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特許7571505スクランブル装置およびスクランブル方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】スクランブル装置およびスクランブル方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/2347 20110101AFI20241016BHJP
   H04N 21/266 20110101ALI20241016BHJP
   G06F 21/60 20130101ALI20241016BHJP
   H04L 9/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H04N21/2347
H04N21/266
G06F21/60 320
H04L9/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020200728
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088741
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】岩本 昌也
(72)【発明者】
【氏名】山田 正寿
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真二
(72)【発明者】
【氏名】海野 光晴
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134299(JP,A)
【文献】特開2006-013949(JP,A)
【文献】特開2002-247547(JP,A)
【文献】特開2001-069480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
G06F 21/60
H04L 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECM(Entitlement Control Message)を受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置であって、
前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、かつ日本ケーブルラボの高度ケーブル自主放送運用仕様に従うものであり、
前記ECMを受信するECM管理部と、
前記ECM管理部により受信された前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化するスクランブル部と、
前記スクランブル部により暗号化された前記コンテンツ情報、および前記スクランブル部において前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力する出力部とを備え、
前記出力部は、前記ECM送信装置から送信される前記ECMの更新周期に依拠せずに、前記ECMを、対応する前記スクランブル鍵を用いて暗号化された前記コンテンツ情報の出力タイミングから所定時間遅延したタイミングにおいて出力する、スクランブル装置。
【請求項2】
前記ECMの更新周期から前記所定時間を差し引いた差分は、7600ミリ秒よりも大きくなる、請求項1に記載のスクランブル装置。
【請求項3】
前記ECM管理部は、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵の更新を検知し、
前記スクランブル部は、前記ECM管理部により前記スクランブル鍵の更新が検知されたタイミングにおいて、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を前記偶数鍵および前記奇数鍵の間で切り替える、請求項1または請求項2に記載のスクランブル装置。
【請求項4】
ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置におけるスクランブル方法であって、
前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、かつ日本ケーブルラボの高度ケーブル自主放送運用仕様に従うものであり、
前記ECMを受信するステップと、
受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化するステップと、
暗号化した前記コンテンツ情報、および前記コンテンツ情報の暗号化に用いた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力するステップとを含み、
前記ECMを出力するステップにおいては、前記ECM送信装置から送信される前記ECMの更新周期に依拠せずに、前記ECMを、対応する前記スクランブル鍵を用いて暗号化された前記コンテンツ情報の出力タイミングから所定時間遅延したタイミングにおいて出力する、スクランブル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクランブル装置およびスクランブル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル放送により配信されるコンテンツを管理するためのCAS(Conditional Access System)に関する技術が開発されている。
【0003】
たとえば、JLabs SPEC-035 2.1版、“高度ケーブル自主放送運用仕様”、一般社団法人 日本ケーブルラボ(Japan Cable Laboratories)、2018年12月25日(非特許文献1)には、CASに関する各種規格が開示されている。すなわち、非特許文献1には、ECM(Entitlement Control Message)が適用されるES(Elementary Stream)のスクランブル鍵が変更される場合には、スクランブル鍵の変更に先だってECMが更新される旨が開示されている。また、非特許文献1には、スクランブル鍵の変更において、偶数鍵から奇数鍵、そして奇数鍵から偶数鍵の順に変更され、同一鍵が続けて変更されることはない旨が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】JLabs SPEC-035 2.1版、“高度ケーブル自主放送運用仕様”、一般社団法人 日本ケーブルラボ(Japan Cable Laboratories)、2018年12月25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外部装置において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置において、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報の出力を行うことが可能な技術が望まれる。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、外部装置において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置において、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報の出力を行うことが可能なスクランブル装置およびスクランブル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のスクランブル装置は、ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置であって、前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、前記ECMを受信するECM管理部と、前記ECM管理部により受信された前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化するスクランブル部と、前記スクランブル部により暗号化された前記コンテンツ情報、および前記スクランブル部において前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力する出力部とを備え、前記出力部は、前記ECMを、対応する前記スクランブル鍵を用いて暗号化された前記コンテンツ情報の出力タイミングから所定時間遅延したタイミングにおいて出力する。
【0008】
本開示のスクランブル装置は、ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置であって、前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、前記ECMを受信するECM管理部と、前記ECM管理部により受信された前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化するスクランブル部と、前記スクランブル部により暗号化された前記コンテンツ情報、および前記スクランブル部において前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力する出力部と、前記スクランブル鍵が更新される周期である更新周期を示す周期情報を取得する取得部とを備え、前記ECM管理部は、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵の更新を検知し、前記スクランブル部は、前記ECM管理部により前記スクランブル鍵の更新が検知されたタイミングから、前記取得部により取得された前記周期情報が示す前記更新周期から前記所定時間を差し引いた時間が経過したタイミングにおいて、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を前記偶数鍵および前記奇数鍵の間で切り替える。
【0009】
