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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】多機能削孔機
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20241016BHJP
   E21B 19/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E21D20/00 X
E21B19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021016459
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119387
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森野 弘之
(72)【発明者】
【氏名】鵜山 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 秀文
(72)【発明者】
【氏名】谷口 信博
(72)【発明者】
【氏名】黒川 尚義
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-269295(JP,A)
【文献】国際公開第2019/226096(WO,A1)
【文献】特開平09-096196(JP,A)
【文献】特表2012-517544(JP,A)
【文献】特開2020-090859(JP,A)
【文献】特開昭61-274082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
E21B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドセルの延在方向に移動可能なドリルヘッドを有する削岩機ユニットと、
削孔ロッドを含む複数の長尺物を格納し、前記削岩機ユニットとの間で前記長尺物の授受を行う格納ユニットと、を備え、
前記格納ユニットは、
前記延在方向に延び、前記ガイドセルの側部に設けられる基台と、
前記延在方向における前記基台の両端部に設けられた一対の軸受けに軸支され、駆動源の駆動によって前記延在方向に延びる軸線周りに回転する回転軸と、
外周縁から内側に凹設された複数の長尺物保持溝を備えて略円盤状に形成され、前記回転軸に中心部が連結された複数のマガジンと、
前記回転軸及び前記マガジンを内包して前記延在方向に延びる略円筒状に形成され、前記延在方向に延びる出し入れ口を有するケーシングと、
前記出し入れ口を通じ、前記マガジンと前記削岩機ユニットとの間で前記長尺物を搬送する長尺物搬送装置と、を備える
多機能削孔機。
【請求項2】
前記複数の長尺物に、
前記削孔ロッドが形成したロックボルト孔に注入材を注入する注入ロッドと、
前記ロックボルト孔に打設されるロックボルトと、を含む
請求項1に記載の多機能削孔機。
【請求項3】
前記格納ユニットとして、前記ガイドセルの一方側に配設される第1格納ユニットと前記ガイドセルの他方側に配設される第2格納ユニットとを備える
請求項1または2に記載の多機能削孔機。
【請求項4】
前記第1格納ユニットの基台と前記第2格納ユニットの基台とを連結する連結部を備え、
前記第1格納ユニットの基台、前記第2格納ユニットの基台、及び、前記連結部によって形成される嵌合凹部に前記ガイドセルが嵌合する
請求項3に記載の多機能削孔機。
【請求項5】
前記ガイドセルは、一側面から他側面に貫通する複数のセル側挿通孔を有し、
前記基台は、前記複数のセル側挿通孔の各々に対応して設けられ、一側面から他側面に貫通する基台側挿通孔を有し、
前記ガイドセルと前記基台は、
前記セル側挿通孔と前記基台側挿通孔とに挿通させたボルトを用いた締結により着脱可能に連結されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の多機能削孔機。
【請求項6】
前記格納ユニットは、
前記延在方向における前記長尺物の移動を規制する規制部を備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の多機能削孔機。
【請求項7】
前記複数のマガジンは、
所定間隔で設けられた一対の端側マガジンと、
前記一対の端側マガジンの間に位置する1以上の中間マガジンと、を含む
請求項1~6のいずれか1項に記載の多機能削孔機。
【請求項8】
前記格納ユニットは、
前記長尺物として、前記削孔ロッドと前記削孔ロッドが形成したロックボルト孔に注入材を注入する注入ロッドとを含み、
前記削岩機ユニットは、
前記ドリルヘッドに装着され、前記削孔ロッドに削孔用水を供給可能なウォータースイベルと、前記ウォータースイベルに装着され、前記注入ロッドに前記注入材を供給可能なロータリージョイントとを備え、
前記長尺物は、前記ロータリージョイントに装着され、
前記削孔用水は、前記ロータリージョイントを通じて前記削孔ロッドに供給される
請求項1~7のいずれか1項に記載の多機能削孔機。
【請求項9】
前記マガジンにおいて、前記長尺物保持溝の各々は、前記外周縁から軸線中心の径方向と交差する方向に延びている
請求項1~8のいずれか1項に記載の多機能削孔機。
【請求項10】
前記長尺物搬送装置は、
前記軸線に沿った回動軸線周りに回動可能に構成され、前記回動軸線中心の径方向に延びる伸縮自在なアーム部と、
前記アーム部の先端部に支持されて、前記回動軸線中心の径方向に往復移動可能な往復動部材と、
前記長尺物を把持又は解放する一対のクランプ片と、
前記往復動部材の往復移動を前記一対のクランプ片の開閉動に変換するリンク機構と、を備える
