(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】管ガラス梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20241016BHJP
B65D 81/05 20060101ALI20241016BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B65D81/26 Q
B65D81/05 500A
B65D85/30
(21)【出願番号】P 2020212401
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】深谷 重勝
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100442(JP,A)
【文献】特開2020-093966(JP,A)
【文献】特開2016-078940(JP,A)
【文献】特開2000-281163(JP,A)
【文献】特開2015-129016(JP,A)
【文献】特開昭58-203867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/05-81/30
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積された複数の管ガラスからなる管ガラス群と、前記管ガラス群の少なくとも一方の端部を覆い、前記管ガラス群を結束する結束フィルムと、を有する複数の管ガラス集積物と、
複数の前記管ガラス集積物を包む梱包フィルムと、
前記梱包フィルムの内側に配置される除湿剤と、を備え、
前記除湿剤は、前記梱包フィルムと前記結束フィルムとの間であって、前記結束フィルムにおける前記管ガラス群の側面を覆う領域に配置される
管ガラス梱包体。
【請求項2】
複数の前記管ガラス集積物を結束する結束部材を備え、
前記除湿剤は、前記結束フィルムと前記結束部材との間に配置される
請求項1に記載の管ガラス梱包体。
【請求項3】
複数の前記管ガラス集積物は、鉛直方向に積載され、
前記除湿剤は、積載された複数の前記管ガラス集積物の鉛直方向における中間位置以上の上方領域に配置される
請求項1
又は請求項
2に記載の管ガラス梱包体。
【請求項4】
前記管ガラスの長さは、500mm以上である
請求項1~請求項
3の何れか一項に記載の管ガラス梱包体。
【請求項5】
前記管ガラスは、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス及びアルミノシリケートガラスの何れかである
請求項1~請求項
4の何れか一項に記載の管ガラス梱包体。
【請求項6】
前記管ガラスの組成は、質量%で、SiO
2:50~80%、Al
2O
3:1~20%、B
2O
3:1~20%、Li
2O+Na
2O+K
2O:5%以上を含有する
請求項1~請求項
5の何れか一項に記載の管ガラス梱包体。
【請求項7】
前記管ガラスは、医薬容器用又は理化学容器用である
請求項1~請求項
6の何れか一項に記載の管ガラス梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管ガラス梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基台と、基台上に積載される複数の管ガラスと、複数の管ガラスを包むシュリンクフィルムと、を備える管ガラス梱包体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような管ガラス梱包体は、保管条件によっては、管ガラスが結露することにより、管ガラスの内面に水滴が付着することがある。そして、管ガラスの内面に付着した水滴により、管ガラスに含有されるアルカリ成分が水滴中に溶出する場合がある。この場合において、管ガラスの内面に付着した水滴が蒸発すると、当該水滴中に溶出したアルカリ成分が、粉状の異物として析出するおそれがある。本明細書では、この粉状の異物を「アルカリ吹き」という。
【0005】
