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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241016BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20241016BHJP
   B65H 5/00 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 303
B41J2/17 103
B65H5/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020189261
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078526
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】西沢 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功治
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 裕一
(72)【発明者】
【氏名】麻本 克哉
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185010(JP,A)
【文献】特開2012-116616(JP,A)
【文献】特開2009-149019(JP,A)
【文献】特開2006-272711(JP,A)
【文献】特開2020-199712(JP,A)
【文献】特開2015-155179(JP,A)
【文献】特開2008-114991(JP,A)
【文献】特開2018-192733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375708(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B65H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づき、印刷媒体に印刷する印刷部と、
前記印刷媒体を支持する支持面を有し、前記印刷媒体を搬送する無端ベルトと、
洗浄液により前記支持面を洗浄する洗浄部と、
前記洗浄液の温度を変更可能な温度変更部と、
前記印刷媒体の属性情報、前記支持面における前記印刷媒体の位置、および前記印刷デ
ータの少なくとも一つに基づき、前記温度変更部を制御する制御部と、を備え
前記洗浄部は、
前記支持面に当接し回転する回転ブラシと、
前記無端ベルトの移動方向における前記印刷部の下流かつ前記回転ブラシの上流にお
いて、前記支持面に前記洗浄液を噴射する第1の噴射部と、
前記回転ブラシに前記洗浄液を噴射する第2の噴射部と、
を有し、
前記制御部は、前記印刷媒体の属性情報、前記支持面における前記印刷媒体の位置、お
よび前記印刷データの少なくとも一つに基づき、前記第1の噴射部および前記第2の噴射
部から噴射される前記洗浄液の温度を制御し、
前記無端ベルトは、前記支持面に前記印刷媒体を粘着する粘着層を有し、
前記温度変更部は、前記洗浄液を加熱する加熱部と、前記洗浄液を冷却する冷却部とを
有し、
前記冷却部により冷却された前記洗浄液は、前記第1の噴射部から噴射され、
前記加熱部により加熱された前記洗浄液は、前記第2の噴射部から噴射される印刷装置
【請求項2】
印刷データに基づき、印刷媒体に印刷する印刷部と、
前記印刷媒体を支持する支持面を有し、前記印刷媒体を搬送する無端ベルトと、
洗浄液により前記支持面を洗浄する洗浄部と、
前記洗浄液の温度を変更可能な温度変更部と、
前記印刷媒体の属性情報、前記支持面における前記印刷媒体の位置、および前記印刷デ
ータの少なくとも一つに基づき、前記温度変更部を制御する制御部と、を備え、
前記印刷部は、
前記印刷媒体に液滴を吐出する液滴吐出部と、
前記液滴吐出部を搭載し、前記無端ベルトの幅方向に移動するキャリッジと、を有し、
前記キャリッジは、前記無端ベルトの幅方向に移動しながら前記支持面に支持される前
