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特許7571510鉄塔ボルト保全対策装置および保全対策プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】鉄塔ボルト保全対策装置および保全対策プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20241016BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20241016BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20241016BHJP
   E04H 12/10 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H02G1/02
F16B41/00 P
H02G7/00
E04H12/10 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020205477
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092649
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】金正 利政
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-10126(JP,A)
【文献】特開2006-63605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
F16B 41/00
H02G 7/00
E04H 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主柱材が連結ボルトで連結された主柱で構成された鉄塔の所定の高さに昇降防止装置が取り付けられ、前記昇降防止装置よりも下方における前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数を含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、
前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記各連結部の前記連結ボルトにボルト引抜対策として取り付けるべきロック材の数および型式を演算する演算手段と、
を備えることを特徴とする鉄塔ボルト保全対策装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記ロック材の数および型式と所定の演算基準とに基づいて、前記ボルト引抜対策に要する費用を演算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄塔ボルト保全対策装置。
【請求項3】
前記各連結部において前記ロック材を取り付けるべき位置を示す取付図を出力する出力手段を備える、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の鉄塔ボルト保全対策装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記ボルト引抜対策の施工ガイダンスを出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載の鉄塔ボルト保全対策装置。
【請求項5】
前記入力情報取得手段は、前記鉄塔の構造図に前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数が記された組立図から、前記昇降防止装置よりも下方における前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数を取得する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の鉄塔ボルト保全対策装置。
【請求項6】
コンピュータを、
主柱材が連結ボルトで連結された主柱で構成された鉄塔の所定の高さに昇降防止装置が取り付けられ、前記昇降防止装置よりも下方における前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数を含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、
前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記各連結部の前記連結ボルトにボルト引抜対策として取り付けるべきロック材の数および型式を演算する演算手段、
として機能させることを特徴とする鉄塔ボルト保全対策プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔のボルトの引き抜きを防止するためのロック材の取付数などを演算する鉄塔ボルト保全対策装置および保全対策プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔は、例えば、山形鋼をボルト、ナットで連結して構成され、地上から所定の高さに昇降防止装置が取り付けられて、無断で昇降できないようになっている。しかしながら、地上から昇降防止装置までにおいては、何者かが故意にボルト、ナットを外したりするおそれがあるため、これを防止するための保全対策を施す必要がある。例えば、送電鉄塔の送電線が高速道路や国道などの主要横断物の上空を通過し、送電鉄塔が倒壊すると社会的影響が大きい箇所や公衆への危険が大きい場合に、送電鉄塔の主柱材に保全対策(ボルト引抜対策)を実施している。
【0003】
