(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、被検体情報計測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2021038895
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 晋哉
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/090686(WO,A1)
【文献】特開2001-314399(JP,A)
【文献】特開2009-297072(JP,A)
【文献】特開平04-221537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0306514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作入力を受け付ける操作部と、
被検体の医用画像を表示部に表示する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記医用画像上でかつ当該医用画像の上辺に基づく位置にベースとなる第1の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の回転を設定し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第2の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の回転を設定し、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度として演算
し、
前記第2の直線は、第3の直線及び第4の直線であり、
前記制御部は、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は前記医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第3の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第3の直線との間の角度を第1の角度として演算し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間、又は前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間を結ぶ第4の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第4の直線との間の角度を第2の角度として演算し、
前記医用画像は、前記被検体の股関節の超音波画像であり、
前記医用画像の上辺は、超音波が入射される辺であり、
前記第1の角度及び第2の角度は、前記股関節の脱臼を診断するための角度であり、
前記制御部は、前記第1の角度及び第2の角度から前記股関節の状態を示す分類結果情報を演算する医用画像診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の位置及び回転を設定し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の位置及び回転を設定する請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の角度、前記第2の角度及び前記分類結果情報を前記表示部に表示する請求項
1又は2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度を示す角度位置情報を前記医用画像上の対応する位置に表示する請求項1から
3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記デフォルト表示する第2の直線の方向を、前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間の方向、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間の方向との設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された第2の直線の方向の設定情報に基づいて、前記第2の直線をデフォルト表示する請求項1から
4のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記操作部は、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度とする設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された第2の直線の角度の大きい方又は小さい方の設定情報に基づいて、前記第1の直線と当該第2の直線との間の角度を演算する請求項1から
5のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記操作部は、前記デフォルト表示する第1の直線及び第2の直線の位置、並びに第1の直線に対する第2の直線のデフォルト角度の設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された第1の直線及び第2の直線の位置並びにデフォルト角度の設定情報に基づいて、前記第1の直線及び前記第2の直線をデフォルト表示する請求項1から
6のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記操作部は、前記医用画像の回転の指示情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された医用画像の回転の指示情報に基づいて、前記医用画像、前記第1の直線及び前記第2の直線を回転して前記表示部に表示する請求項1から
7のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記操作部は、前記被検体の診療科及び診断部位の少なくとも一方の設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された診療科及び診断部位の少なくとも一方の設定情報に基づいて、前記第1の直線及び前記第2の直線をデフォルト表示する請求項1から
8のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
制御部が、被検体の医用画像を表示部に表示する制御工程を含み、
前記制御工程において、前記制御部は、前記医用画像上でかつ当該医用画像の上辺に基づく位置にベースとなる第1の直線を前記表示部にデフォルト表示し、操作入力を受け付ける操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第2の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度として演算
し、
前記第2の直線は、第3の直線及び第4の直線であり、
