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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両のドアハンドル構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20241016BHJP
   E05B 81/06 20140101ALI20241016BHJP
   E05B 81/16 20140101ALI20241016BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20241016BHJP
   E05B 81/36 20140101ALI20241016BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E05B85/16 D
E05B81/06
E05B81/16
E05B79/22 A
E05B81/36
B60J5/04 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021015645
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118865
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】倉本 英介
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/125653(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0000167(US,A1)
【文献】特開2004-244991(JP,A)
【文献】特表2019-518892(JP,A)
【文献】特開2017-066605(JP,A)
【文献】特表2021-502506(JP,A)
【文献】特開2018-090962(JP,A)
【文献】特開2002-339621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルから出没可能なレバーを一端に有し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、
上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、
上記レバーは、上記ドアパネルと面一になる格納位置と、
上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、
上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、
上記レバーは上記回動支軸に設けられた付勢手段により格納方向に付勢されており、
上記格納位置における上記レバーの車両内方に対向して近接配置され、上記駆動装置と電気的に接続されるスイッチを備え、
上記駆動装置は、上記格納位置から上記開放位置の領域でモータと上記ヒンジアームとに連結され、該モータからの出力を上記ヒンジアームに伝達する出力軸と、を備え、
上記格納位置から上記把持位置に上記レバーを移動させる際は、上記モータから上記出力軸を介して上記ヒンジアームに動力を伝達し、
上記開放位置から上記把持位置に上記レバーを移動させる際は、上記ヒンジアームから上記出力軸を介して上記モータに動力を伝達することを特徴とする
車両のドアハンドル構造。
【請求項2】
上記レバーを一端に有し、上記回動支軸を介して他端に上記駆動装置を有する上記ヒンジアームと、
上記回動支軸を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持するブラケットと、
上記ブラケットに固定されたセクタギヤと、
上記出力軸に嵌合されて上記セクタギヤに噛合するピニオンギヤと、を備えた
請求項1に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項3】
上記回動支軸を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持するブラケットを備えており、
上記駆動装置は、基端が上記出力軸に固定され、遊端に摺動部材を有するクランクを備え、
上記ブラケットに上記摺動部材の軌跡を案内するガイド部を備えた
請求項1に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項4】
上記ヒンジアームを上記レバーの把持位置で仮保持する仮保持機構を備えた
請求項1~3の何れか一項に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項5】
上記ヒンジアームと上記セクタギヤとは同一の上記回動支軸に設けられた
請求項2に記載の車両のドアハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアハンドルレバーの格納時に、当該ドアハンドルレバーとドアアウタパネルとが面一になるような車両のドアハンドル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、ドアハンドルレバー(いわゆるレバー)をドアアウタパネルと面一になるように格納するフラッシュサーフェイス(flush surface)構造の車両のドアハンドル構造が知られている。
【0003】
該特許文献1に開示された車両のドアハンドル構造は、ドアハンドルレバーを、上下方向に延びる軸で支持し、この軸に設けたバネにより上記ドアハンドルレバーを格納方向に付勢すると共に、当該レバーの軸近傍に設けた凸部をオルタネイト機構により操作して、該レバーを突出させるように構成したシーソー式のドアハンドル構造である。
【0004】
また、上述の特許文献1に開示された車両のドアハンドル構造は、格納位置におけるドアハンドルレバーの車両内方にスイッチを設け、当該スイッチにより駆動装置を起動させて、上記ドアハンドルレバーを突出させ、格納時においては上記バネの付勢力にてドアハンドルレバーを格納状態に成すものである。