また、ボルト引抜対策として、締結したボルト、ナットにロック材を取り付けることが従来から行われ、多様なロック材が開発されている。例えば、ボルトとナットとによる締結箇所を覆って取外しを防ぐ、というボルトガードが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-39146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ボルト引抜対策をすべてのボルトに対して行うと多大な費用を要し、少ないとボルトの引き抜きによって送電鉄塔が倒壊したり強度不足になったりするおそれがある。つまり、適正な数だけ適正なボルト・位置にボルト引抜対策を施す必要があり、従来、電力会社の担当者などが所定の基準に従って決定、算出していた。このため、多大な労力と時間を要するばかりでなく、決定、算出ミスが生じるおそれがあった。さらに、ボルト引抜対策を施すための費用を算出する必要があるが、これも従来、電力会社の担当者などが所定の基準に従って算出していたため、多大な労力と時間を要するばかりでなく、算出ミスが生じるおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、ボルト引抜対策を施すべきボルトの数などを適正かつ容易に取得可能な、鉄塔ボルト保全対策装置および保全対策プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、主柱材が連結ボルトで連結された主柱で構成された鉄塔の所定の高さに昇降防止装置が取り付けられ、前記昇降防止装置よりも下方における前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数を含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記各連結部の前記連結ボルトにボルト引抜対策として取り付けるべきロック材の数および型式を演算する演算手段と、を備えることを特徴とする鉄塔ボルト保全対策装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鉄塔ボルト保全対策装置において、前記演算手段は、前記ロック材の数および型式と所定の演算基準とに基づいて、前記ボルト引抜対策に要する費用を演算する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の鉄塔ボルト保全対策装置において、前記各連結部において前記ロック材を取り付けるべき位置を示す取付図を出力する出力手段を備える、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の鉄塔ボルト保全対策装置において、前記出力手段は、前記ボルト引抜対策の施工ガイダンスを出力する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4に記載の鉄塔ボルト保全対策装置において、前記入力情報取得手段は、前記鉄塔の構造図に前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数が記された組立図から、前記昇降防止装置よりも下方における前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数を取得する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、コンピュータを、主柱材が連結ボルトで連結された主柱で構成された鉄塔の所定の高さに昇降防止装置が取り付けられ、前記昇降防止装置よりも下方における前記主柱材の各連結部の前記連結ボルトのサイズおよび本数を含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段と、前記鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、前記各連結部の前記連結ボルトにボルト引抜対策として取り付けるべきロック材の数および型式を演算する演算手段、として機能させることを特徴とする鉄塔ボルト保全対策プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および請求項6に記載の発明によれば、昇降防止装置よりも下方における各連結部の連結ボルトのサイズおよび本数を含む鉄塔入力情報が取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、各連結部の連結ボルトに取り付けるべきロック材の数および型式が自動演算される。このように、各連結部においてボルト引抜対策として取り付けるべきロック材の数および型式を適正かつ容易に取得することができ、算出に要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、ロック材の数および型式と所定の演算基準とに基づいて、ボルト引抜対策に要する費用が自動演算されるため、費用の算出に要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、各連結部においてロック材を取り付けるべき位置を示す取付図が出力されるため、どの連結ボルトにロック材を取り付けるべきかが一目でわかる。このため、どこにロック材を取り付けるべきかを検討する時間を削減できるばかりでなく、適正な位置にロック材を取り付けて鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、ボルト引抜対策の施工ガイダンスが出力されるため、誰でも適正かつ容易にボルト引抜対策を施工することが可能となり、鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、昇降防止装置よりも下方における各連結部の連結ボルトのサイズおよび本数が組立図から自動取得されるため、取得に要する労力や時間を削減できるばかりでなく、取得ミスを防止して鉄塔の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の形態に係る鉄塔ボルト保全対策装置を示す概略構成図である。