本開示のスクランブル方法は、ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置におけるスクランブル方法であって、前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、前記ECMを受信するステップと、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化し、暗号化した前記コンテンツ情報、および前記コンテンツ情報の暗号化に用いた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力するステップとを含み、前記コンテンツ情報および前記ECMを出力するステップにおいては、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を前記偶数鍵および前記奇数鍵の間で切り替える切替タイミングと、出力する前記ECMにおける前記スクランブル鍵の更新タイミングとの相対的な時間差を作ることにより、同じ前記スクランブル鍵を用いて暗号化された前記コンテンツ情報の出力が継続する期間である同一暗号化期間を、前記同一暗号化期間において出力する前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵である使用鍵を含む前記ECMにおける、前記使用鍵とは異なる前記スクランブル鍵の前記更新タイミングよりも所定時間前から始める。
【0010】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備えるスクランブル装置として実現され得るだけでなく、スクランブル装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、スクランブル装置における処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得たり、スクランブル装置を備える放送システムとして実現され得たり、放送システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、放送システムにおける処理をステップとする方法として実現され得たり、放送システムにおける処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、外部装置において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置において、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報の出力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の第1の実施の形態に係る放送システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の第1の実施の形態に係るECM送信装置により送信されるECMに含まれるスクランブル鍵の一例を示す図である。
図3図3は、本開示の第1の実施の形態に係る放送システムにおけるTSパケットのフォーマットを示す図である。
図4図4は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置の構成を示す図である。
図5図5は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置におけるECM検出部によるフォーマット変換の一例を示す図である。
図6図6は、本開示の第1の実施の形態に係る放送システムにおけるセクションデータのフォーマットを示す図である。
図7図7は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置におけるスクランブル部がTSパケットの暗号化に用いるスクランブル鍵を示す図である。
図8図8は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置において受信および送信されるスクランブル鍵の更新タイミングおよびコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を示すタイミングチャートの一例を示す図である。
図9図9は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置がスクランブル処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図10図10は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置がスクランブル処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図11図11は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置の構成を示す図である。
図12図12は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置において受信されるスクランブル鍵の更新タイミングおよびコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を示すタイミングチャートの一例を示す図である。
図13図13は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置において受信および送信されるスクランブル鍵の更新タイミングおよびコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を示すタイミングチャートの一例を示す図である。
図14図14は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置がスクランブル処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施の形態に係るスクランブル装置は、ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置であって、前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、前記ECMを受信するECM管理部と、前記ECM管理部により受信された前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化するスクランブル部と、前記スクランブル部により暗号化された前記コンテンツ情報、および前記スクランブル部において前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力する出力部とを備え、前記出力部は、前記ECMを、対応する前記スクランブル鍵を用いて暗号化された前記コンテンツ情報の出力タイミングから所定時間遅延したタイミングにおいて出力する。
【0015】
このように、ECMを、対応するスクランブル鍵を用いて暗号化されたコンテンツ情報の出力タイミングから所定時間遅延したタイミングにおいて出力する構成により、たとえばECM送信装置から送信されるECMの更新タイミングの変更に合わせてコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵の切替タイミングを変更することにより、出力するECMの更新タイミングよりも所定時間前のタイミングにおいて、コンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を切り替えることができる。このため、ECM送信装置から送信されるECMの更新タイミングが変更された場合であっても、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報を出力することができる。したがって、外部装置において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置において、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報の出力を行うことができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記ECM管理部は、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵の更新を検知し、前記スクランブル部は、前記ECM管理部により前記スクランブル鍵の更新が検知されたタイミングにおいて、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を前記偶数鍵および前記奇数鍵の間で切り替える。
【0017】
このような構成により、ECM送信装置から送信されるECMの更新タイミングの更新に柔軟に対応してコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を切り替えることができる。
【0018】
(3)本開示の実施の形態に係るスクランブル装置は、ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置であって、前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、前記ECMを受信するECM管理部と、前記ECM管理部により受信された前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化するスクランブル部と、前記スクランブル部により暗号化された前記コンテンツ情報、および前記スクランブル部において前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力する出力部と、前記スクランブル鍵が更新される周期である更新周期を示す周期情報を取得する取得部とを備え、前記ECM管理部は、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵の更新を検知し、前記スクランブル部は、前記ECM管理部により前記スクランブル鍵の更新が検知されたタイミングから、前記取得部により取得された前記周期情報が示す前記更新周期から前記所定時間を差し引いた時間が経過したタイミングにおいて、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を前記偶数鍵および前記奇数鍵の間で切り替える。
