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特許7571524インクジェット式プリンター用インク判別方法、およびインクジェット式プリンター用インク判別システム
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  • 特許-インクジェット式プリンター用インク判別方法、およびインクジェット式プリンター用インク判別システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】インクジェット式プリンター用インク判別方法、およびインクジェット式プリンター用インク判別システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/32 20060101AFI20241016BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N33/32
B41J2/01 451
G01N21/27 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020212192
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098671
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮基
(72)【発明者】
【氏名】山下 充裕
(72)【発明者】
【氏名】大野 典
(72)【発明者】
【氏名】松坂 健治
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111598146(CN,A)
【文献】特開2005-231356(JP,A)
【文献】特開2020-128059(JP,A)
【文献】特開2020-116871(JP,A)
【文献】特開2020-107144(JP,A)
【文献】国際公開第2022/071932(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2356014(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/32
B41J 2/01
2/165-2/220
2/21- 2/215
C09D 1/00-10/00
101/00-201/10
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と分光器と検出器とを含む分光分析部を備えた分光分析装置を用いてインクジェット式プリンターで使用されるインクジェット式プリンター用インクに光を照射して観測される吸光度Aと透過率T%と反射率R%の3つのインクジェット式プリンター用インク特性データと、前記インクジェット式プリンター用インクの種類または前記インクジェット式プリンター用インクの種類を含む前記インクジェット式プリンター用インクの属性情報とを対応付けた教師データを用いて機械学習させることにより学習済モデルを生成し、
前記分光分析装置を用いて前記インクジェット式プリンターで使用される前記インクジェット式プリンター用インクに光を照射して観測された吸光度Aと透過率T%と反射率R%の3つのインクジェット式プリンター用インク観測データを入力して得られる前記学習済モデルの出力データに基づき、前記インクジェット式プリンター用インク観測データに対応するインクジェット式プリンター用インクの種類を判別し、
前記属性情報は前記インクジェット式プリンター用インクの色、タイプ、成分、メーカー、製造地域、製造時期の内の少なくとも1つである
インクジェット式プリンター用インク判別方法。
【請求項2】
前記インクジェット式プリンター用インクの前記タイプは、水性、油性、紫外線硬化型、熱硬化型、染料系、顔料系成分の内の少なくとも1つである、
請求項1に記載のインクジェット式プリンター用インク判別方法。
【請求項3】
前記インクジェット式プリンター用インクに入射する入射光の強度をI0、前記インクジェット式プリンター用インクからの透過光の強度をI1、前記インクジェット式プリンター用インクからの反射光の強度をI2としたとき、

吸光度A=log(I0/I1)
透過率T%=I1/I0×100
反射率R%=I2/I0×100
であり、

前記I0、前記I1、前記I2は紫外領域から赤外領域までを10nm毎の波長に区切って観測され、
前記吸光度A、前記透過率T%、前記反射率R%は前記10nm毎の波長毎に取得される
請求項1及び2に記載のインクジェット式プリンター用インク判別方法。
【請求項4】
前記機械学習に用いられる訓練モデルは、全n層の各層をL1からLnで示されるCNN(Convolutional Neural Network)であり、
前記吸光度Aの訓練モデルAと、前記透過率T%の訓練モデルT%と、前記反射率R%の訓練モデルR%とをそれぞれ設定し、
前記訓練モデルAは、前記10nm毎に区切られた波長毎の吸光度Aを前記吸光度Aの前記訓練モデルAの入力層である第1層L1の各ノードへの入力データとし、最終出力層Lnから前記吸光度Aに対応する最終出力データAを出力し、
