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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】草刈作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/86 20060101AFI20241016BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20241016BHJP
   A01D 34/76 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A01D34/86
A01D34/64 A
A01D34/76 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020202846
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090441
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】重見 和男
(72)【発明者】
【氏名】一色 賢三
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-5554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0182470(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/86
A01D 34/64
A01D 34/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(1)を搭載するエンジンベース(2)の下方へ向け突出するエンジン出力軸(3)にエンジンプーリ(4)を取着し、このエンジンベース(2)の下方に略水平回転する草刈ブレード(5)を備えた刈取装置(6)を、車体(7)に対して上下昇降自在に設け、該エンジンプーリ(4)と、刈取装置(6)側に設けたカウンタプーリ(10)とを前後方向に離間して配置し、エンジンプーリ(4)とカウンタプーリ(10)との前後中間部に、草刈ブレード(5)のブレード軸(8)に取着する刈刃プーリ(9)を配置し、エンジンプーリ(4)とカウンタプーリ(10)間、及び、カウンタプーリ(10)と刈刃プーリ(9)間をVベルト(11),(12)で伝動可能に構成し、車体(7)の傾斜角度を検出する前後傾斜角検出手段(FB)、及び、左右傾斜角検出手段(LR)の検出結果に基づき、エンジン(1)を車体(7)の左右方向へ自動的に傾動可能な草刈作業機において、所定山側設定角度(Y)を、左右変位傾斜角度が少なくとも10度以上の範囲より設定し、平面(H)走行時にはエンジン(1)を車体(7)水平方向に対して略垂直状態(V)とし、この左右傾斜0度の状態から所定山側設定角度(Y)未満の状態では、エンジン(1)の傾斜角度を車体に対して略垂直状態(V)に維持し、所定山側設定角度(Y)検出時にはエンジン(1)を傾斜面(K)山側(KY)へ向け傾動させるよう制御し、傾斜面(K)を等高線方向に走行している際、左右傾斜角検出手段(LR)の検出角度がきつくなる方向に変化している場合に、エンジン(1)を傾斜面(K)山側(KY)へ向け傾斜させる所定山側設定角度(Y)と、左右傾斜角検出手段(LR)の検出角度が緩くなる方向へ変化している場合に、エンジン(1)を傾斜面(K)谷側(KT)へ向け傾斜させる所定谷側設定角度(T)とを異なった角度に設定し、且つ、所定山側設定角度(Y)よりも所定谷側設定角度(T)を緩い角度に設定したことを特徴とする草刈作業機。
【請求項2】
所定山側設定角度(Y)をエンジン(1)の連続使用可能限界角度(G)以下5度以内の範囲より設定したことを特徴とする請求項1に記載の草刈作業機。
【請求項3】
前後傾斜角検出手段(FB)が第1設定角度(X1)未満の変位傾斜角度を検出し、且つ、左右傾斜角検出手段(LR)の検出角度がきつくなる方向に変化している場合は、所定山側設定角度(Y)をエンジン(1)の連続使用可能限界角度(G)以下5度以内の範囲より設定した左右増前後緩傾斜制御(P1)を実行し、前後傾斜角検出手段(FB)が第1設定角度(X1)以上の変位傾斜角度を検出した場合には、左右傾斜角検出手段(LR)が所定山側設定角度(Y)よりも緩い山側傾斜設定角度(y)以上の変位傾斜角度を検出していれば、エンジン(1)を傾斜面(K)山側(KY)へ向け傾動させる左右増前後急傾斜制御(Q1)に移行して制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の草刈作業機。
【請求項4】
前後傾斜角検出手段(FB)が第1設定角度(X1)未満の変位傾斜角度を検出し、且つ、左右傾斜角検出手段(LR)の検出角度が緩くなる方向に変化している場合は、所定山側設定角度(Y)よりも緩い傾斜角度で設定した所定谷側設定角度(T)でエンジン(1)を傾斜面(K)谷側(KT)に向け傾動させる左右減前後緩傾斜制御(P2)を実行し、前後傾斜角検出手段(FB)が第1設定角度(X1)以上の変位傾斜角度を検出した場合には、左右傾斜角検出手段(LR)が所定谷側設定角度(T)よりも緩い谷側傾斜設定角度(t)以下の変位傾斜角度を検出するまではエンジン(1)を傾斜面(K)谷側(KT)へ向け傾動させない左右減前後急傾斜制御(Q2)に移行して制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の草刈作業機。
