(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】清掃装置
(51)【国際特許分類】
A47L 9/00 20060101AFI20241016BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20241016BHJP
A47L 11/40 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A47L9/00 B
A47L9/28 E
A47L11/40
(21)【出願番号】P 2021036024
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】猪尾 和大
(72)【発明者】
【氏名】杉田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】今江 友和
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-085859(JP,U)
【文献】米国特許第03579699(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0255082(US,A1)
【文献】特開2000-279353(JP,A)
【文献】特開2020-048981(JP,A)
【文献】特公昭62-023567(JP,B2)
【文献】特開2020-048980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00- 9/32
A47L11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃面を移動しつつ前記被清掃面を清掃する清掃機能を有する清掃装置であって、
装置本体と、
前記装置本体の幅方向に隔てて配置された一対のスライドレールを含むスライド機構と、
前記スライド機構によって前記装置本体に対して上下方向へ移動可能なように支持され、予め定められた規制位置で下方への移動が規制される清掃ユニットと、を備え、
前記装置本体は、
前記幅方向の延在し、前記清掃ユニットを前記規制位置に位置決め
して前記規制位置から下方への移動を規制し、前記規制位置から上方への移動を規制しない位置決め部材を備え、
前記清掃ユニットは、
前記被清掃面との間に所定の隙間を隔てて配置される吸気ノズルと、
前記位置決め部材の上面にカム面が
離接可能に当接されることにより前記清掃ユニットを前記規制位置で保持するカム部材と、
前記カム部材の動作方向の力を前記カム部材に入力可能であり、前記カム部材を動作させて前記清掃ユニットを上方へ移動させることにより前記規制位置をそれよりも上方の位置に変更する操作入力部と、を備え
、
前記操作入力部は、前記動作方向の力を入力する際に回転操作される本体部と、
前記本体部に設けられ、前記掃ユニットから前記装置本体側へ延出する回転軸と、を含み、
前記カム部材は、前記回転軸に取り付けられた回転カムであり、
前記清掃ユニットは、
前記回転カムが前記位置決め部材の上面に当接した状態で前記規制位置に支持され、
前記清掃ユニットに上方の外力が加えられたことによって前記カム部材が前記位置決め部材から上方へ離れて前記規制位置から上方へ退避し、
前記外力が解除されたことによって前記カム部材が前記位置決め部材の上面に当接して前記規制位置に戻るように構成されている、清掃装置。
【請求項2】
前記清掃ユニットは、
前記吸気ノズルの吸入口の周縁部と前記被清掃面との間に外周面が位置するように前記清掃ユニットに設けられた回転体を備え、
前記清掃ユニットは、前記回転体に
前記外力が加えられたことによって前記カム部材が前記位置決め部材から上方へ離れて前記規制位置から上方へ退避し、前記外力が解除されたことによって前記カム部材が前記位置決め部材の上面に当接して前記規制位置に戻るように構成されている、請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記清掃ユニットは、
前記吸入口から吸引される吸引物を収集する収集ボックスと、
下端部に前記吸気ノズルが設けられ、前記吸気ノズルの上側で前記収集ボックスを支持するとともに、前記装置本体の背面に上下方向へ移動可能なように支持される支持部材と、を備え、
前記操作入力部は、前記支持部材に回転操作可能に設けられ
ている、請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記清掃ユニットは、
前記カム部材が動作された位置で前記カム部材を固定する固定機構を備える、請求項3に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記固定機構は、
前記支持部材に設けられ、複数の係合孔が形成された固定板と、
前記操作入力部に設けられ、前記係合孔に挿通可能な突起部を有するロック部材と、を含む、請求項4に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記固定機構は、前記突起部が前記係合孔へ近づく方向へ前記ロック部材を付勢する弾性部材を更に含む、請求項5に記載の清掃装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記収集ボックスを収容可能なように前記背面側に凹んだ凹状に形成され、前記収集ボックスを着脱可能に支持する収容部を有し、
前記操作入力部は、前記収容部において前記背面側の側面に設けられている、請求項3から6のいずれかに記載の清掃装置。
【請求項8】
前記装置本体の走行姿勢を維持しつつ前記清掃装置の進行方向の搬送力を前記被清掃面に伝達する駆動伝達部を更に備える、請求項1から7のいずれかに記載の清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被清掃面を移動しつつ前記被清掃面を清掃する清掃機能を有する清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる清掃ロボットと称される自律走行型の清掃装置が知られている。この清掃装置は、床面などの被清掃面を走行しながら、被清掃面に向けられた吸気ノズルの吸引口から吸気するとともに被清掃面上の塵埃を吸い込むことにより、被清掃面を掃除する。吸い込まれた塵埃(吸引物)は、清掃装置に取り付けられた集塵ボックスに収集される。
【0003】
