(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】3連ギアポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/18 20060101AFI20241016BHJP
F04C 11/00 20060101ALI20241016BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20241016BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20241016BHJP
F16C 33/76 20060101ALI20241016BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20241016BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20241016BHJP
F16J 15/34 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F04C2/18 311D
F04C11/00 F
F04C15/00 G
F16C33/80
F16C33/76 Z
F16C17/02 Z
F16J15/447
F16J15/34 Z
(21)【出願番号】P 2021023235
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 精鋭
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194134(JP,A)
【文献】特開2000-087872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
F04C 11/00
F04C 15/00
F16C 33/80
F16C 33/76
F16C 17/02
F16J 15/447
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の駆動ギアと、前記駆動ギアにそれぞれ噛合してそれぞれ第1,第2のギアポンプをそれぞれ構成する第1,第2の従動ギアとを備え、燃料として利用される流体を吐出する3連ギアポンプであって、
前記第1のギアポンプと前記第2のギアポンプとを囲むハウジングと、
一体に回転するよう前記駆動ギアに結合し、前記ハウジングから引き出された駆動シャフトと、
前記駆動シャフトを回転可能に支持し、軸方向に浮動可能であって前記流体による圧力を受けて前記駆動ギアに当接する駆動シャフト軸受と、
前記駆動シャフトと前記ハウジングとの間に介在して前記流体が前記ハウジング外へ漏出するのを妨げるメカニカルシールと、
前記駆動シャフト軸受と前記メカニカルシールとの間に介在し、前記流体の前記圧力が前記メカニカルシールへ伝播するのを妨げるシールと、
前記第2の従動ギアに結合した従動シャフトと、
前記従動シャフトを回転可能に支持し、軸方向に浮動可能であって前記第2の従動ギアに軸方向に当接する浮動軸受と、
前記駆動シャフト軸受と前記浮動軸受とを前記ハウジング内において流体連通する連通路と、を備え、
前記シールは前記連通路と前記メカニカルシールとの間に介在する、3連ギアポンプ。
【請求項2】
前記第2のギアポンプへ前記流体を導入するべく、前記ハウジングに開けられて前記第2のギアポンプへ連通した吸入口をさらに備え、
前記吸入口は、前記圧力を前記駆動シャフト軸受および前記浮動軸受に印加するべく前記駆動シャフト軸受、前記浮動軸受および前記連通路に流体連通している、請求項
1の3連ギアポンプ。
【請求項3】
加圧される前の前記流体を前記ハウジングの外部から前記メカニカルシールへ導入する導入路を、
さらに備えた請求項1から
2までの何れか1項の3連ギアポンプ。
【請求項4】
前記シールはラビリンスシールである、請求項1から
3までの何れか1項の3連ギアポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ギアの回転により流体を加圧して吐出する浮動軸受型の3連ギアポンプに関し、特に、直列および並列モードのみならず、無負荷モードにおいても安定して運用できる3連ギアポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ギアポンプは、通常、互いに噛合した一対のギアと、これを収容するハウジングとを備え、ハウジングが画する流路において一対のギアが回転することにより流体を加圧して吐出する。レシプロエンジンやジェットエンジンへの燃料供給装置等に利用されている。
