IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8A
  • 特許-半導体装置 図8B
  • 特許-半導体装置 図9
  • 特許-半導体装置 図10
  • 特許-半導体装置 図11A
  • 特許-半導体装置 図11B
  • 特許-半導体装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241016BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 29/866 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L29/78 657F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 657G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652C
H01L29/78 656A
H01L29/78 657A
H01L29/91 E
H01L29/91 L
H01L29/90 C
H01L29/91 C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652B
H01L29/78 652F
H01L29/78 652R
H01L29/78 652S
H01L29/78 655G
H01L29/78 652J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021005193
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109726
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆太
(72)【発明者】
【氏名】水野 祥司
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-005664(JP,A)
【文献】特開2009-182113(JP,A)
【文献】特開2018-133433(JP,A)
【文献】特開2016-134387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/861
H01L 21/329
H01L 21/76
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および該表面の反対面となる裏面を有し、一方向を長手方向として延設され、該長手方向に直交する方向に複数が並べられて構成されたゲート電極(109)を有していると共に、複数の前記ゲート電極の長手方向の両端がゲートライナー(15)に接続され、前記ゲートライナーを通じて前記ゲート電極に電圧印加が行われることに基づいて前記表面側に形成された表面電極(111)と前記裏面側に形成された裏面電極(113)との間に電流を流す縦型半導体素子が形成された半導体チップ(10)を備え、
前記半導体チップは、前記縦型半導体素子のメインセルが形成されたメインセル領域(Rm)と、前記縦型半導体素子のセンスセルが形成され、前記メインセルに流れる電流を検出するためのセンスセル領域(Rs)とを有し、
前記センスセル領域のうち素子動作を行う前記縦型半導体素子が形成された領域をアクティブ領域(12)とし、前記素子動作を行わない領域を非アクティブ領域(13)として、前記センスセル領域の中央部よりもゲートライナーに接近した周辺側に前記アクティブ領域を偏在させ、前記センスセル領域の周辺側よりもゲートライナーから距離のある中央部に前記非アクティブ領域が偏在されている、半導体装置。
【請求項2】
表面および該表面の反対面となる裏面を有し、複数のゲート電極(109)を有していると共に、前記ゲート電極が形成された領域の両端がゲートライナー(15)に接続され、前記ゲートライナーを通じて前記ゲート電極に電圧印加が行われることに基づいて前記表面側に形成された表面電極(111)と前記裏面側に形成された裏面電極(113)との間に電流を流す縦型半導体素子が形成された半導体チップ(10)を備え、
前記半導体チップは、前記縦型半導体素子のメインセルが形成されたメインセル領域(Rm)と、前記縦型半導体素子のセンスセルが形成され、前記メインセルに流れる電流を検出するためのセンスセル領域(Rs)とを有し、
前記センスセル領域のうち素子動作を行う前記縦型半導体素子が形成された領域をアクティブ領域(12)とし、前記素子動作を行わない領域を非アクティブ領域(13)として、前記センスセル領域の中央部よりもゲートライナーに接近した周辺側に前記アクティブ領域を偏在させ、前記センスセル領域の周辺側よりもゲートライナーから距離のある中央部に前記非アクティブ領域が偏在されており
前記アクティブ領域は、前記非アクティブ領域を挟んだ両側に複数個ずつ分割して配置されている、半導体装置。
【請求項3】
前記センスセル領域は四角形状とされ、四角形状とされた該センスセル領域のうち前記ゲート電極の両端に対応する両端において、前記ゲート電極の長手方向に対して直交するライン状に前記アクティブ領域が配置されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
表面および該表面の反対面となる裏面を有し、複数のゲート電極(109)を有していると共に、前記ゲート電極が形成された領域の両端がゲートライナー(15)に接続され、前記ゲートライナーを通じて前記ゲート電極に電圧印加が行われることに基づいて前記表面側に形成された表面電極(111)と前記裏面側に形成された裏面電極(113)との間に電流を流す縦型半導体素子が形成された半導体チップ(10)を備え、
前記半導体チップは、前記縦型半導体素子のメインセルが形成されたメインセル領域(Rm)と、前記縦型半導体素子のセンスセルが形成され、前記メインセルに流れる電流を検出するためのセンスセル領域(Rs)とを有し、
前記センスセル領域のうち素子動作を行う前記縦型半導体素子が形成された領域をアクティブ領域(12)とし、前記素子動作を行わない領域を非アクティブ領域(13)として、前記センスセル領域の中央部よりもゲートライナーに接近した周辺側に前記アクティブ領域を偏在させ、前記センスセル領域の周辺側よりもゲートライナーから距離のある中央部に前記非アクティブ領域が偏在されており
前記センスセル領域は四角形状とされ、四角形状とされた該センスセル領域のうち前記ゲート電極の両端に対応する両端において、前記アクティブ領域が点在して配置されている、半導体装置。