前記訓練モデルT%は、前記10nm毎に区切られた波長毎の透過率T%を前記透過率T%の前記訓練モデルT%の入力層である第1層L1の各ノードへの入力データとし、最終出力層Lnから前記透過率T%に対応する最終出力データT%を出力し、
前記訓練モデルR%は、前記10nm毎に区切られた波長毎の反射率R%を前記反射率R%の前記訓練モデルR%の入力層である第1層L1の各ノードへの入力データとし、最終出力層Lnから前記反射率R%に対応する最終出力データR%を出力し、
前記最終出力データAと、前記最終出力データT%と、前記最終出力データR%の3つを統合して最終結果とする
請求項3に記載のインクジェット式プリンター用インク判別方法。
【請求項5】
光源と分光器と検出器とを含む分光分析部を備え、インクジェット式プリンター用インクに光を照射して前記インクジェット式プリンター用インクの吸光度Aと透過率T%と反射率R%の3つを観測する分光分析装置と、
前記分光分析装置で観測される吸光度Aと透過率T%と反射率R%の3つのインクジェット式プリンター用インク特性データと、前記インクジェット式プリンター用インクの種類または前記インクジェット式プリンター用インクの種類を含む前記インクジェット式プリンター用インクの属性情報とを対応付けた教師データを用いて機械学習した学習済モデルとしてのインクジェット式プリンター用インク判定器と、
前記分光分析装置で観測された吸光度Aと透過率T%と反射率R%の3つのインクジェット式プリンター用インク観測データを入力して得られる前記インクジェット式プリンター用インク判定器の出力データに基づき、前記インクジェット式プリンター用インク観測データに対応する前記インクジェット式プリンター用インクの種類を判別するインクジェット式プリンター用インク判別部と、を備え、
前記属性情報は前記インクジェット式プリンター用インクの色、タイプ、成分、メーカー、製造地域、製造時期の内の少なくとも1つである
インクジェット式プリンター用インク判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク判別方法、およびインク判別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、充填されたインクに対して光を照射する工程と、前記光が前記インクを透過または反射する光量を測定する工程であって、1色のインクに対して波長の異なる複数の光量をそれぞれ測定する工程と、前記測定された複数の光量に基づいて前記充填されたインクが所定のインクか否かを判別する工程と、を含むことを特徴とするインク判別方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-231356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインク判別方法では、インクを透過または反射する光量の測定値に基づいて、インクが所定のインクか否かの判別を可能とするためには、判別のための閾値を適切に設定しなければならなかった。つまり、設定された閾値が適切に設定されていない場合には、インクの判別を正確に行うことができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインク判別方法は、インクに光を照射して観測される吸光度、透過率、反射率の内の少なくとも1つのインク特性データと、前記インクの種類または前記インクの種類を含む前記インクの属性情報とを対応付けた教師データを用いて機械学習させることにより学習済モデルを生成し、インクに光を照射して観測された吸光度、透過率、反射率の内の少なくとも1つのインク観測データを入力して得られる前記学習済モデルの出力データに基づき、前記インク観測データに対応するインクの種類を判別する。
【0006】
本発明のインク判別システムは、インクに光を照射して観測される吸光度、透過率、反射率の内の少なくとも1つのインク特性データと、前記インクの種類または前記インクの種類を含む前記インクの属性情報とを対応付けた教師データを用いて機械学習した学習済モデルとしてのインク判定器と、インクに光を照射して観測された吸光度、透過率、反射率の内の少なくとも1つのインク観測データを入力して得られる前記インク判定器の出力データに基づき、前記インク観測データに対応するインクの種類を判別するインク判別部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る学習済モデルを生成する機械学習装置の構成を示すブロック図である。
図2】機械学習により学習済モデルを生成する処理を示すフローチャートである。
図3】実施形態において利用される訓練モデルの一例を示す模式図である。
図4】実施形態に係るインク判別システムの構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係るインク判別処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態