【請求項5】
左右増前後緩傾斜制御(P1)、又は、左右減前後緩傾斜制御(P2)の状態から第1設定角度(X1)以上の変位傾斜角度を検出して、左右増前後急傾斜制御(Q1)、又は、左右減前後急傾斜制御(Q2)の状態に移行後は、前後傾斜角検出手段(FB)が第2設定角度(X2)を検出するまでは、左右増前後急傾斜制御(Q1)、又は、左右減前後急傾斜制御(Q2)の状態を維持するよう制御することを特徴とする請求項又はに記載の草刈作業機。
【請求項6】
車体(7)水平方向に対してエンジン(1)が略垂直状態(V)と左右最大傾斜状態(VM)との間で傾動を開始する所定山側設定角度(Y)と山側傾斜設定角度(y)、及び、所定谷側設定角度(T)と谷側傾斜設定角度(t)とを複数段階の傾斜角度で設定したことを特徴とする請求項又はに記載の草刈作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜面の草刈を行うことのできる草刈作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、急傾斜面の草刈作業が可能な草刈機が特許文献1に記載されている。この草刈機は、地面の傾斜角度に応じてエンジンを左右方向に傾斜可能に構成し、その下方には草刈デッキを上下昇降自在に設け、駆動プーリ12とカウンタプーリ13間、及び、カウンタプーリ13とブレードプーリ17間を駆動ベルト10、及び、刈取ベルト19で伝動するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-5554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の草刈機は、駆動プーリ12とカウンタプーリ13との間を常時張圧された駆動ベルト10で伝動しているので、例えば草刈デッキ3を下降させると駆動プーリ12よりもカウンタプーリ13が低い位置関係になり、駆動ベルト10のベルトラインが側面視で斜め(後方下り傾斜)になり、この傾斜度合が大きい程、駆動ベルト10に大きな負荷を与える状態で伝動することになる。更に、特許文献1の草刈機は、エンジンEを左右に傾斜させる構成で、エンジンEを左右に傾斜させると駆動ベルト10に捩り作用も加わることから駆動ベルト10の耐久性が著しく悪化し短時間で駆動ベルト10の切損につながるという問題があった。又、エンジンのクランクケースに溜まったオイルで内部潤滑を行うウェットサンプ式の汎用ガソリンエンジンの連続使用傾斜限界角度は、通常20~25度以下に限定されているため、この角度以上の急斜面で草刈作業を行うには、エンジンの傾きが傾斜限界角度以下になるようエンジンを傾斜面山側へ向け傾動させなければならない。本発明は、汎用ガソリンエンジンの連続使用可能限界角度よりも急傾斜地で草刈作業が可能なエンジン左右傾斜機構を備えた草刈作業機において、駆動用Vベルトの耐久性を向上させるとともに、エンジンも保護することのできる草刈作業機を提供することを課題とする。
【0005】
エンジン1を搭載するエンジンベース2の下方へ向け突出するエンジン出力軸3にエンジンプーリ4を取着し、このエンジンベース2の下方に略水平回転する草刈ブレード5を備えた刈取装置6を、車体7に対して上下昇降自在に設け、該エンジンプーリ4と、刈取装置6側に設けたカウンタプーリ10とを前後方向に離間して配置し、エンジンプーリ4とカウンタプーリ10との前後中間部に、草刈ブレード5のブレード軸8に取着する刈刃プーリ9を配置し、エンジンプーリ4とカウンタプーリ10間、及び、カウンタプーリ10と刈刃プーリ9間をVベルト11,12で伝動可能に構成し、車体7の傾斜角度を検出する前後傾斜角検出手段FB、及び、左右傾斜角検出手段LRの検出結果に基づき、エンジン1を車体7の左右方向へ自動的に傾動可能な草刈作業機において、所定山側設定角度Yを、左右変位傾斜角度が少なくとも10度以上の範囲より設定し、平面H走行時にはエンジン1を車体7水平方向に対して略垂直状態Vとし、この左右傾斜0度の状態から所定山側設定角度Y未満の状態では、エンジン1の傾斜角度を車体7に対して略垂直状態Vに維持し、所定山側設定角度Y検出時にはエンジン1を傾斜面K山側KYへ向け傾動させるよう制御し、傾斜面Kを等高線方向に走行している際、左右傾斜角検出手段LRの検出角度がきつくなる方向に変化している場合に、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け傾斜させる所定山側設定角度Yと、左右傾斜角検出手段LRの検出角度が緩くなる方向へ変化している場合に、エンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け傾斜させる所定谷側設定角度Tとを異なった角度に設定し、且つ、所定山側設定角度Yよりも所定谷側設定角度Tを緩い角度に設定した構成とする。
【0006】
又、所定山側設定角度Yをエンジン1の連続使用可能限界角度G以下5度以内の範囲より設定した構成とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
