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特許7571608印画物の製造方法、熱転写印画装置及び印画物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】印画物の製造方法、熱転写印画装置及び印画物
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20241016BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20241016BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B41M5/52 400
B41M5/382 420
B41J2/325 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021025350
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127290
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】下形 貴宣
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138411(JP,A)
【文献】特開2007-001129(JP,A)
【文献】特開平10-081058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/52
B41M 5/382
B41J 2/325
B42D 25/00 -25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の複写許可領域の入力を受け付ける工程と、
基材、前記基材上に設けられた金属含有層、及び前記金属含有層上に設けられた受容層を有する受像シートの前記受容層に前記画像を形成する工程と、
前記画像が形成された前記受容層上の前記複写許可領域に対応する領域に、熱転写シートから表面に凹凸が設けられるように保護層を転写する工程と、
を備える印画物の製造方法。
【請求項2】
前記受容層上の、前記複写許可領域以外の複写禁止領域に対応する領域には、前記保護層を転写しない、請求項1に記載の印画物の製造方法。
【請求項3】
画像の複写許可領域の入力を受け付ける工程と、
基材、前記基材上に設けられた金属含有層、及び前記金属含有層上に設けられた受容層を有する受像シートの前記受容層に前記画像を形成する工程と、
前記画像が形成された前記受容層上に、熱転写シートから保護層を転写する工程と、
を備え、
前記複写許可領域に対応する領域では、前記複写許可領域以外の複写禁止領域に対応する領域よりも、保護層転写時の前記熱転写シートへの印加エネルギーを高くし、保護層表面に凹凸パターンを形成する、印画物の製造方法。
【請求項4】
画像の複写許可領域の入力を受け付ける入力部と、
色材を含む色材層及び保護層が設けられた熱転写シートを供給する供給部と、
前記熱転写シートの前記色材層を加熱し、基材、前記基材上に設けられた金属含有層、及び前記金属含有層上に設けられた受容層を有する受像シートの前記受容層に前記画像を形成し、前記保護層を加熱し、前記画像が形成された前記受容層上の前記複写許可領域に対応する領域に表面に凹凸が設けられるように前記保護層を転写するサーマルヘッドと、
を備える熱転写印画装置。
【請求項5】
基材と、
前記基材上に設けられた金属含有層と、
前記金属含有層上に設けられ、画像が形成された受容層と、
前記受容層上の画像複写許可領域に対応する領域に設けられた、フィラーを含有する保護層と、
を備える印画物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印画物の製造方法、熱転写印画装置及び印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーコピー機の技術的進歩により、有価証券や入場券等の印画物を容易に偽造できてしまうという問題があった。偽造防止対策として、印画物の一部の情報を銀インキで印刷する方法が知られている。この印画物をカラーコピーした場合、印画物の銀インキによる光沢感のある銀色が複写物では再現されず灰色となり、複写された偽造品であることが判別可能となる。
【0003】
しかし、人によっては、光沢感のある銀色から光沢感のない薄い灰色系への変化に気付かず、カラーコピーされた偽造物を真正な印画物と見間違えるおそれがあった。また、真贋判定に用いる領域(印画パターン)を銀インキで印刷する必要があり、印画する画像のデザインの制約になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、カラーコピーされた複写物の真贋判定が容易な印画物を製造する方法、熱転写印画装置を提供することを課題とする。また、本開示は、カラーコピーされた複写物の真贋判定が容易な印画物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の印画物の製造方法は、画像の複写許可領域の入力を受け付ける工程と、基材、前記基材上に設けられた金属含有層、及び前記金属含有層上に設けられた受容層を有する受像シートの前記受容層に前記画像を形成する工程と、前記画像が形成された前記受容層上の前記複写許可領域に対応する領域に、フィラーを含む保護層が設けられた熱転写シートから前記保護層を転写する工程と、を備えるものである。
