(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】色材選択プログラムおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20241016BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H04N1/60
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2021022194
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 祥子
(72)【発明者】
【氏名】山田 深雪
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004749(JP,A)
【文献】特開2017-111187(JP,A)
【文献】特開2012-103994(JP,A)
【文献】特開2002-358244(JP,A)
【文献】特開2008-126597(JP,A)
【文献】特開2006-157107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21 - 2/215
B41J 2/52 - 2/525
B41J 5/00 - 5/52
B41J 21/00 -21/18
B41J 29/00 -29/70
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/50
G03G 13/01
G03G 15/01
H04N 1/40 - 1/409
H04N 1/46 - 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の入力色空間があるデータから複数系統の有彩色の色材を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置に対して、前記複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択する手順、
前記複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材の同系統同士の組み合わせにおいて、色材同士の色相角の分散が小さい順に、当該組み合わせのなかで彩度が低い方の色材を除外する手順、
前記画像形成装置において前記入力色空間ごとに用いられる色材のプロファイルを生成する手順、
をコンピュータに実行させるための色材選択プログラム。
【請求項2】
1つまたは複数の入力色空間があるデータから複数系統の有彩色の色材を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置に対して、前記複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択する手順、
前記複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材のうち第1系統の色材それぞれ、および前記第1系統とは異なる第2系統の色材それぞれを組み合わせて形成される複数の色域で、他の色域によってカバーされる割合が高い順に、色域を形成する色材のうち1つまたは全てを除外する手順、
前記画像形成装置において前記入力色空間ごとに用いられる色材のプロファイルを生成する手順、
をコンピュータに実行させるための色材選択プログラム。
【請求項3】
1つまたは複数の入力色空間があるデータから複数系統の有彩色の色材を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置に対して、前記複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択する手順、
前記複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材のうち第1系統の色材それぞれ、および前記第1系統とは異なる第2系統の色材のうち1つを組み合わせて形成される複数の色域で、他の色域によってカバーされる割合が高い順に、色域を形成する前記第1系統の色材を除外する手順、
前記画像形成装置において前記入力色空間ごとに用いられる色材のプロファイルを生成する手順、
をコンピュータに実行させるための色材選択プログラム。
【請求項4】
前記入力色空間ごとに用いる有彩色の色材数は、3つである、
請求項
1から3のうち何れか1項に記載の色材選択プログラム。
【請求項5】
一方の色域が他方の色域でカバーされる割合が所定値より小さい場合には、色材を除外しない手順、
を実行させる請求項
2または
3に記載の色材選択プログラム。
【請求項6】
請求項1から
