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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】線条体の製造方法及び線条体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G02B6/44 391
G02B6/44 366
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021004779
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109464
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 文一
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-122053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0120676(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
H01B 13/22-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体を構成する部材の一つである、スロットロッドを備えたコアの周囲に、上巻きテープを前記線条体の長手方向に沿った縦添えで供給し、
前記コア及び前記上巻きテープが通される、前記コアの外縁形状に合わせた形状の貫通孔を有し、前記コアの前記外縁形状に合わせて回転するフォーミングダイスに、前記上巻きテープで覆われた前記コアを通すことで、前記上巻きテープを前記コアに巻き付け、
さらに前記上巻きテープの周囲に押え巻きを巻き付ける、線条体の製造方法。
【請求項2】
前記線条体は、複数本の光ファイバ心線と、前記複数本の光ファイバ心線が収納される少なくとも一つのスロット溝を有する前記コアとしての前記スロットロッドと、前記上巻きテープと、前記上巻きテープの周囲に巻き付けられる前記押え巻きとしての粗巻き紐と、前記粗巻き紐が巻き付けられた前記上巻きテープの周囲を覆うケーブル外被と、を備えた光ファイバケーブルである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
記貫通孔の形状は、複数の円弧と前記複数の円弧同士の間をつなぐ直線とから形成されている、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
線条体を構成する部材の一つである、スロットロッドを備えたコアの周囲に、上巻きテープを前記線条体の長手方向に沿った縦添えで供給するテープ供給部と、
前記コアの周囲に前記上巻きテープが供給された状態で、前記コア及び前記上巻きテープが通される貫通孔を有するフォーミングダイスと、
前記上巻きテープの周囲に巻き付けられる押え巻きを供給する押え巻き供給部と、
を備え、
前記貫通孔は、前記コアの外縁形状に合わせて形成され、
前記貫通孔に前記コア及び前記上巻きテープが通される際に前記外縁形状に合わせて前記フォーミングダイスが回転することで、前記上巻きテープが前記コアに巻き付けられる、線条体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線条体の製造方法及び線条体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数本の光ファイバがスロットロッドの溝(スロット)内に収容された状態でスロットロッドの外周に粗巻き紐を巻き付けることでケーブルコアを形成し、当該ケーブルコアの外周に縦添えで上巻テープを巻き付け、その外側を押出成形によるシースで被覆して光ファイバケーブルを製造する製造装置が開示されている。当該製造装置は、ケーブルコアの外周に縦添えする上巻テープの捻れや横ズレを抑制して供給するテープガイド手段と、ケーブルコアの外周に上巻テープを円筒状に巻き付けるフォーミング手段と、ケーブルコアの外周に巻き付けた上巻テープの外周にシースを被覆する押出成形手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-195744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなスロット型の光ファイバケーブルの製造装置では、スロットに対して縦添えで巻き付けられた上巻きテープが開かない様に、上巻きテープの周囲にさらに押え巻きとして粗巻き紐等の糸を巻き付ける場合がある。スロットを備えたケーブルコアに対して上巻きテープを円くフォーミングすると、スロットのリブ間をつなぐ直線の長さと当該スロットを覆うように円弧状に巻き付けられた上巻きテープの円弧の長さとに差ができる。そのため、上巻きテープの周囲に糸を巻いた際にスロット上の上巻きテープに余りが生じて皺となり、シース被覆後の光ファイバケーブルの外観不良につながることがある。
