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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B41J2/14 307
B41J2/14 613
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021012848
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116595
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】外村 修
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅夫
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-094688(JP,A)
【文献】特開平11-227204(JP,A)
【文献】特開2010-280139(JP,A)
【文献】特開2014-172295(JP,A)
【文献】特開2016-203534(JP,A)
【文献】特開2007-042984(JP,A)
【文献】特開2020-203463(JP,A)
【文献】特開2019-051696(JP,A)
【文献】特開2001-297411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0174542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室と、第1振動板、第2振動板及び第3振動板を具備する振動板と、第1電極、圧電体層及び第2電極を具備する圧電アクチュエーターと、がこの順に積層された液体噴射ヘッドであって、
前記振動板と前記圧電アクチュエーターとの積層方向からの平面視において前記圧力室が第1方向に複数並設されており、
前記第1振動板と前記第2振動板と前記第3振動板と前記圧電体層とが積層された第1部分と、前記圧電体層と前記第3振動板とが積層されず前記第1振動板と前記第2振動板とが積層された第2部分とが、前記第1方向において設けられ、
前記第1振動板と前記第2振動板とは、一方が圧縮応力を有し、他方が引張応力を有し、
前記第3振動板のヤング率は、前記第1振動板及び前記第2振動板のヤング率よりも大きく、
前記第2部分が、前記第1方向の前記圧力室の両端部に対応する部分であり、
前記第3振動板は、絶縁性を有する材料で構成され、
前記第1方向において、前記第1電極の幅は、前記圧電体層の幅及び前記第3振動板の幅よりも短い、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第1振動板と前記第2振動板と前記第3振動板と前記圧電体層と前記第2電極とが積層された部分であり、
前記第2部分は、前記圧電体層と前記第3振動板とが積層されず前記第1振動板と前記第2振動板と前記第2電極とが積層された部分である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1振動板は、熱酸化膜で構成され、複数の前記圧力室を隔てる隔壁が単結晶シリコンで構成され、
前記第1振動板と前記隔壁とが接している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記圧力室の内壁には、流路保護膜が形成されており、
前記流路保護膜のヤング率は、前記第3振動板のヤング率よりも小さい
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記圧電体層が鉛を含み、前記第3振動板がジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、又は、ケイ素を含む酸窒化物であり、前記第1振動板と前記第2振動板との少なくとも一方が酸化ケイ素、又は、ケイ素を含む
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第1振動板と前記第2振動板の少なくとも一方が非晶質である
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記第1振動板が圧縮応力であり、
前記第2振動板が引張応力である
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1振動板の厚さは、前記第2振動板の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第1振動板が引張応力であり、
前記第2振動板が圧縮応力である
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記第2振動板の厚さは、前記第1振動板の厚さよりも大きい
ことを特徴とする請求項9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記第1部分に比べて、前記第2部分で、前記第1振動板と前記第2振動板との少なくとも一方が薄くなっている
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、液体としてインク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。インクジェット式記録ヘッドとしては、例えばノズルに連通する圧力室が形成された流路基板と、この流路基板の一方面側に振動板を介して設けられた圧電アクチュエーターと、を具備し、圧電アクチュエーターによって圧力室内のインクに圧力変化を生じさせることで、ノズルからインク滴を噴射するものが知られている。
【0003】
圧電アクチュエーターは、流路形成基板の振動板上に形成された第1電極と、第1電極上に電気機械変換特性を有する圧電材料で形成された圧電体層と、圧電体層上に設けられた第2電極と、を具備する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-139331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノズルから噴射する液滴のインク重量を大きくするために、振動板のヤング率を低下させると、振動板の共振周波数も低下し、インク滴の連続した噴射を高速で行うことができないという問題がある。
【0006】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、圧力室と、第1振動板、第2振動板及び第3振動板を具備する振動板と、第1電極、圧電体層及び第2電極を具備する圧電アクチュエーターと、がこの順に積層された液体噴射ヘッドであって、前記振動板と前記圧電アクチュエーターとの積層方向からの平面視において前記圧力室が第1方向に複数並設されており、前記第1方向において、前記第1振動板と前記第2振動板とに、前記圧電体層と前記第3振動板とが積層された部分と、前記圧電体層と前記第3振動板とが積層されていない部分とが設けられ、前記第1振動板と前記第2振動板とは、一方が圧縮応力を有し、他方が引張応力を有し、前記第3振動板のヤング率は、前記第1振動板及び前記第2振動板のヤング率よりも大きいことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0008】
また、本実施形態の他の態様は、上記態様に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。