【0005】
しかしながら、ドアハンドルレバーの開放位置において上記バネの付勢力により当該ドアハンドルレバーを格納位置に戻す際、勢いが強い場合には、ドアハンドルレバーで車両内方のスイッチが押されることに起因して、駆動装置により再度ドアハンドルレバーが突出するという問題点があった。また、ドアハンドルレバーが高速で格納され、ドアハンドルレバーとスイッチが衝突する衝突音が生じるため、視覚的、聴覚的な品質感を損なうといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-94455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、レバーを格納位置に戻す時、レバーの戻り速度を適度に減速させることで、レバーの車両内方に設けられたスイッチに入力される荷重の低減を図り、駆動装置の誤作動を防止すると共に、視覚的、聴覚的な作動状態の品質感を向上することができる車両のドアハンドル構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両のドアハンドル構造は、ドアパネルから出没可能なレバーを一端に有し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、上記レバーは、上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、上記レバーは上記回動支軸に設けられた付勢手段により格納方向に付勢されており、上記格納位置における上記レバーの車両内方に対向して近接配置され、上記駆動装置と電気的に接続されるスイッチを備え、上記駆動装置は、上記格納位置から上記開放位置の領域でモータと上記ヒンジアームとに連結され、該モータからの出力を上記ヒンジアームに伝達する出力軸と、を備え、上記格納位置から上記把持位置に上記レバーを移動させる際は、上記モータから上記出力軸を介して上記ヒンジアームに動力を伝達し、上記開放位置から上記把持位置に上記レバーを移動させる際は、上記ヒンジアームから上記出力軸を介して上記モータに動力を伝達するものである。
【0009】
上記構成によれば、レバーを開放位置から把持位置に移動させる場合には、上記付勢手段によりヒンジアームから上記出力軸を介してモータに動力が伝達される。これにより該モータに回転トルクが与えられ、該モータが回転することで、電気的なブレーキ力を発生させるので、付勢手段による格納方向の力に対してブレーキをかけることができる。
【0010】
この結果、レバーを格納位置に戻す時、レバーの戻り速度を適度に減速させ、レバー内側のスイッチに入力される荷重を低減して、駆動装置の誤作動を防止すると共に、視覚的、聴覚的な作動状態の品質感を向上することができる。ここで、視覚的、聴覚的な作動状態の品質感とは、衝撃音や振動のない滑らかな動きを云う。また、電気的なブレーキ力とは、モータが回転することで、誘導起電力によりモータ端子間に電圧を生じ、端子間を接続して閉回路を形成すると、回路に電流が流れて回転方向と逆向きのトルクを発生させることである。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記レバーを一端に有し、上記回動支軸を介して他端に上記駆動装置を有する上記ヒンジアームと、上記回動支軸を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持するブラケットと、上記ブラケットに固定されたセクタギヤと、上記出力軸に嵌合されて上記セクタギヤに噛合するピニオンギヤと、を備えたものである。
【0012】
上記構成によれば、歯車の噛み合い、すなわち、セクタギヤとピニオンギヤとの噛合により、ヒンジアームに対してモータ動力を伝達することができる。
また、上記ヒンジアームの一端にレバーを、他端に駆動装置をそれぞれ設けることで、上述のモータには、レバーに対するカウンタウエイト(counter weight、釣り合い重り)の機能をもたせることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記回動支軸を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持するブラケットを備えており、上記駆動装置は、基端が上記出力軸に固定され、遊端に摺動部材を有するクランクを備え、上記ブラケットに上記摺動部材の軌跡を案内するガイド部を備えたものである。
【0014】
上述の摺動部材としては、クランク遊端に設けられるローラを採用してもよく、また上述のガイド部としては、ブラケットに設けられるガイド溝やリブによる案内溝を採用してもよい。
【0015】
上記構成によれば、ガイド部によりクランクの摺動部材を案内するので、レバーが格納位置から把持位置を経て開放位置に至るレバー突出時と、レバーが開放位置から把持位置を経て格納位置に至るレバー格納時と、で、摺動部材が同一軌跡を移動する。これにより、上記出力軸に回転力を付加することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジアームを上記レバーの把持位置で仮保持する仮保持機構を備えたものである。
上記構成によれば、モータを駆動し続けなくても把持位置でヒンジアームを仮保持することができるので、モータに対する負荷の低減を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジアームと上記セクタギヤとは同一の上記回動支軸に設けられたものである。
上記構成によれば、ヒンジアームとセクタギヤの位置決めが正確となり、ヒンジアームを確実に駆動することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、レバーを格納位置に戻す時、レバーの車両内方に設けられたスイッチに入力される荷重の低減を図り、駆動装置の誤作動を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両のドアハンドル構造を備えた実施例1の車両の側面図。
図2図1の要部拡大側面図。