【0005】
本開示は、線条体のコアの周囲に縦添えされた上巻きテープの周囲に押え巻きを巻き付けた際の上巻きテープの皺の発生を防止し、線条体の外観不良を抑制することが可能な線条体の製造方法及び線条体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る線条体の製造方法は、
線条体を構成する部材の一つである、スロットロッドを備えたコアの周囲に、上巻きテープを前記線条体の長手方向に沿った縦添えで供給し、
前記コア及び前記上巻きテープが通される、前記コアの外縁形状に合わせた形状の貫通孔を有し、前記コアの前記外縁形状に合わせて回転するフォーミングダイスに、前記上巻きテープで覆われた前記コアを通すことで、前記上巻きテープを前記コアに巻き付け、
さらに前記上巻きテープの周囲に押え巻きを巻き付ける。
【0007】
また、本開示の一態様に係る線条体の製造装置は、
線条体を構成する部材の一つである、スロットロッドを備えたコアの周囲に、上巻きテープを前記線条体の長手方向に沿った縦添えで供給するテープ供給部と、
前記コアの周囲に前記上巻きテープが供給された状態で、前記コア及び前記上巻きテープが通される貫通孔を有するフォーミングダイスと、
前記上巻きテープの周囲に巻き付けられる押え巻きを供給する押え巻き供給部と、
を備え、
前記貫通孔は、前記コアの外縁形状に合わせて形成され、
前記貫通孔に前記コア及び前記上巻きテープが通される際に前記外縁形状に合わせて前記フォーミングダイスが回転することで、前記上巻きテープが前記コアに巻き付けられる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、線条体のコアの周囲に縦添えされた上巻きテープの周囲に押え巻きを巻き付けた際の上巻きテープの皺の発生を防止し、線条体の外観不良を抑制することが可能な線条体の製造方法及び線条体の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る線条体の製造方法及び製造装置により製造されるスロット型の光ファイバケーブルの一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る線条体の製造方法及び製造装置を説明する図である。
図3】ケーブルコアに上巻きテープを巻き付けるフォーミング装置の一例を示す図である。
図4図3のフォーミング装置が備える上流側のフォーミングダイスの一例を示す図である。
図5図3のフォーミング装置が備える下流側のフォーミングダイスの一例を示す図である。
図6図5のフォーミングダイスの貫通孔の一例を示す図である。
図7】(a)及び(b)は、図5のフォーミングダイスによりケーブルコアの外縁形状に沿って上巻きテープがケーブルコアの周囲に巻き付けられる様子を示す図である。
図8】(a)~(c)は、ケーブルコアに巻き付けられた上巻きテープに皺が発生する様子を示す図である。
図9】(a)は、フォーミングダイスが回転しない場合の例を示す図であり、(b)は、(a)に示す例において上巻きテープをケーブルコアに巻き付ける際に詰まり部が発生する様子を示す図である。
図10】線条体の変形例を示す図である。
図11】線条体の別の変形例を示す図である。
図12】線条体のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る線条体の製造方法は、
(1)線条体を構成する部材の一つである、スロットロッドを備えたコアの周囲に、上巻きテープを前記線条体の長手方向に沿った縦添えで供給し、
前記コア及び前記上巻きテープが通される、前記コアの外縁形状に合わせた形状の貫通孔を有し、前記コアの前記外縁形状に合わせて回転するフォーミングダイスに、前記上巻きテープで覆われた前記コアを通すことで、前記上巻きテープを前記コアに巻き付け、
さらに前記上巻きテープの周囲に押え巻きを巻き付ける。
この方法によれば、縦添えで供給される上巻きテープを、スロットロッドを備えたコアの外縁形状に合わせてコア周囲に巻き付けることができる。そのため、コアの外縁形状に対する上巻きテープの余りが生じない。これにより、上巻きテープの周囲に押え巻きを巻き付ける際に上巻きテープに皺が発生することを防止することができ、線条体の外観不良を抑制できる。なお、ここでの「押え巻き」には、粗巻き紐等の糸が含まれる。また、「コアの外縁形状」とは、コアの最外周部を線で結んだ形状を示す。