この種の清掃装置の一例として、集塵装置の高さ位置を調整可能な床面清掃ロボットが公知である(特許文献1参照)。前記床面清掃ロボットに設けられた位置調整機構は、床面の状態に応じて手動で集塵装置の吸気ノズルと床面との隙間を調整することが可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の床面清掃ロボットでは、床面に段差がある場合に、吸気ノズルが前記段差に強く接触すると、接触部が破損するおそれがある。具体的には、従来の床面清掃ロボットには、吸気ノズルと床面との隙間を保持する補助車輪にスプリングが設けられており、このスプリングのストローク分の段差であれば補助車輪はこの段差を乗り越えることが可能とも思われる。しかし、実際は、前記スプリングは下方への弾性力を有しており、この弾性力は、前記補助車輪が前記段差を乗り越えるときに受ける上方への力に反発し、前記補助車輪を上方へ移動させることを阻害する。床面清掃ロボットの移動速度が比較的ゆっくりであれば前記段差を乗り越えるかもしれないが、移動速度が比較的速い場合は、前記段差を乗り越える前に吸気ノズルが前記段差に強く衝突して吸気ノズルが破損すると考えられる。特に、従来の床面清掃ロボットにおいて、集塵装置の位置を上方へ調整すると、スプリングの弾性力が強くなるため、前記段差を乗り越えることがより一層困難になる。
【0006】
とりわけ、産業用の自律走行型清掃装置は、産業用として高い性能を備える必要性から、大型で重量のある構造を有している。そのため、例えば、床面などの被清掃面に段差がある場合に、吸気ノズルが前記段差に強く接触すると、接触部が破損しやすい。また、接触部が破損するだけでなく、例えば、吸気ノズルの端部が前記段差に強く接触した場合は、進行方向に対する大きな負荷が生じ、清掃装置が旋回し、場合によっては清掃装置が転倒するおそれがある。
【0007】
また、従来の床面清掃ロボットには、昇降手段が設けられている。この昇降手段は、前記補助車輪と集塵装置を床面から上方へ隔てた上昇位置まで上昇させるものである。しかし、従来の床面清掃ロボットの前記位置調整機構は、前記昇降手段によって集塵装置が前記上昇位置に上昇された状態で位置調整を可能とするものであり、位置調整作業が煩雑である。
【0008】
ところで、前記昇降手段を用いて集塵装置を前記上昇位置に上昇させることで、例えば、非清掃時に床面清掃ロボットを走行させた場合に前記段差に遭遇しても、前記吸気ノズルが前記段差に衝突することを防ぐことができると考えられる。しかしながら、前記上昇手段は、複数のシリンダを選択的に伸縮させることによりリンク機構や吊り下げ金具などを動作させて、集塵装置を上昇させるものであり、複雑な構造を有している。
【0009】
本発明の目的は、清掃対象である被清掃面に段差がある場合でも、段差を通過する際に吸気ノズルを上方へ退避させて、段差との衝突による吸気ノズルの損傷を防止することが可能であり、また、非清掃時の走行の際に吸気ノズルが段差に接触しないように吸気ノズルを被清掃面から上方位置へ簡単な構成により退避させることが可能な清掃装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、清掃ユニットの吸気ノズルを簡単な操作によって容易に上方位置へ退避させることが可能な清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の一の局面に係る清掃装置は、被清掃面を移動しつつ前記被清掃面を清掃する清掃機能を有する清掃装置である。前記清掃装置は、装置本体と、前記装置本体に対して上下方向へ移動可能なように支持され、予め定められた規制位置で下方への移動が規制される清掃ユニットと、を備える。前記装置本体は、前記清掃ユニットを前記規制位置に位置決めする位置決め部材を備える。前記清掃ユニットは、前記被清掃面との間に所定の隙間を隔てて配置される吸気ノズルと、前記位置決め部材の上面にカム面が担持されることにより前記清掃ユニットを前記規制位置で保持するカム部材と、前記カム部材の動作方向の力を前記カム部材に入力可能であり、前記カム部材を動作させて前記清掃ユニットを上方へ移動させることにより前記規制位置をそれよりも上方の位置に変更する操作入力部と、を備える。
【0012】
このように構成されているため、清掃装置による清掃時に、被清掃面に段差がある場合でも、吸気ノズルが段差に当接したことにより生じた上向きの力によって清掃ユニットが前記規制位置から上方へ持ち上げられる。これにより、吸気ノズルと段差との強い衝突を回避して、吸気ノズルの損傷を防止することができる。また、非清掃時に清掃装置を走行させる場合は、前記段差に当接しない位置まで前記規制位置を上方へ変更することができる。これにより、非清掃時の走行において、吸気ノズルが段差に当接することがなくなり、非清掃時の走行を段差によって阻害されることなく、円滑に走行させることができる。
【0013】
(2) 本発明の清掃装置において、前記清掃ユニットは、前記吸気ノズルの吸入口の周縁部と前記被清掃面との間に外周面が位置するように前記清掃ユニットに設けられた回転体を備える。前記清掃ユニットは、前記回転体に上方の外力が加えられたことによって前記カム部材が前記位置決め部材から上方へ離れて前記規制位置から上方へ退避し、前記外力が解除されたことによって前記カム部材が前記位置決め部材の上面に当接して前記規制位置に戻るように構成されている。
【0014】
このように構成されているため、清掃装置の走行時に、被清掃面上の段差が吸気ノズルに近づいてくると、吸気ノズルが段差に当接する前に回転体が段差に当接し、その段差を乗り上げる。このとき、回転体は、前記段差から上方向の外力を受ける。この外力によって、清掃ユニット全体が上方へ持ち上げられる。その結果、吸気ノズルが前記段差に接触することが回避され、吸気ノズルと前記段差との接触による損傷や、異常走行、転倒などを防止することができる。
【0015】
(3) 本発明の清掃装置において、前記清掃ユニットは、前記吸入口から吸引される吸引物を収集する収集ボックスと、下端部に前記吸気ノズルが設けられ、前記吸気ノズルの上側で前記収集ボックスを支持するとともに、前記装置本体の背面に上下方向へ移動可能なように支持される支持部材と、を備える。前記操作入力部は、前記支持部材に回転操作可能に設けられており、前記操作入力部の回転軸に前記カム部材が取り付けられている。
【0016】
このように構成されているため、ユーザは操作入力部を操作することにより、清掃ユニットの前記規制位置を容易に調整することができる。このため、例えば、非清掃時に清掃ユニットを走行させる場合に、清掃ユニットの吸気ノズルを、走行時に段差と接触しない上方位置まで容易に退避させることができる。
【0017】
(4) 本発明の清掃装置において、前記清掃ユニットは、前記カム部材が動作された位置で前記カム部材を固定する固定機構を備える。
【0018】
このように構成されているため、清掃ユニットの上下方向の位置を容易に固定することができる。
【0019】
(5) 本発明の清掃装置において、前記固定機構は、前記支持部材に設けられ、複数の係合孔が形成された固定板と、前記操作入力部に設けられ、前記係合孔に挿通可能な突起部を有するロック部材と、を含む。
【0020】
このように構成されているため、いずれかの係合孔に突起部を挿入させることにより、清掃ユニットの上下方向の位置を任意の位置に調整することができ、また、任意の位置に固定することができる。