【0003】
ギアポンプにおいて、しばしば浮動軸受が利用される。浮動軸受型のギアポンプにおいては、軸受はギアシャフトを支持するのみならず、軸方向に僅かに可動であってギア側面に当接してこれを支持する。ギアポンプを通過する流体は、軸受の潤滑のみならず、軸受をギア側面へ押圧するための与圧にも利用される。
【0004】
一の駆動シャフトにより二つのギアポンプを同時に駆動する3連ギアポンプが提案されている。3連ギアポンプによれば、二つのギアポンプを直列に運用することにより比較的に小流量を、並列に運用することにより比較的に大流量を実現することができる。
【0005】
特許文献1,2は、関連する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-50979号公報
【文献】国際公開公報WO2017/009994A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
浮動軸受には与圧が必要であり、ギアポンプの円滑な稼動を保証し、またギア側面からの流体の漏れを防ぐためには、与圧を適切な範囲に管理することを要する。3連ギアポンプにおいて、浮動軸受の周囲における流体の圧力には、運転モードに依存して無視しえない変動が生じるために、対応しうる運転モードを増やそうとするほどに技術的な困難さは増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、直列および並列モードのみならず、無負荷モードにおいても安定して運用できる3連ギアポンプに関する。
【0009】
一の局面による3連ギアポンプは、一の駆動ギアと、前記駆動ギアにそれぞれ噛合してそれぞれ第1,第2のギアポンプをそれぞれ構成する第1,第2の従動ギアとを備え、燃料として利用される流体を吐出する。かかる3連ギアポンプは、前記第1のギアポンプと前記第2のギアポンプとを囲むハウジングと、一体に回転するよう前記駆動ギアに結合し、前記ハウジングから引き出された駆動シャフトと、前記駆動シャフトを回転可能に支持し、軸方向に浮動可能であって前記流体による圧力を受けて前記駆動ギアに当接する駆動シャフト軸受と、前記駆動シャフトと前記ハウジングとの間に介在して前記流体が前記ハウジング外へ漏出するのを妨げるメカニカルシールと、前記駆動シャフト軸受と前記メカニカルシールとの間に介在し、前記流体の前記圧力が前記メカニカルシールへ伝播するのを妨げるシールと、前記第2の従動ギアに結合した従動シャフトと、前記従動シャフトを回転可能に支持し、軸方向に浮動可能であって前記第2の従動ギアに軸方向に当接する浮動軸受と、前記駆動シャフト軸受と前記浮動軸受とを前記ハウジング内において流体連通する連通路と、を備え、前記シールは前記連通路と前記メカニカルシールとの間に介在する。
【0010】
より好ましくは、3連ギアポンプは、加圧される前の前記流体を前記ハウジングの外部から前記メカニカルシールへ導入する導入路をさらに備える。さらに好ましくは、3連ギアポンプは、前記第2のギアポンプへ前記流体を導入するべく、前記ハウジングに開けられて前記第2のギアポンプへ連通した吸入口をさらに備え、前記吸入口は、前記圧力を前記駆動シャフト軸受および前記浮動軸受に印加するべく前記駆動シャフト軸受、前記浮動軸受および前記連通路に流体連通している。また好ましくは、前記シールはラビリンスシールである。
【発明の効果】
【0011】
直列および並列モードのみならず、無負荷モードにおいても安定して運用できる3連ギアポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態による航空機エンジンへ燃料を供給するシステムの模式的なブロックダイヤグラムである。
【
図2】
図2は、一実施形態による3連ギアポンプの断面平面図である。
【
図3】
図3は、3連ギアポンプの模式的な横断面図である。
【
図4】
図4は、3連ギアポンプにおいて主に浮動軸受の周りを拡大して示す断面平面図である。
【
図5】
図5は、直列モード、並列モードおよび無負荷モードを説明する模式的なブロックダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照して以下にいくつかの例示的な実施形態を説明する。以下の説明および添付の特許請求の範囲を通じ、「軸方向」および「軸周り」の語は、シャフトごとに規定されて使用されている。
【0014】