図2】この発明の実施の形態における送電鉄塔の組立図である。
図3】この発明の実施の形態における送電鉄塔のボルト引抜対策の対象連結部を示す図であり、(a)は平脚の場合を示し、(b)は片継脚の場合を示す。
図4図2の送電鉄塔の各脚の位置関係を示す概略平面図である。
図5図1の鉄塔ボルト保全対策装置による鉄塔保全対策の数量表を示す図である。
図6図1の鉄塔ボルト保全対策装置によるロック材取付基準を示す図である。
図7図1の鉄塔ボルト保全対策装置による鉄塔保全対策の予算明細表を示す図である。
図8図1の鉄塔ボルト保全対策装置による施工ガイダンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
図1図8は、この実施の形態を示し、図1は、この発明の実施の形態に係る鉄塔ボルト保全対策装置1を示す概略構成図である。この鉄塔ボルト保全対策装置1は、鉄塔のボルトの引き抜きを防止するためのロック材201の取付数などを演算して、鉄塔保全対策つまりボルト引抜対策を支援する装置であり、この実施の形態では、鉄塔が図2図4に示すような送電鉄塔100の場合について、主として説明する。
【0021】
ここで、送電鉄塔100は、その型式や設置地形などによって形状が異なり、図4に示すように、略正四角形の頂部に配置された4つの主柱101、a脚~d脚で送電鉄塔100が構成されている。また、この実施の形態では、図2に示すように、各主柱101の基礎(地面)から施工基面FLまでの高さHa~Hdが異なり、a脚とb脚の主柱101の基礎からの高さHa、Hbが最も高く(深く)、c脚の主柱101の基礎からの高さHcが次に高く、d脚の主柱101の基礎からの高さHdが最も低いとする。
【0022】
また、各主柱101は、断面がL字状の山形鋼からなる複数の主柱材102を、連結部(端部を重ねた部位)Jにおいて連結ボルト103で連結して構成され、送電鉄塔100の所定の高さに昇降防止装置105が取り付けられている。そして、図3に示すように、昇降防止装置105よりも下方における連結部Jにおいてボルト引抜対策を施すものとする。従って、各主柱101の基礎(地面)から昇降防止装置105までの高さに応じてボルト引抜対策数が異なる。すなわち、図3(a)に示す平脚の場合には、地面から昇降防止装置105までにおける上部(最下パネルの上方)と下部(最下パネルの下方)の連結部Jのみにボルト引抜対策を施したり、図3(b)に示す片継脚の場合には、地面から昇降防止装置105までにおける上部と下部、その間の第1の中間部、第2の中間部の連結部Jにボルト引抜対策を施したりする場合がある。
【0023】
鉄塔部材チェック装置1は、主として、鉄塔データベース2と、表示部(出力手段)3と、入力部(入力情報取得手段)4と、通信部(出力手段)5と、抽出部(入力情報取得手段)6、演算部(演算手段)7と、これらを制御などする中央処理部8とを備える。
【0024】
鉄塔データベース2は、送電鉄塔100の鉄塔部材やボルト引抜対策などに関する情報を記憶する記憶手段であり、例えば、後述するロック材201の単価やロック材取付基準、施工ガイダンスを記憶する。表示部3は、各種情報や画像を表示、出力するディスプレイであり、例えば、後述する鉄塔保全対策の数量表や予算明細表、ロック材取付図、施工ガイダンスを表示する。入力部4は、各種情報や指令を入力、取得するためのインターフェイスであり、例えば、連結ボルト103のサイズや本数を入力、取得する。通信部5は、外部装置と通信するためのインターフェイスであり、例えば、鉄塔メーカーのコンピュータや所定部署の通信端末、作業者の通信端末と通信するものである。
【0025】
抽出部6は、通信部5を介して鉄塔メーカーのコンピュータなどから受信したり、入力部4から入力されたりした組立図から、鉄塔入力情報を抽出、取得するタスク・プログラムである。すなわち、送電鉄塔100の構造図に主柱材102の各連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数が記された、図2に示すような組立図から、昇降防止装置105よりも下方における主柱材102の各連結部J、つまり、ボルト引抜対策すべき各連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数を抽出、取得する。
【0026】
具体的には、組立図から昇降防止装置105よりも下方の各連結部Jの連結ボルト103のサイズと本数を読み取り、図5に示すような鉄塔保全対策の数量表の「鉄塔ボルトサイズ・本数」の各脚a~dに対する各連結部Jに記入する。ここで、図2には昇降防止装置105を省略しているが、施工基面FL(最下パネル)の直上の連結部Jの直上に昇降防止装置105が取り付けられており、施工基面FLや最下パネルの位置に基づいて対象の連結ボルト103のサイズと本数を読み取ってもよい。このように、この実施の形態では、抽出部6によって組立図から鉄塔入力情報を抽出、取得しているが、鉄鉄塔入力情報の一部または全部を入力部4から入力することで取得してもよい。
【0027】
この実施の形態では、図5に示すように、a脚とb脚には、上部、第1の中間部、第2の中間部および下部の各連結部Jに、サイズがM24の連結ボルト103がそれぞれ12本、c脚には、上部、第1の中間部および下部の各連結部Jに、サイズがM24の連結ボルト103がそれぞれ12本、d脚には、上部と下部の各連結部Jに、サイズがM24の連結ボルト103がそれぞれ12本締結されていることが抽出、取得される。