【0021】
(6) 前記固定機構は、前記突起部が前記係合孔へ近づく方向へ前記ロック部材を付勢する弾性部材を更に含む。
【0022】
このように構成されているため、弾性部材の付勢力によって、係合孔に突出部が挿入された状態を維持することができる。そのため、走行中による振動などによって固定機構による固定が解除されることがなくなり、安全走行可能な清掃装置を実現することができる。
【0023】
(7) 本発明の清掃装置において、前記支持部材は、前記収集ボックスを収容可能なように前記背面側に凹んだ凹状に形成され、前記収集ボックスを着脱可能に支持する収容部を有する。前記操作入力部は、前記収容部において前記背面側の側面に設けられている。
【0024】
このように構成されているため、操作入力部が外部に露出されない。このため、清掃装置の動作時に操作入力部が不用意に操作されることが防止され、走行中の安全が保たれる。また、装置本体に対して着脱可能に構成された収集ボックスを取り外すだけで、操作入力部が操作可能なように露出されるため、ユーザは、操作入力部に対して容易にアクセスして、容易に操作することが可能である。
【0025】
(8) 本発明の清掃装置は、前記装置本体の走行姿勢を維持しつつ前記清掃装置の進行方向の搬送力を前記被清掃面に伝達する駆動伝達部を更に備える。
【0026】
このように構成されているため、清掃装置が自律走行することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、清掃対象である被清掃面に段差がある場合でも、段差を通過する際に吸気ノズルを上方へ退避させて、段差との衝突による吸気ノズルの損傷を防止することが可能であり、また、非清掃時の走行の際に吸気ノズルが段差に接触しないように吸気ノズルを被清掃面から上方位置へ簡単な構成により退避させることが可能である。
【0028】
また、本発明によれば、清掃ユニットの吸気ノズルを簡単な操作によって容易に上方位置へ退避させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る清掃装置の前方側の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、清掃装置の内部の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、清掃装置の後方側の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の斜視図において収集ボックスが取り外された状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の斜視図において背面カバーが取り外された状態を示す部分拡大図であり、清掃ユニットの内部構造を示す。
【
図6】
図6(A),(B)は、清掃装置の後方部の側面図であり、(A)は、清掃装置の収集ボックスが装着された状態を示す図であり、(B)は、収集ボックスが清掃装置から取り外された状態を示す図である。
【
図7】
図7は、支持ホルダが退避位置に配置された状態を示す図である。
【
図8】
図8は、清掃ユニット単体を前方側から見た斜視図であり、清掃ユニットの内部の構成を示す。
【
図9】
図9は、清掃装置に設けられた位置調整機構を示す部分拡大図である。
【
図10】
図10は、位置調整機構のダイヤルユニットの構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、ダイヤルユニットの断面図であり、回転カムが第1位置に配置された状態を示す。
【
図12】
図12は、
図11に示す切断面XII-XIIの断面図であり、回転カムの断面形状を示す。
【
図13】
図13は、調整ダイヤルが押し込まれて係合が解除された状態を示す断面図である。
【
図14】
図14は、ダイヤルユニットの断面図であり、回転カムが第2位置に配置された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、以下の説明では、各図に示される上下方向D1、前後方向D2、左右方向D3又は幅方向D3を用いる。
【0031】
[清掃装置10]
図1は、本発明の実施形態に係る自律走行型の清掃装置10(本発明の清掃装置の一例)の前方側の外観を示す斜視図である。
図2は、清掃装置10の内部構造を示す模式図である。
【0032】
図1に示す清掃装置10は、空港や駅、ショッピングモールなどのコンコースの床面23(
図2参照)を前方(進行方向)へ自律走行によって移動する自律走行装置であり、移動ロボットとも称されている。清掃装置10は、自律走行によって移動しつつ、被清掃面である床面23の塵や埃などのごみ類(吸引物)を吸い上げ、フィルタによってゴミ類を分離し、収集ボックス16(
図2参照)に収集する。清掃装置10は、予め入力された走行ルートや清掃エリア、清掃する時間帯、充電のために戻る帰還位置などの各種清掃情報に基づいて、床面23を走行しながら自動的に清掃する。
【0033】
なお、清掃装置10は、本発明の清掃装置の単なる一例であって、本発明は、例えば、屋内の床面23を自律走行しながら清掃する清掃装置、屋外の歩行路や車道路などの路面を自律走行しながら清掃する清掃装置などにも適用可能である。また、清掃装置10は、少なくとも清掃機能を備えた自律走行型の移動ロボットであればよく、清掃機能のみを有する清掃装置10に限られない。例えば、本発明は、清掃機能のほかに、他の用途を実現するための他の機能を有する自律走行型の移動ロボットであってもよい。例えば、本発明は、清掃機能のほかに、自律走行しつつ警備する機能を有する移動ロボット、介護機能を有する移動ロボット、荷物運搬機能を有する移動ロボット、表示案内機能を有する移動ロボットなどの自律走行装置にも適用可能である。また、本発明は、自律走行する移動ロボットに限られず、例えば、作業者によって手押しにより走行させて床面23を清掃する手動型の清掃装置にも適用可能である。
【0034】
図2に示すように、清掃装置10は、装置本体11と、装置本体11に設けられた清掃ユニット30と、を備える。装置本体11には、走行部12(本発明の駆動伝達部の一例)、モータ13、バッテリ14、操作部20、表示パネル21、操作ハンドル22、及び制御部40などが設けられている。また、清掃装置10は、清掃ユニット30を上下方向D1へ移動可能に支持するスライド機構50(
図2参照)と、清掃ユニット30の高さ位置を調整可能な位置調整機構60(
図8参照)とを備える。
【0035】
図1に示すように、装置本体11は、その外装を構成する外装カバー11Aを有する。また、
図2に示すように、装置本体11は、その下部にシャーシ11Bを有する。シャーシ11Bは、床面23に対して概ね平行に設けられている。また、装置本体11の内部には、上述の各機能部を支持するための支持フレームが適宜設けられている。
