成を示すブロック図である。異常予測装置40は、データ取得部41と、異常予測部42と、出力部43と、成形情報記憶部44と、学習済みモデル記憶部45とを有する。これらの各部は、CPU等の演算部とHDD等の記憶部とを有するコンピュータ装置により実現される。演算部は、記憶部に記憶されているプログラムに基づいて、後述のデータ取得処理と、異常予測処理とを実行する。
【0114】
成形情報記憶部44には、成形情報記憶部33と同様に、各種の第1情報と第2情報とを対応付けしたテーブル形式の成形情報が記憶されている。学習済みモデル記憶部45には、学習装置30により生成された学習済みモデルTm1、Tm2が記憶されている。
【0115】
成形情報記憶部44及び学習済みモデル記憶部45は、コンピュータ装置のうち、学習装置30の成形情報記憶部33及び学習済みモデル記憶部34と同じ記憶領域により実現されてもよいし、別の記憶領域により実現されてもよい。すなわち、学習装置30及び異常予測装置40が、同じ成形情報記憶部33及び学習済みモデル記憶部34を共有するように構成されてもよいし、学習装置30及び異常予測装置40がそれぞれ独立した成形情報記憶部33、44及び学習済みモデル記憶部34、45を有するように構成されてもよい。
【0116】
データ取得部41は、異常予測システム10の各部から異常予測を行うための情報を取得するデータ取得処理を実行する。異常予測を行うための情報は、例えば予測対象の成形品を成形した際に取得される1組の評価値R、環境値及び成形情報である。
【0117】
異常予測部42は、学習済みモデルTm1、Tm2のそれぞれへ、データ取得部41により取得された1組の評価値R、環境値及び成形情報を入力する。これらの入力に基づいて、学習済みモデルTm1は保圧解除工程ST5時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測するための予測情報D1を出力し、学習済みモデルTm2はゲート243bの摩耗状態を予測するための予測情報D2を出力する。
【0118】
予測情報D1、D2は、学習済みモデルTm1、Tm2を生成する際に用いた目的変数に対応する情報である。例えば、目的変数が成形品の真円度である場合、予測情報D1は、成形品の真円度について予測される確率を含む情報となる。より具体的には、予測情報D1は、例えば成形品の真円度について、10μm以下である第1確率と、10μmより長く30μm以下である第2確率と、30μmより大きい第3確率とを含む。一例として、学習済みモデルTm1に1組の評価値R、環境値及び成形情報が入力されると、学習済みモデルTm1は第1確率が10%、第2確率が10%、第3確率が80%である予測情報D1を出力する。予測情報D2についても、同様に出力される。
【0119】
出力部43は、異常予測部42において取得された予測情報D1に基づいて、成形品に異常があるか否かを判定する。また、出力部43は、異常予測部42において取得された予測情報D2に基づいて、ゲート243bの摩耗状態に異常があるか否かを判定する。出力部43は、例えば、所定のしきい値と、予測情報D1に基づいて、成形品の異常を判定する。所定のしきい値は、例えば許容される最大真円度である。
【0120】
例えば、許容される最大真円度が30μmである場合、上記の第1確率~第3確率のうち、第3確率が最も高いときに、出力部43は成形品が異常であることを示す判定情報J1を取得する。また、上記の第1確率~第3確率のうち、第1確率又は第2確率が最も高いときには、出力部43は成形品が正常であることを示す判定情報J1を取得する。
【0121】
また、出力部43は、同様に、予測情報D2に基づいてゲート243bの摩耗状態が異常であるか否かの判定情報J2を取得する。
【0122】
出力部43は、判定情報J1、J2を表示部60及び制御部271に出力する。表示部60には、判定情報J1、J2が表示される。成形品が異常であると判定されている場合や、ゲート243bの摩耗状態が異常であると判定されている場合には、表示部60のディスプレイにおいて赤などの強調色により判定情報J1、J2を表示し、スピーカにおいてアラートを発報するように構成してもよい。
【0123】
また、ゲート243bの摩耗状態が異常であると判定されている場合、制御部271の動作指令により、異常判定されたゲート243bを含む成形装置20を、金型部24が開放した状態で停止させるように構成してもよい。この場合、作業者は表示部60によるアラート等に基づいて、金型部24を点検し、必要に応じて金型部24の交換を行う。
【0124】
なお、本実施形態において、出力部43を設けずに、異常予測部42において得られた予測情報D1、D2をそのまま表示部60に表示するように構成されてもよい。この場合、表示部60に表示された予測情報D1、D2に基づいて、作業者が成形品に異常があるか否か、及びゲート243bの摩耗状態に異常があるか否かを判断するようにしてもよい。
