(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 305
(21)【出願番号】P 2021013531
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】野澤 大
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-167449(JP,A)
【文献】特開2015-182341(JP,A)
【文献】特開2018-099835(JP,A)
【文献】特開2020-082594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を含み、前記圧電素子が駆動することで液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
第1制御信号を出力する第1出力端子と、第2制御信号を出力する第2出力端子とを有する集積回路と、
前記第1制御信号が入力される第1トランジスターと、
前記第2制御信号が入力される第2トランジスターと、
一端が前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターと電気的に接続し、他端が前記吐出ヘッドと電気的に接続しているコイルと、
基板と、
を有し、
前記集積回路、前記第1トランジスター、前記第2トランジスター、及び前記コイルは、前記基板に設けられ、
前記第1トランジスターは、表面実装型のフラットノンリードパッケージであって、第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて第2端子と第3端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、
前記第2トランジスターは、表面実装型のフラットノンリードパッケージであって、第4端子に入力される前記第2制御信号に応じて第5端子と第6端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、
前記第1出力端子と前記第1端子との最短距離は、前記第1出力端子と前記第2端子との最短距離よりも小さく、
前記第2出力端子と前記第4端子との最短距離は、前記第2出力端子と前記第5端子との最短距離よりも小さい、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記基板は、前記第1出力端子と前記第1端子とを電気的に接続する信号配線を含み、
前記集積回路及び前記第1トランジスターと前記信号配線とは、前記基板の同一配線層
に設けられている、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記駆動信号出力回路は、D級増幅回路を含み、
前記第1トランジスターと前記第2トランジスターとは、復調前のデジタル信号を増幅するデジタル増幅部を構成し、
前記コイルは、前記デジタル増幅部の出力を復調し前記駆動信号を出力するローパスフィルターを構成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1トランジスターの駆動周波数は、1MHz以上8MH以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1トランジスターの駆動周波数は、1MHz以上4MH以下である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記吐出ヘッドは、A4サイズ以上の媒体に液体の吐出が可能なラインヘッドである、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記吐出ヘッドは、5000個以上の前記圧電素子を含み、
前記駆動信号出力回路は、前記5000個以上の前記圧電素子に前記駆動信号を供給する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1端子は、前記第1トランジスターの角部に位置している、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第3端子には、前記駆動信号の高電位を規定する高電位電圧が供給され、
前記第5端子には、グラウンド電位が供給され、
前記第1端子と前記第1出力端子との最短距離は、前記第
4端子と前記第2出力端子との最短距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第2端子と前記第6端子とは向かい合って位置し、且つ前記第2端子と前記第6端子との間には、前記第1端子、前記第3端子、前記第4端子、及び前記第5端子が位置しないように、前記第1トランジスターと前記第2トランジスターとが位置している、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記第1トランジスターは、第1辺と、前記第1辺と異なる第2辺とを含み、
前記第1端子と前記第2端子とは、前記第1辺に沿って並んで位置し、
前記第3端子は、前記第2辺に沿って位置している、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記第1端子と前記基板とが接触する第1接触部の面積は、前記第2端子が前記基板と接触する第2接触部の面積よりも小さく、
前記第2端子と前記基板とが接触する前記第2接触部の面積は、前記第3端子が前記基板と接触する第3接触部の面積よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体としてのインクを吐出することで、媒体に画像や文書を印刷するインクジェットプリンターには、例えばピエゾ素子などの圧電素子を用いたものが知られている。圧電素子は、ヘッドユニットにおいて複数のノズルのそれぞれに対応して設けられている。そして、それぞれの圧電素子が駆動信号に従って動作することで、対応するノズルから所定のタイミングで所定量のインクが吐出される。これにより、媒体にドットが形成される。このような圧電素子は、電気的にみればコンデンサーのような容量性負荷である。そのため、各ノズルに対応する圧電素子を動作させるためには十分な電流を供給する必要があり、インクジェットプリンター等は、圧電素子を動作させるためには十分な電流を供給可能な駆動信号を出力する例えば増幅回路等を有する駆動信号出力回路を備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路(駆動信号出力回路)であって、消費電力の低減が可能なD級増幅回路を用いた駆動回路を備えた液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の液体吐出速度のさらなる向上と、液体吐出装置の小型化との市場要求に対して、液体吐出装置が有する吐出部の数は日々増加し、吐出部の数の増加に伴って、吐出部を駆動する駆動信号出力回路が駆動信号とともに出力する電流量も増加している。しかしならが、駆動信号出力回路が出力する電流量が増加すると、駆動信号出力回路で生じる発熱が増加するとともに、駆動信号出力回路の動作の安定性が低下し、その結果、駆動信号の波形精度が低下するおそれがある。さらに、駆動信号出力回路が出力する電流量の増加に伴って、電流が流れる電流経路の配線インピーダンスの影響が大きくなり、その結果、駆動信号出力回路の動作の安定性が低下するとともに、駆動信号の波形精度が低下するおそれもある。
【0006】
すなわち、近年の液体吐出速度のさらなる向上と、液体吐出装置の小型化との市場要求に対して、液体吐出装置が有する吐出部の数を増加した場合、駆動信号出力回路の動作の安定性が低下し、駆動信号の波形精度が低下するおそれがあった。このような問題に対して、特許文献1に記載の駆動信号出力回路を備えた液体吐出装置では、十分ではなく、さらなる改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
圧電素子を含み、前記圧電素子が駆動することで液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
第1制御信号を出力する第1出力端子と、第2制御信号を出力する第2出力端子とを有
する集積回路と、
前記第1制御信号が入力される第1トランジスターと、
前記第2制御信号が入力される第2トランジスターと、
一端が前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターと電気的に接続し、他端が前記吐出ヘッドと電気的に接続しているコイルと、
基板と、
を有し、
前記集積回路、前記第1トランジスター、前記第2トランジスター、及び前記コイルは、前記基板に設けられ、
前記第1トランジスターは、表面実装型のフラットノンリードパッケージであって、第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて第2端子と第3端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、
前記第2トランジスターは、表面実装型のフラットノンリードパッケージであって、第4端子に入力される前記第2制御信号に応じて第5端子と第6端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、
前記第1出力端子と前記第1端子との最短距離は、前記第1出力端子と前記第2端子との最短距離よりも小さく、
前記第2出力端子と前記第4端子との最短距離は、前記第2出力端子と前記第5端子との最短距離よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。
【
図5】駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。
【
図6】選択制御回路及び選択回路の構成を示す図である。
【
図7】デコーダーにおけるデコード内容を示す図である。
【
図9】選択制御回路及び選択回路の動作を説明するための図である。
【
図11】トランジスターを平面視した場合を示す図である。
【
図12】トランジスターを低面視した場合を示す図である。
【
図13】駆動信号出力回路の構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.液体吐出装置の構造
本実施形態における液体吐出装置1の概略構造について説明を行う。
図1は、液体吐出装置1の概略構造を示す図である。
図1に示すように、液体吐出装置1は、液体容器5、制御ユニット10、ヘッドユニット2、及び搬送ユニット40を備える。
【0011】
液体容器5には、媒体Pに吐出される液体の一例としてのインクが貯留されている。具体的には、液体容器5は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの4色のインクが個別に貯留される4個の容器を含む。この液体容器5に貯留されているインクが、チューブ等を介して、ヘッドユニット2に供給される。なお、液体容器5においてインクが
貯留される容器の数は4個に限られるものではない。また、液体容器5は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックK以外の色彩のインクが貯留される容器を含んでもよい。さらに、液体容器5は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのいずれかの容器を複数個含んでもよい。
【0012】
制御ユニット10は、ヘッドユニット2、及び搬送ユニット40を含む液体吐出装置1の動作を制御する。このような制御ユニット10は、液体吐出装置1の各種動作を制御するためのSoC(System on Chip)や、液体吐出装置1に関する各種情報を記憶する記憶回路、液体吐出装置1の外部に設けられたホストコンピューター等の外部機器との通信を行うためのインターフェース回路などを備える。
【0013】
制御ユニット10は、液体吐出装置1の外部に設けられた外部機器から入力される画像信号を受信する。そして、制御ユニット10は、受信した画像信号に対して画像処理を含む所定の信号処理を施すことで、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKを生成する。そして、制御ユニット10は、生成した印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKをヘッドユニット2に出力する。また、制御ユニット10は、ヘッドユニット2が有するプリントヘッド20を駆動するための後述する駆動信号COMA,COMBの基となる基駆動信号dA,dBを生成する。そして、制御ユニット10は、生成した基駆動信号dA,dBをヘッドユニット2に出力する。
【0014】
ヘッドユニット2は、一列に並んで設けられた複数のプリントヘッド20を備える。ヘッドユニット2は、液体容器5から供給されたインクを複数のプリントヘッド20のそれぞれに分配する。また、ヘッドユニット2は、制御ユニット10から入力される基駆動信号dA,dBに基づいて、プリントヘッド20を駆動するための後述する駆動信号COMA,COMBを生成する。そして、ヘッドユニット2は、制御ユニット10から入力される印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKにより規定されるタイミングで駆動信号COMA,COMBをプリントヘッド20に供給するか否かを切り替える。これにより、複数のプリントヘッド20は、所定のタイミングで所定の量のインクを吐出する。ここで、
図1には、6個のプリントヘッド20を図示しているが、ヘッドユニット2が備えるプリントヘッド20の数は、6個に限るものではなく、5個以下、又は7個以上であってもよい。
【0015】
また、制御ユニット10は、搬送ユニット40に対して搬送制御信号TCを出力する。搬送ユニット40は、制御ユニット10から入力される搬送制御信号TCに基づいて、媒体Pを搬送する。このような搬送ユニット40は、例えば、媒体Pを搬送するための不図示のローラーや、当該ローラーを回転させるモーター等を含んで構成されている。
【0016】
