(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】攪拌容器および攪拌装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G01N35/02 D
(21)【出願番号】P 2021017420
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-06-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発/革新的センシング技術開発/1分で感染リスクを検知可能なウイルスゲートキーパーの研究開発」共同研究産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 健吾
(72)【発明者】
【氏名】原 隆弘
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512327(JP,A)
【文献】米国特許第09316577(US,B1)
【文献】登録実用新案第3186917(JP,U)
【文献】特開2015-033660(JP,A)
【文献】実開昭58-148657(JP,U)
【文献】特開平05-052854(JP,A)
【文献】特開2000-214171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容された流体を攪拌する攪拌容器であって、
回転軸と、
前記回転軸周りに回転可能であるとともに凸部を有する円状の底面と
を備え、
前記凸部は、前記底面の径方向および円周方向に所定の大きさを有する第1凸部
と、前記底面の中央部に設けられた第2凸部とを含み、
前記第1凸部は、前記底面の第1の位置において第1の高さを有するとともに、前記第1の位置よりも前記底面の中心から離れた第2の位置において前記第1の高さよりも大きい第2の高さを有し、
前記第1凸部は、前記回転軸周りの方向に傾斜し、
前記第2凸部の周囲に、複数の前記第1凸部が放射状に配置され、
前記底面には、当該攪拌容器内の流体を吐出するための吐出口に通じる開口がもうけられている、攪拌容器。
【請求項2】
前記第1凸部の少なくとも一部では、その高さが、前記底面の中心から離れるに連れて徐々に大きくなっている、請求項
1に記載の攪拌容器。
【請求項3】
前記第2凸部は、前記底面の第3の位置において第3の高さを有するとともに、前記第3の位置よりも前記底面の中心から離れた第4の位置において前記第3の高さよりも小さい第4の高さを有する、
請求項1または2に記載の攪拌容器。
【請求項4】
前記凸部は、前記回転軸に対して回転対称に配置されている、請求項1~
3のいずれかに記載の攪拌容器。
【請求項5】
前記底面に対向する上面をさらに有し、
前記吐出口は、前記上面よりも前記底面に近い位置に配置されている、請求項1~
4のいずれかに記載の攪拌容器。
【請求項6】
前記吐出口から吐出される流体の量は、液量調整部により調整される、請求項1~
5のいずれかに記載の攪拌容器。
【請求項7】
当該攪拌容器は、前記開口以外の部分がとじられている、請求項1~
6のいずれかに記載の攪拌容器。
【請求項8】
前記底面に対向して設けられるとともに、当該攪拌容器の内部の圧力に応じて変位する変位面を有する、請求項1~
7のいずれかに記載の攪拌容器。
【請求項9】
前記攪拌容器は、円柱形状を有する、請求項1~
8のいずれかに記載の攪拌容器。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載の攪拌容器と、
前記攪拌容器を保持するとともに、前記回転軸周りに前記攪拌容器を回転可能な本体部と
を備える、攪拌装置。
【請求項11】
前記本体部は、前記攪拌容器を時計回りおよび反時計回りに回転可能に構成されている、請求項
10に記載の攪拌装置。
【請求項12】
前記本体部は、前記攪拌容器を60rpm以上300rpm以下の速度で回転可能に構成されている、
請求項10または11に記載の攪拌装置。
【請求項13】
前記攪拌容器は、前記本体部から着脱可能に構成されている、
請求項10~12のいずれかに記載の攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌容器および攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の検出および検査等では、攪拌容器が用いられることがある(たとえば、特許文献1~3)。この攪拌容器では、たとえば、試薬と溶媒とが攪拌され、溶媒中に溶解または分散された試薬を用いて物質の検出および検査等がなされる。攪拌容器内には、たとえば、攪拌翼が設けられており、この攪拌翼が回転することにより、容器内が攪拌される。あるいは、攪拌容器を外側から振動させる加振機構を用いることにより、容器内が攪拌される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-169407号公報
【文献】特開2017-9525号公報
【文献】国際公開14/002952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような攪拌容器は、より簡素な構成で攪拌されることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の目的は、より簡素な構成で攪拌することが可能な攪拌容器および攪拌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記によって達成される。
【0007】
(1)回転軸と、前記回転軸周りに回転可能であるとともに凸部を有する円状の底面とを備える、攪拌容器。
【0008】
(2)前記凸部は、前記底面の径方向および円周方向に所定の大きさを有する第1凸部を含む、上記(1)に記載の攪拌容器。
【0009】