【請求項5】
前記センスセル領域は四角形状とされ、四角形状とされた該センスセル領域のうち前記ゲート電極の両端に対応する両端において、前記アクティブ領域が前記ゲート電極の長手方向に沿ってライン状に設けられていると共に、該ゲート電極の長手方向に対して直交する方向に複数本が並べて配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記縦型半導体素子は、
第1または第2導電型とされ、前記裏面電極に電気的に接続される裏面高濃度領域(101)と、
前記裏面高濃度領域の上に位置し、該裏面高濃度領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の低濃度層(102)と、
前記低濃度層の上に形成された第2導電型のベース領域(104)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記低濃度層よりも高不純物濃度とされると共に前記表面電極に電気的に接続された第1導電型の表面高濃度領域(105)と、
前記表面高濃度領域および前記ベース領域を貫通して前記低濃度層に達するゲートトレンチ(107)内に、ゲート絶縁膜(108)を介して前記ゲート電極が形成されたトレンチゲート構造と、
を有している、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記メインセル領域と比較して前記センスセル領域では前記ゲート絶縁膜が厚くされている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
表面および該表面の反対面となる裏面を有し、複数のゲート電極(109)を有していると共に、前記ゲート電極が形成された領域の両端がゲートライナー(15)に接続され、前記ゲートライナーを通じて前記ゲート電極に電圧印加が行われることに基づいて前記表面側に形成された表面電極(111)と前記裏面側に形成された裏面電極(113)との間に電流を流す縦型半導体素子が形成された半導体チップ(10)を備え、
前記半導体チップは、前記縦型半導体素子のメインセルが形成されたメインセル領域(Rm)と、前記縦型半導体素子のセンスセルが形成され、前記メインセルに流れる電流を検出するためのセンスセル領域(Rs)とを有し、
前記センスセル領域のうち素子動作を行う前記縦型半導体素子が形成された領域をアクティブ領域(12)とし、前記素子動作を行わない領域を非アクティブ領域(13)として、前記センスセル領域の中央部よりもゲートライナーに接近した周辺側に前記アクティブ領域を偏在させ、前記センスセル領域の周辺側よりもゲートライナーから距離のある中央部に前記非アクティブ領域が偏在されており
前記縦型半導体素子は、
第1または第2導電型とされ、前記裏面電極に電気的に接続される裏面高濃度領域(101)と、
前記裏面高濃度領域の上に位置し、該裏面高濃度領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の低濃度層(102)と、
前記低濃度層の上に形成された第2導電型のベース領域(104)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記低濃度層よりも高不純物濃度とされると共に前記表面電極に電気的に接続された第1導電型の表面高濃度領域(105)と、
前記表面高濃度領域および前記ベース領域を貫通して前記低濃度層に達するゲートトレンチ(107)内に、ゲート絶縁膜(108)を介して前記ゲート電極が形成されたトレンチゲート構造と、
を有し、
前記低濃度層のうち前記裏面高濃度領域から離れた位置をJFET部(102a)として、該JFET部の両側に、前記ベース領域から前記トレンチゲート構造の下方まで形成された第2導電型のディープ層(103)が形成されており、
さらに、前記メインセル領域と前記センスセル領域の少なくとも一方において、前記JFET部に、前記センスセル領域の方が前記メインセル領域よりも前記JFET部の抵抗値を高くする第1導電型の電流分散層(102b)を備えている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル領域にメインセルとセンスセルとが備えられた半導体素子、例えばトレンチゲート構造の縦型MOSFETを有する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、縦型MOSFETをメインセルとセンスセルとに分け、メインセルに流れる電流をセンスセルにて検出するようにしたトレンチゲート構造を有する半導体装置が開示されている。このSiC半導体装置は、メインセルが備えられたアクティブ領域とされるメインセル領域と、カレントセンス素子を有するセンスセルが備えられたセンスセル領域とを有し、センスセルでのトレンチゲート間隔をメインセルでのトレンチゲート間隔より狭くしている。これにより、センスセルによる電流検出精度を維持しつつ、センスセル領域の破壊耐量を向上させられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6565192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1の半導体装置では、メインセルのトレンチゲート間隔であるメインセルピッチとセンスセルのトレンチゲート間隔であるセンスセルピッチを異ならせる必要がある。
【0005】
このため、センスセルの半導体素子の構造がメインセルの半導体素子と僅かに異なった構造となり、メインセルとセンスセルとの特性に差が生じる。これにより、センスセルによる電流センス精度を高めることができない。センスセルによる電流センス精度を高めるためには、メインセルとセンスセルに備えられる半導体素子が同じ構造であるのが好ましいが、破壊耐量の向上などの観点からは、メインセルとセンスセルに備えられる半導体素子を同じ構造にできるとは限らない。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、センスセルによる電流センスの精度向上を図ることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の半導体装置は、表面および該表面の反対面となる裏面を有し、一方向を長手方向として延設され、該長手方向に直交する方向に複数が並べられて構成されたゲート電極(109)を有していると共に、複数のゲート電極の長手方向の両端がゲートライナー(15)に接続され、ゲートライナーを通じてゲート電極に電圧印加が行われることに基づいて半導体チップの表面側に形成された表面電極(111)と裏面側に形成された裏面電極(113)との間に電流を流す縦型半導体素子が形成された半導体チップ(10)を備えている。そして、半導体チップは、縦型半導体素子のメインセルが形成されたメインセル領域(Rm)と、縦型半導体素子のセンスセルが形成され、メインセルに流れる電流を検出するためのセンスセル領域(Rs)とを有し、センスセル領域のうち素子動作を行う縦型半導体素子が形成された領域をアクティブ領域(12)とし、素子動作を行わない領域を非アクティブ領域(13)として、センスセル領域の中央部よりもゲートライナーに接近した周辺側にアクティブ領域を偏在させ、センスセル領域の周辺側よりもゲートライナーから距離のある中央部に非アクティブ領域が偏在されている。