【0019】
このように、ECM送信装置から受信したECMに含まれるスクランブル鍵の更新を検知したタイミングから、取得した周期情報が示す更新周期から所定時間を差し引いた時間が経過したタイミングにおいて、暗号化に用いるスクランブル鍵を切り替える構成により、ECM送信装置から送信されるECMの更新周期が変更される場合であっても、たとえば予め取得した周期情報が示すECMの変更後の更新周期に合わせてコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵の切替タイミングを変更することにより、ECMの更新タイミングよりも所定時間前のタイミングにおいて、コンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を切り替えることができる。このため、ECM送信装置から送信されるECMの更新タイミングが変更された場合であっても、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報を出力することができる。したがって、外部装置において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置において、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報の出力を行うことができる。
【0020】
(4)本開示の実施の形態に係るスクランブル方法は、ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置におけるスクランブル方法であって、前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、前記ECMを受信するステップと、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化し、暗号化した前記コンテンツ情報、および前記コンテンツ情報の暗号化に用いた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力するステップとを含み、前記コンテンツ情報および前記ECMを出力するステップにおいては、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を前記偶数鍵および前記奇数鍵の間で切り替える切替タイミングと、出力する前記ECMにおける前記スクランブル鍵の更新タイミングとの相対的な時間差を作ることにより、同じ前記スクランブル鍵を用いて暗号化された前記コンテンツ情報の出力が継続する期間である同一暗号化期間を、前記同一暗号化期間において出力する前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵である使用鍵を含む前記ECMにおける、前記使用鍵とは異なる前記スクランブル鍵の前記更新タイミングよりも所定時間前から始める。
【0021】
このように、ECM送信装置から繰り返し送信されるECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置において、同一暗号化期間を、使用鍵を含むECMにおける使用鍵とは異なるスクランブル鍵の更新タイミングよりも所定時間前から始める方法により、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報の出力を行うことができる。したがって、外部装置において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置において、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報の出力を行うことができる。
【0022】
(5)好ましくは、前記ECMを受信するステップにおいては、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵の更新を検知し、前記コンテンツ情報および前記ECMを出力するステップにおいては、前記切替タイミングにおいて、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を、前記偶数鍵および前記奇数鍵のうちの直前に更新された前記スクランブル鍵とは異なる前記スクランブル鍵に切り替え、前記コンテンツ情報および前記ECMを出力するステップにおいては、前記更新タイミングを前記切替タイミングよりも所定時間遅らせることにより前記時間差を作る。
【0023】
このような方法により、ECM送信装置から送信されるECMの更新タイミングが変更された場合であっても、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報を出力することができるので、ECM送信装置から受信するECMの更新タイミングの変更に柔軟に対応してコンテンツ情報の暗号化を行うことができる。
【0024】
(6)好ましくは、前記スクランブル方法は、さらに、前記スクランブル鍵が更新される周期である更新周期を示す周期情報を取得するステップを含み、前記ECMを受信するステップにおいては、受信した前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵の更新を検知し、前記コンテンツ情報および前記ECMを出力するステップにおいては、前記切替タイミングにおいて、暗号化に用いる前記スクランブル鍵を、前記偶数鍵および前記奇数鍵のうちの直前に更新された前記スクランブル鍵に切り替え、前記コンテンツ情報および前記ECMを出力するステップにおいては、前記切替タイミングを、前記更新タイミングよりも、取得した前記周期情報が示す前記更新周期から前記所定時間を差し引いた時間遅らせることにより前記時間差を作る。
【0025】
このような方法により、ECM送信装置から送信されるECMの更新周期が変更される場合であっても、たとえば予め取得した周期情報が示すECMの変更後の更新周期に合わせてコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵の切替タイミングを変更することにより、CASに関する規格に従ってECMおよびコンテンツ情報を出力することができるので、外部装置から受信するECMの更新タイミングの変更に柔軟に対応してコンテンツ情報の暗号化を行うことができる。
【0026】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る放送システムの構成を示す図である。図1を参照して、放送システム401は、ECM送信装置201と、EMM(Entitlement Management Message)送信装置202と、スクランブル装置101と、エンコーダ装置111と、リマックス装置121と、複数のSTB(Set Top Box)301とを備える。STB301には、図示しないCASモジュールが接続されている。
【0028】
たとえば、ECM送信装置201およびエンコーダ装置111は、互いに異なる場所に設けられる。より詳細には、ECM送信装置201およびEMM送信装置202は、番組配信センタ251に設けられる。エンコーダ装置111、スクランブル装置101およびリマックス装置121は、ケーブルテレビ局151に設けられる。STB301は、加入者宅351に設けられる。STB301は、図示しないケーブルテレビ放送受信装置を含む。
【0029】
番組配信センタ251は、コンテンツをケーブルテレビ局151経由で加入者宅351へ配信する。番組配信センタ251は、コンテンツと、加入者宅351ごとの契約情報とを一括して管理する。
【0030】
ECM送信装置201は、コンテンツの一例である番組に関する情報と、映像情報および音声情報等のコンテンツ情報を暗号化するためのスクランブル鍵と、各種制御情報とを含むECMを生成する。当該ECMは、スクランブル鍵として偶数鍵KEおよび奇数鍵KOを含み、かつ偶数鍵KEおよび奇数鍵KOが交互に更新される。たとえば、偶数鍵KEおよび奇数鍵KOは、更新周期UCに従う更新タイミングUTごとに交互に更新される。更新周期UCは、たとえば8秒である。
【0031】
ECM送信装置201は、生成したECMを、ワーク鍵を用いて暗号化し、暗号化したECMをスクランブル装置101へ送信する。より詳細には、ECM送信装置201は、暗号化したECMを含むセクションデータを生成し、生成したセクションデータが複数に分割された情報を含む複数のTSパケットを、たとえば1または複数のIP(Internet Protocol)パケットに含めてIP伝送網211経由でスクランブル装置101へ送信する。IP伝送網211では、IPプロトコルに従って、IPパケットが伝送される。
【0032】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係るECM送信装置により送信されるECMに含まれるスクランブル鍵の一例を示す図である。
【0033】
図2を参照して、たとえば、ECM送信装置201は、ECMを所定周期PCで繰り返しスクランブル装置101へ送信する。具体的には、ECM送信装置201は、更新タイミングUT1から次の更新タイミングUT2までの期間において、奇数鍵KO1および偶数鍵KE2を含むECM_E1を所定周期PCで繰り返し送信し、更新タイミングUT2から次の更新タイミングUT3までの期間において、偶数鍵KE2および奇数鍵KO3を含むECM_E2を所定周期PCで繰り返し送信し、更新タイミングUT3から次の更新タイミングUT4までの期間において、奇数鍵KO3および偶数鍵KE4を含むECM_E3を所定周期PCで繰り返し送信する。所定周期PCは、たとえば100ミリ秒である。なお、ECM送信装置201は、ECMをスクランブル装置101へ不定期に繰り返し送信する構成であってもよい。
【0034】