図1を参照するに、本実施形態による3連ギアポンプ1は、例えば航空機エンジン10へ燃料を供給するシステムに組み込まれて利用されるものであって、ケロシン等の比較的に低粘性の油のごとき流体を加圧して吐出する。
【0015】
流体は、タンクから流路F1を通して供給され、3連ギアポンプ1により加圧されて吐出される。システムの始動あるいは他の目的のために他の低圧ポンプ3が流路F1上に介在することがある。低圧ポンプ3には、必ずしもこれに限られないが、遠心ポンプを利用することができる。
【0016】
3連ギアポンプ1の動力には、例えばエンジン10のタービンから抽出されるエネルギが利用されるので、通常、3連ギアポンプ1の吐出量はタービンの回転数に比例または少なくとも依存する。例えば高空を巡航する時には回転数は比較的に高いが燃料消費は少ないことがあるので、吐出量はエンジン10の要求量に必ずしも合致するわけではない。そこで吐出された流体のうち、要求量を超える部分は燃料制御部5により分流されて還流路F3を通じて流路F1に戻され、要求量のみが流路F5を通してエンジン10に向けて供給される。
【0017】
エンジン10内には潤滑油Lが循環しており加熱されるので、吐出流体はその冷却のためにも利用される。すなわち流路F5はオイルクーラ9に連絡しており、潤滑油Lを冷却し、流体自身は予熱を受けた後に、供給路F7を経由してエンジン10の燃焼室7へ導入されて燃焼に供される。
【0018】
3連ギアポンプ1自体が発熱するし、その熱の一部は還流路F3を通じて3連ギアポンプ1に戻り、結果的に流路F5における流体に無視しえない温度上昇が生じることがある。そのためオイルクーラ9の冷却能は潤滑油Lの昇温としばしば均衡しえない。そこでエンジン10のバイパス流路等から抽気した空気Aを利用した空冷オイルクーラ11が補助的に利用される。還流路F3を通じた還流が増大して吐出流体が昇温し、空冷オイルクーラ11の負担が増大するほど、システムの各部への熱的ストレスは増大し、また熱エネルギは無駄に捨てられてエネルギ効率は低下してしまう。従来の3連ギアポンプは、直列および並列モードを可能にすることで、吐出量の増減を可能にし、還流量を極小化している。
【0019】
本実施形態による3連ギアポンプ1によれば、直列および並列モードのみならず、無負荷モードをも可能にすることで、更なる吐出量の増減を可能にし、エネルギ効率の向上を可能にしている。すなわち、例えば航空機が地上においてアイドル運転している時および高空を巡航している時には直列および並列モードを利用し、離陸の時のように大流量が必要なときには3連ギアポンプ1を無負荷として、専ら遠心ポンプ3により燃料を供給するような切り替えを可能にする。問題は、無負荷モードにおいては3連ギアポンプ1の全体に高圧が印加されてしまい、与圧の制御が困難になることである。その解決手段は以下の説明より明らかになる。
【0020】
図2,3を組み合わせ、主に
図3を参照するに、3連ギアポンプ1は概して、一の駆動シャフト21により駆動される駆動ギア23と、駆動ギア23にそれぞれ噛合する第1,第2の従動ギア27,31とを備え、駆動ギア23と第1の従動ギア27との組み合わせは第1のギアポンプG
1を構成し、駆動ギア23と第2の従動ギア31との組み合わせは第1のギアポンプG
2を構成する。ハウジング41はこれらを囲み、また各ギアの歯先に密に接するので、ギア歯とハウジング41とが囲む各空間43,45,47は、ギアの回転に応じて流体を加圧しながら輸送する働きをする。ハウジング41には、また、第1のギアポンプG
1に連通する吸入口49および吐出口51、および第2のギアポンプG
2に連通する吸入口53および吐出口55を備える。外部の動力源により駆動ギア23がその軸周りに回転すると、第1,第2のギアポンプG
1,G
2が並行して稼働し、吸入口49から圧力P
1をもって吸入された流体を吐出口51へ圧力P
3をもって吐出し、吸入口53から圧力P
5をもって吸入された流体を吐出口55へ圧力P
7をもって吐出する。通常は吐出圧力P
3,P
7はそれぞれ吸入圧力P
1,P
5よりも高いが、以下に説明する通り、これは運転モードに依存する。
【0021】
主に
図2を参照するに、動力源との結合のために駆動シャフト21はハウジング41の外に引き出されているが、第1,第2の従動ギア27,31のシャフト25,29はハウジング41内に封入されている。各シャフト21,25,29を、それぞれ対になった浮動軸受33,35,37が回転可能に支持している。各浮動軸受33,35,37は、また、ギア23,27,31をそれぞれ挟んでいる。浮動軸受33,35,37は軸方向に僅かに浮動可能であり、それぞれ適宜の与圧を受けてギア23,27,31のそれぞれ両側面に当接する。