記印刷媒体の位置を検出可能な検出部を有し、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づき前記印刷媒体の位置を認識する印刷装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体を搬送する無端ベルトを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクの着弾により画像が記録される記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置であって、記録媒体を搬送面で支持しつつ所定の搬送方向へ搬送する搬送部材と、搬送面に対して下方から当接して当該搬送面を清掃する清掃手段と、清掃手段よりも搬送方向上流側にある被噴射領域を通過する搬送面に対し、清掃液を直接噴射する噴射手段と、少なくとも被噴射領域と噴射手段との下方に設けられ、滴下する清掃液を収容して貯留する貯留手段と、貯留手段が貯留する清掃液を噴射手段へ送液する送液手段と、を備える記録媒体搬送装置、および、この記録媒体搬送装置を備えるインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-241285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の記録媒体搬送装置、およびインクジェット記録装置では、搬送面に対して清掃液を付与する仕様に関しては充分に考慮されていない。近年は、環境性能向上の観点から、使用済みの清掃液である廃液の排出量を低減することが要求されており、特許文献1に記載の記録媒体搬送装置、およびインクジェット記録装置の場合、清掃液を付与する仕様によっては、廃液の量が多くなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、印刷データに基づき、印刷媒体に印刷する印刷部と、前記印刷媒体を支持する支持面を有し、前記印刷媒体を搬送する無端ベルトと、洗浄液により前記支持面を洗浄する洗浄部と、前記洗浄液の温度を変更可能な温度変更部と、前記印刷媒体の属性情報、前記支持面における前記印刷媒体の位置、および前記印刷データの少なくとも一つに基づき、前記温度変更部を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る印刷装置の構成を示す正面図である。
図2】印刷装置が有する制御部および画像処理装置の機能を説明するブロック図である。
図3】洗浄部の構成を示す概念図である。
図4】検出部の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係る印刷装置の構成について、図1を参照して説明する。
なお、図面に付記する座標においては、Z軸方向が上下方向、+Z方向が上方向、X軸方向が前後方向、-X方向が前方向、Y軸方向が左右方向、+Y方向が左方向、X-Y平面が水平面としている。
【0008】
印刷装置100は、印刷媒体としての布帛1に液滴としてのインク滴を吐出して画像を形成することで布帛1の捺染を行うインクジェット式の捺染装置である。布帛1としては、例えば綿、絹、ウール、化学繊維、混紡などの布帛が用いられる。
印刷装置100は、供給部10、搬送部20、回収部30、印刷部40、洗浄部50、押着部60、制御部としての装置制御部80および画像処理装置90などから構成されている。
【0009】
供給部10は、印刷前の布帛1を収容する。供給部10は、軸部11および軸受部12を有する。
軸部11は、ロール状に巻かれた帯状の布帛1を円周方向に回転可能に支持する。軸部11は、軸受部12に対して着脱可能に取り付けられる。
軸受部12は、軸部11を回転駆動させる回転駆動部を有し、軸部11を回転可能に支持する。回転駆動部は、装置制御部80によって制御され、延伸しやすい布帛1の場合には、送り出される方向に軸部11を回転させる。また、テンションをかける必要がある布帛1の場合には、回転しないように負荷をかける制御をおこなう。回転駆動部の図示は省略している。
【0010】
搬送部20は、供給部10から印刷部40を経由し回収部30までの搬送経路で布帛1を搬送する搬送経路を構成している。搬送部20は、搬送ローラー21,26,28、テンションローラー22、搬送ベルト23、ベルト回転ローラー24、ベルト駆動ローラー25、乾燥ユニット27、ベルトガイド29などを有している。
【0011】
搬送ベルト23は、無端状に形成された無端ベルトであり、ベルト回転ローラー24およびベルト駆動ローラー25に懸架されている。搬送ベルト23は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25とに掛け渡された間の部分が床面9に平行になるように、所定の張力が作用した状態で保持されている。搬送ベルト23の外周面は、布帛1を支持する支持面23aであり、表面には、布帛1を粘着させる粘着層が設けられている。