図3】レインフォースメントの配置構造を示す内側面図。
図4】レバーの格納状態を示す図1のA-A線矢視断面図。
図5】レバーおよびヒンジアームの斜視図。
図6】レバーを含むブラケットの外側面図。
図7】駆動装置を示す平面図。
図8】レバーの把持位置を示す平面図。
図9】レバーの開放位置を示す平面図。
図10】スイッチ押圧位置を仮想線で示す平面図。
図11図4のスイッチ配設部の拡大断面図。
図12図8の仮保持機構配設部の拡大断面図。
図13】実施例2のレバー格納状態を示す断面図。
図14】駆動装置を示す平面図。
図15】付勢手段による付勢構造を示す平面図。
図16】レバーの突出初期位置を示す平面図。
図17】レバーの把持位置を示す平面図。
図18】レバーの開放位置を示す平面図。
図19】レバーのスイッチ押圧位置を示す平面図。
図20】ブラケットの内側面図。
図21図20のB-B線矢視断面図。
図22】レバー、ヒンジアームおよび摺動部材の移動軌跡を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
レバーを格納位置に戻す時、レバーの車両内方に設けられたスイッチに入力される荷重の低減を図り、駆動装置の誤作動を防止するという目的を、ドアパネルから出没可能なレバーを一端に有し、該レバーが上記ドアパネルから突出するように回動させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記レバーが上記ドアパネルから突出するように上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、上記レバーは、上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記把持位置よりもさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、上記レバーは上記回動支軸に設けられた付勢手段により格納方向に付勢されており、上記格納位置における上記レバーの車両内方に対向して近接配置され、上記駆動装置と電気的に接続されるスイッチを備え、上記駆動装置は、上記格納位置から上記開放位置の領域でモータと上記ヒンジアームとに連結され、該モータからの出力を上記ヒンジアームに伝達する出力軸と、を備え、上記格納位置から上記把持位置に上記レバーを移動させる際は、上記モータから上記出力軸を介して上記ヒンジアームに動力を伝達し、上記開放位置から上記把持位置に上記レバーを移動させる際は、上記ヒンジアームから上記出力軸を介して上記モータに動力を伝達するという構成にて実現した。
【実施例1】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のドアハンドル構造を示し、図1は当該ドアハンドル構造を備えた車両の側面図、図2図1の要部拡大側面図、図3はレインフォースメントの配置構造を示す内側面図である。
【0022】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
また、本発明の車両のドアハンドル構造は、4ドアタイプの車両のフロントドア、リヤドアやリフトゲート等にも適用できるが、以下の実施例においては2ドアタイプの車両のドアハンドルに適用した構造について述べる。
【0023】
図1に示すように、車室前方部において上下方向に延びるヒンジピラー1と、車両下部において車両前後方向に延びるサイドシル2と、ヒンジピラー1の上端から後方かつ上方に向けて斜め方向に延びるフロントピラー3と、フロントピラー3の後端に連続して車両後方に延びるルーフサイドレール4と、ルーフサイドレール4とサイドシル2とを略上下方向に連結する後部ピラー5と、を備えている。
【0024】
上述のヒンジピラー1、サイドシル2、フロントピラー3、ルーフサイドレール4および後部ピラー5で囲繞されたドア開口部6を形成している。
上述のヒンジピラー1に上下一対のドアヒンジ7,7を介して開閉可能に取付けたサイドドア8により、上記ドア開口部6を開閉すべく構成している。
【0025】
図1図2に示すように、サイドドア8はドア本体9とドアウインド部材としてのドアウインドガラス10とを有しており、図2図3に示すように、ドア本体9はドアアウタパネル11と、図示しないドアインナパネルと、ドアアウタパネル11の車幅方向内側かつ後部側に設けられたレインフォースメント12と、を備えている。
この実施例では、上述のドアアウタパネル11と、レインフォースメント12と、でドアパネルを構成している。
【0026】
図3に示すように、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の後部上側には、後述するレバー20を収容する開口部13(レバー開口部)と、当該開口部13の縁部を全周にわたるバーリング加工により折曲げ形成したフランジ部14と、を備えている。
【0027】
また、図3に示すように、レインフォースメント12の上部および下部には上部開口12a、下部開口12bがそれぞれ形成されると共に、これら上下の各開口12a,12b間には、後述するブラケット50を取付けるための開口部12c(ブラケット開口部)が形成されている。
【0028】
図4はレバー20の格納状態を示す図1のA-A線矢視断面図、図5はレバー20およびヒンジアーム30の斜視図、図6はレバー20を含むブラケット50の外側面図である。
【0029】
また、図7は駆動装置40を示す平面図、図8はレバー20の把持位置を示す平面図、図9はレバー20の開放位置を示す平面図、図10はスイッチ70の押圧位置を仮想線αで示す平面図である。
【0030】
図4に示すように、車両のドアハンドル構造は、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の開口部13から出没可能なレバー20(詳しくは、ドアハンドルレバー)と、該レバー20を有するスワンネック(swan-neck)構造のヒンジアーム30と、レバー20がドアアウタパネル11から突出するようにヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備えている。また、レバー20を収容しドアパネルとしてのレインフォースメント12に固定されるブラケット50を備えている。