【0011】
(2)前記線条体は、複数本の光ファイバ心線と、前記複数本の光ファイバ心線が収納される少なくとも一つのスロット溝を有する前記コアとしての前記スロットロッドと、前記上巻きテープと、前記上巻きテープの周囲に巻き付けられる前記押え巻きとしての粗巻き紐と、前記粗巻き紐が巻き付けられた前記上巻きテープの周囲を覆うケーブル外被と、を備えた光ファイバケーブルであっても良い。
光ファイバ心線が収容されたスロットロッドの周囲に上巻きテープを縦添えで巻き付ける際に上記方法を用いることで、ケーブル外被により被覆された光ファイバケーブルの外観不良を抑制できる。
【0012】
(3)前記貫通孔の形状は、複数の円弧と前記複数の円弧同士の間をつなぐ直線とから形成されていても良い。
この方法によれば、スロット溝を有するスロットロッドのようにコアの外縁形状が円弧と直線から形成されている場合に、当該外縁形状に合わせた形状の貫通孔を有するフォーミングダイスを用いることで、上巻きテープに皺が発生することを確実に防止できる。
【0013】
また、本開示の一態様に係る線条体の製造装置は、
(4)線条体を構成する部材の一つである、スロットロッドを備えたコアの周囲に、上巻きテープを前記線条体の長手方向に沿った縦添えで供給するテープ供給部と、
前記コアの周囲に前記上巻きテープが供給された状態で、前記コア及び前記上巻きテープが通される貫通孔を有するフォーミングダイスと、
前記上巻きテープの周囲に巻き付けられる押え巻きを供給する押え巻き供給部と、
を備え、
前記貫通孔は、前記コアの外縁形状に合わせて形成され、
前記貫通孔に前記コア及び前記上巻きテープが通される際に前記外縁形状に合わせて前記フォーミングダイスが回転することで、前記上巻きテープが前記コアに巻き付けられる。
この構成によれば、縦添えで供給される上巻きテープを、スロットロッドを備えたコアの外縁形状に合わせてコア周囲に巻き付けることができるため、上巻きテープの周囲に押え巻きを巻き付ける際に上巻きテープに皺が発生することを防止することができる。これにより、線条体の外観不良を抑制することができる。
【0014】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る線条体の製造方法及び線条体の製造装置の具体例を、以下に図面を参照して説明する。
なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
図1は、本実施形態に係る線条体の製造方法及び製造装置により製造される光ファイバケーブルの一例を示す図である。図1に示す光ファイバケーブル1は、スロット型の光ファイバケーブルである。
【0016】
図1に示すように、光ファイバケーブル1は、複数の光ファイバ心線5を有するケーブルコア2と、ケーブルコア2の周囲に巻き付けられる上巻きテープ7と、上巻きテープ7の周囲を被覆するケーブル外被9と、を備えている。また、光ファイバケーブル1は、ケーブルコア2の外周に巻き付けられる粗巻き紐6と、上巻きテープ7の外周に巻き付けられる粗巻き紐8と、を備えている。
なお、光ファイバケーブル1は線条体の一例であり、ケーブルコア2はコアの一例であり、粗巻き紐8は押え巻きの一例である。
【0017】
ケーブルコア2は、中心に鋼線又は鋼撚線等のテンションメンバ(抗張力体とも言う)4を埋設し、外周に複数(本例では、5個)のスロット溝3aを設けるプラスチック材からなるスロットロッド3を有する。
【0018】
スロットロッド3のスロット溝3aは、例えば螺旋状又はSZ状に形成されている。スロット溝3a内には、複数本の光ファイバ心線5が収容される。ここで、光ファイバ心線5は、単心に限ったものではなく、図示するようなテープ状に形成される光ファイバテープ心線であっても良い。
【0019】
粗巻き紐6は、光ファイバ心線5がスロット溝3a内に収容された状態でスロットロッド3の外周に巻き付けられる。スロット溝3a内に収容された光ファイバ心線5は、スロットロッド3に巻き付けられた粗巻き紐6によってスロット溝3aから脱落しないように保持されている。
【0020】
ケーブルコア2の周囲には、上巻きテープ7がケーブル長手方向に縦添えで巻き付けられている。上巻きテープ7は、スロットロッド3に巻き付けられた粗巻き紐6の上から巻き付けられる。上巻きテープ7は、例えば、幅方向の端部同士を互いに重ねることで、重なり部分が形成されるように巻き付けられる。なお、上巻きテープ7は、横巻きで巻き付ける形態のものもあるが、本開示においては、ケーブル長手方向に縦添えして巻き付ける形態の上巻きテープを対象とする。