【0036】
装置本体11は、被清掃面である床面23を所定の進行方向へ走行可能なように構成されている。本実施形態では、装置本体11は、走行部12によって走行可能である。
図2に示すように、走行部12は、装置本体11の下部に設けられている。走行部12は、装置本体11の走行姿勢を維持しつつ進行方向の搬送力を床面23に伝達するものであり、シャーシ11Bに取り付けられている。走行部12は、走行用の一対の車輪121と、4つのキャスタ122とを有する。
【0037】
車輪121は、シャーシ11Bの前後方向の中央であって、左右方向D3(幅方向)の両端部それぞれに回転可能に取り付けられている。4つのキャスタ122は、装置本体11の走行姿勢を維持するためのものであり、シャーシ11Bの前方端の両端部、及びシャーシ11Bの後方端の両端部に回転可能に取り付けられている。清掃装置10が床面23に置かれた状態で、車輪121及びキャスタ122の各外周面は床面23によって支持される。これにより、装置本体11が、
図1や
図2に示される走行姿勢に維持される。
【0038】
車輪121の回転軸には、減速ギヤなどの伝達機構を介して、モータ13の出力軸が連結されている。このため、モータ13が駆動されて、その回転駆動力が前記出力軸から出力されると、モータ13の回転駆動力が車輪121に伝達される。本実施形態では、一対の車輪121のそれぞれに対して、個別にモータ13が設けられている。したがって、各モータ13が個別に駆動制御されることによって、各車輪121の回転速度が制御される。例えば、各車輪121の回転速度が等速に制御されると、清掃装置10は真っ直ぐに進行し、各車輪121の回転速度が異なる速度に制御されると、回転速度の遅い車輪121側に清掃装置10が旋回する。
【0039】
バッテリ14は、装置本体11の中心部に設けられている。バッテリ14は、モータ13や、後述する吸気ユニット15の吸気ファン151のモータ152に駆動用の電力を供給する。
【0040】
操作部20は、装置本体11の上部に設けられている。操作部20は、外装カバー11Aに取り付けられている。操作部20は、作業者によって操作される装置であり、例えば、タッチ操作が可能なタッチパネルを有する端末装置である。清掃装置10に対する各種の登録情報(走行ルート、清掃エリア、清掃時間帯、帰還位置情報などの情報)は、操作部20から入力することができる。入力された登録情報は、制御部40に転送され、制御部40による走行制御に用いられる。
【0041】
表示パネル21は、装置本体11の前面に設けられている。表示パネル21は、例えば液晶パネルである。表示パネル21には、清掃中に各種のアナウンス情報が制御部40によって表示される。前記アナウンス情報は、例えば、清掃中であることを示す情報、清掃しているフロアに関する案内情報などである。
【0042】
操作ハンドル22は、装置本体11の背面の最上部に設けられている。操作ハンドル22は、作業者が手動で清掃装置10を運転操作して清掃する場合や、作業者が清掃装置10に走行経路を教示させるためのティーチング操作(教示操作)を行う場合に、作業者が把持する操作部材である。操作ハンドル22には、作業者から運転操作を受け付ける各種操作ボタンが設けられている。前記操作ボタンに対する操作情報は、制御部40に転送され、制御部40による走行制御に用いられる。
【0043】
図2に示すように、制御部40は、装置本体11の上部に設けられている。制御部40は、清掃装置10の走行、吸気ユニット15のモータ152の駆動、表示パネル21の画面表示などを制御する。制御部40は、例えば、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置、GPS受信機などを有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。前記ROMは、前記CPUに各種の処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性のメモリである。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性のメモリであり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。制御部40は、前記ROM又は記憶装置に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより、清掃装置10の走行、モータ152の駆動、表示パネル21の画面表示などを制御する。
【0044】
[清掃ユニット30]
図3は、清掃装置10の後方側の外観を示す斜視図である。
図2及び
図3に示すように、清掃ユニット30は、装置本体11の背面に設けられている。清掃ユニット30は、後述するスライド機構50によって、装置本体11が備える背面フレーム11Cに、上下方向D1へ移動可能なように支持されている。
【0045】
清掃ユニット30は、収集ボックス31と、支持ホルダ32(本発明の支持部材の一例)と、吸気ノズル33と、拡張ノズル34(
図3参照)と、吸気ユニット15と、カバー35とを備える。
【0046】
支持ホルダ32は、装置本体11の背面に設けられている。支持ホルダ32は、収集ボックス31を着脱可能に支持する支持部材である。支持ホルダ32に収集ボックス31が取り外し可能に装着されている。
【0047】
図4は、支持ホルダ32から収集ボックス31が取り外された状態を示す斜視図であり、
図5は、
図4の斜視図においてカバー35が取り外された状態を示す部分拡大図である。
図4及び
図5に示すように、カバー35は、支持ホルダ32に取り付けられている。
【0048】
支持ホルダ32の左右方向D3(幅方向)の中央には、収集ボックス31が収容可能な収容部322が設けられている。収容部322は、カバー35が支持ホルダ32に取り付けられた状態で、カバー35とともに、上下方向D1に延びる凹形状の収容スペースを区画する。収集ボックス31は、収容部322に取り外し可能に装着されており、収容部322に装着された状態で、収容部322の凹状の収容スペースに収容される。
【0049】
図4に示すように、支持ホルダ32には、収集ボックス31が取り外された状態で、二つの吸気ポート37が露出されている。二つの吸気ポート37は、ベース部321に形成された貫通孔であり、後述する吸気ユニット15が備える吸気ファン151の吸気口としての役割を担う。二つの吸気ポート37は、幅方向D3に所定間隔を隔てて配置されている。本実施形態では、収集ボックス31が収容部322に装着された状態で、収集ボックス31の前方側の側面(前面)に設けられた二つの排出口(不図示)が吸気ポート37に連結される。これにより、収集ボックス31から吸気可能なように、吸気ユニット15と収集ボックス31とが接続される。
【0050】
図3に示すように、支持ホルダ32の下部には吸気ノズル33が設けられている。また、支持ホルダ32の側部には拡張ノズル34が設けられている。