本発明の目的は、保管条件によって、管ガラスに粉状の異物が発生しにくい管ガラス梱包体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
本開示の管ガラス梱包体は、集積された複数の管ガラスからなる管ガラス群と、前記管ガラス群の少なくとも一方の端部を覆い、前記管ガラス群を結束する結束フィルムと、を有する複数の管ガラス集積物と、複数の前記管ガラス集積物を包む梱包フィルムと、前記梱包フィルムの内側に配置される除湿剤と、を備える。
【0007】
本開示の管ガラス梱包体は、梱包フィルムの内側に管ガラス集積物と除湿剤とを配置していることにより、管ガラスの内部の気体が水分を含んでいる場合には、除湿剤により水分を除去できる。したがって、管ガラス梱包体において、管ガラスの内面が結露することを抑制でき、管ガラスに粉状の異物が発生することを抑制できる。
【0008】
上記管ガラス梱包体において、前記除湿剤は、前記梱包フィルムと前記結束フィルムとの間に配置されることが好ましい。
上記管ガラス梱包体は、管ガラスと除湿剤との間に結束フィルムが介在していることにより、例えば、管ガラスと除湿剤とが直接触れることに起因した管ガラスへの異物付着等の問題を回避できる。
【0009】
上記管ガラス梱包体において、前記梱包フィルムと前記結束フィルムとの間に配置される前記除湿剤は、前記結束フィルムにおける前記管ガラス群の側面を覆う領域に配置されることが好ましい。
【0010】
梱包フィルムの内側の空間に水分を含む気体が混入する場合を想定すると、当該気体は、管ガラス群の端部を被覆する結束フィルムの端、すなわち、管ガラス群において、結束フィルムに覆われる領域と結束フィルムに覆われない領域の境界隙間から、管ガラスの内部に流入することが考えられる。本開示の管ガラス梱包体は、結束フィルムにおける管ガラス群の側面を覆う領域に除湿剤が配置されることにより、上述した気体が混入する場合においても、水分を効率良く除去できる。
【0011】
上記管ガラス梱包体において、複数の前記管ガラス集積物は、鉛直方向に積載され、前記除湿剤は、積載された複数の前記管ガラス集積物の鉛直方向における中間位置以上の上方領域に配置されることが好ましい。
【0012】
管ガラス梱包体の保管中、外気温の変化により、管ガラス梱包体の内部の温度が上昇することがある。この際、梱包フィルムの中で温められる気体は上昇する。本開示の管ガラス梱包体は、除湿剤が、積載された複数の管ガラス集積物の鉛直方向における中間位置以上の上方領域に配置されることにより、梱包フィルムの中で温められることで上昇する気体に含まれる水分を効率良く除去できる。
【0013】
上記管ガラス梱包体において、前記除湿剤は、前記結束フィルムと前記管ガラス群の少なくとも一方の端面との間に配置されることが好ましい。
これにより、本開示の管ガラス梱包体は、管ガラスの開口に非常に近い位置に除湿剤を配置できるため、管ガラスの内部の気体中に含まれる水分を効率良く除去できる。
【0014】
上記管ガラス梱包体において、前記管ガラスの長さは、500mm以上であることが好ましい。管ガラスの長さが長い程、管ガラスの内部の空気の流れが鈍くなる。本開示の管ガラス梱包体は、梱包される管ガラスの長さが長くても、上述した作用効果を奏することができる。
【0015】
上記管ガラス梱包体において、前記管ガラスは、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス及びアルミノシリケートガラスの何れかのガラス系であることが好ましい。
具体的には、上記管ガラス梱包体において、前記管ガラスの組成は、質量%で、SiO2:50~80%、Al2O3:1~20%、B2O3:1~20%、Li2O+Na2O+K2O:5%以上を含有すれば、これらのガラス系に該当する。
【0016】
上記管ガラス梱包体において、前記管ガラスは、医薬容器用又は理化学容器用であることが好ましい。これらの用途では、管ガラスの内面に高い清潔度が求められる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の管ガラス梱包体は、保管条件によって、管ガラスに粉状の異物が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】上記管ガラス梱包体の管ガラス集積物の斜視図。