(3)複数の前記第1凸部が、前記底面の中央部から放射状に配置されている、上記(2)に記載の攪拌容器。
【0010】
(4)前記第1凸部は、前記底面の第1の位置において第1の高さを有するとともに、前記第1の位置よりも前記底面の中心から離れた第2の位置において前記第1の高さよりも大きい第2の高さを有する、上記(2)または(3)に記載の攪拌容器。
【0011】
(5)前記第1凸部の少なくとも一部では、その高さが、前記底面の中心から離れるに連れて徐々に大きくなっている、上記(2)~(4)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0012】
(6)前記第1凸部は、前記回転軸周りの方向に傾斜している、上記(2)~(5)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0013】
(7)前記凸部は、前記底面の中央部に設けられた第2凸部を含む、上記(1)~(6)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0014】
(8)前記第2凸部の周囲に、複数の前記第1凸部が設けられている、上記(3)に従属する上記(7)に記載の攪拌容器。
【0015】
(9)前記第2凸部は、前記底面の第3の位置において第3の高さを有するとともに、前記第3の位置よりも前記底面の中心から離れた第4の位置において前記第3の高さよりも小さい第4の高さを有する、上記(7)または(8)に記載の攪拌容器。
【0016】
(10)前記凸部は、前記回転軸に対して回転対称に配置されている、上記(1)~(9)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0017】
(11)前記底面には、当該攪拌容器内の流体を吐出するための吐出口に通じる開口がもうけられている、上記(1)~(10)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0018】
(12)前記底面に対向する上面をさらに有し、前記吐出口は、前記上面よりも前記底面に近い位置に配置されている、上記(11)に記載の攪拌容器。
【0019】
(13)前記吐出口から吐出される流体の量は、液量調整部により調整される、上記(11)または(12)に記載の攪拌容器。
【0020】
(14)当該攪拌容器は、前記開口以外の部分がとじられている、上記(11)~(13)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0021】
(15)前記底面に対向して設けられるとともに、当該攪拌容器の内部の圧力に応じて変位する変位面を有する、上記(1)~(14)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0022】
(16)円柱形状を有する、上記(1)~(15)のいずれかに記載の攪拌容器。
【0023】
(17)上記(1)~(16)のいずれかに記載の攪拌容器と、前記攪拌容器を保持するとともに、前記回転軸周りに前記攪拌容器を回転可能な本体部とを備える、攪拌装置。
【0024】
(18)前記本体部は、前記攪拌容器を時計回りおよび反時計回りに回転可能に構成されている、上記(17)に記載の攪拌装置。
【0025】
(19)前記本体部は、前記攪拌容器を60rpm以上300rpm以下の速度で回転可能に構成されている、上記(17)または(18)に記載の攪拌装置。
【0026】
(20)前記攪拌容器は、前記本体部から着脱可能に構成されている、上記(17)~(19)のいずれかに記載の攪拌装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、攪拌容器の底面に凸部が設けられているので、この底面が回転軸周りに回転することにより、攪拌容器内の流体に所定の方向の流れが生じ、攪拌容器内が攪拌される。即ち、攪拌翼および加振機構等を用いずに攪拌することができる。よって、より簡素な構成で攪拌することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係る検出装置の側面の概略構成を例示する平面図である。
【
図2】
図1に示した検出装置の上面の構成を表す平面図である。
【
図3】(A)は
図1等に示した検出部の側面の構成を表す平面図であり、(B)は(A)に示した検出部の上面の構成を表す平面図である。
【
図4】
図1等に示した試薬供給部の構成の一例を表す部分断面図である。
【
図5】
図4に示した攪拌部の底面の構成の一例を表す平面図である。
【
図6】
図5に示したVI-VI’線に沿った断面構成の一例を表す図である。
【
図7】
図4に示したディスペンサー部の断面構成の一例を表す図である。
【
図8】
図1等に示した検出装置を用いた検出方法の一例を表すフローチャートである。
【
図9】
図4に示した攪拌部に生じる流体の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して本発明の検出装置の実施形態を説明する。なお、図中、同一の部材には同一の符号を用いた。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0030】
(実施形態)
<検出装置の構成>
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る検出装置1の概略構成を表している。
図1は、検出装置1の側面(XZ平面)の構成を表し、
図2は検出装置1の上面(XY平面)の構成を表している。以下では、検出装置1の上下方向をZ方向として説明する。
【0031】
検出装置1は、検体および試薬の混合物の光学測定を行う装置である。検出装置1は、主に、軸部11、支持台12、検出部13、検体供給部14、試薬供給部15、光学測定部16、保持台17、供給駆動部18および廃液貯留部19を有している。軸部11上に、支持台12および検出部13がこの順に設けられている。支持台12の上方に保持台17が配置されており、この保持台17に、試薬供給部15、検体供給部14、光学測定部16および供給駆動部18が保持されている。廃液貯留部19は、支持台12の下部に配置されている。ここでは、検出装置1が本発明の攪拌装置、保持台17が本発明の本体部の一具体例に各々対応する。