以上のように構成された液体吐出装置1では、制御ユニット10が、ホストコンピューター等の外部機器から入力される画像信号に基づいて印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKを生成し、生成した印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKを用いてヘッドユニット2から媒体Pに吐出されるインクの吐出タイミング及び量を制御するとともに、搬送ユニット40に搬送制御信号TCを出力することで、搬送ユニット40による媒体Pの搬送を制御する。これにより、液体吐出装置1は、媒体Pの所望の位置にインクを着弾させることが可能となり、その結果、媒体Pに所望の画像が形成される。すなわち、本実施形態における液体吐出装置1は、媒体Pが搬送される搬送方向と交差する方向において並設された複数のプリントヘッド20がラインヘッドを構成し、搬送される媒体Pに対してインクを吐出するとこと、媒体Pに所望の画像を形成する所謂ライン型のインクジェットプリンターである。
【0017】
なお、液体吐出装置1は、ラインヘッドを備えたライン型のインクジェットプリンターに限るものではなく、プリントヘッド20が主走査方向に沿って往復移動なキャリッジに搭載され、媒体Pの搬送に伴いキャリッジが主走査方向に沿って媒体Pを操作するとともに、インクを吐出する所謂シリアル型のインクジェットプリンターであってもよい。
【0018】
2.液体吐出装置の機能構成
図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。
図2に示すように、液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット2、及び搬送ユニット40を有する。
【0019】
制御ユニット10は、制御回路100、搬送モータードライバー45、及び電圧出力回路110を有する。
【0020】
制御回路100は、ホストコンピューター等の外部機器から画像信号が供給されることで、当該画像信号に応じた各種制御信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0021】
具体的には、制御回路100は、画像信号が供給されることにより媒体Pへの印刷処理が実行されると、制御信号CTRを生成し搬送モータードライバー45に出力する。搬送モータードライバー45は、入力される制御信号CTRに従って搬送ユニット40が有する搬送モーター41を駆動する搬送制御信号TCを生成する。そして、搬送モータードライバー45は、搬送制御信号TCを搬送モーター41に出力する。これにより、搬送モーター41が駆動し、搬送モーター41の駆動に応じて媒体Pが搬送される。すなわち、媒体Pの搬送が制御される。
【0022】
また、制御回路100は、外部機器から供給された画像信号に基づいてクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び基駆動信号dA,dBを生成し、ヘッドユニット2に出力する。
【0023】
電圧出力回路110は、例えば42Vの直流電圧の電圧VHVを生成し、ヘッドユニット2に出力する。この電圧VHVは、ヘッドユニット2が有する各種構成の電源電圧等として用いられる。また、電圧出力回路110が出力する電圧VHVは、制御ユニット10、及び搬送ユニット40に含まれる各種構成の電源電圧として用いられてもよい。なお、電圧出力回路110は、42Vの直流電圧である電圧VHVに加えて、5Vの直流電圧や3.3Vの直流電圧等、複数の直流電圧を生成し、対応する構成に供給してもよい。
【0024】
ヘッドユニット2は、駆動回路50、及び複数のプリントヘッド20を有する。
【0025】
駆動回路50は、駆動信号出力回路51a,51bを含む。駆動信号出力回路51aには、デジタルの基駆動信号dAと電圧VHVとが入力される。そして、駆動信号出力回路51aは、入力される基駆動信号dAをデジタル/アナログ変換し、変換されたアナログ信号を電圧VHVに応じた電圧値にD級増幅することで駆動信号COMAを生成する。そして、駆動信号出力回路51aは、生成した駆動信号COMAをプリントヘッド20に出力する。同様に、駆動信号出力回路51bには、デジタルの基駆動信号dBと電圧VHVとが入力される。駆動信号出力回路51bは、入力される基駆動信号dBをデジタル/アナログ変換し、変換されたアナログ信号を電圧VHVに応じた電圧値にD級増幅することで駆動信号COMBを生成する。そして、駆動信号出力回路51bは、生成した駆動信号COMBをプリントヘッド20に出力する。
【0026】
すなわち、基駆動信号dAは、駆動信号COMAの基となる信号であって、駆動信号COMAの波形を規定する信号であり、基駆動信号dBは、駆動信号COMBの基となる信
号であって、駆動信号COMBの波形を規定する信号である。ここで、基駆動信号dA,dBは、駆動信号COMA,COMBの波形を規定することが可能な信号であればよく、アナログの信号であってもよい。なお、
図2では、駆動回路50がヘッドユニット2に含まれるとして図示しているが、駆動回路50は、制御ユニット10に含まれてもよく、この場合、制御ユニット10で生成された駆動信号COMA,COMBがヘッドユニット2に供給される。この駆動信号出力回路51a,51bの構成及び動作の詳細については後述する。
【0027】
さらに、駆動回路50は、電圧値が5.5V、6V等で一定の直流電圧である基準電圧信号VBSを生成し、プリントヘッド20に出力する。この基準電圧信号VBSは、プリントヘッド20が有する圧電素子60の駆動の基準電位として機能する。したがって、基準電圧信号VBSの電位は、5.5V、6Vに限られるものではなく、グラウンド電位であってもよい。
【0028】
複数のプリントヘッド20は、それぞれが選択制御回路210、複数の選択回路230、及び複数の選択回路230のそれぞれに対応する複数の吐出部600を含む。選択制御回路210は、制御回路100から供給されるクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とするための選択信号を生成し、複数の選択回路230のそれぞれに出力する。
【0029】
各選択回路230には、駆動信号COMA,COMBと、選択制御回路210が出力する選択信号とが入力される。選択回路230は、入力される選択信号に基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号COMA,COMBに基づく駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。
【0030】
複数の吐出部600は、それぞれが圧電素子60を含む。圧電素子60の一端には、対応する選択回路230から出力された駆動信号VOUTが供給される。また、圧電素子60の他端には、基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、一端に供給される駆動信号VOUTと、他端に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて駆動する。この圧電素子60の駆動に応じた量のインクが吐出部600から吐出される。
【0031】
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1は、圧電素子60を含み、圧電素子60が駆動することで液体の一例としてのインクを吐出する複数のプリントヘッド20と、圧電素子60を駆動する駆動信号VOUTの基となる駆動信号COMA,COMBを出力する駆動信号出力回路51a,51bと、を備える。
【0032】
特に本実施形態における液体吐出装置1では、インクの吐出速度のさらなる向上と、液体吐出装置1の小型化との市場要求に応えるが故に、1つの駆動回路50が出力する駆動信号COMA,COMBによって5000個以上の圧電素子60が駆動される場合を想定する。すなわち、ヘッドユニット2に含まれる複数のプリントヘッド20は、5000個以上の圧電素子60を含み、駆動信号出力回路51a,51bは、5000個以上の圧電素子60に駆動信号COMA,COMBを供給する。
【0033】
詳細には、液体吐出装置1におけるインクの吐出速度のさらなる向上と、液体吐出装置1の小型化との観点において、1つの駆動回路50が、媒体Pの幅以上に並設された吐出部600を駆動することが好ましい。この場合において、ヘッドユニット2が有するプリントヘッド20が、A4サイズ(210mm×297mm:8.27inch×11.69inch)の枚葉紙である媒体Pに対して、600dpiでインクの吐出が可能なように吐出部600が並設されたラインヘッドである場合、駆動回路50は、少なくとも「6
00個/inch×8.27inch=4962個」の吐出部600が有する圧電素子60を駆動することが求められる。さらに、液体吐出装置1では、媒体Pの搬送方向において一部の吐出部600が重複して設けられる場合があり、さらに、搬送ユニット40によって搬送される媒体Pの搬送曲がり等を考慮すると、駆動回路50が、少なくとも5000個以上の吐出部600を駆動することが求められる。すなわち、本実施形態における液体吐出装置1において、複数のプリントヘッド20は、A4サイズ以上の媒体Pにインクの吐出が可能なラインヘッドであって、駆動回路50に含まれる駆動信号出力回路51a,51bのそれぞれは、A4サイズ以上の媒体Pの幅以上に並設された5000個以上の圧電素子60を駆動する。
【0034】
ここで、駆動信号出力回路51aが駆動信号出力回路の一例であり、駆動信号出力回路51bが駆動信号出力回路の他の一例である。また、駆動信号出力回路51aが出力する駆動信号COMAが駆動信号の一例であり、駆動信号出力回路51bが出力する駆動信号COMBが駆動信号の他の一例であり、駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とすることにより生成される駆動信号VOUTもまた駆動信号の一例である。そして、複数のプリントヘッド20の内、駆動信号出力回路51aが出力する駆動信号COMAが供給されることでインクを吐出するプリントヘッド20が吐出ヘッドの一例である。
【0035】
3.吐出部の構成
次にプリントヘッド20が有する吐出部600の構成について説明する。
図3は、プリントヘッド20が有する複数の吐出部600の内の1つの吐出部600の概略構成を示す図である。
図3に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズル651を含む。
【0036】
キャビティー631には、リザーバー641から供給されるインクが充填している。また、リザーバー641には、液体容器5から不図示のインクチューブ、及び供給口661を経由してインクが導入される。すなわち、キャビティー631には、対応する液体容器5に貯留されているインクが充填している。
【0037】
振動板621は、
図3において上面に設けられた圧電素子60の駆動によって変位する。そして、振動板621の変位に伴って、インクが充填されるキャビティー631の内部容積が拡大、縮小する。すなわち、振動板621は、キャビティー631の内部容積を変化させるダイヤフラムとして機能する。
【0038】
ノズル651は、ノズルプレート632に設けられるとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。そして、キャビティー631の内部容積が変化することで、内部容積の変化に応じた量のインクが、ノズル651から吐出される。
【0039】
圧電素子60は、圧電体601を一対の電極611,612で挟んだ構造である。このような構造の圧電体601は、電極611,612により供給される電圧の電位差に応じて、電極611,612の中央部分が、振動板621とともに上下方向に撓む。具体的には、圧電素子60の電極611には、駆動信号VOUTが供給される。また、圧電素子60の電極612には、基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、駆動信号VOUTの電圧レベルが高くなると、上方向に撓み、駆動信号VOUTの電圧レベルが低くなると、下方向に撓む。
【0040】
以上のように構成された吐出部600では、圧電素子60が上方向に撓むことで、振動板621が変位し、キャビティー631の内部容積が拡大する。その結果、インクがリザーバー641から引き込まれる。一方、圧電素子60が下方向に撓むことで、振動板621が変位し、キャビティー631の内部容積が縮小する。その結果、縮小の程度に応じた
量のインクが、ノズル651から吐出される。すなわち、プリントヘッド20は、電極611と電極612とを含み、電極611と電極612との電位差により駆動する圧電素子60を有し、圧電素子60の駆動によりインクを吐出する。
【0041】
なお、圧電素子60は、
図3に示す構造に限られず、吐出部600からインクが吐出できる構造であればよい。すなわち、圧電素子60は、上述した屈曲振動の構成に限られず、例えば、縦振動を用いる構成でもよい。
【0042】
4.プリントヘッドの構成及び動作
次にプリントヘッド20の構成及び動作について説明する。前述の通り、プリントヘッド20は、駆動回路50から出力された駆動信号COMA,COMBの波形を、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に供給している。そこで、プリントヘッド20の構成及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号COMA,COMBの波形の一例、及び駆動信号VOUTの波形の一例について説明する。
【0043】
図4は、駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。
図4に示すように、駆動信号COMAは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1に配置された台形波形Adp1と、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T2に配置された台形波形Adp2とを連続させた波形を含む。台形波形Adp1は、ノズル651から、小程度の量のインクを吐出させるための波形であり、台形波形Adp2は、ノズル651から、小程度の量よりも多い中程度の量のインクを吐出させるための波形である。
【0044】