5のうち何れかの1項の色材選択プログラムによって選択された色材および当該色材のプロファイルと、入力色空間があるデータに基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成部とを備える画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成部は、さらに無彩色の色材を用いて前記記録媒体に画像を形成する、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記データは、ジョブを単位として入力色空間が切り替わる、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記データは、ジョブに含まれるページを単位として入力色空間が切り替わる、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記データは、ジョブに組まれるオブジェクトを単位として入力色空間が切り替わる、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の入力色空間に対応する色材選択プログラムおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シアン(cyan、単にCとも記す)、マゼンタ(magenta、単にMとも記す)、イエロー(yellow、単にYとも記す)および黒(key plate、単にKとも記す)に特別な色を加えて印刷すると、再現できる色の範囲が広がり、印刷物の価値を高めることができる。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の他にレッド、グリーン、バイオレットを加えて7色の色材を用いて印刷することが知られている。特許文献1に記載の色変換装置は、入力画像データを5色以上の出力画像データに直接変換するための色変換テーブルと、色変換テーブルを使用して、入力画像データを5色以上の出力画像データに直接変換する色変換部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の色変換装置により入力画像データの色変換を行って5色以上の色材を用いて画像形成(印刷)する場合に、色分解順に起因する画像障害を解消して画像品質を向上させること、記録装置での色材の使用量の偏りを防止すること、および色変換処理を高速に行うことが可能となる。しかしながら、このように色数が多いと、装置や色材のコストが増加する。また、使用できる色材の数や量には上限があり、色材の数や量の制限下でのカラーマネジメント(色変換プロファイルの作成)が複雑になるため、さらにコストが増加してしまう。
また、複数の入力色空間に対応した画像形成装置では、充分な色域の画像を形成するためには、入力色空間ごとにCMYの3系統それぞれに対応した有彩色の色材を必要としている。このため、カラーマネジメントがさらに複雑になり、コストがかかる。
【0005】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、画像形成装置の色材数を制限してカラーマネジメントを単純化させると共に、画像形成装置が形成する画像の色域を可能な限り拡張させる色材選択プログラムおよび画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
(1)1つまたは複数の入力色空間があるデータから複数系統の有彩色の色材を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置に対して、前記複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択する手順、前記複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材の同系統同士の組み合わせにおいて、色材同士の色相角の分散が小さい順に、当該組み合わせのなかで彩度が低い方の色材を除外する手順、前記画像形成装置において前記入力色空間ごとに用いられる色材のプロファイルを生成する手順、をコンピュータに実行させるための色材選択プログラム。
【0008】
(2)1つまたは複数の入力色空間があるデータから複数系統の有彩色の色材を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置に対して、前記複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択する手順、前記複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材のうち第1系統の色材それぞれ、および前記第1系統とは異なる第2系統の色材それぞれを組み合わせて形成される複数の色域で、他の色域によってカバーされる割合が高い順に、色域を形成する色材のうち1つまたは全てを除外する手順、前記画像形成装置において前記入力色空間ごとに用いられる色材のプロファイルを生成する手順、をコンピュータに実行させるための色材選択プログラム。