請求項1~9のいずれか1項に記載の多機能削孔機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔作業を含む複数の作業を行うことが可能な多機能削孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、トンネル工事等において、ロックボルト孔の削孔からロックボルトの打設までの各種作業を一貫して行う多機能削孔機が開示されている。特許文献1に記載の多機能削孔機においては、1つの方向に延びるガイドセル上を油圧ドリフタが移動可能に構成されている。油圧ドリフタは、削孔ロッドやロックボルトなどの長尺物が着脱可能に構成されている。油圧ドリフタは、ガイドセルの延在方向に沿う作業軸心を中心として長尺物を回転させつつガイドセル上を移動することにより、削孔などの各種の作業を行うためのものである。また、特許文献1に記載の多機能削孔機においては、ガイドセルの延在方向に延びて各種の長尺物を格納するラックを有する格納ユニットと、長尺物を把持し、ラックと油圧ドリフタとの間において長尺物を授受するためのクランプ装置と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-96196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の多機能削孔機においては、ラック内の長尺物を油圧ドリフタに装着する際に、その対象となる長尺物の中心軸が油圧ドリフタの作業軸心に重なる位置までラックを移動させている。このため、各種の長尺物を格納したラックの移動に耐え得るだけの強度を備えた移動機構が必要とされる。その結果、多機能削孔機の構成・構造が複雑化しやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する多機能削孔機は、ガイドセルの延在方向に移動可能なドリルヘッドを有する削岩機ユニットと、削孔ロッドを含む複数の長尺物を格納し、前記削岩機ユニットとの間で前記長尺物の自動的な授受を行う格納ユニットと、を備え、前記格納ユニットは、前記延在方向に延び、前記ガイドセルの側部に設けられる基台と、前記延在方向における前記基台の両端部に設けられた一対の軸受けに軸支され、駆動源の駆動によって前記延在方向に延びる軸線周りに回転する回転軸と、外周縁から内側に凹設された複数の長尺物保持溝を備えて略円盤状に形成され、前記回転軸に中心部が連結された複数のマガジンと、前記回転軸及び前記マガジンを内包して前記延在方向に延びる略円筒状に形成され、前記延在方向に延びる出し入れ口を有するケーシングと、前記出し入れ口を通じ、前記マガジンと前記削岩機ユニットとの間で前記長尺物を搬送する長尺物搬送装置と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長尺物搬送装置によって削岩機ユニットと格納ユニットとの間における長尺物の搬送が行われる。これにより、格納ユニットを移動させる移動機構が不要となることから、多機能削孔機の構成・構造の複雑化が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】多機能削孔機の概略構成を模式的に示す図。
図2】削岩機ユニットの概略構成を示す側面図。
図3】格納ユニットの概略構成を示す斜視図。
図4】後から見たときの削岩機ユニットと格納ユニットとの位置関係を示す図。
図5】左側における長尺物搬送装置の概略構成を示す後面図。
図6】多機能削孔機の電気的な構成の一部を示すブロック図。
図7】(a)ロータリージョイントに第1削孔ロッドが装着された状態を示す図、(b)第1削孔ロッドによる削孔が終了した状態を示す図、(c)第1削孔ロッドに対して第2削孔ロッドが連結された状態を示す図、(d)第1削孔ロッド及び第2削孔ロッドによる削孔が終了した状態を示す図、(e)第1削孔ロッドから第2削孔ロッドを分離させた状態を示す図、(f)第2削孔ロッドを搬送した後の状態を示す図。
図8】(a)ロータリージョイントに第1削孔ロッドを装着した状態を示す図、(b)第1削孔ロッドを抜管した状態を示す図、(c)第1削孔ロッドを搬送した後の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図8を参照して、多機能削孔機の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の多機能削孔機10は、トンネル11内において、ロックボルト孔の削孔のほか、ロックボルト孔に対する注入材の注入、ロックボルト孔へのロックボルトの挿入を行う。
【0009】
多機能削孔機10は、削岩機ユニット12、格納ユニット13、及び、長尺物搬送装置14を備える。削岩機ユニット12は、長尺物が着脱可能に構成されている。削岩機ユニット12は、装着された長尺物を用いて各種の作業を行う。格納ユニット13は、一連の作業に必要な長尺物を格納している。削岩機ユニット12、格納ユニット13、及び、長尺物搬送装置14は、各種の連結部材により一体化されている。削岩機ユニット12、格納ユニット13、及び、長尺物搬送装置14は、ブーム15によってトンネル11内の所望位置に配置可能に構成されている。また、多機能削孔機10は、作業員が乗ることが可能なマンゲージ16を備える。
【0010】
多機能削孔機10は、削岩機ユニット12と格納ユニット13との間において、各種の長尺物の授受や各種作業が自動的に行われるように構成されている。長尺物の授受とは、格納ユニット13に格納された長尺物を取り出し、削岩機ユニット12に対して所定位置に搬送し、削岩機ユニット12に装着させること、削岩機ユニット12から長尺物を取り外して格納ユニット13に格納することをいう。本実施形態において、各種の作業は、削孔作業、注入作業、及び、打設作業である。削孔作業は、長尺物として削孔ロッドを用いてロックボルト孔を削孔する作業である。注入作業は、長尺物として注入ロッドを用いてロックボルト孔に注入材を注入する作業である。打設作業は、長尺物としてロックボルトを用いてロックボルト孔にロックボルトを打設(挿入)する作業である。
【0011】
図2に示すように、削岩機ユニット12は、ガイドセル20とドリルヘッド21とを備える。ガイドセル20は、1つの方向に延びている。ガイドセル20は、一側面から他側面に貫通する複数のセル側挿通孔22を有する。複数のセル側挿通孔22は、延在方向に沿った所定の配列で形成されている。セル側挿通孔22は、削岩機ユニット12と格納ユニット13とを連結するボルト51(図4参照)が挿通される孔である。
【0012】