【0031】
上述のレバー20は、図4図5に示すアウタカバー21と、インナカバー22との周縁部を凹凸嵌合および接合固定したもので、該レバー20およびドアアウタパネル11の開口部13は側面視で車両前後方向に長い長円形状に形成されている。
【0032】
図5に示すように、上述のインナカバー22外側におけるヒンジアーム30が挿通する開口23(図4参照)の前部には、ブラケット50の対向壁(図示せず)と当接して前記レバー20の揺動時に支点となる舌片形状の突出部28が形成されている。
【0033】
また、図5に示すように、上述の開口23(図4参照)の車幅方向内側には、ヒンジアーム30を離間して囲繞する筒部29が形成されている。
上述のヒンジアーム30は、図4に示すように、一端(この実施例では後端)に上述のレバー20を有し、該レバー20がドアアウタパネル11から突出するように回動させる回動支軸としてのヒンジピン31を備えている。このヒンジピン31は上述のブラケット50に固定され上下方向に指向している。
【0034】
また、上述のヒンジアーム30は、図4に示すように、ヒンジピン31を枢支する枢支部32と、この枢支部32からスワンネック形状のネック部33を介して後方に延びるレバー支持部34と、枢支部32から上記ネック部33とは反対側の車両前方に延びる延出部35と、を一体的に備えている。上述のレバー支持部34は、アウタカバー21とインナカバー22とから成るレバー20の内部に配置されている。
【0035】
図4に示すように、ヒンジアーム30の延出部35には、駆動装置40をアセンブリするモータベース41が取付けられている。
また、図4に示すように、上述のヒンジピン31と同軸上には、クランクプレート60が設けられている。このクランクプレート60の後側かつ車幅方向外側には、レバー20およびヒンジアーム30が把持位置(図8参照)に回動した時、ヒンジアーム30のネック部33と当接係止される縦壁61が一体形成されている。
【0036】
さらに、上述のクランクプレート60の車幅方向内端部には、ドアラッチ(図示せず)を解除するレリーズワイヤ62が固定されている。このクランクプレート60は、バネ力が大きいコイルスプリング(図示せず)により常時反レリーズ方向にバネ付勢されている。
【0037】
一方、上述のヒンジピン31には付勢手段としてのトーションスプリング36が巻回されている。このトーションスプリング36の一端36aが図4に示すクランクプレート60に係止され、トーションスプリング36の他端36bが図5に示すように、ヒンジアーム30の延出部35に係止されている。これにより、該トーションスプリング36によりレバー20を常時格納方向にバネ付勢している。
このトーションスプリング36のバネ力は、クランクプレート60を反レリーズ方向に付勢するコイルスプリング(図示せず)に対して、小さく設定されている。
【0038】
次に、図7を参照してヒンジアーム30の他端側(延出部35側参照)に動力を伝達する駆動装置40の構成について説明する。
この駆動装置40はヒンジアーム30と同軸上のヒンジピン31に固定したセクタギヤG1を備えている。このセクタギヤG1はヒンジピン31に嵌合されると共に、上述のブラケット50に取付けられていて、位置不変に形成されている。
【0039】
上述のモータベース41にはモータ42が取付けられている。モータ42の回転軸43には出力ギヤG2が嵌合されている。モータベース41に設けられた軸44にはピニオンギヤG3を備えたアイドルギヤG4が設けられている。また、モータベース41に設けられた出力軸45には、ピニオンギヤG5を備えた従動ギヤG6が設けられている。上述の出力軸45はピニオンギヤG5を介してモータ42からの出力を上記ヒンジアーム30に伝達する軸である。
【0040】
図7に示すように、出力ギヤG2はアイドルギヤG4と噛合している。ピニオンギヤG3は従動ギヤG6と噛合している。ピニオンギヤG5はセクタギヤG1と噛合している。これにより、モータ42を駆動して、その回転軸43および出力ギヤG2を、図7の反時計方向に回転させると、各ギヤG2,G4,G3,G6および出力軸45をこの順に介してピニオンギヤG5が図7の反時計方向に回転する。
【0041】
ピニオンギヤG5が図7の反時計方向に回転すると、セクタギヤG1は位置不変であるから、各要素G2~G6から成る歯車列46(gear train)と、モータ42と、モータベース41とは、セクタギヤG1の扇形状に沿ってレバー20突出方向に移動し、ヒンジアーム30を介してレバー20を突出させる。
【0042】
上述のレバー20は、そのアウタカバー21がドアアウタパネル11と面一になる格納位置(図4参照)と、駆動装置40によりレバー20の格納位置において面一になる意匠面全体がドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(図8参照)と、この把持位置よりもさらに突出する開放位置(図9参照)と、の間で回動可能に構成されている。
【0043】
図4に示す格納位置から図8に示す把持位置までの間は、駆動装置40によりレバー20を回動することができる。また、ヒンジアーム30が図4に示す格納位置から図8に示す把持位置に達するまでの間においては、クランクプレート60は動くことなく、バネ力の強いコイルスプリング(図示せず)により反レリーズ方向に付勢されている。
【0044】
図8に示す把持位置においては、レバー20がドアアウタパネル11から外方に突出してユーザが当該レバー20を把持できるので、図8に示す把持位置から図9に示す開放位置へはユーザによりレバー20を開放することができる。
【0045】
図8に示すように、ヒンジアーム30が把持位置に達すると、当該ヒンジアーム30のネック部33がクランクプレート60の縦壁61に当接するので、図示しないコイルスプリングのバネ力に抗してレバー20が開放方向に回動操作されると、クランクプレート60がレリーズ方向に回動し、レリーズワイヤ62を介してドアラッチを解除する。
【0046】
ところで、上述のブラケット50は、図4に示すように、開口部13と連通するレバー20の格納空間52と、ヒンジアーム30の挿通孔53とを備えている。