【0021】
上巻きテープ7は、スロット溝3aに収容された光ファイバ心線5がスロット溝3aの外に飛び出してばらけないように保持するとともに、ケーブル外被9を樹脂の押出成形で形成する際に樹脂がスロット溝3a内に落ち込んで光ファイバ心線5に接触するのを抑制する接触抑制層や、ケーブル外被9の押出成形時の熱絶縁層として機能する。上巻きテープ7としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維からなる不織布などが用いられる。
【0022】
粗巻き紐8は、縦添えされた上巻きテープ7の外周に巻き付けられる。粗巻き紐8は、縦添えされた上巻きテープ7の解れを抑える押え巻き用の紐として巻き付けられる。
【0023】
ケーブル外被9は、粗巻き紐8が巻き付けられた上巻きテープ7の周囲に樹脂を押出成形することによって形成される。ケーブル外被9が形成されることによって、上巻きテープ7の巻き付けが固定される。ケーブル外被9を形成する樹脂は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン等で構成されている。
【0024】
図2は、スロット型の光ファイバケーブル1を製造するための製造装置の一例を示す図である。図2に示すように、光ファイバケーブル1の製造装置10は、スロットキャプスタン11と、ファイバ供給ボビン12と、集線装置13と、粗巻き紐供給ボビン14と、テープ供給ボビン15(テープ供給部の一例)と、テープガイド装置16と、フォーミング装置17と、粗巻き紐供給ボビン18(押え巻き供給部の一例)と、押出成形装置19と、冷却装置20と、ケーブルキャプスタン21と、を備える。
【0025】
本実施形態の光ファイバケーブル1は、以下のように製造される。まず、スロットロッド3がスロットキャプスタン11によってパスライン上に送り出されるとともに、光ファイバ心線5が複数のファイバ供給ボビン12からそれぞれ繰り出される。ファイバ供給ボビン12は、スロットロッド3のスロット溝3aに収容される光ファイバ心線5の収容数に応じて設けられている。本例では4個のファイバ供給ボビン12が設けられている。
【0026】
ファイバ供給ボビン12から繰り出された複数の光ファイバ心線5は、集線装置13によって集線され、スロットロッド3のスロット溝3a内に収容される。
【0027】
次に、粗巻き紐6が粗巻き紐供給ボビン14から繰り出され、スロットロッド3の外周に巻き付けられる。粗巻き紐6は、光ファイバ心線5が収容されたスロットロッド3であるケーブルコア2の外周に横巻きされる。粗巻き紐6が巻かれることにより、光ファイバ心線5がスロットロッド3から脱落しないようにスロット溝3aの内部に保持される。
【0028】
スロットロッド3に光ファイバ心線5が収容され粗巻き紐6が巻かれたケーブルコア2に向けて、テープ供給ボビン15から上巻きテープ7が繰り出される。繰り出された上巻きテープ7は、テープガイド装置16によってケーブルコア2の側面に案内され、ケーブルコア2の長手方向に沿って縦添えされる。また、テープガイド装置16は、縦添えされる上巻きテープ7が捻じれないようにするとともに、幅方向に振れないようにして、上巻きテープ7をケーブルコア2の側面に案内する。
【0029】
粗巻き紐6が巻かれたケーブルコア2に縦添えされた上巻きテープ7は、フォーミング装置17によってケーブルコア2の外周に円筒状に巻き付けられる。フォーミング装置17による上巻きテープ7の巻き付けについては図3及び図4でさらに後述する。
【0030】
次に、粗巻き紐8が粗巻き紐供給ボビン18から繰り出され、上巻きテープ7が巻き付けられたケーブルコア2の外周に横巻きで巻き付けられる。これにより、縦添えで巻き付けられた上巻きテープ7の解れが抑えられる。
【0031】
次に、粗巻き紐8が巻き付けられた上巻きテープ7の外周に、押出成形装置19によってケーブル外被9が押出成形される。押出成形されたケーブル外被9は、冷却装置20で冷却硬化される。冷却された光ファイバケーブル1は、ケーブルキャプスタン21によって引き取られた後に、巻取りボビン(図示省略)に巻取られる。なお、図2の製造装置10において、上巻きテープ7の外周に粗巻き紐8が巻かれた状態のケーブルコア2を一旦、巻取りボビンに巻き取っておき、ケーブル外被9を被覆する被覆工程以降は、別の製造装置で実行するようにしても良い。
【0032】
次に、図3図7を参照して、ケーブルコア2に上巻きテープ7を巻き付けるフォーミング装置17について説明する。