【0032】
軸部11は、下から順に回転軸11a、連結部11bおよび回転軸11cを有している。たとえば、回転軸11aは、モーター(図示せず)に接続されており、軸回転する。連結部11bは、回転軸11aと同軸上に回転軸11cを連結している。回転軸11cは、回転軸11aの回転に伴い、軸回転する。
【0033】
回転軸11c上に設けられた支持台12は、回転軸11a,11cに略垂直な回転面12s(XY平面)を有している。回転面12sは、たとえば、円形の平面形状を有している(
図2)。支持台12は、いわゆるターンテーブルであり、回転面12sは、回転軸11a,11cの回転に伴って、XY平面内で時計回りまたは反時計回りに回転する。この回転面12s上に検出部13が設けられており、検出部13は回転面12sの回転に伴って変位する。回転面12s上には、たとえば、一の検出部13が設けられている。回転面12s上に、複数の検出部13が設けられていてもよい。
【0034】
支持台12に支持された検出部13には、試薬供給部15から試薬が供給され、検体供給部14から検体が供給される。この試薬および検体が供給された検出部13に、光学測定部16から光が照射される。
【0035】
図3(A)(B)は、検出部13の構成の一例を表している。
図3(A)は検出部13の側面(XZ平面)の構成を表し、
図3(B)は検出部13の上面(XY平面)の構成を表している。検出部13は、たとえば、回転面12s側から順に、不透明部材131および透明部材132の積層構造を有している。検出部13上には、たとえば、受け部21が設けられている。
【0036】
不透明部材131は、たとえば、矩形の平面形状を有する板状部材である。不透明部材131は、光学測定部16から照射される光に対して低い透過率を有する材料により構成されている。不透明部材131は、たとえば、単結晶シリコン(Si)材料または樹脂材料等を含んでいる。
【0037】
透明部材132は、不透明部材131に積層されており、たとえば、不透明部材131とほぼ同じ平面形状を有している。この透明部材132には、試薬および検体を含む液体が流れる流路132fが設けられている。この流路132fにより、たとえば、透明部材132の長辺方向(
図3のX方向)に沿って、試薬および検体を含む液体が流れるようになっている。流路132fは、他の部分の流路132fの幅よりも大きな幅の拡幅部132fbを有している。拡幅部132fbは、たとえば、流路132fの中央部に設けられている。たとえば、この拡幅部132fbに貯留する検体および試薬に、光学測定部16から光が照射され、光学特性が測定される。流路132fでは、光学測定部16側の面が開放されていてもよい。
【0038】
透明部材132は、光学測定部16から照射される光に対して高い透過率を有する材料により構成されており、光学測定部16から照射された光は、拡幅部132fbに到達する。透明部材132は、たとえば、ガラス材料または樹脂材料等を含んでいる。透明部材132に含まれるガラス材料は、たとえば、シリカガラス等であり、このようなガラス材料を用いて透明部材132を構成することにより、高い光透過性を実現することができる。透明部材132に含まれる樹脂材料は、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンおよびアクリル等である。ジメチルポリシロキサンは金型への転写性が高く、容易に透明部材132を形成することができる。ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンおよびアクリルを用いることにより、射出成型で透明部材132を量産することができる。また、自家蛍光が少ないポリスチレンおよびシクロオレフィンを用いて透明部材132を形成することにより、光学測定でのノイズを低減することができる。高い屈折率を有するポリカーボネートを用いて透明部材132を形成することにより、検出装置1を小型化することが可能となる。高い光透過性を有するアクリルを用いて透明部材132を形成することにより、導光時の光の減衰を抑え、光学測定の精度を向上させることが可能となる。透明部材132の光入射面は、光学的に平滑であることが好ましい。これにより、光学測定部16による測定の精度を向上させることができる。透明部材132の厚みは、特に制限されるものではなく、剛性および光透過性等を考慮して調整することができる。
【0039】
透明部材132上の受け部21は、検体供給部14から供給された検体および試薬供給部15から供給された試薬を検出部13の上部で受け、検出部13(より具体的には透明部材132)の流路132fに流す役割を担っている。受け部21は、たとえば、漏斗形状を有しており、受け部21の一方の開口は、透明部材132から離れるにつれて広がっている。受け部21の他方の開口は、流路132fに連通している。検体および試薬は、たとえば、受け部21で混合された後、流路132fに流される。たとえば、受け部21の外側に加振機構を当接させることにより受け部21を振動させ、受け部21で検体および試薬を混合させる。あるいは、検体および試薬は、流路132f内で混合されてもよい。たとえば、一端から流路132f内を吸引して流路132fをポンピングすることにより、流路132f内の気体および液体が移動し、流路132f内で検体および試薬が混合される。
【0040】
保持台17に保持された検体供給部14には所定量の検体が収容されており、この検体が検出部13に供給される。検体供給部14には、たとえば、希釈液により希釈された検体が収容されている。検体供給部14は、たとえば、Z方向の高さを有する略円柱状の容器である(
図2)。
【0041】