また、駆動信号COMBは、期間T1に配置された台形波形Bdp1と、期間T2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形を含む。台形波形Bdp1は、ノズル651からインクを吐出させない波形であり、ノズル651の開孔部付近のインクを微振動させて、インク粘度の増大を防止するための波形である。また、台形波形Bdp2は、台形波形Adp1と同様に、ノズル651から小程度の量のインクを吐出させる波形である。
【0045】
なお、台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のそれぞれの開始タイミング及び終了タイミングでの電圧は、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する波形となっている。また、期間T1と期間T2とからなる周期Taが、媒体Pに新たなドットを形成する印刷周期に相当する。
【0046】
ここで、
図4では、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とが同じ波形であるとして図示しているが、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とは異なる波形であってもよい。また、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合と、台形波形Bdp1が吐出部600に供給された場合とでは、ともに対応するノズル651から小程度の量のインクが吐出されるとして説明を行うが、異なる量のインクが吐出されてもよい。すなわち、駆動信号COMA,COMBの波形は、
図4に示す波形に限られるものではない。
【0047】
図5は、駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。
図5には、駆動信号VOUTの波形と、媒体Pに形成されるドットの大きさが「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」及び「非記録ND」のそれぞれの場合とを対比して示している。
【0048】
図5に示すように、媒体Pに大ドットLDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された台形
波形Adp2とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651から、小程度の量のインクと中程度の量のインクとが吐出される。したがって、媒体Pには、それぞれのインクが着弾し合体することで大ドットLDが形成される。
【0049】
媒体Pに中ドットMDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651から、小程度の量のインクが2回吐出される。したがって、媒体Pには、それぞれのインクが着弾し合体することで中ドットMDが形成される。
【0050】
媒体Pに小ドットSDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された電圧Vcで一定の波形とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651から、小程度の量のインクが吐出される。したがって、媒体Pには、このインクが着弾して小ドットSDが形成される。
【0051】
媒体Pにドットを形成しない非記録NDに対応する駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Bdp1と、期間T2に配置された電圧Vcで一定の波形とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTが吐出部600に供給された場合、周期Taにおいて、対応するノズル651の開孔部付近のインクが微振動するのみで、インクは吐出されない。したがって、媒体Pには、インクが着弾せずドットが形成されない。
【0052】
ここで、電圧Vcで一定の波形とは、駆動信号VOUTとして台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のいずれも選択されていない場合において、直前の電圧Vcが容量性負荷である圧電素子60に保持された電圧からなる波形である。したがって、駆動信号VOUTとして台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のいずれも選択されていない場合、電圧Vcが駆動信号VOUTとして吐出部600に供給されているといえる。
【0053】
以上のような駆動信号VOUTは、選択制御回路210及び選択回路230の動作により駆動信号COMA,COMBの波形が選択又は非選択されることにより生成される。
図6は、選択制御回路210及び選択回路230の構成を示す図である。
図6に示すように、選択制御回路210には、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKが入力される。選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、m個の吐出部600の各々に対応して設けられている。すなわち、選択制御回路210は、m個の吐出部600と同数のシフトレジスター212とラッチ回路214とデコーダー216との組を含む。
【0054】
印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期した信号であって、m個の吐出部600の各々に対して、大ドットLD、中ドットMD、小ドットSD,及び非記録NDのいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を含む、合計2mビットの信号である。入力される印刷データ信号SIは、m個の吐出部600に対応して、印刷データ信号SIに含まれる2ビット分の印刷データ[SIH,SIL]毎に、シフトレジスター212に保持される。具体的には、選択制御回路210は、m個の吐出部600に対応したm段のシフトレジスター212が互いに縦続接続されるとともに、シリアルで入力された印刷データ信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段に転送される。なお、
図6では、シフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力
される上流側から順番に1段、2段、…、m段と表記している。
【0055】
m個のラッチ回路214の各々は、m個のシフトレジスター212の各々で保持された2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をラッチ信号LATの立ち上がりでラッチする。
【0056】
図7は、デコーダー216におけるデコード内容を示す図である。デコーダー216は、ラッチ回路214によってラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]に従い選択信号S1,S2を出力する。例えば、デコーダー216は、2ビットの印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択信号S1の論理レベルを、期間T1,T2においてH,Lレベルとして出力し、選択信号S2の論理レベルを、期間T1,T2においてL,Hレベルとして選択回路230に出力する。
【0057】
選択回路230は、吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、プリントヘッド20が有する選択回路230の数は、吐出部600の総数と同じm個である。
図8は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の構成を示す図である。
図8に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232a,232bとトランスファーゲート234a,234bとを有する。
【0058】
選択信号S1は、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232aによって論理反転されて、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付された負制御端に入力される。また、トランスファーゲート234aの入力端には、駆動信号COMAが供給される。選択信号S2は、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232bによって論理反転されて、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付された負制御端に入力される。また、トランスファーゲート234bの入力端には、駆動信号COMBが供給される。そして、トランスファーゲート234a,234bの出力端が共通に接続され、駆動信号VOUTとして出力される。
【0059】
具体的には、トランスファーゲート234aは、選択信号S1がHレベルの場合、入力端と出力端との間を導通とし、選択信号S1がLレベルの場合、入力端と出力端との間を非導通とする。また、トランスファーゲート234bは、選択信号S2がHレベルの場合、入力端と出力端との間を導通とし、選択信号S2がLレベルの場合、入力端と出力端との間を非導通とする。以上のように選択回路230は、選択信号S1,S2に基づいて駆動信号COMA,COMBの波形を選択することで、駆動信号VOUTを生成し出力する。
【0060】
ここで、
図9を用いて、選択制御回路210及び選択回路230の動作について説明する。
図9は、選択制御回路210及び選択回路230の動作を説明するための図である。印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期してシリアルで入力されて、吐出部600に対応するシフトレジスター212において順次転送される。そして、クロック信号SCKの入力が停止すると、各シフトレジスター212には、吐出部600の各々に対応した2ビットの印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、印刷データ信号SIは、シフトレジスター212のm段、…、2段、1段の吐出部600に対応した順に入力される。
【0061】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。なお、
図9において、LT1、LT2、…、LTmは、1段、2段、…、m段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた2ビットの印
刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0062】
デコーダー216は、ラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間T1,T2のそれぞれにおいて、選択信号S1,S2の論理レベルを
図7に示す内容で出力する。
【0063】
具体的には、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[1,1]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Hレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2を選択する。その結果、
図5に示す大ドットLDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0064】
また、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Hレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Bdp2を選択する。その結果、
図5に示す中ドットMDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0065】
また、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[0,1]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2,Bdp2のいずれも選択しない。その結果、
図5に示す小ドットSDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0066】
また、デコーダー216は、印刷データ[SIH,SIL]が[0,0]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてL,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてH,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Bdp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2,Bdp2のいずれも選択しない。その結果、
図5に示す非記録NDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0067】
以上のように、選択制御回路210、及び選択回路230は、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKに基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択し、駆動信号VOUTとして吐出部600に出力する。
【0068】
5.駆動信号出力回路の構成
次に、駆動回路50に含まれる駆動信号出力回路51a,51bの構成及び動作について説明する。ここで、駆動信号出力回路51a,51bは、入力される信号、及び出力する信号が異なるのみであり同様の構成である。したがって、以下の説明では、基駆動信号dAに基づいて駆動信号COMAを出力する駆動信号出力回路51aの構成及び動作について説明を行い、基駆動信号dBに基づいて駆動信号COMBを出力する駆動信号出力回路51bの構成及び動作についての詳細な説明は省略する。