【
図5】高湿環境に放置した本実施形態の管ガラス梱包体における管ガラスの拡大写真。
【
図6】高湿環境に放置した比較例の管ガラス梱包体における管ガラスの拡大写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、管ガラス梱包体の一実施形態について説明する。
図1は、パレット100上に配置される管ガラス梱包体10を図示している。
図1に示すように、管ガラス梱包体10は、複数列に並んだ状態で複数段に積載される複数の管ガラス集積物20と、最下段の管ガラス集積物20の下に配置される第1シート30と、各段の管ガラス集積物20の上に配置される第2シート40と、を備えている。また、管ガラス梱包体10は、管ガラス梱包体10の四隅に位置して管ガラス集積物20を保護する複数の保護部材50と、積載される複数の管ガラス集積物20を結束する複数の結束部材60と、気体中に含まれる水分を吸収する除湿剤70と、複数の管ガラス集積物20を包む梱包フィルム80と、を備えている。
【0020】
図2に示すように、管ガラス集積物20は、集積された複数の管ガラス21を含む管ガラス群22と、管ガラス群22を結束する結束フィルム23と、を有している。
管ガラス21は、両端部が開口する円筒状をなしている。管ガラス21の内径は、例えば、数mm~十数mmであり、管ガラス21の全長は、例えば、500mm以上である。管ガラス21の用途は、例えば、アンプル、シリンジ及びバイアル等の医薬容器用及び理化学容器用である。
【0021】
管ガラス21は、ホウケイ酸ガラスからなり、SiO2、Al2O3、B2O3、R2Oを必須成分として含む。ここで、Rは、Li、Na及びKから選ばれる1種類以上の元素である。管ガラス21の素材となるホウケイ酸ガラスの組成については、特に制限されないが、質量%でSiO2:50~80%、Al2O3:1~20%、B2O3:1~20%及び「Li2O+Na2O+K2O」:5%以上を含有することが好ましい。ここで、「Li2O+Na2O+K2O」とは、Li2O、Na2O及びK2Oの含有量の合計値を意味する。以下、各成分の組成範囲を上記のように限定した理由を述べる。なお、以下の説明において、特に断りがない限り、%表示は質量%を意味する。
【0022】
SiO2はガラスネットワークを構成する成分の1つである。SiO2の含有量は50~80%、55~78%、60~76%、特に65~75%であることが好ましい。SiO2の含有量が少な過ぎると化学的耐久性が低下し、容器に求められる耐酸性及び耐水性が低くなる。また、ガラスネットワークからNa2O等のアルカリ成分が抜けやすくなり、アルカリ吹きの原因となる。一方、SiO2の含有量が多過ぎると液相粘度が低下し、製造工程で失透が起こりやすくなって生産性が低下する。
【0023】
Al2O3はガラスの失透を抑制し、化学的耐久性及び加水分解抵抗性を向上させる成分である。また、ガラスネットワークを補強して、ガラスネットワークからNa2O等のアルカリ成分が抜けること、すなわち、アルカリ吹きを抑制する成分である。Al2O3の含有量は1~20%、2~18%、4~15%、特に6~12%であることが好ましい。Al2O3の含有量が少な過ぎると上記の効果が得られない。一方、Al2O3の含有量が多過ぎるとガラスの粘度が上昇する。つまり、作業温度が高くなり、容器に加工する際に必要な熱量が多くなる。
【0024】
B2O3はガラスの融点を低下させるだけでなく、液相粘度を上昇させ、失透を抑制する成分である。B2O3の含有量は1~20%、3~18%、5~16%、特に7~14%であることが好ましい。B2O3の含有量が少な過ぎると作業温度が高くなり、容器に加工する際に必要な熱量が多くなる。一方、B2O3の含有量が多過ぎると、加水分解抵抗性や化学的耐久性が低下することで、ガラスネットワークからNa2O等のアルカリ成分が抜け易くなり、アルカリ吹きが生じ易くなる。