図6】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。
図7】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの要部断面図である。
図8】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの要部平面図である。
図9】本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの要部断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つのX、Y、Zの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸として説明する。また、Z方向は、鉛直方向を示し、+Z方向は鉛直下向き、-Z方向は鉛直上向きを示す。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。図2は、記録ヘッドの平面図である。図3は、図2のA-A′線断面図である。図4は、図2のB-B′線断面図である。図5及び図6は、振動板の内部応力を説明する断面図である。
【0012】
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)は、「基板」の一例として流路形成基板10を具備する。流路形成基板10は、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。本実施形態の流路形成基板10は、単結晶シリコンで構成されている。なお、流路形成基板10は、(100)面優先配向した基板であってもよく、(110)面優先配向した基板であってもよい。
【0013】
流路形成基板10には、複数の圧力室12が「第1方向」である+X方向に沿って並んで配置されている。つまり、「第1方向」は、圧力室12の「並設方向」のことであり、本実施形態では、+X方向である。複数の圧力室12は、+Y方向の位置が同じ位置となるように、+X方向に沿った直線上に配置されている。+X方向で互いに隣り合う圧力室12は、隔壁11によって区画されている。もちろん、圧力室12の配置は特にこれに限定されず、例えば、+X方向に並んで配置された圧力室12において、1つ置きに+Y方向にずれた位置に配置した、所謂、千鳥配置としてもよい。
【0014】
また、本実施形態の圧力室12は、+Z方向に見た平面視において、並設方向である+X方向と交差する方向に長尺な長尺形状を有する。すなわち、圧力室12は、+Z方向に見た平面視において、並設方向である+X方向が短手方向となり、+X方向に交差する方向、本実施形態では、+Y方向が長手方向となる形状となっている。また、本実施形態の圧力室12は、+Z方向から見た平面視において、+Y方向が長手方向となる長方形状を有する。もちろん、圧力室12のZ方向から見た平面視における形状は、特にこれに限定されず、圧力室12は、平行四辺形状であってもよく、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円形状とした、いわゆる、角丸長方形状(別名、トラック形状とも言う)や楕円形状や卵形状などのオーバル形状や、円形状、多角形状等であってもよい。このように、圧力室12は、+Z方向に見て+X方向を短手方向として、複数の圧力室12を+X方向に並設することで、流路形成基板10に圧力室12を高密度に配置することができる。この圧力室12が、「基板」に設けられた「凹部」に相当する。
【0015】
このような流路形成基板10の圧力室12の内壁面には、耐液耐性、すなわち、耐インク性を有する流路保護膜13が設けられている。ここで言う耐インク性とは、アルカリ性のインクに対する耐エッチング性のことである。このような流路保護膜13としては、例えば、酸化タンタル(TaO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)から選択される少なくとも1種の材料を単層又は積層したものを用いることができる。また、流路保護膜13として、樹脂を用いるようにしてもよい。本実施形態では、流路保護膜13として、五酸化タンタル(TaO)を用いた。
【0016】
流路形成基板10の+Z方向側には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。
【0017】
連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。
【0018】
また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15を+Z方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15を+Z方向に貫通することなく、+Z方向側の面に開口して設けられている。
【0019】
さらに、連通板15には、圧力室12のY軸の端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。
【0020】
このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このように流路形成基板10と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
【0021】
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向側の面に設けられている。
【0022】
ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。本実施形態では、複数のノズル21は、+X方向に沿って一列となるように並んで配置されたノズル列が+Y方向に離れて2列設けられている。すなわち、各列の複数のノズル21は、+Y方向の位置が同じ位置となるように配置されている。もちろん、ノズル21の配置は特にこれに限定されず、例えば、+X方向に並んで配置されたノズル21において、1つ置きに+Y方向にずれた位置に配置した、所謂、千鳥配置としてもよい。このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。なお、ノズルプレート20は、連通板15の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このようにノズルプレート20と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
【0023】
また、連通板15の-Z方向側の面には、ケース部材40が固定されている。ケース部材40は、第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の並んで配置される方向である+X方向に亘って連続して設けられおり、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、+X方向に並んで配置されている。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44が設けられている。また、ケース部材40には、詳しくは後述する保護基板30の貫通孔32に連通して配線基板120が挿通される接続口43が設けられている。