再び図1を参照して、EMM送信装置202は、加入者宅351ごとの契約情報と、暗号化されたECMを復号するためのワーク鍵とを含むEMMを生成する。EMM送信装置202は、生成したEMMを、番組の視聴契約を行った加入者宅351におけるCASモジュールにより復号することができるように設定されたマスタ鍵を用いて暗号化する。EMM送信装置202は、マスタ鍵を用いて暗号化したEMMをスクランブル装置101へ送信する。より詳細には、EMM送信装置202は、暗号化したEMMを含むセクションデータを生成し、生成したセクションデータが複数に分割された情報を含む複数のTSパケットを、たとえば1または複数のIPパケットに含めてIP伝送網211経由でスクランブル装置101およびリマックス装置121へ送信する。
【0035】
ケーブルテレビ局151は、コンテンツ情報をスクランブルすなわち暗号化し、暗号化されたコンテンツ情報を加入者宅351のSTB301へ送信する。
【0036】
より詳細には、エンコーダ装置111は、コンテンツ事業者としての番組配信センタ251からコンテンツ情報を取得し、取得したコンテンツ情報を符号化することによりコンテンツ情報が複数に分割された情報を含む複数のTSパケットを生成する。エンコーダ装置111は、生成した複数のTSパケットを、たとえば1または複数のIPパケットに含めてスクランブル装置101へ送信する。
【0037】
スクランブル装置101は、ECM送信装置201から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化する。より詳細には、スクランブル装置101は、エンコーダ装置111からIPパケットを受信し、受信したIPパケットからTSパケットを取得する。
【0038】
また、スクランブル装置101は、IP伝送網211経由でEMM送信装置202からIPパケットを受信し、受信したIPパケットに含まれるTSパケットからEMMを取得する。スクランブル装置101は、取得したEMMを、マスタ鍵を用いて復号することにより、EMMからワーク鍵を取得する。スクランブル装置101は、後述するCASモジュールに格納されたワーク鍵を、EMMから取得したワーク鍵に更新する。
【0039】
また、スクランブル装置101は、IP伝送網211経由でECM送信装置201からIPパケットを受信し、受信したIPパケットに含まれるTSパケットからECMを取得する。スクランブル装置101は、取得したECMを、CASモジュールに格納されたワーク鍵を用いて復号することにより、ECMからスクランブル鍵を取得する。
【0040】
スクランブル装置101は、エンコーダ装置111から受信したIPパケットから取得したTSパケットを、スクランブル処理して出力する。より詳細には、スクランブル装置101は、TSパケットを、取得したスクランブル鍵を用いて暗号化する。スクランブル装置101は、暗号化したTSパケットおよびTSパケットの暗号化に用いたECMが複数に分割された情報を含む複数のTSパケットを、たとえば1または複数のIPパケットに含めてリマックス装置121へ送信する。
【0041】
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る放送システムにおけるTSパケットのフォーマットを示す図である。図3を参照して、TSパケットは、データ長が188バイトであり、ヘッダと、アダプテーションフィールドと、ペイロードとを含む。ヘッダは、同期バイトと、トランスポートエラーインジケータと、ペイロードユニット開始インジケータと、トランスポート優先度と、PID(Packet Identification)と、トランスポートスクランブル制御と、アダプテーションフィールド制御と、連続性指標すなわちCC(Continuity Counter)値とを含む。
【0042】
PIDは、TSパケットの識別子である。PIDは、13ビットで表現される識別子であり、TSパケットのペイロードの内容に応じた値に設定される。ペイロードユニット開始インジケータは、ペイロードに含まれる情報等が、当該ペイロードから開始されるか否かを示す1ビットのデータである。CC値は、TSパケットの連続性を示す、同じPIDのTSパケットごとにインクリメントされる4ビットのカウンタ値である。トランスポートスクランブル制御は、ペイロードに含まれる情報が暗号化されているか否か、およびペイロードに含まれる情報が偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのいずれを用いて暗号化されているか等を示す2ビットのデータである。
【0043】
再び図1を参照して、リマックス装置121は、IP伝送網211経由でEMM送信装置202からIPパケットを受信する。また、リマックス装置121は、スクランブル装置101からIPパケットを受信する。
【0044】
リマックス装置121は、受信したIPパケットを所定の変調方式により変調することによりRF(Radio Frequency)帯の放送信号を生成する。リマックス装置121は、生成した放送信号をケーブルテレビ網311経由で加入者宅351へ送信する。
【0045】
加入者宅351におけるSTB301は、リマックス装置121から送信された放送信号をケーブルテレビ網311経由で受信する。STB301は、受信した放送信号を復調することにより、暗号化されたコンテンツ情報、ECMおよびEMMを取得する。STB301は、CASモジュールを用いてEMMを復号することによりワーク鍵を取得し、取得したワーク鍵を用いてECMを復号することによりスクランブル鍵を取得し、取得したスクランブル鍵を用いてコンテンツ情報をデスクランブルすなわち復号する。STB301は、復号したコンテンツ情報を図示しないTVモニタへ送信する。当該TVモニタは、STB301から受信したコンテンツ情報に基づいて番組を再生する。
【0046】
[スクランブル装置]
図4は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置の構成を示す図である。図4を参照して、スクランブル装置101は、ECM管理部10と、EMM管理部20と、取得部30と、スクランブル部40と、出力部50と、記憶部60と、CASモジュール70とを備える。ECM管理部10は、ECM検出部11と、鍵出力部12と、ECM復号部13とを含む。CASモジュール70には、ワーク鍵が格納されている。なお、記憶部60は、スクランブル装置101の外部に設けられてもよい。
【0047】
(取得部)
取得部30は、ECM送信装置201により送信されるECMにおける更新周期UCを示す周期情報を取得する。取得部30は、取得した周期情報を記憶部60に保存する。
【0048】
たとえば、取得部30は、定期的または不定期に、周期情報を含むIPパケットをIP伝送網211経由でECM送信装置201から受信する。取得部30は、受信したIPパケットから周期情報を取得し、取得した周期情報を記憶部60に保存する。
【0049】
あるいは、ケーブルテレビ局151におけるオペレータは、定期的または不定期に、番組配信センタ251から更新周期UCの通知を受ける。当該オペレータは、通知された更新周期UCをキーボードまたはマウスを用いてスクランブル装置101に入力する操作を行う。スクランブル装置101における図示しない受付部は、オペレータによる入力操作を受け付け、更新周期UCを示す周期情報を取得部30へ出力する。取得部30は、当該受付部から周期情報を受けて、受けた周期情報を記憶部60に保存する。
【0050】
(ECM管理部)
ECM管理部10は、ECM送信装置201から送信されるECMを受信する。ECM管理部10は、受信したECMに含まれるスクランブル鍵をスクランブル部40へ出力する。上述したように、ECMは、スクランブル鍵として偶数鍵KEおよび奇数鍵KOを含み、かつ偶数鍵KEおよび奇数鍵KOがたとえば更新タイミングUTごとに交互に更新されるものである。
【0051】
より詳細には、ECM管理部10におけるECM検出部11は、IP伝送網211経由でECM送信装置201からIPパケットを受信し、受信したIPパケットからTSパケットを取得する。ECM検出部11は、取得したTSパケットにおけるPID等を参照することにより、当該TSパケットのペイロードに、ECMを含むセクションデータの一部が格納されていると判断した場合、当該TSパケットを出力部50へ出力する。
【0052】
また、ECM検出部11は、当該TSパケットのデータフォーマットからセクションデータのデータフォーマットへの変換を行う。
【0053】
図5は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置におけるECM検出部によるフォーマット変換の一例を示す図である。図5を参照して、セクションデータは、たとえば最大1024バイトまたは最大4096バイトのデータ長を有する。セクションデータは、ECM送信装置201において生成され、データ長がたとえば188バイトの複数のTSパケットに分割され、IPパケットに含めて伝送される。セクションデータは、ヘッダ部のフィールドと、データ部のフィールドと、CRC(Cyclic Redundancy Check)32のフィールドとを含む。
【0054】
ECM検出部11は、TSパケットのペイロードに格納されたデータを結合することにより、ECM送信装置201において生成された、暗号化されたECMを含むセクションデータを再構成する。
【0055】
図6は、本開示の第1の実施の形態に係る放送システムにおけるセクションデータのフォーマットを示す図である。図6を参照して、セクションデータにおけるヘッダ部は、テーブル識別子と、セクションシンタクス指示と、セクション長と、テーブル識別子拡張と、バージョン番号と、カレントネクスト指示と、セクション番号と、最終セクション番号とを含む。
【0056】
テーブル識別子は、セクションデータが属するテーブルを示す。テーブル識別子の値は、セクションデータが属するテーブルがECMである場合、すなわちデータ部にECMが格納される場合、「0x82」または「0x83」である。ここで、「0x」で始まる数字は、「0x」以降の数字が16進数で表されていることを意味する。バージョン番号は、テーブルのバージョン番号を示す。バージョン番号の値は、データ部に格納されるECMに含まれるスクランブル鍵の更新に伴って更新される。