【0069】
図10は、駆動信号出力回路51aの構成を示す図である。
図10に示すように、駆動信号出力回路51aは、変調回路510を含む集積回路500、増幅回路550、平滑回路560、帰還回路570,572、及びその他複数の回路素子を有する。集積回路500は、駆動信号COMAの基となる基駆動信号dAに基づいてゲート信号Hgdとゲート信号Lgdとを出力する。増幅回路550は、ゲート信号Hgdにより駆動されるトランジスターM1と、ゲート信号Lgdにより駆動されるトランジスターM2とを含み、増幅変調信号AMsを生成し平滑回路560に出力する。平滑回路560は、増幅回路550からの出力である増幅変調信号AMsを平滑して駆動信号COMAとして出力する。
【0070】
集積回路500は、端子In、端子Bst、端子Hdr、端子Sw、端子Gvd、端子Ldr、端子Gnd、及び端子Vbsを含む複数の端子を介して集積回路500の外部と電気的に接続されている。集積回路500は、端子Inから入力される基駆動信号dAを変調し、増幅回路550が有するトランジスターM1を駆動するゲート信号Hgdを端子Hdrから出力し、トランジスターM2を駆動するゲート信号Lgdを端子Ldrから出力する。換言すれば、集積回路500は、トランジスターM1に入力されるゲート信号Hgdを出力する端子Hdrと、トランジスターM2に入力されるゲート信号Lgdを出力する端子Ldrとを有する。
【0071】
集積回路500は、DAC(Digital to Analog Converter)511、変調回路510、ゲートドライブ回路520、及び電源回路580を含む。
【0072】
電源回路580は、第1電圧信号DAC_HVと第2電圧信号DAC_LVとを生成し、DAC511に供給する。
【0073】
DAC511は、駆動信号COMAの信号波形を規定するデジタルの基駆動信号dAを、第1電圧信号DAC_HVと第2電圧信号DAC_LVとの間の電圧値のアナログ信号である基駆動信号aAに変換し、変調回路510に出力する。なお、基駆動信号aAの電圧振幅の最大値は、第1電圧信号DAC_HVで規定され、最小値は、第2電圧信号DAC_LVで規定される。すなわち、第1電圧信号DAC_HVは、DAC511における高電圧側の基準電圧であり、第2電圧信号DAC_LVは、DAC511における低電圧側の基準電圧となる。そして、アナログの基駆動信号aAを増幅したものが、駆動信号COMAとなる。つまり、基駆動信号aAは、駆動信号COMAの増幅前の目標となる信号に相当する。なお、本実施形態における基駆動信号aAの電圧振幅は、例えば、1V~2Vである。
【0074】
変調回路510は、基駆動信号aAを変調した変調信号Msを生成し、ゲートドライブ回路520を介して増幅回路550に出力する。変調回路510は、加算器512,513、コンパレーター514、インバーター515、積分減衰器516、及び減衰器517を含む。
【0075】
積分減衰器516は、端子Vfbを介して入力された端子Outの電圧、すなわち、駆動信号COMAを減衰するとともに積分し加算器512の-側の入力端に供給する。また、加算器512の+側の入力端には基駆動信号aAが入力される。そして、加算器512は、+側の入力端に入力された電圧から-側の入力端に入力された電圧を差し引き積分した電圧を加算器513の+側の入力端に供給する。
【0076】
ここで、基駆動信号aAの電圧振幅の最大値は、前述の通り2V程度であるのに対して、駆動信号COMAの電圧の最大値で40Vを超える場合がある。このため、積分減衰器516は、偏差を求めるにあたり両電圧の振幅範囲を合わせるために、端子Vfbを介して入力された駆動信号COMAの電圧を減衰させる。
【0077】
減衰器517は、端子Ifbを介して入力した駆動信号COMAの高周波成分を減衰した電圧を、加算器513の-側の入力端に供給する。また、加算器513の+側の入力端には、加算器512から出力された電圧が入力される。そして、加算器513は、+側の入力端に入力された電圧から、-側の入力端に入力された電圧を減算した電圧信号Asを、コンパレーター514に出力する。
【0078】
この加算器513から出力される電圧信号Asは、基駆動信号aAの電圧から、端子V
fbに供給された信号の電圧を差し引き、さらに、端子Ifbに供給された信号の電圧を差し引いた電圧である。このため、加算器513から出力される電圧信号Asの電圧は、目標である基駆動信号aAの電圧から、駆動信号COMAの減衰電圧を差し引いた偏差を、駆動信号COMAの高周波成分で補正した信号となる。
【0079】
コンパレーター514は、加算器513から出力される電圧信号Asに基づいて、パルス変調した変調信号Msを出力する。具体的には、コンパレーター514は、加算器513から出力される電圧信号Asが電圧上昇時であれば、後述する閾値Vth1以上になった場合にHレベルとなり、電圧信号Asが電圧下降時であれば、後述する閾値Vth2を下回った場合にLレベルとなる変調信号Msを出力する。ここで閾値Vth1,Vth2は、閾値Vth1>閾値Vth2という関係に設定されている。なお、変調信号Msは、基駆動信号dA,aAに合わせて周波数やデューティー比が変化する。そのため、減衰器517が感度に相当する変調利得を調整することで、変調信号Msの周波数やデューティー比の変化量を調整することができる。
【0080】
コンパレーター514から出力された変調信号Msは、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー521に供給される。また、変調信号Msは、インバーター515により論理レベルが反転された後、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー522にも供給される。すなわち、ゲートドライバー521とゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルは、互いの排他的な関係にある。
【0081】
ここで、ゲートドライバー521及びゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルは、同時にHレベルとはならないようにタイミングが制御されてもよい。すなわち、排他的な関係とは、厳密にいえば、ゲートドライバー521及びゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルが同時にHレベルになることがないことを意味し、詳細には、増幅回路550に含まれるトランジスターM1とトランジスターM2とが同時にオンすることがないことを意味する。
【0082】
ゲートドライブ回路520は、ゲートドライバー521と、ゲートドライバー522とを含む。
【0083】
ゲートドライバー521は、コンパレーター514から出力される変調信号Msをレベルシフトして、端子Hdrからゲート信号Hgdとして出力する。ゲートドライバー521の電源電圧のうち高位側は、端子Bstを介して印加される電圧であり、低位側は、端子Swを介して印加される電圧である。端子Bstは、コンデンサーC5の一端及び逆流防止用のダイオードD1のカソードに接続される。端子Swは、コンデンサーC5の他端に接続される。ダイオードD1のアノードは、端子Gvdに接続される。これにより、ダイオードD1のアノードには、不図示の電源回路から供給される例えば7.5Vの直流電圧である電圧Vmが供給される。したがって、端子Bstと端子Swとの電位差は、コンデンサーC5の両端の電位差、すなわち電圧Vmにおよそ等しくなる。そして、ゲートドライバー521は、入力される変調信号Msに従う端子Swに対して電圧Vmだけ大きな電圧のゲート信号Hgdを生成し、端子Hdrから出力する。
【0084】
ゲートドライバー522は、ゲートドライバー521よりも低電位側で動作する。ゲートドライバー522は、コンパレーター514から出力された変調信号Msの論理レベルがインバーター515によって反転された信号をレベルシフトして、端子Ldrからゲート信号Lgdとして出力する。ゲートドライバー522の電源電圧のうち高位側は、電圧Vmが印加され、低位側は、端子Gndを介して例えば0Vのグラウンド電位が供給される。そして、ゲートドライバー522に入力される信号に従う端子Gndに対して電圧Vmだけ大きな電圧のゲート信号Lgdを生成し、端子Ldrから出力する。
【0085】
増幅回路550は、トランジスターM1,M2を含む。トランジスターM1のドレイン端子には、例えば42Vの直流電圧である電圧VHVが供給される。トランジスターM1のゲート端子は、抵抗R1の一端と電気的に接続され、抵抗R1の他端は、集積回路500の端子Hdrと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM1のゲート端子には、集積回路500の端子Hdrから出力されるゲート信号Hgdが供給される。トランジスターM1のソース端子は、集積回路500の端子Swと電気的に接続されている。
【0086】
トランジスターM2のドレイン端子は、集積回路500の端子Swと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM2のドレイン端子とトランジスターM1のソース端子とは、互いに電気的に接続されている。トランジスターM2のゲート端子には、抵抗R2の一端と電気的に接続され、抵抗R2の他端は、集積回路500の端子Ldrと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM2のゲート端子には、集積回路500の端子Ldrから出力されるゲート信号Lgdが供給される。トランジスターM2のソース端子には、グラウンド電位が供給される。
【0087】
以上のように構成された増幅回路550において、トランジスターM1がオフ、トランジスターM2がオンに制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電圧は、グラウンド電位となる。したがって、端子Bstには電圧Vmが供給される。一方、トランジスターM1がオン、トランジスターM2がオフに制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電圧は、電圧VHVとなる。したがって、端子Bstには電圧VHV+Vmの電位の電圧信号が供給される。
【0088】
すなわち、トランジスターM1を駆動させるゲートドライバー521が、コンデンサーC5をフローティング電源として、トランジスターM1及びトランジスターM2の動作に応じて、端子Swの電位が0V又は電圧VHVに変化することで、ゲートドライバー521は、Lレベルが電圧VHVの電位であって、且つ、Hレベルが電圧VHV+電圧Vmの電位のゲート信号HgdをトランジスターM1のゲート端子に供給する。
【0089】
一方、トランジスターM2を駆動させるゲートドライバー522は、トランジスターM1及びトランジスターM2の動作に関係なく、Lレベルがグラウンド電位であって、且つ、Hレベルが電圧Vmの電位のゲート信号LgdをトランジスターM2のゲート端子に供給する。
【0090】
以上のように、増幅回路550は、トランジスターM1とトランジスターM2とで基駆動信号dA,aAが変調された変調信号Msを電圧VHVに基づいて増幅し、トランジスターM1のソース端子、及びトランジスターM2のドレイン端子が共通に接続される接続点に増幅変調信号AMsを生成し、平滑回路560に出力する。
【0091】
ここで、増幅回路550に入力される電圧VHVが伝搬する伝搬経路には、コンデンサーCdが位置している。具体的には、コンデンサーCdの一端には電圧VHVが供給され、他端にはグラウンド電位が供給されている。このコンデンサーCdは、増幅回路550が動作することに起因して電圧VHVの電位が変動するおそれを低減する。換言すれば、コンデンサーCdは、電圧VHVの電位を安定させる。このようなコンデンサーは、大きな容量であることが好ましく、例えば電解コンデンサーが用いられる。
【0092】
平滑回路560は、増幅回路550から出力された増幅変調信号AMsを平滑することで、駆動信号COMAを生成し、駆動信号出力回路51aから出力する。
【0093】
平滑回路560は、コイルL1とコンデンサーC1とを含む。コイルL1の一端は、ト
ランジスターM1のソース端子、及びトランジスターM2のドレイン端子と電気的に接続される。これにより、コイルL1の一端には、増幅回路550から出力された増幅変調信号AMsが入力さる。また、コイルL1の他端は、駆動信号出力回路51aの出力となる端子Outと接続されている。また、コイルL1の他端は、コンデンサーC1の一端とも接続されている。そして、コンデンサーC1の他端には、グラウンド電位が供給されている。すなわち、コイルL1とコンデンサーC1とは、増幅回路550から出力される増幅変調信号AMsを平滑することで復調し、駆動信号COMAとして出力する。換言すれば、コイルL1の他端がプリントヘッド20と電気的に接続されている。
【0094】
帰還回路570は、抵抗R3と抵抗R4とを含む。抵抗R3の一端は、駆動信号COMAが出力される端子Outと接続され、他端は、端子Vfb及び抵抗R4の一端と接続されている。抵抗R4の他端には電圧VHVが供給される。これにより、端子Vfbには、端子Outから帰還回路570を通過した駆動信号COMAがプルアップされた状態で帰還する。
【0095】
帰還回路572は、コンデンサーC2,C3,C4と、抵抗R5,R6を含む。コンデンサーC2の一端は、駆動信号COMAが出力される端子Outと接続され、他端は、抵抗R5の一端、及び抵抗R6の一端と接続されている。抵抗R5の他端にはグラウンド電位が供給される。これにより、コンデンサーC2と抵抗R5とがハイパスフィルター(High Pass Filter)として機能する。なお、ハイパスフィルターのカットオフ周波数は、例えば約9MHzに設定される。また、抵抗R6の他端は、コンデンサーC4の一端、及びコンデンサーC3の一端と接続されている。コンデンサーC3の他端には、グラウンド電位が供給される。これにより、抵抗R6とコンデンサーC3とは、ローパスフィルター(Low Pass Filter)として機能する。なお、ローパスフィルターのカットオフ周波数は、例えば約160MHzに設定される。このように、帰還回路572がハイパスフィルターとローパスフィルターと備えて構成されることで、帰還回路572は、駆動信号COMAの所定の周波数域を通過させるバンドパスフィルター(Band Pass Filter)として機能する。