又、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1未満の変位傾斜角度を検出し、且つ、左右傾斜角検出手段LRの検出角度がきつくなる方向に変化している場合は、所定山側設定角度Yをエンジン1の連続使用可能限界角度G以下5度以内の範囲より設定した左右増前後緩傾斜制御P1を実行し、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1以上の変位傾斜角度を検出した場合には、左右傾斜角検出手段LRが所定山側設定角度Yよりも緩い山側傾斜設定角度y以上の変位傾斜角度を検出していれば、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け傾動させる左右増前後急傾斜制御Q1に移行して制御する構成とする。
【0008】
又、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1未満の変位傾斜角度を検出し、且つ、左右傾斜角検出手段LRの検出角度が緩くなる方向に変化している場合は、所定山側設定角度Yよりも緩い傾斜角度で設定した所定谷側設定角度Tでエンジン1を傾斜面K谷側KTに向け傾動させる左右減前後緩傾斜制御P2を実行し、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1以上の変位傾斜角度を検出した場合には、左右傾斜角検出手段LRが所定谷側設定角度Tよりも緩い谷側傾斜設定角度t以下の変位傾斜角度を検出するまではエンジン1を傾斜面K谷側Tへ向け傾動させない左右減前後急傾斜制御Q2に移行して制御する構成とする。
【0009】
又、左右増前後緩傾斜制御P1、又は、左右減前後緩傾斜制御P2の状態から第1設定角度X1以上の変位傾斜角度を検出して、左右増前後急傾斜制御Q1、又は、左右減前後急傾斜制御Q2の状態に移行後は、前後傾斜角検出手段FBが第2設定角度X2を検出するまでは、左右増前後急傾斜制御Q1、又は、左右減前後急傾斜制御Q2の状態を維持するよう制御する構成とする。
【0010】
又、車体7水平方向に対してエンジン1が略垂直状態Vと左右最大傾斜状態VMとの間で傾動を開始する所定山側設定角度Yと山側傾斜設定角度y、及び、所定谷側設定角度Tと谷側傾斜設定角度tとを複数段階の傾斜角度で設定した構成とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明は、エンジン1と草刈ブレード5間の伝動をVベルトで行い、エンジン1を車体7の左右方向へ自動的に傾動可能な草刈作業機において、エンジンプーリ4と、刈取装置6側に設けたカウンタプーリ10とを前後方向に離間して配置し、エンジンプーリ4とカウンタプーリ10との中間部に、草刈ブレード5のブレード軸8に取着する刈刃プーリ9を配置し、エンジンプーリ4とカウンタプーリ10間、及び、カウンタプーリ10と刈刃プーリ9間をVベルト11,12で伝動可能に構成してあるので、エンジンプーリ4が車体7の前部に、カウンタプーリ10が車体7の後部に配置され、エンジンプーリ4とカウンタプーリ10との軸間距離を長く構成することが可能で、刈取装置6を上下昇降させた際に、エンジンプーリ4とカウンタプーリ10との軸間距離が短い場合よりも側面視におけるVベルト11の傾斜角度が緩くなり、Vベルト11への負担を少なくすることができる。又、所定山側設定角度Yを、左右変位傾斜角度が少なくとも10度以上の範囲より設定し、平面H走行時にはエンジン1を車体7水平方向に対して略垂直状態Vとし、この左右傾斜0度の状態から所定山側設定角度Yを検出するまではエンジン1の傾斜角度を略垂直状態Vに維持し、所定山側設定角度Y検出時にエンジン1を傾斜面K山側KYへ向け傾動するよう制御しているので、エンジン1の傾動によるVベルト11の捩れがなく、過負荷状態が緩和され耐久性が向上する。又、傾斜面Kを等高線方向に走行している際、左右傾斜角検出手段LRの検出角度がきつくなる方向に変化している場合に、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け傾斜させる所定山側設定角度Yと、左右傾斜角検出手段LRの検出角度が緩くなる方向へ変化している場合に、エンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け傾斜させる所定谷側設定角度Tとを異なった角度に設定し、且つ、所定山側設定角度Yよりも所定谷側設定角度Tを緩い角度に設定しているので、エンジン1が傾斜面K山側KYへ向け傾斜させる角度と、谷側KTへ向け傾斜させる角度に差を設けたヒステリシス制御を行っており、所定の設定角度付近の傾斜面Kを走行中にエンジン1が頻繁な傾斜動作を繰り返すことがない。
【0012】
請求項2に記載の発明は、所定山側設定角度Yをエンジン1の連続使用可能限界角度G以下5度以内の範囲より設定してあるので、エンジン1が連続で使用可能な限界角度G近くの傾斜になるまではエンジン1が車体7に対する略垂直状態Vを維持し、Vベルト11が捩れている時間が低減されて、Vベルト11の耐久性が大幅に向上する。
【0013】