検体供給部14は、Z方向の回転面12s側の端部に検体供給口14Mを有している。検体供給部14は、たとえば、ディスペンサー部を有しており、このディスペンサー部に検体供給口14Mが設けられている。この検体供給部14のディスペンサー部は、たとえば、試薬供給部15のディスペンサー部(後述の
図4のディスペンサー部15D)の構成と同様の構成を有している。
【0042】
検体供給部14に収容されている検体は、たとえば、血液、唾液、尿、薬品、環境水、上水および下水等である。たとえば、この検体中に含まれるDNA、RNA、タンパク質、ウィルス、菌および汚染物質等が、検出装置1の検出対象物質である。
【0043】
試薬供給部15は、検体供給部14とともに保持台17に保持されている。この試薬供給部15には、所定量の試薬が収容されており、この試薬が検出部13に供給される。試薬供給部15には、たとえば、溶媒中に溶解または分散された試薬が収容されている。
【0044】
図4は、試薬供給部15の部分断面図(XZ断面図)である。試薬供給部15は、回転面12s側からディスペンサー部15Dおよび攪拌部15Sをこの順に有している。ディスペンサー部15Dには、試薬供給口15Mが設けられている。ディスペンサー部15D上の攪拌部15Sは、たとえば、Z方向に平行な回転軸15Aを有しており、この回転軸15Aを中心に時計回りr1および反時計回りr2に回転する。攪拌部15Sで攪拌された試薬および溶媒が、ディスペンサー部15Dの試薬供給口15Mを介して検出部13に供給される。ここでは、攪拌部15Sが、本発明の攪拌容器の一具体例に対応し、試薬供給口15Mが、本発明の吐出口の一具体例に対応する。
【0045】
攪拌部15Sは、Z方向の高さを有する円柱形状を有しており、回転面12s側に設けられた円状の底面15BSと、底面15BSに対向する円状の上面15USと、底面15BSと上面15USとの間の側面15SSとを有している。攪拌部15Sが回転軸15A周りに回転すると、底面15BS、上面15USおよび側面15SSが回転し、底面15BS、上面15USおよび側面15SSにより囲まれた空間に収容された試薬および溶媒が攪拌される。この攪拌部15Sの空間には、第1凸部151、第2凸部152およびピストン部153が設けられている。
【0046】
第1凸部151および第2凸部152は、底面15BSに設けられており、底面15BSから上面15USに向かって突出している。第1凸部151および第2凸部152は、底面15BSの回転に伴って回転する。詳細は後述するが、本実施形態では、攪拌部15Sの底面15BSに、この第1凸部151および第2凸部152が設けられているので、攪拌部15Sの回転時に、攪拌部15S内に収容された流体に所定の方向の流れが生じ、試薬および溶媒が効率的に攪拌される。
【0047】
図5は、この第1凸部151および第2凸部152が設けられた底面15BSの構成の一例を表す平面図(XY平面図)であり、
図6は、
図5に示したVI-VI’線に沿った断面(XZ断面)構成の一例を表している。たとえば、円状の底面15BSの中心Cに重なる位置に第2凸部152が配置され、第2凸部152の周囲に複数の第1凸部151が配置されている。
【0048】
第2凸部152は、底面15BSの中心Cに重なる位置、即ち、底面15BSの中央部に配置されている。第2凸部152は、たとえば、略円形の平面形状を有しており(
図5)、第2凸部152の中心は、底面15BSの中心Cに重なる位置に配置されている。この第2凸部152の少なくとも一部では、たとえば、底面15BSの中心Cから離れるに連れて徐々に、その高さ(Z方向の大きさ)が小さくなっている(
図6)。具体的には、第2凸部152は、位置P3において高さh3を有し、位置P3よりも中心から離れた位置P4において高さh3よりも小さい高さh4を有している(h3>h4)。即ち、第2凸部152は山状の凸部である。
【0049】
複数の第1凸部151は、たとえば、第2凸部152の周囲、即ち、底面15BSの中心C近傍から周縁に向かって放射状に配置されている(
図5)。
図5に示した底面15BSには、放射状に配置された6個の第1凸部151が設けられている。たとえば、複数の第1凸部151は、各々、第2凸部152に隣接して配置され、底面15BSの周縁まで延在している。複数の第1凸部151は、回転軸15A周りの方向に、互いに離間して配置されている。
【0050】
複数の第1凸部151は、各々、たとえば、略扇形の平面形状を有し、底面15BSの径方向および円周方向に所定の大きさを有している(
図5)。たとえば、第1凸部151は、底面15BSの径方向の大きさ151dおよび円周方向の大きさ(円弧の長さ)151lを有している。大きさ151dは、たとえば、底面15BSの半径よりも小さく、大きさ151lは、たとえば、底面15BSの円周の長さよりも小さい。
【0051】
この複数の第1凸部151は、各々、回転軸15A周りの方向に傾斜している(
図4)。換言すれば、第1凸部151の表面(上面15USとの対向面)は、回転軸15A周りの方向に傾斜する傾斜面であり、第1凸部151の表面と底面15BSとのなす角度は、90度より大きく、かつ、180度より小さくなっている。
【0052】
この第1凸部151の少なくとも一部では、たとえば、底面15BSの中心C近傍(第2凸部152に隣接する位置)における高さが最も小さく、底面15BSの周縁に近づくに連れて徐々に高さが大きくなっている(
図6)。具体的には、第1凸部151は、位置P1において高さh1を有し、位置P1よりも中心Cから離れた位置P2において高さh1よりも大きい高さh2を有している(h2>h1)。即ち、第1凸部151の表面は、底面15BSの径方向にも傾斜している。
【0053】
第1凸部151および第2凸部152は、平面(XY平面)視で、回転軸15Aを中心に、回転対称に配置されていることが好ましい。これにより、攪拌部15Sの回転時に、攪拌部15S内の位置に起因した攪拌効率のバラツキが抑えられ、より効果的に攪拌部15Sに収容された試薬および溶媒を攪拌することができる。
