(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】pH測定装置及び液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20241016BHJP
G01N 30/62 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N27/416 353Z
G01N30/62 E
(21)【出願番号】P 2021004023
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】神宮 句実子
(72)【発明者】
【氏名】福田 信太
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-002158(JP,A)
【文献】特開2002-150993(JP,A)
【文献】特開2017-110947(JP,A)
【文献】特開平10-170489(JP,A)
【文献】特表2012-529650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26 - 27/49
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定電極、及び、前記測定電極に対する電気的な接触をとるために前記測定電極から引き出された電極側コネクタを有する電極部と、
前記電極部が配置される前面部を有する筐体と、
前記筐体の内部に格納され、前記電極部の前記測定電極を通じて
液のpHを測定するための電気回路を含む回路部と、
前記回路部から引き出され、前記電極側コネクタが接続されることによって前記回路部を前記測定電極と電気的に接続させるための回路側コネクタと、
前記電極部が着脱可能に取り付けられる取付け部を有し、前記取付け部に取り付けられた前記電極部を前記筐体の前記前面部に配置する第1状態、及び、前記取付け部を前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出した第2状態となり得るように移動可能に設けられた移動部と、を備え、
前記回路側コネクタは、前記移動部が前記第1状態であるときに前記前面部よりも後方である前記筐体の内部に格納され、前記移動部が前記第2状態であるときに前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出されて前記筐体の外部へ露出するように前記移動部に搭載されている、pH測定装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記筐体の内部に設けられた直線状のガイドレールに沿って一軸方向へスライドするように設けられている、請求項1に記載のpH測定装置。
【請求項3】
測定電極、及び、前記測定電極に対する電気的な接触をとるために前記測定電極から引き出された電極側コネクタを有する電極部と、
前記電極部が配置される前面部を有する筐体と、
前記筐体の内部に格納され、前記電極部の前記測定電極を通じて
液のpHを測定するための電気回路を含む回路部と、
前記回路部から引き出され、前記電極側コネクタが接続されることによって前記回路部を前記測定電極と電気的に接続させるための回路側コネクタと、
前記電極部が着脱可能に取り付けられる取付け部を有し、前記取付け部に取り付けられた前記電極部を前記筐体の前記前面部に配置する第1状態、及び、前記取付け部を前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出した第2状態となり得るように移動可能に設けられた移動部と、を備え、
前記回路側コネクタは、前記移動部が前記第1状態であるときに前記筐体の内部に格納され、前記移動部が前記第2状態であるときに前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出されて前記筐体の外部へ露出するように前記移動部に搭載され、
前記回路部は前記移動部に搭載されている、pH測定装置。
【請求項4】
前記電極部は前記測定電極の先端が内部に挿入されているフローセルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のpH測定装置。
【請求項5】
測定電極、及び、前記測定電極に対する電気的な接触をとるために前記測定電極から引き出された電極側コネクタを有する電極部と、
前記電極部が配置される前面部を有する筐体と、
前記筐体の内部に格納され、前記電極部の前記測定電極を通じて
液のpHを測定するための電気回路を含む回路部と、
前記回路部から引き出され、前記電極側コネクタが接続されることによって前記回路部を前記測定電極と電気的に接続させるための回路側コネクタと、
前記電極部が着脱可能に取り付けられる取付け部を有し、前記取付け部に取り付けられた前記電極部を前記筐体の前記前面部に配置する第1状態、及び、前記取付け部を前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出した第2状態となり得るように移動可能に設けられた移動部と、を備え、