【0012】
ベルト回転ローラー24およびベルト駆動ローラー25は、搬送ベルト23の内周面23bを支持する。なお、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間に、搬送ベルト23を内周面23bから支持する支持部が設けられた構成であっても良い。
搬送経路において、ベルト駆動ローラー25は、ベルト回転ローラー24の下流側に配置されている。ベルト駆動ローラー25は、装置制御部80によって回転が制御される。ベルト駆動ローラー25の回転により搬送ベルト23が回転し、搬送ベルト23の回転に伴ってベルト回転ローラー24が回転する。搬送ベルト23の回転により、搬送ベルト23の支持面23aに支持される布帛1が搬送方向に搬送される。つまり、ベルト回転ローラー24からベルト駆動ローラー25へ向かう方向が搬送方向となる。
【0013】
テンションローラー22は、搬送経路において、供給部10と搬送ベルト23との間に設けられ、搬送ベルト23との間で布帛1に所定の張力を発生させる。
搬送ローラー21は、布帛1を供給部10とテンションローラー22との間で中継する。
搬送ローラー26、搬送ローラー28は、搬送ベルト23によって搬送された布帛1を、搬送ベルト23と回収部30との間で中継する。
乾燥ユニット27は、搬送ローラー26と搬送ローラー28との間に設けられており、インクが付与された後の布帛1を乾燥する。
【0014】
ベルトガイド29は、搬送ベルト23の印刷部40に対向する印刷領域に設けられた平板状のガイドであり、印刷領域において、搬送ベルト23が搬送方向と交差する方向に変位することを抑制する。
【0015】
回収部30はインクが付与され乾燥が完了した布帛1を収容する。回収部30は、軸部31および軸受部32を有する。
軸部31は、布帛1をロール状に巻いて収容するため、円周方向に回転可能に設けられている。軸部31は、軸受部32に対して着脱可能に取り付けられている。
軸受部32は、軸部31を回転駆動させる回転駆動部を有し、軸部31を回転可能に支持する。回転駆動部は、装置制御部80によって制御され、布帛1が巻き取られる方向に軸部31を回転させる。回転駆動部の図示は省略している。
【0016】
印刷部40は、装置制御部80によって制御され、布帛1に対してインク滴を吐出する。印刷部40は、液滴吐出部としてのヘッド41、キャリッジ42、インク供給部を有している。インク供給部は図示を省略している。
ヘッド41は、搬送ベルト23によって搬送される布帛1に対向するように設けられ、その下面には、インク供給部から供給されるインクをインク滴として吐出する複数のノズルを有している。
キャリッジ42は、ヘッド41を搭載し、布帛1の搬送方向と交差するX軸方向に延在するように設けられたガイド軸43に沿って移動する。キャリッジ42は、装置制御部80によって制御されるキャリッジモーターによりその移動が制御される。キャリッジモーターの図示は省略している。
【0017】
洗浄部50は、装置制御部80によって制御され、搬送ベルト23の洗浄を行う。洗浄部50の説明は、後述する。
押着部60は、印刷部40よりも搬送経路の上流側において、搬送ベルト23の上部に設置されている。押着部60は、布帛1を、粘着層を有する支持面23aに押着し、布帛1が搬送ベルト23から離れるのを防止する。
【0018】
図2を参照し、装置制御部80および画像処理装置90の機能を説明する。
画像処理装置90は、画像制御部91、入力部92、表示部93、記憶部94などを備え、ネットワークなどを介して接続される外部電子機器とのデータの授受や印刷装置100が行う印刷のジョブ制御、印刷に係る画像の処理などを行う。画像処理装置90は、好適例としてパーソナルコンピューターを用いて構成している。
画像処理装置90が動作するソフトウェアには、印刷する画像データを扱う一般的な画像処理アプリケーションや、画像データに基づいて印刷装置100が印刷を実行するために必要な印刷データを生成するプリンタードライバーが含まれる。
【0019】
画像制御部91は、CPU95や、ASIC96、メモリー97、装置内インターフェイス98、汎用インターフェイス99などを備えている。CPUは、Central Processing Unitを、ASICは、Application Specific Integrated Circuitを、意味している。
入力部92は、ヒューマンインターフェイスとして情報入力手段である。具体的には、例えば、キーボードやマウスポインターなどである。