【0024】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の+Z方向側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。このコンプライアンス部49が撓み変形することによってマニホールド100内のインクの圧力変動を吸収する。
【0025】
流路形成基板10の-Z方向側の面には、振動板50と第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有する圧電アクチュエーター300とが順次積層されている。つまり、圧力室12、振動板50、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80が-Z方向に向かってこの順に並んで配置されている。
【0026】
振動板50は、第1振動板51と第2振動板52と第3振動板53とを具備する。第1振動板51と第2振動板52と第3振動板53とは、-Z方向に向かってこの順に積層されている。
【0027】
第1振動板51は、流路形成基板10の-Z方向側の面に設けられたものであり、流路形成基板10の-Z方向側の全面に亘って連続して設けられている。すなわち、第1振動板51は、単結晶シリコンからなる流路形成基板10の隔壁11に接している。つまり、第1振動板51は、流路形成基板10の-Z方向側の面上に直接設けられている。本実施形態では、第1振動板51は、流路形成基板10の-Z方向側の面の全面に亘って設けられている。
【0028】
第2振動板52は、第1振動板51の-Z方向側の面に設けられている。第2振動板52は、第1振動板51の-Z方向側の面の全面に亘って連続して設けられている。
【0029】
第3振動板53は、第2振動板52の-Z方向側の面に設けられたものである。第3振動板53は、+Z方向からの平面視した際に圧力室12に重なる部分において、圧力室12の並設方向であって短手方向である+X方向に部分的に設けられている。つまり、振動板50は、+X方向において第1振動板51、第2振動板52及び第3振動板53が積層された部分と、第3振動板53が設けられておらず第1振動板51及び第2振動板52が積層された部分とが存在する。ここで、本実施形態では、振動板50のうち、圧力室12に対向する領域を可撓領域Pと称する。可撓領域Pのうち、+Z方向に見て、+X方向における圧力室12の端部である壁面よりも内側であって、圧力室12の中心部を含まない領域を縁部P1と称する。また、可撓領域Pのうち縁部P1以外の領域を中央部P2と称する。そして、本実施形態では、中央部P2に第1振動板51、第2振動板52及び第3振動板53とが積層されている。また、縁部P1に第3振動板53が設けられておらず、第1振動板51と第2振動板52とが積層されている。言い換えると、第3振動板53は、+Z方向で圧力室12に対向する領域内において、圧力室12の並設方向であって短手方向である+X方向の中央部P2のみに設けられている。また、第3振動板53は、+Z方向で圧力室12に対向する領域内においてX軸に沿った方向の両端部、つまり+X方向側の端部及び-X方向側の端部である縁部P1には形成されておらず、第1振動板51及び第2振動板52のみが積層されている。
【0030】
第1振動板51及び第2振動板52のヤング率s1、s2は、第3振動板53のヤング率s3よりも小さい。すなわち、s1<s3、s2<s3の関係を満たす。ここで、第1振動板51及び第2振動板52の少なくとも一方は、酸化ケイ素またはケイ素を含む。ここで、第1振動板51及び第2振動板52が酸化ケイ素又はケイ素を含むとは、酸化ケイ素又はケイ素を主成分として含むものであれば、その他の材料を含むものであってもよい。なお、第1振動板51及び第2振動板52の主成分が酸化ケイ素又はケイ素を主成分として含むとは、第1振動板51及び第2振動板52のそれぞれに含まれる酸化ケイ素又はケイ素が50質量%以上であることを言う。このような酸化ケイ素又はケイ素を含む第1振動板51及び第2振動板52は、通常アモルファス(非晶質)である。このような第1振動板51及び第2振動板52は、二酸化ケイ素(SiO)で構成されている。
【0031】
本実施形態の圧力室12等の流路は、流路形成基板10を+Z方向側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室12の-Z方向側の面は、第1振動板51によって画成されている。すなわち、振動板50として、流路形成基板10側に酸化ケイ素を含む第1振動板51を設けることで、流路形成基板10を振動板50とは反対面側からKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチングする際に、第1振動板51をエッチングストップ層として用いることができる。したがって、流路形成基板10に異方性エッチングによって圧力室12を高密度に且つ高精度に形成することができると共に振動板50の厚さにバラツキが生じるのを抑制することができる。もちろん、圧力室12の形成方法は、異方性エッチングに限定されず、ドライエッチング等であってもよい。また、第1振動板51は、酸化ケイ素に限定されるものではない。第1振動板51としては、例えば、流路形成基板10の一部を用いるようにしてもよい。つまり、第1振動板51として、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板を用いるようにしてもよい。また、例えば、第1振動板51としては、二酸化ジルコニウム(ZrO)等の酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO)を用いるようにしてもよい。また、第1振動板51としては、ポリイミド、パリレンなどの有機膜を用いるようにしてもよい。なお、第1振動板51は、非晶質(アモルファス)のものに限定されず、単結晶シリコンなどの優先配向した結晶構造を有するものであってもよい。第2振動板52についても第1振動板51と同様である。つまり、第1振動板51及び第2振動板52の少なくとも一方は、非晶質であることが好ましい。このように第1振動板51及び第2振動板52を非晶質とすることで、第1振動板51及び第2振動板52が変位し易く、割れ難くすることができる。
【0032】
また、第1振動板51は、熱酸化膜で構成されていることが好ましい。つまり、第1振動板51と接する流路形成基板10の複数の隔壁11が単結晶シリコンで構成され、第1振動板51が熱酸化膜で構成されることで、隔壁11と第1振動板51との密着性を向上することができる。
【0033】
このような第1振動板51及び第2振動板52は、一方が圧縮応力を有し、他方が引張応力を有する。つまり、図5に示すように、第1振動板51が圧縮応力を有し、第2振動板52が引張応力を有する場合と、図6に示すように、第1振動板51が引張応力を有し、第2振動板52が圧縮応力を有する場合と、がある。なお、第1振動板51及び第2振動板52の一方が圧縮応力を持つとは、内部応力が圧縮応力となっていることを言う。同様に、第1振動板51及び第2振動板52の他方が引張応力を持つとは、内部応力が引張応力となっていることを言う。
【0034】
また、図5に示すように、第1振動板51が圧縮応力を有し、第2振動板52が引張応力を有する場合には、第1振動板51のZ軸に沿った厚さd1は、第2振動板52の厚さd2よりも大きいことが好ましい(d1>d2)。これは、一般的に圧縮応力膜の方が引張応力膜に比べて変位し易い。このため、圧縮応力である第1振動板51の厚さd1を、引張応力である第2振動板52の厚さd2よりも厚くすることで、振動板50の変位をより大きくすることができる。