前記回路側コネクタは、前記移動部が前記第1状態であるときに前記筐体の内部に格納され、前記移動部が前記第2状態であるときに前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出されて前記筐体の外部へ露出するように前記移動部に搭載され、
前記電極部は、前記測定電極を保持した状態で前記取付け部に取り付けられるブロック状の電極ホルダを備え、
前記取付け部は、前記電極ホルダの側面に設けられた突起が嵌め込まれることによって前記電極ホルダと係合する溝を備え、
前記取付け部の前記溝に前記電極ホルダの突起が嵌め込まれることによって前記電極部が前記取付け部に取り付けられている、pH測定装置。
【請求項6】
前記移動部の前記取付け部は、前記第1状態にあるときに前記筐体の前面パネルの一部を構成する板状の部材である、請求項1から5のいずれか一項に記載のpH測定装置。
【請求項7】
試料の分離及び分析を行なうための分析流路と、
前記分析流路を流れる移動相が内部を流れるフローセルを有し、前記フローセル内を流れる移動相のpHを測定する請求項1から6のいずれか一項に記載のpH測定装置と、を備えた、液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液のpHを測定するpH測定装置及びそのpH測定装置により移動相のpHが測定される液体クロマトグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フローセルを流れる液のpHを測定するpH測定装置が知られている(特許文献1参照)。そのようなpH測定装置は、フローセルの他に、そのフローセル内に挿入された対をなす電極、及び、電極を通じてフローセルを流れる液のpHを検出する回路部を備える。このようなpH測定装置は、液体クロマトグラフの分析システム(以下、LCシステム)に導入されることがあり、移動相のpHのオンラインモニタとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
pH測定装置をLCシステムに搭載される1つのモジュールとして構成する場合、フローセル、電極及び回路部が同じ筐体に搭載される。ところで、電極は劣化する消耗部品であるため、必要に応じて交換する必要がある。電極を交換する際、電極を回路部から切り離したり接続したりする作業が必要であるが、電極と回路部との接続部が筐体内にある状態ではそのような作業がし難い。電極を回路部に接続させるためのコネクタを筐体の前面に設けることも考えられるが、そうすると筐体の小型化が阻害される上、小型化された筐体の前面にそのようなコネクタを設けても作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、電極の交換作業を容易にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るpH測定装置は、測定電極、及び、前記測定電極に対する電気的な接触をとるために前記測定電極から引き出された電極側コネクタを一体的に有する電極部と、前記電極部が配置される前面部を有する筐体と、前記筐体の内部に格納され、前記電極部の前記測定電極を通じて前記液のpHを測定するための電気回路を含む回路部と、前記回路部から引き出され、前記電極側コネクタが接続されることによって前記回路部を前記測定電極と電気的に接続させるための回路側コネクタと、前記電極部が着脱可能に取り付けられる取付け部を有し、前記取付け部に取り付けられた前記電極部を前記筐体の前記前面部に配置する第1状態、及び、前記取付け部を前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出した第2状態となり得るように移動可能に設けられた移動部と、を備え、前記回路側コネクタは、前記移動部が前記第1状態であるときに前記筐体の内部に格納され、前記移動部が前記第2状態であるときに前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出されて前記筐体の外部へ露出するように前記移動部に搭載されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るpH測定装置によれば、取付け部が筐体の前面部よりも前方へ引き出されたときに、回路部から引き出された回路側コネクタも前記筐体の前方へ引き出されて前記筐体の外部に露出するように構成されているので、電極部と回路部との接続及び切離し作業を筐体の外部において行なうことができ、電極の交換作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】pH測定装置の一実施例の第1状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】同実施例の電極部の構成を示す斜視図である。
【
図3】同第1状態において筐体の天板を透明視して上方から見た図である。
【