【0025】
Na2Oはガラスの粘度を低下させる成分である。Na2Oの含有量は1~15%、2~12%、3~10%、特に4~8%であることが好ましい。Na2Oの含有量が少なすぎると作業温度が高くなり、容器に加工する際に必要な熱量が多くなる。一方、Na2Oの含有量が多過ぎると加水分解抵抗性が低下する。なお、Na2Oは、アルカリ吹きの原因となる成分である。したがって、本開示の管ガラス梱包体は、Na2Oを含有する管ガラスに対して特に効果を発揮する。
【0026】
K2OもNa2Oと同様にガラスの粘度を低下させる成分である。K2Oの含有量は0~10%、0.1~8%、0.2~6%、0.5~5%、特に1~4%であることが好ましい。K2Oの含有量が少なすぎると作業温度が高くなり、容器に加工する際に必要な熱量が多くなる。一方、K2Oの含有量が多過ぎると加水分解抵抗性が低下する。なお、K2Oも、アルカリ吹きの原因となる成分である。したがって、本開示の管ガラス梱包体は、K2Oを含有する管ガラスに対して特に効果を発揮する。
【0027】
なお、K2OとNa2Oの両成分を併用すれば、混合アルカリ効果により、加水分解抵抗性が向上する。加水分解抵抗性を向上させるためには、質量比でK2O/Na2Oが0.0~1.0、0.1~0.8、0.15~0.6、特に0.2~0.5であることが好ましい。この比が小さいと加水分解抵抗性が低下する。一方、この比が大きいと作業温度が高くなり、容器に加工する際に必要な熱量が多くなり、生産性が悪化する。
【0028】
Li2OはNa2OやK2Oと同様にガラスの粘度を低下させる成分である。ただし、Li2Oを添加するとガラス溶融時に耐火物を侵食し易くなる。このため、Li2Oの含有量は0~5%、0~3%、0~1%、特に0~0.5%とすることが好ましく、特段の事情がなければLi2O以外の他のアルカリ金属酸化物を使用することが好ましい。
【0029】
Li2O、Na2O及びK2Oの含有量の合計値は、好ましくは5%以上、特に5~20%である。これらの成分の合計値が少ないと、作業温度が高くなる。またこれらの成分の合計値が多いと、化学耐久性や加水分解抵抗性が低下する。
【0030】
なお、管ガラス21の素材となるホウケイ酸ガラスについては、上記以外にも種々の成分を添加することが可能である。また、管ガラス21の他の素材としては、ソーダライムガラスやアルミノシリケートガラスを挙げることができる。
【0031】
結束フィルム23は、ガスバリア性が高く、適度な伸縮性を有する材質であることが好ましい。結束フィルム23の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリ塩化ビニルなどの樹脂材料であればよい。また、本実施形態において、結束フィルム23は、熱により収縮するシュリンクフィルムであるが、ストレッチフィルムなどで代替することも可能である。結束フィルム23は、管ガラス群22の長手方向における中間領域を除いた領域、すなわち、管ガラス群22の両端部の領域を被覆して管ガラス群22を結束する。結束フィルム23で覆われた領域と結束フィルム23で覆われていない領域の境界には、気体が流入し得る若干の隙間が生じる場合がある。また、管ガラス集積物20において、管ガラス21の両端の開口は、結束フィルム23により完全に塞がれない状態である。したがって、管ガラス梱包体10において、梱包フィルム80の内側の気体は、管ガラス21の内部に流入し得る。
【0032】
図2に示すように、管ガラス集積物20は、複数の管ガラス21が、その長手方向を揃えた状態で並ぶとともに積載している。
図2に示す例では、管ガラス21が6列に整列し、5段に積載してあり、管ガラス集積物20全体としては略直方体状をなしている。以降の説明では、結束フィルム23において、管ガラス群22の端面を覆う部分を結束フィルム23の正面ともいい、管ガラス群22の長手方向に沿う面のうち管ガラス群22の外側に露出する面の集合により構成される面を覆う部分を結束フィルム23の側面ともいう。ここで、管ガラス群22の端面は、管ガラス群22を構成する複数の管ガラス21の端面の集合により構成される面である。また、管ガラス群22の側面は、管ガラス群22を構成する複数の管ガラス21の側面のうち、管ガラス群22の外側に露出する面の集合により構成される面である。