【0035】
また、図6に示すように、第1振動板51が引張応力を有し、第2振動板52が圧縮応力を有する場合には、第2振動板52の厚さd2は、第1振動板51の厚さd1よりも大きいことが好ましい(d2>d1)。つまり、圧縮応力である第2振動板52の厚さd2を、引張応力である第1振動板51の厚さd1よりも厚くすることで、振動板50の変位をより大きくすることができる。
【0036】
なお、図5に示すように、第1振動板51が圧縮応力を有し、第2振動板52が引張応力を有する方が、図6の構成に比べて振動板50が圧力室12側である+Z方向に凸状に変位し易く変位量が大きくなるため、ノズル21から噴射されるインク滴の重量を大きくすることやインク滴の飛翔速度を速くすることができる。
【0037】
また、図6に示すように、第1振動板51が引張応力を有し、第2振動板52が圧縮応力を有する方が、振動板50が圧力室12とは反対側である-Z方向に凸状に変位し易く変位量が大きくなるため、メニスカスの引きちぎりがし易くなる。
【0038】
ここで、上述のように第3振動板53のヤング率s3は、第1振動板51及び第2振動板52のヤング率s1、s2よりも大きい。つまり、s3>s1、s3>s2の関係を満たす。このため、振動板50全体のヤング率を大きくすることができ、振動板50の共振周波数の低下を抑制することができる。ちなみに、振動板50に第3振動板53を設けずに、第1振動板51及び第2振動板52のみを設けた場合、振動板50の変位量を大きくすることができるものの、振動板50全体のヤング率が低下し、共振周波数が低下する。本実施形態では、第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも高いヤング率の第3振動板53を圧力室12に対向する領域に部分的に設けることで、振動板50の変位量を向上しつつ共振周波数が低下するのを抑制することができる。
【0039】
このような第3振動板53は、圧電体層70の成分が第2振動板52、第1振動板51及び流路形成基板10側に拡散するのを抑制する拡散防止層としても機能する材料を用いるのが好ましい。第3振動板53の材料としては、例えば、ジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、ケイ素を含む酸窒化物等が挙げられる。本実施形態では、ジルコニウムを含む酸化物として、二酸化ジルコニウム(ZrO)を用いた。なお、第3振動板53が、ジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、ケイ素を含む酸窒化物であるとは、第3振動板53が、ジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、または、ケイ素を含む酸窒化物を主成分として含むものであれば、その他の材料を含むものであってもよい。なお、第3振動板53の主成分がジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、ケイ素を含む酸窒化物であるとは、第3振動板53に含まれるジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、ケイ素を含む酸窒化物が50質量%以上であることを言う。本実施形態では、第3振動板53として、二酸化ジルコニウム(ZrO)を用いた。このように酸化ジルコニウムを含む第3振動板53を設けることで、圧電体層70に含まれる成分、例えば、鉛(Pb)やビスマス(Bi)などが、第3振動板53よりも下、つまり、第1振動板51、第2振動板52及び流路形成基板10に拡散するのを抑制することができる。したがって、酸化ジルコニウムを含む第3振動板53を設けることで、第1振動板51、第2振動板52及び流路形成基板10に圧電体層70に含まれる成分が拡散することによる剛性の低下などの不具合を抑制することができる。また、酸化ジルコニウムを含む第3振動板53を設けることで、第3振動板53よりも+Z方向側に設けられた第1振動板51、第2振動板52及び流路形成基板10等に含まれる成分が圧電体層70側に拡散するのを抑制することができる。
【0040】
また、第3振動板53は、絶縁性を有する材料を用いることが好ましい。第3振動板53を絶縁性を有する材料で構成することで、詳しくは後述する活性部310毎に設けられた第1電極60同士が第3振動板53によって短絡するのを抑制することができる。ちなみに、第1電極60が複数の活性部310の共通電極として構成された場合であっても、第3振動板53が導電性を有すると、第1電極60以外の部分で第3振動板53が圧電体層70に電界を印加してしまうため、第3振動板53は、絶縁性を有する材料が好ましい。
【0041】
このような振動板50の-Z方向側の面には、振動板50を撓み変形させて圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧電アクチュエーター300が設けられている。圧電アクチュエーター300は、振動板50側である+Z方向側から-Z方向側に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。圧電アクチュエーター300が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段となっている。このような圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非活性部と称する。すなわち、活性部310は、圧電体層70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分を言う。本実施形態では、凹部である圧力室12毎に活性部310が形成されている。つまり、圧電アクチュエーター300には複数の活性部310が形成されていることになる。そして、一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60が個別電極を構成し、第2電極80が共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。この圧電アクチュエーター300のうち、圧力室12にZ軸で対向する部分が可撓部となり、圧力室12の外側部分が非可撓部となる。
【0042】
具体的には、第1電極60は、図2及び図3に示すように、圧力室12毎に切り分けられて活性部310毎に独立する個別電極を構成する。第1電極60は、+X方向において、圧力室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、+X方向において、第1電極60の端部は、圧力室12に対向する領域の内側に位置している。また、図3に示すように、第1電極60のY軸において、ノズル21側の端部は、圧力室12よりも外側に配置されている。この第1電極60のY軸において圧力室12よりも外側に配置された端部に、引き出し配線である個別リード電極91が接続されている。
【0043】
このような第1電極60としては、導電性を有する材料であり、例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)、チタンタングステン(TiW)等が挙げられる。
【0044】