【0057】
ECM検出部11は、再構成したセクションデータのデータ部から、暗号化されたECMを取得し、取得したECMをECM復号部13へ出力する。
【0058】
ECM復号部13は、ECM検出部11からECMを受けて、受けたECMを、CASモジュール70に格納されたワーク鍵を用いて復号する。ECM復号部13は、復号したECMに含まれるスクランブル鍵すなわち偶数鍵KEおよび奇数鍵KOを鍵出力部12へ出力する。
【0059】
鍵出力部12は、ECM復号部13から偶数鍵KEおよび奇数鍵KOを受けて、受けた偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのいずれか一方をスクランブル部40へ出力する。
【0060】
ECM管理部10は、受信したECMに含まれるスクランブル鍵の更新を検知する。たとえば、ECM検出部11は、再構成したセクションデータのヘッダ部に格納された情報に基づいて、当該セクションデータのデータ部に格納されたECMに含まれるスクランブル鍵の更新を検知する。
【0061】
一例として、ECM検出部11は、再構成したセクションデータのバージョン番号の値に基づいて、当該セクションデータのデータ部に格納されたECMに含まれるスクランブル鍵の更新を検知する。より詳細には、ECM検出部11は、セクションデータを再構成するたびに、再構成したセクションデータからバージョン番号の値を取得し、取得したバージョン番号の値と、直前に再構成したセクションデータから取得したバージョン番号の値とを比較することにより、バージョン番号の変化を検知する。
【0062】
ECM検出部11は、セクションデータのバージョン番号の変化を検知した場合、セクションデータに格納されたECMに含まれるスクランブル鍵が更新されたと判断し、バージョン番号の変化を検知したタイミングである検知タイミングDTを示す検知情報を鍵出力部12へ出力する。
【0063】
鍵出力部12は、ECM検出部11から検知情報を受けて、記憶部60から周期情報を取得する。鍵出力部12は、当該検知情報が示す検知タイミングDTから、当該周期情報が示す更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過したタイミングにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える。
【0064】
(EMM管理部)
EMM管理部20は、IP伝送網211経由でEMM送信装置202からIPパケットを受信し、受信したIPパケットからTSパケットを取得する。EMM管理部20は、取得したTSパケットにおけるPID等を参照することにより、当該TSパケットのペイロードに、EMMを含むセクションデータの一部EMMが格納されていると判断した場合、ECM復号部13と同様に、当該TSパケットのデータフォーマットからセクションデータのデータフォーマットへの変換を行う。
【0065】
EMM管理部20は、TSパケットのペイロードに格納されたデータを結合することにより、EMM送信装置202において生成された、暗号化されたEMMを含むセクションデータを再構成する。
【0066】
EMM管理部20は、再構成したセクションデータのデータ部のフィールドから、暗号化されたEMMを取得し、取得したEMMを、たとえば予め番組配信センタ251から付与されたマスタ鍵を用いて復号することにより、EMMからワーク鍵を取得する。EMM管理部20は、CASモジュール70に格納されたワーク鍵を、EMMから取得したワーク鍵に更新する。
【0067】
(スクランブル部)
スクランブル部40は、ECM管理部10により受信されたECMに含まれるスクランブル鍵を用いてコンテンツ情報を暗号化する。
【0068】
より詳細には、スクランブル部40は、エンコーダ装置111からIPパケットを受信し、受信したIPパケットに含まれるTSパケットを、鍵出力部12から受けたスクランブル鍵を用いて暗号化する。
【0069】
図7は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置におけるスクランブル部がTSパケットの暗号化に用いるスクランブル鍵を示す図である。図7は、非特許文献1に記載の規格に定められている、ECMの更新タイミングと暗号化に用いるスクランブル鍵の切り替えタイミングとを示している。
【0070】
図7を参照して、上記規格において、更新周期UCを、n回目の更新タイミングUTnから始まる期間T1と、期間T1の終了時刻から(n+1)回目の更新タイミングUT(n+1)までの期間T2とに分けたときに、期間T2および更新タイミングUT(n+1)から始まる期間において同一のスクランブル鍵を用いてコンテンツ情報の暗号化を行うことが定められている。ここで、nは1以上の整数である。また、上記規格において、期間T1は7600ミリ秒より大きく、期間T2はゼロ秒より大きく、かつ期間T1と期間T2との和は8000ミリ秒より大きく設定することが定められている。
【0071】
以下、期間T1において用いるべきスクランブル鍵をカレント鍵とも称し、期間T2において用いるべきスクランブル鍵をネクスト鍵とも称する。
【0072】
スクランブル部40は、スクランブル鍵の切り替えに関する当該規格に従って、期間T1においてカレント鍵を用いてTSパケットを暗号化し、期間T2においてネクスト鍵を用いてTSパケットを暗号化する。スクランブル部40における、暗号化に用いるスクランブル鍵の切り替えの詳細については後述する。スクランブル部40は、暗号化したTSパケットを出力部50へ出力する。
【0073】
(出力部)
出力部50は、スクランブル部40により暗号化されたコンテンツ情報、およびスクランブル部40においてコンテンツ情報の暗号化に用いられたスクランブル鍵を含むECMを出力する。
【0074】
より詳細には、出力部50は、スクランブル部40から受けた、暗号化されたTSパケットと、ECM検出部11から受けた、ECMを含むセクションデータの一部が格納されたTSパケットとを時間軸方向に多重化し、多重化後の各TSパケットをリマックス装置121へ送信する。
【0075】
スクランブル装置101は、出力コンテンツに用いられている暗号化鍵すなわちスクランブル鍵の継続期間が、出力ECMにおいて当該暗号化鍵の継続する期間内となるようにコンテンツおよびECMを出力する。より詳細には、出力部50は、スクランブル鍵を用いて暗号化されたコンテンツ情報を出力する期間が、当該スクランブル鍵を含むECMを出力する期間に含まれるように、コンテンツ情報を含む暗号化されたTSパケットと、ECMを含むセクションデータの一部が格納されたTSパケットとを多重化してリマックス装置121へ送信する。
【0076】
<スクランブル鍵の切り替え処理>
図8は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置において受信および送信されるスクランブル鍵の更新タイミングおよびコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を示すタイミングチャートの一例を示す図である。
【0077】
図8を参照して、スクランブル部40は、ECM管理部10によりスクランブル鍵の更新が検知された検知タイミングDTから、取得部30により取得された周期情報が示す更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過したタイミングSTにおいて、暗号化に用いるスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える。
【0078】
より詳細には、ECM管理部10におけるECM検出部11は、n回目の更新タイミングUTnにおいてECM送信装置201から受信したECMに含まれるスクランブル鍵が更新されたことを検知して、検知タイミングDTnを示す検知情報を鍵出力部12へ出力する。検知タイミングDTnは、更新タイミングUTnと同じタイミング、または更新タイミングUTnの直後のタイミングである。
【0079】
鍵出力部12は、検知情報をECM検出部11から受けて、受けた検知情報が示す検知タイミングDTnから、記憶部60における周期情報が示す更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過したタイミングST(n+1)において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を奇数鍵KOと偶数鍵KEとの間で切り替える。たとえば、所定時間Tbは、上述の期間T2の長さと等しい。このように、鍵出力部12は、タイミングST(n+1),ST(n+2),ST(t+3)・・・において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を奇数鍵KOと偶数鍵KEとの間で切り替える。以下、タイミングSTを切替タイミングSTとも称する。
【0080】
たとえば、鍵出力部12は、切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのうちの直前に更新されたスクランブル鍵に切り替える。より詳細には、鍵出力部12は、切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのうちの、当該切替タイミングSTの直前の検知タイミングDTにおいて更新されたスクランブル鍵に切り替える。
【0081】
具体的には、たとえば、鍵出力部12は、切替タイミングST2において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、切替タイミングST2の直前の検知タイミングDT1において更新された偶数鍵KE2に切り替える。また、たとえば、鍵出力部12は、切替タイミングST3において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、切替タイミングST3の直前の検知タイミングDT2において更新された奇数鍵KO3に切り替える。また、たとえば、鍵出力部12は、切替タイミングST4において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、切替タイミングST4の直前の検知タイミングDT3において更新された偶数鍵KE4に切り替える。