【0008】
このように、アクティブ領域をセンスセル領域の中央ではなく、ゲートライナーに接近した周辺側に偏在させた構造としている。そして、センスセル領域の周辺側よりもゲートライナーから距離のある中央部に非アクティブ領域を偏在させている。これにより、センスセルとメインセルとの間のスイッチング遅延を縮小でき、センスセルにてメインセルに流れている電流をリアルタイムで検知することが可能になる。よって、センスセルによる電流センスの精度向上が図れる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態にかかるSiC半導体装置を構成する半導体チップの正面レイアウト図である。
図2】センスセル領域の近傍の拡大レイアウト図である。
図3図2中のIII-III断面図である。
図4図2中のIV-IV断面図である。
図5】第1実施形態のSiC半導体装置の回路図である。
図6】アクティブ領域の配置を説明した図である。
図7】第2実施形態にかかるSiC半導体装置におけるセンスセル領域の拡大レイアウト図である。
図8A】第2実施形態の変形例で説明するアクティブ領域の配置を説明したセンスセル領域の拡大レイアウト図である。
図8B】第2実施形態の変形例で説明するアクティブ領域の配置を説明したセンスセル領域の拡大レイアウト図である。
図9】第3実施形態にかかるSiC半導体装置に備えられるメインセル領域およびセンスセル領域それぞれでの縦型MOSFETの断面図である。
図10】メインセル領域とセンスセル領域での電流の流れを説明した斜視断面図である。
図11A】メインセル領域とセンスセル領域の構造が同じである場合の規格化オン抵抗を示した図である。
図11B】メインセル領域とセンスセル領域の構造を調整した場合の規格化オン抵抗を示した図である。
図12】第4実施形態にかかるSiC半導体装置に備えられるメインセル領域およびセンスセル領域それぞれでの縦型MOSFETの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のSiC半導体装置を構成する半導体チップ10は、メインセルが備えられたメインセル領域Rmとセンスセルが備えられたセンスセル領域Rsを有した構成とされている。メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとは、素子分離されることによって電気的に分離されている。メインセル領域Rmは四角形状で構成されており、センスセル領域Rsは、メインセル領域Rmに配置されている。なお、メインセル領域Rmやセンスセル領域Rsを取り囲む最外周には、ガードリングなどが備えられた外周耐圧領域が備えられているが、これについては図示を省略してある。
【0013】
半導体チップ10は、表面およびその反対面となる裏面を有し、シリコン(Si)や炭化珪素(SiC)もしくは窒化ガリウム(GaN)などの半導体基板に対して半導体素子を形成したものである。半導体素子としては、半導体チップ10の表面側と裏面側との間に電流を流す縦型半導体素子、例えば縦型MOSFET、縦型IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等のパワー半導体素子が挙げられる。本実施形態の場合、半導体チップ10には、半導体素子として縦型MOSFETが備えられている。また、半導体チップ10には、半導体素子の発熱による温度上昇に伴う素子破壊から半導体素子を保護すべく、感温素子が備えられており、感温素子で検出された温度に基づいて素子のオンオフ制御などが可能とされている。
【0014】
また、半導体チップ10は上面形状が四角形の板状で構成されている。半導体チップ10のうちの中央部を含む内部領域、具体的には図1中の二点鎖線で囲んだ領域がメインセル領域Rmとされ、そのメインセル領域Rmに接するようにセンスセル領域Rsが備えられている。メインセル領域Rmは、四角形状とされ、その全域が素子動作させられるアクティブ領域11とされている。センスセル領域Rsは、メインセル領域Rmの一辺に隣接して配置された四角形状とされ、メインセル領域Rmよりも小さな面積とされた四角形状とされている。そして、四角形状とされたセンスセル領域Rsのうちの両端、具体的には後述するトレンチゲート構造の長手方向の両端位置が素子動作させられるアクティブ領域12とされている。また、センスセル領域Rsのうちアクティブ領域12の内側に位置する内部領域は素子動作を行わない非アクティブ領域13とされている。つまり、センスセル領域Rsの中央部よりも後述するゲートライナー15に接近した周辺側にアクティブ領域12を偏在させ、センスセル領域Rsの周辺側よりもゲートライナー15から距離のある中央部に非アクティブ領域13を偏在させている。
【0015】
メインセル領域Rmに対してセンスセル領域Rsは非常に小さい面積とされているが、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsには基本的には同じ構造のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが備えられている。ここでは、縦型MOSFETとして、nチャネル型MOSFETを備えている。ただし、縦型MOSFETは、メインセル領域Rmのアクティブ領域11とセンスセル領域Rsのアクティブ領域12では同じ構造とされているが、非アクティブ領域13では動作しないようにアクティブ領域11、12と部分的に異なる構造とされている。
【0016】