【0007】
本開示の熱転写印画装置は、画像の複写許可領域の入力を受け付ける入力部と、色材を含む色材層及びフィラーを含む保護層が設けられた熱転写シートを供給する供給部と、前記熱転写シートの前記色材層を加熱し、基材、前記基材上に設けられた金属含有層、及び前記金属含有層上に設けられた受容層を有する受像シートの前記受容層に前記画像を形成し、前記保護層を加熱し、前記画像が形成された前記受容層上の前記複写許可領域に対応する領域に前記保護層を転写するサーマルヘッドと、を備えるものである。
【0008】
本開示の印画物は、基材と、前記基材上に設けられた金属含有層と、前記金属含有層上に設けられ、画像が形成された受容層と、前記受容層上の画像複写許可領域に対応する領域に設けられた、フィラーを含有する保護層と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、カラーコピーされた複写物の真贋判定が容易な印画物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態における熱転写印画装置の概略構成図である。
図2】熱転写シートの平面図である。
図3】受像シートの断面図である。
図4】受像シートの断面図である。
図5】印画物の断面図である。
図6】印画物の平面図である。
図7】印画物をカラーコピーした複写物を示す図である。
図8】印画物の断面図である。
図9】印画物の断面図である。
図10】印画物の断面図である。
図11】印画物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
図1は熱転写印画装置の概略構成図であり、図2は熱転写印画装置で使用される熱転写シート5の平面図である。熱転写印画装置は、受像シート7にイエロー、マゼンタ、シアンの染料等の色材を転写して、画像を印画する。印画する画像は、例えば、顔画像等の人物画像や、住所・氏名等の文字である。
【0013】
熱転写シート5には、イエロー染料(Y)を含むY層51、マゼンタ染料(M)を含むM層52、シアン染料(C)を含むC層53、及び表面保護層54(以下、保護層54と記載する)が面順次に設けられている。言い換えれば、Y層51、M層52、C層53、及び保護層54の4パネルからなる集合体を「1ユニット(50)」としたとき、熱転写シート5には、この「1ユニット(50)」が面順次に(繰り返し)設けられている。
【0014】
サーマルヘッド1の下方側には回転自在なプラテンロール2が設けられている。サーマルヘッド1とプラテンロール2との間に、熱転写シート5及び受像シート7が挟み込まれる。サーマルヘッド1は、熱転写シート5を加熱し、受像シート7にY、M、Cを昇華転写させて画像を印画し、画像上に保護層を転写する。
【0015】
熱転写シート5は、供給ロール3から繰り出され、サーマルヘッド1を通って回収ロール4に回収されるようになっている。
【0016】
熱転写印画装置は、各部の駆動を制御する制御装置20、印画する画像の画像データを記憶する記憶部30、複写許可領域の入力を受け付ける入力部32を備えている。制御装置20は、複写許可領域設定部21及び印画制御部22を備える。複写許可領域設定部21及び印画制御部22は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、少なくとも一部の機能を実現するプログラムをCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。
【0017】
本実施形態に係る熱転写印画装置は、カラーコピー機で複写した場合に、複写可能な部分と、複写できない部分とを含む印画物を製造する。入力部32は、ユーザから複写を許可する領域の入力を受け付ける。入力部32は、例えば、タッチパネル、マウス、キーボード等である。
【0018】
複写許可領域設定部21は、印画する画像のうち、入力部32を介して入力された領域を複写許可領域に設定する。また、複写許可領域設定部21は、印画する画像のうち、複写許可領域以外の領域を複写禁止領域に設定する。
【0019】
ユーザから複写禁止領域の入力を受け付け、複写禁止領域以外の領域を複写許可領域に設定してもよい。
【0020】
後述するように、印画制御部22は、複写許可領域に保護層を転写し、複写禁止領域には保護層を転写しないように、サーマルヘッド1を制御する。
【0021】
熱転写シート5は、基材上に面順次に設けられたY層51、M層52、C層53、及び保護層54を有する。Y層51、M層52、C層53及び基材には従来公知の材料を用いることができる。保護層54と基材との間には、フィラーを含有する離型層が設けられている。
【0022】
離型層は、基材と保護層54との接着性を調整し、保護層54の剥離を良好にする。このような離型層は、例えば、シリコーンワックス等の各種ワックス類、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、水溶性樹脂、セルロース誘導体樹脂、ポリウレタン、酢酸系ポリビニル、アクリルビニルエーテル樹脂、無水マレイン酸樹脂等の各種樹脂等やこれらの混合物を含む。
【0023】
離型層に含まれるフィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、有機-無機のハイブリッド型のフィラーが挙げられる。また、フィラーは、粉体であっても、ゾル状のものであってもよい。