【0096】
そして、コンデンサーC4の他端が集積回路500の端子Ifbと接続されている。これにより、端子Ifbには、所定の周波数成分を通過させるバンドパスフィルターとして機能する帰還回路572を通過した駆動信号COMAの高周波成分のうち、直流成分がカットされた信号が帰還する。
【0097】
ところで、端子Outから出力される駆動信号COMAは、基駆動信号dAに基づく増幅変調信号AMsを平滑回路560によって平滑された信号である。そして、駆動信号COMAは、端子Vfbを介して積分・減算された上で、加算器512に帰還される。よって、駆動信号出力回路51aは、帰還の遅延と、帰還の伝達関数で定まる周波数で自励発振する。ただし、端子Vfbを介した帰還経路は、遅延量が大きいため、当該端子Vfbを介した帰還のみでは自励発振の周波数を駆動信号COMAの精度を十分に確保できるほど高くすることができない場合がある。そこで、端子Vfbを介した経路とは別に、端子Ifbを介して、駆動信号COMAの高周波成分を帰還する経路を設けることで、回路全体でみた場合における遅延を小さくしている。これにより、電圧信号Asの周波数は、端子Ifbを介した経路が存在しない場合と比較して、駆動信号COMAの精度を十分に確保できるほどに高くすることができる。
【0098】
ここで、本実施形態における駆動信号出力回路51aにおける自励発振の発振周波数は、駆動信号COMAの精度を十分に確保しつつ、駆動信号出力回路51aで生じる発熱を低減させるとの観点において1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合においては、駆動信号出力回路51aの自励発
振の発振周波数が1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。換言すれば、トランジスターM1,M2の駆動周波数は、トランジスターM1,M2で生じる発熱を低減させるとの観点において1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、さらに、トランジスターM1,M2で生じる損失を低減させることで、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合においては、トランジスターM1,M2の駆動周波数は、1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。
【0099】
本実施形態における液体吐出装置1では、駆動信号出力回路51aが、増幅変調信号AMsを平滑して駆動信号COMAを生成し、プリントヘッド20が有する圧電素子60に供給する。そして、圧電素子60は、駆動信号COMAに含まれる信号波形が供給されることによって駆動する。そして、吐出部600から圧電素子60の駆動に応じた量のインクが吐出される。
【0100】
このような圧電素子60を駆動する駆動信号COMAの信号波形に対して周波数スペクトル解析を実行すると、駆動信号COMAには、50kHz以上の周波数成分が含まれていることが知られている。このような50kHz以上の周波数成分を含む駆動信号COMAの信号波形を精度よく生成するに際して、変調信号の周波数を1MHzよりも低くすると、駆動信号出力回路51aから出力される駆動信号COMAの信号波形のエッジ部に鈍りが生じ、当該鈍りが生じる。換言すれば、駆動信号COMAの信号波形を精度よく生成するには、変調信号Msの周波数を1MHz以上とする必要がある。そして、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数が1MHz以下である場合、駆動信号COMAの波形精度が低下するが故に、圧電素子60の駆動精度が低下し、その結果、液体吐出装置1から吐出されるインクの吐出特性が悪化するおそれがある。
【0101】
このような問題に対して、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数を1MHz以上とすることで、駆動信号COMAの信号波形のエッジ部に鈍りが生じるおそれが低減する。すなわち、駆動信号COMAの信号波形の波形精度が向上し、駆動信号COMAに基づいて駆動される圧電素子60の駆動精度が向上する。よって、液体吐出装置1から吐出されるインクの吐出特性が悪化するおそれが低減される。
【0102】
しかしながら、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数を高くすると、トランジスターM1,M2におけるスイッチング損失が大きくなる。このようなトランジスターM1,M2の生じるスイッチング損失は、駆動信号出力回路51aでの消費電力を増加させるとともに、駆動信号出力回路51aにおける発熱量も増加させる。すなわち、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数を高くしすぎた場合、トランジスターM1,M2におけるスイッチング損失が大きくなり、その結果、AB級アンプなどのリニア増幅に対するD級アンプの優位性の1つである省電力性、及び省発熱性が損なわれるおそれがある。このようなトランジスターM1,M2のスイッチング損失を低減するとの観点においては、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、トランジスターM1,M2の駆動周波数が8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の省電力性を高めることが求められる場合、トランジスターM1,M2の駆動周波数は、4MHz以下であることが好ましい。
【0103】
以上より、D級アンプを用いた駆動信号出力回路51aにおいて、出力する駆動信号COMAの信号波形の精度の向上と、省電力化とを両立させるとの観点において、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であってトランジスターM1,M2の駆動周波数
が1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合には、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であってトランジスターM1,M2の駆動周波数が1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。
【0104】
ここで、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であってトランジスターM1,M2の駆動周波数には、上述した変調信号Msの周波数や、ゲート信号Hgd,Lgdの周波数、及び増幅変調信号AMsの周波数等が含まれる。
【0105】
以上のように、駆動信号COMAを出力する駆動信号出力回路51aは、ゲート信号Hgdを出力する端子Hdrと、ゲート信号Lgdを出力する端子Ldrとを含み、ゲート信号Hgd及びゲート信号Lgdを出力する集積回路500と、ゲート信号Hgdが入力されるトランジスターM1と、ゲート信号Lgdが入力されるトランジスターM2と、一端がトランジスターM1及びトランジスターM2と電気的に接続し、他端がプリントヘッド20と電気的に接続しているコイルL1と、を有する。そして、駆動信号出力回路51aにおいて、トランジスターM1は、ゲート端子に入力されるゲート信号Hgdに応じてソース端子とドレイン端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、トランジスターM2は、ゲート端子に入力されるゲート信号Lgdに応じてソース端子とドレイン端子とが電気的に接続されるか否かが変化する。また、トランジスターM1のソース端子、及びトランジスターM2のドレイン端子は、コイルL1の一端と電気的に接続している。
【0106】
同様に、駆動信号COMBを出力する駆動信号出力回路51bは、ゲート信号Hgdを出力する端子Hdrと、ゲート信号Lgdを出力する端子Ldrとを含み、ゲート信号Hgd及びゲート信号Lgdを出力する集積回路500と、ゲート信号Hgdが入力されるトランジスターM1と、ゲート信号Lgdが入力されるトランジスターM2と、一端がトランジスターM1及びトランジスターM2と電気的に接続し、他端がプリントヘッド20と電気的に接続しているコイルL1と、を有する。そして、駆動信号出力回路51bにおいて、トランジスターM1は、ゲート端子に入力されるゲート信号Hgdに応じてソース端子とドレイン端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、トランジスターM2は、ゲート端子に入力されるゲート信号Lgdに応じてソース端子とドレイン端子とが電気的に接続されるか否かが変化する。また、トランジスターM1のソース端子、及びトランジスターM2のドレイン端子は、コイルL1の一端と電気的に接続している。
【0107】
すなわち、本実施形態における駆動信号出力回路51aは、D級増幅回路であって、トランジスターM1とトランジスターM2とは、復調前のデジタル信号であって基駆動信号dAを変調した変調信号Msを増幅する増幅回路550を構成し、コイルL1は、増幅回路550が出力する増幅変調信号AMsを復調する平滑回路560であって、駆動信号COMAを出力するローパスフィルターを構成する。同様に、本実施形態における駆動信号出力回路51bは、D級増幅回路であって、トランジスターM1とトランジスターM2とは、復調前のデジタル信号であって基駆動信号dBを変調した変調信号Msを増幅する増幅回路550を構成し、コイルL1は、増幅回路550が出力する増幅変調信号AMsを復調する平滑回路560であって、駆動信号COMBを出力するローパスフィルターを構成する。
【0108】
ここで、集積回路500が出力するゲート信号Hgdが第1制御信号の一例であり、ゲート信号Lgdが第2制御信号の一例である。また、集積回路500からゲート信号Hgdが出力される端子Hdrが第1出力端子の一例であり、ゲート信号Lgdが出力される端子Ldrが第2出力端子の一例である。そして、ゲート信号Hgdが入力されるトランジスターM1が第1トランジスターの一例であり、ゲート信号Lgdが入力されるトランジスターM2が第2トランジスターの一例である。また、トランジスターM1において、ゲート信号Hgdが入力されるゲート端子が第1端子の一例であり、ソース端子が第2端
子の一例であり、駆動信号COMA,COMBの高電位を規定する高電位電圧である電圧VHVが供給されるドレイン端子が第3端子の一例である。また、トランジスターM2のゲート信号Lgdが入力されるゲート端子が第4端子の一例であり、グラウンド電位が供給されるソース端子が第5端子の一例であり、トランジスターM1のドレイン端子と接続されるドレイン端子が第6端子の一例である。そして、トランジスターM1とトランジスターM2とを含む増幅回路550が、基駆動信号dA,dBに基づくデジタル信号である変調信号Msを増幅するデジタル増幅部の一例である。
【0109】
6.駆動信号出力回路が実装された駆動回路基板の構造
次に、駆動信号出力回路51a,51bの構造について説明する。本実施形態における液体吐出装置1では、発熱が特に大きく、スイッチング動作するが故にノイズの発生源となり得るトランジスターM1,M2を最適に配置することで、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBにより駆動される圧電素子60の数が増加し、5000個以上となることにより、駆動信号出力回路51a,51bが出力する出力電流が増加した場合であっても、トランジスターM1,M2の発熱を低減するとともに、駆動信号出力回路51a,51bの動作の安定性の向上を実現し、これにより、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBの波形精度を向上させている。
【0110】
そこで、駆動信号出力回路51a,51bの構造について説明するにあたり、まず、本実施形態において駆動信号出力回路51a,51bに用いられるトランジスターM1,M2の構造について説明する。なお、トランジスターM1,M2はいずれも同じ構造であり、以下の説明において、トランジスターM1,M2を区別する必要がない場合、単にトランジスターMと称する場合がある。また、以下の説明において、トランジスターMにおいて、後述する配線基板55と電気的に接続される端子が設けられている面を端子面と称し、トランジスターMを当該端子面側から見た場合を底面視、トランジスターMを当該端子面側とは反対側から見た場合を平面視と称する場合がある。
【0111】
図11は、トランジスターM1を平面視した場合を示す図であり、
図12は、トランジスターM1を低面視した場合を示す図である。
図11、及び
図12に示すようにトランジスターM1は、略直方体形状の筐体Pckと、筐体Pckの周囲に設けられた複数の端子を有する。
【0112】
図11及び
図12に示すように、筐体Pckは、互いに向かい合って位置する辺e1,e2と、辺e1,e2の双方と交差し互いに向かい合って位置する辺e3,e3とを含む。すなわち、トランジスターMの形状は略直方体である。この筐体Pckは、例えば、樹脂製のモールド部材で構成され、筐体Pckの内部には、トランジスター素子を形成するシリコンなどを含む不図示の半導体チップが設けられている。
【0113】
筐体Pckの辺e1には、複数の端子の内の端子gtと端子st1~st3とが並んで設けられている。端子gtは、筐体Pckの内部に設けられたトランジスター素子のゲートと電気的に接続し、また、端子st1~st3は、筐体Pckの内部に設けられたトランジスター素子のソースと電気的に接続している。すなわち、端子gtは、トランジスターMのゲート端子に相当し、端子st1~st3は、それぞれがトランジスターMのソース端子に相当する。
【0114】
端子gt、及び端子st1,st2,st3は、辺e1に沿って、辺e3から辺e4に向かう方向において、端子st1、端子st2、端子st3、端子gtの順に位置している。換言すれば、端子gtと端子st1,st2,st3とは、筐体Pckの辺e1に沿って並んで位置しているとともに、端子gtは、筐体Pckの最も辺e4の近傍に位置し