【0125】
<異常予測装置による異常予測方法>
次に、異常予測装置40による異常予測方法を説明する。異常予測方法は、データ取得工程と、異常予測工程とを備える。これらの工程は、異常予測装置40を構成するコンピュータ装置が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0126】
データ取得工程が開始されると、データ取得部41は、予測対象の成形品を成形した際に取得される1組の評価値R、環境値及び成形情報を取得する。以上により、データ取得工程が終了する。
【0127】
次に、異常予測工程が開始されると、はじめに、異常予測部42は、1組の評価値R、環境値及び成形情報を学習済みモデルTm1、Tm2へ入力することで、予測情報D1、D2を取得する。
【0128】
次に、出力部43は、予測情報D1、D2と所定のしきい値に基づいて、判定情報J1、J2を取得する。最後に、出力部43は、判定情報J1、J2を表示部60及び制御部271に出力する。以上により、異常予測工程が終了する。
【0129】
<異常予測システムの作用・効果>
本実施形態に係る異常予測システム10は、保圧解除動作(時点X2)後に、複数の圧力センサ25a、25bによりそれぞれ検出される圧力に基づいて評価値Rを取得し、当該評価値Rと学習済みモデルTm1、Tm2に基づいて成形品の異常を予測するための予測情報D1と、ゲート243bの摩耗状態の異常を予測するための予測情報D2とを取得する。
【0130】
このような構成により、学習済みモデルTm1、Tm2が一旦生成された後は、作業者が逐一成形品や金型部24を検査する必要がなくなり、成形装置20に設けられた各種のセンサ(圧力センサ25a、25b、与圧センサ227等)により取得される情報から、保圧解除工程ST5時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常や、ゲート243bの摩耗状態を予測することが可能となる。
【0131】
また、本実施形態に係る異常予測システム10は、評価値Rと成形品情報との相関関係を機械学習させた学習済みモデルTm1へ評価値Rを入力することで、予測情報D1を取得する。ここで、学習済みモデルTm1の説明変数は、評価値Rを含み、学習済みモデルTm1の目的変数は、成形品の寸法値、成形品のボイドに関する値、又は成形品の外観に関する値を含む。このように構成することで、成形条件にばらつきがある状態であっても、より正確に保圧解除工程ST5時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を予測することができる。
【0132】
また、本実施形態に係る異常予測システム10は、評価値Rと摩耗情報との相関関係を機械学習させた学習済みモデルTm2へ評価値Rを入力することで、予測情報D2を取得する。ここで、学習済みモデルTm2の説明変数は、評価値Rを含み、学習済みモデルTm2の目的変数は、ゲート243bの内径又はゲート243bの摩耗量を含む。このように構成することで、成形条件にばらつきがある状態であっても、より正確にゲート243bの摩耗状態を予測することができる。
【0133】
また、圧力センサ25aは、キャビティC1のうち成形材料が合流するウェルド領域よりもゲート243bに近い位置に設けられ、圧力センサ25bは、ゲート243bよりもウェルド領域に近い位置に設けられている。ゲートシール未了状態の際に流路243に成形材料L1が逆流することによる圧力変化は、ゲート243bに近い方がより大きくなるため、圧力センサ25aにより検出される圧力の方が、圧力センサ25bにより検出される圧力よりも、保圧解除動作後により急激に減少する。このように、圧力センサ25a、25bをゲート243b側とウェルド領域側とに離して設置することで、ゲートシール未了状態であることに起因する圧力の差分をより大きくすることができる。この結果、より精度良く異常を予測することができる。
【0134】
<第2実施形態>
以上、第1実施形態に係る異常予測システムを説明した。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、種々の変形を行うことができる。以下、本発明の第2実施形態に係る異常予測システム11について、説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態から変更のない部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0135】
図13は、第2実施形態に係る異常予測システム11を模式的に示すブロック図である。異常予測システム11は、複数の成形装置20と、異常予測装置40aと、入力部50と、表示部60とを備える。