【0033】
図1に示すように、複数の管ガラス集積物20は、その長手方向を揃えた状態で並ぶとともに積載している。
図1に示す例では、管ガラス集積物20が4列に並ぶとともに8段に積載している。
【0034】
図1に示すように、第1シート30及び第2シート40は、平面視において、略矩形状をなしており、第1シート30は、パレット100と同等の大きさであり、第2シート40は、パレット100よりも一回り小さくなっている。第1シート30は、鉛直方向において、後述する第1フィルム81及び第2フィルム82で構成される梱包フィルム80と、最下段を構成する複数の管ガラス集積物20と、の間に配置されている。一方、第2シート40は、各段を構成する複数の管ガラス集積物20の上に配置されている。第2シート40は、管ガラス集積物20の長手方向にわたって、管ガラス集積物20の並び方向における両端部が下方に屈曲している。これにより、各段を構成する複数の管ガラス集積物20が並び方向にずれることを抑制できる。
【0035】
保護部材50は、長手方向と直交する断面形状が略L字状をなす長尺部材である。保護部材50の長手方向における長さは、積載した管ガラス集積物20の高さに相当している。保護部材50は、例えば、段ボールなどから構成できる。保護部材50は、管ガラス集積物20を複数列に並んだ状態で複数段に積載することでできる鉛直方向に延びる4辺をそれぞれ覆うことで当該4辺を保護する。
【0036】
結束部材60は、例えば、結束バンドである。結束部材60は、梱包フィルム80の内側で、4つの保護部材50とともに複数の管ガラス集積物20を結束する。詳しくは、結束部材60が4つの保護部材50を複数の管ガラス集積物20に対して押さえ付けることで、複数の管ガラス集積物20が結束される。本実施形態では、2つの結束部材60が鉛直方向に間隔をあけて設けられているが、結束部材60の数は任意に変更できる。なお、結束部材60は、例えば、シュリンクフィルム及びストレッチフィルムなどのフィルム部材に置き換えることもできるし、結束用のロープ及びテープに置き換えることもできる。
【0037】
除湿剤70は、例えば、シリカゲル、酸化カルシウム及び塩化カルシウムなどの水分を吸収可能な物質を含んでいる。除湿剤70は、袋状をなしていてもよいし、シート状をなしていてもよい。除湿剤70は、梱包フィルム80で囲まれる空間内の湿度を低湿に維持する。
【0038】
除湿剤70は、積載された複数の管ガラス集積物20において、鉛直方向における中間位置以上の上方領域と、中間位置未満の下方領域とに配置されている。
図1に示すように、積層された管ガラス集積物20の高さを「H」としたとき、上方に配置される除湿剤70は、好ましくは0.5H以上、より好ましくは0.6H以上、さらに好ましくは0.7H以上の位置に配置される。一方、下方に配置される除湿剤70は、好ましくは0.5H未満、より好ましくは0.4H以下、さらに好ましくは0.3H以下の位置に配置される。
【0039】
本実施形態において、除湿剤70は、複数の管ガラス集積物20のうちの一部の管ガラス集積物20に取り付けられている。以降の説明では、除湿剤70が取り付けられる管ガラス集積物20を「管ガラス集積物20X」という。
【0040】
詳しくは、除湿剤70は、管ガラス集積物20Xにおいて、結束フィルム23の側面のうち、第2シート40にも保護部材50にも覆われない領域に位置するように取り付けられている。本実施形態では、除湿剤70を、結束フィルム23の側面と結束部材60との間に差し込むことで、結束フィルム23の側面に取り付ける。他の実施形態において、除湿剤70は、結束フィルム23の側面に粘着テープや接着剤で貼り付けることもできる。
【0041】