また、上述のブラケット50は、図6に示すように、前側取付け部54と、上側取付け部55と、下側取付け部56と、後側取付け部57と、をそれぞれ備えている。
【0047】
図6図3に示すように、ブラケット50の前側取付け部54はレインフォースメント12の開口部12c周縁の前側取付け座12dに締結固定される。同様に上側、下側の各取付け部55,56はレインフォースメント12の開口部12c周縁の上側取付け座12e、下側取付け座12fにそれぞれ締結固定される。
【0048】
図3図4に示すように、レインフォースメント12の開口部12cにおける後側周縁には、車幅方向外方に延びる切起こし部12gが一体形成されており、図6に示すブラケット50の後側取付け部57は、上記切起こし部12gに締結固定される。
【0049】
一方、図4に示すように、格納位置におけるレバー20の車両内方、詳しくは、インナカバー22の後端部と対向するブラケット50の後端側の車幅方向内側にはインナカバー22の後端部と近接してスイッチ70が配置されている。
このスイッチ70は、モータ42と制御装置を介して電気的に接続されており、当該スイッチ70の押圧操作時にONとなり、モータ42への通電を行なうものである。
【0050】
また、図4に示すように、上記スイッチ70の前側近傍におけるブラケット50にはキーシリンダ15が配置されている。
さらに、図4に示すように、レバー20の格納位置において、ヒンジアーム30のネック部33とキーシリンダ15との間のブラケット50の所定位置には、ヒンジアーム30を図8に示す把持位置で仮保持する仮保持機構80が配置されている。
【0051】
図10に示すように、上記レバー20はヒンジアーム30のレバー支持部34に対して揺動可能に設けられているので、格納位置にあるレバー20の後端部を外方から押圧すると、図10に仮想線αで示すように、レバー20の後端部が車幅方向内側に揺動変位して、スイッチ70をONにするスイッチ押圧位置となる。
【0052】
要するに、ドアアウタパネル11から出没可能なレバー20を一端に有し、該レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出するように回動させるヒンジピン31を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備え、上記レバー20は、上記ドアアウタパネル11と面一になる格納位置(図4参照)と、上記駆動装置40により上記レバー20が上記ドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(図8参照)と、上記把持位置よりもさらに突出する開放位置(図9参照)と、の間で回動可能に構成され、上記レバー20は上記ヒンジピン31に設けられたトーションスプリング36により格納方向に付勢されており、上記格納位置における上記レバー20の車両内方に対向して近接配置され、上記駆動装置40と電気的に接続されるスイッチ70を備えたものである。
【0053】
図7に示すように、上述の駆動装置40は、モータ42と、該モータ42からの出力をヒンジアーム30に伝達する出力軸45と、を備えており、レバー20を図4に示す格納位置から図8に示す把持位置に移動させる場合には、モータ42から出力軸45を介してヒンジアーム30に動力を伝達する。
【0054】
逆に、上述のレバー20を図9に示す開放位置から図8に示す把持位置に移動する場合には、駆動装置40はヒンジアーム30から出力軸45を介してモータ42に動力を伝達するように構成している。詳しくは、レバー20を開放位置から把持位置に移動する場合には、図7に示す各要素35,41,G5,45,G6,G3,44,G4,G2,43をこの順に介してモータ42に動力が伝達される。
【0055】
このように、レバー20を開放位置から把持位置に移動する場合には、トーションスプリング36によりヒンジアーム30から出力軸45を介してモータ42に動力が伝達される。これにより、モータ42に回転トルクが与えられ、モータ42に電圧が生じ抵抗となるので、トーションスプリング36による格納方向の力に対してブレーキをかけることができる。この結果、レバー20の移動速度(戻り速度)が低減され、レバー20内側のスイッチ70に入力される荷重を低減して、駆動装置(特に、モータ42)の誤作動を防止するように構成したものである。
【0056】
また、図4図7に示すように、レバー20を一端に有し、回動支軸としてのヒンジピン31を介して他端に駆動装置40を有するヒンジアーム30と、ヒンジピン31を介してヒンジアーム30を回動可能に支持するブラケット50と、該ブラケット50に固定されたセクタギヤG1と、出力軸45に嵌合されてセクタギヤG1に噛合するピニオンギヤG5と、を備えている。
【0057】
これにより、歯車の噛み合い、すなわち、セクタギヤG1とピニオンギヤG5との噛合により、ヒンジアーム30に対してモータ動力を伝達するように構成している。
また、ヒンジアーム30の一端にレバー20を設け、他端に駆動装置(特に、モータ42)を設けることで、上述のモータ42には、レバー20に対するカウンタウエイトの機能をもたせるように構成したものである。
【0058】
図11図4のスイッチ配設部の拡大断面図である。
同図に示すように、上述のスイッチ70は、内側ハウジング71と外側ハウジング72とを備えている。内側ハウジング71にはスイッチ本体73を収納しており、外側ハウジング72にはピストン74と、該ピストン74と一体的に軸動するスプリングガイド75と、ピストン74を常時外方にバネ付勢するスプリング76と、を収納している。
【0059】
上述のスプリングガイド75のスイッチ本体73側にはスイッチングロッド77を一体的に設け、ピストン74のレバー20側にはピン78を一体的に設けている。また、当該ピン78の外方を覆うバンパラバー79を設け、該バンパラバー79のフランジ部79aをブラケット50と外側ハウジング72との間で挟持固定している。
【0060】
レバー20の格納位置においてはスイッチングロッド77とスイッチ本体73のプッシュロッド73aとは離間している。