ドリルヘッド21は、ガイドセル20に支持されている。ドリルヘッド21は、ガイドセル20の延在方向に沿って移動可能に構成されている。ドリルヘッド21は、その先端部がガイドセル20の延在方向に延びるロッド回転軸線23を中心として回転可能に構成されている。ガイドセル20の延在方向を前後方向、前後方向のうち、削孔時にドリルヘッド21が進む方向を前、その反対方向を後という。また、前後方向が水平面に位置するときの削岩機ユニット12の後面視を基準として左右方向が規定されている。なお、以下では、前後方向が水平面に位置しているものとして各種構成について説明する。
【0013】
削岩機ユニット12は、ウォータースイベル25とロータリージョイント26とを備える。ウォータースイベル25は、ドリルヘッド21に対して前方から連結されている。ロータリージョイント26は、ウォータースイベル25に対して前方から連結されている。
【0014】
ウォータースイベル25は、ドリルヘッド21の回転を、ロッド回転軸線23周りの回転としてロータリージョイント26に伝達可能に構成されている。また、ウォータースイベル25には、ウォーターホース27を介してウォーターポンプ28が接続されている。ウォータースイベル25は、ウォーターホース27を通じてウォーターポンプ28から供給された削孔用水(流動体)をロータリージョイント26に供給可能に構成されている。
【0015】
ロータリージョイント26には、例えばねじ結合構造などによって、長尺物Rの後端部が着脱可能に装着される。ロータリージョイント26に装着された長尺物Rは、その中心軸がロッド回転軸線23と一致するように配設される。ロータリージョイント26は、ウォータースイベル25から伝達されたドリルヘッド21の回転を、ロッド回転軸線23周りの回転として長尺物Rに伝達可能に構成されている。
【0016】
ロータリージョイント26は、ウォータースイベル25から供給された削孔用水を長尺物Rに供給可能に構成されている。また、ロータリージョイント26には、注入ホース29を介して注入材ポンプ30が接続されている。ロータリージョイント26は、注入ホース29を通じて注入材ポンプ30から供給された硬化性流動体の注入材を長尺物Rに供給可能に構成されている。注入材の一例は、モルタルである。
【0017】
削岩機ユニット12は、長尺物保持機構31を備える。長尺物保持機構31は、ガイドセル20の前端部に設けられている。長尺物保持機構31は、ロータリージョイント26に長尺物Rが装着された状態でドリルヘッド21が移動する際に、該長尺物Rを回転可能に支持する。また、長尺物保持機構31は、ロックボルト孔に挿入されている長尺物Rの後端部を回転不能に保持可能に構成されている。
【0018】
なお、ロックボルト孔に注入材が確実に充填されていることを確認するための手段を備えてもよい。この手段としては、例えば、目視や遠方からのカメラで注入材の充填状況を確認できる手段(充填確認装置)、長尺物保持機構31に具備された充填確認装置32などを挙げることができる。
【0019】
削岩機ユニット12は、後述する制御装置70によって、ガイドセル20に沿ったドリルヘッド21の移動、ドリルヘッド21の回転駆動、ウォーターポンプ28の駆動、注入材ポンプ30の駆動、及び、長尺物保持機構31の駆動が制御される。
【0020】
なお、削岩機ユニット12は、ウォータースイベル25からロータリージョイント26への削孔用水の流入を許可しつつ、ロータリージョイント26からウォータースイベル25への注入材の流入を防止する機構、例えば逆止弁などを備えることが好ましい。
【0021】
図3に示すように、格納ユニット13は、基台35、軸受け36、回転軸37、複数のマガジン38、ケーシング39、及び、規制部40を備える。
基台35は、前後方向に延びている。基台35は、ガイドセル20に並設される。基台35は、一側面から他側面に貫通する複数の基台側挿通孔42を有する。基台側挿通孔42は、複数のセル側挿通孔22の各々に対応するように、セル側挿通孔22の配列と同じ配列で形成されている。基台側挿通孔42は、削岩機ユニット12と格納ユニット13とを連結するボルト51(図4参照)が挿通される孔である。
【0022】
軸受け36は、前後方向における基台35の各端部から上方に延びている。軸受け36は、回転軸37を回転可能に軸支している。
回転軸37は、前後方向に延びている。回転軸37は、基台35の後端部に設置されたマガジン駆動部43の駆動軸に連結されている。回転軸37は、マガジン駆動部43の駆動により、前後方向に延びるマガジン回転軸線45周りに回転する。
【0023】
マガジン38は、略円盤状の形状を有する。マガジン38は、回転軸37に対して中心部が連結されている。マガジン38は、回転軸37の回転によりマガジン回転軸線45周りに回転する。マガジン38は、外周縁から内側に凹設された複数の長尺物保持溝46を有する。
【0024】
複数の長尺物保持溝46は、マガジン回転軸線45を中心とした周方向において所定の間隔で形成されている。各長尺物保持溝46は、マガジン回転軸線45を中心とした径方向と交差する方向に延びている。具体的には、各長尺物保持溝46は、削岩機ユニット12側の斜め上方の出し入れ位置にて下方に向かって延びるように形成されている。
【0025】
複数のマガジン38は、一対の端側マガジン38Eと1以上の中間マガジン38Mとを有する。一対の端側マガジン38Eは、前後方向における前側の端と、後側の端とにそれぞれ位置するマガジン38である。中間マガジン38Mは、一対の端側マガジン38Eの間に位置するマガジン38である。こうした構成によれば、全てのマガジン38に保持される長尺物Raだけでなく、一つの端側マガジン38Eと中間マガジン38Mとで保持される短い長尺物Rbを格納ユニット13に格納することができる。長尺物Rbは、その前端部が長尺物Raの後端部に連結可能に構成されている。なお、格納ユニット13は、複数の中間マガジン38Mを備えて構成してもよい。
【0026】
ケーシング39は、略円筒状の形状を有する。ケーシング39は、回転軸37及び複数のマガジン38を内包して前後方向に延びている。ケーシング39は、マガジン回転軸線45を中心とした径方向の外側から複数のマガジン38の外周縁を覆っている。