本実施形態のインク判別方法は、インクに光を照射して観測されるインク特性データと、インクの種類またはインクの種類を含むインクの属性情報とを対応付けた教師データを用いて機械学習させることにより生成した学習済モデルとしてのインク判定器を用いてインクの判別を行うことを特徴としている。インク判定器を用いたインクの判別に当たっては、判別を行う対象のインクに光を照射して観測されるデータをインク観測データとして取得し、取得したインク観測データをインク判定器に入力し、入力に対応して得られたインク判定器の出力データに基づきインクの種類を判別する。
【0009】
まず、図1から図3を参照して、インク判定器の生成処理について具体的に説明する。
インクとしては、例えば、インクジェット式のプリンターで使用されるインクが挙げられるが、これに限定するものではない。印刷以外に、例えば、描画、塗装、筆記などに用いられるインクであってもよい。
インクの種類を判別するとは、例えば、インクメーカーによって命名されたインク名や付番されたインク品番を特定することを意味している。
【0010】
インクの属性情報とは、インクの種類、つまり、インク名やインク品番の情報の他、インクの色、インクのタイプ、インクに含まれる成分、インクのメーカー、インクの製造地域、インクの製造時期の内の少なくとも1つの情報である。
インクのタイプとしては、例えば、水性、油性、紫外線硬化型、熱硬化型、染料系、顔料系などの情報が含まれる。
インク特性データは、インクに光を照射して観測される吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのデータである。
【0011】
インク判定器2は、図1に示す機械学習装置1において、学習プログラム3に従い、教師データ4を用いて、訓練モデル5を訓練することにより生成する。インク判定器2は、ある時点までに得られた教師データ4により、訓練モデル5を用いて生成された学習済みのモデルであり、通信部50を介して、後述するインク判別システムに提供された時点で、そのインク判別システムにおけるインク判定器2として扱われる。
機械学習装置1は、コンピューターシステムであり、機械学習部10、入力部20、表示部30、記憶部40、通信部50などを備えている。
【0012】
機械学習部10は、CPU,RAM,ROMを備え、記憶部40に記憶された学習プログラム3に従い、機械学習に必要な演算を実行する。機械学習部10は、機械学習を行うために、GPUや機械学習用に設計された各種のプロセッサーを備えても良い。
CPUは、Central Processing Unitを、RAMは、Random access memoryを、ROMは、Read-Only Memoryを、GPUは、Graphics Processing Unitを意味する。
【0013】
入力部20は、ユーザーインターフェイスとしての情報入力手段である。具体的には、例えば、キーボードやマウスポインターなどである。
表示部30は、ユーザーインターフェイスとしての情報表示手段であり、機械学習部10の制御の基に、例えば、入力部20から入力される情報や、機械学習部10の演算結果などが表示される。
【0014】
記憶部40は、ハードディスクドライブやメモリーカードなどの書き換え可能な記憶媒体であり、機械学習部10が動作する学習プログラム3や、機械学習を行うための教師データ4、訓練モデル5、機械学習の結果生成された学習済モデルとしてのインク判定器2などが記憶される。
通信部50は、例えば、LANインターフェイスやUSBインターフェイスなどの汎用インターフェイスを備え、外部の電子機器との情報の授受を行う。
【0015】
本実施形態において、機械学習装置1は、各種インクのインク特性データおよびそのインク特性データに対応するインクの種類の情報を教師データ4として、訓練モデル5を用いて機械学習を行なう。インクの種類の情報とは、インクの種類またはインクの種類を含むインクの属性情報である。
インク特性データとして、インクの分光分析による吸光度A、透過率T%、反射率R%などのデータを用いるのは、インクの種類に応じてこれらの特性が異なることが利用できるためである。
【0016】
インクの吸光度A、透過率T%、反射率R%は、分光光度計を用い、試料のインクに照射した光の強度に対して、インクが吸収した強度、インクを透過した強度、インクが反射した強度を評価することにより取得する。
入射光の強度をI0、透過光の強度をI1、反射光の強度をI2としたとき、それぞれ以下により求める。
吸光度A=log(I0/I1)
透過率T%=I1/I0×100
反射率R%=I2/I0×100
分光分析は、照射する光の波長を所定の波長範囲、例えば、紫外領域から赤外領域まで、10nm毎に区切って、その波長範囲の吸光度A、透過率T%、反射率R%のそれぞれのデータの集合として取得する。
【0017】
図2は、機械学習部10が機械学習を行なって、インク判定器2を生成する処理を示すフローチャートである。この処理を開始するまでに、複数種類のインクについて、そのインク特性データが、インクの種類またはインクの種類を含むインクの属性情報に対応付けた教師データ4として収集され、記憶部40に記憶されている。
【0018】
まずステップS1として、記憶部40から、訓練モデル5および教師データ4を取得する。
次に、ステップS2、ステップS3により、訓練モデル5を用いた機械学習処理を、汎化が完了するまで行なう。訓練モデル5の汎化が完了したか否かのステップS3における判定は、その時点までの訓練モデル5にテストデータを入力して得られる出力の正答率の閾値判定により行う。