圧電体層70は、図2図4に示すように、+Y方向の幅が所定の幅で、+X方向に亘って連続して設けられている。圧電体層70の+Y方向の幅は、圧力室12の長手方向である+Y方向の長さよりも長い。このため、圧力室12の+Y方向及び-Y方向の両側では、圧電体層70は、圧力室12に対向する領域の外側まで延設されている。このような圧電体層70のY軸においてノズル21とは反対側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60のノズル21とは反対側の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側に位置しており、第1電極60のノズル21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。なお、第1電極60の圧電体層70の外側まで延設された端部には、上述したように金(Au)等からなる個別リード電極91が接続されている。
【0045】
また、圧電体層70には、各隔壁11に対応する凹部71が形成されている。この凹部71の+X方向の幅は、隔壁11の幅よりも広くなっている。また、凹部71は、圧電体層70及び第3振動板53を厚さ方向である+Z方向に貫通して設けられている。すなわち、圧電体層70は、第3振動板53と+X方向の幅が同じ幅で設けられており、第3振動板53は、+X方向の幅が凹部71によって規定されている。つまり、凹部71の+X方向の幅を、隔壁11の幅よりも大きくすることで、振動板50に第1振動板51、第2振動板52及び第3振動板53が積層された中央部P2と、第3振動板53が積層されずに第1振動板51及び第2振動板52が積層された縁部P1と、を形成している。このように凹部71を設けることで、振動板50の圧力室12の+X方向及び-X方向の端部に対向する部分、所謂、振動板50の腕部の剛性が抑えられるため、圧電アクチュエーター300を良好に変位させることができる。また、上述のように、圧電体層70は、振動板50の第3振動板53が形成された中央部P2のみに設け、第3振動板53が形成されていない縁部P1に設けられていない。このため、縁部P1に第3振動板53が形成されていなくても、圧電体層70の成分が第2振動板52、第1振動板51及び流路形成基板10に拡散するのを抑制することができる。
【0046】
なお、上述した圧力室12の内壁に設けられた流路保護膜13のヤング率は、第3振動板53のヤング率よりも小さいことが好ましい。本実施形態では、流路保護膜13として用いた五酸化タンタルのヤング率は130GPa程度であり、第3振動板53として用いた二酸化ジルコニウムのヤング率は210GPa程度である。このように流路保護膜13のヤング率を、第3振動板53のヤング率よりも小さくすることで、振動板50の変位低下を抑制することができる。
【0047】
このような圧電体層70は、一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。本実施形態では、圧電材料としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT;Pb(Zr,Ti)O)を用いている。PZTを圧電材料に用いることで、圧電定数d31が比較的大きな圧電体層70が得られる。
【0048】
一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物では、Aサイトには酸素が12配位しており、Bサイトには酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。本実施形態では、Aサイトに鉛(Pb)が位置し、Bサイトにジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)が位置している。
【0049】
圧電材料は、上記のPZTに限定されない。AサイトやBサイトに他の元素が含まれていてもよい。例えば、圧電材料は、チタン酸ジルコン酸バリウム(Ba(Zr,Ti)O)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)、シリコンを含むニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O)等のペロブスカイト材料であってもよい。
【0050】
その他、圧電材料は、Pbの含有量を抑えた材料、いわゆる低鉛系材料、又はPbを使用しない材料、いわゆる非鉛系材料であってもよい。圧電材料として低鉛系材料を使用すればPbの使用量を低減することができる。また、圧電材料として非鉛系材料を使用すれば、Pbを使用せずに済む。よって、圧電材料として低鉛系材料や非鉛系材料の使用により、環境負荷を低減することができる。
【0051】
非鉛系圧電材料として、例えば、鉄酸ビスマス(BFO;BiFeO)を含むBFO系材料が挙げられる。BFOでは、Aサイトにビスマス(Bi)が位置し、Bサイトに鉄(Fe)が位置している。BFOに、他の元素が添加されていてもよい。例えば、BFOに、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、クロム(Cr)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
【0052】
また、非鉛系圧電材料の他の例として、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN;KNaNbO)を含むKNN系材料が挙げられる。KNNに、他の元素が添加されていてもよい。たとえば、KNNに、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、及びユウロピウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
【0053】
圧電材料には、元素の一部欠損した組成を有する材料、元素の一部が過剰である組成を有する材料、及び元素の一部が他の元素に置換された組成を有する材料も含まれる。圧電体層70の基本的な特性が変わらない限り、欠損・過剰により化学量論の組成からずれた材料や、元素の一部が他の元素に置換された材料も、本実施形態に係る圧電材料に含まれる。もちろん、本実施形態で使用可能な圧電材料は、上述したようなPb、Bi、Na、K等を含む材料に限定されない。
【0054】
第2電極80は、図2図4に示すように、圧電体層70の第1電極60とは反対側である-Z方向側に連続して設けられており、複数の活性部310に共通する共通電極を構成する。第2電極80は、+Y方向が所定の幅となるように、+X方向に亘って連続して設けられている。また、第2電極80は、凹部71の内面、すなわち、圧電体層70の凹部71の側面上及び凹部71の底面である第2振動板52上にも設けられている。もちろん、第2電極80は、凹部71の内面の一部のみに設けるようにしてもよく、凹部71の内面の全面に亘って設けないようにしてもよい。
【0055】
また、第1電極60からは、引き出し配線である個別リード電極91が引き出されている。また、第2電極80からは引き出し配線である共通リード電極92が引き出されている。これら個別リード電極91及び共通リード電極92の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板120が接続されている。配線基板120は、圧電アクチュエーター300を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動回路121が実装されている。
【0056】