梱包フィルム80は、ガスバリア性が高く、適度な伸縮性を有する材質であることが好ましい。梱包フィルム80の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリ塩化ビニルなどの樹脂材料であればよい。また、本実施形態において、梱包フィルム80は、熱により収縮するシュリンクフィルムであるが、ストレッチフィルムなどで代替することも可能である。積載される複数の管ガラス集積物20と除湿剤70とは、梱包フィルム80で覆われる空間内に配置される。また、除湿剤70は、管ガラス集積物20の結束フィルム23と梱包フィルム80との間に配置される。
【0042】
(管ガラス梱包方法)
複数の管ガラス集積物20を管ガラス梱包体10とするための管ガラス梱包方法について説明する。
【0043】
図3及び
図4に示すように、本開示の管ガラス梱包方法は、管ガラス梱包体10の構成要素をパレット100上に積み上げる積載工程と、梱包フィルム80を形成するシーリング工程と、を有する。
【0044】
図3に示すように、積載工程では、初めに、矩形状の第1フィルム81をパレット100上に積載し、続いて、第1シート30を第1フィルム81上に積載する。第1フィルム81は、平面視において、パレット100や第1シート30よりも大きく、その周縁部がパレット100からはみ出している。その後、複数の管ガラス集積物20を第1シート30上に積載する。
【0045】
図3に示す例では、4列に並んだ管ガラス集積物20が8段に積載されている。各段の管ガラス集積物20の上に、第2シート40を配置することで、鉛直方向において、管ガラス集積物20と第2シート40とは交互に積載された状態となる。
【0046】
図3に示すように、複数の管ガラス集積物20をパレット100上に全て積載した後、2つの結束部材60で、積載した複数の管ガラス集積物の4隅に4つの保護部材50を組み付け、複数の管ガラス集積物20とともに結束する。その後、管ガラス集積物20Xと結束部材60との間に除湿剤70を差し込む。最後に、
図4に示すように、袋状の第2フィルム82を被せる。
【0047】
シーリング工程において、第2フィルム82に覆われた複数の管ガラス集積物20は、パレット100ごと、図示しない加熱装置内に投入される。これにより、
図1に示すように、第1フィルム81及び第2フィルム82が熱収縮する。詳しくは、第1フィルム81及び第2フィルム82が互いに熱溶着することにより一体化し、梱包フィルム80として管ガラス集積物20に密着する。これにより、管ガラス集積物20の梱包が完了し、この結果、管ガラス集積物20は、梱包フィルム80で覆われる空間内で変位することが制限される。
【0048】
次に、
図5及び
図6を参照して、本実施形態と比較例の対比結果について説明する。試験に用いたガラスは、質量%表記で、SiO
2:70%、B
2O
3:20%、Al
2O
3:5%、CaO:1%、BaO:1%、Na
2O:2%、K
2O:1%を含有するホウケイ酸ガラスであった。
【0049】
図5は、除湿剤70を備える管ガラス梱包体10を、温度20℃かつ湿度65%の雰囲気に720時間にわたって放置した、本実施形態の管ガラス21の表面の拡大写真である。一方、
図6は、除湿剤70を備えない管ガラス梱包体を、上記雰囲気に同条件で放置した、比較例の管ガラス21の表面の拡大写真である。
【0050】
図5に示すように、除湿剤70を備える場合は、管ガラス21を高湿環境に放置しても、管ガラス21の内面が結露しにくいため、管ガラス21の内面にアルカリ吹きに起因する異物は認められなかった。
【0051】
これに対し、
図6に示すように、除湿剤70を備えない場合は、管ガラス21を高湿環境に放置すると、管ガラス21の内面が結露しやすいため、管ガラス21の内面にアルカリ吹きに起因する異物が発生した。なお、
図6において、多数の白色の点が、アルカリ吹きに起因する異物である。
【0052】
以上の結果から、本実施形態の場合、管ガラス21の保管時に、アルカリ吹きに起因する異物が発生する問題が抑制されることが示された。
本実施形態の効果について説明する。
【0053】
(1)管ガラス21の製造工程に起因して、管ガラス21の内部の気体が水分を多く含むと、管ガラス梱包体10の保管環境によって、管ガラス21の内面が結露するおそれがある。この場合、管ガラス21の内面に付着した水分に、管ガラス21の素材に含有されるNaなどのアルカリ成分が溶出する。そして、当該水分が蒸発すると、Naなどのアルカリ成分が粉状の異物となって管ガラス21の内面に析出する。