【0022】
第1,第2の従動シャフト25,29および浮動軸受35,37のそれぞれ両端とハウジング41との間には隙間が保持されており、それぞれ吸入口49,53と連通することにより流体が流入し、隙間内の流体はそれぞれの端部を吸入圧力P1,P5により与圧する。かかる与圧は浮動軸受35,37をそれぞれ第1,第2の従動ギア27,31に押圧するために利用される。両端に流体を行き渡らせて均一な圧力を及ぼすべく、例えば第1,第2の従動シャフト25,29は中空である。またかかる与圧を駆動シャフト21の浮動軸受33にも及ぼすべく、浮動軸受37と浮動軸受33とを流体連通する連通路67がこれらの間に介在する。
【0023】
吸入圧力P1,P5とは異なる圧力P9を外部から導入して浮動軸受35,37に及ぼすべく、ハウジング41の例えば両側面はそれぞれ導入管を備えてもよい。かかる圧力P9を受容するべく、浮動軸受35,37は端の側において小径になり、その肩に段差を備えてもよく、導入管の内端はかかる肩に向けて開口していてもよい。段差面は圧力P9を受容する面として利用できる。端面と肩との間にはガスケットのごとき適宜のシールが介在して互いの圧力の伝播を抑制するべきだろう。またかかる導入管は、例えば吐出口51または吐出口55に連絡させることができ、その場合には段差面に印加される圧力P9は、原則として吐出圧力P3またはP7に一致する。さらに与圧を調整するべく、例えばかかる肩とハウジング41との間にスプリング39のごとき与圧手段が介在してもよい。これらは浮動軸受35,37への与圧を調整するために利用される。
【0024】
ハウジング41と駆動シャフト21との間にはシール61,63が介在して内部の流体の漏出を防止する。かかるシール61,63の一方または両方には、例えばスプリングによる弾発力を利用してシール面同士を押し付けるメカニカルシールを適用することができる。メカニカルシールに過大な圧力が及ばないよう、上述の連通路67とシール61との間には、流体の圧力の伝播を妨げるシール65が介在する。かかるシール65には、例えばラビリンスシールが適用できる。
【0025】
ラビリンスシールから漏出する流体を回収し、また適宜の圧力P11をメカニカルシール61に印加できるよう、ハウジング41はさらに導入路69を備えてもよい。導入路69には、例えば流路F1を連結することができ、以って3連ギアポンプ1による加圧を受ける前の流体の圧力をメカニカルシール61に印加することができる。もちろん他の適宜の流路を連結してもよい。
【0026】
図2に組み合わせて
図4を参照するに、上側の浮動軸受33,37の上端には吸入圧力P
5に由来する力f
1が作用し、それゆえ上側の浮動軸受33,37は駆動ギア23および第2の従動ギア31に下向きの力f
dにより押し付けられる。下側の浮動軸受37には、また連通路67が介在するために下側の浮動軸受33にも、吸入圧力P
5に由来する力f
1が作用し、以って下側の浮動軸受33,37は駆動ギア23および第2の従動ギア31に上向きの力f
uにより押し付けられる。共通の圧力が作用しているために、力f
d,f
uは釣り合い、駆動ギア23および第2の従動ギア31が安定的に支持される。また、これらとは異なる(通常はより大きい)力f
2を利用して、上向きの力f
uを調整し、以って浮動軸受37が第2の従動ギア31から離脱しようとするのを防止することができる。
【0027】
上述の説明は専ら第2のギアポンプG2に関するが、第1のギアポンプG1においても同様な力の釣り合いが成立する。
【0028】
3連ギアポンプ1は
図5に示すごとく燃料供給システムと接続されて運用される。すなわち、流路F
1は2つに分岐して流入路F
11および流入路F
17と接続されている。流路F
1と流入路F
11との間には逆流防止弁V
1が介在してもよい。流入路F
11,F
17はそれぞれ第1,第2のギアポンプG
1,G
2の吸入口49,53に接続される。それぞれの吐出口51,55は、それぞれ流出路F
13,F
19に接続される。流入路F
11は、また、2つに分岐しており、その一方はバルブV
3を介して流出路F
15に連絡しており、流出路F
13,F
19と合流した後に流路F
21に接続されている。流路F
21は燃料供給システムの流路F
5に接続される。
【0029】
図2から4までに組み合わせて
図5(a)を参照するに、バルブV
3を閉じたときには、3連ギアポンプ1は直列モードで稼働する。このとき、第1のギアポンプG
1の吸入口49に連絡する流入路F