【0024】
離型層がフィラーを含むことで、保護層54の離型層との界面部分は、フィラーによる凹凸になる。保護層54が離型層から剥離して被転写体に転写された場合、被転写体上の保護層54の表面には凹凸が形成される。
【0025】
離型層に含まれるフィラーの体積平均粒子径は、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上5μm以下がさらに好ましい。フィラーの体積平均粒子径を1μm以上とすることで、保護層54の表面に所望の凹凸を形成できる。フィラーの体積平均粒子径を10μm以下とすることで、インキ安定性(分散性)を維持することができる。
【0026】
体積平均粒径は、レーザー動的光散乱法を用いた測定装置やTEMを用いる方法、又はBET法(粉体粒子の表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法)によって求めることができる。例えば、粒度分布・粒径分布測定装置(例えば、ナノトラック粒度分布測定装置、日機装(株)製など)、比表面積・細孔分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製)を用いて、JIS-Z-8819-2(2001年発行)に準拠して測定することができる。
【0027】
フィラーは、離型層の固形分総量に対し、5質量%以上50質量%以下含まれていることが好ましく、10質量%以上30質量%以下含まれていることがさらに好ましい。
【0028】
離型層の厚みは、0.1μm以上4μm以下が好ましく、0.5μm以上2μm以下がより好ましい。離型層の厚みを、上記好ましい厚みとすることで、さらに深いマット感を有する転写物を製造できる。
【0029】
保護層54は、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂としては、熱転写シートの離型層と適当な剥離性を有し、転写後は表面保護層として所望の物性を有するものであれば特に限定されない。例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0030】
保護層の厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0031】
次に、受像シート7の構成について説明する。図3に示すように、受像シート7は、基材71と、基材71の一方の面に順に積層された金属含有層72及び受容層73とを備える。図4に示すように、金属含有層72と受容層73との間に中間層74を備えていてもよい。また、基材71と金属含有層72との間に多孔質層(図示略)を備えていてもよい。層間にさらに別の層が設けられていてもよい。
【0032】
受像シート7の受容層73側の45度鏡面光沢度は、800以上であることが好ましく、1000以上であることがさらに好ましい。これにより、高い光沢感を有する印画物を製造できる。受像シートの45度鏡面光沢度は、JIS Z8741に記載の45度鏡面光沢度測定方法に準拠して、光沢度計(日本電色(株)製、VG7000)を用いて、受容層における45度鏡面光沢度を測定する。
【0033】
次に、受像シートの各層について説明する。
【0034】
(基材)
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート及びポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド及びポリエーテルイミド等のイミド樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂、ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂、ポリカーボネート、並びにアイオノマー樹脂等から構成されるフィルム(以下、単に「樹脂フィルム」という。)等が挙げられる。
【0035】
また、基材として、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙、上質紙、アート紙、コート紙、ノンコート紙、キャストコート紙、壁紙、セルロース繊維紙、合成樹脂内添紙、裏打用紙及び含浸紙(合成樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙)等の紙基材を用いてもよい。
【0036】
基材の厚さは、機械的強度の観点から、50μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0037】
(金属含有層)
金属含有層は、蒸着膜又は金属インキ層である。
【0038】
蒸着膜の種類は特に限定されるものではなく、アルミニウム、亜鉛、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、鉛及びジルコニウム等の金属、並びにこれらの酸化物を用いて形成できる。
【0039】
蒸着膜の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上150nm以下とすることができる。
【0040】
蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて、表基材等の表面に対して行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0041】