表示部93は、ヒューマンインターフェイスとしての情報表示手段であり、画像制御部91の制御の基に、入力部92から入力される情報や、印刷する画像、印刷ジョブに関係する情報などが表示される。
記憶部94は、ハードディスクドライブやメモリーカードなどの書き換え可能な記憶媒体であり、画像処理装置90が動作するソフトウェアや、印刷する画像、印刷ジョブに関係する情報などが記憶される。
ASIC96は、プリンタードライバーに基づくCPU95の制御の下に、印刷データの生成に寄与する。
メモリー97は、CPU95が動作するプログラムを格納する領域や動作する作業領域などを確保する記憶媒体である。
汎用インターフェイス99は、画像処理装置90をネットワークなどに接続し、外部電子機器と接続するためのインターフェイスである。
【0020】
装置制御部80は、装置内インターフェイス81、CPU82、メモリー83、駆動制御部84などを備え、印刷装置100の各駆動部を統括的に制御する。具体的には、装置制御部80は、印刷部40のヘッド41に対するインクの吐出制御や、キャリッジ42に対するヘッド移動制御、搬送部20に対する搬送駆動制御などを行う。
印刷に際し、装置制御部80は、画像処理装置90から送られた印刷データに従い、搬送部20によって印刷領域に供給された布帛1に対し、ガイド軸43に沿ってヘッド41を支持するキャリッジ42をX軸方向移動させながらヘッド41からインク滴を吐出する動作と、搬送部20の搬送ベルト23により、印刷領域において、布帛1を+Y方向に移動させる動作とを繰り返す。これらの動作により、布帛1に所望の画像が印刷される。
【0021】
装置内インターフェイス81は、画像処理装置90の装置内インターフェイス98に接続され、画像処理装置90との間でデータの送受信を行う。
CPU82は、印刷装置100全体の駆動制御を行うための演算処理装置である。
メモリー83は、CPU82が動作するプログラムを格納する領域や動作する作業領域などを確保する記憶媒体である。
CPU82は、メモリー83に格納されているプログラム、および画像処理装置90から受信した印刷データに従って、駆動制御部84を介して、供給部10、搬送部20、回収部30、印刷部40、洗浄部50、押着部60を制御する。
【0022】
次に、図1図3を参照し、洗浄部50について説明する。
洗浄部50は、ベルト駆動ローラー25とベルト回転ローラー24との間の下方に配置され、布帛1が剥離された後の搬送ベルト23の支持面23aを下方から洗浄液を用いて洗浄し、支持面23aに付着したインクや埃、糸くずなどの異物を除去する。
洗浄部50は、回転ブラシ501、ワイパー502、洗浄液タンク503、噴射ノズル504、洗浄液供給路505、温度変更部506、廃液貯留槽507、昇降機構508などを含み構成されている。
【0023】
回転ブラシ501は、X軸方向に延在する回転軸に支持されて回転する円筒状のブラシであり、そのX軸方向の長さは、搬送ベルト23の幅を上回り、搬送ベルト23の幅方向の全体に当接しながら回転するように構成されている。回転ブラシ501は、装置制御部80により駆動制御されるブラシモーターにより回転する。回転ブラシ501の回転方向は、図1に矢印で示すように、支持面23aに当接するブラシ先端が、搬送ベルト23の移動方向に対して逆方向となる方向である。ブラシモーターは図示を省略している。
【0024】
ワイパー502は、回転する搬送ベルト23の支持面23aにその先端を当接させることで、支持面23aに付着する洗浄液などを払拭可能なゴムブレードである。
洗浄液タンク503は、洗浄液を貯留するタンクである。洗浄液としては、例えば、水やアルコール水溶液などの水溶性溶剤が用いられ、必要に応じて界面活性剤や消泡剤が添加される。
【0025】
噴射ノズル504には、支持面23aに洗浄液を噴射する第1の噴射部としての噴射ノズル504aと、回転ブラシ501に洗浄液を噴射する第2の噴射部としての噴射ノズル504bとがある。
噴射ノズル504aは、搬送ベルト23の移動方向における印刷部40の下流かつ回転ブラシ501の上流に設けられ、支持面23aに対して下方から洗浄液を噴射することができる。
噴射ノズル504bは、回転ブラシ501の下流側に設けられ、回転ブラシ501に対して横方向から洗浄液を噴射することができる。
【0026】
洗浄液供給路505は、洗浄液タンク503に貯留される洗浄液を噴射ノズル504に供給する流路であり、噴射ノズル504aに洗浄液を供給する洗浄液供給路505aと、噴射ノズル504bに洗浄液を供給する洗浄液供給路505bとに分岐している。
分岐の上流側には、装置制御部80によって駆動が制御されるポンプ509が設けられている。