請求項に記載の発明は、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1未満の変位傾斜角度を検出し、且つ、左右傾斜角検出手段LRの検出角度がきつくなる方向に変化している場合は、所定山側設定角度Yをエンジン1の連続使用可能限界角度G以下5度以内の範囲より設定した左右増前後緩傾斜制御P1を実行し、前後傾斜角検出手段FBの検出角度が第1設定角度X1以上の変位傾斜角度を検出した場合には、左右傾斜角検出手段LRが所定山側設定角度Yよりも緩い山側傾斜設定角度y以上の変位傾斜角度を検出していれば、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け傾動させる左右増前後急傾斜制御Q1に移行して制御するので、エンジン1前後方向の傾斜が第1設定角度X1未満の左右増前後緩傾斜制御P1時にはエンジン1が車体7に対する略垂直状態Vを維持し、Vベルト11が捩れる状態が少なくなり、エンジン1前後方向の傾斜が第1設定角度X1以上の傾斜時には、所定山側設定角度Yに至る前にエンジン1を傾斜面K山側KYへ向け傾動させる制御へ切り替えるので、エンジン1を山側KYへ向け傾動させる際に、Vベルト11とエンジン1への負荷バランスに配慮した傾動制御が可能で、Vベルト11とエンジン1の耐久性をバランス良く向上させることができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1未満の変位傾斜角度を検出し、且つ、左右傾斜角検出手段LRの検出角度が緩くなる方向に変化している場合は、所定山側設定角度Yよりも緩い傾斜角度で設定した所定谷側設定角度Tでエンジン1を傾斜面K谷側KTに向け傾動させる左右減前後緩傾斜制御P2を実行し、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1以上の変位傾斜角度を検出した場合には、左右傾斜角検出手段LRが所定谷側設定角度Tよりも緩い谷側傾斜設定角度t以下の変位傾斜角度を検出するまではエンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け傾動させない左右減前後急傾斜制御Q2に移行して制御するので、エンジン1を谷側KTへ傾動させる場合にもVベルト11とエンジン1への負荷バランスに配慮した傾動制御が可能で、Vベルト11とエンジン1の耐久性をバランス良く向上させることができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、左右増前後緩傾斜制御P1、又は、左右減前後緩傾斜制御P2の状態から第1設定角度X1以上の変位傾斜角度を検出して、左右増前後急傾斜制御Q1、又は、左右減前後急傾斜制御Q2の状態に移行後は、前後傾斜角検出手段FBが第2設定角度X2を検出するまでは、左右増前後急傾斜制御Q1、又は、左右減前後急傾斜制御Q2の状態を維持するよう制御するので、一旦、左右増前後急傾斜制御Q1、又は、左右減前後急傾斜制御Q2のモードになると、第1設定角度X1よりも緩い角度で設定した第2設定角度X2以下の傾斜角度になるまで、左右増前後緩傾斜制御P1、又は、左右減前後緩傾斜制御P2のモードには戻らず、左右増前後急傾斜制御Q1、又は、左右減前後急傾斜制御Q2のモードによる制御を維持することとなり、第1設定角度X1付近の傾斜角度が続いても、エンジン1が頻繁に傾動することがなく、エンジン1やVベルト11への負荷を軽減しながら、エンジン1を傾動させるための各部品の稼働時間も少なくして故障率を下げることができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、車体7水平方向に対してエンジン1が略垂直状態Vと左右最大傾斜状態VMとの間で傾動を開始する所定山側設定角度Yと山側傾斜設定角度y、及び、所定谷側設定角度Tと谷側傾斜設定角度tを複数段階の傾斜角度で設定しているので、所定山側設定角度Y、又は、所定谷側設定角度Tの傾斜角度になった際に、エンジン1が最大傾斜状態VM、又は、略垂直状態Vまで急激に傾動せず、細かいエンジン1傾動制御が可能で、特に、Vベルト11への負荷が大きい最大傾斜状態VMの状態を極力少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エンジンの傾動状態を示す一部背面図。
図2】エンジンの傾動状態を示す一部背面図。
図3】傾斜面の角度に対するエンジン傾斜制御を示す背面図。
図4】傾斜面の角度に対するエンジン傾斜制御を示す背面図。
図5】刈取装置昇降に伴うVベルトの状態を示す断側面図。
図6】Vベルト巻掛け状態を示す平面図。
図7】全体平面図。
図8】刈取装置の昇降構成を示す全体断側面図。
図9】コントローラのブロック図。
図10】傾斜面と車体角度に対するエンジン傾動状況を示す展開図。
図11】無線操作用送信器の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面に基づいて、草刈作業機はゴム材を主体とする左右一対のクローラ20を装備し走行する車体7の後部に、該クローラ4を駆動する走行モータMや伝動ケース21、コントローラ22を設け、前部には刈取装置6の草刈ブレード5を駆動するエンジン1を搭載し、前後中央部にはエンジン1始動用のバッテリ23や燃料タンク24、走行モータMを駆動するためのバッテリ25やこのバッテリ25を充電するためのオルタネータ26等をエンジンベース2上に配置している。車体7の上方部には、前、後端のガードパイプ27間にアーチ状形態に連結のガードフレーム28を設け、前記各搭載機器のエンジン1以外の上側部を覆うようにカバー29を設けている。本発明の草刈作業機は無線操縦操作が可能で、コントローラ22には、走行や充電制御、オペレーター側の送信機から制御信号を受信する受信機、車体7の傾斜角度を検出する前後傾斜角検出手段FB、及び左右傾斜角検出手段LR等を備えている。この前後傾斜角検出手段FB、及び左右傾斜角検出手段LRとしては、1個の3軸加速度センサーを用いて車体7の傾斜角度を検出している。