【0009】
(3)1つまたは複数の入力色空間があるデータから複数系統の有彩色の色材を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置に対して、前記複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択する手順、前記複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材のうち第1系統の色材それぞれ、および前記第1系統とは異なる第2系統の色材のうち1つを組み合わせて形成される複数の色域で、他の色域によってカバーされる割合が高い順に、色域を形成する前記第1系統の色材を除外する手順、前記画像形成装置において前記入力色空間ごとに用いられる色材のプロファイルを生成する手順、をコンピュータに実行させるための色材選択プログラム。
【0010】
(4)前記入力色空間ごとに用いる有彩色の色材数は、3つである、請求項1から3のうち何れか1項に記載の色材選択プログラム。
【0012】
(5)一方の色域が他方の色域でカバーされる割合が所定値より小さい場合には、色材を除外しない手順、を実行させる(2)または(3)に記載の色材選択プログラム。
【0013】
(6)(1)から(5)のうち何れかの1項の色材選択プログラムによって選択された色材および当該色材のプロファイルと、入力色空間があるデータに基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成部とを備える画像形成装置。
【0014】
(7)前記画像形成部は、さらに無彩色の色材を用いて前記記録媒体に画像を形成する、(6)に記載の画像形成装置。
【0015】
(8)前記データは、ジョブを単位として入力色空間が切り替わる、(6)に記載の画像形成装置。
【0016】
(9)前記データは、ジョブに含まれるページを単位として入力色空間が切り替わる、(6)に記載の画像形成装置。
【0017】
(10)前記データは、ジョブに組まれるオブジェクトを単位として入力色空間が切り替わる、(6)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像形成装置の色材数を制限してカラーマネジメントを単純化させると共に、画像形成装置が形成する画像の色域を可能な限り拡張させる色材選択プログラムおよび画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る色材選択装置の機能ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る彩度が高い色材を選択するルール(彩度を用いた色材選択ルール)を説明するためのグラフである。
【
図3】本実施形態に係るカバー率が高い色材を選択するルール(カバー率を用いた色材選択ルール)を説明するためのグラフである。
【
図4】本実施形態に係るカバー率が高い色材を選択するルールを用いない場合を説明するためのグラフである。
【
図5】本実施形態に係るカバー率が高い色材を選択するルールを説明するためのグラフである。
【
図6】本実施形態に係る色材選択処理のフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る画像形成装置の機能ブロック図である。
【
図8】本実施形態に係る画像形成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施する形態(実施形態)に係る色材選択装置および画像形成装置を説明する。画像形成装置は、sRGB(RGB)やCMYKなどの複数の入力色空間に対応しており、印刷ジョブで指定された入力色空間に応じた色材を用いて画像を形成(印刷)する。色材選択装置は、指定された入力色空間に適した色材から、画像形成装置に搭載する有彩色の色材をルールに従って選択して、色変換のプロファイルを生成する。
【0022】
1つ目のルールにおいて、色材選択装置は、同系統の色材同士の組み合わせのうち色相角の分散が小さいもの(色相が近い色材)については、彩度が低い方の色材を除外し、彩度が高い方の色材を選択する。2つ目のルールにおいて、色材選択装置は、第1系統の色材(例えばマゼンタ系統のM1とM2)および第2系統の色材(例えばイエロー系統のY)から構成される複数の色相の領域(色域)のうち、他の色域をカバーする割合が高い方の色域を構成する色材(例えばマゼンタ系統のM2)を選択し、他の色域によってカバーされる割合が低い方の色域のみを構成する色材(例えばマゼンタ系統のM1)を除外する。
【0023】
このようなルールに従って色材を選択して色材のプロファイルを生成することで、色材のプロファイル作成の手間が削減でき、さらに、画像形成装置が搭載する色材の削減ができる。延いては画像形成装置のコストを削減することができるようになる。
【0024】
≪色材選択装置の構成≫