図4】同実施例において移動部を前方へ引き出した第2状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
【
図5】同第2状態において筐体の天板を透明視して上方から見た図である。
【
図6】pH測定装置が組み込まれた液体クロマトグラフの一実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明に係るpH測定装置の一実施例について説明する。
【0010】
図1及び
図2に示されているように、この実施例のpH測定装置は、筐体2、電極部4、移動部6、回路部8及び回路側コネクタ10を備えている。
【0011】
筐体2は前面及び背面を有し、筐体2の前面部14に電極部4が配置されている。電極部4は、フローセル16、測定電極18、電極ホルダ20、配線22及び電極側コネクタ24を備えている。フローセル16は、液(例えば液体クロマトグラフの移動相)を流出入させるための入口及び出口を側面に有し、内部を液が流れるようになっている。測定電極18は先端が鉛直下方を向くように配置された一対の電極を有し、それらの電極の先端がフローセル16に上方から挿入された状態で封止固定されている。電極ホルダ20は、測定電極18の基端を保持するブロック状の部材である。電極ホルダ20からは測定電極18と導通している配線22が引き出されており、配線22の先端に電極側コネクタ24が設けられている。
【0012】
電極部4の電極ホルダ20は、移動部6の一端に設けられた取付け部12に着脱可能に取り付けられている。この実施例では、取付け部12に対する電極部4の着脱を容易にするために、取付け部12に設けられた溝に電極ホルダ20に設けられた凸状の突起を嵌め込んで係合させる構造が採用されている。また、取付け部12は板状の部材であり、筐体2の前面パネルの一部をなすように設けられている。なお、これらの構造は一例であり、取付け部12に対する電極部4の着脱構造はどのようなものであってもよく、取付け部12は筐体2の前面パネルの一部を構成する板状の部材でなくてもよい。筐体2は、前面部14を覆う開閉式の又は取り外し可能なカバーを備えていてもよい。
【0013】
電極部4は、
図3に示されているように、フローセル16、測定電極18、電極ホルダ20、配線22及び電極側コネクタ24を一体的に含んでおり、取付け部12に対する電極ホルダ20の着脱によって電極部4ごと交換することができる。
【0014】
回路部8及び回路側コネクタ10は移動部6に搭載されている。回路側コネクタ10は回路部8から引き出された配線28の先端に設けられており、電極部4の電極側コネクタ24が接続されることによって、回路部8と電極部4の測定電極18とが導通する。回路部8は、電極部4の測定電極18を介してフローセル16内を流れる液のpHを測定するための電気回路を含んでいる。回路部8には電力供給を受けたり外部機器と通信を行なったりするための配線30が接続されている。
【0015】
移動部6は長手方向を有し、取付け部12が設けられている先端が筐体2の前面側を向くように配置されている。移動部6は、筐体2の内部に設けられた直線状のガイドレール26に沿って長手方向に平行な一軸方向(
図2において左右方向)へ移動可能なように設けられている。
【0016】
図1及び
図2では、移動部6が、このpH測定装置の使用時、すなわち、フローセル16内で液を流してpHの測定が行われる際の状態(第1状態)になっている。この第1状態では、取付け部12に取り付けられた電極部4が筐体2の前面部14に配置され、回路部8及び回路側コネクタ10が筐体2の内部に格納される。
【0017】
図4及び
図5は、電極部4を交換するために移動部6が筐体2の前方(
図5において左側)へ引き出された状態(第2状態)を示している。この第2状態では、移動部6が筐体2の前方へ引き出されることによって、移動部6に搭載された回路側コネクタ10も筐体2の前方へ引き出されて外部に露出する。
【0018】
電極部4を交換する際は、電極ホルダ20を取付け部12に対して着脱するだけでなく、電極部4と回路部8との電気的な接続及び離脱を行なう必要がある。この実施例では、上記のように、回路部8へ電気的にアクセスするための回路側コネクタ10が、移動部6を筐体2の前方へ引き出したときに筐体2の前方へ引き出されて筐体2の外部へ露出するので、回路部8に対する電極部4の電気的な接続及び離脱の作業が容易である。
【0019】
なお、上記実施例では、回路部8が回路側コネクタ10とともに移動部6に搭載され、移動部6の移動に伴って移動するように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、回路部8は筐体2内の特定の位置に固定され、回路側コネクタ10のみが移動部6に搭載されていてもよい。
【0020】
また、上記実施例では、フローセル16が測定電極18と一体となって1つの電極部4を構成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、電極部4にフローセル16が含まれていなくてもよい。
【0021】