【0082】
スクランブル部40は、鍵出力部12から受けたスクランブル鍵を用いてTSパケットの暗号化を行うことにより、当該切替タイミングSTにおいて、暗号化に用いるスクランブル鍵を奇数鍵KOと偶数鍵KEとの間で切り替える。
【0083】
これにより、スクランブル部40は、n回目の更新タイミングUTnよりも所定時間前の切替タイミングSTnから始まる対象期間TXnにおいて、ECM管理部10により受信されたECMに含まれる偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのいずれか一方を用いてコンテンツ情報を暗号化する。また、スクランブル部40は、(n+1)回目の更新タイミングUT(n+1)よりも所定時間前の切替タイミングST(n+1)から始まる、対象期間Tnに続く対象期間TX(n+1)において、ECM管理部10により受信されたECMに含まれる偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのいずれか他方を用いてコンテンツ情報を暗号化する。
【0084】
具体的には、たとえば、鍵出力部12は、更新タイミングUT1に対応する検知タイミングDT1から、更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST2において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を奇数鍵KO1から偶数鍵KE2に切り替える。より詳細には、鍵出力部12は、検知タイミングDT1から切替タイミングST2までの期間において、ECM複号部13から受けたECM_E1に含まれる奇数鍵KO1をスクランブル部40へ出力し、切替タイミングST2から更新タイミングUT2までの期間において、ECM複号部13から受けたECM_E1に含まれる偶数鍵KE2をスクランブル部40へ出力する。
【0085】
また、たとえば、鍵出力部12は、更新タイミングUT2に対応する検知タイミングDT2から、更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST3において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を偶数鍵KE2から奇数鍵KO3に切り替える。より詳細には、鍵出力部12は、検知タイミングDT2から切替タイミングST3までの期間において、ECM複号部13から受けたECM_E2に含まれる偶数鍵KE2をスクランブル部40へ出力し、切替タイミングST3から更新タイミングUT3までの期間において、ECM複号部13から受けたECM_E2に含まれる奇数鍵KO3をスクランブル部40へ出力する。
【0086】
また、たとえば、鍵出力部12は、更新タイミングUT3に対応する検知タイミングDT3から、更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST4において、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を奇数鍵KO3から偶数鍵KE4に切り替える。より詳細には、鍵出力部12は、検知タイミングDT3から切替タイミングST4までの期間において、ECM複号部13から受けたECM_E3に含まれる奇数鍵KO3をスクランブル部40へ出力し、切替タイミングST4から更新タイミングUT4までの期間において、ECM複号部13から受けたECM_E3に含まれる偶数鍵KE4をスクランブル部40へ出力する。
【0087】
スクランブル部40は、検知タイミングDT1から切替タイミングST2までの期間において、鍵出力部12から受けた奇数鍵KO1を用いてTSパケットを暗号化し、切替タイミングST2から切替タイミングST3までの対象期間TX2において、鍵出力部12から受けた偶数鍵KE2を用いてTSパケットを暗号化し、切替タイミングST3から切替タイミングST4までの対象期間TX3において、鍵出力部12から受けた奇数鍵KO3を用いてTSパケットを暗号化し、切替タイミングST4から切替タイミングST5までの対象期間TX4において、鍵出力部12から受けた偶数鍵KE4を用いてTSパケットを暗号化する。
【0088】
このように、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置101は、切替タイミングSTと、出力するECMにおけるスクランブル鍵の更新タイミングUTとの相対的な時間差を作る。より詳細には、スクランブル装置101は、切替タイミングSTを、更新タイミングUTよりも時間Ta遅らせることにより当該時間差を作る。スクランブル装置101は、当該時間差を作ることにより、同じスクランブル鍵を用いて暗号化されたコンテンツ情報の出力が継続する期間である対象期間TXを、対象期間TXにおいて出力するコンテンツ情報の暗号化に用いられたスクランブル鍵を含むECMの出力が継続する期間である出力継続期間内のタイミングにおいて始める。対象期間TXは、同一暗号化期間の一例である。より詳細には、スクランブル装置101は、当該時間差を作ることにより、対象期間TXを、対象期間TXにおいて出力するコンテンツ情報の暗号化に用いられたスクランブル鍵である使用鍵を含むECMにおける、使用鍵とは異なるスクランブル鍵の更新タイミングUTよりも所定時間Tb前から始める。具体的には、たとえば、スクランブル装置101は、当該時間差を作ることにより、対象期間TX3を、対象期間TX3において出力するコンテンツ情報の暗号化に用いられた使用鍵である奇数鍵KO3を含むECM_E2,ECM_E3における偶数鍵KEの更新タイミングUT3よりも所定時間Tb前から始め、対象期間TX4を、対象期間TX4において出力するコンテンツ情報の暗号化に用いられた使用鍵である偶数鍵KE4を含むECM_E3,ECM_E4における奇数鍵KOの更新タイミングUT4よりも所定時間Tb前から始める。
【0089】
すなわち、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置101では、更新タイミングUTnに対応する検知タイミングDTnから、更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST(n+1)において、暗号化に用いるスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える。これにより、スクランブル鍵の切り替えに関する上述の規格に従って、期間T1において、ECM送信装置201から受信してリマックス装置121へ送信するECMに含まれるカレント鍵を用いてコンテンツ情報を暗号化し、次の更新タイミングUT(n+1)よりも所定時間前から始まる期間T2において、ECM送信装置201から受信してリマックス装置121へ送信するECMに含まれるネクスト鍵を用いてコンテンツ情報を暗号化することができる。
【0090】
ここで、比較例に係るスクランブル装置101として、たとえば連続する2つの検知タイミングDTに基づいてECMの更新周期UCを算出し、検知タイミングDTnから、算出した更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST(n+1)において、暗号化に用いるスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替えることが考えられる。しかしながら、このような構成では、ECM送信装置201から送信されるECMの更新周期UCが変更された場合、上述の規格に従ってコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を切り替えることができない場合がある。
【0091】
具体的には、比較例に係るスクランブル装置101では、ECM送信装置201から送信されるECMの更新周期UCが変更され、たとえばECMの(n+1)回目の更新が本来の更新タイミングUT(n+1)よりも早いタイミングUTmにおいて行われた場合においても、ECMの(n+1)回目の更新が本来の更新タイミングUT(n+1)において行われた場合と同様に、検知タイミングDTnから、算出した更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST(n+1)において、暗号化に用いるスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替えてしまう。その結果、実際の更新タイミングUTmよりも所定期間Tb前のタイミングにおいてスクランブル鍵を切り替えることができず、期間T2としてゼロ秒より大きい期間を確保することができなくなる。
【0092】
これに対して、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置101では、取得部30は、スクランブル鍵が更新される周期である更新周期を示す周期情報を取得する。ECM管理部10は、受信したECMに含まれるスクランブル鍵の更新を検知する。スクランブル部40は、ECM管理部10によりスクランブル鍵の更新が検知されたタイミングである検知タイミングDTnから、取得部30により取得された周期情報が示す更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST(n+1)において、暗号化に用いるクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える。
【0093】
このような構成により、ECM送信装置201から送信されるECMの更新周期UCが変更される場合において、たとえば、予め変更後の更新周期UCを示す周期情報を取得し、変更後の更新周期UCに基づいて、上述の規格に従うタイミングにおいてコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を切り替えることができる。したがって、外部装置であるECM送信装置201において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置101において、ECM送信装置201から受信するECMの更新周期UCの変更に柔軟に対応してコンテンツ情報の暗号化を行うことができる。