レバー20がスイッチ押圧位置(図10の仮想線α参照)に操作されると、バンパラバー79を介してピン78、ピストン74、スプリングガイド75、スイッチングロッド77がスプリング76の付勢力に抗して押圧され、スイッチングロッド77でプッシュロッド73aを押下げてスイッチ本体73がONになるように構成している。
【0061】
図12図8の仮保持機構配設部の拡大断面図である。
ヒンジアーム30をレバー20の把持位置(図8参照)で仮保持する仮保持機構80は次のように構成している。
【0062】
すなわち、仮保持機構80は、ハウジング81を備えており、該ハウジング81には支軸82を介してアーム部83を枢支している。アーム部83の一端にはローラ軸84を介してローラ85を設けている。
【0063】
また、アーム部83の一端側とハウジング81との間には、上述のローラ85を常時突出方向に付勢するスプリング86が設けられている。
さらに、アーム部83の他端側と対応する位置には位置検出機構としてのスイッチ部87が配置されている。
【0064】
図4に示すレバー20の格納位置にあっては、スプリング86の付勢力に抗して、ローラ85がヒンジアーム30で押圧され、アーム部83の他端はスイッチ部87のプッシュロッド88から離間している(スイッチ部87のOFF状態)。
【0065】
図8図12に示すように、レバー20が把持位置に突出すると、ローラ85は、スプリング86の付勢力により、ヒンジアーム30の中間に位置する凹状の変曲部30aに突出し、アーム部83が回動することで、ローラ85およびアーム部83にてヒンジアーム30を仮保持すると共に、アーム部83の他端部にてスイッチ部87のプッシュロッド88を押下げて、該スイッチ部87をONにする。
このような仮保持機構80を設けることで、モータ42を駆動し続けなくても把持位置でヒンジアーム30を仮保持するように構成したものである。
【0066】
このように、図1図12で示した実施例1の車両のドアハンドル構造は、ドアパネル(ドアアウタパネル11)から出没可能なレバー20を一端に有し、該レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように回動させる回動支軸(ヒンジピン31)を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備え、上記レバー20は、上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)と面一になる格納位置(図4参照)と、上記駆動装置40により上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出してユーザが把持できる把持位置(図8参照)と、上記把持位置よりもさらに突出する開放位置(図9参照)と、の間で回動可能に構成され、上記レバー20は上記回動支軸(ヒンジピン31)に設けられた付勢手段(トーションスプリング36)により格納方向に付勢されており、上記格納位置における上記レバー20の車両内方に対向して近接配置され、上記駆動装置40と電気的に接続されるスイッチ70を備え、上記駆動装置40は、上記格納位置から上記開放位置の領域で上記モータと上記ヒンジアームとに連結され、該モータ42からの出力を上記ヒンジアーム30に伝達する出力軸45と、を備え、上記格納位置から上記把持位置に上記レバー20を移動させる際は、上記モータ42から上記出力軸45を介して上記ヒンジアーム30に動力を伝達し、上記開放位置から上記把持位置に上記レバー20を移動させる際は、上記ヒンジアーム30から上記出力軸45を介して上記モータ42に動力を伝達するものである(図4図7図8図9参照)。
【0067】
この構成によれば、レバー20を開放位置から把持位置に移動させる場合には、上記付勢手段(トーションスプリング36)によりヒンジアーム30から上記出力軸45を介してモータ42に動力が伝達される。これにより該モータ42に回転トルクが与えられ、該モータ42が回転することで、電気的なブレーキ力を発生させるので、付勢手段(トーションスプリング36)による格納方向の力に対してブレーキをかけることができる。
【0068】
この結果、レバー20を格納位置に戻す時、レバー20の戻り速度を適度に減速させ、レバー20内側のスイッチ70に入力される荷重を低減して、駆動装置40の誤作動を防止すると共に、視覚的、聴覚的な作動状態の品質感を向上することができる。
【0069】
また、この発明の一実施形態においては、上記レバー20を一端に有し、上記回動支軸(ヒンジピン31)を介して他端に上記駆動装置40を有する上記ヒンジアーム30と、上記回動支軸(ヒンジピン31)を介して上記ヒンジアーム30を回動可能に支持するブラケット50と、上記ブラケット50に固定されたセクタギヤG1と、上記出力軸45に嵌合されて上記セクタギヤG1に噛合するピニオンギヤG5と、を備えたものである(図4図7参照)。
【0070】
この構成によれば、歯車の噛み合い、すなわち、セクタギヤG1とピニオンギヤG5との噛合により、ヒンジアーム30に対してモータ動力を伝達することができる。
また、上記ヒンジアーム30の一端にレバー20を、他端に駆動装置40をそれぞれ設けることで、上述のモータ42には、レバー20に対するカウンタウエイト(counter weight、釣り合い重り)の機能をもたせることができる。
【0071】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記ヒンジアーム30を上記レバー20の把持位置で仮保持する仮保持機構80を備えたものである(図8図12参照)。
この構成によれば、モータ42を駆動し続けなくても把持位置でヒンジアーム30を仮保持することができるので、モータ42に対する負荷の低減を図ることができる。
【0072】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記ヒンジアーム30と上記セクタギヤG1とは同一の上記回動支軸(ヒンジピン31)に設けられたものである(図7参照)。
この構成によれば、ヒンジアーム30とセクタギヤG1の位置決めが正確となり、ヒンジアーム30を確実に駆動することができる。