前記制御工程において、前記制御部は、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は前記医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第3の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第3の直線との間の角度を第1の角度として演算し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間、又は前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間を結ぶ第4の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第4の直線との間の角度を第2の角度として演算し、
前記医用画像は、前記被検体の股関節の超音波画像であり、
前記医用画像の上辺は、超音波が入射される辺であり、
前記第1の角度及び第2の角度は、前記股関節の脱臼を診断するための角度であり、
前記制御工程において、前記制御部は、前記第1の角度及び第2の角度から前記股関節の状態を示す分類結果情報を演算する被検体情報計測方法。
【請求項11】
コンピューターを、
被検体の医用画像を表示部に表示する制御部、
として機能させ、
前記制御部は、前記医用画像上でかつ当該医用画像の上辺に基づく位置にベースとなる第1の直線を前記表示部にデフォルト表示し、操作入力を受け付ける操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第2の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度として演算
し、
前記第2の直線は、第3の直線及び第4の直線であり、
前記制御部は、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は前記医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第3の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第3の直線との間の角度を第1の角度として演算し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間、又は前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間を結ぶ第4の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第4の直線との間の角度を第2の角度として演算し、
前記医用画像は、前記被検体の股関節の超音波画像であり、
前記医用画像の上辺は、超音波が入射される辺であり、
前記第1の角度及び第2の角度は、前記股関節の脱臼を診断するための角度であり、
前記制御部は、前記第1の角度及び第2の角度から前記股関節の状態を示す分類結果情報を演算するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像診断装置、被検体情報計測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を被検体内部に照射し、その反射波を受信して解析することにより被検体内部の検査を行う超音波診断装置が普及している。超音波診断装置は、被検体を非破壊、非侵襲で調べることができるので、医療目的の検査や建築構造物内部の検査、種々の用途に広く用いられている。
【0003】
超音波診断装置を用いて、乳幼児、小児の先天性股関節脱臼を診断する方法が知られている。この診断方法では、超音波診断装置で得られた被検体としての乳幼児、小児の股関節の断層画像中の股関節の所定の骨を基準として引いた3本の補助線に基づく2つの角度α,βを用いて、当該被検体の先天性股関節脱臼を診断する。
【0004】
例えば、表示モニタ上に表示された被検体の股関節の断層画像内において4個の点位置をオペレーター(操作者)が操作入力して特定指示し、各点位置を結ぶ3つの直線の間の角度α,βを演算し、断層画像が表示された表示モニタの一部に、あるいは断層画像が再び表示される前に、断層画像と切り替えて、断層画像に対応する模式図を表示し、模式図に、特定される複数の点位置を決定する決定順位を指示する順位指示表示を行う超音波診断装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の超音波診断装置では、操作入力により特定指示する点位置が多数になり、その各点位置を予め定められた順位に従って特定指示させないと、所望の角度が演算されなく、オペレーターは特定指示する点位置の順位を正確に認識しかつ記憶しておかなければならないという繁雑さがあった。
【0007】
本発明の課題は、被検体情報としての角度を容易かつ正確に計測することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の医用画像診断装置は、
操作入力を受け付ける操作部と、
被検体の医用画像を表示部に表示する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記医用画像上でかつ当該医用画像の上辺に基づく位置にベースとなる第1の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の回転を設定し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第2の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の回転を設定し、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度として演算し、
前記第2の直線は、第3の直線及び第4の直線であり、
前記制御部は、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は前記医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第3の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第3の直線との間の角度を第1の角度として演算し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間、又は前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間を結ぶ第4の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第4の直線との間の角度を第2の角度として演算し、
前記医用画像は、前記被検体の股関節の超音波画像であり、
前記医用画像の上辺は、超音波が入射される辺であり、
前記第1の角度及び第2の角度は、前記股関節の脱臼を診断するための角度であり、
前記制御部は、前記第1の角度及び第2の角度から前記股関節の状態を示す分類結果情報を演算する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医用画像診断装置において、
前記制御部は、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の位置及び回転を設定し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の位置及び回転を設定する
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の医用画像診断装置において、