図1は、本実施形態に係る色材選択装置200の機能ブロック図である。色材選択装置200は、複数の入力色空間および当該入力色空間に適した色材から画像形成装置100(後記する
図7参照)に搭載する色材を選択し、色変換情報を含む色材のプロファイル222を生成する。色変換情報とは、色材を用いて入力色空間に含まれる色を再現する(画像を形成する)際の色から画素値への変換情報(例えば変換テーブル)である。画像形成装置100は、1つまたは複数の入力色空間があるデータから、選択された色材を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成部130を備える。
【0025】
色材選択装置200は、コンピュータであり、制御部210、記憶部220、入出力部260、および通信部270を含んで構成される。入出力部260には、ディスプレイやキーボード、マウスなどのユーザインターフェイス機器が接続される。通信部270は、他の装置と通信データの送受信を行う。
【0026】
記憶部220は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびSSD(Solid State Drive)などの記憶機器から構成される。記憶部220には、プログラム221、プロファイル222、および色材データ223が記憶される。プログラム221は、色材選択処理(後記する
図6参照)の手順の記述を含んだ色材選択プログラムである。プロファイル222は、入力色空間ごとの色変換情報を含む。色材データ223は、画像形成装置100に搭載される候補の色材に関する情報を含み、例えば色材の名称や色相、彩度を含む。
【0027】
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。制御部210であるCPUがプログラム221(色材選択プログラム)を実行することにより、色材選択部211、およびプロファイル生成部212が具現化される。色材選択部211の動作については、後記する
図2~
図5を用いて説明する。プロファイル生成部212は、色材選択部211が選択した色材を用いて印刷する際の色から画素値への変換情報(プロファイル)を生成する。
【0028】
≪色材選択のルール≫
以下、色材選択部211が用いる色材選択の2つのルールを説明する。1番目のルールは、各入力色空間に対応する同系統の(色相が近い)色材が複数ある場合には、同系統の色材同士の組み合わせの色相角の分散が小さい順に、この組み合わせのなかで彩度が高い方の色材を所定個数だけ選択して画像形成装置100に搭載し、それ以外の彩度が低い方の色材は除外して画像形成装置100に搭載しないというルールである。
これにより画像形成装置100が形成する画像の色域を可能な限り拡張しつつ、この画像形成装置100に搭載する色材数を制限してカラーマネジメントを単純化できる。
【0029】
2番目のルールは、複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材がある場合、これら有彩色の色材のうち第1系統の色材それぞれ、および第2系統の1または複数の色材から構成される複数の色域のうち、他の色域によってカバーされる割合が基準よりも高い順に、色域を形成する色材の組み合わせの1つまたは全てを除外するというルールである。ここで第1、第2系統とはCMYの系統のことである。これにより画像形成装置100が形成する画像の色域を可能な限り拡張しつつ、この画像形成装置100に搭載する色材数を制限してカラーマネジメントを単純化できる。
色材選択部211は、2つのルールを組み合わせて色材を選択してもよいし、何れか一方のルールだけを用いて色材を選択してもよい。また、色の系統はCMYに限定されない。
【0030】
≪ルール:彩度が高い色材を選択≫
図2は、本実施形態に係る彩度が高い色材を選択するルール(彩度を用いた色材選択ルール)を説明するためのグラフ501である。グラフ501の横軸は、L*a*b*色空間におけるa*軸であり、縦軸はb*軸である。+a*方向は赤の度合い、-a*方向は緑の度合い、+b*方向は黄の度合い、-b*方向は青の度合いを示す。色材511,512はY系統の色材、色材521,522はM系統の色材、色材531,532はC系統の色材である。色材511,521,531の組み合わせは、第1の入力色空間(例えばCMYK色空間)に対応する有彩色の色材の組み合わせである。色材512,522,532の組み合わせは、第2の入力色空間(例えばsRGB色空間)に対応する有彩色の色材の組み合わせである。色材の線の角度は色相を示し、色材の線の長さは彩度を示す。
【0031】