図5には、第1凸部151および第2凸部152の配置が6回回転対称性を有している例を示したが、第1凸部151および第2凸部152の配置は、他の回転対称性を有していてもよい。たとえば、第1凸部151および第2凸部152の配置は、4回回転対称性を有していてもよく、8回回転対称性を有していてもよい。
【0054】
底面15BSには、第1凸部151および第2凸部152に加えて、たとえば、開口152Mが設けられている(
図5)。開口152Mは、ディスペンサー部15Dの試薬供給口15Mに通じており、攪拌部15S内で攪拌された試薬および溶媒は、この底面15BSの開口152Mを介してディスペンサー部15Dの試薬供給口15Mに流れる。開口152Mは、たとえば、底面15BSの中央部、具体的には、第2凸部152に重なる位置に配置されている。この開口152M近傍には、たとえば、逆止弁が設けられている。攪拌部15Sでは、この開口152M以外の部分が、閉じられていることが好ましい。換言すれば、攪拌部15Sは、開口152Mを介してのみ攪拌部15Sの外に接続可能であることが好ましい。これにより、攪拌部15S内に収容されている試薬等が外気に曝されにくくなり、酸化等に起因する試薬等の劣化を抑えることができる。
【0055】
ピストン部153は、底面15BSと上面15USとの間に設けられている(
図4)。このピストン部153は、底面15BSに対向する変位面153Sを有している。変位面153Sは、底面15BSと上面15USとの間で移動可能に構成されており、攪拌部15S内の圧力変化に応じて変位する。変位面153Sは、たとえば、攪拌部15Sに収容された液体の液面に接しており、液面に接した状態で変位する。たとえば、試薬供給口15Mから検出部13に試薬および溶媒が供給されると、試薬供給部15内の液体の量が少なくなり、その液面は底面15BS側に移動する。このとき、ピストン部153の変位面153Sは、液面に接したまま、底面15BS側に変位する。攪拌部15Sに、このような変位面153Sを設けることにより、試薬供給部15に収容されている試薬等が空気に曝されにくくなり、酸化等に起因する試薬等の劣化を抑えることができる。
【0056】
試薬供給口15Mを有するディスペンサー部15Dは、攪拌部15Sの底面15BSに接続されている。換言すれば、試薬供給口15Mは、攪拌部15Sの上面15USよりも底面15BSに近い位置に配置されている。このディスペンサー部15Dは、攪拌部15Sで攪拌された試薬および溶媒を、適切なタイミングおよび適切な量で、検出部13に供給するためのものである。ここでは、このディスペンサー部15Dが本発明の液量調整部の一具体例に対応する。
【0057】
図7は、
図4に示したディスペンサー部15Dを拡大して表している。ディスペンサー部15Dは、たとえば、可動部15DAおよび受動部15DBを有している。可動部15DAは、たとえばノズル形状を有しており、Z方向に沿って、即ち、上下方向に移動可能な部分である。受動部15DBは、可動部15DAの一部または全部を収容可能に構成されている。
【0058】
たとえば、可動部15DAに供給駆動部18が作用していないとき、可動部15DAの一部または全部が受動部15DBから突出している(図示せず)。このとき、試薬供給部15内の試薬および溶媒は試薬供給部15内に留まり、試薬供給部15から吐出されない。一方、可動部15DAに供給駆動部18が作用すると、供給駆動部18により可動部15DAが上方向に押し上げられ、受動部15DBに可動部15DAの一部または全部が収容される。これにより、攪拌部15S内の試薬および溶媒が、開口152Mを介して試薬供給口15Mから検出部13に吐出される。たとえば、試薬供給口15Mからの流体の吐出量は、可動部15DAの移動量に応じて調整される。たとえば、可動部15DAがより上方向に押し上げられると、試薬供給口15Mからの流体の吐出量が増加する。
【0059】
試薬供給部15に収容されている試薬は、たとえば、色素、蛍光物質、マイクロ粒子およびナノ粒子等であり、検体中に含まれる検出対象物質と物理的または化学的な結合を生成する。この試薬には、公知の試薬を用いることができる。蛍光物質は、たとえば、蛍光色素または量子ドット等である。ナノ粒子は、磁性粒子、ポリスチレンビーズまたは金ナノ粒子等である。たとえば、このような試薬を検出対象物質に結合させることにより、光照射時に発生する光信号が大きくなり、検出対象物質の検出が容易となる。特に、検出対象物質単体の光信号が微弱であるとき、このような試薬が有効である。試薬は、光吸収または光散乱を生じる物質であってもよい。このとき、試薬を検出対象物質に結合させることにより、光照射時に発生する光強度が減少し、光信号が増幅される。
【0060】
試薬と検出対象物質との結合は、たとえば、物理吸着による結合、抗原-抗体反応による結合、DNAハイブリダイゼーションによる結合、ビオチン-アビジン結合、キレート結合またはアミノ結合等である。物理吸着による結合は、たとえば、静電気的な結合力を利用する水素結合等である。物理吸着による結合では、検体の前処理等が不要であり、容易に試薬および検出対象物質の結合体を生成することができる。抗原-抗体反応による結合は、たとえば、ウィルス等の検出対象物質と試薬との特異的な結合であり、検体に含まれる検出対象物質以外の夾雑物に由来するノイズの発生を抑えることができる。抗原-抗体反応を用いて検出対象物質の検出を行うときには、たとえば、抗体を結合させた試薬を事前に調製する。
【0061】
これら検体供給部14および試薬供給部15は、検出部13が変位する方向、即ち、回転面12sの回転方向において、たとえば、隣り合う位置に配置されている。たとえば、検体供給部14、試薬供給部15および光学測定部16は、この順に反時計回りに配置されている(