前記制御部は、前記第1の角度、前記第2の角度及び前記分類結果情報を前記表示部に表示する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像診断装置において、
前記制御部は、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度を示す角度位置情報を前記医用画像上の対応する位置に表示する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の医用画像診断装置において、
前記操作部は、前記デフォルト表示する第2の直線の方向を、前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間の方向、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間の方向との設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された第2の直線の方向の設定情報に基づいて、前記第2の直線をデフォルト表示する。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の医用画像診断装置において、
前記操作部は、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度とする設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された第2の直線の角度の大きい方又は小さい方の設定情報に
基づいて、前記第1の直線と当該第2の直線との間の角度を演算する。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の医用画像診断装置において、
前記操作部は、前記デフォルト表示する第1の直線及び第2の直線の位置、並びに第1の直線に対する第2の直線のデフォルト角度の設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された第1の直線及び第2の直線の位置並びにデフォルト角度の設定情報に基づいて、前記第1の直線及び前記第2の直線をデフォルト表示する。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の医用画像診断装置において、
前記操作部は、前記医用画像の回転の指示情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された医用画像の回転の指示情報に基づいて、前記医用画像、前記第1の直線及び前記第2の直線を回転して前記表示部に表示する。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の医用画像診断装置において、
前記操作部は、前記被検体の診療科及び診断部位の少なくとも一方の設定情報の入力を受け付け、
前記制御部は、前記入力された診療科及び診断部位の少なくとも一方の設定情報に基づいて、前記第1の直線及び前記第2の直線をデフォルト表示する。
【0021】
請求項10に記載の発明の被検体情報計測方法は、
制御部が、被検体の医用画像を表示部に表示する制御工程を含み、
前記制御工程において、前記制御部は、前記医用画像上でかつ当該医用画像の上辺に基づく位置にベースとなる第1の直線を前記表示部にデフォルト表示し、操作入力を受け付ける操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第2の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度として演算し、
前記第2の直線は、第3の直線及び第4の直線であり、
前記制御工程において、前記制御部は、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は前記医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第3の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第3の直線との間の角度を第1の角度として演算し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間、又は前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間を結ぶ第4の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第4の直線との間の角度を第2の角度として演算し、
前記医用画像は、前記被検体の股関節の超音波画像であり、
前記医用画像の上辺は、超音波が入射される辺であり、
前記第1の角度及び第2の角度は、前記股関節の脱臼を診断するための角度であり、
前記制御工程において、前記制御部は、前記第1の角度及び第2の角度から前記股関節の状態を示す分類結果情報を演算する。
【0022】
請求項11に記載の発明のプログラムは、
コンピューターを、
被検体の医用画像を表示部に表示する制御部、
として機能させ、
前記制御部は、前記医用画像上でかつ当該医用画像の上辺に基づく位置にベースとなる第1の直線を前記表示部にデフォルト表示し、操作入力を受け付ける操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第1の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第2の直線を前記表示部にデフォルト表示し、前記操作部を介する操作入力に応じて前記表示される第2の直線の位置及び回転を設定し、前記第1の直線と前記第2の直線との間の角度のうち大きい方又は小さい方を当該第1の直線及び当該第2の直線との間の角度として演算し、
前記第2の直線は、第3の直線及び第4の直線であり、
前記制御部は、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の右上の領域と左下の領域との間、又は前記医用画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第3の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第3の直線との間の角度を第1の角度として演算し、前記第1の直線との交点を基準として、前記医用画像上でかつ当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間、又は前記医用画像の右上の領域と左下の領域との間を結ぶ第4の直線をデフォルト表示し、前記第1の直線と前記第4の直線との間の角度を第2の角度として演算し、
前記医用画像は、前記被検体の股関節の超音波画像であり、
前記医用画像の上辺は、超音波が入射される辺であり、
前記第1の角度及び第2の角度は、前記股関節の脱臼を診断するための角度であり、
前記制御部は、前記第1の角度及び第2の角度から前記股関節の状態を示す分類結果情報を演算する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被検体情報としての角度を容易かつ正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態の超音波診断装置の外観の概略図である。
