(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/13 20060101AFI20241016BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241016BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B41J29/13 103
B41J2/01 301
H05K5/03 A
(21)【出願番号】P 2020194181
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕之
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-096552(JP,A)
【文献】特開2001-132310(JP,A)
【文献】特開2020-151999(JP,A)
【文献】特開2016-215522(JP,A)
【文献】特開2019-018515(JP,A)
【文献】特開2020-068233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0222214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/13
B41J 2/01 - 2/215
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して画像を記録する記録部と、
前記記録部を収容する筐体と、
前記筐体内を視認可能に構成され、前記筐体に設置された開閉可能なカバーと、を備
え、
前記カバーは、
二つの長辺部と二つの短辺部とを有する矩形状の枠体と、
前記枠体に取り付けられた透光性を有する透光板と、を有し、
各前記長辺部は、金属材料を用いた中空構造であ
り、
前記透光板の各長辺は、各前記長辺部に支持され、前記透光板の各短辺と各前記短辺
部との間には隙間が設けられている、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
各前記長辺部は、中空のアルミ材で構成される、印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
各前記短辺部は、鋼板で構成される、印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
各前記長辺部の長手方向には溝が設けられ、前記溝に前記透光板が嵌る、印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
各前記長辺部のうち一方が軸に支持され、他方に手掛け部が設けられ、
前記長辺部の他方の方が、前記長辺部の一方よりも体積が大きい、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、装置本体内に、媒体に対して画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置が知られている。当該画像形成装置の装置本体には、装置本体内を視認するための開閉可能なカバーが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記画像形成装置のカバーは、例えば、透光性を有するプラスチック板の四隅を板金で枠組みすることで構成される。この場合、板金の重量が大きく、カバーの重量が増大し、カバーの開閉動作を円滑に行うことができない、という課題がある。
一方、プラスチック材で枠組みする構成では、軽量化されるが剛性が低く、カバーにねじれが生じ、やはりカバーの開閉動作を円滑に行うことができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
印刷装置は、媒体に対して画像を記録する記録部と、前記記録部を収容する筐体と、前記筐体内を視認可能に構成され、前記筐体に設置された開閉可能なカバーと、を備え、前記カバーは、二つの長辺部と二つの短辺部とを有する矩形状の枠体と、前記枠体に取り付けられた透光性を有する透光板と、を有し、各前記長辺部は、金属材料を用いた中空構造である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
印刷装置10の構成について説明する。印刷装置10は、比較的大きな媒体M(例えば、用紙サイズA0等)に印刷可能なインクジェットプリンターである。
【0008】
図1、
図2及び
図3に示すように、印刷装置10は、記録部21を備える本体部12と、本体部12を支持する一対の脚部14とを備える。一対の脚部14は、X軸に沿った方向に間隔をおいて本体部12の下部に設けられる。
【0009】
本体部12は、外壁を成す筐体13を備え、記録部21等を収容する。筐体13は、直方体状に形成される。本体部12の+Y方向側に乾燥部18が設けられる。本体部12の上部には、X軸に沿った方向に延設されたメインフレーム20が設けられる。メインフレーム20の+Y方向側には、媒体Mに対して画像を記録(印刷)する記録部21を備える。記録部21はキャリッジ22と記録ヘッド24とを備える。キャリッジ22は、X軸に沿った方向に往復動可能にメインフレーム20に取り付けられる。キャリッジ22の下部には、記録ヘッド24が配置される。記録ヘッド24は、液体としてのインクを下方に向けて吐出可能な複数のノズル(不図示)を備える。