【0028】
演算部7は、抽出部6で取得された鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、ボルト引抜対策の対策数や費用の演算などを行うタスク・プログラムである。第1に、ボルト引抜対策すべき各連結部Jの連結ボルト103に取り付けるべきロック材201の数および型式を演算する。
【0029】
まず、鉄塔データベース2に記憶された図6に示すロック材取付基準には、1つの連結部Jにおける連結ボルト103の本数に対して、ボルト引抜対策を何本施せばよいか、どの連結ボルト103に施せばよいかが図示されている。すなわち、所定の演算基準として、連結部Jにおける連結ボルト103の本数の半数(切り上げた整数値)にロック材201を取り付けることを基本とし、連結ボルト103の本数が6本の場合には、バランスを考慮して4本としている。
【0030】
また、所定の演算基準として、ロック材201が取り付けられていない連結ボルト103が引き抜かれたり緩んだりしても送電鉄塔100の強度などが大きく低下しないように、バランスよくロック材201を取り付けるものとし、ロック材201を取り付けるべき連結ボルト103の位置(図中黒丸)が設定されている。この際、連結ボルト103の本数が8本から16本の場合のように、山形鋼である主柱材102の稜線・中心線を境に、両辺にそれぞれ連結ボルト103が2列配置されている場合には、図6で示すような外側と外側、あるいは内側と内側の連結ボルト103にロック材201を取り付けるものとしている。この実施の形態では、このようなロック材取付基準が予め鉄塔データベース2に記憶されているが、上記のような所定の演算基準に従って演算部7で自動演算、作成するようにしてもよい。
【0031】
また、ロック材201は、連結ボルト103の引き抜きを防止できればどのようなものであってもよいが、この実施の形態では、図8に示すような構造となっている。すなわち、外ナットと内ナットとナットカバーから構成され、連結ボルト103の連結ナット104にナットカバーを被せ、内ナットの突起部を外ナットの溝にはめ込んで連結ボルト103にねじ込み、内ナットの突起部が切断するまで(外ナットが空回りするまで)外ナットを締め付ける。これにより、ナットカバーを外せなくなって連結ボルト103の引き抜きを防止できるものである。このようなロック材201は、連結ボルト103のサイズに応じて複数のサイズ(型式)が用意されている。
【0032】
そして、上記のロック材取付基準と、ボルト引抜対策すべき各連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数と、用意されているロック材201のサイズに基づいて、取り付けるべきロック材201の数およびサイズを演算して、図5に示すような鉄塔保全対策の数量表の「ロック材数量」の各脚a~dに対して記入する。すなわち、「鉄塔ボルトサイズ・本数」の連結ボルト103のサイズおよび本数に従って、「ロック材数量」の該当する連結部Jの該当するサイズのロック材201にロック材201の必要数を記入する。例えば、a脚の上部の連結部Jの連結ボルト103のサイズがM24で本数が12本の場合、ロック材201のサイズがM24で必要数が6個となる。また、脚a~dごとに、必要なロック材201のサイズごとの小計を演算、記入し、さらに、すべての脚a~dで必要なロック材201のサイズごとの合計を演算、記入する。この際、連結ボルト103がない部位(例えば、図5中のc脚の第2の中間部やd脚の第1および第2の中間部)には、当然ロック材201が不要としてゼロ(NULL)を記入する。
【0033】
第2に、ロック材201の数およびサイズと所定の演算基準とに基づいて、ボルト引抜対策に要する費用を演算する。すなわち、所定の演算基準としてロック材201のサイズごとの単価が、鉄塔データベース2に記憶されている。この際、図7の鉄塔保全対策の予算明細表に示すように、ロック材201の数量に応じて異なる単価が設定、記憶されている。そして、先に演算されたロック材201のサイズと数と単価に基づいて費用を演算して予算明細表に記入する。具体的には、演算したロック材201のサイズと数(合計)に該当する単価と、ロック材201の必要数とを乗算して費用を演算し、該当する金額欄に記入する。このとき、複数のサイズのロック材201を要する場合には、サイズごとに費用を演算、記入して総費用を演算するものである。
【0034】
第3に、各連結部Jにおいてロック材201を取り付けるべき位置を示す取付図と、ボルト引抜対策の施工ガイダンスを出力する。すなわち、上記のようにして演算、記入された鉄塔保全対策の数量表や予算明細表とともに、図6に示すロック材取付基準(取付図)と図8に示す施工ガイダンスを表示部3などに表示、出力する。ここで、図6に示すロック材取付基準には、連結部Jにおける連結ボルト103の本数ごとに、ロック材201を取り付けるべき位置が図示され、すべての図を取付図として出力してもよいが、鉄塔保全対策の数量表における各連結部Jの連結ボルト103の本数に対応する図のみを出力してもよい。また、図8の施工ガイダンスには、ロック材201の構造、取付方法、注意事項などが記され、適正かつ容易にロック材201を取り付けられるようにガイドするようになっている。
【0035】
また、このような鉄塔保全対策の数量表や予算明細表、取付図(ロック材取付基準)および施工ガイダンスを入力部4などで指定された出力方法で出力できるようになっている。つまり、表示部3に表示したり紙に印刷したりするだけではなく、所定部署の通信端末や作業者の通信端末などに送信、出力できるようになっている。これにより、例えば、作業者は取付図を参照して適正な位置にロック材201を取り付けることができ、施工ガイダンスを参照して適正かつ容易にロック材201を取り付けることができる。