訓練モデル5に対して教師データ4を与えて機械学習をすることにより、汎化が完了すると、インク判定器2が生成される。ステップS4では、学習済モデルとして、インク判定器2を記憶部40に保存する。
【0019】
機械学習用の訓練モデル5は種々の定義が可能である。図3は、本実施形態において利用される訓練モデルの一例を模式的に示した図である。同図においては、CNNによる全n層の各層をL1からLnで示しており、通常のニューラルネットワークのノードを白丸で示している。本実施形態においては、CNNを用いたが、カプセルネットワーク型やベクトルニューラルネットワーク型などの各種ニューラルネットワークなど、他のモデルを利用してもよい。CNNは、Convolutional Neural Networkを意味している。
【0020】
第1層L1には、一定波長毎のインク特性データを入力する複数のノードが設けられている。本実施形態においては、例えば、分光反射率データが示す一定波長毎の反射率R%を入力層である第1層L1の各ノードへの入力データとし、最終出力層Lnから反射率R%に対応する最終出力データを出力する。
反射率R%のデータに代えて、あるいは加えて、一定波長毎の透過率T%や吸光度Aを用いてもよい。例えば、吸光度A、透過率T%、反射率R%の3つのデータを用いる場合には、図3に示した訓練モデル5を3つ設け、各訓練モデル5の最終層から吸光度A、透過率T%、反射率R%に対応する結果を出力させ、それらの結果を統合して判定させる最終出力層Lnを構築し、最終結果を出力させてもよい。
また、インクの属性情報の内、インクの種類に応じて決まるインク特性データの傾向に影響を与える可能性のある情報については、入力データとして、新たに設けるノードから入力するようにしてもよい。
【0021】
第1層L1の各ノードの出力は次の第2層L2のノードに、所定の重み付けを施されて接続されている。これは第2層L2以降、第Ln-1層まで同様である。この各層間における各ノード間の重み付けを、教師データ4を用いて修正する作業を繰り返すことで、学習が進み、学習済モデルとしてのインク判定器2が生成されていく。
【0022】
次に、図4を参照し、インク判別システムについて説明する。
本実施形態のインク判別システム1000は、インク判別装置100と分光分析装置200とを備えている。
【0023】
インク判別装置100は、コンピューターシステムであり、インク判別部110、入力部120、表示部130、記憶部140、通信部150などを備えている。
【0024】
インク判別部110は、CPU,RAM,ROMを備え、記憶部140に記憶されたインク判定器2を用い、インクの種類の判別に必要な演算を実行する。
入力部120は、ユーザーインターフェイスとしての情報入力手段である。具体的には、例えば、キーボードやマウスポインターなどである。
表示部130は、ユーザーインターフェイスとしての情報表示手段であり、インク判別部110の制御の基に、例えば、入力部120から入力される情報や、インク判別部110の演算結果などが表示される。
【0025】
記憶部140は、ハードディスクドライブやメモリーカードなどの書き換え可能な記憶媒体であり、インク判別部110が動作するプログラムや、インクの種類を判別するためのインク判定器2などが記憶されている。
通信部150は、例えば、LANインターフェイスやUSBインターフェイスなどの汎用インターフェイスを備え、分光分析装置200や、機械学習装置1を含む外部の電子機器との情報の授受を行う。
【0026】
分光分析装置200は、分光分析部210、通信部250などを備えている。
分光分析部210は、光源、分光器、検出器などを備え、インクに光を照射して観測される吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク観測データを取得することができる。なお、分光分析部210は、上述したインク特性データ、すなわち、学習済モデルとしてインク判定器2を生成する際の機械学習における教師データ4としてのインク特性データを取得する際に用いた分光光度計と同じ計測仕様、分析仕様での分光分析を行えることが好ましい。
【0027】
通信部250は、例えば、LANインターフェイスやUSBインターフェイスなどの汎用インターフェイスを備え、インク判別装置100や外部の電子機器との情報の授受を行う。通信部250は、分光分析部210が取得したインク観測データを、インク判別装置100に送信することができる。
【0028】
すなわち、インク判別システム1000は、インクに光を照射して観測される吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク特性データと、インクの種類またはインクの種類を含むインクの属性情報とを対応付けた教師データ4を用いて機械学習した学習済モデルとしてのインク判定器2と、インクに光を照射して観測された吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク観測データを入力して得られるインク判定器2の出力データに基づき、インク観測データに対応するインクの種類を判別するインク判別部110と、を備えている。