【0010】
記録ヘッド24と対向して平板状の吸引プラテン36が設けられる。吸引プラテン36は、X軸に沿った方向に延設される。吸引プラテン36にはZ軸に沿った方向に貫通した複数の貫通孔が設けられる。吸引プラテン36の下方には、吸引ファン38が配置される。吸引ファン38を駆動させると、吸引プラテン36の貫通孔を介して吸引プラテン36の上方側の気体が吸引される。これにより、吸引プラテン36の上方から下方に向けて気体の流れが形成される。その結果、吸引プラテン36上に媒体Mが位置している状態において、媒体Mは吸引プラテン36に吸引され、吸引プラテン36の上面に押し付けられる。
【0011】
図3に示すように、印刷装置10の-Y方向側には給紙部40が設けられ、+Y方向側において乾燥部18の下方に排紙部42が設けられる。なお、
図1及び
図2において給紙部40及び排紙部42の図示を省略している。また、
図3において媒体Mを太線で示している。
【0012】
排紙部42は、一対の軸受部42aと、スピンドル42bとを備える。一対の軸受部42aは、互いに接離する方向であるX軸に沿った方向に移動可能に構成される。スピンドル42bは、排紙ロールR1の内周部に挿入される。スピンドル42bの両端部は、一対の軸受部42aに支持される。軸受部42aには、不図示の駆動源により駆動力が供給され、スピンドル42bに支持された排紙ロールR1を巻き取ることができる、すなわちフロントテンションが掛かるように構成される。
【0013】
同様に、給紙部40もX軸に沿った方向に移動可能な一対の軸受部40aと、スピンドル40bとを備える。スピンドル40bは、給紙ロールR2の内周部に挿入される。スピンドル40bの両端部は、一対の軸受部40aに支持される。軸受部40aには、不図示の駆動源により駆動力が供給され、スピンドル40bに支持された給紙ロールR2を搬送方向下流側に向けて送り出すことができる。ここで、軸受部40aは、給紙ロールR2から引き出された媒体Mにバックテンションが掛かるように媒体Mの引き出しを制御している。
【0014】
本実施形態において媒体Mは、給紙部40の給紙ロールR2から引き出されて、吸引プラテン36及び乾燥部18を経て、排紙部42の排紙ロールR1に巻き取られる構成となっている。
【0015】
媒体Mの搬送方向において吸引プラテン36の上流側には、搬送ローラー44が設けられる。搬送ローラー44は、不図示の駆動源により駆動される駆動ローラーとして構成される。搬送ローラー44は、正転方向及び逆転方向に回転可能に構成される。本実施形態において、正転方向とは給紙ロールR2に巻かれた媒体Mを引き出して、媒体Mを搬送方向下流側に送る方向であり、逆転方向とは搬送方向下流側から上流側に媒体Mを送る方向である。
【0016】
乾燥部18の下流側には、排出ローラー46が設けられる。排出ローラー46は、不図示の駆動源により駆動される駆動ローラーとして構成される。
【0017】
乾燥部18は、加熱源としてのヒーター(不図示)を備える。乾燥部18は、経路形成部材18a上の媒体Mを加熱して、媒体Mが吸収したインクの水分を蒸発させて乾燥を促進させる。経路形成部材18aの下面側には吸引ファン48が設置される。
【0018】
経路形成部材18aには、複数の貫通孔(不図示)が形成されており、吸引ファン48を駆動させると、貫通孔を介して経路形成部材18aの上方側の気体が吸引される。これにより、経路形成部材18aの上方から下方に向けて気体の流れが形成される。その結果、乾燥部18の経路形成部材18a上に媒体Mが位置している状態において、媒体Mは経路形成部材18aに吸引され、経路形成部材18aの上面に押し付けられる。
【0019】
また、本実施形態の印刷装置10には、筐体13内を視認可能に構成されるカバー100が設けられる。カバー100は、筐体13の+Y方向端部に設置され、筐体13に対して開閉可能に構成される。
図1では、カバー100の閉状態を示し、
図2では、カバー100の開状態を示す。
本実施形態では、カバー100の+X方向上端及び-X方向上端が、筐体13に設置されたX軸に沿った方向に延在する軸160(
図4参照)に対して回転可能に支持される。これにより、カバー100の下部に設けられた手掛け部115(
図6参照)に手指を掛けた状態でカバー100を+Y方向に引き出すことで、カバー100が軸160中心に回転し、開状態となる。カバー100の+X方向端及び-X方向端のそれぞれと筐体13とを接続するダンバー140が設けられる。当該ダンパー140は、例えば、ガススプリング方式で構成され、ダンパー140のシリンダー内に高圧ガスが封入され、当該高圧ガスの反力をバネとして用いられる。カバー100が開状態において、ダンパー140はカバー100に向けて付勢する。これにより、カバー100は開状態で保持可能となる。
【0020】
図4及び
図5に示すように、カバー100は、二つの長辺部110(110a,110b)と二つの短辺部120(120a,120b)とを有する矩形状の枠体101を有する。長辺部110と短辺部120とがネジ等により締結されることで枠体101が形成される。枠体101には透光性を有する透光板130が取り付けられる。透光板130は、例えば、プラスチック材である。
これにより、カバー100が閉状態において、透光板130を介して筐体13内が視認可能となり、例えば、記録部21の動作状態を確認することができる。また、カバー100が開状態では、筐体13内を直視でき、例えば、媒体Mに印刷された画像状態を確認することができる。