金属インキ層7は、金属粉と、溶剤系樹脂とを含有している。
【0042】
溶剤系樹脂とは、溶剤系溶媒に溶解する樹脂を意味する。溶剤系樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びこれらの共重合体を挙げることができる。
【0043】
金属粉としては、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの合金類を挙げることができる。金属粉の粒子は鱗片状、もしくは箔状のものが好ましく、厚さは、0.001μm以上3μm以下、平均直径が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0044】
金属インキ層の形成方法について特に限定はないが、例えば、上記で説明した溶剤系樹脂を、適当な溶剤系溶媒に溶解し、これに金属粉、及び必要に応じて添加される各種の成分を添加した金属インキ層用塗工液を、基材71上に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用い塗布、乾燥させて形成することができる。金属インキ層の厚みについて特に限定はないが、0.1μm以上3μm以下の範囲であることが好ましい。
【0045】
(受容層)
受容層は、熱転写シートが備える染料層から移行してくる昇華性染料を受容し、形成された画像を維持する層である。
【0046】
受容層は、樹脂材料を含み、樹脂材料としては、透明性を有し、上記45度鏡面光沢度
を達成できる限り限定されるものではなく、例えば、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、(メ
タ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、カーボネート樹脂、ス
チレン樹脂、ウレタン樹脂及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。受容層は、上記樹脂材
料を2種以上含むことができる。
【0047】
受容層の厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがより好ましい。これにより、受容層上に形成される画像濃度及び受像シートの凹カール発生防止性をより向上できる。
【0048】
(中間層)
中間層は、金属含有層と受容層との間に設けられ、層間の密着性を向上させる。
【0049】
中間層は、樹脂材料を含み、樹脂材料としては、透明性を有し、上記45度鏡面光沢度を達成できる限り限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂及びセルロース樹脂等が挙げられる。
【0050】
中間層の厚さは特に限定されず、例えば、0.1μm以上3.0μm以下とすることができる。
【0051】
中間層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して塗工液とし、これを、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、金属含有層上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0052】
(多孔質層)
多孔質層は、内部に微細空隙を有する多孔質フィルムにより構成される。多孔質フィルムを構成する樹脂材料としては、PE及びPP等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、PET及びPBT等のポリエステル、スチレン樹脂、並びにポリアミド等が挙げられる。
【0053】
(印画物)
熱転写印画装置のサーマルヘッド1は、記憶部30に格納された画像データに基づいて、熱転写シート5のY層51、M層52、C層53を加熱し、受像シート7の受容層73に染料を移行して、画像を形成する。
【0054】
次に、サーマルヘッド1が熱転写シート5の保護層54を加熱し、受像シート7の受容層73上に保護層54を転写して、印画物10を作製する。このとき、図5図6に示すように、複写許可領域R1に保護層54を転写し、複写禁止領域R2には保護層54を転写しない。従って、複写禁止領域R2では、受容層73の表面が露出する。図6に示す例では、顔画像及び氏名の領域を複写禁止領域R2としている。
【0055】
複写許可領域R1は、受容層73上に、表面に凹凸が形成された保護層54が転写される。保護層54の表面が凹凸になっているため、複写許可領域R1では、複写禁止領域R2よりも45度鏡面光沢度が低下する。例えば、複写許可領域R1の45度鏡面光沢度は、複写禁止領域R2の45度鏡面光沢度の0.1%以上50%以下程度となる。
【0056】
この印画物10をカラーコピー機で複写した場合を考える。一般に、カラーコピー機は、光源から原稿面の法線に対して45°の角度で光を照射し、原稿面で反射散乱する光のうち、原稿面の法線に対して0°方向に反射する光をCCD等の受光部で受光し、受光強度を読み取る。
【0057】
カラーコピー機の光源から複写許可領域R1に照射された光は、保護層表面の凹凸により乱反射し、受光部に反射光が到達して画像が再現される。一方、光源から複写禁止領域R2に45°で照射された光は、-45°の方向に正反射し、0°方向にある受光部には反射光がほとんど到達しない。そのため、図7に示すように、複写物Fでは、複写禁止領域R2が黒色(又は濃い灰色)として再現される。