【0136】
本実施形態において、異常予測システム11の異常予測装置40aは、評価値Rと所定の基準値Rfとに基づいて、成形品の異常を予測するための予測情報D3を取得する。すなわち、異常予測システム11は、学習済みモデルTm1を用いずに、評価値Rと基準値Rfとの比較により異常を予測する点で、第1実施形態に係る異常予測システム10と相違する。
【0137】
図14は、本実施形態に係る異常予測装置40aの機能構成を示すブロック図である。異常予測装置40aは、データ取得部41と、異常予測部42aと、出力部43aと、成形情報記憶部44と、基準値記憶部46とを有する。これらの各部は、CPU等の演算部とHDD等の記憶部とを有するコンピュータ装置により実現される。データ取得部41は、第1実施形態に係るデータ取得部41と同様に、評価値Rを取得する。
【0138】
基準値記憶部46には、基準値Rfが記憶されている。基準値Rfは、寸法値、ボイドの状態、外観の状態が正常な成形品を成形した際に取得される評価値Rに基づいて生成される値である。基準値Rfは、第1評価値R1に対応する第1基準値Rf1と、第2評価値R2に対応する第2基準値Rf2と、第3評価値R3に対応する第3基準値Rf3と、を含んでもよい。
【0139】
第1基準値Rf1は、例えば、正常な成形品を複数回成形した際に取得される複数の第1評価値R1の平均値又は中央値に、所定のマージンを加味した値である。第1基準値Rf1は、より具体的には、図11(b)に示すようなしきい値Th1である。
【0140】
異常予測部42aは、データ取得部41により取得された評価値Rと、基準値記憶部46に記憶されている基準値Rfを取得する。そして、異常予測部42aは、評価値Rと、評価値Rと対応する基準値Rfとを比較することで、予測情報D3を取得する。例えば、第1評価値R1は第1基準値Rfと比較され、第2評価値R2は第2基準値Rfと比較される。予測情報D3は、例えば、評価値Rと基準値Rfとの差、又は比(例えば、R1-Rf1)である。
【0141】
図7から図9において説明したように、ゲートシール未了状態で保圧解除動作が行われる場合、保圧解除動作後のキャビティC1内の圧力低下はより急激に生じるため、保圧解除動作後の圧力の差分に関する第1評価値R1は、正常時の圧力の差分に関する第1基準値Rf1よりも大きくなる傾向がある。
【0142】
また、同様に、ゲートシール未了状態で保圧解除動作が行われる場合、第2評価値R2及び第3評価値R3も、第2基準値Rf2及び第3基準値Rf3よりも大きくなる傾向がある。このため、基準値Rfよりも評価値Rが大きくなる場合、成形品にゲートシール未了に起因する異常が発生していることが予測される。したがって、予測情報D3には、成形品に異常が発生しているか否かが示されている。
【0143】
出力部43aは、異常予測部42aにおいて取得された予測情報D3に基づいて、成形品に異常があるか否かを判定する。例えば、予測情報D3が第1評価値R1と第1基準値Rf1との差(R1-Rf1)である場合、出力部43aは、予測情報D3が正の値であるときに、成形品に異常があると判定する。出力部43aは、成形品に異常があるか否かの判定結果に関する判定情報J1を表示部60に出力する。
【0144】
なお、本実施形態において、出力部43aを設けずに、異常予測部42aにおいて得られた予測情報D3をそのまま表示部60に表示するように構成されてもよい。この場合、表示部60に表示された予測情報D3に基づいて、作業者が成形品や成形装置20の状態を判断するようにしてもよい。
【0145】
本実施形態に係る異常予測システム11によれば、評価値Rと基準値Rfとの比較により、保圧解除工程ST5時にゲートがシールされていないことに起因する成形品の異常を容易に予測することができる。
【0146】
<変形例>
以上、本発明の第1、第2実施形態に係る異常予測システム10、11を説明した。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、種々の変形を行うことができる。以下、本発明の実施形態に係る変形例について、説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態から変更のない部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0147】
<3個以上の圧力センサを用いる場合の評価値>
上記の第1実施形態では、複数の圧力センサ25a、25bによりそれぞれ検出される複数の圧力の差分(第1評価値R1)、複数の圧力の時間変化の差分(第2評価値R2)、又は複数の圧力の時間積分の差分(第3評価値R3)に基づいて、成形品の異常を予測する。しかしながら、3個以上の圧力センサを用いる場合、差分ではなく、偏差に基づいて成形品の異常を予測してもよい。