【
図2】超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】被検体の第1のスキャン状態を示す図である。
【
図4】第1のスキャン状態の被検体の断層図である。
【
図5】被検体の断層図における角度α,βを示す図である。
【
図6】第1のスキャン状態の被検体の超音波画像を示す図である。
【
図7】被検体の第2のスキャン状態を示す図である。
【
図8】第2のスキャン状態の被検体の断層図である。
【
図9】第2のスキャン状態の被検体の超音波画像を示す図である。
【
図10】被検体の第3のスキャン状態を示す図である。
【
図12】股関節情報計測処理を示すフローチャートである。
【
図14】(a)は、回転前の超音波画像を示す図である。(b)は、時計回りに90°回転した超音波画像を示す図である。(c)は、時計回りに180°回転した超音波画像を示す図である。(d)は、時計回りに270°回転した超音波画像を示す図である。
【
図15】(a)は、第1の超音波画像を示す図である。(b)は、第2の超音波画像を示す図である。(c)は、第3の超音波画像を示す図である。
【
図16】(a)は、第4の超音波画像を示す図である。(b)は、第5の超音波画像を示す図である。(c)は、第6の超音波画像を示す図である。
【
図17】(a)は、第7の超音波画像を示す図である。(b)は、第8の超音波画像を示す図である。(c)は、第9の超音波画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0026】
図1~
図17を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本実施の形態の装置構成を説明する。
図1は、本実施の形態の超音波診断装置100の外観の概略図である。
図2は、超音波診断装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態の医用画像診断装置としての超音波診断装置100は、病院などの医療施設の診察室などに移動可能に設置され、医師、技師などの操作者に操作される超音波診断装置である。本実施の形態では、例えば、超音波診断装置100は、小児科の診察室に設置され、患者としての乳幼児、小児の生体である被検体の超音波画像をスキャンするものとして説明する。
【0028】
図1、
図2に示すように、超音波診断装置100は、超音波診断装置本体1と、超音波探触子2と、を備える。超音波診断装置本体1は、超音波探触子2に接続される。超音波探触子2は、患者の生体などの被検体内に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体内で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波探触子2は、超音波探触子本体2Aと、ケーブル2Bと、コネクター2Cと、を有する。超音波探触子本体2Aは、超音波を送受信する超音波探触子2のヘッダ部である。ケーブル2Bは、超音波探触子本体2A及びコネクター2Cの間に接続され、超音波探触子本体2A用の駆動信号及び超音波の受信信号が流れるケーブルである。コネクター2Cは、超音波診断装置本体1のレセプタクルのコネクター(図示略)に接続するためのプラグのコネクターである。
【0029】
超音波診断装置本体1は、コネクター2C、ケーブル2Bを介して、超音波探触子本体2Aと接続され、超音波探触子本体2Aに電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子本体2Aに被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子本体2Aにて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像データとして画像化する。
【0030】
超音波探触子本体2Aは、先端側に振動子2a(
図2参照)を備えており、振動子2aは、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2としてリニア走査方式の電子スキャンプローブを採用するものとするが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。超音波診断装置本体1と超音波探触子2(超音波探触子本体2A)との通信は、ケーブル2Bを介する有線通信に代えて、UWB(Ultra Wide Band)などの無線通信により行うこととしてもよい。
【0031】
また、超音波探触子本体2Aは、プローブマーク2b(
図2参照)を有する。プローブマーク2bは、表示された超音波画像の左右のいずれか一方に表示される後述するプローブマークPMに対応し、方位方向の一端に配置された突起状のマークである。プローブマーク2bは、表示された超音波画像の左又は右が超音波探触子2(超音波探触子本体2A)の方位方向のどちら側になるかを、超音波探触子本体2Aを把持する操作者に認識させる。
【0032】
図1に示すように、超音波診断装置本体1は、操作部としての操作入力部11と、表示部17と、を有する。操作入力部11は、操作者からの操作入力を受け付ける。操作入力部11は、押しボタン、エンコーダー(回転つまみ)、レバースイッチ、ジョイスティック、トラックボール、キーボードや、それらを組み合わせたマルチファンクションスイッチなどであるものとする。
【0033】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイなどの表示パネルを有し、当該表示パネルの表示画面上に各種表示情報を表示する。なお、表示部17は、操作者のタッチ入力を受け付けるタッチパネルを有する構成としてもよい。
【0034】
ついで、
図2を参照して、超音波診断装置100の機能構成を説明する。
図2に示すように、超音波診断装置本体1は、例えば、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、画像処理部15と、表示制御部16と、表示部17と、制御部18と、記憶部19と、を備える。
【0035】
操作入力部11は、操作者からの各種操作入力を受け付け、その操作情報を制御部18に出力する。
【0036】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2に電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備える。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させ、送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。上述のように構成された送信部12は、例えば、超音波探触子2に配列された複数(例えば、192個)の振動子2aのうちの連続する一部(例えば、64個)を駆動して送信超音波を発生させる。そして、送信部12は、送信超音波を発生させる毎に駆動する振動子2aを方位方向(走査方向)にずらすことで走査(スキャン)を行う。
【0037】
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2から電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ-デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0038】