【実施例2】
【0073】
次に、図13図22を参照して車両のドアハンドル構造の実施例2について説明する。
図13は実施例2のレバー格納状態を示す断面図、図14は駆動装置を示す平面図、図15は付勢手段による付勢構造を示す平面図、図16はレバーの突出初期位置を示す平面図、図17はレバーの把持位置を示す平面図、図18はレバーの開放位置を示す平面図、図19はレバーのスイッチ押圧位置を示す平面図である。
【0074】
また、図20はブラケットの内側面図、図21図20のB-B線矢視断面図、図22はレバー、ヒンジアーム、および、摺動部材の移動軌跡を示す説明図である。
なお、図13図22において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0075】
図15に示すように、上述のヒンジピン31には付勢手段としてのトーションスプリング36が巻回されており、このトーションスプリング36の一端36aが、クランクプレート60に係止され、トーションスプリング36の他端36bが、ヒンジアーム30の延出部35に係止されている。これにより、該トーションスプリング36によりレバー20を常時格納方向にバネ付勢している。
このトーションスプリング36のバネ力は、クランクプレート60を反レリーズ方向に付勢するコイルスプリング(図示せず)に対して、小さく設定されている。
【0076】
次に、図14を参照してヒンジアーム30の他端側(延出部35側参照)に動力を伝達する駆動装置40の構成について説明する。
上述のモータベース41にはモータ42が取付けられている。モータ42の回転軸43には出力ギヤG11が嵌合されている。モータベース41に設けられた軸44にはピニオンギヤG12を備えた従動ギヤG13が設けられている。また、モータベース41に設けられた出力軸47には、セクタギヤG14が設けられている。
【0077】
図14に示すように、出力ギヤG11は従動ギヤG13と噛合している。ピニオンギヤG12はセクタギヤG14と噛合している。これにより、モータ42を駆動して、その回転軸43および出力ギヤG11を、図14の時計方向に回転させると、各ギヤG11,G13,軸44およびギヤG12をこの順に介してセクタギヤG14および出力軸47が図14の時計方向に回転する。
【0078】
上述の出力軸47は、モータ42の回転力が各要素G11~G14から成る歯車列46(gear train)を介して伝達される軸である。当該出力軸47にはクランク48の基端が嵌合固定されている。
上述のクランク48の遊端に設けた軸部48aには摺動部材としてのローラ49が回転自在に設けられている。
【0079】
図20図21図22に示すように、上述のローラ49が格納位置W(図13参照)から突出初期位置X(図16参照)および把持位置Y(図17参照)を経て開放位置Z(図18参照)に至る軌跡を案内するため、ブラケット50の上壁51には、当該上壁51から下方に延びるガイド部としての環状のガイドリブ90が一体形成されている。
【0080】
このガイドリブ90内には上述のローラ49をその軌跡に沿って案内する環状の溝部91が形成されている。図21に示すように、上述のガイドリブ90における車幅方向最外端には、ローラ49を当接させてクランク48遊端を摺動可能と成す当接部92が形成されている。
【0081】
また、上述のブラケット50には、レバー20が把持位置Y(図17参照)から開放位置Z(図18参照)に移行する時、クランク48の向きをレバー格納位置W(図13参照)の方向に変更するクランク向き変更部としての縦壁50Bを備えている。
【0082】
ここで、上述の当接部92は車両前後方向に延びる壁部であり、また、上述の縦壁50Bは、当接部92の後方において車幅方向に延びる壁部であって、当接部92を含むガイドリブ90および縦壁50Bは何れも上述のブラケット50に一体形成されている。
【0083】
上述の駆動装置40はモータ42を駆動すると、歯車列46を介してモータ回転力が出力軸47に伝達され、クランク48が図13図14の時計方向に回動するので、クランク48遊端のローラ49がガイドリブ90の当接部92に当接した時点から、当該クランク48の突っ張り力により、モータベース41、延出部35を介してヒンジアーム30をレバー突出方向に回動させるものである。
【0084】
上述のレバー20は、そのアウタカバー21がドアアウタパネル11と面一になる格納位置W(図13参照)と、駆動装置40によりレバー20の格納位置Wにおいて面一になる意匠面全体がドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置Y(図17参照)と、この把持位置Yよりもさらに突出する開放位置Z(図18参照)と、の間で回動可能に構成されている。
【0085】
図13に示す格納位置Wから図17に示す把持位置Yまでの間は、駆動装置40によりレバー20を回動することができる。また、ヒンジアーム30が図13に示す格納位置Wから図17に示す把持位置Yに達するまでの間においては、クランクプレート60は動くことなく、バネ力の強いコイルスプリング(図示せず)により反レリーズ方向に付勢されている。
【0086】
図17に示す把持位置Yにおいては、レバー20がドアアウタパネル11から外方に突出してユーザが当該レバー20を把持できるので、図17に示す把持位置Yから図18に示す開放位置Zへはユーザによりレバー20を開放することができる。
【0087】
図17に示すように、ヒンジアーム30が把持位置Yに達すると、当該ヒンジアーム30のネック部33がクランクプレート60の縦壁61に当接するので、図示しないコイルスプリングのバネ力に抗してレバー20が開放方向に回動操作されると、クランクプレート60がレリーズ方向に回動し、レリーズワイヤ62を介してドアラッチを解除する。
【0088】
レバー20が図17に示す把持位置Yから図18に示す開放位置Zに移行すると、クランク48の突部48bが当接するクランク向き変更部としての縦壁50Bにより、クランク48の向きはレバー格納位置の方向に変更され、図18に示すように、クランク48遊端のローラ49はガイドリブ90の当接部92から車幅方向内方へ離間する。