図1)。検体供給部14、試薬供給部15および光学測定部16は、この順に時計回りに配置されていてもよい。検体供給部14、試薬供給部15および光学測定部16は、反時計回りまたは時計回りに、試薬供給部15、検体供給部14および光学測定部16の順に配置されていてもよい。検体供給部14の検体供給口14Mおよび試薬供給部15の試薬供給口15Mは、回転面12sに対向する位置、即ち、回転面12sの上部に配置されている。
【0062】
光学測定部16は、たとえば、検体供給部14および試薬供給部15とともに、保持台17に保持されており、検出部13に供給された検体および試薬の光学特性を測定する。この光学測定部16は回転面12sの上部に配置されており、光学測定部16に対向する位置、即ち、光学測定部16の直下に検出部13を配置することができる。光学測定部16の測定結果から、検体に含まれる検出対象物質の存在または含有量が検出される。
【0063】
光学測定部16は、たとえば、検出部13に光を照射するとともに、検出部13で発生する光信号を検出する。光学測定部16は、たとえば、照射部および受光部を有している。照射部および受光部は、たとえば、回転面12sに対向する位置に配置されている。
【0064】
照射部は、光源を含んでおり、光源から検出部13に向けて光を照射する。照射部から検出部13に照射される光は、たとえば、蛍光物質を励起可能な波長域の光である。光源は、たとえば、ランプ、LED(Light Emitting Diode)およびレーザー等である。光源で発生する光は単色光であってもよく、あるいは、広い波長帯域を有する光であってもよい。光源で発生する光が広い波長帯域を有するとき、照射部は、バンドパスフィルタ等の光学フィルタを有していることが好ましい。ランプまたはLED等を光源に使用するとき、照射部は、光源で発生した光の進行方向を規制するガイド部材を含んでいることが好ましい。ガイド部材は、たとえば、コリメートレンズ等である。
【0065】
受光部は、たとえば、フォトダイオード、光検出器、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーおよびCMOS(Complementaly Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー等の撮像デバイスを含んでいる。光検出器は、たとえば、光電子増倍管等である。受光部には、公知の撮像デバイスを用いることができる。この受光部により、光学測定部16に入射する光の光強度またはスペクトルが検出される。受光部は、単一の波長の光の強度を検出してもよく、複数の波長の光の強度を検出してもよい。照射部から照射された光が検出部13に入射すると、たとえば、この光により、試薬および検出対象物質の結合体が励起されて光信号が発生する。発生した光信号は、直接、あるいは、透明部材132と不透明部材131との界面で反射されて受光部に入射する。
【0066】
検体供給部14、試薬供給部15および光学測定部16を保持する保持台17は、支持台12の上方に配置されており、保持台17の一部は支持台12に対向している。この保持台17の上面には検体保持部171および試薬保持部172が設けられている。
【0067】
検体保持部171および試薬保持部172は、保持台17の上面に固定されている。検体保持部171および試薬保持部172は、たとえば、リング形状を有しており、検体保持部171の内側に検体供給部14が保持され、試薬保持部172の内側に試薬供給部15が保持されている。検体供給部14および試薬供給部15は各々、検体保持部171、試薬保持部172から着脱可能に構成されている。たとえば、試薬保持部172には、試薬供給部15を回転駆動させるための駆動機構が設けられている。この駆動機構は、たとえば、試薬供給部15を、回転軸15Aを中心に、60rpm以上300rpm以下の速度で時計回りおよび反時計回りに回転させる。
【0068】
検体供給口14Mおよび試薬供給口15Mに作用する供給駆動部18は、たとえば、保持台17に固定されている。この供給駆動部18は、たとえば、アクチュエーター18aとアクチュエーター18aに接続された板状部材18bとを含んでいる。
【0069】
アクチュエーター18aは、回転面12sに略垂直方向(Z方向)に沿って動き、板状部材18bを上下方向に動かす役割を担っている。アクチュエーター18aに接続された板状部材18bは、アクチュエーター18aの動きに伴って、上下方向に移動する。板状部材18bの主面は、たとえば、矩形状であり、回転面12sに略平行に設けられている。板状部材18bの一端は、回転面12sの中心付近の上部でアクチュエーター18aに接続され、板状部材18bの他端は、回転面12sの外周近傍の上部に設けられている。
【0070】
供給駆動部18では、たとえば、上方向に移動した板状部材18bの他端近傍が検体供給部14または試薬供給部15のディスペンサー部(より具体的には可動部)に接触する。これにより検体供給口14Mから検体が、あるいは、試薬供給口15Mから試薬が吐出する。たとえば、板状部材18bの他端は、回転面12sの回転方向に変位し、検体供給部14のディスペンサー部および試薬供給部15のディスペンサー部15Dの一方に、選択的に接触させることができる。これにより、供給駆動部18を検体供給口14Mおよび試薬供給口15Mで共用することができ、検出装置1の構成をより簡素にすることができる。板状部材18bの他端は、たとえば、回転面12sの回転に伴って変位する。
【0071】
支持台12の下部に配置された廃液貯留部19には、たとえば、検出部13を洗浄する際に生じる廃液が貯留される。たとえば、検出部13に供給された検体および試薬の混合物の光学特性を測定した後、検出部13に洗浄液を供給する。洗浄液は、たとえば、受け部21を介して検出部13に供給される。この検出部13に供給された洗浄液とともに、流路132f内の検体および試薬が廃液貯留部19に排出される。廃液は、たとえば、流路132fの一端を吸引することにより、廃液貯留部19に排出される。このように、光学特性を測定した後の検出部13を洗浄することにより、検出部13を再利用することが可能となる。支持台12の下部には、洗浄液が貯蔵された洗浄液供給部(図示せず)が配置されていてもよい。