また、半導体チップ10のうちのメインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsの外側となる外縁部がパッド領域14とされている。さらに、半導体チップ10のうちのメインセル領域Rmとパッド領域14との間に、感温素子が形成された感温素子領域Rtが備えられ、感温素子による温度検出に基づいて発熱素子による温度上昇が把握できるようになっている。
【0017】
また、センスセル領域Rsを囲むように設けられた太い実線で示した部分は、縦型MOSFETにおける後述するゲート電極109の引出部を構成するゲートライナー15である。本実施形態の場合、ゲートライナー15は、メインセル領域Rmの外周を囲みつつ、センスセル領域Rsにおける長手方向の両側を含む外周に沿って配置され、後述するゲートパッド14cに接続されている。
【0018】
なお、パッド領域14には、複数のパッド14a~14eが備えられている。本実施形態の場合、パッド領域14には、紙面左側からカソードパッド14a、アノードパッド14b、ゲートパッド14c、第1センスパッド14d、第2センスパッド14eが備えられている。これらは、アクティブ領域11、12に備えられる縦型MOSFETの各部や半導体チップ10内に備えられる感温素子の各部などと電気的に接続される。これら各パッド14a~14eにボンディングワイヤなどが接続されることで、外部との電気的接続が行えるようになっている。
【0019】
次に、図1および図2図4に基づいて本実施形態のSiC半導体装置に備えられた縦型MOSFETの構造について説明する。なお、図2は、断面図ではないが、図を見やすくするために部分的にハッチングを示してある。図3は、図2中のIII-III断面図に相当し、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rs中における縦型MOSFETの1セル分を図示したものである。メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsのうちのアクティブ領域11、12中の縦型MOSFETを示してある。この図に示される縦型MOSFETのセルが図1および図2の紙面上下方向に複数セル並べられた構造とされている。
【0020】
図3図4に示されるように、SiC半導体装置は、SiもしくはSiC等の半導体材料で構成されたn型基板101を用いて形成されている。n型基板101は、後述する裏面電極に相当するドレイン電極113に接続されるドレイン領域、換言すれば裏面電極に接続される裏面高濃度領域に相当するものである。n型基板101の主表面上には、n型基板101よりも低不純物濃度のn型低濃度層102がエピタキシャル成長させられている。
【0021】
図3に示すように、n型低濃度層102は、n型基板101から離れた位置において幅狭とされたJFET部102aとされ、JFET部102aの両側には、p型ディープ層103が形成されている。p型ディープ層103は、JFET部102aと同じ厚みで構成される。さらに、JFET部102aおよびp型ディープ層103の上には、p型ベース領域104が形成され、p型ベース領域104の上には、n型ソース領域105およびp型コンタクト領域106が形成されている。n型ソース領域105は、n型低濃度層102よりも高不純物濃度とされた表面高濃度領域に相当し、p型ベース領域104のうちJFET部102aと対応する部分の上に形成されている。p型コンタクト領域106は、p型ベース領域104よりも高不純物濃度で構成され、p型ベース領域104のうちp型ディープ層103と対応する部分の上に形成されている。
【0022】
p型ベース領域104およびn型ソース領域105を貫通してJFET部102aに達するゲートトレンチ107が形成されている。このゲートトレンチ107の側面と接するように上述したp型ベース領域104およびn型ソース領域105が配置されている。ゲートトレンチ107は、図3の紙面左右方向を幅方向、紙面法線方向となる一方向、図1図2で言えば紙面左右方向を長手方向、紙面上下方向を深さ方向としてライン状のレイアウトで形成されている。また、図3には1本しか示していないが、ゲートトレンチ107は、図2に示すように複数本が紙面上下方向に等間隔に配置されている。そして、図3に示されるように、ゲートトレンチ107は、それぞれp型ディープ層103の間に挟まれるように配置されていてストライプ状とされている。
【0023】
また、p型ベース領域104のうちゲートトレンチ107の側面に位置している部分は、縦型MOSFETの作動時にn型ソース領域105とJFET部102aとの間を繋ぐチャネル領域とされる。そして、このチャネル領域を含むゲートトレンチ107の内壁面にゲート絶縁膜108が形成されている。ゲート絶縁膜108の表面にはドープドPoly-Siにて構成されたゲート電極109が形成されており、これらゲート絶縁膜108およびゲート電極109によってゲートトレンチ107内が埋め尽くされている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。
【0024】
トレンチゲート構造は、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsそれぞれにおいて、図2の紙面左右方向に延設されている。そして、図4に示すように、アクティブ領域11よりも外側までトレンチゲート構造が張り出すように形成されており、その部分においてゲート電極109がゲートライナー15に接続されている。また、ゲートトレンチ107の側面にn型ソース領域105が形成されることになるが、図2に示すように、n型ソース領域105はアクティブ領域11、12に形成され、非アクティブ領域13には形成されていない。このため、本実施形態の場合は、アクティブ領域11、12内においてのみチャネル領域が形成された際に電流が流れて素子動作するようになっている。
【0025】
なお、センスセル領域Rsにおいて、図2の紙面上下に並ぶ複数のトレンチゲート構造のうち側面にn型ソース領域105が形成された部分、つまり素子動作する部分はセル単位で分かれているが、それらを一纏まりで囲んだ領域をアクティブ領域12とする。同様に、センスセル領域Rsにおいて、図2の紙面上下に並ぶ複数のトレンチゲート構造のうち側面にn型ソース領域105がない部分、つまり素子動作しない部分もセル単位で分かれているが、それらを一纏まりで囲んだ領域を非アクティブ領域13とする。
【0026】