ている。すなわち、筐体Pckの内部に設けられ、半導体チップのゲートと電気的に接続しているゲート端子に相当する端子gtは、トランジスターMの角部に位置している。
【0115】
また、筐体Pckにおいて、辺e1と異なる辺e2には、端子dt3,dt4が位置し、辺e1と異なる辺e3には、端子dt1が位置し、辺e1と異なる辺e4には、端子dt2が位置している。端子dt1,dt2,dt3,dt4は、それぞれが筐体Pckの内部に設けられたトランジスター素子のドレインと電気的に接続している。すなわち、端子dt1,dt2,dt3,dt4は、トランジスターMのドレイン端子に相当する。そして、
図12に示すように、端子dt1,dt2,dt3,dt4は、トランジスターMの端子面に設けられた端子dt5によって共通に接続されている。これにより、トランジスターMにおけるドレイン端子の総面積を大きくすることができる。
【0116】
以上のように、トランジスターMにおいて、ゲート端子に相当する端子gt、及びソース端子に相当する端子st1,st2,st3は、辺e1に沿って並んで位置し、ドレイン端子に相当する端子dt1,dt2,dt3,dt4は、辺e1とは異なる辺e2,e3,e4に沿って位置している。そして、端子dt1,dt2,dt3,dt4は、端子面に設けられた端子dt5によって共通に接続されている。
【0117】
また、トランジスターMは、端子面、及び側面に沿って並んで設けられた端子gt、端子st1,st2,st3、及び端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5が、後述する配線基板55にハンダなどにより接続される。すなわち、本実施形態におけるトランジスターMは、端子gtと、端子st1,st2,st3と、端子dt1,dt2,dt3,dt4とが、トランジスターMの端子面、及び側面に沿って並んで設けられている所謂表面実装型のフラットノンリードパッケーである。
【0118】
このようなトランジスターMにおいて、端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5は、端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5のそれぞれと筐体Pckの内部に設けられたトランジスター素子とが、電気的に絶縁されておらず、直接接続されている所謂エクスポーズド・ダイ・パッドであることが好ましい。これにより、筐体Pckの内部に設けられたトランジスター素子と端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5との間における抵抗成分が減少し、トランジスターMにおける発熱を低減することができる。また、トランジスターMにおいて、端子gt、及び端子st1,st2,st3も端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5と同様に、エクスポーズド・ダイ・パッドであってもよいが、流れる電流及び供給される電圧が端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5よりも小さい点に鑑みると、トランジスターMにおいて、端子gt、及び端子st1,st2,st3の配置の自由度を高めるとの観点において、端子gt、及び端子st1,st2,st3は、筐体Pckの内部に設けられたトランジスター素子と電気的に絶縁されているとともに、ワイヤーボンディングなどにより接続される所謂リード・ダイ・パッドであってもよい。
【0119】
ここで、辺e1が第1辺の一例であり、辺e2,e3,e4の少なくともいずれかが第2辺の一例である。また、トランジスターM1において、ゲート端子に相当する端子gtも第1端子の一例であり、ソース端子に相当する端子st1,st2,st3も第2端子の一例であり、ドレイン端子に相当する端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5も第3端子の一例である。同様に、トランジスターM2において、ゲート端子に相当する端子gtも第4端子の一例であり、ソース端子に相当する端子st1,st2,st3も第5端子の一例であり、ドレイン端子に相当する端子dt1,dt2,dt3,dt4,dt5も第6端子の一例である。
【0120】
次に、上述した構造のトランジスターM1,M2を含む駆動信号出力回路51a,51
bの構造について説明する。なお、駆動信号出力回路51a,51bは、いずれも同様の構造であり、以下の説明では、駆動信号出力回路51aの構造についてのみ説明を行い、駆動信号出力回路51bの構造の説明は省略する。
【0121】
図13は、駆動信号出力回路51aの構造を説明するための図である。ここで、
図13では、互いに直交するX方向、及びY方向を用いて説明する。また、X方向について、その向きを規定する場合、図示する矢印起点側を-X側と称し、先端側を+X側と称する場合がある。同様に、Y方向について、その向きを規定する場合、図示する矢印起点側を-Y側と称し、先端側を+Y側と称する場合がある。
【0122】
また、
図13では、トランジスターM1,M2が有するソース端子に相当する端子st1~st3を単に端子stとして図示し、ドレイン端子に相当する端子dt1~dt5を単に端子dtとして図示している。さらに、
図13では、駆動信号出力回路51aを構成する一部の回路素子の図示を省略している。
【0123】
図13に示すように、駆動信号出力回路51aは、集積回路500と、トランジスターM1,M2と、コイルL1と、配線基板55とを含む。そして、駆動信号出力回路51aが有する集積回路500、トランジスターM1,M2、及びコイルL1は、配線基板55に設けられている。このような配線基板55は、集積回路500、トランジスターM1,M2、及びコイルL1を含む各種回路素子を電気的に接続するための配線パターンを有する。なお、
図13では、配線基板55において、集積回路500、トランジスターM1,M2、及びコイルL1が実装される表面層のみを図示しているが、配線基板55は、内部に複数の配線層を有する所謂多層基板であってもよい。ここで、配線基板55が基板の一例である。
【0124】
トランジスターM1及びトランジスターM2は、端子gt及び端子stが+X側となるように、X方向に沿って並んで設けられている。
【0125】
具体的には、トランジスターM1が有する端子gt及び端子stが位置する辺e1は、辺e1に沿って設けられた端子gtが+Y側、端子stが-Y側なるように、Y方向に沿って延在し、端子dtが位置する辺e2は、辺e1の-X側においてY方向に沿って延在している。すなわち、トランジスターM1は、辺e1が+X側、辺e2が-X側、辺e3が+Y側、辺e4が-Y側となるように、配線基板55に設けられている。
【0126】
また、トランジスターM2はトランジスターM1の+X側に位置している。そして、トランジスターM2が有する端子gt及び端子stが位置する辺e1は、辺e1に沿って設けられた端子gtが+Y側、端子stが-Y側なるように、Y方向に沿って延在し、端子dtが位置する辺e2は、辺e1の-X側においてY方向に沿って延在している。すなわち、トランジスターM2は、トランジスターM1の+X側において、辺e1が+X側、辺e2が-X側、辺e3が+Y側、辺e4が-Y側となるように、配線基板55に設けられている。
【0127】
したがって、本実施形態における駆動信号出力回路51aでは、トランジスターM1の端子stとトランジスターM2の端子dtとが、X方向に沿って向かい合って位置し、且つ、トランジスターM1の端子stとトランジスターM2の端子dtとの間には、トランジスターM1の端子gt及び端子dtと、トランジスターM2の端子gt及び端子stとが位置しないように、トランジスターM1,M2が位置している。
【0128】
ここで、
図11及び
図12に示すように、トランジスターM1が有する端子gtの数は端子stの数よりも少なく、また、トランジスターM1が有する端子stの数は端子dt
の数よりも少ない。すなわち、トランジスターM1においてゲート端子に相当する端子gtの総面積は、ソース端子に相当する端子stの総面積も小さく、ソース端子に相当する端子stの総面積は、ドレイン端子に相当する端子dtの総面積よりも小さい。よって、
図13に示すように、トランジスターM1が配線基板55に設けられた場合、端子gtと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積は、端子stと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積よりも小さく、また、端子stと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積は、端子dtと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積よりも小さい。
【0129】
ここで、トランジスターM1の端子gtと配線基板55とが接触する接触部とは、端子gtと配線基板55とが接触し得る領域を含み、例えば、トランジスターM1が配線基板55に実装された場合に、配線基板55に端子gtが固定される配線基板55のパッド部が相当する。同様に、トランジスターM1の端子stと配線基板55とが接触する接触部とは、端子stと配線基板55とが接触し得る領域を含み、例えば、トランジスターM1が配線基板55に実装された場合に、配線基板55に端子stが固定される配線基板55のパッド部が相当する。また、トランジスターM1の端子dtと配線基板55とが接触する接触部とは、端子dtと配線基板55とが接触し得る領域を含み、例えば、トランジスターM1が配線基板55に実装された場合に、配線基板55に端子dtが固定される配線基板55のパッド部が相当する。
【0130】
したがって、トランジスターM1の端子gtと配線基板55とが接触する接触部の総面積とは、トランジスターM1の端子gtが配線基板55に固定されるパッド部の総面積を含み、同様に、トランジスターM1の端子stと配線基板55とが接触する接触部の総面積とは、トランジスターM1の端子stが配線基板55に固定されるパッド部の総面積を含み、また、トランジスターM1の端子dtと配線基板55とが接触する接触部の総面積とは、トランジスターM1の端子dtが配線基板55に固定されるパッド部の総面積を含む。
【0131】
ここで、トランジスターM1の端子gtが配線基板55と接触する配線基板55が有するパッド部が第1接触部の一例であり、トランジスターM1の端子stが配線基板55と接触する配線基板55が有するパッド部が第2接触部の一例であり、トランジスターM1の端子dtが配線基板55と接触する配線基板55が有するパッド部が第3接触部の一例である。
【0132】
また、
図11及び
図12に示すように、トランジスターM2が有する端子gtの数は端子stの数よりも少なく、また、トランジスターM2が有する端子stの数は端子dtの数よりも少ない。すなわち、トランジスターM2においてゲート端子に相当する端子gtの総面積は、ソース端子に相当する端子stの総面積も小さく、ソース端子に相当する端子stの総面積は、ドレイン端子に相当する端子dtの総面積よりも小さい。よって、
図13に示すように、トランジスターM2が配線基板55に設けられた場合、端子gtと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積は、端子stと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積よりも小さく、また、端子stと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積は、端子dtと配線基板55とが接触し、はんだ等により電気的に接続される接触部の総面積よりも小さい。
【0133】
ここで、トランジスターM2の端子gtと配線基板55とが接触する接触部とは、端子gtと配線基板55とが接触し得る領域を含み、例えば、トランジスターM2が配線基板55に実装された場合に、配線基板55に端子gtが固定される配線基板55のパッド部
が相当する。同様に、トランジスターM2の端子stと配線基板55とが接触する接触部とは、端子stと配線基板55とが接触し得る領域を含み、例えば、トランジスターM2が配線基板55に実装された場合に、配線基板55に端子stが固定される配線基板55のパッド部が相当する。また、トランジスターM2の端子dtと配線基板55とが接触する接触部とは、端子dtと配線基板55とが接触し得る領域を含み、例えば、トランジスターM2が配線基板55に実装された場合に、配線基板55に端子dtが固定される配線基板55のパッド部が相当する。
【0134】
したがって、トランジスターM2の端子gtと配線基板55とが接触する接触部の総面積とは、トランジスターM2の端子gtが配線基板55に固定されるパッド部の総面積を含み、同様に、トランジスターM2の端子stと配線基板55とが接触する接触部の総面積とは、トランジスターM2の端子stが配線基板55に固定されるパッド部の総面積を含み、また、トランジスターM2の端子dtと配線基板55とが接触する接触部の総面積とは、トランジスターM2の端子dtが配線基板55に固定されるパッド部の総面積を含む。
【0135】
本実施形態における液体吐出装置1において、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dt及び端子stには、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子gtよりも大電流が流れる。このような大電流が流れるトランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dt及び端子stの総面積であって、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dt及び端子stと配線基板55とが接触するパッド部の総面積を、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子gtの総面積であって、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子gtと配線基板55とが接触するパッドの総面積よりも大きくすることで、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dt及び端子stと配線基板55との接触抵抗を小さくすることができる。これにより、トランジスターM1,M2に大電流が流れることにより生じる発熱を低減することができる。