洗浄液供給路505aには開閉弁510aが、洗浄液供給路505bには開閉弁510bが設けられている。装置制御部80は開閉弁510aおよび開閉弁510bそれぞれの開閉を制御することにより、噴射ノズル504a、噴射ノズル504bの噴射を制御する。
【0027】
温度変更部506は、噴射ノズル504が噴射する洗浄液の温度を変更することができる。温度変更部506は、洗浄液供給路505aにおいて洗浄液の温度を変更することができる第1温度変更部506aと、洗浄液供給路505bにおいて洗浄液の温度を変更することができる第2温度変更部506bとを含み構成されている。
第1温度変更部506aおよび第2温度変更部506bは、それぞれ装置制御部80によって制御される。すなわち、装置制御部80は、温度変更部506を制御し、噴射ノズル504aおよび噴射ノズル504bから噴射される洗浄液の温度を制御する。
【0028】
廃液貯留槽507は、噴射ノズル504aが支持面23aに噴射した洗浄液、および噴射ノズル504bが回転ブラシ501に噴射した洗浄液を廃液として下方から受け止めて貯留するバケットであり、底部付近に設けられた排出口507aから排出することができる。
【0029】
昇降機構508は、回転ブラシ501、ワイパー502、洗浄液タンク503、噴射ノズル504、洗浄液供給路505、温度変更部506、廃液貯留槽507などを支持する基部511をZ方向に昇降させる。回転ブラシ501およびワイパー502は、昇降機構508の昇降動作により、搬送ベルト23の支持面23aと接触するクリーニング位置と、離間する離隔位置と、に移動可能である。
【0030】
以上の構成において、装置制御部80は、洗浄部50による搬送ベルト23の洗浄がより効率的、効果的に行われるために、布帛1の属性情報、支持面23aにおける布帛1の位置、および印刷データの少なくとも一つに基づき、温度変更部506を制御する。
具体的には、装置制御部80は、布帛1の属性情報、支持面23aにおける布帛1の位置、および印刷データの少なくとも一つに基づき、噴射ノズル504aから噴射される洗浄液の温度、および噴射ノズル504bから噴射される洗浄液の温度を制御する。
【0031】
布帛1の属性情報とは、布帛1の種類を特定することができる情報であり、例えば、布帛1の製品名や製品型番である。また、布帛1の属性情報は、例えば、材質名や布帛1を構成する仕様などの情報であっても良い。
布帛1の種類により、支持面23aに付着する埃や糸くずなどの異物の発生状況が異なって来る。また、布帛1の種類により、印刷する際のインクが、布帛1を透過して支持面23aに付着する度合いが異なって来る。そのため、例えば、支持面23aに付着するインクや埃、糸くずなどの異物を支持面23aから剥離する際の洗浄液の温度が高いほど高い洗浄強度が期待される場合、例えば、埃や糸くずなどの発生が多い布帛1や、インクの付着が多くなる布帛1の場合には、装置制御部80は、洗浄液の温度を高くする制御を行う。また、逆に、埃や糸くずなどの発生が少なく、インクを透過しない布帛1の場合には、支持面23aの洗浄強度を低くすることができるため、装置制御部80は、洗浄液の温度を高くする制御を行う必要が無くなる。
従って、予め評価を行い、布帛1の種類などに対応した洗浄仕様としての洗浄液の温度を定めておくことで、装置制御部80は、布帛1の属性情報に基づいて、対応する洗浄液の温度となるように、温度変更部506を制御することで、より効率的、効果的に洗浄を行うことができる。
【0032】
支持面23aにおける布帛1の位置は、すなわち、埃や糸くずなどの異物が、支持面23aに付着する領域に対応する。埃や糸くずなどの異物が、支持面23aに付着する領域が広いほど、付着する異物の総量も多くなる。そのため、例えば、支持面23aに付着する埃や糸くずなどの異物を支持面23aから剥離する際の洗浄液の温度が高いほど高い洗浄強度が期待される場合、例えば、埃や糸くずなどの総量が多い布帛1の場合には、装置制御部80は、洗浄液の温度を高くする制御を行う。また、逆に、埃や糸くずなどの総量が少ない布帛1の場合には、支持面23aの洗浄強度を低くすることができるため、装置制御部80は、洗浄液の温度を高くする制御を行う必要が無くなる。
従って、予め評価を行い、布帛1の種類や幅に対応した洗浄仕様としての洗浄液の温度を定めておくことで、装置制御部80は、布帛1の位置、つまり布帛1の幅の長さに基づいて、対応する洗浄液の温度となるように、温度変更部506を制御することで、より効率的、効果的に洗浄を行うことができる。
【0033】