Y系統の色材511,512が成す角(色相角差)、M系統の色材521,522が成す角、およびC系統の色材531,532が成す角を比較すると、この順に小さい。彩度を用いた色材選択ルールを用いる色材選択部211は、CMYの各系統の2つの色材同士の組み合わせを、色相角の分散が小さい(色相角差が小さい、色相が近い)順に色材同士の組み合わせを並べ替え、当該色材同士の組み合わせのなかで彩度が低い(長さが短い)方の色材を所定個数(ここでは1つ)だけ除外する(画像形成装置100に搭載しない)ように選択する。結果として色材選択部211は、Y系統の色材511,512の組み合わせの色材511、M系統の色材521,522の組み合わせの色材521、C系統の色材531,532の組み合わせの色材531の順に除外するように選択する。
【0032】
ここでは入力色空間が2つの場合について説明したが、入力色空間が3つの場合についても同様に処理することができる。なお、入力色空間が3つ以上の場合、色材同士の組み合わせのうち最も彩度の高い色材と他の色材との色相角を算出し、その分散を算出するとよい。当該組み合わせのなかで、最も彩度が高い色材を残して他の色材を除外してもよいし、最も彩度が低い色材を除外してもよい。または、色材を半数以下で最大数残すように(5つの場合は2つ残す、2つの場合は1つ残す)彩度が低い色材から除外してもよい。
【0033】
なお、色材選択部211は、順に除外する替わりに、2つの色材同士の成す角が所定値より小さい場合には、色材選択部211は彩度が低い色材を所定個数だけ除外するように選択してもよい。上記した所定値は、例えば5度である。L*a*b*色空間(CIELAB表色系)において2つの色材同士の成す角(色相角差)が5度以下ならば、色材選択部211は彩度が低い方の色材を除外する。なお、所定値は5度に限らず、他の角度であってもよい。
【0034】
これにより、第1、第2の入力色空間に対応する2組のCMYの色材(6つ)よりも少ない数の色材を選択することができる。つまり、複数の入力色空間から入力色空間の数と入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択することができる。
【0035】
≪ルール:カバー率が高い色材を選択≫
図3は、本実施形態に係るカバー率が高い色材を選択するルール(カバー率を用いた色材選択ルール)を説明するためのグラフ502である。
図2と同様に、色材511,521,531の組み合わせは、第1の入力色空間に対応する色材の組み合わせである。色材512,522,532の組み合わせは、第2の入力色空間に対応する色材の組み合わせである。
【0036】
色域551は、Y系統の色材512とM系統の色材521とから形成される色域である。色域552は、Y系統の色材512とM系統の色材522とから形成される色域である。色域551が色域552を覆う割合(カバー率)と、色域552が色域551を覆う割合とを比較すると、後者の方が高い。このため色材選択部211は、色域552を形成するY系統の色材512とM系統の色材522を選択し、色域551を形成するY系統の色材512とM系統の色材521のうち、色域551のみを形成する色材521を除外する。
【0037】
これにより色材選択部211は、複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択することができる。ここでは入力色空間が2つの場合について説明したが、入力色空間が3つの場合についても同様に処理することができる。
なお、色材選択部211は、一方の色域が他方の色域を覆う割合の替わりに、単に色域の面積を比較して広い方の色域を形成する色材が選択するようにしてもよい。色域のカバー率(覆う割合)が低い場合には、この色域を形成する色材を選択しないようにしてもよい。
【0038】
図4は、本実施形態に係るカバー率が高い色域を形成する色材を選択するルールを用いない場合を説明するためのグラフ503である。Y系統の色材512およびC系統の色材531から形成される色域561と、Y系統の色材512およびC系統の色材532から形成される色域562とを比較すると、何れの色域561,562も他方を所定値の割合でカバーしていない。換言すれば色域561と比べて色域562の方が面積は大きいが、色域562は色域561を十分には覆っていない(カバー率が所定値より低い)。このため色材選択部211は、Cの色材531,532については、何れか一方を除外することはない(画像形成装置100に搭載する候補として残す)。
上記した所定値は例えば80%である。色材選択部211は、2つの色域があって何れの色域も他方の色域を80%未満しか覆っていない場合には、色材を除外しない。なお所定値は80%に限らず、他の割合であってもよい。
【0039】
図5は、本実施形態に係るカバー率が高い色材を選択するルールを説明するためのグラフ504である。
図3では、2つの同系統の色材から1つを選択する例を示した。しかし、第1系統の2つの色材および第2系統の2つの色材から、各系統の色材を1つずつ選択するようにしてもよい。
【0040】