【0027】
なお、ケーシング39は、前後方向に延びる一連のケーシングではなく、分割された複数のケーシングを前後方向に間隔をあけつつ並設して構成されてもよい。このようにケーシング39が分割形成されていると、中を容易に確認でき、また、修理等のメンテナンス性(取扱性)を向上させることができる。さらに、ケーシング39は、例えばアクリルなどの透明(略透明を含む)の部材によって構成したり、半割で開け閉め可能に構成したりしてもよい。この場合においても、やはり、中を容易に確認でき、修理等のメンテナンス性(取扱性)を向上させることができる。
【0028】
ケーシング39は、前後方向に延びる出し入れ口48を有する。出し入れ口48は、出し入れ位置に配置された長尺物保持溝46の上方に形成されている。出し入れ口48は、後述する長尺物搬送装置14の把持部56が出入り可能な大きさに形成されている。
【0029】
規制部40は、端側規制部40Eと中間規制部40Mとを有する。端側規制部40Eは、前後方向におけるケーシング39の各端部に、ケーシング39の筒端開口部を閉塞するようにして一体に設けられている。端側規制部40Eは、その中心部を回転軸37が貫通しているとともに軸受け36に対して固定されている。これにより、ケーシング39は、端側規制部40Eを介して基台35に支持されている。なお、ケーシング39が複数に分割形成されている場合には、別途基台に設けた支持部材など、適宜手段を用いて中間側のケーシングを支持すればよい。端側規制部40Eは、前後方向への長尺物Raの移動を規制する。また、前側の端側規制部40Eは、前方への長尺物Rbの移動を規制する。
【0030】
中間規制部40Mは、後側の端側マガジン38Eと中間マガジン38Mとの間に設けられている。中間規制部40Mは、回転軸37に固定されている。中間規制部40Mは、長尺物Rbを保持する長尺物保持溝46に対して後方から対向している。中間規制部40Mは、長尺物Rbの後方への移動を規制する。なお、長さが小さい長尺物Rbの位置ずれを防止する手段として、例えば、長尺物Rbの前後いずれかの規制されていない側にダミーの長尺物をマガジン38にセットし、このダミーの長尺物を中間規制部として利用してもよい。すなわち、長さが小さい長尺物Rbの移動を規制するための中間規制部は必ずしも本実施形態のように限定しなくてもよい。
【0031】
格納ユニット13は、後述する制御装置70によってマガジン駆動部43の駆動が制御されることにより、出し入れ位置に配置される長尺物保持溝46を選択する。出し入れ位置に配置された長尺物保持溝46については、出し入れ口48を通じた長尺物Ra,Rbの出し入れが可能となる。
【0032】
また、図4に示すように、格納ユニット13は、削岩機ユニット12に対する左右両側に設けられている。左側の格納ユニット13は、第1格納ユニットである。右側の格納ユニット13は、第2格納ユニットである。左右一対の格納ユニット13は、基台35の下端部が連結部49によって連結されている。これにより、図4(及び図3)に示す通り、左右一対の基台35と連結部49とによって、連結部49の上方に嵌合凹部50が形成される。削岩機ユニット12のガイドセル20は、嵌合凹部50に嵌合する。削岩機ユニット12と左右一対の格納ユニット13は、セル側挿通孔22と基台側挿通孔42とを互いに連通させ、これらの挿通孔22,42に挿通されたボルト51をボルト締めすることにより、着脱可能に連結される。これにより、左右両側の格納ユニット13は、ガイドセル20の側部に設けられる。なお、図4においては、出し入れ位置に位置している長尺物保持溝46にのみ長尺物Rを示している。
【0033】
図5を参照して長尺物搬送装置14について説明する。長尺物搬送装置14は、削岩機ユニット12と格納ユニット13との間で長尺物Rを搬送する。多機能削孔機10は、左側の格納ユニット13に対応する長尺物搬送装置14と、右側の格納ユニット13に対応する長尺物搬送装置14とを備える。また、長尺物搬送装置14は、図1に示したように、前後方向において所定の間隔で複数台設置されている。各所に設置された長尺物搬送装置14は、その設置位置が異なるだけで基本的な構成は同じである。そのため、以下では、削岩機ユニット12の左側に位置する長尺物搬送装置14を用いて、その構成について説明する。
【0034】
図5に示すように、長尺物搬送装置14は、アーム部55と把持部56とを備える。アーム部55は、図示されない連結アームなどを介して基台35などに連結されている。
アーム部55は、左右方向におけるロッド回転軸線23とマガジン回転軸線45との間の上方の所定位置に、マガジン回転軸線45に沿って前後方向に延びるアーム回動軸線57を有する。アーム部55は、アーム回動軸線57を中心として、アーム回動軸線57の下側領域を回動可能に構成されている。アーム部55は、削岩機ユニット12のロッド回転軸線23に向かって延びる内向位置(図5において右側に「二点鎖線」で示したアーム部55)と、格納ユニット13のケーシング39に形成された出し入れ口48に向かって延びる外向位置(図5において左側に「実線」で示したアーム部55)と、の間で回動する。
【0035】
また、アーム部55は、アーム部55の延在方向、すなわちアーム回動軸線57を中心とした径方向に伸縮可能に構成されている。アーム部55は、収縮状態において、把持部56がケーシング39の外側に配置される。アーム部55は、内向位置においては、ロータリージョイント26に対して長尺物Rを着脱可能な着脱長さまで伸長可能に構成されている。アーム部55は、外向位置においては、出し入れ位置の長尺物保持溝46に保持された長尺物Rを把持部56が把持可能な出し入れ長さまで伸長可能に構成されている。
【0036】
把持部56は、アーム部55の先端部に連結されている。把持部56は、アーム部55の回動に連動して、アーム回動軸線57を中心として回動する。把持部56は、機構作動部61、リンク機構62、一対のクランプ片63を有する。
【0037】
機構作動部61は、ガイド部材65と往復動部材66とを有する。ガイド部材65は、アーム部55の先端に連結されている。ガイド部材65は、アーム部55の延在方向に沿って延びている。
【0038】