【0136】
さらに、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dtには、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子stよりも高い電圧が供給される。このような高電圧が印加されるトランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dtの総面積であって、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dtと配線基板55とが接触するパッド部の総面積を、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子stの総面積であって、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子stと配線基板55とが接触するパッドの総面積よりも大きくすることで、トランジスターM1,M2のそれぞれが有する端子dtと配線基板55との接触抵抗を小さくすることができる。これにより、トランジスターM1,M2が配線基板55に設けられることにより生じる接触損失を低減することができる。
【0137】
また、
図13に示すように、集積回路500は、X方向に沿って並んで設けられたトランジスターM1,M2の+Y側に位置している。すなわち、集積回路500は、トランジスターM1においてY方向に沿って延在する辺e1に沿って並んで設けられた端子gt、及び端子stの内、端子stよりも端子gtの近傍であって、且つ、トランジスターM2においてY方向に沿って延在する辺e1に沿って並んで設けられた端子gt、及び端子stの内、端子stよりも端子gtの近傍に位置している。すなわち、集積回路500とトランジスターM1とは、集積回路500の端子HdrとトランジスターM1の端子gtとの最短距離が集積回路500の端子HdrとトランジスターM1の端子stとの最短距離よりも小さくなるように配線基板55に設けられ、集積回路500とトランジスターM2とは、集積回路500の端子LdrとトランジスターM1の端子gtとの最短距離が集積回路500の端子LdrとトランジスターM1の端子stとの最短距離よりも小さくなるように配線基板55に設けられている。
【0138】
これにより、集積回路500の端子Hdrから出力されトランジスターM1の端子gtに入力されるゲート信号Hgdが伝搬する配線パターンp2、及び集積回路500の端子Ldrから出力されトランジスターM2の端子gtに入力されるゲート信号Lgdが伝搬する配線パターンp4の配線長を短くすることができる。
【0139】
集積回路500が出力するゲート信号Hgd,Lgdは、トランジスターM1,M2が出力する増幅変調信号AMsと比較して、論理レベルの変化の小さな信号である。このような論理レベルの変化の小さな信号であるゲート信号Hgd,Lgdに、増幅変調信号AMsの高振幅の論理レベルの信号が干渉した場合、トランジスターM1,M2に誤動作が生じ、その結果、増幅変調信号AMs、及び増幅変調信号AMsに基づく駆動信号COMAの波形に歪が生じる。すなわち、駆動信号出力回路51aの動作の安定性が低下し、駆動信号COMAの波形精度が低下する。
【0140】
このような問題に対して、集積回路500の端子Hdrから出力されトランジスターM1の端子gtに入力されるゲート信号Hgdが伝搬する配線パターンp2、及び集積回路500の端子Ldrから出力されトランジスターM2の端子gtに入力されるゲート信号Lgdが伝搬する配線パターンp4の配線長を短くすることで、ゲート信号Hgd,Lgdに高振幅の論理レベルの信号が干渉するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路51aの動作の安定性が向上し、駆動信号出力回路51aが出力する駆動信号COMAの波形精度が向上する。
【0141】
また、この場合において、集積回路500の端子HdrとトランジスターM1のゲート端子である端子gtとを接続する配線パターンp2、及び集積回路500の端子LdrとトランジスターM2のゲート端子である端子gtとを接続する配線パターンp4は、配線基板55において、集積回路500、及びトランジスターM1,M2が設けられている面と同一の面に設けられる。すなわち、集積回路500、トランジスターM1、及び配線パターンp2は、配線基板55の同一配線層に設けられ、集積回路500、トランジスターM2、及び配線パターンp4は、配線基板55の同一配線層に設けられている。
【0142】
これにより、ゲート信号Hgdが伝搬する配線パターンp2、及びゲート信号Lgdが伝搬する配線パターンp4にビア等を設ける必要がなく、よって、ゲート信号Hgd,Lgdにノイズ等が干渉するおそれがさらに低減し、その結果、駆動信号出力回路51aの動作の安定性がさらに向上するとともに、駆動信号出力回路51aが出力する駆動信号COMAの波形精度がさらに向上する。ここで、配線パターンp2が信号配線の一例である。
【0143】
さらに、トランジスターM1のゲート端子である端子gtと、トランジスターM1の端子gtに入力されるゲート信号Hgdを出力する集積回路500の端子Hdrとの最短距離は、トランジスターM2のゲート端子である端子gtと、トランジスターM2の端子gtに入力されるゲート信号Lgdを出力する集積回路500の端子Ldrとの最短距離よりも大きくなるように、集積回路500、トランジスターM1,M2は、配線基板55に設けられている。これにより、トランジスターM2の端子gtに入力されるゲート信号Lgdが伝搬する配線パターンp4の配線長は、トランジスターM1の端子gtに入力されるゲート信号Hgdが伝搬する配線パターンp2の配線長よりも短くすることができる。
【0144】
前述の通り、トランジスターM1の端子dtには、高電圧の直流電圧である電圧VHVが供給され、また、トランジスターM2の端子stには、グラウンド電位が供給される。そして、トランジスターM1,M2のそれぞれが、入力されるゲート信号Hgd,Lgdにより駆動することで、トランジスターM1のソース端子である端子stと、トランジス
ターM2のドレイン端子である端子dtとが接続される中点には、電圧値が電圧VHVとグラウンド電位との間で変化する増幅変調信号AMsが出力される。すなわち、トランジスターM2は、トランジスターM1よりも低電位のゲート信号Lgdにより制御されるとともに、低電位の信号を出力する。
【0145】
このような低電位のゲート信号Lgdは、高電位のゲート信号Hgdよりも配線インピーダンスやノイズの影響を受けやすい。本実施形態における駆動信号出力回路51aでは、トランジスターM2の端子gtに入力されるゲート信号Lgdが伝搬する配線パターンp4の配線長を、トランジスターM1の端子gtに入力されるゲート信号Hgdが伝搬する配線パターンp2の配線長よりも短くすることで、ゲート信号Lgdが伝搬する配線パターンp4にノイズが重畳するおそれをさらに低減するとともに、ゲート信号Lgdに対する配線パターンp4の配線インピーダンスの影響を低減している。これにより、ゲート信号Lgdの論理レベルに異常が生じるおそれが低減し、ゲート信号Lgdにより駆動するトランジスターM2に誤動作が生じるおそれがさらに低減する。その結果、駆動信号出力回路51aの動作の安定性がさらに向上する。
【0146】
ここで、
図13では、
図10に示す端子HdrとトランジスターM1の端子dtとの間に設けられる抵抗R1、及び端子LdrとトランジスターM2の端子dtとの間に設けられる抵抗R2の図示を省略している。すなわち、端子HdrとトランジスターM1の端子dtとを接続する配線パターンp2には、抵抗R1が含まれていてもよく、また、端子LdrとトランジスターM2の端子dtとを接続する配線パターンp4には、抵抗R2が含まれていても良い。なお、抵抗R1、及び抵抗R2は、トランジスターM1,M2に供給される電流を制限する抵抗である点に鑑みると、駆動信号出力回路51aにおいて、抵抗R1、及び抵抗R2を備えなくても良い。
【0147】
また、
図13に示すように、コイルL1は、X方向に沿って並んで設けられたトランジスターM1,M2の-Y側に位置している。すなわち、配線基板55において、集積回路500、トランジスターM1,M2、及びコイルL1は、Y方向に沿って、集積回路500、トランジスターM1,M2、コイルL1の順に並んで設けられている。そして、コイルL1は、トランジスターM1,M2から出力される増幅変調信号AMsが入力される一端である端子L1aが-X側に位置し、増幅変調信号AMsを復調した駆動信号COMAが出力される他端である端子L1bが+X側となるように、配線基板55に設けられている。
【0148】
この場合において、コイルL1は、端子L1aが増幅変調信号AMsを出力するトランジスターM1の端子st、及びトランジスターM2の端子dtの近傍となるように配線基板55に設けられる。換言すれば、トランジスターM1の端子stとコイルL1の一端である端子L1aとの最短距離は、トランジスターM1の端子dtと端子L1aとの最短距離よりも短く、また、トランジスターM2の端子dtとコイルL1の一端である端子L1aとの最短距離は、トランジスターM2の端子stと端子L1aとの最短距離よりも短い。そして、コイルL1は、トランジスターM1の端子dtとコイルL1との最短距離がトランジスターM2の端子dtとコイルL1との最短距離よりも大きくなるように配線基板55に設けられる。これにより、高振幅、高周波で且つ高電位の増幅変調信号AMsが伝搬する配線パターンp3の配線長を短くすることができる。
【0149】
増幅変調信号AMsは、高振幅、高周波で且つ高電位の信号であるが故に、駆動信号出力回路51aにおいて、ノイズ源となり、その結果、駆動信号出力回路51aにおいて伝搬される各種信号に干渉するおそれがある。このような高振幅、高周波で且つ高電位の信号である増幅変調信号AMsが伝搬する配線パターンp3の配線長を短くすることで、増幅変調信号AMsが駆動信号出力回路51aにおいて伝搬される各種信号に干渉するおそ
れが低減する。その結果、駆動信号出力回路51aの動作の安定性が低下するおそれが低減される。
【0150】
また、
図13に示すように、コイルL1、及びX方向に沿って並んで設けられたトランジスターM1,M2の+X側には、コンデンサーC1が位置している。また、コイルL1の-X側には、コンデンサーCdが位置している。
【0151】
以上のように構成された駆動信号出力回路51aでは、配線パターンp1に電圧VHVが供給される。この配線パターンp1には、電解コンデンサーであるコンデンサーCdの+側端子、及びトランジスターM1の端子dtと電気的に接続している。また、トランジスターM1の端子gtは、配線パターンp2を介して集積回路500の端子Hdrと電気的に接続され、トランジスターM1の端子stは、配線パターンp3と電気的に接続している。このようなトランジスターM1は、配線パターンp2を介して入力されるゲート信号Hgdに応じて、端子dtと端子stとが電気的に接続されるか否かが変化する。これにより、トランジスターM1は、配線パターンp3に電圧VHVを供給するか否かを切り替える。
【0152】
配線パターンp3には、トランジスターM2の端子dtが電気的に接続されている。また、トランジスターM2の端子gtは、配線パターンp4を介して集積回路500の端子Ldrと電気的に接続され、トランジスターM2の端子stは、グラウンド電位が供給されている配線パターンgp2と電気的に接続している。このようなトランジスターM2は、配線パターンp4を介して入力されるゲート信号Lgdに応じて、端子dtと端子stとが電気的に接続されるか否かが変化することで、配線パターンp3の電位をグラウンド電位とするか否かを切り替える。以上のように配線パターンp3にトランジスターM1の端子stとトランジスターM2の端子dtとが電気的に接続されていることで、配線パターンp3には、電圧VHVとグラウンド電位との間で電圧値が変化する増幅変調信号AMsが出力される。
【0153】
また、配線パターンp3には、コイルL1の一端である端子L1aが電気的に接続されている。そして、コイルL1の他端である端子L1bは、配線パターンp5に電気的に接続している。この配線パターンp5には、コンデンサーC1の一端である端子C1aが接続されている。そして、コンデンサーC1の他端である端子C1bは、グラウンド電位が供給されている配線パターンgp2と電気的に接続されている。これにより、コイルL1とコンデンサーC1とがローパスフィルターを構成し、配線パターンp5には、増幅変調信号AMsが復調された駆動信号COMAが出力されることとなる。
【0154】
ここで、駆動回路50が有する駆動信号出力回路51bは、駆動信号出力回路51aとともに配線基板55に設けられていてもよく、また、配線基板55とは異なる基板に設けられていてもよい。
【0155】
7.作用効果
本実施形態における液体吐出装置1では、圧電素子60を駆動する駆動信号COMA,COMBを出力する駆動信号出力回路51a,51bのそれぞれにおいて、トランジスターM1の駆動を制御するゲート信号Hgdが出力される集積回路500の端子Hdrとゲート信号Hgdが入力されるトランジスターM1の端子gtとの最短距離を、集積回路500の端子Hdrとゲート信号Hgdが入力されないトランジスターM1の端子stとの最短距離よりも短くすることで、集積回路500とトランジスターM1との間においてゲート信号Hgdが伝搬する配線パターンp2の配線長を短くすることができる。また、トランジスターM2の駆動を制御するゲート信号Lgdが出力される集積回路500の端子Ldrとゲート信号Lgdが入力されるトランジスターM2の端子gtとの最短距離を、
集積回路500の端子Ldrとゲート信号Lgdが入力されないトランジスターM2の端子stとの最短距離よりも短くすることで、集積回路500とトランジスターM2との間においてゲート信号Lgdが伝搬する配線パターンp4の配線長を短くすることができる。これにより、駆動信号出力回路51a,51bにおいて大電流の駆動信号COMA,COMBを出力する場合であっても、ゲート信号Hgd,Lgdが伝搬する配線パターンp2,p4に、当該大電流に起因したノイズが重畳するおそれが低減される。よって、ゲート信号Hgd,Lgdによって駆動するトランジスターM1,M2の動作が安定し、その結果、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBの波形精度が向上する。