図3は、フォーミング装置17の一例を示す図である。図4は、フォーミング装置17が備える上流側のフォーミングダイスの一例を示す図である。図5は、フォーミング装置17が備える下流側のフォーミングダイスの一例を示す図である。図6は、下流側のフォーミングダイスの貫通孔の一例を示す図である。図7(a),(b)は、下流側のフォーミングダイスによりケーブルコア2の外縁形状に沿って上巻きテープ7がケーブルコア2の周囲に巻き付けられる様子を示す図である。なお、ケーブルコア2の外縁形状とは、ケーブルコア2の最外周部を線で結んだ形状を示す。
【0033】
図3に示すように、フォーミング装置17は、ケーブルコア2の外周に縦添えされた上巻きテープ7をケーブルコア2の外縁形状に合わせて巻き付けることが可能なフォーミングダイス30を有している。本例の場合、2つのフォーミングダイス30(30A,30B)が設けられている。フォーミングダイス30Aは、ケーブルコア2のパスラインにおける上流側(図3において左側)に配置されている。フォーミングダイス30Bは、ケーブルコア2のパスラインにおける下流側(図3において右側)に配置されている。フォーミングダイス30Aとフォーミングダイス30Bとは、互いに相対移動しないように連結部材38で連結されているが、必ずしも連結されていなくても良い。また、フォーミングダイス30A及びフォーミングダイス30Bは、製造中において、パスラインを流れるケーブルコア2の長手方向に移動しないようにフォーミング装置17の本体部(図示省略)に支持されている。フォーミングダイス30A及び30Bが支持される位置は、ケーブルコア2の長手方向において、作業者の操作によって任意に変化させることができるように構成されていても良い。
【0034】
図4に示すように、上流側に配置されているフォーミングダイス30Aの中央部には、上巻きテープ7をフォーミングするための6の字状の貫通孔34Aが形成されている。ケーブルコア2及び上巻きテープ7がフォーミングダイス30Aを通過する時点では、縦添えされた上巻きテープ7は、ケーブルコア2の外周面にまだ密着しておらず、巻き付け途中の状態にある。フォーミングダイス30Aは、ケーブルコア2の周囲に縦添えされているこの上巻きテープ7を後段のフォーミングダイス30Bでフォーミングしやすいように所定の形状にフォーミングする。フォーミングダイス30Aは、6の字状の貫通孔34Aを通過する上巻きテープ7を、例えば、幅方向の端部同士に上下方向で重なり部分が生じるような形状にフォーミングする。
【0035】
上記したように、ケーブルコア2の周囲に巻き付けられる上巻きテープ7は、ケーブルコア2及び上巻きテープ7がフォーミングダイス30Aを通過する時点では、まだケーブルコア2の外周面に密着していない。したがって、フォーミングダイス30Aでフォーミングされる上巻きテープ7の形状は、常に一定の形状でフォーミングされてケーブルコア2の周囲に縦添えされることが好ましい。そこで、フォーミングダイス30Aは、上巻きテープ7をフォーミングする6の字状の貫通孔34Aの向きが一定の向きとなるように構成されているが、後述のフォーミングダイス30Bのようなベアリング構造を有し、フォーミングダイス30Bに追従して回転する構造であっても良い。
【0036】
図3に戻り、下流側に配置されているフォーミングダイス30Bは、外輪部31Bとボール32と内輪部33Bとを備えるベアリング構造を有している。外輪部31Bがフォーミング装置17の本体部に支持されており、内輪部33Bが外輪部31Bに対して自由に回転できるように構成されている。内輪部33Bの中央部には、ケーブルコア2及び上巻きテープ7が通される貫通孔34Bが形成されている。
【0037】
図5及び図6に示すように、フォーミングダイス30Bの貫通孔34Bは、ケーブルコア2の外縁形状に対応する形状に形成されている。例えば、貫通孔34Bは、複数の円弧35と、当該複数の円弧35同士の間をつなぐ直線36と、により構成されている。具体的には、貫通孔34Bは、ケーブルコア2を構成するスロットロッド3のスロット溝3aが形成されていない部分に対応する円弧35の部分と、スロットロッド3のスロット溝3aに対応する直線36の部分とが交互に繋がるように形成されている。貫通孔34Bは、上巻きテープ7が巻き付けられたケーブルコア2の外縁形状と略相似形であって、ケーブルコア2の外縁形状の大きさよりも僅かに大きくなるように形成されている。このため、上流側のフォーミングダイス30Aの6の字状の貫通孔34Aでフォーミングされた上巻きテープ7は、下流側のフォーミングダイス30Bの貫通孔34Bを通過することにより、ケーブルコア2の周囲に密着するように巻き付けられる。
【0038】