布帛1の幅の情報は、布帛1の属性情報として得ることもできるが、実際に布帛1が支持面23aに粘着された位置を検出することで、幅の情報を得ることができる。
本実施形態の印刷装置100は、支持面23aに支持される布帛1の位置を検出可能な検出部70を備えている。
検出部70は、布帛1に光を照射し、その反射光を検出するフォトセンサーで構成されており、図4に示すように、キャリッジ42のX軸方向における両端部に設けられている。キャリッジ42が、搬送ベルト23の幅方向に移動しながら支持面23aに支持される布帛1からの反射光を検出することで、布帛1の位置や幅を検出することができる。装置制御部80は、検出部70の検出結果を受信し、布帛1の位置を認識する。
すなわち、キャリッジ42は、搬送ベルト23の幅方向に移動しながら支持面23aに支持される布帛1の位置を検出可能な検出部70を有し、装置制御部80は、検出部70の検出結果に基づき布帛1の位置を認識する。
【0034】
印刷データは、布帛1にインクを付与するための制御情報であり、装置制御部80は、印刷データから、インクを付与する位置、および付与するインクの量の情報を得ることができる。
例えば、布帛1がインク透過性の布帛の場合、その透過特性が予め分かっている場合には、印刷データを参照することにより、布帛1を透過して支持面23aに付着するインクの位置や量を推定することができる。例えば、支持面23aに付着するインクを支持面23aから剥離する際の洗浄液の温度が高いほど高い洗浄強度が期待される場合、例えば、インクの付着量が多いと推定される場合には、装置制御部80は、洗浄液の温度を高くする制御を行う。また、逆に、インクの付着量が少ないと推定される場合には、支持面23aの洗浄強度を低くすることができるため、装置制御部80は、洗浄液の温度を高くする制御を行う必要が無くなる。
【0035】
なお、洗浄液の温度を上げて洗浄を継続する場合に、環境によっては、搬送ベルト23の温度が、つまり、支持面23aの粘着層の温度が上がり過ぎてしまい、所定の粘着力が得られなくなったり、粘着力が強すぎるようになってしまったり、粘着層が剥離しやすくなってしまったりする場合が有る。
これに対しては、一方の温度変更部506を冷却部として構成することが好ましい。具体的には、例えば、第1温度変更部506aを冷却部として構成し、第2温度変更部506bを加熱部として構成する。
第1温度変更部506aを冷却部として構成する場合、第1温度変更部506aは、洗浄液供給路505aの少なくとも一部に設けられるペルチェ素子などの冷却素子によって構成することができる。また、第2温度変更部506bを加熱部として構成する場合、第2温度変更部506bは、洗浄液供給路505bの少なくとも一部に設けられる電熱線などによって構成することができる。
このように構成することで、粘着層が所定の温度以上になることが抑制される。
【0036】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態の印刷装置100は、布帛1を支持する搬送ベルト23の支持面23aを洗浄液により洗浄する洗浄部50と、洗浄液の温度を変更可能な温度変更部506と、布帛1の属性情報、支持面23aにおける布帛1の位置、および印刷データの少なくとも一つに基づき、温度変更部506を制御する装置制御部80を備えている。そのため、布帛1の属性情報、支持面23aにおける布帛1の位置、および印刷データの少なくとも一つに基づき、支持面23aを洗浄する洗浄液の温度を変更することができる。その結果、効率的、効果的に洗浄を行うことができる温度の洗浄液により支持面23aの洗浄を行うことができるため、使用済みの清掃液である廃液の排出量を低減することができる。
【0037】
また、洗浄部50は、布帛1を支持する搬送ベルト23の支持面23aに当接し回転する回転ブラシ501と、搬送ベルト23の移動方向における印刷部40の下流かつ回転ブラシ501の上流において、支持面23aに洗浄液を噴射する噴射ノズル504aと、を有している。また、装置制御部80は、布帛1の属性情報、支持面23aにおける布帛1の位置、および印刷データの少なくとも一つに基づき、噴射ノズル504aから噴射される洗浄液の温度を制御する。支持面23aに当接し回転する回転ブラシ501の上流において、支持面23aに洗浄液が噴射されるため、回転ブラシ501により、効率的、効果的に支持面23aの洗浄をおこなうことができる。また、効率的、効果的に洗浄を行うことができる温度の洗浄液により支持面23aの洗浄を行うことができる。これらの結果、使用済みの清掃液である廃液の排出量を低減することができる。
【0038】