Y系統の色材511およびM系統の色材521から形成される色域571は、第1系統の2つの色材および第2系統の2つの色材で形成される複数の色域のうち最も狭いものである。Y系統の色材512およびM系統の色材522から形成される色域572は、第1系統の2つの色材および第2系統の2つの色材で形成される複数の色域のうち最も広いものである。これら色域571,572を比較すると、色域572が色域571をカバーしている割合が高い。このため色材選択部211は、色域572を形成する色材512,522を選択し、色域571を形成する色材511,521を除外する。これにより色材選択部211は、複数の入力色空間の数と前記入力色空間ごとに用いる色材数との積よりも少ない数の有彩色の色材を選択することができる。
ここでは入力色空間が2つの場合について説明したが、入力色空間が3つの場合についても同様に処理することができる。
【0041】
≪色材選択処理≫
図6は、本実施形態に係る色材選択処理のフローチャートである。
図6を参照しながら、色材選択装置200が、色材を選択してプロファイル222を生成する処理を説明する。
ステップS11において色材選択部211は、利用者の指示により複数の入力色空間を特定する。利用者とは色材選択装置200の利用者であり、例えば画像形成装置100の設計者である。例えば利用者は、画像形成装置100で頻繁に指定される入力色空間を選択して指示する。
【0042】
ステップS12において色材選択部211は、色材データ223(
図1参照)にある色材のなかで、ステップS11で特定されたそれぞれの入力色空間に適した色材を選択する。
ステップS13において色材選択部211は、ステップS11で特定された入力色空間のなかで1つの入力色空間を選択する。
ステップS14において色材選択部211は、ステップS13で選択した入力色空間の色材に、当該入力色空間以外の入力色空間の色材を加えながらステップS15,S16を繰り返す処理を開始する。
【0043】
ステップS15において色材選択部211は、彩度を用いた色材選択ルールを用いて色材を選択する(色材を除外する)。詳しくは、色材選択部211は、各系統の2つの有彩色の色材同士の組み合わせのうち、色材同士の色相角の分散が小さい順に、所定個数(1~3つ)の当該色材同士の組み合わせのなかで彩度が低い方の色材を除外する。なお、色材選択部211は、色相が近い(分散が小さい)色材同士の組み合わせの順に当該色材同士の組み合わせのなかで彩度が低い方の色材を除外する替わりに、同系統の2つの色材同士の成す角が所定値より小さい場合、同系統の2つの色材同士のうち彩度が低い方の色材を除外するように選択してもよい。
【0044】
ステップS16において色材選択部211は、色域のカバー率を用いた色材選択ルールを用いてさらに色材を選択する。詳しくは、同系統の色材X1,X2があり、これとは別系統の色材Zがあった場合に、色材X1,Zで形成される色域R1と色材X2,Zで形成される色域R2とを比較し、他の色域をカバー率が高い方の色域を形成する色材X1または色材X2を選択し、他方の色域のみを形成する色材を除外する。または、同系統の色材X1,X2があり、これとは別系統の色材Z1,Z2があった場合に、色材X1,Z1、色材X1,Z2、色材X2,Z1、色材X2,Z2それぞれから形成される4つの色域を比較して、他の色域によりカバーされる率が高い色域、または、面積が最小の色域を形成する色材を除外してもよい。
【0045】
全ての入力色空間についてステップS15,S16の処理が終わり、ステップS17が始まる時点において、色材選択装置200は、画像形成装置100に搭載する色材の選択を終えたことになる。
ステップS17においてプロファイル生成部212は、画像形成装置100が対応する入力色空間ごとに、選択済みの色材のなかから印刷に用いる色材を選択する。
ステップS18においてプロファイル生成部212は、入力色空間ごとにステップS17で選択した色材の情報、当該色材を用いて印刷する際の色変換情報を生成して、色材のプロファイルに格納する。プロファイル生成部212は、色材の数や量の制限の情報も、色材のプロファイルに格納する。
続いて、色材選択装置200が選択した色材を搭載する画像形成装置100を説明する。
【0046】
≪画像形成装置の構成≫
図7は、本実施形態に係る画像形成装置100の機能ブロック図である。画像形成装置100は、外部からのジョブ(印刷ジョブ、データ)を受け付け、ジョブに含まれる画像を用紙などの記録媒体に印刷する(画像を形成する)。画像形成装置100は、制御部110、記憶部120、画像形成部130(プリンタ部)、ユーザインターフェイス部160(
図7ではUI(User Interface)部と記載)、および通信部170を備える。ユーザインターフェイス部160は、画像形成装置100を操作するためのユーザインターフェイス機器であり、例えばタッチパネルディスプレイである。通信部170は、他の装置と通信データを送受信する。通信部170は、印刷ジョブ(ジョブ)のデータを受信する。
【0047】
画像形成部130は、色材131を備え、色材131を用いて記録媒体に画像を形成する。色材131は、色材選択装置200が選択した有彩色の色材の他に無彩色の色材を含む。この画像形成部130は、色材131として、シリコンフタロシアニン含有トナーと銅フタロシアニン含有トナーを同時に搭載している。