このような圧電アクチュエーター300が形成された流路形成基板10の-Z方向側の面には、図1及び図3に示すように、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護する空間である保持部31を有する。保持部31は、+X方向に並んで配置された圧電アクチュエーター300の列毎に独立して設けられたものであり、+Y方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、+Y方向に並んで配置された2つの保持部31の間に+Z方向に貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別リード電極91及び共通リード電極92の端部は、この貫通孔32内に露出するように延設され、個別リード電極91及び共通リード電極92と配線基板120とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。
【0057】
また、図3に示すように、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。本実施形態では、ケース部材40は、連通板15に接合されている。また、特に図示していないが、ケース部材40と保護基板30とも接合されている。
【0058】
このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース部材40と流路形成基板10とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40と流路形成基板10とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の並んで配置された方向である+X方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、+X方向に並んで配置されている。
【0059】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の液体噴射面20a側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
【0060】
以上説明したように、本発明の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1は、圧力室12と、第1振動板51、第2振動板52及び第3振動板53を具備する振動板50と、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を具備する圧電アクチュエーター300と、がこの順に積層されている。また、インクジェット式記録ヘッド1は、積層方向である+Z方向からの平面視において圧力室12が第1方向である+X方向に複数並設されている。また、インクジェット式記録ヘッド1は、+X方向において、第1振動板51と第2振動板52とに、圧電体層70と第3振動板53とが積層された部分である中央部P2と、圧電体層70と第3振動板53とが積層されていない部分である縁部P1とが設けられている。また、インクジェット式記録ヘッド1は、第1振動板51と第2振動板52とは、一方が圧縮応力を有し、他方が引張応力を有しする。そして、インクジェット式記録ヘッド1は、第3振動板53のヤング率は、第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも大きい。
【0061】
このように、振動板50に第1振動板51、第2振動板52、第3振動板53が積層された中央部P2と、第3振動板53が積層されていない縁部P1とを設けることで、振動板50の変位量の向上、すなわち、比較的小さな電圧で大きな変位を得ることができる。特に、第3振動板53のヤング率を第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも大きくすることで、振動板50の第3振動板53が設けられていない部分の変位量を向上することができ、インク滴の重量を大きくすることや、インク滴の飛翔速度を向上することができる。
【0062】
また、第1振動板51と第2振動板52との一方が圧縮応力を有し、他方が引張応力を有するため、振動板50の第3振動板53が設けられていない部分において応力バランスを取ることができるため、振動板50の変位時に振動板50が破壊されるのを抑制することができる。
【0063】
さらに、振動板50に第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも大きなヤング率を有する第3振動板53を設けることで、振動板50の共振周波数を向上して、駆動周波数を向上し、インク滴の連続噴射を短時間で行うことができる。一般的に変位量と共振周波数とはトレードオフの関係となっているため、振動板50の変位量を大きくするためにヤング率が小さい材料を用いると、共振周波数が小さくなる。逆に、振動板50の共振周波数を大きくするためにヤング率が大きい材料を用いると、振動板50の変位量が小さくなり、噴射されるインク滴の重量が小さくなることや、振動板50を変位させるために圧電アクチュエーター300に大きな電圧を印加する必要がある。本実施形態では、第3振動板53が形成された部分と、第3振動板53が形成されていない部分とを設けることで、振動板50の変位量を大きくすると共に共振周波数を大きくすることができる。
【0064】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、圧電体層70及び第3振動板53が積層されていない部分が、第1方向である+X方向の圧力室12の両端部に対応する部分である縁部P1であることが好ましい。これによれば、振動板50の圧力室12の+X方向及び-X方向の両端部に対向する部分、所謂、振動板50の腕部の剛性が抑えられるため、圧電アクチュエーター300を良好に変位させることができる。
【0065】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、第1振動板51は、熱酸化膜で構成され、複数の圧力室12を隔てる隔壁11が単結晶シリコンで構成され、第1振動板51と隔壁11とが接していることが好ましい。このように単結晶シリコンの隔壁11と接する第1振動板51を熱酸化膜で構成することで、隔壁11と第1振動板51との密着性を向上して、剥離等の不具合が発生するのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、圧力室12の内壁には、流路保護膜13が形成されており、流路保護膜13のヤング率は、第3振動板53のヤング率よりも小さいことが好ましい。このように流路保護膜13のヤング率を第3振動板53のヤング率よりも小さくすることで、流路保護膜13によって振動板50の変位が著しく低下するのを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、圧電体層70が鉛を含み、第3振動板53がジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、又は、ケイ素を含む酸窒化物であり、第1振動板51と第2振動板52との少なくとも一方が酸化ケイ素、又は、ケイ素を含むことが好ましい。このように、圧電体層70と第2振動板52との間に、ジルコニウムを含む酸化物、ケイ素を含む窒化物、又は、ケイ素を含む酸窒化物の第3振動板53を設けることで、圧電体層70に含まれる鉛が第3振動板53よりも第2振動板52側に拡散するのを抑制することができる。また、第3振動板53が形成されていない部分である縁部P1には、圧電体層70も形成されていないため、圧電体層70に含まれる鉛が第2振動板52及び第1振動板51に拡散するのを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、第1振動板51と第2振動板52の少なくとも一方が非晶質であることが好ましい。第1振動板51及び第2振動板52を非晶質とすることで、振動板50を変位し易くして、割れ難くすることができる。