上記のpH測定装置は、液体クロマトグラフに組み込んで液体クロマトグラフの移動相のpHを測定するために使用することができる。
図6は、pH測定装置1が組み込まれた液体クロマトグラフの一例を示している。液体クロマトグラフは、試料の分離及び分析を行なうための分析流路100上に、上流側から順に、送液ポンプ102、インジェクタ104、分離カラム106、及び検出器108を備え、検出器108の下流に、pH測定装置1のフローセル16が接続されている。送液ポンプ102によって移動相が分析流路100中で送液され、インジェクタ104によって移動相中に試料が注入され、分離カラム106によって注入された試料中の成分が分離され、分離された各成分が検出器108の検出信号に基づいて検出される。検出器108の出口から流出した移動相はpH測定装置1のフローセル16内を流れ、測定電極18を介して移動相のpHが測定される。
【0022】
以上において説明した実施例は、本発明に係るpH測定装置の実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係るpH測定装置の実施形態は以下に示すとおりである。
【0023】
本発明に係るpH測定装置の一実施形態では、測定電極、及び、前記測定電極に対する電気的な接触をとるために前記測定電極から引き出された電極側コネクタを有する電極部と、前記電極部が配置される前面部を有する筐体と、前記筐体の内部に格納され、前記電極部の前記測定電極を通じて前記液のpHを測定するための電気回路を含む回路部と、前記回路部から引き出され、前記電極側コネクタが接続されることによって前記回路部を前記測定電極と電気的に接続させるための回路側コネクタと、前記電極部が着脱可能に取り付けられる取付け部を有し、前記取付け部に取り付けられた前記電極部を前記筐体の前記前面部に配置する第1状態、及び、前記取付け部を前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出した第2状態となり得るように移動可能に設けられた移動部と、を備え、前記回路側コネクタは、前記移動部が前記第1状態であるときに前記筐体の内部に格納され、前記移動部が前記第2状態であるときに前記筐体の前記前面部よりも前方へ引き出されて前記筐体の外部へ露出するように前記移動部に搭載されている。
【0024】
上記一実施形態の第1の態様では、前記移動部は、前記筐体の内部に設けられた直線状のガイドレールに沿って一軸方向へスライドするように設けられている。このような態様により、移動部を容易に移動させることができる。
【0025】
上記一実施形態の第2の態様では、前記回路部は前記移動部に搭載されている。このような態様により、移動部を移動させても回路部と回路側コネクタとの相対的な位置関係が変化しないので、配線長を短くすることができる。これにより、配線が簡単になるという効果のほか、ノイズが低減されるという効果、及び、スライドレールへの配線の挟み込みが防止されるという効果を奏する。この第2の態様は、上記第1の態様と組み合わせることができる。
【0026】
上記一実施形態の第3の態様では、前記電極部は前記測定電極の先端が内部に挿入されているフローセルを含む。このような態様により、測定電極の交換の際にフローセルから測定電極を取り外す必要がないので、測定電極の交換作業が容易になるとともにクロスコンタミネーションの防止を図ることができる。この第3の態様は、上記第1の態様及び/又は第2の態様と組み合わせることができる。
【0027】
上記一実施形態の第4の態様では、前記電極部は、前記測定電極を保持した状態で前記取付け部に取り付けられるブロック状の電極ホルダを備え、前記取付け部は、前記電極ホルダの側面に設けられた突起が嵌め込まれることによって前記電極ホルダと係合する溝を備え、前記取付け部の前記溝に前記電極ホルダの突起が嵌め込まれることによって前記電極部が前記取付け部に取り付けられている。このような態様により、取付け部に対する電極部の着脱が容易になる。この第4の態様は、上記第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様と組み合わせることができる。
【0028】
上記一実施形態の第5の態様では、前記移動部の前記取付け部は、前記第1状態にあるときに前記筐体の前面パネルの一部を構成する板状の部材である。この第5の態様は、上記第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様及び/又は第4の態様と組み合わせることができる。
【0029】
本発明に係る液体クロマトグラフの一実施形態では、試料の分離及び分析を行なうための分析流路と、前記分析流路を流れる移動相が内部を流れるフローセルを有し、前記フローセル内を流れる移動相のpHを測定する上述のpH測定装置と、を備えている。
【符号の説明】
【0030】
2 筐体
4 電極部
6 移動部
8 回路部
10 回路側コネクタ
12 取付け部
14 前面部
16 フローセル
18 測定電極
20 電極ホルダ
22,28,30 配線
24 電極側コネクタ
26 ガイドレール