【0156】
また、本実施形態における液体吐出装置1では、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBにより駆動される圧電素子60の数が増加した場合であっても、トランジスターM1,M2に入力されるゲート信号Hgd,Lgdにノイズが重畳するおそれが低減されているが故に、トランジスターM1,M2の動作の安定性を保つことができ、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBの波形精度を向上することができるが故に、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBにより駆動される圧電素子60の数が5000個以上である場合や、液体吐出装置1が、A4サイズ以上の媒体Pに対してインクを吐出するラインヘッドを備えたライン型のインクジェットプリンターの場合であっても、駆動信号出力回路51a,51bの動作の安定性を向上することができるとともに、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBの波形精度を向上することができる。
【0157】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0158】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0159】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0160】
液体吐出装置の一態様は、
圧電素子を含み、前記圧電素子が駆動することで液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
第1制御信号を出力する第1出力端子と、第2制御信号を出力する第2出力端子とを有する集積回路と、
前記第1制御信号が入力される第1トランジスターと、
前記第2制御信号が入力される第2トランジスターと、
一端が前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターと電気的に接続し、他端が前記吐出ヘッドと電気的に接続しているコイルと、
基板と、
を有し、
前記集積回路、前記第1トランジスター、前記第2トランジスター、及び前記コイルは、前記基板に設けられ、
前記第1トランジスターは、表面実装型のフラットノンリードパッケージであって、第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて第2端子と第3端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、
前記第2トランジスターは、表面実装型のフラットノンリードパッケージであって、第4端子に入力される前記第2制御信号に応じて第5端子と第6端子とが電気的に接続されるか否かが変化し、
前記第1出力端子と前記第1端子との最短距離は、前記第1出力端子と前記第2端子との最短距離よりも小さく、
前記第2出力端子と前記第4端子との最短距離は、前記第2出力端子と前記第5端子との最短距離よりも小さい。
【0161】
この液体吐出装置によれば、圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動信号出力回路は、集積回路が第1出力端子から出力する第1制御信号が第1端子に入力されるとともに、第1端子に入力される第1制御信号に応じて第2端子と第3端子とが電気的に接続されるか否かが変化する第1トランジスターと、集積回路が第2出力端子から出力する第2制御信号が第4端子に入力されるとともに、第4端子に入力される第2制御信号に応じて第5端子と第6端子とが電気的に接続されるか否かが変化する第2トランジスターとを有する。この場合において、集積回路の第1出力端子と第1端子の最短距離が集積回路の第1出力端子と第2端子の最短距離よりも小さく、集積回路の第2出力端子と第4端子の最短距離が集積回路の第2出力端子と第5端子の最短距離よりも小さくなるように、集積回路、第1トランジスター、及び第2トランジスターが位置している。これにより、第1制御信号が第1出力端子から第1端子に伝搬される配線、及び第2制御信号が第2出力端子から第4端子に伝搬される配線の配線長を短くすることができ、第1制御信号、及び第2制御信号にノイズ等が干渉するおそれが低減する。すなわち、駆動信号出力回路が大電流を出力する場合であっても、当該大電流に起因して生じたノイズによって第1制御信号、及び第2制御信号の波形に歪が生じるおそれが低減する。よって、第1制御信号により制御される第1トランジスター、及び第2制御信号により制御される第2トランジスターの動作が安定し、第1トランジスター及び第2トランジスターの動作が安定することで、駆動信号出力回路の動作が安定し、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度が向上する。
【0162】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記基板は、前記第1出力端子と前記第1端子とを電気的に接続する信号配線を含み、
前記集積回路及び前記第1トランジスターと前記信号配線とは、前記基板の同一配線層に設けられていてもよい。
【0163】
この液体吐出装置によれば、第1制御信号が伝搬される信号配線にビア等を設ける必要がなく、第1制御信号の波形に歪が生じるおそれがさらに低減される。
【0164】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記駆動信号出力回路は、D級増幅回路を含み、
前記第1トランジスターと前記第2トランジスターとは、復調前のデジタル信号を増幅するデジタル増幅部を構成し、
前記コイルは、前記デジタル増幅部の出力を復調し前記駆動信号を出力するローパスフィルターを構成してもよい。
【0165】
この液体吐出装置によれば、駆動信号出力回路を、第1トランジスターと第2トランジスターとがデジタル増幅部を構成し、コイルが駆動信号を出力するローパスフィルターを構成するD級増幅回路とすることで、駆動信号出力回路における消費電力を低減できる。
【0166】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1トランジスターの駆動周波数は、1MHz以上8MH以下であってもよい。
【0167】
この液体吐出装置によれば、駆動信号出力回路が有する第1トランジスターの駆動周波数を1MHz以上8MHz以下とすることで、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度を向上させつつ、駆動信号出力回路の消費電力、及び発熱を低減できる。
【0168】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1トランジスターの駆動周波数は、1MHz以上4MH以下であってもよい。
【0169】
この液体吐出装置によれば、駆動信号出力回路が有する第1トランジスターの駆動周波数を1MHz以上4MHz以下とすることで、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度を向上させつつ、駆動信号出力回路で生じる消費電力、及び発熱をさらに低減できる。
【0170】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記吐出ヘッドは、A4サイズ以上の媒体に液体の吐出が可能なラインヘッドであってもよい。
【0171】
この液体吐出装置によれば、吐出ヘッドがA4サイズ以上の媒体に液体の吐出が可能なラインヘッドのように、駆動信号出力回路が出力する駆動信号により駆動される多くの圧電素子を有する場合であっても、第1制御信号、及び第2制御信号の波形に歪が生じるおそれが低減できるが故に、第1制御信号により制御される第1トランジスター、及び第2制御信号により制御される第2トランジスターの動作が安定し、第1トランジスター及び第2トランジスターの動作が安定する。よって、駆動信号出力回路の動作が安定し、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度が向上する。
【0172】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記吐出ヘッドは、5000個以上の前記圧電素子を含み、
前記駆動信号出力回路は、前記5000個以上の前記圧電素子に前記駆動信号を供給してもよい。
【0173】
この液体吐出装置によれば、吐出ヘッドが、駆動信号出力回路が出力する駆動信号により駆動される5000個以上の圧電素子を有する場合であっても、第1制御信号、及び第2制御信号の波形に歪が生じるおそれが低減できるが故に、第1制御信号により制御される第1トランジスター、及び第2制御信号により制御される第2トランジスターの動作が安定し、第1トランジスター及び第2トランジスターの動作が安定する。よって、駆動信号出力回路の動作が安定し、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度が向上する。
【0174】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1端子は、前記第1トランジスターの角部に位置していてもよい。
【0175】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第3端子には、前記駆動信号の高電位を規定する高電位電圧が供給され、
前記第5端子には、グラウンド電位が供給され、
前記第1端子と前記第1出力端子との最短距離は、前記第2端子と前記第2出力端子との最短距離よりも大きくてもよい。
【0176】
この液体吐出装置によれば、
低電位側に位置する第2トランジスターを制御する第2制御信号が伝搬する配線長を、
高電位側に位置する第1トランジスターを制御する第1制御信号が伝搬する配線長よりも短くすることができる。
【0177】
第2トランジスターは、第1トランジスターよりも、低電位側に位置するが故に、第2トランジスターを制御する第2制御信号の電位は、第1トランジスターを制御する第1制御信号の電位よりも小さく、そのため、第2制御信号は、第1制御信号よりも配線インピーダンスの影響を受けやすい。この液体吐出装置によれば、低電位側に位置する第2トランジスターを制御する第2制御信号が伝搬する配線長を、高電位側に位置する第1トランジスターを制御する第1制御信号が伝搬する配線長よりも短くすることで、第2制御信号に対する配線インピーダンスの影響を低減することができ、その結果、駆動信号出力回路の動作の安定性がさらに向上する。
【0178】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第2端子と前記第6端子とは向かい合って位置し、且つ前記第2端子と前記第6端子との間には、前記第1端子、前記第3端子、前記第4端子、及び前記第5端子が位置しないように、前記第1トランジスターと前記第2トランジスターとが位置していてもよい。
【0179】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1トランジスターは、第1辺と、前記第1辺と異なる第2辺とを含み、
前記第1端子と前記第2端子とは、前記第1辺に沿って並んで位置し、
前記第3端子は、前記第2辺に沿って位置していてもよい。
【0180】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1端子と前記基板とが接触する第1接触部の面積は、前記第2端子が前記基板と接触する第2接触部の面積よりも小さく、
前記第2端子と前記基板とが接触する前記第2接触部の面積は、前記第3端子が前記基板と接触する第3接触部の面積よりも小さくてもよい。
【0181】
この液体吐出装置によれば、第1トランジスターにおいて、第1端子と基板とが接触する第1接触部の面積を、第2端子が基板と接触する第2接触部の面積、及び第3端子が基板と接触する第3接触部の面積よりも小さくすることで、第2端子と基板との間における接触抵抗、及び第3端子と基板との間における接触抵抗を小さくすることができる。これにより、第1端子に入力される第1制御信号により第2端子と第3端子と電気的接続状態が制御されている場合に、第1トランジスターにおける発熱を低減できる。これにより、第1トランジスターで生じる発熱によって、駆動信号出力回路が備える電子部品の特性が変化するおそれが低減し、その結果、駆動信号出力回路の動作がさらに安定するとともに、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度がさらに向上する。
【符号の説明】
【0182】
1…液体吐出装置、2…ヘッドユニット、5…液体容器、10…制御ユニット、20…プリントヘッド、40…搬送ユニット、41…搬送モーター、45…搬送モータードライバー、50…駆動回路、51a,51b…駆動信号出力回路、55…配線基板、60…圧電素子、100…制御回路、110…電圧出力回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232
a,232b…インバーター、234a,234b…トランスファーゲート、500…集積回路、510…変調回路、512,513…加算器、514…コンパレーター、515…インバーター、516…積分減衰器、517…減衰器、520…ゲートドライブ回路、521,522…ゲートドライバー、550…増幅回路、560…平滑回路、570,572…帰還回路、580…電源回路、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、C1,C2,C3,C4,C5,Cd…コンデンサー、C1a,C1b…端子、D1…ダイオード、L1…コイル、L1a,L1b…端子、M,M1,M2…トランジスター、P…媒体、Pck…筐体、R1,R2,R3,R4,R5,R6…抵抗、e1,e2,e3,e4…辺