【0019】
前記クローラ20は、車体7の左右側端部から下方に立設する支脚30に装着した左、右トラックフレーム31の前後方向に亘って配置の端部転輪32、中間転輪33、及び最後端部の後端転輪32a、駆動スプロケット34、前端部のアイドルローラ35等に掛け渡して、前記各左、右走行モータMで伝動ケース21の伝動ギヤ等を経てスプロケット軸36を伝動回転することにより、左、右各クローラ20を回転して、走行、乃至操向することができる。
【0020】
前記車体7の底部で、左右のクローラ20,20間隔部に草の刈取を行う草刈ブレード5のブレード軸8を軸装した刈取装置6を、上下に昇降する平行リンク37,38後端部にリンクピン39,40で枢着して着脱可能に取付ける。又、平行リンク37,38は、前端部を車体7の左右両側の前端部に設けた軸受ブラケット41のリンク軸42回りに回動自在に取着され、左右4本の平行リンク37,38の後端部にリンクピン39,40で枢着され、電動シリンダ43の伸縮により回動されるリフトアーム44の回動によって、リフトリンク45を介して刈取装置6が地面と平行形態の姿勢を維持して昇降され、任意の高さで草の刈取りができる。
【0021】
前記、刈取装置6は、中央部に上下方向のブレード軸8を回転自在に軸装し、このブレード軸8下端部に草刈ブレード5を取着し、草刈ブレード5外周部には刈刃46を枢支している。刈取装置6の刈取デッキ47上側のブレード軸8上端部には、刈刃プーリ9を取着し、該刈刃プーリ9後方に配置のカウンタ軸49に上下2段のカウンタプーリ10を取着し、カウンタプーリ10下段側プーリ溝と刈刃プーリ9との間にVベルト12を巻回し、このVベルト12の回転外周面にテンションプーリ48を張圧、弛緩することによって、カウンタ軸49からブレード軸8への伝動を入り、切りを可能な構成としている。詳しくは図6に示す通り、刈取デッキ47上面の枢支軸50にテンションプーリ48のクラッチアーム51を枢着し、操作アーム53に連結の操作ワイヤ52を電動シリンダ54の伸縮作動によってテンションプーリ48をVベルト12に張圧、弛緩するものである。又、刈刃プーリ9周りの刈取デッキ47上面には、刈刃プーリ9のV溝部に嵌合摺接してブレード軸8の回転にブレーキを効かせるブレーキアーム55を、アーム軸56周りに回動可能に設け、前記電動シリンダ54と操作アーム57との間を操作ワイヤ58で連結し、該電動シリンダ54の伸縮作動によって刈刃プーリ9の制動及び制動解除をすることができる。従って、電動シリンダ54の伸長作動によって、テンションプーリ48がVベルト12に張圧されるとともに、ブレーキアーム55が刈刃プーリ9のV溝部から離間し、電動シリンダ54の縮小作動によって、テンションプーリ48がVベルト12を弛緩するとともに、ブレーキアーム55が刈刃プーリ9のV溝部へ嵌合摺接し、ブレード軸8に制動力を与え刈刃46の惰性回転を短時間で停止させることができる。
【0022】
エンジンベース2は、底部の前、後端部に台形状のブラケット59を形成し、エンジン1等の支持構成を補強し、該ブラケット59と車体7との間に設けた電動シリンダ19を伸縮させて、車体7左右中央の支持部材60周りにエンジンベース2を左右回動自在に枢支している。車体7の前、後部の横桟61の左右中央位置に支持メタル62を設け、この前、後の支持メタル62,62間に、ブラケット59の支持部材60を嵌合支持させて、エンジンベース2が左、右適宜角度に亘って回動自在である。エンジンベース2の左右回動は、草刈地面の傾斜角度を検出する左右傾斜角検出手段LR、及び前後傾斜角検出手段FBの検出結果に基づいて制御される。
【0023】
エンジン1の出力軸3は、エンジンベース2から下方へ向け突出させ、該出力軸3には上下2段のエンジンプーリ4を取着している。エンジン1の後方にはオルタネータ26を配置し、オルタネータ26の軸26aにはプーリ63が取着してあり、前記エンジンプーリ4の上段側プーリ溝とプーリ63との間にVベルト64を巻回し、エンジン1を始動するとオルタネータ26が回動されて走行モータM駆動用のバッテリ25(リチウムイオンバッテリ)に充電できる構成である。尚、エンジン1始動用のバッテリ23は、エンジン1に備えたレギュレータから充電している。エンジンプーリ4の下段側プーリ溝と刈取デッキ47上のカウンタプーリ10上段側プーリ溝との間にはVベルト11を巻回し、エンジンプーリ4前方のテンション軸65に枢支したテンションアーム66をスプリング68で引っ張って、該テンションアーム66先端部に枢着したテンションプーリ67をVベルト11外周から常時張圧して伝動するよう構成している。
【0024】