型ソース領域105やp型コンタクト領域106およびトレンチゲート構造の表面には、層間絶縁膜110が形成されている。そして、層間絶縁膜110の上に導体パターンとして、図3に示すような表面電極に相当するソース電極111や図4に示すようなゲート配線層112が形成されている。ここでいうゲート配線層112により、上記したゲートライナー15が構成されている。また、層間絶縁膜110にはコンタクトホール110a、110bが形成されている。そして、図3に示すように、ソース電極111がコンタクトホール110aを通じてn型ソース領域105やp型コンタクト領域106と電気的に接続されている。また、図4に示すように、ゲート配線層112がコンタクトホール110bを通じてゲート電極109と電気的に接続されている。
【0027】
また、図3に示すように、ソース電極111については、メインセル領域Rmに設けられるメインソース電極111aとセンスセル領域Rsに設けられるセンスソース電極111bとがあり、これらが分離した構造とされている。メインソース電極111aについては広面積とされ、メインソース電極111aに対して直接ターミナルなどが接続されることで外部との電気的接続が行われるようになっている。センスソース電極111bについては、図1に示す引出配線16を通じて第1センスパッド14dに接続されている。
【0028】
また、n型基板101の裏面側、つまりソース電極111が形成された側と反対側の一面にはn型基板101と電気的に接続された裏面電極に相当するドレイン電極113が形成されている。ドレイン電極113は、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsの両方の縦型MOSFETで共通とされ、例えばn型基板101の裏面側の一面全面に形成されている。
【0029】
このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが構成されている。そして、このような縦型MOSFETが複数セル配置されることでメインセル領域Rmのアクティブ領域11およびセンスセル領域Rsのアクティブ領域12が構成されている。また、図示しないが半導体チップ10の表面がパッシベーション膜で覆われ、パッシベーション膜のうちのソース電極111と対応する部分やパッド領域14に備えられる各パッド14a~14eと対応する部分も除去されて開口させられている。このようにして、縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置が構成されている。
【0030】
このような構成とされたSiC半導体装置において、縦型MOSFETは、次のように作動する。
【0031】
まず、ゲート電極109にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、p型ベース領域104に反転層が形成されない。このため、ドレイン電極113に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、n型ソース領域105からp型ベース領域104内に電子が流れず、ソース電極111とドレイン電極113との間には電流が流れない。一方、ゲート電極109に所定のゲート電圧、例えば20Vが印加されると、p型ベース領域104のうちのゲートトレンチ107に接している表面にチャネルが形成される。このため、ソース電極111から注入された電子は、n型ソース領域105からp型ベース領域104に形成されたチャネルを通った後、n型低濃度層102に流れ、さらにn型基板101を通過してドレイン電極113へ流れる。これにより、ソース電極111とドレイン電極113との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。
【0032】
ここで、上記のような構成とされるSiC半導体装置は、図5のような回路構成となり、短絡検知などのためにカレントミラー回路が構成される。すなわち、メインセルの縦型MOSFETおよびセンスセルの縦型MOSFETについて、互いのゲート電極109およびドレイン電極113が共通とされ、メインソース電極111aとセンスソース電極111bが分離された回路構成とされる。このため、メインセルとセンスセルとによるカレントミラー回路が構成される。そして、メインセルに流れる電流をカレントミラー比で規定されるセンス比で減少させた電流がセンスセルに流れ、それが外部に取り出されることで電流センス、すなわちメインセルに流れる電流を検出できるようになっている。これにより、メインセルに短絡が発生した場合を検知する短絡検知などを高感度な電流センスによって行うことが可能となる。
【0033】
なお、図5中のゲートGはメインセルおよびセンスセルのゲート電極109、ドレインDはドレイン電極113、ソースSはメインソース電極111a、ソースSSはセンスソース電極111bに接続されるパッド14dに相当する。ソースKSは、メインソース電極111aに接続される第2センスパッド14eに相当する。また、メインセルおよびセンスセルにおけるドレイン-ソース間に備えられたダイオードは、縦型MOSFETの内蔵ダイオードを示している。さらに、上記したように半導体チップ10内には感温素子が備えられているが、図5に示すように、感温素子領域Rtに備えられた感温素子は、例えば感温ダイオード20によって構成される。この感温ダイオード20のカソードKがカソードパッド14a、アノードAがアノードパッド14bに相当する。
【0034】
以上のようにして、本実施形態にかかる縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置が構成されている。
【0035】
このように構成されたSiC半導体装置では、センスセル領域Rsのうちの一部をアクティブ領域12とし、アクティブ領域12の内側に位置する内部領域を非アクティブ領域13としている。電流センスは、センス比を調整できるようにするため、あるいはESD(Electro-Static Discharge)耐量を向上させるために、センスセル領域Rsをアクティブ領域12より広いサイズ確保した上で、その一部のみをアクティブ領域12として機能させるパターンになっている。
【0036】
一般的には、図6中の配置(A)に示すように、アクティブ領域12は、センスセル領域Rsの中央部に設けられる。ゲートライナー15はアクティブ領域12の端部においてゲート電極109に接続されるため、配置(A)の場合には、アクティブ領域12がゲートライナー15から最も離れた位置に配置されることになる。このため、センスセル領域Rsにおけるアクティブ領域12の縦型MOSFETは、半導体チップ10内に構成される縦型MOSFETの中で最もオンしにくい配置となり、オンするまでに遅延を発生させることになる。つまり、オンするタイミングをメインセルと比較した場合、センスセルのオンするタイミングがメインセルのオンするタイミングよりも遅れる。このため、メインセルに流れている電流をリアルタイムで電流センスできないという問題が発生する。