【0072】
<検出装置を用いた検出方法>
以下、
図8を参照して、本実施形態の検出装置1を使用した検出方法を説明する。
図8は、本実施形態の検出方法を例示する流れ図である。
【0073】
まず、試薬供給部15の攪拌を開始する(ステップS101)。具体的には、試薬および溶媒が収容された試薬供給部15を試薬保持部172に保持させ、攪拌部15Sを回転させる。たとえば、まず、回転軸15Aを中心にして、攪拌部15Sを時計回りr1および反時計回りr2交互に回転させる。これにより、攪拌部15S内に設けられた流体に無秩序な流れが形成され、仮に、底面15BS近傍に試薬が沈降していても、この試薬が浮上する。この後、回転軸15Aを中心にして時計回りr1に攪拌部15Sを所定の時間継続して回転させる。これにより、攪拌部15S内に設けられた流体に規則的な流れが形成され、攪拌部15S内に収容された試薬および溶媒が安定して攪拌される。したがって、試薬供給部15内に収容された試薬の濃度が均一に維持される。
【0074】
攪拌部15Sの回転速度は、たとえば、60rpm~300rpmである。回転速度が60rpmよりも遅いと、流体の流れが形成されにくい。また、回転速度が300rpmよりも速いと、攪拌部15Sの隅で生じる乱流の影響が大きくなり、攪拌効率に影響を及ぼすおそれがある。
【0075】
次に、検体供給部14を準備する(ステップS102)。具体的には、検体が収容された検体供給部14を検体保持部171に保持させる。
【0076】
続いて、回転面12s上に載置した検出部13を、検体供給口14Mの直下に配置する(ステップS103)。この後、検体供給部14から、検体供給口14Mを介して検出部13に検体を供給する(ステップS104)。具体的には、供給駆動部18の板状部材18bの他端を検体供給部14のディスペンサー部に接触させる。これにより、検体供給口14Mから検体が吐出される。
【0077】
所定量の検体を検出部13に供給した後、検出部13を試薬供給口15Mの直下に配置する(ステップS105)。具体的には、回転面12sを反時計回りに回転させ、試薬供給口15Mの直下に検出部13を変位させる。
【0078】
続いて、試薬供給部15から、試薬供給口15Mを介して検出部13に試薬を供給する(ステップS106)。具体的には、供給駆動部18の板状部材18bの他端を試薬供給部15のディスペンサー部15Dに接触させる。これにより、試薬供給口15Mから溶媒とともに試薬が吐出される。
【0079】
所定量の試薬を検出部13に供給した後、検出部13に供給した検体および試薬を混合する(ステップS107)。たとえば、流路132f内で往復送液を行うことにより、検体および試薬を混合する。これにより、試薬と検体に含まれる検出対象物質との結合物が生成する。
【0080】
次に、検出部13を光学測定部16の直下に配置する(ステップS108)。具体的には、回転面12sをたとえば、反時計回りに回転させ、光学測定部16の直下に検出部13を変位させる。
【0081】
続いて、混合された検体および試薬の光学測定を実施する(ステップS109)。具体的には、光学測定部16が、検出部13に向けて光を照射するとともに、検出部13側から光学測定部16に入射する光を受光する。検出部13の光学測定を行った後、光学測定の結果を出力する(ステップS110)。光学測定の結果は、たとえば、画像処理により判別されて出力される。
【0082】
この後、検出部13の洗浄を行う(ステップS111)。検出部13の洗浄は、たとえば、以下のようにして行う。まず、回転面12sを回転させて検出部13を洗浄液供給部の直上に変位させ、洗浄液供給部から検出部13に洗浄液を供給する。次いで、供給された洗浄液とともに、流路132f内の検体および試薬を廃液貯留部19に排出する。廃液貯留部19への排出は、検出部13を廃液貯留部19の直上に変位させた後、行ってもよい。続いて、回転面12sを回転させて検出部13を光学測定部16の直下に変位させ、検出部13の光学測定を実施する。この後、光学測定の結果を出力し、検出部13が洗浄できていることが確認できたら、洗浄を終了する。検出部13の洗浄が足りないときには、再び、検出部13への洗浄液の供給および排出を繰り返す。
【0083】
検出部13の洗浄を行った後、検出を終了する。あるいは、検出部13の洗浄を行った後、ステップS101の工程に戻ってもよい。
【0084】
<検出装置の作用効果>
本実施形態の検出装置1では、攪拌部15S部の底面15BSに第1凸部151および第2凸部152が設けられているので、この底面15BSが回転軸15A周りに回転することにより、攪拌部15S内の流体に所定の方向の流れが生じ、攪拌部15S内が攪拌される。よって、より簡素な構成で、攪拌部15S内を攪拌することができる。以下、この検出装置1の作用効果について説明する。
【0085】
たとえば、攪拌容器に設けられた攪拌翼を回転させると、攪拌容器内が攪拌される。しかし、このような攪拌翼を有する攪拌容器の構成は複雑になりやすく、設計の自由度が低い。たとえば、攪拌翼が設けられている部分の近傍には、攪拌容器内の流体を吐出させるための開口(たとえば、
図5の開口152M)を設けることは困難である。また、加振機構を用いて攪拌容器内を攪拌することも可能である。しかし、このような攪拌容器では、加振に起因した液漏れ等が生じやすく、攪拌容器内の流体を吐出させるための開口の設置領域が大きく制限される。このような攪拌容器では、たとえば、攪拌容器の上面側から試薬が取り出される。
【0086】
これに対し、検出装置1では、攪拌部15Sの底面15BSに第1凸部151および第2凸部152が設けられているので、攪拌翼および加振機構等を用いずに、攪拌部15S内が効率的に攪拌される。
【0087】