【0058】
複写禁止領域R2が黒色に変化するため、真正な印画物であるか、又はカラーコピーされた複写物であるかの真贋判定が容易である。また、複写許可領域R1に、表面に凹凸が形成された保護層を転写するものであるため、印画する画像のデザインには影響を与えない。
【0059】
離型層がフィラーを含まず、図8に示すように、離型層との界面部分が平坦な保護層55を受容層73上に転写すると共に、転写時のサーマルヘッド1による印加エネルギーを制御して、複写許可領域R1の保護層55の表面に凹凸パターンを形成するマット処理を施してもよい。複写禁止領域R2に保護層55を転写する際の印加エネルギーよりも、複写許可領域R1に保護層55を転写する際の印加エネルギーを高くする。複写許可領域R1では、保護層55の表面は光沢度の低いマット調になり、複写禁止領域R2では、保護層55の表面は光沢度の高いグロス調になる。
【0060】
保護層55の表面をマット調にする凹凸パターンは、例えば、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製)で表面解析した場合、Sa(算術平均高さ)が1.8μm以上2.5μm以下、Sz(最大高さ)が20μm以上50μm以下程度となる。
【0061】
図8に示す印画物をカラーコピーした場合も、複写物では、複写禁止領域が黒色に変化する。
【0062】
熱転写シート5が、フィラーを含む離型層上に設けられた保護層54と、フィラーを含まない離型層上に設けられた保護層55とを備えていてもよい。この場合、図9に示すように、複写許可領域R1では受容層73上に、表面に凹凸が形成された保護層54を転写し、複写禁止領域R2では受容層73上に保護層55を(グロス調で)転写する。
【0063】
図10に示すように、複写禁止領域R2のみ基材71上に金属含有層72を形成してもよい。受容層73に画像を形成した後、受容層73上には、フィラーを含まない離型層上に設けられた保護層55をグロス調に転写する。複写許可領域R1は、金属含有層72が設けられていないため、45度鏡面光沢度が低く、カラーコピーした場合に、複写物に画像が再現される。一方、複写禁止領域R2は、金属含有層72が設けられているため、45度鏡面光沢度が高く、カラーコピーした場合に、複写物では黒色に変化する。
【0064】
上記実施形態では、フィラーを含有する離型層上に保護層54を設け、受容層73上に転写された保護層54の表面に凹凸が形成されるようにする例について説明したが、離型層でなく、保護層自体にフィラーを含有させてもよい。図11に示すように、複写許可領域R1に、フィラーを含有する保護層56を転写する。
【0065】
保護層56に含まれるフィラーの体積平均粒子径は、0.01μm以上10μm以下が好ましい。フィラーの体積平均粒子径を10μm以下とすることで、保護層の透明性を維持することができる。フィラーの体積平均粒子径を0.01μm以上とすることで、分散性を維持することができ、保護層塗工液の安定性が向上する。
【0066】
フィラーは、保護層の固形分総量に対し、5質量%以上60質量%以下含まれていることが好ましく、10質量%以上50質量%以下含まれていることがさらに好ましい。
【実施例
【0067】
次に実施例を挙げて、本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1
厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡(株)製、E5100)を準備し、下記組成の金属インキ層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1.0μmの金属インキ層を形成した。次に厚さ150μmの上質紙を準備し、下記組成の接着層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ3.0μmの接着層を形成すると共に、該接着層を介して、前記金属インキ層を設けたPETフィルムの金属インキ塗布面と貼り合わせ、積層させた。このPET面上に下記組成の中間層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1.0μmの(透明)中間層を形成した。中間層上に、下記組成の受容層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ4.0μmの受容層を形成し、実施例1の受像シートを得た。
【0069】
<金属インキ層用塗工液>
・バインダー(ポリウレタン) 20質量部
(ニッポラン(登録商標)5253 東ソー(株))
・アルミニウム顔料(アクリル被覆) 10質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 150質量部
【0070】
<接着層用塗工液>
・ポリオール樹脂 30質量部
(三井化学(株)、タケラック(登録商標)A-969V)
・イソシアネート化合物 10質量部
(三井化学(株)製、タケネート(登録商標)A-5)
・酢酸エチル 60質量部
【0071】
<中間層用塗工液>
・ウレタン樹脂 30質量部
(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標))