【0094】
[動作の流れ]
本開示の第1の実施の形態に係る放送システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0095】
図9は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置がスクランブル処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0096】
図9を参照して、まず、スクランブル装置101は、周期情報を取得する(ステップS102)。
【0097】
次に、ECM送信装置201から送信されるECMを受信する。より詳細には、スクランブル装置101は、IP伝送網211経由でECM送信装置201からIPパケットを受信し、受信したIPパケットからTSパケットを取得する。そして、スクランブル装置101は、TSパケットのペイロードに格納されたデータを結合することにより、暗号化されたECMを含むセクションデータを再構成し、再構成したセクションデータから暗号化されたECMを取得する(ステップS104)。
【0098】
次に、スクランブル装置101は、取得したECMに含まれるスクランブル鍵を用いてコンテンツ情報を暗号化する。より詳細には、スクランブル装置101は、取得したECMを、CASモジュール70に格納されたワーク鍵を用いて復号する。そして、スクランブル装置101は、エンコーダ装置111からIPパケットを受信し、受信したIPパケットに含まれる、コンテンツ情報を含むTSパケットを、復号したECMに含まれるスクランブル鍵を用いて暗号化する(ステップS106)。
【0099】
次に、スクランブル装置101は、暗号化したコンテンツ情報、およびコンテンツ情報の暗号化に用いたスクランブル鍵を含むECMを出力する。より詳細には、スクランブル装置101は、暗号化されたTSパケットと、暗号化に用いたECMを含むセクションデータの一部が格納されたTSパケットとを時間軸方向に多重化し、多重化後の各TSパケットをリマックス装置121へ送信する(ステップS108)。
【0100】
図10は、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置がスクランブル処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図10は、図9に示すフローチャートのステップS106の詳細を示している。
【0101】
図10を参照して、まず、スクランブル装置101は、ECM送信装置201から送信されるECMに含まれるスクランブル鍵の更新を待ち受け(ステップS202でNO)、ECMに含まれるスクランブル鍵が更新されたことを検知すると(ステップS202でYES)、スクランブル鍵の更新を検知した検知タイミングDTnから、周期情報が示す更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過した切替タイミングST(n+1)において、暗号化に用いるスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える。すなわち、スクランブル装置101は、切替タイミングSTを更新タイミングUTよりも時間Ta遅らせることにより、切替タイミングSTと、出力するECMにおけるスクランブル鍵の更新タイミングUTとの相対的な時間差を作る(ステップS204)
【0102】
次に、スクランブル装置101は、ECM送信装置201から送信されるECMに含まれるスクランブル鍵の次回の更新を待ち受ける(ステップS202でNO)。
【0103】
なお、本開示の第1の実施の形態に係る放送システム401では、ECM送信装置201、EMM送信装置202およびエンコーダ装置111は、TSパケットを1または複数のIPパケットに含めてIP伝送網211経由でスクランブル装置101へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。ECM送信装置201、EMM送信装置202およびエンコーダ装置111のうちの少なくともいずれか1つは、TSパケットをASI(Asynchronous Serial Interface)方式の信号であるASI信号に含めてスクランブル装置101へ送信する構成であってもよい。
【0104】
また、本開示の第1の実施の形態に係るスクランブル装置101では、鍵出力部12は、ECM検出部11から受けた検知情報が示す検知タイミングDTから、周期情報が示す更新周期UCから所定時間Tbを差し引いた時間Taが経過したタイミングである切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える構成であるとしたが、これに限定するものではない。鍵出力部12は、検知タイミングDT以外のタイミングに基づく切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える構成であってもよい。
【0105】
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0106】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係るスクランブル装置101と比べて、ECMを、対応するスクランブル鍵を用いて暗号化されたコンテンツ情報の出力タイミングから所定時間遅延したタイミングにおいて出力するスクランブル装置102に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係るスクランブル装置101と同様である。
【0107】
[構成および基本動作]
図11は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置の構成を示す図である。図11を参照して、スクランブル装置102は、第1の実施の形態に係るスクランブル装置101と比べて、ECM管理部10の代わりにECM管理部80を備える。ECM管理部10は、ECM検出部11と、鍵出力部82と、ECM復号部13と、遅延制御部84とを含む。
【0108】
ECM管理部10におけるECM検出部11は、IP伝送網211経由でECM送信装置201からIPパケットを受信し、受信したIPパケットからTSパケットを取得する。ECM検出部11は、取得したTSパケットにおけるPID等を参照することにより、当該TSパケットのペイロードに、ECMを含むセクションデータの一部が格納されていると判断した場合、当該TSパケットを遅延制御部84へ出力する。
【0109】
また、ECM検出部11は、当該TSパケットのペイロードに格納されたデータを結合することにより、ECM送信装置201において生成された、暗号化されたECMを含むセクションデータを再構成する。たとえば、ECM検出部11は、再構成したセクションデータのヘッダ部に格納された情報に基づいて、当該セクションデータのデータ部に格納されたECMに含まれるスクランブル鍵の更新を検知する。ECM検出部11は、セクションデータのバージョン番号の変化を検知した場合、バージョン番号の変化を検知したタイミングである検知タイミングDTを示す検知情報を鍵出力部82へ出力する。
【0110】
鍵出力部82は、ECM検出部11から検知情報を受けて、受けた検知情報が示す検知タイミングDTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える。
【0111】
スクランブル部40は、エンコーダ装置111からIPパケットを受信し、受信したIPパケットに含まれるTSパケットを、鍵出力部82から受けたスクランブル鍵を用いて暗号化する。スクランブル部40は、暗号化したTSパケットを出力部50へ出力する。
【0112】
遅延制御部84は、ECM検出部11からTSパケットを受けて、受けたTSパケットを、遅延処理を行って出力部50へ出力する。より詳細には、遅延制御部84は、ECM検出部11から受けたTSパケットを、所定時間Tb保持してから出力部50へ出力する。
【0113】
出力部50は、遅延制御部84から受けた、ECMを含むセクションデータの一部が格納されている遅延処理後のTSパケットと、スクランブル部40から受けた、当該ECMに含まれるスクランブル鍵を用いて暗号化されたTSパケットとを時間軸方向に多重化し、多重化後の各TSパケットをリマックス装置121へ送信する。
【0114】
<スクランブル鍵の切り替え処理>
図12は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置において受信されるスクランブル鍵の更新タイミングおよびコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を示すタイミングチャートの一例を示す図である。
【0115】
図12を参照して、スクランブル部40は、ECM管理部10によりスクランブル鍵の更新が検知されたタイミングである検知タイミングDTnにおいて、暗号化に用いるスクランブル鍵を偶数鍵KEおよび奇数鍵KOの間で切り替える。
【0116】
より詳細には、ECM管理部10におけるECM検出部11は、n回目の更新タイミングUTnにおいてECM送信装置201から受信したECMに含まれるスクランブル鍵が更新されたことを検知して、検知タイミングDTnを示す検知情報を鍵出力部12へ出力する。
【0117】
鍵出力部82は、検知情報をECM検出部11から受けて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を奇数鍵KOと偶数鍵KEとの間で切り替える。すなわち、鍵出力部82は、たとえば検知タイミングDTの直後のタイミングである切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を奇数鍵KOと偶数鍵KEとの間で切り替える。
【0118】