【0054】
本開示の管ガラス梱包体10は、梱包フィルム80の内側に、管ガラス集積物20と除湿剤70とを配置していることにより、管ガラス21の内部の空間に含まれる気体が水分を含んでいる場合、除湿剤70により水分を除去できる。その結果、管ガラス梱包体10は、保管条件に関わらず、管ガラス21の内面が結露することを抑制でき、管ガラス21に粉状の異物が発生することを抑制できる。
【0055】
(2)除湿剤70は、梱包フィルム80と結束フィルム23との間に配置される。このため、管ガラス梱包体10は、除湿剤70と管ガラス21との直接的な接触を回避できる。
【0056】
(3)梱包フィルム80の内側の空間に、水分を含む気体が混入する場合を想定すると、当該気体は、管ガラス群22と結束フィルム23との隙間を通過して管ガラス21の内部に進入しやすい。すなわち、管ガラス群22において、結束フィルム23に覆われる領域と結束フィルム23に覆われない領域の境界の隙間から、管ガラス21の内部に流入しやすい。管ガラス梱包体10は、結束フィルム23における管ガラス群22の側面を覆う領域に除湿剤70が配置されるため、上述した気体が混入する場合においても、水分を効率良く除去できる。
【0057】
(4)梱包フィルム80の中で温められる気体は上昇する。管ガラス梱包体10において、除湿剤70は、積載された複数の管ガラス集積物の鉛直方向における中間位置以上の上方領域に配置されることにより、梱包フィルム80の中で温められることで上昇する気体に含まれる水分を効率良く除去できる。
【0058】
(5)梱包フィルム80の中で冷やされる気体は下降する。管ガラス梱包体10においては、除湿剤70が中間位置よりも下方領域に配置されることにより、梱包フィルム80の中で冷やされることで下降する気体に含まれる水分を効率良く除去できる。
【0059】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・管ガラス梱包体10において、除湿剤70は、梱包フィルム80の内側であれば、上記実施形態で述べた位置とは異なる位置に配置することもできる。
【0060】
・例えば、
図7に示すように、管ガラス集積物20Aは、管ガラス群22の端面と結束フィルム23の正面との間に配置される除湿剤70Aを有してもよい。この場合、除湿剤70Aはシート状をなすことが好ましい。変更例に係る管ガラス梱包体10Aは、管ガラス21の開口に非常に近い位置に除湿剤70Aを配置できる。このため、変更例に係る管ガラス梱包体10Aは、管ガラス21の内部の気体中に含まれる水分を効率良く除去できる。
【0061】
・除湿剤70は、結束フィルム23の正面と梱包フィルム80との間に配置してもよい。
・除湿剤70は、最下段に配置される管ガラス集積物20の付近にのみ配置してもよいし、最上段に配置される管ガラス集積物20の付近にのみ設置してもよい。例えば、除湿剤70は、最上部の第2シート40の上に配置してもよいし、第1シート30の下に配置してもよい。
【0062】
・管ガラス21は、その一端が開口していれば、他端が開口していなくてもよい。
・管ガラス21の長手方向と直交する断面形状は、円形でなくてもよい。管ガラス21の長手方向と直交する断面形状は、例えば、楕円形であってもよいし、矩形であってもよい。
【0063】
・管ガラス21の用途、材質及び形状は、上記実施形態で列記したものから変更可能である。同様に、管ガラス集積物20を構成する管ガラス21の本数及び管ガラス梱包体10を構成する管ガラス集積物20の個数は、適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
10,10A…管ガラス梱包体
20,20A,20X…管ガラス集積物
21…管ガラス
22…管ガラス群
23…結束フィルム
30…第1シート
40…第2シート
50…保護部材
60…結束部材
70,70A…除湿剤
80…梱包フィルム
100…パレット