往復動部材66は、アーム部55の延在方向に沿って移動可能にガイド部材65に支持されている。往復動部材66は、ガイド部材65を介してアーム部55の先端部に支持されている。往復動部材66は、図示されない油圧機器が駆動されることでガイド部材65に沿って移動する。往復動部材66は、一対のクランプ片63が長尺物Rを把持可能な把持位置と一対のクランプ片63から長尺物Rを解放可能な解放位置との間を往復動する。
【0039】
リンク機構62は、ガイド部材65に沿った往復動部材66の往復動を一対のクランプ片63の開閉動に変換する。
一対のクランプ片63は、往復動部材66が解放位置から把持位置へ移動することで閉動し、長尺物Rを把持する。一対のクランプ片63は、長尺物Rの着脱時などにドリルヘッド21の回転が伝達したとしても、回転しない程度の力で長尺物Rを把持する。一対のクランプ片63は、往復動部材66が把持位置から解放位置へ移動することで回動し、把持していた長尺物Rを解放する。
【0040】
長尺物搬送装置14は、後述する制御装置70によって、アーム部55の回動・伸縮、把持部56における往復動部材66の移動などが制御されることによって、削岩機ユニット12と格納ユニット13との間で長尺物Rを搬送する、すなわち長尺物Rの授受を行う。格納ユニット13から削岩機ユニット12に搬送された長尺物Rは、その中心軸がロッド回転軸線23に重なる位置に保持される。削岩機ユニット12から格納ユニット13に搬送された長尺物Rは、一対のクランプ片63の開動により長尺物保持溝46に保持される位置に配置される。
【0041】
図6を参照して、各種作業にかかわる多機能削孔機10の電気的な構成について説明する。多機能削孔機10が行う各種作業は、制御装置70によって行われる。
制御装置70は、各種情報を取得し、その取得した各種の情報、および、メモリーに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。制御装置70は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスして利用可能なあらゆる媒体を含む。
【0042】
制御装置70には、入力装置71が電気的に接続されている。入力装置71は、作業員の操作により制御装置70に対して各種情報を入力可能に構成されている。制御装置70は、入力装置71から多機能削孔機10が行う一連の作業内容を示す作業情報72が入力されると、その作業情報72を記憶する。また、制御装置70は、入力装置71から左右一対の格納ユニット13の各々についての長尺物情報73が入力されると、その長尺物情報73を記憶する。長尺物情報73は、各長尺物保持溝46の位置と各長尺物保持溝46が保持している長尺物Rの種別とを対応付けた情報である。制御装置70は、入力装置71を通じて作業開始が指示されると、作業情報72に基づく順序で各種の処理を行う。
【0043】
制御装置70は、削岩機ユニット12を制御する。具体的には、制御装置70は、各種作業時にドリルヘッド21を駆動・制御する。ドリルヘッド21に関する情報として、制御装置70は、例えば、ヘッド位置検出部75からガイドセル20におけるドリルヘッド21の位置、ヘッド回転数検出部76からドリルヘッド21の回転数などを取得する。制御装置70は、取得した情報に基づいてヘッド駆動部77を駆動することで、ガイドセル20におけるドリルヘッド21の移動、及び、ドリルヘッド21の回転を制御する。
【0044】
制御装置70は、削孔作業時に、ウォーターポンプ28を駆動・制御する。ウォーターポンプ28に関する情報として、制御装置70は、削孔用水の供給量を取得する。制御装置70は、取得した情報に基づいてウォーターポンプ28を駆動することで、ウォータースイベル25への削孔用水の供給量を制御する。
【0045】
制御装置70は、注入作業時に、注入材ポンプ30を駆動・制御する。注入材ポンプ30に関する情報として、制御装置70は、注入材の供給量を取得する。制御装置70は、取得した情報に基づいて注入材ポンプ30を駆動することで、ロータリージョイント26への注入材の供給量を制御する。
【0046】
なお、制御装置70は、例えば、注入作業時に、充填確認装置32に対して確認処理の実行を指示し、充填確認装置32からの情報に基づいて、ロックボルト孔に注入材が充填されたことを確認するようにしてもよい。
【0047】
制御装置70は、長尺物保持機構31を駆動・制御する。制御装置70は、ロックボルト孔に挿入されている長尺物Rをロータリージョイント26に装着する際などに、該長尺物Rの後端部を回転不能に保持させる。
【0048】
制御装置70は、格納ユニット13を制御する。具体的には、制御装置70は、マガジン駆動部43を駆動・制御する。マガジン38に関する情報として、制御装置70は、例えば、回転位置検出部80からマガジン38の回転位置、長尺物検出部81から出し入れ位置に位置している長尺物保持溝46における長尺物Rの有無を取得する。制御装置70は、取得した情報に基づいてマガジン駆動部43を駆動することでマガジン38を所望の回転位置へと回転させる。
【0049】
制御装置70は、長尺物搬送装置14を制御する。具体的には、制御装置70は、アーム部55の回動・伸縮、及び、往復動部材66の移動を制御して長尺物Rを搬送する。長尺物搬送装置14に関する情報として、制御装置70は、例えば、把持部位置検出部83から把持部56の位置を取得する。把持部56の位置は、アーム部55の回動角度・伸縮量で示される。制御装置70は、アーム駆動部84を駆動することでアーム部55を回動・伸縮させる。制御装置70は、機構駆動部85を駆動することで往復動部材66を移動させて一対のクランプ片63を開閉する。
【0050】
図7図8を参照して、多機能削孔機10の動作について、長尺物Raとして第1削孔ロッドR1、長尺物Rbとして第2削孔ロッドR2を用いた削孔作業を例に説明する。なお、作業開始時、削岩機ユニット12は、ドリルヘッド21が最も後側に位置しているとともにロータリージョイント26に長尺物Rが装着されていない初期状態にある。
【0051】
制御装置70は、マガジン38を回転させて第1削孔ロッドR1に対応する長尺物保持溝46を出し入れ位置に配置したのち、第1削孔ロッドR1を格納ユニット13から削岩機ユニット12まで搬送する。