【0037】
これに対して、本実施形態では、センスセル領域Rsにおいて、トレンチゲート構造の長手方向の両側にアクティブ領域12が配置され、アクティブ領域12の内側の内部領域が非アクティブ領域13となるようにしている。このため、配置(A)よりもアクティブ領域12が非アクティブ領域13よりもゲートライナー15の近くに位置することになり、素子動作に遅延が発生することが抑制される。
【0038】
センスセル領域Rsにおいてセンスセルがオンするタイミングは、アクティブ領域12の配置に依存する。上記した図6中の配置(A)では、センスセルがオンし難く、センスセルがオンするタイミングに遅延が発生し得る。センスセルがオンするタイミングを早くするには、例えば図6中の(B)、(C)に示す配置とすることが考えられる。図6中の配置(B)は、アクティブ領域12が非アクティブ領域13の中間位置に配置され、2つに分かれたアクティブ領域12の間および両アクティブ領域12の両側に非アクティブ領域13が配置される構造である。図6中の配置(C)は、本実施形態の配置、つまりアクティブ領域12が非アクティブ領域13の両側に配置された構造である。
【0039】
配置(B)、(C)のいずれの場合にも、一般的な配置(A)よりもセンスセルがオンするタイミングを早くすることが可能である。このため、目的に応じた電流センスの仕様を得るために、配置(B)と配置(C)のいずれかを選択すれば良い。特に、本実施形態のような配置(C)とすれば、よりセンスセルがオンするタイミングを早くすることが可能となり、より素子動作に遅延が発生することを抑制できる。このように、アクティブ領域12がセンスセル領域Rsの中央ではなく、中央より両端側に配置された構造とすることで、センスセルとメインセルとの間のスイッチング遅延を縮小できる。これにより、センスセルにてメインセルに流れている電流をリアルタイムで検知することが可能になる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のSiC半導体装置では、アクティブ領域12がセンスセル領域Rsの中央ではなく、中央より両端側に配置された構造としている。換言すれば、センスセル領域Rsの中央部よりもゲートライナー15に接近した周辺側にアクティブ領域12を偏在させ、センスセル領域Rsの周辺側よりもゲートライナー15から距離のある中央部に非アクティブ領域13を偏在させている。ここでは特に、センスセル領域Rsにおける両端にアクティブ領域12が配置され、その内部領域を非アクティブ領域13としている。これにより、センスセルとメインセルとの間のスイッチング遅延を縮小でき、センスセルにてメインセルに流れている電流をリアルタイムで検知することが可能になる。よって、センスセルによる電流センスの精度向上が図れる。
【0041】
また、本実施形態では、センスセル領域Rsを四角形状とし、四角形状とされたセンスセル領域Rsのうちゲート電極109の両端に対応する両端において、ゲート電極109の長手方向に対して直交するライン状にアクティブ領域12を配置している。このため、最もゲートライナー15から近い位置にアクティブ領域12を配置することができ、センスセルとメインセルとの間の差をより縮小できて、さらにセンスセルによる電流センスの精度向上が図れる。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してアクティブ領域12のレイアウトを変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
第1実施形態で説明したように、センスセル領域Rsはメインセル領域Rmに対して非常に小さい面積とされている。例えば、センスセル領域Rsはメインセル領域Rmの数千~数万分の1というサイズになっている。このようにセンスセル領域Rsは非常に小さいため、ESDのような外部高電圧が印加されると瞬時に許容値以上の電荷が蓄積され、容易に破壊されるという課題がある。このため、センスセルの耐量を向上し、信頼性の高い素子とすることが望まれる。
【0044】
そこで、本実施形態では、センスセル領域Rsにおけるアクティブ領域12を分散させることで短絡電流を分散させる。具体的には、図7に示すように、アクティブ領域12をセンスセル領域Rsの中央に配置された非アクティブ領域13を挟んだ両側において、トレンチゲート構造の長手方向に対して直交するように配置している。そして、非アクティブ領域13の両側それぞれに、アクティブ領域12を複数個に分割して配置している。図7の構造では、センスセル領域Rsの中央に位置する非アクティブ領域13を挟んだ両側それぞれに3つずつライン状にアクティブ領域12を配置してアクティブ領域12がストライプ状にレイアウトされるようにしている。各アクティブ領域12の間も、非アクティブ領域13とされている。トレンチゲート構造の長手方向において、アクティブ領域12の長さは非アクティブ領域13の長さよりも小さくされ、アクティブ領域12が全体的にセンスセル領域Rsの中央より両端側に位置した構造とされている。
【0045】
このように、アクティブ領域12をセンスセル領域Rsの中央より両端側に位置した構造とすることで第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、センスセル領域Rsの両端に配置されるアクティブ領域12を複数に分散しているため、短絡電流を分散させることができる。これにより、センスセルの耐量を向上させられ、信頼性の高い素子とすることが可能になる。
【0046】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、アクティブ領域12をトレンチゲート構造の長手方向に対して直交するように配置したが、他のレイアウトとされていても良い。
【0047】
例えば、図8Aに示すように、アクティブ領域12が非アクティブ領域13の両側において点在させられたレイアウトとされていても良い。図8Aにおいては、センスセル領域Rs内において対称配置されるようにアクティブ領域12を格子状に配置しているが、格子状でなくても良い。なお、図8Aに示される例では、隣り合って配置されたトレンチゲート構造の1個おき、もしくは複数個おきにアクティブ領域12が複数個配置される構造を示している。各アクティブ領域12は、トレンチゲート構造の長手方向やそれに直交する方向において等間隔に配置されると好ましい。