【0051】
図3及び
図4示すように、拡張ノズル34は、清掃装置10を正面から見て、支持ホルダ32の左側に設けられている。支持ホルダ32の左側には、収容スペース38が設けられており、収容スペース38に拡張ノズル34が収容可能である。拡張ノズル34は、支持ホルダ32に回動可能に支持されている。具体的には、拡張ノズル34は、収容スペース38に収容される収容姿勢(
図3及び
図4に示される姿勢)と、収容スペース38から左側へ倒されて装置本体11の左側の床面23を清掃可能な側方清掃姿勢(不図示)との間で姿勢変化可能なように、支持ホルダ32に支持されている。
【0052】
図5に示すように、支持ホルダ32は、清掃装置10の背面側に設けられている。装置本体11の内部には、シャーシ11Bの後端部から上方へ延びる板状の背面フレーム11Cが設けられている。支持ホルダ32は背面フレーム11Cに取り付けられている。本実施形態では、支持ホルダ32は、装置本体11の背面フレーム11Cに上下方向D1へスライド機構50(
図2参照)によって移動可能なように支持されている。これにより、清掃ユニット30自体が上下方向D1へ移動可能となる。
【0053】
スライド機構50は、支持ホルダ32を上下方向D1へ移動可能に支持するものであり、
図2に示すように、装置本体11に設けられている。スライド機構50は、装置本体11の背面フレーム11Cにおいて、幅方向D3に隔てて配置された一対のスライドレールを有する。前記スライドレールは、アウターメンバー及びインナーメンバーを有する周知のスライド部材であり、例えば、アウターメンバーが背面フレーム11Cの後方側の面に取り付けられており、インナーメンバーがベース部321の前方側の面321Aに取り付けられている。このスライド機構50によって、支持ホルダ32とともに清掃ユニット30が上下方向D1へスライド可能に支持される。
【0054】
なお、清掃ユニット30のスライド支持機構は、上述のスライドレールに限られない。上下方向D1へ移動可能に清掃ユニット30を支持するものであれば、如何なる構成の支持機構であっても適用可能である。
【0055】
支持ホルダ32は、上下方向D1に延びる板状のベース部321を有する。ベース部321に収容部322が一体に形成されている。
【0056】
ベース部321は、板金によって形成されたものであり、背面フレーム11C(
図2参照)にスライド機構50(
図2参照)を介して取り付けられている。収容部322は、ベース部321における後方側の面321Aに設けられており、ベース部321において幅方向D3の中央に配置されている。収容部322は、一対の側板322Aと、保持板322Bとを有する。一対の側板322Aは、幅方向D3へ所定間隔を隔てられている。保持板322Bは、各側板322Aの下部の後方端部を幅方向D3へ渡すように各側板322Aに取り付けられている。また、ベース部321の下部には、吸気ノズル33の上面を構成する底板324が設けられている。一対の側板322A、保持板322B、及び底板324によって囲まれた収容スペースに収集ボックス31が収容される。
【0057】
収容部322は、カバー35が装着された状態で、後方側は開放されており、上方側も開放されている(
図4参照)。したがって、
図6(A),(B)に示すように、収集ボックス31は、収容部322に対して後方の斜め上方側から装着され、又は取り外される。ここで、
図6(A),(B)は、清掃装置10の後方部の側面図であり、
図6(A)は、収集ボックス31が収容部322に装着された状態を示し、
図6(B)は、収集ボックス31が収容部322から取り外された状態を示す。
【0058】
吸気ユニット15は、清掃ユニット30の上部に設けられており、詳細には、支持ホルダ32のベース部321に取り付けられている。吸気ユニット15は、清掃ユニット30の吸気ノズル33から空気を吸い込む吸引力を発生させるものであり、吸気ノズル33から空気とともに床面23上の塵埃などのゴミ類(吸引物)を吸引する。
吸気ユニット15は、吸気ファン151と、吸気ファン151を回転させるモータ152と、ダクト153と、を備える。モータ152の駆動によって吸気ファン151が回転すると、吸気ポート37から空気が吸い込まれ、その空気は、ダクト153を通って、清掃ユニット30の上部の空間に送り出される。
【0059】
収集ボックス31の内部には、前記排出口から排出される空気から塵埃などのゴミ類を捕集して取り除き、清浄な空気にするエアーフィルタが設けられている。前記エアーフィルタとして、例えば、ケミカルフィルタや、HEPAフィルタ、ULPAフィルタなどを用いることができる。
【0060】
なお、収容部322の底面には、幅方向D3に長い長方形状の開口323が形成されている。開口323は、後述する吸気ノズル33に連通している。収容部322に収集ボックス31が装着された状態で、収集ボックス31の底面に設けられた吸気口311が開口323に位置合わせされる。これにより、吸気ノズル33と収集ボックス31とが連通する。吸気ファン151が駆動されて吸気が行われると、収集ボックス31の内部が負圧となり、これにより、吸気ノズル33から空気とともに吸い上げられた塵埃が吸気口311を通じて収集ボックス16に流入し、収集ボックス31に収集される。
【0061】
[吸気ノズル33]
吸気ノズル33は、吸気ファン151が作動した場合に、床面23から空気とともに塵埃などのゴミ類を吸い上げる部分である。
図6(A),(B)に示すように、吸気ノズル33は、床面23から上方へ所定の隙間ΔTを隔てた位置に吸入口331を有する。つまり、吸入口331は、床面23から上方へ隙間ΔTを隔てた位置に配置されている。吸気ノズル33は、支持ホルダ32の下端部に設けられている。本実施形態では、吸気ノズル33は、支持ホルダ32と一体に形成されている。
【0062】
吸気ノズル33は、幅方向D3に長い形状であり、ベース部321の底板324の外周部から下方へ突出する四角筒状の外周壁332によって構成されている。外周壁332の下方側は開放されており、上述の吸入口331を形成している。
【0063】
吸気ノズル33の吸入口331の後方側の縁部には、床面23へ延びる弾性を有するシート状のシール部材335が設けられている。シール部材335は、幅方向D3に長い長方形状であり、吸入口331の幅方向D3の全域に接合されている。シール部材335によって、吸入口331の後方側の縁部と床面23との隙間ΔTが塞がれている。
【0064】
吸気ノズル33には、一対の回転ブラシ26が回転可能に設けられている。回転ブラシ26は、前後方向D2に並んで配置されている。各回転ブラシ26の回転軸は、吸気ノズル33における幅方向D3の両端の側板334(
図5参照)に回転可能に支持されている。回転ブラシ26にモータ(不図示)からの駆動力がベルトやプーリーなどの伝達機構39(