【0036】
このような構成の鉄塔ボルト保全対策装置1を使用して鉄塔保全対策を行う場合、まず、送電鉄塔100の組立図を鉄塔メーカーのコンピュータなどから受信したり、入力部4から入力したりする。次に、抽出部6を起動すると、組立図からボルト引抜対策すべき各連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数が抽出、取得され、図5に示す数量表の「鉄塔ボルトサイズ・本数」に記入される。
【0037】
続いて、演算部7を起動すると、ボルト引抜対策すべき各連結部Jの連結ボルト103に取り付けるべきロック材201の数およびサイズを演算され、図5に示す数量表の「ロック材数量」に記入される。続いて、ボルト引抜対策に要する費用が演算されて、図7に示す予算明細表に記入される。そして、演算、作成された数量表や予算明細表と、ロック材201を取り付けるべき位置が図示された取付図およびボルト引抜対策の施工ガイダンスが、指定された出力方法で出力される。
【0038】
以上のように、この鉄塔ボルト保全対策装置1によれば、昇降防止装置105よりも下方における各連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数を含む鉄塔入力情報が取得されると、この鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、各連結部Jの連結ボルト103に取り付けるべきロック材201の数およびサイズが自動演算される。このように、各連結部Jにおいてボルト引抜対策として取り付けるべきロック材201の数およびサイズを適正かつ容易に取得することができ、算出に要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止して送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0039】
しかも、昇降防止装置105よりも下方における各連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数が組立図から自動取得されるため、取得に要する労力や時間を削減できるばかりでなく、取得ミスを防止して送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0040】
また、ロック材201の数およびサイズと所定の演算基準とに基づいて、ボルト引抜対策に要する費用が自動演算されるため、費用の算出に要する労力や時間を削減できるばかりでなく、算出ミスを防止することが可能となる。
【0041】
一方、各連結部Jにおいてロック材201を取り付けるべき位置を示す取付図が出力されるため、どの連結ボルト103にロック材201を取り付けるべきかが一目でわかる。このため、どこにロック材201を取り付けるべきかを検討する時間を削減できるばかりでなく、適正な位置にロック材201を取り付けて送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0042】
さらに、ボルト引抜対策の施工ガイダンスが出力されるため、誰でも適正かつ容易にボルト引抜対策を施工することが可能となり、送電鉄塔100の安全性、健全性を高めることが可能となる。
【0043】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態は、組立図から保全対策対象のすべての連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数を取得、入力して、すべての対象連結部Jに対するロック材201の必要数および型式を演算する場合について説明したが、個々・特定の連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数を取得、入力して、当該連結部Jに対するロック材201の必要数および型式を演算するようにしてもよい。
【0044】
また、演算部7においてロック材201のサイズを型式として演算、出力しているが、型式としてロック材201の種類などを演算、出力してもよい。例えば、連結ボルト103のサイズや位置、鉄塔の種類などによってボルト引抜対策として取り付けるべきロック材201の種類が異なる場合に、演算部7においてロック材201の種類を型式として演算、出力するようにしてもよい。さらに、鉄塔が送電鉄塔100の場合について説明したが、送電鉄塔100以外の鉄塔にも適用できることは勿論である。
【0045】
ところで、次のような鉄塔ボルト保全対策プログラムを汎用のコンピュータにインストールして鉄塔ボルト保全対策装置1を構成してもよい。すなわち、コンピュータを、主柱材102が連結ボルト103で連結された主柱101で構成された鉄塔100の所定の高さに昇降防止装置105が取り付けられ、昇降防止装置105よりも下方における主柱材102の各連結部Jの連結ボルト103のサイズおよび本数を含む鉄塔入力情報を取得する入力情報取得手段(入力部4、抽出部6)と、鉄塔入力情報と所定の演算基準とに基づいて、各連結部Jの連結ボルト103にボルト引抜対策として取り付けるべきロック材201の数および型式を演算する演算手段(演算部7)、として機能させることを特徴とする鉄塔ボルト保全対策プログラム。
【符号の説明】
【0046】
1 鉄塔部材チェック装置
2 鉄塔データベース
3 表示部(出力手段)
4 入力部(入力情報取得手段)
5 通信部(出力手段)
6 抽出部(入力情報取得手段)
7 演算部(演算手段)
100 送電鉄塔(鉄塔)
101 主柱
102 主柱材
103 連結ボルト
104 連結ナット
105 昇降防止装置
J 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8