また、洗浄部50は、布帛1を支持する搬送ベルト23の支持面23aに当接し回転する回転ブラシ501に洗浄液を噴射する噴射ノズル504bを有している。支持面23aに当接し回転する回転ブラシ501に洗浄液が噴射されるため、回転ブラシ501により、効率的、効果的に支持面23aの洗浄をおこなうことができる。また、回転ブラシ501に付着する汚れや異物などを除去することができる。
また、装置制御部80は、布帛1の属性情報、支持面23aにおける布帛1の位置、および印刷データの少なくとも一つに基づき、噴射ノズル504bから噴射される洗浄液の温度を制御する。そのため、効率的、効果的に洗浄を行うことができる温度の洗浄液により支持面23aの洗浄を行うことができる。
これらの結果、使用済みの清掃液である廃液の排出量を低減することができる。
【0039】
また、搬送ベルト23は、支持面23aに布帛1を粘着する粘着層を有している。また、温度変更部506は、洗浄液供給路505aにおいて洗浄液の温度を変更することができる第1温度変更部506aと、洗浄液供給路505bにおいて洗浄液の温度を変更することができる第2温度変更部506bとを含み構成されている。第1温度変更部506aを冷却部として構成し、第2温度変更部506bを加熱部として構成した場合、冷却部により冷却された洗浄液は、噴射ノズル504aから噴射され、加熱部により加熱された洗浄液は、噴射ノズル504bから噴射される。つまり、冷却された洗浄液が、搬送ベルト23の移動方向における回転ブラシ501の上流において、粘着層を有する支持面23aに噴射され、加熱された洗浄液が、回転ブラシ501に噴射される。回転ブラシ501に噴射される洗浄液は加熱されているため、回転ブラシ501に付着する汚れや異物などを除去しやすくなる。また、粘着層を有する支持面23aに噴射される洗浄液は冷却されているため、粘着層が所定の温度以上になることが抑制される。例えば、加熱された洗浄液の影響や、印刷装置100が設置される環境の影響により、粘着層が所定の温度以上になってしまうことが抑制されるので、粘着層が剥がれ落ちてしまったりすることなど、支持面23aの耐久性が劣化してしまうことが抑制される。
【0040】
また、印刷部40は、布帛1に液滴を吐出するヘッド41と、ヘッド41を搭載し、搬送ベルト23の幅方向に移動するキャリッジ42と、を有している。また、キャリッジ42は、搬送ベルト23の幅方向に移動しながら支持面23aに支持される布帛1の位置を検出可能な検出部70を有し、装置制御部80は、検出部70の検出結果に基づき布帛1の位置を認識する。
搬送ベルト23の支持面23aに異物やインクなどの液体が付着する位置、つまり、洗浄対象とする支持面23aの領域は、布帛1が搬送ベルト23に支持される位置によって変わってくる。本実施形態によれば、装置制御部80は、支持面23aに支持される布帛1の位置を検出可能な検出部70の検出結果に基づき布帛1の位置を認識するため、布帛1の実際の幅の長さや、その幅の長さの布帛1が支持されていた実際の位置に対応させて、適切に洗浄液の温度の制御を行うことができる。その結果、より効率的、効果的に洗浄を行うことができるため、使用済みの清掃液である廃液の排出量を低減することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…布帛、9…床面、10…供給部、11…軸部、12…軸受部、20…搬送部、21…搬送ローラー、22…テンションローラー、23…搬送ベルト、23a…支持面、23b…内周面、24…ベルト回転ローラー、25…ベルト駆動ローラー、26…搬送ローラー、27…乾燥ユニット、28…搬送ローラー、29…ベルトガイド、30…回収部、31…軸部、32…軸受部、40…印刷部、41…ヘッド、42…キャリッジ、43…ガイド軸、50…洗浄部、60…押着部、70…検出部、80…装置制御部、81…装置内インターフェイス、82…CPU、83…メモリー、84…駆動制御部、90…画像処理装置、91…画像制御部、92…入力部、93…表示部、94…記憶部、95…CPU、96…ASIC、97…メモリー、98…装置内インターフェイス、99…汎用インターフェイス、100…印刷装置、501…回転ブラシ、502…ワイパー、503…洗浄液タンク、504…噴射ノズル、504a…噴射ノズル、504b…噴射ノズル、505…洗浄液供給路、505a…洗浄液供給路、505b…洗浄液供給路、506…温度変更部、506a…第1温度変更部、506b…第2温度変更部、507…廃液貯留槽、507a…排出口、508…昇降機構、509…ポンプ、510a…開閉弁、510b…開閉弁、511…基部。
図1
図2
図3
図4