11と、第2のギアポンプG
2の吸入口53に連絡する流入路F
17との両方に、流路F
1による比較的低い圧力が印加される。このとき圧力P
1,P
5ともに低圧であって、浮動軸受33,35,37の何れについても上下の力f
d,f
uは釣り合う。吐出口51から加圧されて吐出される流体は流出路F
13,F
15を通り、吐出口55から吐出される流体は流出路F
19を通り、それぞれ流路F
21において合流してエンジン10へ供給される。
【0030】
図5(a)に代えて
図5(b)を参照するに、バルブV
3を開いた時には、3連ギアポンプ1は並列モードで稼働する。第1のギアポンプG
1の出口圧P
3はバルブV
3を介して流入路F
11に及び、結果として吸入圧力P
1は出口圧P
3と一致するように高まる。逆流防止弁V
1が介在していれば、流体が流路F
1に向かって逆流することが防止される。このときも両方の浮動軸受35には共通の圧力P
1が印加されるので、上下の力f
d,f
uは釣り合う。また圧力P
1の変化は浮動軸受33,37には影響を及ぼさない。このとき、第1のギアポンプG
1は空転して(仕事をせずに)、第2のギアポンプG
2による吐出のみが流体の供給に寄与する。
【0031】
なおバルブV
3には開閉バルブではなく、流量を連続的に変化できる可変絞り弁のごとき調節バルブを適用することができる。この場合に、バルブV
3には全閉(
図5(a)の状態)と全開(
図5(b)の状態)以外に、中間的な状態がありうるが、中間的な何れの状態においても浮動軸受33,35,37に関して力の釣り合いが失われることはない。
【0032】
図5(a),5(b)に代えて
図5(c)を参照するに、本実施形態によれば無負荷モードが可能である。このときバルブV
3は開いたまま(あるいは閉じてもよい)、遠心ポンプ3の吐出量を増大する。すると遠心ポンプ3による高圧が両ギアポンプG
1,G
2に印加される。上述の説明より理解される通り、浮動軸受35,37について上下の力f
d,f
uが釣り合うのはもちろんのこと、連通路67により圧力が駆動シャフト21の浮動軸受33にも及ぶので、浮動軸受33についても上下の力f
d,f
uが釣り合う。浮動軸受33に高圧が印加されるにも関わらず、ラビリンスシール65により、かかる圧力はメカニカルシール61には及ばない。メカニカルシール61から流体が外部に漏れ出すことはなく、あるいはメカニカルシール61の円滑な動作が損なわれることがない。
【0033】
無負荷モードにおいて、両ギアポンプG
1,G
2は共に実質的に仕事をせずに、専ら遠心ポンプ3のみが流体の供給に寄与する。遠心ポンプは、特にエンジン10が高出力を発揮するときに、効率よく大容量の流体を吐出することができる。改めて
図1を参照して理解できる通り、3連ギアポンプ1は実質的に仕事をせず、また還流路F
3を通じた流体の還流も極小にできるので、流路F
5へ供給される流体の温度上昇は抑えられる。オイルクーラ9の冷却能を十分に利用でき、翻って空冷オイルクーラ11の負担を抑制することができる。
【0034】
例えばエンジン10が低回転ながら高出力を要するときには並列モード、高空を巡航するときには並列モードを利用し、離陸の時のように特に高出力を要するときには無負荷モードによって専ら遠心ポンプを利用するなど、本実施形態によれば最適なモードを選択して利用することができる。本実施形態は、その何れにおいても高いエネルギ効率を実現することができる。
【0035】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 3連ギアポンプ
3 低圧ポンプ
5 燃料制御部
7 燃焼室
9 オイルクーラ
10 エンジン
11 空冷オイルクーラ
21 駆動シャフト
23 駆動ギア
25 第1の従動シャフト
27 第1の従動ギア
29 第2の従動シャフト
31 第2の従動ギア
33 浮動軸受
35 浮動軸受
37 浮動軸受
39 スプリング
41 ハウジング
43 空間
45 空間
47 空間
49 吸入口
51 吐出口
53 吸入口
55 吐出口
61 メカニカルシール
63 シール
65 ラビリンスシール
67 連通路
69 導入路
A 空気
P1 圧力
P3 圧力
P5 圧力
P7 圧力
P9 圧力
P11 圧力
f1 力
f2 力
f3 力
fd 下向きの力
fu 上向きの力
F1 流路
F3 還流路
F5 流路
F7 供給路
F11 流入路
F13 流出路
F15 流出路
F17 流入路
F19 流出路
F21 流路
G1 第1のギアポンプ
G2 第2のギアポンプ
V1 逆流防止弁
V3 バルブ
L 潤滑油