図5参照)を介して入力されると、回転ブラシ26が回転されて、床面23のゴミ類の回収が良好に行われる。
【0065】
一対の回転ブラシ26のうち、前方側に位置する回転ブラシ26の回転軸に回転コロ336(本発明の回転体の一例)が回転自在に支持されている。回転コロ336は、回転ブラシ26の回転軸の両端それぞれに取り付けられている。
【0066】
回転コロ336は、その外周面が吸入口331の周縁部(つまり、吸気ノズル33の下端部)と床面23との間に位置するように設けられている。つまり、清掃装置10が
図1に示す走行姿勢にある場合に、回転コロ336の外周面は吸気ノズル33の下端部から下方へ突出しているが、床面23には接触していない。
【0067】
このような回転コロ336が支持ホルダ32に設けられているため、清掃対象である床面23に段差などがある場合に、清掃装置10の自律走行中において、回転コロ336が起伏等に接触する。回転コロ336が前記段差に接触すると、回転コロ336には、上方向の外力が加えられる。この外力を受けることによって、支持ホルダ32は上方へ持ち上げられ、清掃ユニット30が上方へ移動する。つまり、清掃ユニット30は、清掃時に配置される清掃位置(本発明の規制位置の一例)から上方へ移動して、吸気ノズル33を前記清掃位置から上方へ退避させる。その結果、吸気ノズル33が前記段差に接触することが回避され、吸気ノズル33と前記段差との接触に起因する破損、異常旋回、転倒などを防止することができる。なお、清掃装置10が前記段差を乗り越えると、清掃ユニット30は元の位置に戻されて、再び前記清掃位置で支持される。
【0068】
本実施形態では、後述する位置調整機構60によって、清掃ユニット30は、後述の清掃位置(
図6(A)に示す位置)で支持されており、この位置調整機構60によって、清掃ユニット30の前記清掃位置が上下方向D1に調整可能である。ここで、前記清掃位置は、吸入口331が床面23から上方へ前記隙間ΔTを隔てた位置であり、清掃装置10の走行時に床面23を清掃可能な位置である。前記隙間ΔTは、例えば、5mmから10mm程度の設定範囲(清掃位置調整範囲)内で定められており、この隙間ΔTは、後述の位置調整機構60によって調整可能である。隙間ΔTが前記清掃位置調整範囲内で調整されることにより、吸気ノズル33による吸気力(空気の吸引力)と、回転ブラシ26が床面23を押し付ける押付力が床面23の状態に応じて適切に調整される。なお、前記隙間ΔTは、清掃装置10が床面23を清掃可能な長さであって、清掃ユニット30の吸引力や、床面23の状態に応じて適切な長さに設定されるものであり、その調整範囲は前記設定範囲に限られない。
【0069】
また、位置調整機構60は、
図7に示すように、清掃ユニット30の高さ位置を、前記清掃位置調整範囲の上限位置よりも高い退避位置まで調整することもできる。ここで、
図7は、清掃ユニット30が前記退避位置に配置された状態を示す。前記退避位置は、例えば、清掃作業を行わずに清掃装置10を走行させる場合に、床面23の段差に吸気ノズル33が衝突しないように、前記上限位置よりも高い位置に定められた位置である。例えば、床面23から吸入口331までの高さ間隔Tが20mm程度の位置である。なお、前記段差は、例えば、床面23に設置された点字ブロックや、配線カバー、床下点検口を塞ぐためのフロアプレート、床用コンセント、フロアマットなどの床設置部材と床面23との段差である。もちろん、前記高さ間隔Tの長さは上述の長さに限定されるものではなく、前記段差の高さなどに応じて適切な長さに定められる。
【0070】
[位置調整機構60]
以下、
図8乃至
図12を参照して、位置調整機構60について説明する。
図8は、は、清掃ユニット30を前方側から見た斜視図である。
図9は、位置調整機構60を示す部分拡大図である。
図10は、位置調整機構60のダイヤルユニット62の構成を示す斜視図である。
図11は、ダイヤルユニット62の断面図である。
図12は、位置調整機構60の回転カム80の断面図である。
図13は、調整ダイヤル70のロックが解除された状態を示す断面図である。
図14は、位置調整後に調整ダイヤル70が再び回転方向にロックされた状態を示す断面図である。
【0071】
図8及び
図9に示すように、位置調整機構60は、大別して、装置本体11に設けられた支持シャフト61(本発明の位置決め部材の一例)と、清掃ユニット30に設けられたダイヤルユニット62とにより構成されている。なお、
図8には、説明の便宜上、支持シャフト61が示されているが、支持シャフト61は清掃ユニット30には設けられておらず、装置本体11に設けられた部材である。
【0072】
支持シャフト61は、清掃ユニット30を前記清掃位置に位置決めするための部材である。清掃ユニット30は、支持シャフト61と係合することによって、前記清掃位置から下方への移動が規制される。
【0073】
支持シャフト61は、幅方向D3へ延びる水平な軸部材であり、装置本体11の支持フレームなどに固定されている。支持シャフト61は、例えば丸棒状の鋼材で形成されている。支持シャフト61は、装置本体11において後方側に配置されており、ダイヤルユニット62が備える回転カム80がその上面に担持される。回転カム80が支持シャフト61の上面に担持されることにより、スライド機構50によって支持される清掃ユニット30が前記清掃位置に位置決めされる。
【0074】
なお、本実施形態では、清掃ユニット30の位置決め部材として、支持シャフト61を例示して説明するが、支持シャフト61に替えて、幅方向D3へ延びる水平な板状の鋼材で形成された部材が用いられてもよい。清掃ユニット30の位置決め部材は、回転カム80を上面に支持して、清掃ユニット30が前記清掃位置から下方へ移動させないように規制可能な部材であれば、如何なる構成の部材であっても適用可能である。
【0075】
図9に示すように、清掃ユニット30には、二つのダイヤルユニット62が設けられている。二つのダイヤルユニット62は、支持ホルダ32のベース部321における前方側の面321Bに取り付けられている。面321Bには、二つのダイヤルユニット62を支持するためのブラケット325が固定されており、このブラケット325に、幅方向D3に横並びに配置された二つのダイヤルユニット62が取り付けられている。
【0076】
図9乃至
図11に示すように、ダイヤルユニット62は、ロック板65(本発明の固定板の一例、
図9参照)と、調整ダイヤル70(本発明の操作入力部の一例)と、支軸77と、コイルバネ78(本発明の弾性部材の一例)と、回転カム80(本発明のカム部材の一例)と、バネ固定板91と、軸規制板95と、を有する。
【0077】
図9に示すように、ロック板65は矩形状に形成された板部材であり、ブラケット325に固定されている。ロック板65には、後述するロックピン74が挿入されて調整ダイヤル70を回転方向にロックするための複数の係合孔66が形成されている。係合孔66は、調整ダイヤル70の回転方向に沿って等角度間隔で配置されている。