【0029】
なお、インク判別装置100は、機械学習機能を備えてもよい。具体的には、インク判別装置100は、取得しているインク判定器2を訓練モデルとし、分光分析装置200から新たに得られるインク観測データと、そのインク観測データに対応する正しいインクの種類の情報とを新たな教師データ4Nとして、更に機械学習を行い、インク判定器2をリファインする機能を備えてもよい。
【0030】
次に、インク判別装置100を用いたインク判別フローについて、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
インク判別の処理を開始するにあたり、インク判別装置100は、記憶部140に学習済モデルとしてのインク判定器2を備えている。すなわち、本実施形態におけるインク判別方法としては、予め、インクに光を照射して観測される吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク特性データと、インクの種類またはインクの種類を含むインクの属性情報とを対応付けた教師データ4を用いて機械学習させることにより学習済モデルを生成しておく。
【0031】
インク判別の処理では、まず、ステップSa1として、インクの種類を判別する対象のインクの試料を準備する。具体的には、インク試料を、分光分析部210での評価が可能な状態にセットする。
次に、ステップSa2として、分光分析部210によりインク試料の分光分析を行い、インク観測データを取得する。分光分析は、照射する光の波長を所定の波長範囲、例えば、紫外領域から赤外領域まで、10nm毎に区切って、その波長範囲の吸光度A、透過率T%、反射率R%のそれぞれのデータの集合として取得する。
分光分析部210は、通信部250を介して、取得したインク観測データをインク判別装置100に送信し、インク観測データを受信したインク判別装置100は、インク判別部110において、ステップSa3として、インク観測データをインク判定器2に入力し、インク判定器2の出力データに基づき、インク観測データに対応するインクの種類を判別する。インク判別部110は、判別結果を表示部130に表示する。
【0032】
2.実施形態の作用効果
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態のインク判別方法は、インクに光を照射して観測される吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク特性データと、インクの種類またはインクの種類を含むインクの属性情報とを対応付けた教師データ4を用いて機械学習させることにより学習済モデルとしてのインク判定器2を生成し、インクに光を照射して観測された吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク観測データを入力して得られるインク判定器2の出力データに基づき、インク観測データに対応するインクの種類を判別することを特徴としている。つまり、機械学習したインク判定器2を用いて判定した結果に基づきインクの種類を判別するため、判別を行うための閾値を設定する必要が無く、また、判別の精度を高めるための閾値の見直しを行うことも無く、精度の高い判別を行うことができる。
【0033】
また、本実施形態のインク判別方法は、機械学習における教師データ4とするインクの属性情報に、インクの色、タイプ、成分、メーカー、製造地域、製造時期の内の少なくとも1つの情報を含めることができる。その場合、教師データ4を用いて機械学習したインク判定器2を用いてインクの種類を判別するに当たり、その判別の精度を高めることができる。
【0034】
また、本実施形態のインク判別システム1000は、インクに光を照射して観測される吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク特性データと、インクの種類またはインクの種類を含むインクの属性情報とを対応付けた教師データ4を用いて機械学習した学習済モデルとしてのインク判定器2と、インクに光を照射して観測された吸光度A、透過率T%、反射率R%の内の少なくとも1つのインク観測データを入力して得られるインク判定器2の出力データに基づき、インク観測データに対応するインクの種類を判別するインク判別部110と、を備えている。つまり、本実施形態のインク判別システム1000によれば、機械学習したインク判定器2を用いて判定した結果に基づきインクの種類を判別するため、判別を行うための閾値を設定する必要が無く、また、判別の精度を高めるための閾値の見直しを行うことも無く、精度の高い判別を行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1…機械学習装置、2…インク判定器、3…学習プログラム、4…教師データ、5…訓練モデル、10…機械学習部、20…入力部、30…表示部、40…記憶部、50…通信部、100…インク判別装置、110…インク判別部、120…入力部、130…表示部、140…記憶部、150…通信部、200…分光分析装置、210…分光分析部、250…通信部、1000…インク判別システム。
図1
図2
図3
図4
図5