【0048】
また、図8Bに示すように、アクティブ領域12が非アクティブ領域13の両側においてトレンチゲート構造の長手方向に沿って延設されたライン状のものが、その直交方向に複数本ストライプ状に配置された構造とされていても良い。この場合も、隣り合って配置されたトレンチゲート構造の1個おき、もしくは複数個おきにアクティブ領域12が複数個配置される構造とされる。
【0049】
これらのレイアウトとしても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第2実施形態および変形例では、センスセルがオンするタイミングを早くできるように非アクティブ領域13の両側にのみアクティブ領域12が配置される構造を説明した。しかしながら、センスセルの耐量を向上させるという効果については、必ずしもアクティブ領域12が非アクティブ領域13の両側にのみ配置されている必要はなく、複数に分散して配置された構造とされていれば良い。このため、第2実施形態のようなトレンチゲート構造の長手方向に対して直交する方向にライン状に配置された構造のアクティブ領域12をセンスセル領域Rsの中央位置まで備えても良い。同様に、図8Aのようなアクティブ領域12を点在させた構造、図8Bのようなアクティブ領域12をトレンチゲート構造の長手方向に延設した構造をセンスセル領域Rsの中央位置まで備えても良い。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対してトレンチゲート構造を変更したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
上記第1、第2実施形態では、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsに形成された縦型MOSFETの基本構造を同じにしているが、本実施形態では、縦型MOSFETのうちのトレンチゲート構造を異ならせる。具体的には、図9の右側に示すメインセル領域Rmのトレンチゲート構造と比較して、図9の左側に示すセンスセル領域Rsのトレンチゲート構造のゲート絶縁膜108の膜厚が厚くなるようにしている。これにより、センスセル領域Rsでのゲート絶縁膜108の破壊強度を向上させることが可能となり、センスセルの耐量を向上させることが可能となる。
【0052】
このような構造については、例えばメインセル領域Rmと比較してセンスセル領域Rsのゲートトレンチ107の幅を広くすることで製造可能である。例えばCVD(chemical vapor deposition)でゲート絶縁膜108を形成する際に、より幅広のゲートトレンチ107において成膜レートが高くなる。このため、メインセル領域Rmと比較してセンスセル領域Rsのゲートトレンチ107の幅を広くすることで、メインセル領域Rmよりもセンスセル領域Rsのゲート絶縁膜108の膜厚を厚くできる。
【0053】
このように、第1、第2実施形態の構造とすることでセンスセルがオンするタイミングを早くしつつ、メインセル領域Rmと比較してセンスセル領域Rsのゲート絶縁膜108の膜厚を厚くすることによって、センスセルの耐量の向上を図ることも可能となる。
【0054】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1~第3実施形態に対してより電流センスの精度を高くするものであり、その他については第1~第3実施形態と同様であるため、第1~第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
上記したように、アクティブ領域12はセンスセル領域Rsのうちの一部であるため、非常に小さいサイズになっている。また、上記第3実施形態の構造では、センスセルの耐量を向上させることが可能になるが、メインセルとの構造に差が生じることで電流センスの精度を悪化させることも懸念される。このため、本実施形態では、それを改善して電流センスの精度を高くする。
【0056】
センスセル領域Rsは面積が小さく、それと比較してメインセル領域Rmは面積が大きい。このため、図10中に波線で示すように、メインセル領域Rmでは、n型低濃度層102およびn型基板101のn型層部で構成されるサブストレート部(以下、サブ部という)において、電流がほぼ縦型MOSFETの厚み方向に沿って流れる。これに対し、センスセル領域Rsでは、サブ部において、電流が縦型MOSFETの厚み方向だけでなく横方向にも拡がるようにして流れる。もしくは、メインセル領域Rmは広面積であるため、電流の横方向への拡がりの影響が少ないが、センスセル領域Rsは狭面積であるため、電流の横方向への拡がりの影響が大きい。このため、メインセル領域Rmと比較してセンスセル領域Rsでの規格化オン抵抗、換言すると単位面積当たりのオン抵抗が低くなる。
【0057】
縦型MOSFETの規格化オン抵抗Rtotalは、サブ部の抵抗値Rsb、チャネル抵抗Rch、ソース配線抵抗Rsoなどの積算値で表される。チャネル抵抗Rchやソース配線抵抗Rsoについてはメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとで等しいとすると、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsの構造が同じである場合の規格化オン抵抗は、図11Aのようになる。つまり、サブ部の抵抗値Rsbについて、センスセル領域Rsの方がメインセル領域Rmよりも小さくなっているため、規格化オン抵抗Rtotalもサブ部の抵抗値Rsbの分、センスセル領域Rsの方がメインセル領域Rmよりも小さくなる。これが電流センスに影響を与える可能性がある。
【0058】