【0078】
ロック板65には、調整ダイヤル70の回転位置を規制するストッパー67,68が設けられている。調整ダイヤル70の突出片73とストッパー67とが当接することにより、調整ダイヤル70が後述の下げ方向D21へ回転することが規制される。以下、突出片73とストッパー67とが当接して規制されるときの調整ダイヤル70の位置(
図9に示される位置)を第1規制位置と称する。また、調整ダイヤル70の突出片73とストッパー68とが当接することにより、調整ダイヤル70が後述の上げ方向D22へ回転することが規制される。以下、突出片73とストッパー68とが当接して規制されるときの調整ダイヤル70の位置を第2規制位置と称する。
【0079】
本実施形態では、調整ダイヤル70が前記第1規制位置に配置された場合に、清掃ユニット30の高さ位置が前記清掃位置調整範囲内における最も下方の下限位置(隙間ΔTが最も狭い位置)に調整される。また、調整ダイヤル70が前記第1規制位置から上げ方向D22へ回転されると、清掃ユニット30の高さ位置が前記下限位置から徐々に上昇し、前記清掃位置調整範囲内における最も上方の上限位置に達する。そして、調整ダイヤル70が更に上げ方向D22へ回転されて前記第2規制位置に配置された場合、清掃ユニット30の高さ位置が、前記清掃位置調整範囲内における前記上限位置を超えて、前記退避位置まで上昇する。
【0080】
調整ダイヤル70は、ベース部321の後方側の面321Aに回転可能に支持されている。調整ダイヤル70は、表面に操作用の摘み70Aが設けられた円盤形状のダイヤル本体71と、ダイヤル本体71の前方側に取り付けられたロック部材72と、支軸77と、を有する。支軸77は、調整ダイヤル70の回転軸である。
【0081】
ダイヤル本体71に支軸77が取り付けられている。ダイヤル本体71の中心に貫通孔75が形成されており、また、ダイヤル本体71の後方側の側面には、貫通孔75と同心であって貫通孔75よりも外径の大きい凹状の座面部76が形成されている。また、ロック部材72にも支軸77を挿通させる貫通孔が形成されている。また、支軸77には、ダイヤル本体71の前方側に、留め金77Aが固定されている。支軸77の後方側の後端部にはネジ穴が形成されている。支軸77が貫通孔75に挿通された状態で、ビス79がネジ穴に螺着されることにより、留め金77Aとビス79の座金によってダイヤル本体71及びロック部材72に支軸77が固定される。
【0082】
ロック板65から前方へ隔てられた位置にバネ固定板91が配置されている。バネ固定板91は、ロック板65から前方へ所定間隔を隔てた状態でスペーサ及びビスなどによってロック板65に固定されている。また、バネ固定板91から前方へ隔てられた位置に軸規制板95が配置されている。軸規制板95は、バネ固定板91から前方へ所定間隔を隔てた状態でスペーサ及びビスなどによってバネ固定板91に固定されている。
【0083】
バネ固定板91に貫通孔92が形成されており、軸規制板95にも貫通孔96が形成されている。支軸77はこれらの貫通孔92,96に挿通されている。これにより、調整ダイヤル70が回転可能に支持される。
【0084】
図11に示すように、支軸77が貫通孔96を後方へ抜けないようにするために、支軸77の前方側の先端部771に留め金77Bが取り付けられている。この留め金77Bによって、支軸77が貫通孔96を後方へ抜けることが規制される。
【0085】
支軸77に回転カム80が固定されている。回転カム80は、バネ固定板91と軸規制板95との間に配置されている。
【0086】
図12は、
図11における切断面XII-XIIの断面図であり、回転カム80の断面形状が示されている。回転カム80は、支軸77から外周面までのリフト量が最も少ないカム面801と、前記リフト量が最も大きいカム面803とを含むカム部材である。カム面801からカム面803に至る面802は、徐々にリフト量が大きくなるように形成された湾曲状のカム面802である。調整ダイヤル70が前記第1規制位置に配置されている場合、カム面801が支持シャフト61に当接して支持される。また、調整ダイヤル70が前記第2規制位置に配置されている場合、カム面803が支持シャフト61に当接して支持される。
【0087】
調整ダイヤル70は、作業者によって操作される操作部材である。調整ダイヤル70が
図10に示す下げ方向D21又は上げ方向D22のいずれかに回転されると、回転カム80は同じ方向に回転動作する。つまり、調整ダイヤル70は、回転カム80の動作方向の力を回転カム80に入力するための操作部材である。調整ダイヤル70が前記第1位置に配置された状態で上げ方向D22へ回転されると、回転カム80が同方向に回転し、清掃ユニット30の高さ位置を前記清掃位置よりも上方の前記退避位置まで変更させることができる。
【0088】
本実施形態では、前記下げ方向D21は、
図10において調整ダイヤル70を時計回転方向へ回転させる方向であり、前記上げ方向D22は、調整ダイヤル70を反時計回転方向へ回転させる方向である。
【0089】
図11に示すように、ロック部材72は、ダイヤル本体71の外周面から径方向外側へ突出する突出片73を有している。突出片73は、調整ダイヤル70が下げ方向D21に回転されると同方向に回動し、上げ方向D22に回転されると同方向に回動する。
【0090】
突出片73には、その後方側の面から後方へ突出するロックピン74(本発明の突起部の一例)が設けられている。ロックピン74と複数の係合孔66によって、本発明の固定機構が実現されている。ロックピン74は、ロック板65に形成されたロック複数の係合孔66のいずれかに挿通して係合する。これにより、調整ダイヤル70の回転が規制され、ロックピン74が係合孔66に挿通された位置で調整ダイヤル70が回転方向に対してロック(固定)される。調整ダイヤル70がロックされることにより、支軸77に固定された後述の回転カム80も回転方向にロック(固定)される。なお、調整ダイヤル70が前記第1規制位置又は前記第2規制位置に配置された状態で、ロックピン74は、各位置に対応する係合孔66に挿通される。
【0091】
ベース部321の面321Aには、複数の係合孔66に対応する位置に複数の目盛りが記載されている。各目盛りは、調整ダイヤル70の回転方向に沿って周方向へ等角度間隔に記されている。
【0092】
図11に示すように、支軸77にコイルバネ78が設けられている。コイルバネ78は、その内孔に支軸77が挿通された状態で、ロック部材72とバネ固定板91との間に設けられている。コイルバネ78は、所謂圧縮バネであり、所定のばね力を生じるように圧縮された状態でロック部材72とバネ固定板91との間に設けられている。これにより、コイルバネ78は、他の外力が加えられていない状態で、ロック部材72を常に後方へ付勢する。この付勢力を受けることにより、ロック部材72は、ロックピン74が係合孔66に挿通された状態を維持する。つまり、調整ダイヤル70及び回転カム80の位置が保持される。