【0069】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、第1振動板51が圧縮応力であり、第2振動板52が引張応力であることが好ましい。このように、第1振動板51が圧縮応力を有し、第2振動板52が引張応力を有することで、振動板50が圧力室12側に凸状に変位し易く変位量を比較的大きくすることができる。したがって、ノズル21から噴射されるインク滴の重量を大きくすることやインク滴の飛翔速度を速くすることができる。
【0070】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、第1振動板51の厚さd1は、第2振動板52の厚さd2よりも大きいことが好ましい。これは、一般的に圧縮応力膜の方が引張応力膜に比べて変位し易い。このため、圧縮応力である第1振動板51の厚さd1を、引張応力である第2振動板52の厚さd2よりも厚くすることで、振動板50の変位をより大きくすることができる。
【0071】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、第1振動板51が引張応力であり、第2振動板52が圧縮応力であることが好ましい。このように、第1振動板51が引張応力を有し、第2振動板52が圧縮応力を有することで、振動板50が圧力室12側とは反対側である-Z方向に凸状に変位し易く変位量を比較的大きくすることができる。したがって、ノズル21から噴射されるインク滴をメニスカスから引きちぎり易くすることができる。
【0072】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、第2振動板52の厚さd2は、第1振動板51の厚さd1よりも大きいことが好ましい。これは、一般的に圧縮応力膜の方が引張応力膜に比べて変位し易い。このため、圧縮応力である第2振動板52の厚さd2を、引張応力である第1振動板51の厚さd1よりも厚くすることで、振動板50の変位をより大きくすることができる。
【0073】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0074】
図7に示すように、凹部71が、第2振動板52の厚さ方向である+Z方向の途中に達する深さで形成されている。すなわち、凹部71の+Z方向の底面には、第2振動板52の一部が残留するように形成されている。つまり、凹部71の底面には、第1振動板51と第2振動板52の厚さ方向の一部とが形成されている。
【0075】
このような凹部71及び振動板50は、例えば、圧電体層70及び第3振動板53をエッチングにより形成する際に、オーバーエッチングすることにより第2振動板52の一部を同時に除去することで形成することができる。
【0076】
このような構成であっても、上述した実施形態1と同様に、振動板50に第1振動板51、第2振動板52、第3振動板53が積層された中央部P2と、第3振動板53が積層されていない縁部P1とを設けることで、振動板50の変位量の向上、すなわち、比較的小さな電圧で大きな変位を得ることができる。特に、第3振動板53のヤング率を第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも大きくすることで、振動板50の第3振動板53が設けられていない部分の変位量を向上することができ、インク滴の重量を大きくすることや、インク滴の飛翔速度を向上することができる。
【0077】
また、第1振動板51と第2振動板52との一方が圧縮応力を有し、他方が引張応力を有するため、振動板50の第3振動板53が設けられていない部分において応力バランスを取ることができ、振動板50の変位時に振動板50が破壊されるのを抑制することができる。
【0078】
さらに、振動板50に第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも大きなヤング率を有する第3振動板53を設けることで、振動板50の共振周波数を向上して、駆動周波数を向上し、インク滴の連続噴射を短時間で行うことができる。一般的に変位量と共振周波数とはトレードオフの関係となっているため、振動板50の変位量を大きくするためにヤング率が小さい材料を用いると、共振周波数が小さくなる。逆に、振動板50の共振周波数を大きくするためにヤング率が大きい材料を用いると、振動板50の変位量が小さくなり、噴射されるインク滴の重量が小さくなることや、振動板50を変位させるために圧電アクチュエーター300に大きな電圧を印加する必要がある。本実施形態では、第3振動板53が形成された部分と、第3振動板53が形成されていない部分とを設けることで、振動板50の変位量を大きくすると共に共振周波数を大きくすることができる。
【0079】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1は、圧電体層70及び第3振動板53が積層されている中央部P2に比べて、圧電体層70及び第3振動板53が積層されていない縁部P1で、第1振動板51と第2振動板52との少なくとも一方が薄くなっている。
【0080】
このように、第3振動板53及び圧電体層70が形成されていない部分である縁部P1で、第1振動板51及び第2振動板52の少なくとも一方の厚さを薄くすることで、振動板50の変位量をさらに向上することができる。なお、本実施形態では、縁部P1において、第2振動板52の厚さを薄くするようにしたが、特にこれに限定されず、縁部P1において第1振動板51の厚さを中央部P2に比べて薄くするようにしてもよい。
【0081】
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部平面図である。図9は、図8のC-C′線断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0082】
図示するように、流路形成基板10には、複数の圧力室12がX方向に沿って並設されている。圧力室12は、+Z方向に見た形状、すなわち、+Z方向の開口形状は、+Y方向が長手方向となる長方形状を基本として、長手方向の両端部を半円形状とした、所謂、角丸長方形状(別名、トラック形状とも言う)となっている。つまり、圧力室12は、+Z方向に見て+Y方向が長手方向となり、+X方向が短手方向となる長尺形状を有する。もちろん、圧力室12を+Z方向に見た形状は、上述した実施形態1と同様に特に限定されるものではない。
【0083】
流路形成基板10の-Z方向側の面には、振動板50と圧電アクチュエーター300とが形成されている。
【0084】
振動板50は、第1振動板51と第2振動板52と第3振動板53とがこの順に-Z方向に向かって積層されている。
【0085】
圧電アクチュエーター300の活性部310は、振動板50の可撓領域Pの縁部P1に設けられている。さらに、活性部310は、縁部P1よりも外側、すなわち、圧力室12よりも外側まで設けられている。さらに、活性部310は、中央部P2には設けられていない。