ところで、上述したようにスロットロッド3のスロット溝3aは、螺旋状又はSZ状に形成されている。このため、スロットロッド3の周方向におけるスロット溝3aの位置は、ケーブルコア2の長手方向において変化する。したがって、パスラインを流れるケーブルコア2が例えばフォーミングダイス30Bを通過する際には、スロットロッド3の周方向におけるスロット溝3aの位置は、一定の位置を通過するのではなく順次変化する。よって、フォーミングダイス30Bを通過する時点におけるケーブルコア2の外縁形状も一定ではなく、スロット溝3aがケーブル周方向へ回転するように変化する。
【0039】
これに対して、上述したようにフォーミングダイス30Bの内輪部33Bは、ボール32の回転運動により、外輪部31Bに対して自由に回転できるように構成されている。そして、内輪部33Bには、ケーブルコア2の外縁形状に対応する形状の貫通孔34Bが形成されている。したがって、フォーミングダイス30Bを通過する際のケーブルコア2の外縁形状が例えば図7(a)の状態から図7(b)の状態へと変化(図7(a)の矢印Aに示すように時計回りに回転)しても、当該外縁形状の変化に貫通孔34Bの形状が一致するようにフォーミングダイス30Bの内輪部33Bが追従して回転する。このため、上巻きテープ7は、フォーミングダイス30Bの貫通孔34Bを通過することで、例えば、ケーブルコア2の外縁形状が変化しても、ケーブルコア2の長手方向に沿ってケーブルコア2の外縁形状に合わせて巻き付けられる。
【0040】
なお、図2に示す製造装置10において、回転可能なフォーミングダイス30Bを用いない場合には、ケーブルコア2に巻いた上巻きテープ7の外周に粗巻き紐8を巻き付ける際に以下のような不具合が生じる。例えば、貫通孔が円形状のフォーミングダイスを用いるとすると、図8(a)に示すように、上巻きテープ7がケーブルコア2の外周に円くフォーミングされる。この場合、図8(b)に示すように、スロットロッド3のスロット溝3aを覆うように円弧状に巻き付けられた上巻きテープ7の円弧41の長さと、スロットロッド3のリブ間をつなぐ直線42の長さとに差が生じる。このような円くフォーミングされた上巻きテープ7の外周に粗巻き紐8を巻くと、図8(c)に示すように、スロット溝3a上の上巻きテープ7に余りが生じ、余った上巻きテープ7が粗巻き紐8に押しつぶされて皺43となり、シース被覆後の光ファイバケーブルの外観不良につながることがある。
【0041】
ここで、本実施形態に係るフォーミングダイス30Bの貫通孔34Bと同様に、ケーブルコア2及び上巻きテープ7が通される貫通孔54Bを、複数の円弧55と、当該複数の円弧55同士の間をつなぐ直線56と、により構成し、フォーミングダイスは回転しない場合を考える。図9(a)に示すような、回転機構を有しないフォーミングダイス50Bの場合、長手方向において変化するケーブルコア2の外縁形状に貫通孔54Bが追従することができない。そのため、例えば、ケーブルコア2のスロット溝3aが形成されていない部分と貫通孔54Bの直線36の部分とが干渉して、図9(b)に示すような、詰まり部Cが生じる。したがって、パスラインを流れるケーブルコア2が貫通孔54Bをスムーズに通過できないおそれがある。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る光ファイバケーブル(線条体)の製造方法では、光ファイバケーブル1のケーブルコア2の周囲に、上巻きテープ7を光ファイバケーブル1の長手方向に沿った縦添えで供給し、ケーブルコア2の外縁形状に合わせて回転するフォーミングダイス30Bに、上巻きテープ7で覆われたケーブルコア2を通すことで、上巻きテープ7をケーブルコア2に巻き付ける。そして、ケーブルコア2の巻き付けられた上巻きテープ7の周囲に粗巻き紐8を巻き付ける。この方法によれば、縦添えで供給される上巻きテープ7をケーブルコア2の外縁形状に合わせてケーブルコア2の周囲に隙間なく巻き付けることができる。このため、例えば、ケーブルコア2を構成するスロットロッド3のスロット溝3a上を覆う上巻きテープ7の部分においても上巻きテープ7に余りが生じない。これにより、上巻きテープ7の周囲に粗巻き紐8を巻き付ける際に上巻きテープ7に皺が発生することを防止することができ、光ファイバケーブル1の外観不良を抑制することができる。
【0043】
また、光ファイバケーブルの製造方法によれば、フォーミングダイス30Bは、ケーブルコア2及び上巻きテープ7が通される貫通孔34Bを有し、貫通孔34Bの形状は、複数の円弧35と複数の円弧35同士の間をつなぐ直線36とから形成されている。このため、スロット溝3aを有するスロットロッド3のようにケーブルコア2の外縁形状が円弧35と直線36とから形成されている場合に、当該外縁形状に合わせた形状の貫通孔34Bを有するフォーミングダイス30Bを用いることで、上巻きテープ7に皺が発生することを確実に防止できる。