【0048】
記憶部120は、ROMやRAM、フラッシュメモリなどから構成される。記憶部120には、プログラム121、プロファイル122、および搭載色材データ123が記憶される。プログラム121は、画像形成処理(後記する
図8参照)の手順の記述を含む。プロファイル122は、色材選択装置200が生成したプロファイル222である。搭載色材データ123は、画像形成部130に搭載されている色材131に係るデータである。
【0049】
制御部110は、CPUを含んで構成され、ジョブ受付部111、ページ記述言語処理部112、色空間処理部113、および色変換部114を備える。
ジョブ受付部111は、通信部170が受信したジョブを受け付ける。ページ記述言語処理部112は、ジョブに含まれる印刷データ(テキストや図形、グラフィックスを描画するコマンド)を画素データに変換する。
【0050】
色空間処理部113は、ジョブに含まれる色空間(入力色空間、指定色空間)を識別する。ジョブに含まれる入力色空間は1つとは限らず、ページごとに異なったり、1つのページでも領域によって異なったり、テキスト・図形・グラフィックスなどのオブジェクトごとに異なったりする。色空間処理部113は、ジョブやページ、オブジェクトごとに入力色空間を識別する。
色変換部114は、画素データを識別された入力色空間に応じた色材の画素値に変換して、画像形成部130への出力データを生成する。
【0051】
≪画像形成処理≫
図8は、本実施形態に係る画像形成処理のフローチャートである。
図8を参照しながらジョブ受付部111が受け付けた各ジョブの画像形成処理(印刷処理)を説明する。なお以下では、ジョブに含まれる印刷データはページから構成され、各ページはオブジェクトから構成され、オブジェクトごとに入力色空間が指定されるとして説明する。
ステップS21においてページ記述言語処理部112は、ジョブに含まれる印刷データを解析し、ページごとにステップS22~S28の繰り返し処理の実行を開始する。
【0052】
ステップS22においてページ記述言語処理部112は、ページに含まれるオブジェクトごとにステップS23~S26の繰り返し処理の実行を開始する。
ステップS23において色空間処理部113は、オブジェクトの入力色空間を識別する。
ステップS24において色空間処理部113は、ステップS23で識別した入力色空間に対応するプロファイル122に含まれる入力色空間を特定し、当該入力色空間に対応する色材を特定する。
【0053】
ステップS25においてページ記述言語処理部112は、オブジェクトの画素データを生成する。
ステップS26において色変換部114は、画素データの色をステップS24で特定した色材の画素値に変換して、オブジェクトの出力データを生成する。
ステップS27において色変換部114は、ステップS26で生成したオブジェクトごとの出力データを合成し、ページに対応する最終出力データを生成して、画像形成部130に出力する。
ステップS28において画像形成部130は、ステップS27で生成された最終出力データに基づいて記録媒体に画像を形成する。
【0054】
≪色材選択装置および画像形成装置の特徴≫
色材選択装置200は、2つの色材選択ルールを用いて色材を選択する。彩度を用いた色材選択ルールでは、複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材の同系統同士の組み合わせにおいて、色材同士の色相角の分散が小さい順に、当該組み合わせのなかで彩度が低い方の色材を除外する。例えば、
図2においては、色材511、色材521、色材531の順に除外する。
【0055】
カバー率を用いた色材選択ルールでは、複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材のうち第1系統の色材それぞれ、および前記第1系統とは異なる第2系統の色材それぞれを組み合わせて形成される複数の色域で、他の色域によってカバーされる割合が高い順に、色域を形成する色材のうち1つまたは全てを除外する。例えば
図5においては、色域571,572を比較すると、色域572によって色域571がカバーされる割合が高く、色材511,522の一方または双方が除外される。
【0056】
また、カバー率を用いた色材選択ルールでは、複数の入力色空間で用いられる有彩色の色材のうち第1系統の色材それぞれ、および第1系統とは異なる第2系統の色材のうち1つを組み合わせて形成される複数の色域で、他の色域によってカバーされる割合が高い順に、色域を形成する第1系統の色材を除外する。例えば
図3においては、2つの有彩色の第1系統の色材521,522それぞれと、当該色材とは異なる系統の色材512とから形成される2つの色域551,552を比較すると、色域552によって色域551がカバーされる割合が高く、第1系統の色材521が除外される。
【0057】