車体7の前部と後部とに離間して配置したエンジンベース2側のエンジンプーリ4と、刈取装置6側のカウンタプーリ10との間に巻回されたVベルト11は、刈取装置6を上下昇降させるとエンジンプーリ4とカウンタプーリ10とのベルトラインが上下方向にずれ、更に、エンジンベース2を左右に傾斜させることでエンジンプーリ4が傾斜しVベルト11が捩れることとなる。草刈作業では、草を短く刈るために刈取装置6を低くすると刈取抵抗が増加し、刈刃46が地面の土や石に接触すればVベルト11への負荷が更に大きくなる。この大きな負担が掛かっているVベルト11に、エンジンプーリ4の傾斜による捩れが加わると、Vベルト11への負荷が増え、耐久性を著しく低下させることとなる。一方、汎用ガソリンエンジン(クランクケース内にオイルを溜めるウェットサンプ式)においては、連続運転可能な傾斜角度が25度以下に限定された仕様が多く、25度以下に傾斜制限されたエンジンでは、25度を超える斜面で使用できないことから、エンジン1が25度以下の角度になるよう傾斜面Kの山側KYへ向け傾動させる必要がある。一部にドライサンプ式(大容量の別置きのタンクにオイルを溜めてポンプでエンジンに供給する方式)で45度以下の傾斜に対応したガソリンエンジンもあるが、別置きのエンジンオイルタンクやオイル供給用のポンプが必要になり、非常に高価でオイルタンクの設置場所も必要になるため、草刈作業機にはウェットサンプ式のガソリンエンジンが採用されることが多い。
【0025】
本発明の草刈作業機は、エンジン1が車体7水平方向に対して略垂直状態V(左右方向の傾斜が0度の状態)を基準にして、左右方向に片側各20度の変位傾動が可能で、エンジン1の連続使用可能な限界角度Gの25度と合わせて、左右片側45度以下の傾斜面K角度に対応可能である。エンジン1の左右傾斜角度は、エンジン1が車体7水平方向に対して略垂直状態Vを基準に左右方向へ7度、14度、20度の複数段階の傾斜角度に傾動し停止させることができる。前後傾斜角検出手段FB、又は、左右傾斜角検出手段LRが40度の傾斜角度を検出すれば、カバー29上側のLEDランプ69が点滅し、更に急傾斜の45度を検出すれば、LEDランプ69が点滅状態のまま警告ブザーを鳴らして操縦者に報知し、車体7転倒に対する注意喚起を行う。又、本発明の草刈作業機は、前後傾斜角検出手段FBが前後方向に45度の変位傾斜角度を検出した際と、左右傾斜角検出手段LRが左右方向に45度の変位傾斜角度を検出した際には、走行中の車体7を一旦停止させて、更に転倒防止に配慮した制御を行っている。一旦停止した車体7を再度走行させるには、前後傾斜角検出手段FBが45度の変位傾斜角度を検出している場合はプロポ74の前後進スティック91を、左右傾斜角検出手段LRが45度の変位傾斜角度を検出している場合はプロポ74の旋回スティック92を一旦中立位置に戻し、再び操作すれば走行を開始させることができる。図7において、70はエンジン1始動用のリコイルスタータ、71は非常停止スイッチ、72はアワーメータ、73はエンジン1の回転数を調整するスロットルレバー、80はバッテリ残量メータである。
【0026】
図10の展開図に基づいて車体7の左側が低い左下り状態を例に説明する。傾斜面Kを車体7左下り状態で横方向(等高線方向)に走行している際、左右傾斜角検出手段LRの検出角度がきつくなる方向に変化している場合は、左右各段階の所定山側設定角度Yの設定の内、第1段階の所定山側設定角度Y1をエンジン1の連続使用可能限界角度Gの25度に近い左下り22度に設定していて、第2段階の所定山側設定角度Y2を左下り30度、第3段階の所定山側設定角度Y3を左下り36度の変位傾斜角度に設定している。左右傾斜角検出手段LRの検出変位角度が左下り22度未満の場合は、エンジン1を車体7に対して略垂直状態Vに維持し、左右傾斜角検出手段LRが左下り22度を検出するとエンジン1を車体7に対して略垂直状態Vから傾斜面K山側KYへ向け7度傾動させる。左右傾斜角検出手段LRが所定山側設定角度Y2の左下り30度を検出すると、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け更に7度傾動させた14度に傾斜させ、左右傾斜角検出手段LRが所定山側設定角度Y3の左下り36度を検出すると、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け更に6度傾動させた20度(エンジン1の最大傾斜角度)に傾動させる。
【0027】
又、傾斜面Kを車体7左下り状態で横方向(等高線方向)に走行している際、例えば左右傾斜角検出手段LRの検出角度が左下り40度の状態から緩くなる方向に変化している場合は、左右各段階の所定谷側設定角度Tの設定の内、第3段階の所定谷側設定角度T3を所定山側設定角度Y3よりも緩い左下り34度に設定していて、所定谷側設定角度T2,T1についても同様に、第2段階の所定谷側設定角度T2を所定山側設定角度Y2よりも緩い左下り27度に、第1段階の所定谷側設定角度T1を所定山側設定角度Y1よりも緩い左下り20度に設定している。左右傾斜角検出手段LRが所定谷側設定角度T3の左下り34度を検出すればエンジン1が車体7に対して山側KYに向け20度傾斜した状態から谷側KTへ向け6度傾動させた角度(車体7に対して14度山側KYへ向け傾斜させた状態と同傾斜状態)で停止する。更に傾斜面Kの傾斜角度が緩くなり、左右傾斜角検出手段LRが所定谷側設定角度T2の左下り27度を検出すると、エンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け更に7度傾動(車体7に対して7度山側KYへ向け傾斜させた状態と同傾斜状態)させ、この状態から更に傾斜面Kの傾斜角度が緩くなり、左右傾斜角検出手段LRが所定谷側設定角度T1の左下り20度を検出すると、エンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け7度傾動(車体7に対して略垂直状態Vと同状態)させる。