図9は、試薬供給部15を回転軸15A周りに回転させたときの攪拌部15S内の流体の流れ(流れF1,F2)を表している。攪拌部15Sの回転時には、第1凸部151および第2凸部152によって、攪拌部15S内の流体に流れF1,F2が形成される。流れF1は、底面15BSから上面15USに向かう上昇流である。底面15BSの周縁近傍(側面15SS近傍)では、中心C近傍に比べて第1凸部151の高さが大きくなっているので、より強い流れF1が形成される。一方、底面15BSの中央部には、流れF1の影響を受け、上面15USから底面15BSに向かう下降流の流れF2が形成される。流れF2は、底面15BSの中央部に設けられた山状の第2凸部152の傾斜に沿って、底面15BSの周縁側に向かう。この底面15BSの周縁側では、流れF1が形成されているので、流れF2によって、底面15BSの周縁側に移動した流体は、流れF1によって、上面15US側に移動する。即ち、流れF1および流れF2のループによって、攪拌部15S内が均一に攪拌される。
【0088】
このように、試薬供給部15では、攪拌翼および加振機構等を用いずに、簡素な構成で攪拌部15S内が効率的に攪拌される。したがって、設計の自由度が高く、たとえば、攪拌部15Sの底面15BSに開口152Mを設けることができる。よって、この底面15BSの開口152Mを介して、試薬供給口15Mから検出部13に容易に試薬を供給することができる。
【0089】
また、攪拌部15Sでは、底面15BSとともに第1凸部151が回転することにより流れF1が形成されるので、攪拌翼等の回転により攪拌容器内に流体の流れが形成される場合に比べて、攪拌容器内の部材が流体に与える衝撃を小さくすることができる。特に、第1凸部151を回転軸15A周りの方向に傾斜させることにより、攪拌部15S内の流体に与える衝撃を小さくすることができる。これにより、攪拌時の攪拌部15S内の試薬の劣化を抑えることができる。たとえば、試薬に含まれる微粒子の表面破壊および微粒子表面に修飾された抗体の活性低下等を抑えることができる。
【0090】
更に、攪拌部15Sでは、第1凸部151および第2凸部152により、攪拌部15S内が効率的に攪拌されるので、加振機構等により攪拌容器内を攪拌させる場合に比べて、攪拌部15S内に収容される試薬および溶媒の量が増えても、攪拌効率の低下を抑えることができる。
【0091】
以上のように、本実施形態の検出装置1では、攪拌部15Sの底面15BSに第1凸部151および第2凸部152が設けられているので、この底面15BSが回転軸15A周りに回転することにより、攪拌部15S内の流体に所定の方向の流れF1,F2が生じ、攪拌部15S内が攪拌される。即ち、攪拌翼および加振機構等を用いずに攪拌することができる。よって、より簡素な構成で攪拌することが可能となる。
【0092】
このような簡素な構成を有する攪拌部15Sは、設計の自由度が高く、たとえば、底面15BSに、試薬供給口15Mに通じる開口152Mを設けることができる。これにより、試薬供給部15は、検出部13に容易に試薬を供給することができる。即ち、攪拌部15Sを含む試薬供給部15は、検出装置1に好適に用いられる。
【0093】
また、簡素な構成を有する攪拌部15Sは高いユーザビリティを有し、メンテナンス等も容易である。したがって、攪拌部15Sを有する試薬供給部15および検出装置1は、様々な場所への設置が可能となり、容易に物質の検査および検出等に用いることができる。
【0094】
以上のように、実施形態において検出装置1を例に挙げ、本発明の攪拌容器および攪拌装置について説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0095】
たとえば、上記実施形態では、攪拌部15Sの底面15BSに第1凸部151および第2凸部152が設けられている例について説明したが、底面15BSには第1凸部151および第2凸部152の少なくとも一方が設けられていればよい。
【0096】
また、上記実施形態では、攪拌部15Sの底面15BSに複数の第1凸部151および1つの第2凸部152が設けられている例について説明したが、底面15BSには1つの第1凸部151が設けられていてもよく、複数の第2凸部152が設けられていてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、試薬供給部15が攪拌部15Sを有している例を説明したが、検体供給部14が攪拌部を有していてもよい。さらに、上記実施形態では、検出装置1が攪拌部15Sを有している例を説明したが、本発明の攪拌容器および攪拌装置の用途は、これに限定されない。
【0098】
また、上記実施形態では、検体供給部14および試薬供給部15に収容される検体、試薬について、具体例を挙げて説明したが、検体および試薬は、この具体例以外のものであってもよい。検体は検知対象となり得るものであればよく、試薬は、検体を検知可能なものであればよい。
【0099】
また、上述した検出方法は、上記のフローチャートのステップ以外のステップを含んでもよく、あるいは、上述したステップのうちの一部を含まなくてもよい。たとえば、
図8のステップS111は、省略してもよい。このとき、たとえば、使用した検出部13を新たな検出部13に交換してもよい。また、ステップの順序は、上述した実施形態に限定されない。たとえば、
図8のステップS101およびステップS102の順は逆であってもよく、これらのステップが同時に行われてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 検出装置、
11 軸部、
12 支持台、
12s 回転面、
13 検出部、
131 不透明部材、
132 透明部材、
132f 流路、
14 検体供給部、
14M 検体供給口、
15 試薬供給部、
15M 試薬供給口、
15S 攪拌部、
15D ディスペンサー部、
15BS 底面、
15US 上面、
15SS 側面、
151 第1凸部、
152 第2凸部、
152M 開口、
153 ピストン部、
153S 変位面、
16 光学測定部、
17 保持台、
171 検体保持部、
172 試薬保持部、
18 供給駆動部、
19 廃液貯留部、
21 受け部、
22 供給量検知部。