【0089】
ところで、図19に示すように、上記レバー20はヒンジアーム30のレバー支持部に対して揺動可能に設けられているので、格納位置Wにあるレバー20の後端部を外方から押圧すると、図19に示すように、レバー20の後端部が車幅方向内側に揺動変位して、スイッチ70をONにするスイッチ押圧位置となる。
【0090】
このように、図13図22で示した実施例2の車両のドアハンドル構造においても、ドアパネル(ドアアウタパネル11)から出没可能なレバー20を一端に有し、該レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように回動させる回動支軸(ヒンジピン31)を有するヒンジアーム30と、上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出するように上記ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備え、上記レバー20は、上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)と面一になる格納位置W(図13参照)と、上記駆動装置40により上記レバー20が上記ドアパネル(ドアアウタパネル11)から突出してユーザが把持できる把持位置Y(図17参照)と、上記把持位置Yよりもさらに突出する開放位置Z(図18参照)と、の間で回動可能に構成され、上記レバー20は上記回動支軸(ヒンジピン31)に設けられた付勢手段(トーションスプリング36)により格納方向に付勢されており、上記格納位置Wにおける上記レバー20の車両内方に対向して近接配置され、上記駆動装置40と電気的に接続されるスイッチ70を備え、上記駆動装置40は、上記格納位置から上記開放位置の領域で上記モータ42と上記ヒンジアーム30とに連結され、該モータ42からの出力を上記ヒンジアーム30に伝達する出力軸47と、を備え、上記格納位置Wから上記把持位置Yに上記レバー20を移動させる際は、上記モータ42から上記出力軸47を介して上記ヒンジアーム30に動力を伝達し、上記開放位置Zから上記把持位置Yに上記レバー20を移動させる際は、上記ヒンジアーム30から上記出力軸47を介して上記モータ42に動力を伝達すべく構成したものである(図13図14図16図17図18参照)。
【0091】
詳しくは、レバー20を開放位置Zから把持位置Yに格納させる場合は、図14に示す各要素35,41,48,47,G14,G12,44,G13,G11,43をこの順に介してモータ42に動力が伝達される。
【0092】
この構成によれば、実施例1と同様に、レバー20を開放位置Z(図18参照)から把持位置Y(図17参照)に格納させる場合には、上記付勢手段(トーションスプリング36)によりヒンジアーム30から上記出力軸47を介してモータ42に動力が伝達される。これにより該モータ42に回転トルクが与えられ、該モータ42が回転することで、電気的なブレーキ力を発生させるので、付勢手段(トーションスプリング36)による格納方向の力に対してブレーキをかけることができる。
【0093】
この結果、レバー20を格納位置に戻す時、レバー20の戻り速度を適度に減速させ、レバー20内側のスイッチ70に入力される荷重を低減して、駆動装置40の誤作動を防止すると共に、視覚的、聴覚的な作動状態の品質感を向上することができる。
【0094】
しかも、上記実施例2においては、上記回動支軸(ヒンジピン31)を介して上記ヒンジアーム30を回動可能に支持するブラケット50を備えており、上記駆動装置40は、基端が上記出力軸47に固定され、遊端に摺動部材(ローラ49)を有するクランク48を備え、上記ブラケット50に上記摺動部材(ローラ49)の軌跡を案内するガイド部(ガイドリブ90)を備えたものである(図20図22参照)。
【0095】
この構成によれば、ガイド部(ガイドリブ90)によりクランク48の摺動部材(ローラ49)を案内するので、レバー20が格納位置Wから把持位置Yを経て開放位置Zに至るレバー突出時と、レバー20が開放位置Zから把持位置Yを経て格納位置Wに至るレバー格納時と、で、摺動部材(ローラ49)が同一軌跡を移動する。これにより、上記出力軸47に回転力を付加することができる。
【0096】
図13図22で示した実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1とほぼ同様であるから、図13図22において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0097】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のドアパネルは、実施例のドアアウタパネル11に対応し、
以下同様に、
回動支軸は、ヒンジピン31に対応し、
付勢手段は、トーションスプリング36に対応し、
摺動部材は、ローラ49に対応し、
ガイド部は、ガイドリブ90に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0098】
例えば、上記実施例においては、車両のドアハンドル構造を、2ドアタイプの車両のドアハンドルに適用した構造について例示したが、これは4ドアタイプの車両のフロントドア、リヤドアにおけるドアハンドルまたはリフトゲートにおけるドアハンドルに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明は、ドアハンドルレバーの格納時に、当該ドアハンドルレバーとドアアウタパネルとが面一になる車両のドアハンドル構造について有用である。
【符号の説明】
【0100】
11…ドアアウタパネル(ドアパネル)
20…レバー
30…ヒンジアーム
31…ヒンジピン(回動支軸)
36…トーションスプリング(付勢手段)
40…駆動装置
42…モータ
45,47…出力軸
48…クランク
49…ローラ(摺動部材)
50…ブラケット
70…スイッチ
80…仮保持機構
90…ガイドリブ(ガイド部)
G1…セクタギヤ
G5…ピニオンギヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22