たとえば、鍵出力部12は、切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのうちの直前に更新されたスクランブル鍵とは異なるスクランブル鍵に切り替える。より詳細には、鍵出力部12は、切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、偶数鍵KEおよび奇数鍵KOのうちの、当該切替タイミングSTの直前の検知タイミングDTにおいて更新されなかったスクランブル鍵に切り替える。
【0119】
具体的には、たとえば、鍵出力部12は、検知タイミングDT2の直後の切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、検知タイミングDT2において更新されなかった偶数鍵KE2に切り替える。また、たとえば、鍵出力部12は、検知タイミングDT3の直後の切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、検知タイミングDT3において更新されなかった奇数鍵KO3に切り替える。また、たとえば、鍵出力部12は、検知タイミングDT4の直後の切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を、検知タイミングDT4において更新されなかった偶数鍵KE4に切り替える。
【0120】
このように、鍵出力部82は、更新タイミングUTnに対応する検知タイミングDTnの直後の切替タイミングSTにおいて、スクランブル部40へ出力するスクランブル鍵を奇数鍵KOと偶数鍵KEとの間で切り替える。
【0121】
スクランブル部40は、鍵出力部82から受けたスクランブル鍵を用いてTSパケットの暗号化を行うことにより、検知タイミングDTnにおいて、暗号化に用いるスクランブル鍵を奇数鍵KOと偶数鍵KEとの間で切り替える。
【0122】
図13は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置において受信および送信されるスクランブル鍵の更新タイミングおよびコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を示すタイミングチャートの一例を示す図である。
【0123】
図13を参照して、出力部50は、ECMを、対応するスクランブル鍵を用いて暗号化されたコンテンツ情報の出力タイミングから所定時間Tb遅延したタイミングにおいて出力する。
【0124】
より詳細には、上述したように、遅延制御部84は、ECM検出部11から受けた、ECMを含むセクションデータの一部が格納されたTSパケットを、所定時間Tb保持してから出力部50へ出力する。
【0125】
一方、鍵出力部82は、ECM復号部13から受けたスクランブル鍵を、遅延処理を行うことなくスクランブル部40へ出力する。
【0126】
そして、スクランブル部40は、鍵出力部82から受けたスクランブル鍵を用いて暗号化したTSパケットを、遅延処理を行うことなく出力部50へ出力する。すなわち、スクランブル部40は、暗号化したTSパケットを、遅延制御部84のように所定時間Tb保持することなく出力部50へ出力する。
【0127】
出力部50は、遅延制御部84から受けたTSパケットと、スクランブル部40から受けたTSパケットとを時間軸方向に多重化し、多重化後の各TSパケットをリマックス装置121へ送信する。
【0128】
これにより、スクランブル装置102からリマックス装置121へ送信されるECMと、スクランブル装置102からリマックス装置121へ送信されるコンテンツ情報の暗号化に用いられたスクランブル鍵とに着目すると、スクランブル装置102からリマックス装置121へ送信されるECMのn回目の更新タイミングUTnよりも所定時間Tb前のタイミングにおいて、コンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵を切り替えることができる。
【0129】
このように、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置102は、切替タイミングSTと、出力するECMにおけるスクランブル鍵の更新タイミングUTとの相対的な時間差を作る。より詳細には、スクランブル装置102は、出力するECMにおけるスクランブル鍵の更新タイミングUTを検知タイミングDTよりも所定時間Tb遅らせることにより当該時間差を作る。スクランブル装置102は、当該時間差を作ることにより、同じスクランブル鍵を用いて暗号化されたコンテンツ情報の出力が継続する期間である対象期間TXを、対象期間TXにおいて出力するコンテンツ情報の暗号化に用いられたスクランブル鍵を含むECMの出力が継続する期間である出力継続期間内のタイミングにおいて始める。より詳細には、スクランブル装置101は、当該時間差を作ることにより、対象期間TXを、対象期間TXにおいて出力するコンテンツ情報の暗号化に用いられたスクランブル鍵である使用鍵を含むECMにおける、使用鍵とは異なるスクランブル鍵の更新タイミングUTよりも所定時間Tb前から始める。
【0130】
すなわち、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置102では、出力部50は、ECMを、対応するスクランブル鍵を用いて暗号化されたコンテンツ情報の出力タイミングから所定時間Tb遅延したタイミングにおいて出力する。これにより、スクランブル鍵の切り替えに関する上述の規格に従って、期間T1において、リマックス装置121へ送信するECMに含まれるカレント鍵を用いてコンテンツ情報を暗号化し、次の更新タイミングUT(n+1)よりも所定時間前から始まる期間T2において、リマックス装置121へ送信するECMに含まれるネクスト鍵を用いてコンテンツ情報を暗号化することができる。
【0131】
このような構成により、ECM送信装置201から送信されるECMの更新周期UCが変更された場合であっても、この変更に合わせてコンテンツ情報の暗号化に用いるスクランブル鍵の切替タイミングを変更することにより、上述の規格に従ってECMおよびコンテンツ情報を出力することができる。したがって、外部装置であるECM送信装置201において生成されたECMを用いてコンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置102において、ECM送信装置201から受信するECMの更新周期UCの変更に柔軟に対応してコンテンツ情報の暗号化を行うことができる。また、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置102では、周期情報を取得する必要がないので、第1の実施の形態に係るスクランブル装置101と比べて構成を簡易化することができる。
【0132】
図14は、本開示の第2の実施の形態に係るスクランブル装置がスクランブル処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図14は、図9に示すフローチャートのステップS108の詳細を示している。
【0133】
図14を参照して、まず、スクランブル装置102は、コンテンツ情報の暗号化に用いたスクランブル鍵を含むECMを所定時間Tb保持する(ステップS302)。
【0134】
次に、スクランブル装置102は、ECMを、対応のスクランブル鍵を用いて暗号化したコンテンツ情報の出力タイミングから所定時間Tb遅延したタイミングにおいて出力する。より詳細には、スクランブル装置102は、所定時間Tb保持したECMを含むセクションデータの一部が格納されたTSパケットと、当該ECMに含まれるスクランブル鍵を用いて暗号化したTSパケットとを時間軸方向に多重化し、多重化後の各TSパケットをリマックス装置121へ送信する。すなわち、スクランブル装置102は、出力するECMにおけるスクランブル鍵の更新タイミングUTを検知タイミングDTよりも所定時間Tb遅らせることにより、切替タイミングSTと、出力するECMにおけるスクランブル鍵の更新タイミングUTとの相対的な時間差を作る(ステップS304)。
【0135】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0136】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
ECM送信装置から繰り返し送信される、スクランブル鍵を含むECMを受信し、コンテンツ情報を暗号化するスクランブル装置であって、
前記ECMは、前記スクランブル鍵として偶数鍵および奇数鍵を含み、前記偶数鍵および前記奇数鍵は交互に更新されるものであり、
前記ECMを受信するECM管理部と、
前記ECM管理部により受信された前記ECMに含まれる前記スクランブル鍵を用いて前記コンテンツ情報を暗号化するスクランブル部と、
前記スクランブル部により暗号化された前記コンテンツ情報、および前記スクランブル部において前記コンテンツ情報の暗号化に用いられた前記スクランブル鍵を含む前記ECMを出力する出力部とを備え、
前記出力部は、前記ECMを、対応する前記スクランブル鍵を用いて暗号化された前記コンテンツ情報の出力タイミングから所定時間遅延したタイミングにおいて出力し、
前記スクランブル部は、前記ECM送信装置が設けられた場所とは異なる場所に設けられたエンコーダ装置から取得した前記コンテンツ情報を暗号化する、スクランブル装置。
【符号の説明】
【0137】
10、80 ECM管理部
11 ECM検出部
12、82 鍵出力部
13 ECM復号部
20 EMM管理部
30 取得部
40 スクランブル部
50 出力部
60 記憶部
70 CASモジュール
84 遅延制御部
101、102 スクランブル装置
111 エンコーダ装置
121 リマックス装置
151 ケーブルテレビ局
211 IP伝送網
201 ECM送信装置
202 EMM送信装置
210 ECM生成部
220 送信部
251 番組配信センタ
301 STB
311 ケーブルテレビ網
351 加入者宅
401 放送システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14