【0052】
そして、図7(a)に示すように、制御装置70は、ドリルヘッド21を正転させながら前方へと移動させてロータリージョイント26に第1削孔ロッドR1を装着する。第1削孔ロッドR1が装着されると、制御装置70は、長尺物搬送装置14の把持部56を退避させる。
【0053】
図7(b)に示すように、制御装置70は、ドリルヘッド21を正転させながら、第1削孔ロッドR1の長さに応じた分だけドリルヘッド21を前方へと移動させて第1削孔ロッドR1による削孔を行う。削孔時、制御装置70は、ウォーターポンプ28を駆動させ、ウォータースイベル25及びロータリージョイント26を通じて、第1削孔ロッドR1に削孔用水を供給する。第1削孔ロッドR1による削孔が終了すると、制御装置70は、ウォーターポンプ28を停止したのち、第1削孔ロッドR1の後端部を長尺物保持機構31で保持した状態でドリルヘッド21を逆転させながら後方に移動させることで、ロータリージョイント26から第1削孔ロッドR1を脱離する。
【0054】
図7(c)に示すように、制御装置70は、ドリルヘッド21をさらに後方へと移動させて、第1削孔ロッドR1との間に第2削孔ロッドR2の搬送スペースを形成する。また、制御装置70は、マガジン38を回転させて、第2削孔ロッドR2に対応する長尺物保持溝46を出し入れ位置へと配置する。そして、制御装置70は、第2削孔ロッドR2を格納ユニット13から削岩機ユニット12まで搬送したのち、ドリルヘッド21を正転させながら前方へと移動させて、ロータリージョイント26に第2削孔ロッドR2を装着する。また、制御装置70は、ドリルヘッド21を正転させながらさらに前方へと移動させて、第2削孔ロッドR2の前端部を第1削孔ロッドR1の後端部に連結する。第1削孔ロッドR1と第2削孔ロッドR2とが連結されると、制御装置70は、長尺物保持機構31による第1削孔ロッドR1の保持を解除する。
【0055】
図7(d)に示すように、制御装置70は、第2削孔ロッドR2の長さに応じた分だけ、ドリルヘッド21を正転させながら前方へと移動させて、第1削孔ロッドR1及び第2削孔ロッドR2による削孔を行う。削孔時、制御装置70は、ウォーターポンプ28を駆動して第1削孔ロッドR1及び第2削孔ロッドR2に削孔用水を供給する。これにより、ロックボルト孔88が形成される。
【0056】
図7(e)に示すように、ロックボルト孔88が形成されると、制御装置70は、ウォーターポンプ28を停止させたのち、第2削孔ロッドR2の長さに応じた分だけドリルヘッド21を後方へと移動させて、第2削孔ロッドR2を抜管する(引き抜く)。そして、制御装置70は、第1削孔ロッドR1の後端部を長尺物保持機構31で保持したのち、ドリルヘッド21を逆転させながら後方へと移動させて、第1削孔ロッドR1から第2削孔ロッドR2を分離する。
【0057】
図7(f)に示すように、制御装置70は、長尺物搬送装置14で第2削孔ロッドR2を把持したのち、ドリルヘッド21を逆転させながら後方へと移動させることで、ロータリージョイント26から第2削孔ロッドR2を脱着する。そして、制御装置70は、脱着した第2削孔ロッドR2を格納ユニット13へと搬送する。
【0058】
図8(a)に示すように、制御装置70は、ドリルヘッド21を正転させながらドリルヘッド21を前方へと移動させて、ロータリージョイント26に対して第1削孔ロッドR1を装着する。
【0059】
図8(b)に示すように、制御装置70は、長尺物保持機構31による保持を解除したのち、ドリルヘッド21を後方へ移動させてロックボルト孔88から第1削孔ロッドR1を抜管する。
【0060】
図8(c)に示すように、制御装置70は、長尺物搬送装置14で第1削孔ロッドR1を把持したのち、ドリルヘッド21を回転させながら後方へと移動させることで、ロータリージョイント26から第1削孔ロッドR1を脱着する。そして、制御装置70は、第1削孔ロッドR1に対応する長尺物保持溝46を出し入れ位置へと配置したのち、第1削孔ロッドR1を格納ユニット13へと搬送する。これにより、削孔作業が終了する。
【0061】
注入作業においては、上述した第1削孔ロッドR1及び第2削孔ロッドR2に替えて、これらと略等しい長さの第1注入ロッド及び第2注入ロッドが長尺物Rとして用いられる。制御装置70は、上記手順に準ずる手順で2本の注入ロッドを連結したのち、それら2本の注入ロッドをロックボルト孔88に挿入する。そして、制御装置70は、注入材ポンプ30を駆動して注入ロッドを通じてロックボルト孔88の奥側から注入材を注入しながらドリルヘッド21を後方へと移動させる。制御装置70は、上記手順に準ずる手順で2本の注入ロッドの分離や各注入ロッドの格納ユニット13への格納を行う。
【0062】
なお、制御装置70は、充填確認装置32によってロックボルト孔88への注入材の充填が十分であることを確認するようにしてもよい。この場合には、ロックボルト孔88への注入材の充填が不十分であるとき、制御装置70による制御で再び注入作業を行うようにすることが望ましい。
【0063】
打設作業においては、上述した第1削孔ロッドR1及び第2削孔ロッドR2に替えて、これらと略等しい長さの第1ロックボルト及び第2ロックボルトが長尺物Rとして用いられる。制御装置70は、上記手順と同様の手順で第1ロックボルトに対する第2ロックボルトの連結等を行い、ロックボルトを打設する。ロックボルトが打設されると、制御装置70は、ロータリージョイント26からロックボルトを脱離したのち、削岩機ユニット12を初期状態へと制御する。
【0064】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)多機能削孔機10は、ガイドセル20の延在方向(前後方向)に移動可能なドリルヘッド21を有する削岩機ユニット12と、削孔ロッド(第1削孔ロッドR1及び第2削孔ロッドR2)を含む複数の長尺物Rを格納し、削岩機ユニットとの間で長尺物の自動的な授受を行う格納ユニット13と、を備える。
【0065】