【0148】
図15は、変形例に係る4個の圧力センサ25a、25b、25c、25dの配置を説明する図である。図15は、図5と同じ断面を示している。変形例にて新たに追加される圧力センサ25c、25dは、圧力センサ25a、25bの間に位置する。圧力センサ25cは圧力センサ25bよりも圧力センサ25aに近い位置に設置され、圧力センサ25dは圧力センサ25cと圧力センサ25bの間に設置されている。すなわち、4個の圧力センサ25a、25b、25c、25dは、ゲート243bとの距離がそれぞれ異なる位置に配置されている。また、ゲート243bからウェルド領域に至るまで、圧力センサ25a、25b、25c、25dの順に配置されている。
【0149】
図9(b)に示すように保圧解除動作時にゲートシール未了状態である場合、圧力センサ25aの圧力が最も減少しやすく、圧力センサ25b、25c、25dとゲート243bから遠ざかるほど圧力が減少しにくくなる。このように、ゲートシール未了状態の場合、検出される複数の圧力に分布(ばらつき)が生じるため、時点X2(保圧解除動作時点)以降の複数の圧力の偏差は大きくなる傾向がある。
【0150】
このため、訓練データ取得部31は、複数の圧力のいずれかの偏差を第1評価値R1として取得してもよい。例えば、訓練データ取得部31は、圧力センサ25aにより検出される圧力の偏差を第1評価値R1として取得する。具体的には、圧力センサ25a~25dにより取得される時点X5(図11(a))における圧力をそれぞれ圧力Pa2~Pd2とすると、圧力センサ25aにより検出される圧力Pa2の偏差DEV1は、圧力Pa2と、複数の圧力Pa2~Pd2の平均値(Pa2+Pb2+Pc2+Pd2)/4との差となる。
【0151】
訓練データ取得部31は、複数の圧力の偏差の平均、複数の圧力の分散、又は複数の圧力の標準偏差を第1評価値R1として取得してもよい。偏差の平均、分散及び標準偏差のいずれも、複数の圧力の偏差に基づく値である。このため、偏差、偏差の平均、分散及び標準偏差を「偏差に関する値」と称する。
【0152】
このように、3個以上の圧力センサ25a~25dにより検出される複数の圧力の偏差に関する値を第1評価値R1とすることで、2個の圧力の差分を第1評価値とする場合と比べてノイズ等の影響が小さくなり、第1評価値R1の信頼性が向上する。
【0153】
訓練データ取得部31は、同様に、複数の圧力の時間変化に関する値の偏差に関する値を第2評価値R2として取得してもよいし、複数の圧力の時間積分に関する値の偏差に関する値を第3評価値R3として取得してもよい。
【0154】
そして、学習済みモデルTm1、Tm2が、上記に示す偏差に関する評価値Rにより生成されている場合、異常予測装置40のデータ取得部41も訓練データ取得部31と同様に、偏差に関する評価値Rを取得する。
【0155】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の異常予測システムは、図示する形態に限られず、本発明の範囲内において他の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0156】
10 異常予測システム 11 異常予測システム 20 成形装置
21 ベッド 22 射出部 221 ホッパ
222 シリンダ 223 スクリュ 224 ノズル
225 ボールねじ 226 モータ 227 与圧センサ
228 移動量センサ 229 ヒータ 23 型締め部
231 固定盤 231a 貫通孔 232 可動盤
232a 貫通孔 233 タイバー 234 ボールねじ
235 支持盤 236 力センサ 237 モータ
24 金型部 241 金型 242 金型
243 流路 243a 第1開口部 243b ゲート
25a、25b、25c、25d 圧力センサ 26 温度センサ
27 制御盤 271 制御部 272 通信部
30 学習装置 31 訓練データ取得部 32 学習演算部
33 成形情報記憶部 34 学習済みモデル記憶部 40 異常予測装置
40a 異常予測装置 41 データ取得部 42 異常予測部
42a 異常予測部 43 出力部 43a 出力部
44 成形情報記憶部 45 学習済みモデル記憶部 46 基準値記憶部
50 入力部 60 表示部 C1 キャビティ
L1 成形材料 R 評価値 R1 第1評価値
R2 第2評価値 R3 第3評価値 D1 予測情報
D2 予測情報 D3 予測情報 J1 判定情報
J2 判定情報 Rf 基準値 Rf1 第1基準値
Rf2 第2基準値 Rf3 第3基準値
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