【0086】
そして、第3振動板53及び圧電体層70は、活性部310が設けられた領域、すなわち、縁部P1と縁部P1よりも外側、すなわち、圧力室12よりも外側とに設けられている。また、第3振動板53及び圧電体層70は、中央部P2に設けられていない。つまり、中央部P2が、第3振動板53と圧電体層70とが形成されていない領域となっている。
【0087】
このような構成であっても、上述した実施形態と同様に、振動板50に第1振動板51、第2振動板52、第3振動板53が積層された縁部P1と、第3振動板53が積層されていない中央部P2とを設けることで、振動板50の変位量の向上、すなわち、比較的小さな電圧で大きな変位を得ることができる。特に、第3振動板53のヤング率を第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも大きくすることで、振動板50の第3振動板53が設けられていない部分である中央部P2の変位量を向上することができ、インク滴の重量を大きくすることや、インク滴の飛翔速度を向上することができる。
【0088】
また、第1振動板51と第2振動板52との一方が圧縮応力を有し、他方が引張応力を有するため、振動板50の第3振動板53が設けられていない部分において応力バランスを取ることができるため、振動板50の変位時に振動板50が破壊されるのを抑制することができる。
【0089】
さらに、振動板50に第1振動板51及び第2振動板52のヤング率よりも大きなヤング率を有する第3振動板53を設けることで、振動板50の共振周波数を向上して、駆動周波数を向上し、インク滴の連続噴射を短時間で行うことができる。一般的に変位量と共振周波数とはトレードオフの関係となっているため、振動板50の変位量を大きくするためにヤング率が小さい材料を用いると、共振周波数が小さくなる。逆に、振動板50の共振周波数を大きくするためにヤング率が大きい材料を用いると、振動板50の変位量が小さくなり、噴射されるインク滴の重量が小さくなることや、振動板50を変位させるために圧電アクチュエーター300に大きな電圧を印加する必要がある。本実施形態では、第3振動板53が形成された部分と、第3振動板53が形成されていない部分とを設けることで、振動板50の変位量を大きくすると共に共振周波数を大きくすることができる。
【0090】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1では、圧電体層70及び第3振動板53が積層されていない部分が、第1方向である+X方向の圧力室12の中央に対応する部分である中央部P2である。
【0091】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0092】
例えば、上述した実施形態1では、第1電極60を活性部310毎に独立した個別電極とし、第2電極80を複数の活性部310に共通する共通電極としたが、これに限定されない。
【0093】
また、上述した各実施形態では、可撓領域P内の+X方向において、第1振動板51及び第2振動板52に対して第3振動板53及び圧電体層70が設けられた部分と、第3振動板53及び圧電体層70が設けられていない部分とを設けるようにしたが、これに加えて、例えば可撓領域P内の+Y方向においても、同様に第1振動板51及び第2振動板52に対して第3振動板53及び圧電体層70が設けられた部分と、第3振動板53及び圧電体層70が設けられていない部分とを設けるようにしてもよい。実施形態1及び2の記録ヘッド1では、例えば、Y軸に沿った方向の両端部、すなわち、+Y方向の端部及び-Y方向の端部に第3振動板53及び圧電体層70を設けずに、中央部に第3振動板53及び圧電体層70を設けるようにすればよい。また、実施形態3の記録ヘッドでは、例えば、+Y方向の端部及び-Y方向の端部に第3振動板53及び圧電体層70を設け、中央部に第3振動板53及び圧電体層70を設けないようにすればよい。もちろん、Y軸に沿った方向において第3振動板53及び圧電体層70を設けた部分と設けない部分とは、これに限定されるものではない。
【0094】
また、これら各実施形態の記録ヘッド1は、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置に搭載される。図10は、一実施形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0095】
図10に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、記録ヘッド1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、キャリッジ3に搭載されている。この記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5の軸方向に移動自在に設けられている。
【0096】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
【0097】
このようなインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1に対して記録シートSを+X方向に搬送し、キャリッジ3を記録シートSに対してY方向に往復移動させながら、記録ヘッド1からインク滴を吐出させることで記録シートSの略全面に亘ってインク滴の着弾、所謂、印刷が実行される。
【0098】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向であるY方向に往復移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向であるX方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0099】
なお、上記実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0100】
I…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、1…インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…カートリッジ、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、6…駆動モーター、7…タイミングベルト、8…搬送ローラー、10…流路形成基板、11…隔壁、12…圧力室、13…流路保護膜、15…連通板、16…ノズル連通路、17…第1マニホールド部、18…第2マニホールド部、19…供給連通路、20…ノズルプレート、20a…液体噴射面、21…ノズル、30…保護基板、31…保持部、32…貫通孔、40…ケース部材、41…凹部、42…第3マニホールド部、43…接続口、44…導入口、45…コンプライアンス基板、46…封止膜、47…固定基板、48…開口部、49…コンプライアンス部、50…振動板、51…第1振動板、52…第2振動板、53…第3振動板、60…第1電極、70…圧電体層、71…凹部、80…第2電極、91…個別リード電極、92…共通リード電極、100…マニホールド、120…配線基板、121…駆動回路、300…圧電アクチュエーター、310…活性部、P…可撓領域、P1…縁部、P2…中央部、S…記録シート
図1
図2
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図10