格納ユニット13は、延在方向に延び、ガイドセル20に一体に設けられる基台35と、延在方向における基台35の両端部に設けられた一対の軸受け36に軸支され、駆動源(ヘッド駆動部77)の駆動によって延在方向に延びる軸線(マガジン回転軸線23)周りに回転する回転軸37と、外周縁から内側に凹設された複数の長尺物保持溝46を備えて略円盤状に形成され、回転軸37に中心部が連結された複数のマガジン38と、回転軸37及びマガジン38を内包して延在方向に延びる略円筒状に形成され、延在方向に延びる出し入れ口48を有するケーシング39と、出し入れ口48を通じ、マガジン38と削岩機ユニット12との間で長尺物Rを搬送する長尺物搬送装置14と、を備える。
【0066】
上記構成によれば、長尺物搬送装置14によって削岩機ユニット12と格納ユニット13との間における長尺物Rの搬送が行われる。これにより、格納ユニット13を移動させる移動機構が不要となる。その結果、多機能削孔機10の構成・構造の複雑化が抑えられる。
【0067】
また、削岩機ユニット12と格納ユニット13との間において、長尺物Rの自動的な授受を行うことができる。これにより、その長尺物Rに応じた作業を行うことができるため、マンゲージ16に作業員が乗って、多機能削孔機10が行う各種作業を監視したり、各種作業の補助を行ったりする必要がなくなる。その結果、作業員への負荷を軽減しつつ、作業員のさらなる安全性の向上を図ることができる。
【0068】
(2)多機能削孔機10は、複数の長尺物Rに、削孔ロッドが形成したロックボルト孔88に注入材を注入するための注入ロッド(第1注入ロッド及び第2注入ロッド)と、ロックボルト孔88に打設されるロックボルト(第1ロックボルト及び第2ロックボルト)と、を含んでいる。
【0069】
上記構成によれば、ロックボルト孔88の削孔作業のほか、ロックボルト孔88への注入材の注入作業、ロックボルト孔88へのロックボルトの打設作業を自動的に行うことができる。
【0070】
(3)多機能削孔機10は、格納ユニット13として、ガイドセル20の一方側(左側)に配設される第1格納ユニットとガイドセル20の他方側(右側)に配設される第2格納ユニットとを備える。
【0071】
上記構成によれば、多機能削孔機10に対して、より多くの長尺物Rを搭載することができる。これにより、多機能削孔機10が行うことのできる作業の自由度を向上させることができる。また、重心位置の偏りが抑えられることで、各種作業時の安定性を高めることができる。
【0072】
(4)多機能削孔機10は、第1格納ユニットの基台35と第2格納ユニットの基台35とを連結する連結部49を備え、第1格納ユニットの基台35、第2格納ユニットの基台35、及び、連結部49で形成される嵌合凹部50にガイドセル20が嵌合する。
【0073】
上記構成によれば、嵌合凹部50に対してガイドセル20を嵌合させることにより、ガイドセル20に対する第1格納ユニット及び第2格納ユニットの位置決めを行うことができる。また、削岩機ユニット12と一対の格納ユニット13とを容易に一体化させることができる。その結果、削岩機ユニット12と一対の格納ユニット13との位置決め精度、連結作業時の作業効率を大幅に高めることができる。さらには、ガイドセル20と基台35との間の隙間に泥土などの異物が侵入することが抑えられる。
【0074】
(5)多機能削孔機10において、ガイドセル20は、一側面から他側面に貫通する複数のセル側挿通孔22を有し、基台35は、複数のセル側挿通孔22の各々に対応して設けられ、一側面から他側面に貫通する基台側挿通孔42を有し、ガイドセル20と基台35は、セル側挿通孔22と基台側挿通孔42とに挿通させたボルト51を用いた締結により着脱可能に連結されている。
【0075】
上記構成によれば、セル側挿通孔22と基台側挿通孔42とを互いに連通させ、これらの挿通孔22,42にボルト51を挿通してボルド締めすることができる。これにより、容易にガイドセル20と基台35とを位置決めできるとともに着脱可能に連結して一体化させることが可能になる。
【0076】
(6)多機能削孔機10は、延在方向(前後方向)における長尺物Rの移動を規制する規制部40を備える。
上記構成によれば、例えば、水平方向と交差する方向に前後方向が配置されたときに、自重による長尺物Rの移動を規制することができる。これにより、ケーシング39からの長尺物Rの脱落が防止されることから、各種作業を行う方向について制限されにくくなる。その結果、格納ユニット13を搭載したことによる各種作業の作業性の低下、作業効率の低下を抑えることができる。
【0077】
(7)多機能削孔機10において、複数のマガジン38は、所定間隔で設けられた一対の端側マガジン38Eと、一対の端側マガジン38Eの間に位置する1以上の中間マガジン38Mと、を含む。
【0078】
上記構成によれば、異なる長さの長尺物Ra,Rbを格納ユニット13に格納することができる。これにより、例えば、長尺物Ra,Rbを連結して各種の作業を行う必要がある場合であっても容易に対応することができる。
【0079】
(8)格納ユニット13は、長尺物Rとして、削孔ロッド(第1削孔ロッドR1及び第2削孔ロッドR2)と削孔ロッドが形成した削孔(ロックボルト孔88)に注入材を注入する注入ロッド(第1注入ロッド及び第2注入ロッド)とを含む。削岩機ユニット12は、ドリルヘッド21に装着され、削孔ロッドに削孔用水を供給可能なウォータースイベル25と、ウォータースイベル25に装着され、注入ロッドに注入材を供給可能なロータリージョイント26とを備える。長尺物Rは、ロータリージョイント26に装着され、削孔用水は、ロータリージョイント26を通じて削孔ロッドに供給される。
【0080】
上記構成によれば、ウォータースイベル25とロータリージョイント26とが予めドリルヘッド21に装着されていることから、ロータリージョイント26に削孔ロッドを装着して削孔作業をしたあと、ロータリージョイント26に注入ロッドを装着して注入作業を行うことができる。また、注入ホース29をロックボルト孔88に挿入して注入作業を行う場合に比べて、その作業性を大幅に向上させることができる。また、長尺物Rの未装着状態においてウォーターポンプ28を駆動することにより、ロータリージョイント26の内部に残っている注入材を洗い流すこともできる。
【0081】