【0044】
また、光ファイバケーブルの製造装置10は、ケーブルコア2の周囲に、上巻きテープ7をケーブルコア2の長手方向に沿った縦添えで供給するテープ供給ボビン15(テープ供給部)と、ケーブルコア2の周囲に上巻きテープ7が供給された状態で、ケーブルコア2及び上巻きテープ7が通される貫通孔34Bを有するフォーミングダイス30Bと、上巻きテープ7の周囲に巻き付けられる粗巻き紐8を供給する粗巻き紐供給ボビン18(押え巻き供給部)と、を備えている。貫通孔34Bは、ケーブルコア2の外縁形状に合わせて形成されている。そして、フォーミングダイス30Bは、貫通孔34Bにケーブルコア2及び上巻きテープ7が通される際にケーブルコア2の外縁形状に合わせて回転することで、上巻きテープ7をケーブルコア2に巻き付ける。この構成によれば、縦添えで供給される上巻きテープ7をケーブルコア2の外縁形状に合わせてケーブルコア2の周囲に巻き付けることができる。このため、上巻きテープ7の周囲に粗巻き紐8を巻き付ける際に上巻きテープ7に皺が発生することを防止することができる。これにより、光ファイバケーブル1の皺による外観不良を抑制することができる。
【0045】
なお、図3に示す例では、フォーミング装置17は、2つのフォーミングダイス30A,30Bを有しているが、これに限られない。例えば、フォーミング装置17は、ケーブルコア2の外縁形状に対応する貫通孔34Bが形成されたフォーミングダイス30Bのみを有する構成であっても良い。少なくともフォーミングダイス30Bを有することで、ケーブルコア2の長手方向に沿って上巻きテープ7を連続的に密着して巻き付けることが可能である。あるいは、フォーミング装置17は、フォーミングダイス30A,30Bに加えて、さらに別のフォーミングダイスをフォーミングダイス30Aと30Bの間に有する構成であっても良い。2つに限らずさらに多くのフォーミングダイスを用いることで、よりスムーズなフォーミングを行うことが可能である。
【0046】
(変形例)
上記実施形態では、線条体としてスロット型の光ファイバケーブル1について説明したが、これに限られない。
例えば、図10に示すように、線条体101は、複数本の金属導体をバンドル状に束ねたコア102と、コア102の周囲に長手方向に沿って巻かれる上巻きテープ107と、を備える構成のものであっても良い。さらに、コア102を形成する金属導体は、円形状に限らず、例えば矩形状であっても良い。また、例えば、図11に示すように、線条体201は、単数からなる矩形状の金属導体をコア202として、当該コア202の周囲に長手方向に沿って上巻きテープ207が巻かれる構成のものであっても良い。また、図12に示すように、線条体301は、スロットロッド303に一つのスロット溝303aを有するケーブルコア302と、ケーブルコア302の周囲に長手方向に沿って巻かれる上巻きテープ307と、を備える光ファイバケーブルであっても良い。このような単純な円形状ではないコアを有する線条体101,201,301の場合にも、本開示に係る線条体の製造方法及び製造装置を用いることにより、上巻きテープ107,207,307をコア102,202、302の外縁形状に合わせて巻き付けることができ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:光ファイバケーブル(線条体の一例)
2,302:ケーブルコア(コアの一例)
3,303:スロットロッド
3a,303a:スロット溝
4:テンションメンバ
5:光ファイバ心線
6,8:粗巻き紐
7,107,207,307:上巻きテープ
9:ケーブル外被
10:製造装置
11:スロットキャプスタン
12:ファイバ供給ボビン
13:集線装置
14:粗巻き紐供給ボビン
15:テープ供給ボビン(テープ供給部の一例)
16:テープガイド装置
17:フォーミング装置
18:粗巻き紐供給ボビン(押え巻き供給部の一例)
19:押出成形装置(被覆部の一例)
20:冷却装置
21:ケーブルキャプスタン
30(30A,30B),50B:フォーミングダイス
31B:外輪部
32:ボール
33B:内輪部
34A,34B,54B:貫通孔
35,41:円弧
36,42:直線
38:連結部材
43:皺
101,201,301:線条体
102,202:コア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図12