・イソシアネート 0.5質量部
(東ソー(株)製、コロネート(登録商標)HX)
・MEK 30質量部
【0072】
<受容層用塗工液>
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 60質量部
(日信化学工業(株)製、ソルバイン(登録商標)C)
・エポキシ変性シリコーン樹脂 1.2質量部
(信越化学工業(株)製、X-22-3000T)
・メチルスチル変性シリコーン樹脂 0.6質量部
(信越化学工業(株)製、X-24-510)
・MEK 150質量部
・トルエン 150質量部
【0073】
実施例2
厚さ150μmの上質紙の一方の面に、上記組成の接着層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ3μmの接着層を形成すると共に、該接着層を介して、厚さ25μmのアルミ蒸着PETフィルム(東洋紡(株)製、メタライトK-Y-27-CR、蒸着膜厚:45nm)をアルミ蒸着面が接着面となるように積層した。このアルミ蒸着PETフィルムのPET面上に上記組成の中間層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1μmの中間層を形成した。中間層上に、上記組成の受容層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ4μmの受容層を形成し、実施例2の受像シートを得た。
【0074】
実施例3
厚さ150μmの上質紙の一方の面に、上記組成の接着層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ3μmの接着層を形成すると共に、該接着層を介して、多孔質層として、厚さ35μmの多孔質PPフィルム(三井化学東セロ(株)製、SP-U)を積層した。多孔質PPフィルム上に上記組成の金属インキ層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1μmの金属インキ層を形成した。この金属インキ層上に上記組成の受容層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ4μmの受容層を形成し、実施例3の受像シートを得た。
【0075】
比較例1
金属インキ層に代えて、多孔質PPフィルム上に下記組成の白色中間層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1μmの白色中間層を形成した以外は実施例3と同様にして、比較例1の受像シートを得た。
【0076】
<白色中間層用塗工液>
・ウレタン樹脂 30質量部
(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標))
・イソシアネート 0.5質量部
(東ソー(株)製、コロネート(登録商標)HX)
・酸化チタン(TCA888 トーケムプロダクツ(株)製) 15重量部
・MEK 100質量部
【0077】
<<鏡面光沢感評価>>
上記実施例及び比較例において作製した受像シートと、昇華型熱転写プリンタ(大日本印刷(株)製、DS620)と、昇華性染料を含む染料層及び保護層を備える当該プリンタ用の純正リボンとを用意し、20℃30%RH環境にて、受像シートが備える受容層上に、純正リボンから昇華性染料を昇華転写する共に、保護層を転写し、カラーチャート11ステップ画像(Ye,Mg,Cy,BK,R,G,Bの7色11ステップ画像)をグロスモードで形成し、印画物を得た。
得られた印画物を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:印画物が極めて高い鏡面光沢感を有していることが確認できた。
B:印画物が高い鏡面光沢感を有していることが確認できた。
C:印画物の光沢感が不十分であった。
【0078】
<<表面平滑感評価>>
上記鏡面光沢感評価において製造した印画物を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:印画物が極めて高い表面平滑感を有していることが確認できた。
B:印画物が高い表面平滑感を有していることが確認できた。
C:印画物の表面平滑感が不十分であった。
【0079】
<<偽造防止性評価>>
上記鏡面光沢感評価において製造した印画物をカラースキャナー(セイコーエプソン(株)製、GT-X830)の標準モードで複写し、複写物を下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
【0080】
(評価基準)
A:画像が黒色になり、一見しただけで複写物であることが判別できた。
B:画像がやや黒色になり、複写物であることが判別できた。
C:画像がほぼ再現され、一見しただけでは複写物であることが判別できなかった。
【0081】
【表1】
【0082】
本開示を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本開示の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0083】
1 サーマルヘッド
2 プラテンロール
5 熱転写シート
54、55、56 保護層
7 受像シート
71 基材
72 金属含有層
73 受容層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11