【0093】
例えば、調整ダイヤル70が前記第1規制位置に配置された状態で、調整ダイヤル70が前方へ押し込まれると、コイルバネ78が圧縮されて、ダイヤル本体71が前方へ移動する。これにより、
図13に示すように、係合孔66からロックピン74が抜き出されて、調整ダイヤル70及び回転カム80のロックが解除される。調整ダイヤル70が上げ方向D22へ回転されて、突出片73がストッパー68に当接する前記第2規制位置まで回転されると、回転カム80は、リフト量が最も大きいカム面803が支持シャフト61に対向する位置まで回転する(
図14参照)。このとき、清掃ユニット30は、前記退避位置まで上昇する。この状態で調整ダイヤル70を元の位置まで戻すと、ロックピン74が係合孔66に挿通されて、調整ダイヤル70及び回転カム80がその位置で固定され、清掃ユニット30も前記退避位置に保持される。
【0094】
また、調整ダイヤル70が前記第2規制位置に配置された状態で、調整ダイヤル70が前方へ押し込まれて下げ方向D21へ回転され、突出片73がストッパー67に当接する前記第1規制位置まで回転されると、回転カム80は、リフト量が最も小さいカム面801が支持シャフト61に対向する位置まで回転する。このとき、清掃ユニット30は、前記静止位置調整範囲における下限位置まで下降する。この状態で調整ダイヤル70を元の位置まで戻すと、ロックピン74が係合孔66に挿通されて、調整ダイヤル70及び回転カム80がその位置で固定され、清掃ユニット30も前記下限位置に保持される。
【0095】
なお、装置本体11に、支持ホルダ32を上方へ付勢する弾性部材が設けられていてもよい。前記弾性部材の付勢力(ばね力)は、清掃ユニット30の総重力による下方(重力方向)の力よりも小さいバネ力である。これにより、位置調整機構60による位置調整操作が行われる場合に、前記弾性部材の付勢力の補助を得ることにより、清掃ユニット30を軽い操作力で上方へ円滑に移動させることができる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態では、清掃装置10に位置調整機構60が設けられているため、清掃装置10による清掃時に、被清掃面である床面28に段差がある場合でも、吸気ノズル33が段差に当接したことにより生じる上向きの力によって清掃ユニット30が前記規制位置から上方へ持ち上げられる。これにより、吸気ノズル33と段差との強い衝突を回避して、吸気ノズル33の損傷を防止することができる。また、非清掃時に清掃装置10を走行させる場合は、前記段差に当接しない位置まで前記規制位置を上方へ変更することができる。これにより、非清掃時の走行において、吸気ノズル33が前記段差に当接することがなくなり、非清掃時の走行を前記段差によって阻害されることなく、円滑に走行させることができる。
【0097】
また、回転コロ336が清掃ユニット30に設けられているため、吸気ノズル33が段差に当接する前に回転コロ336が段差に当接し、その段差を乗り上げる。このとき、回転コロ336は、前記段差から上方向の外力を受け、この外力によって、清掃ユニット30全体が上方へ持ち上げられる。その結果、吸気ノズル33が前記段差に接触することが回避され、吸気ノズル33と前記段差との接触による損傷や、異常走行、転倒などを防止することができる。
【0098】
また、ダイヤルユニット62は、支持ホルダ32に回転操作可能に設けられており、ダイヤルユニット62の支軸77に回転カム80が取り付けられている。そのため、ユーザはダイヤルユニット62を操作することにより、清掃ユニット30の前記規制位置を容易に調整することができる。このため、例えば、非清掃時に清掃ユニット30を走行させる場合に、清掃ユニット30の吸気ノズル33を、走行時に段差と接触しない上方位置まで容易に退避させることができる。
【0099】
また、清掃ユニット30は、回転カム80が動作された位置で回転カム80を固定する固定機構を備えており、この固定機構は、支持ホルダ32に設けられたロック板65と、ロック板65に形成された複数の係合孔66に挿通可能なロックピン74とを有する。このような固定機構が設けられているため、いずれかの係合孔66にロックピン74を挿入させることにより、清掃ユニット30の上下方向の位置を任意の位置に容易に調整することができ、また、任意の位置に容易に固定することができる。
【0100】
また、前記固定機構には、弾性部材としてのコイルバネ78が含まれているため、係合孔66にロックピン74が挿入された状態をコイルバネ78の弾性力によって維持することができる。これにより、走行中による振動などによって前記固定機構による固定が解除されることがなくなり、安全走行可能な清掃装置10を実現することができる。
【0101】
また、本実施形態では、ダイヤルユニット62が支持ホルダ32のベース部321に取り付けられており、収集ボックス31が支持ホルダ32に取り付けられた状態で、ダイヤルユニット62が収集ボックス31によって隠される。このため、清掃装置10が使用されている間、つまり、清掃中或いは走行中において、ダイヤルユニット62が外部に露出されない。このため、清掃装置10の動作時にダイヤルユニット62が不用意に操作されることが防止され、清掃装置10の動作中の安全が保たれる。また、支持ホルダ32に対して着脱可能に構成された収集ボックス31を取り外すだけで、ダイヤルユニット62の調整ダイヤル70が操作可能なように露出される。そのため、ユーザは、調整ダイヤル70に対して容易にアクセスして、容易に調整ダイヤル70を操作することが可能である。
【0102】
なお、本実施形態では、清掃ユニット30に二つのダイヤルユニット62が設けられた構成を例示するが、本発明はこの構成に限られない。ダイヤルユニット62は、幅方向D3の中央に一つだけ設けられていてもよく、或いは、幅方向D3に並んで等間隔に3つ以上のダイヤルユニット62が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10:清掃装置、 11:装置本体、 12:走行部、
13:モータ、 16:収集ボックス、 23:床面、
30:清掃ユニット、 31:収集ボックス、 32:支持ホルダ、
33:吸気ノズル、 34:拡張ノズル、 35:カバー、
39:伝達機構、 50:スライド機構、 60:位置調整機構、
61:支持シャフト、 62:ダイヤルユニット、 65:ロック板、
66:係合孔、 67,68:ストッパー、 70:調整ダイヤル、
71:ダイヤル本体、 72:ロック部材、 73:突出片、
74:ロックピン、 77:支軸、 77A:留め金、
77B:留め金、 78:コイルバネ、 80:回転カム、
321:ベース部、 322:収容部、 323:開口、
324:底板、 325:ブラケット、 331:吸入口、
332:外周壁、 334:側板、 336:回転コロ、
801,802,803:カム面