【0021】
図6に示すように、カバー100の長辺部110は、金属材料を用いた中空構造を有する。長辺部110は、短辺部120よりも質量の軽い金属材料を用いる。具体的には、長辺部110は、中空のアルミ材で構成される。長辺部110は、アルミ材の押し出しによって成形される。枠体101のうち、長さ寸法が大きい長辺部110aを中空構造とすることで、カバー100の重量を軽量化することができる。さらに、中空構造で断面積を増やすことで剛性が保持されるため、カバー100のねじれを抑えることができる。従って、カバー100の開閉動作を円滑に行うことができる。また、カバー100の開閉時におけるチープ感が低減する。また、長辺部110にアルミ材を用いることで、さらにカバー100の重量の軽量化を図ることができる。なお、短辺部120を含め、枠体101全体を中空のアルミ材で構成してもよい。
【0022】
一方、本実施形態の短辺部120は、鋼板で構成される。これにより、剛性を高めることができるとともに、枠体101全体を中空のアルミ材の構成とした場合に比べ、コストを抑えることができる。
【0023】
図6に示すように、各長辺部110a,110bには、長手方向(X軸に沿った方向)に延在する溝111が設けられる。そして、当該溝111に透光板130が嵌る。
溝111の幅寸法は、透光板130の厚み寸法と同等に成形される。従って、透光板130の両面が溝111に支持される。なお、溝111に透光板130を設置した際、透光板130がガタつく程度に溝111の幅寸法を大きくすると、熱膨張により透光板130が波状に変形してしまう。本実施形態では、溝111により透光板130の端面部全体を支持することで、透光板130の撓みを矯正することができる。
また、各長辺部110a,110bには、透光板130の表面と交差する方向にネジ溝112が設けられる。そして、透光板130に設けられた複数の貫通孔を介してネジ等の締結部113によって透光板130と各長辺部110a,110bとが締結される。
【0024】
また、本実施形態では、透光板130の長辺側の各端部は枠体101の各長辺部110a,110bに支持されるが、透光板130の短辺側の各端部は枠体101の各短辺部120a,120bから離間する。すなわち、透光板130の各短辺と各短辺部120a,120bとの間には隙間が設けられる。これにより、透光板130が熱膨張により長手方向に延びた際、透光板130と各短辺部120a,120bとの接触が防止され、カバー100の変形を抑制することができる。なお、カバー100が閉状態である場合に、印刷装置10を-Y方向に見た場合、透光板130の短辺の上方に各短辺部120a,120bが重なるように配置される。このため、外観からは、透光板130の各短辺と各短辺部120a,120bとの間の隙間を目視することができない。
透光板130は長手方向における中心を基準として形成される。そして、各長辺部110a,110bと締結するための透光板130に設けられる複数の貫通孔のうち、透光板130は長手方向における中心に対応する貫通孔は丸穴であり、その他は長孔の貫通孔であり、透光板130の熱膨張を考慮して形成される。
以上の通り、カバー100のねじれが抑制されるため、本実施形態では、1枚の透光板130で構成可能となる。これにより、組み立て工数等を削減できる。
【0025】
また、
図6に示すように、本実施形態では、長辺部110a,110bのうち、カバー100の上部に位置する長辺部110a(長辺部110の一方)が軸160に支持され、カバー100の下部に位置する長辺部110b(長辺部110の他方)に手掛け部115が設けられる。手掛け部115は、長辺部110bのX軸に沿った方向に延在する凹部である。当該手掛け部115に手指を掛けて容易にカバー100を回転動作させることができる。なお、長辺部110bの方が、長辺部110aよりも体積が大きく形成される。これにより、手掛け部115を比較的大きく形成することができる。
【0026】
図7に示すように、本体部12のカバー100のX軸に沿った方向における一方端部に対応する位置には、インターロックスイッチ170が設置される。
本実施形態では、本体部12のカバー100の-X方向端部に対する位置にインターロックスイッチ170が配置される。
カバー100の-X方向端部の側面には側壁部165が設置され、当該側壁部165には、インターロックスイッチ170の先端部に接触可能な板状のフラグ部166が配置される。インターロックスイッチ170により、カバー100の開閉状態が検出される。本実施形態では、カバー100のねじれが抑制されるため、カバー100のX軸に沿った方向の一方端部のみに設けられる。すなわち、カバー100のねじれが大きく発生する場合には、カバー100のX軸に沿った方向の両端にインターロックスイッチ170の設置が必要となるが、本実施形態では、一方のみに設置すればよく、印刷装置10の構成を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…印刷装置、12…本体部、13…筐体、21…記録部、22…キャリッジ、24…記録ヘッド、100…カバー、101…枠体、110,110a,110b…長辺部、111…溝、112…ネジ溝、113…締結部、115…手掛け部、120,120a,120b…短辺部、130…透光板、140…ダンパー、160…軸、165…側壁部、166…フラグ部、170…インターロックスイッチ。