このため、本実施形態では、メインセル領域Rmの方がセンスセル領域RsよりもJFET部102aの抵抗値が低くなるようにして、両者の規格化オン抵抗Rtotalが近づくようにする。具体的には、図12に示すように、JFET部102aに電流分散層102bを形成し、センスセル領域Rsの方がメインセル領域Rmよりも電流分散層102bの不純物濃度が低くなるようにして内部抵抗を高くする。例えば、JFET部102aに対してp型不純物をイオン注入することで内部抵抗を高くする。ここでは、センスセル領域Rsのみに電流分散層102bを備えている。これにより、図11Bに示すように、センスセル領域Rsの規格化オン抵抗Rtotalは、電流分散層102bの抵抗値Rdが加算されることになる。したがって、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとで規格化オン抵抗Rtotalを近付けること、好ましくは一致させることが可能になる。よって、電流センスの精度を向上させることが可能になる。特に、第3実施形態の構造においては、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとで縦型MOSFETの構造が相違することから、電流センスの精度の悪化を招き易いが、本実施形態の構造とすることで、それを抑制することが可能になる。
【0059】
なお、上記のようにして、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとで規格化オン抵抗Rtotalを近付けることが可能になる。しかし、第3実施形態のように、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとでゲート絶縁膜108の膜厚を変えると、これらの領域でのチャネル抵抗Rchが異なった値になって規格化オン抵抗Rtotalがずれてしまう。具体的には、ゲート絶縁膜108の厚みを厚くするセンスセル領域Rsの方がメインセル領域Rmよりも規格化オン抵抗Rtotalが高くなる。この場合、次の(1)~(4)のいずれかを行ってメインセル領域Rmの方がセンスセル領域Rsよりも実効チャネル長が短くなるようにすることで、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとで規格化オン抵抗Rtotalを近付けることが可能になる。
【0060】
(1)センスセル領域Rsについて、メインセル領域Rmよりもp型ベース領域104を薄くしてチャネル領域の厚みを薄くする。
(2)センスセル領域Rsについて、メインセル領域Rmよりもn型ソース領域105の深さを深くしてチャネル領域の厚みを薄くする。
(3)センスセル領域Rsについて、メインセル領域Rmよりもチャネル濃度、つまりp型ベース領域104のp型不純物濃度を下げて閾値電圧が低くなるようにする。
(4)センスセル領域Rsに形成する電流分散層102bのn型不純物濃度をメインセル領域RmのJFET部102aよりも高濃度にすることで低抵抗化する。メインセル領域Rmにも電流分散層102bを形成する場合には、センスセル領域Rsの電流分散層102bのn型不純物濃度をメインセル領域Rmの電流分散層102bよりも高濃度にして低抵抗化する。
【0061】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0062】
例えば、メインセル領域Rmを四角形状にすると共に、その一辺に隣接するようにセンスセル領域Rsを配置したレイアウトを例に挙げたが、これに限るものではない。例えば、メインセル領域Rmを四角形枠体形状とし、その中央位置にセンスセル領域Rsを配置するレイアウトであっても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、SiCを半導体材料として用いて半導体装置を構成する場合を例に挙げているが、Siなどの他の半導体材料を用いて半導体装置を構成することもできる。SiCの場合、硬い材質であるため、n型基板101の上にn型低濃度層102をエピタキシャル成長させ、その上に更にp型ベース領域104やn型ソース領域105をエピタキシャル成長もしくはイオン注入によって形成すると良い。これに対して、Siなどのイオン注入の飛程が長く、深い位置までイオン注入できる材料の場合、n型低濃度層102を基板として、基板の裏面側から不純物をイオン注入することで裏面高濃度領域となるドレイン領域を形成しても良い。
【0064】
また、電流分散層102bについては、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsの少なくとも一方に形成されていれば良い。つまり、電流分散層102bが備えられることでセンスセル領域Rsの方がメインセル領域RmよりもJFET部102aの抵抗値が高くするなど、センスセル領域Rsとメインセル領域RmとでJFET部102aの抵抗値が異ならせていれば良い。
【0065】
また、上記各実施形態では、トレンチゲート構造の縦型半導体素子として、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプの縦型MOSFETを例に挙げて説明した。しかしながら、これは一例を挙げたに過ぎず、他の構成のトレンチゲート構造の縦型半導体素子としても良い。例えば、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプの縦型MOSFETに対しても本発明を適用することができる。また、上記各実施形態では、トレンチゲート構造のMOSFETを例に挙げて説明したが、同様のトレンチゲート構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTは、上記各実施形態に対して基板101の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造に関しては上記各実施形態と同様である。
【0066】
また、第1、第2、第4実施形態については、トレンチゲート構造の縦型半導体素子に限らず、プレーナ型の縦型半導体素子についても本発明を適用できる。すなわち、n型低濃度層102とn型ソース領域105との間におけるp型ベース領域104の表面にゲート絶縁膜108が形成され、このゲート絶縁膜108の上にゲート電極109が配置された構造であれば、ゲート構造は問わない。また、ゲート電極109の上面レイアウトについても、一方向を長手方向として複数本がストライプ状に配置された構造を例に挙げたが、これに限らない。例えば、長手方向を有さないで四角形状のものが複数ドット状に点在させられた構造でゲート電極109が構成されていても良い。その場合でも、複数のゲート電極109が備えられた領域の両端でゲートライナー15に接続された構造とされていれば良い。
【符号の説明】
【0067】
Rm メインセル領域
Rs センスセル領域
10 半導体チップ
12 アクティブ領域
13 非アクティブ領域
15 ゲートライナー
109 ゲート電極
111 ソース電極
113 ドレイン電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12