画像形成装置100は、このようなルールを用いて選択された色材を搭載している。複数の入力色空間それぞれに応じた有彩色を搭載する場合に比べて、画像形成装置100が形成する画像の色域を可能な限り拡張させつつ、画像形成装置100が搭載する色材の数を減らすことができ、画像形成装置100のコストやスペースを削減することができるようになる。例えば、入力色空間ごとに3つの有彩色の色材を搭載する場合より、色材の数を入力色空間の数と各入力色空間の色材の数(3つ)との積より減らすことができる。入力色空間や色材によっては3つより多い有彩色の色材を用いる場合も考えられる。このような場合においても、入力色空間ごとの色材数の和より画像形成装置100が搭載する色材の数を減らすことができる。
また、搭載している全ての色材を用いるのではなく、入力色空間ごとに少ない数(例えば3つ)の有彩色の色材と無彩色の色材とを用いて画像を形成するようにすることで、色材数を制限してカラーマネジメントが単純化でき、延いてはコストが削減できる。
【0058】
≪適用例≫
代表的な色空間として、国際電気標準会議(IEC)が定めたsRGB(RGB)と、Japan Colorで定められるCMYKとがある。
図3において、色材512,522,532はsRGB用の色材であり、色材511,521,531はCMYK用の色材である。実施形態で説明したルールを用いることで、色材512,522,531,532が選択される。C系統の色材531,532の成す角(色相角差)は、5度以上となる。また、色材512,531により形成される色域561および色材512,532により形成される色域562について、色域561が色域562をカバーする率は80%未満であり、色域562が色域561をカバーする率も80%未満である。
【0059】
sRGBでは色材512,522,532が選択され、CMYKでは色材512,522,531が選択され、無彩色の色材と合わせて用いられて画像が形成される。sRGBとCMYKの両方に対応しようとして、全ての色材511,512,521,522,531,532を搭載するのに比べて、画像形成装置100に搭載する色材を削減でき、延いてはコストを削減できる。
【0060】
≪変形例:色選択支援装置≫
上記した実施形態において色材選択装置200は、入力色空間が指定されると利用者の介在なしに色材を選択して、この色材のプロファイルを生成する。色材を選択する際に(
図6記載のステップS15,S16)利用者が関与するようにしてもよい。例えば、彩度を用いた色材選択ルールを用いる場合に、色相角の分散が小さい色材同士の組み合わせの順を表示したり、彩度が低い色材を除外するときに利用者に確認したりするようにしてもよい。また、カバー率を用いた色材選択ルールを用いる場合に、比較する色域やカバー率を表示したり、色材を除外するときに利用者に確認したりするようにしてもよい。
【0061】
≪その他の変形例≫
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。例えば、入力色空間ごとに色材の選択(
図6記載のステップS17)において、入力色空間ごとに3つの有彩色を選択してもよいし、入力色空間が対応する色域が広い場合には4つ以上の有彩色の色材を選択するようにしてもよい。
【0062】
図8記載のステップS25,S26において、画素データの生成と色変換とを同時に並行に行うように処理してもよい。さらに画像形成装置は、CMYの有彩色の色材に加えて、さらに他の有彩色を用いて記録媒体に画像を形成してもよい。
カバー率が高い色材を選択するルールにおいて色材選択装置200は、2つの色材から形成される平行四辺形の色域間のカバー率を比較している。色材選択装置200は平行四辺形に替えて細かい実測データをもとに多角形の色域を用いてもよい。多角形を用いることで、より高精度な比較が可能となる。
【0063】
入力色空間は、RGB色空間であるsRGBおよびCMYK色空間であるJapanColor2011に加えてさらに、AdobeRGBに代表される各種RGB色空間や、FOGRAやGRACoL(General Requirements for Applications in Commercial Offset Lithography)等の規格団体が定める各種CMYK色空間等を、任意に用いることができる。
【0064】
本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
100 画像形成装置
111 ジョブ受付部
112 ページ記述言語処理部
113 色空間処理部
114 色変換部
121 プログラム
122 プロファイル
130 画像形成部
200 色材選択装置
211 色材選択部
212 プロファイル生成部
221 プログラム(色材選択プログラム)
222 プロファイル
511,512 色材(Y系統)
521,522 色材(M系統)
531,532 色材(C系統)
551,552,561,562,571,572 色域