【0028】
これらエンジン1傾動制御は、前後傾斜角検出手段FBの検出角度によってエンジン1が傾動開始する傾斜角度を異ならせている。左右傾斜がきつくなる方向に変化している場合に、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1(本実施例では前後方向の変位傾斜角度を10度に設定)未満の傾斜角度の場合は、左右増前後緩傾斜制御P1モードを実行する。左右増前後緩傾斜制御P1モードは、傾斜面Kを車体7左下り状態で横方向に走行時の左右方向の各段階の所定山側設定角度Yの設定の内、第1段階の所定山側設定角度Y1をエンジン1の連続使用可能限界角度Gに近い左下り22度に設定し、左下り22度を検出するまではエンジン1は車体7に対して略垂直状態V(左右方向の傾斜角度が0度の状態)を維持し、所定山側設定角度Y1の左下り22度を検出すればエンジン1を略垂直状態Vの0度状態から傾斜面K山側KYへ向け7度傾動させ、所定山側設定角度Y2の左下り30度になるとエンジン1を山側KYへ向け更に7度傾斜させた14度に傾斜させ、所定山側設定角度Y3の左下り36度になるとエンジン1を山側KYへ向け更に6度傾斜させた20度に傾斜させる傾動制御を実行するが、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1以上を検出すると、左右方向の各段階の山側傾斜設定角度yの設定の内、第1段階の山側傾斜設定角度y1を左下り5度に、第2段階の山側傾斜設定角度y2を左下り13度、第3段階の山側傾斜設定角度y3を左下り18度に設定した左右増前後急傾斜制御Q1のモードに移行する。従って、左右傾斜角検出手段LRの検出角度が左下り5度未満の場合には、エンジン1を車体7に対して略垂直状態Vに維持するが、左下り5度を検出すればエンジン1を略垂直状態Vから傾斜面K山側KYへ向け7度傾動し、更に左右傾斜角検出手段LRが左下り13度を検出すると、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け更に7度傾動させた14度に傾斜させ、左右傾斜角検出手段LRが左下り18度を検出すると、エンジン1を傾斜面K山側KYへ向け更に6度傾動させた20度(エンジンベース2の最大傾斜角度)まで傾斜させ、左右傾斜角検出手段LRの検出する傾斜角度が緩い角度であってもエンジン1の山側KYへ向けての傾動を開始してエンジン1を保護する傾動制御を行う。
【0029】
又、同様に傾斜面Kを車体7左下り状態で横方向に走行時に、例えば左右傾斜角検出手段LRの検出角度が左下り40度の状態から緩くなる方向に変化している場合は、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1(本実施例では前後方向の変位傾斜角度を10度に設定)未満の傾斜角度の場合は、左右減前後緩傾斜制御P2モードを実行し、左右方向の各段階の所定谷側設定角度Tの設定の内、第3段階の所定谷側設定角度T3を所定山側設定角度Y3よりも緩い傾斜角度の左下り34度を検出すればエンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け7度傾動させ、所定谷側設定角度T2,T1についても同様に、所定谷側設定角度T2が左下り27度、所定山側設定角度T1が左下り20度になると、エンジン1を谷側KTへ向け傾動制御するが、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1以上を検出すると、左右方向の各段階の谷側傾斜設定角度tの設定の内、第3段階の谷側傾斜設定角度t3を左下り16度に、第2段階の谷側傾斜設定角度t2を左下り9度、第1段階の谷側傾斜設定角度t1を左下り2度に設定した左右減前後急傾斜制御Q2のモードに移行する。従って、左右傾斜角検出手段LRが谷側傾斜設定角度t3の左下り16度を検出すると、エンジン1を車体7に対して傾斜面K山側KYに向け20度傾斜させた左右最大傾斜状態VMから、谷側KTへ向け6度傾動させた14度に傾斜させ、左右傾斜角検出手段LRが谷側傾斜設定角度t2の左下り9度を検出すれば、エンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け更に7度傾動させた7度に傾動させ、更に左右傾斜角検出手段LRが谷側傾斜設定角度t1左下り2度を検出すると、エンジン1を傾斜面K谷側KTへ向け更に7度傾動させた略垂直状態V(左右方向の傾斜角度が0度状態)に傾斜させる。
【0030】