(9)マガジン38において、長尺物保持溝46の各々は、外周縁から軸線(マガジン回転軸線45)中心の径方向と交差する方向に延びている。
上記構成によれば、長尺物Rの授受に必要とされる長尺物搬送装置14の稼働範囲を小さく、換言すれば、長尺物搬送装置14による長尺物Rの搬送経路を短くすることができる。これにより、長尺物搬送装置14の小型化、高機能化を図ることができる。
【0082】
(10)長尺物搬送装置14は、軸線(マガジン回転軸線45)に沿った回動軸線(アーム回動軸線57)周りに回動可能に構成され、回動軸線中心の径方向に延びる伸縮自在なアーム部55と、アーム部55の先端部に支持されて、回動軸線中心の径方向に往復移動可能な往復動部材66と、長尺物Rを把持又は解放する一対のクランプ片63と、往復動部材66の往復移動を一対のクランプ片63の開閉動に変換するリンク機構62と、を備える。
【0083】
上記構成によれば、アーム部55の回動・伸縮、往復動部材66の移動を制御するだけで、削岩機ユニット12と格納ユニット13との間で長尺物Rを搬送することができる。これにより、長尺物搬送装置14の構成・構造の複雑化が抑えられる。その結果、長尺物搬送装置14の小型化、ひいては格納ユニット13の小型化を図ることができる。
【0084】
(11)ケーシング39は、マガジン回転軸線45を中心とした径方向の外側から複数のマガジン38の外周縁を覆っている。これにより、マガジン回転軸線45を中心にマガジン38が回転したとしても、長尺物保持溝46からの長尺物Rの脱落を防止できる。その結果、マガジン38の構成・構造の複雑化が抑えられる。また、複数のマガジン38や、回転軸37、長尺物R(回転軸37、長尺物Rの少なくとも一部)がケーシング39によって覆われていることにより、従来のように露出している場合と比較し、削孔などによって周囲に飛散した泥土から、回転軸37、マガジン38、及び、長尺物Rを保護することもできうる。この場合には、泥土などの付着に起因したトラブル(駆動トラブル、接続トラブル、取扱性の低下など)を回避することができる。
【0085】
以上、本発明に係る多機能削孔機の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0086】
・長尺物搬送装置14は、往復動部材66の往復動に応じて一対のクランプ片63が開閉動する構成に限らず、一対のクランプ片63の開閉動を直接回転機で行ってもよい。
・長尺物保持溝46は、例えば、削岩機ユニット12の反対側の斜め上方を出し入れ位置として、その出し入れ位置において下方に向かって延びるように形成されていてもよい。また、長尺物保持溝46は、例えば、マガジン回転軸線45へと向かう中心方向に延びていてもよい。
【0087】
・注入材が供給されるロータリージョイント26がドリルヘッド21に装着され、削孔用水が供給されるウォータースイベル25がロータリージョイント26に装着される構成であってよい。この構成においては、ウォータースイベル25に長尺物Rが装着される。
【0088】
・ウォータースイベル25及びロータリージョイント26は、多機能削孔機10の作業内容に応じて装着されてもよい。
・マガジン38は、少なくとも一対の端側マガジン38Eを有していればよい。
【0089】
・格納ユニット13において、規制部40は、前後方向における長尺物Rの移動を規制できればよく、マガジン38に固定される構成であってもよいし、回転軸37に固定される構成であってもよい。
【0090】
・削岩機ユニット12と格納ユニット13は、挿通孔22,42に挿通されたボルト51をボルト締めすることにより着脱可能に一体化されている。これに限らず、削岩機ユニット12と格納ユニット13は、例えば、連結部49に対してガイドセル20が一体化されていてもよい。また、こうした構成においては、ガイドセル20と基台35との間に隙間が形成されていてもよい。
【0091】
・多機能削孔機10は、1以上の格納ユニット13を備えていればよい。また、格納ユニット13は、ガイドセル20に一体化されていればよく、ガイドセル20の上方や下方に配置されてもよい。
【0092】
・多機能削孔機10は、長尺物Rとして、削孔ロッドを用いた削孔作業に加えて他の作業を行うことができる構成であればよい。例えば、多機能削孔機10は、発破工法において、削孔作業に加えて、削孔作業によって形成された孔に対して、長尺物Rとして装薬物を挿入する装薬作業を行う構成であってもよい。また、例えば、多機能削孔機10は、AGF工法(All Ground Fasten)において、削孔作業に加えて、削孔作業によって形成された孔に対して、長尺物Rとしてのケーシングロッドを打設する打設作業を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
R…長尺物、10…多機能削孔機、11…トンネル、12…削岩機ユニット、13…格納ユニット、14…長尺物搬送装置、15…ブーム、16…マンゲージ、20…ガイドセル、21…ドリルヘッド、22…セル側挿通孔、23…ロッド回転軸線、25…ウォータースイベル、26…ロータリージョイント、27…ウォーターホース、28…ウォーターポンプ、29…注入ホース、30…注入材ポンプ、31…長尺物保持機構、32…充填確認装置、35…基台、36…軸受け、37…回転軸、38…マガジン、38E…端側マガジン、38M…中間マガジン、39…ケーシング、40…規制部、40E…端側規制部、40M…中間規制部、42…基台側挿通孔、43…マガジン駆動部、45…マガジン回転軸線、46…長尺物保持溝、48…出し入れ口、49…連結部、50…嵌合凹部、51…ボルト、55…アーム部、56…把持部、57…アーム回動軸線、61…機構作動部、62…リンク機構、63…クランプ片、65…ガイド部材、66…往復動部材、70…制御装置、71…入力装置、72…作業情報、73…長尺物情報、75…ヘッド位置検出部、76…ヘッド回転数検出部、77…ヘッド駆動部、80…回転位置検出部、81…長尺物検出部、83…把持部位置検出部、84…アーム駆動部、85…機構駆動部、88…ロックボルト孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8