次に、草刈作業中に左右傾斜角度や前後傾斜角度の変化に応じたエンジン1の傾動状況について説明する。例えば車体7左側が低い状態の左下りで傾斜面Kを横方向に走行中で、左右傾斜角検出手段LRが例えば左下り33度(所定山側設定角度Y2の左下り30度以上、且つ、所定山側設定角度Y3の左下り36度未満の範囲の傾斜)を検出し、前後傾斜角検出手段FBが、例えば前下り8度(第1設定角度X1に設定した前下り10度未満の傾斜)を検出した状態では、左右増前後緩傾斜制御P1モードを実行していて、エンジン1が略垂直状態Vを基準に傾斜面K山側KYへ向け14度に傾斜した状態となっている。この状態から、前後傾斜角検出手段FBの検出角度が第1設定角度X1に設定した前下り10度未満の状態のままで左右傾斜角度が緩くなり、左右傾斜角検出手段LRの検出角度が所定谷側設定角度T2の左下り27度を検出すると、エンジン1が山側KYへ向け14度に傾斜した状態から7度谷側KTへ向け傾動(略垂直状態Vを基準に山側KYへ向け7度に傾斜した状態)し、更に左右傾斜角度が緩くなり、この状態から、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1に設定した前下り10度未満の状態のままで左右傾斜角検出手段LRの検出角度が所定谷側設定角度T1の左下り20度を検出すると、エンジン1が略垂直状態Vを基準に山側KYへ向け7度に傾斜した状態から略垂直状態Vの0度の傾斜に傾動する。左右傾斜角検出手段LRの検出角度が所定谷側設定角度T2の左下り27度を検出し、エンジン1が略垂直状態Vを基準に山側KYへ向け7度に傾斜した状態から、前後傾斜角検出手段FBの検出角度が第1設定角度X1に設定した前下り10度未満の状態のままで左右傾斜角度が再びきつくなったときは、所定山側設定角度Y2に設定された左下り30度を検出するまでは、エンジン1は傾動を開始しない。
【0031】
又、例えば車体7左側が低い状態の左下りで傾斜面Kを横方向に走行中で、左右傾斜角検出手段LRが左下り33度(所定山側設定角度Y2の左下り30度以上、且つ、所定山側設定角度Y3の左下り36度未満の範囲の傾斜)を検出し、前後傾斜角検出手段FBが前下り8度(第1設定角度X1に設定した前下り10度未満の傾斜)を検出した状態では、エンジン1が略垂直状態Vを基準に傾斜面K山側KYへ向け14度に傾斜した状態から、前後傾斜角検出手段FBが第1設定角度X1で設定する前下り10度以上になった場合は、左右傾斜角度が既に山側傾斜設定角度y2の左下り13度、及び、山側傾斜設定角度y3の左下り18度以上に傾いた状態なので、左右増前後急傾斜制御Q1に移行し、エンジン1は略垂直状態Vを基準に山側KYへ向け14度に傾斜した状態から20度に傾斜した状態に傾動することで、エンジン1が限界角度G以上に傾斜することによる焼付きや偏摩耗等の問題を防止する。尚、左下り傾斜で走行時の左右増前後緩傾斜制御P1実行中に、第1設定角度X1の前下り10度以上になると左右増前後急傾斜制御Q1に移行し、一旦、左右増前後急傾斜制御Q1に移行後は、前後傾斜角検出手段FBの検出角度が第二設定角度X2(本実施例では前後方向の変位傾斜角度を5度に設定)の前下り5度を検出するまでは、左右増前後緩傾斜制御P1には戻らない。又、右下り傾斜で走行時に左右増前後緩傾斜制御P1を実行中に、第1設定角度X1の前下り、又は、後下り変位傾斜角度が10度以上になると左右増前後急傾斜制御Q1に移行し、一旦、左右増前後急傾斜制御Q1に移行後は、前後傾斜角検出手段FBの検出角度が第二設定角度X2の前下り、又は、後下り変位傾斜角度に設定した5度を検出するまでは左右増前後緩傾斜制御P1には戻らない。
【0032】
草刈作業機による草刈、及び、走行制御のためにコントローラ22を有し、コントローラ22内に無線送信機であるプロポ74からの送信を受ける受信機75を設け、又、車体7の左右傾斜角検出手段LRの左右傾斜センサ76、車体の前後傾斜角検出手段FBの前後傾斜センサ77、走行モータM用の温度センサ78、オルタネータ温度センサ79等を設けている。(図9参照)プロポ74には、信号送受信用アンテナIを有し、中央上面には、電源を入切するスライドスイッチ90、及びこの左右両側に前後方向へ操作して前後進走行させるための前後進スティック91と、左右方向へ操作して旋回方向を操作する旋回スティック92を配置している。又、プロポ74上面下部には液晶表示93を設け、草刈作業機の走行状態や作業状態、エラー等の表示を行うことができる。この一側には液晶表示93用のタッチセンサ94を設け、上部中央部には最高速度を任意に調整できる速度ダイヤル95や、草の刈高さを任意に調整できる刈高さダイヤル96を設けている。左側部には、刈取クラッチ18を入り、切り操作する刈取クラッチスイッチ97や、各種の操作、作動を自動又は手動に切替えるための切替えスイッチ98等を配置し、右側部には、エンジン1の始動ボタン99や、エンジン停止スイッチ100等を設けている。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン
2 エンジンベース
3 出力軸
4 エンジンプーリ
5 草刈ブレード
6 刈取装置
7 車体
8 ブレード軸
9 刈刃プーリ
10 カウンタプーリ
11 Vベルト
12 Vベルト
FB 前後傾斜角検出手段
G 限界角度
H 平面
K 傾斜面
KY 山側
KT 谷側
LR 左右傾斜角検出手段
M 走行モータ
P1 左右増前後緩傾斜制御
P2 左右減前後緩傾斜制御
Q1 左右増前後急傾斜制御
Q2 左右減前後急傾斜制御
T 所定谷側設定角度
t 谷側傾斜設定角度
V 略垂直状態
VM 最大傾斜状態
X1 第1設定角度
X2 第2設定角度
Y 所定山側設定角度
y 山側傾斜設定角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11