画像生成部14は、制御部18の制御に従って、受信部13からの音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、受信エネルギーとしての輝度値を有する画素からなるB(Brightness)モード画像データを生成することができる。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部14は、画像モードがBモードの超音波画像データとしてのBモード画像データの他、A(Amplitude)モード、M(Motion)モード、ドプラ法による画像モード(カラードプラモードなど)など、他の画像モードの超音波画像データが生成できるものであってもよい。
【0039】
画像処理部15は、制御部18の制御に従って、設定中の各種画像パラメーターに応じて、画像生成部14から出力されたBモード画像データに画像処理を施す。また、画像処理部15は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部15aを備える。画像処理部15は、制御部18の制御に従って、画像処理を施したBモード画像データをフレーム単位で画像メモリー部15aに記憶する。フレーム単位での画像データを超音波画像データあるいはフレーム画像データということがある。画像処理部15は、制御部18の制御に従って、上述したようにして生成された画像データを順に表示制御部16に出力する。
【0040】
表示制御部16は、制御部18の制御に従って、画像処理部15より受信した画像データを表示用の画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0041】
表示部17は、制御部18の制御に従って、表示制御部16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像の表示を行い、また各種表示情報の表示を行う。
【0042】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROMに記憶されているシステムプログラムなどの各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100の各部の動作を制御する。ROMは、半導体などの不揮発メモリーなどにより構成され、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、ガンマテーブルなどの各種データなどを記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0043】
記憶部19は、超音波画像データなどの情報を書き込み及び読み出し可能に記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記憶部である。また、記憶部19には、後述するType条件テーブル190が記憶されているものとする。
【0044】
超音波診断装置100が備える各部について、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能は、集積回路などのハードウェア回路として実現することができる。集積回路とは、例えばLSI(Large Scale Integration)であり、LSIは集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサーで実現してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。また、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能をソフトウェアにより実行するようにしてもよい。この場合、このソフトウェアは一つ又はそれ以上のROMなどの記憶媒体、光ディスク、又はハードディスクなどに記憶されており、このソフトウェアが演算処理器により実行される。
【0045】
つぎに、
図3~
図10を参照して、乳幼児、小児の被検体SUのスキャン及び(先天性の)股関節脱臼の診断方法を説明する。
図3は、被検体SUの第1のスキャン状態を示す図である。
図4は、第1のスキャン状態の被検体SUの断層図である。
図5は、被検体SUの断層図における角度α,βを示す図である。
図6は、第1のスキャン状態の被検体SUの超音波画像310を示す図である。
図7は、被検体SUの第2のスキャン状態を示す図である。
図8は、第2のスキャン状態の被検体SUの断層図である。
図9は、第2のスキャン状態の被検体SUの超音波画像320を示す図である。
図10は、被検体SUの第3のスキャン状態を示す図である。
【0046】
ここでは、超音波診断装置100を用いて、被検体SUをスキャンして超音波画像(Bモード画像)としての断層画像を取得し、取得した断層画像を用いて、股関節脱臼の診断に必要な被検体情報として、第1の角度としての角度αと、第2の角度としての角度βと、を計測し、被検体SUの股関節脱臼の状態を示す分類結果情報としてのTypeを演算する。ここでは、被検体SUのスキャン状態として、超音波探触子2を被検体SUに当てる向き、被検体SUの向きにより、第1~第3のスキャン状態が存在するものとする。
【0047】
図3に示すように、第1のスキャン状態として、診察室、診察台に対応してx軸、y軸、z軸をとり、被検体SUの股関節をスキャンする状態を説明する。被検体SUは、頭が-y方向に向けられ、足が+y方向に向けられている。被検体SUの右(右足)の股関節をスキャンする場合に、超音波を-x方向に出射するように、被検体SUの右足の股関節の+x側から-x方向に向けて超音波探触子本体2Aの先端部が被検体SUに当てられる。このとき、超音波探触子本体2Aの向きは、プローブマーク2bが-y方向(頭側)となるように設定されている。この超音波探触子2の配置状態をポジションPO1とする。
【0048】
同様に、
図3に示すように、第1のスキャン状態として、被検体SUの左(左足)の股関節をスキャンする場合に、超音波を+x方向に出射するように、被検体SUの左足の股関節の-x側から+x方向に向けて超音波探触子本体2Aの先端部が被検体SUに当てられる。このとき、超音波探触子本体2Aの向きは、プローブマーク2bが-y方向(頭側)となるように設定されている。この超音波探触子2の配置状態をポジションPO2とする。
【0049】
図4に示すように、第1のスキャン状態のポジションPO1で被検体SUをスキャンする場合に、例えば、被検体SUの右足の股関節の断層図の当該右足の股関節の拡大断層図で、当該右足の股関節は、大腿骨頭201と、腸骨外壁202と、骨性臼蓋嘴203と、腸骨下端204と、ラブルム(股関節唇)205と、を有する。
【0050】
図5に示すように、
図4の右足の股関節の断層図において、3本の補助線a,b,cを引く。第1の直線としての補助線aは、基線(ベースとなる直線)であり、軟骨膜と腸骨外壁202とが接する点を通り、腸骨外壁202と平行な線である。第2の直線(第3の直線)としての補助線bは、骨性臼蓋線であり、骨性臼蓋嘴203と腸骨下端204とを結ぶ線である。第2の直線(第4の直線)としての補助線cは、軟骨性臼蓋線であり、骨性臼蓋嘴203とラブルム205の中心とを結ぶ線である。また、
図5には、超音波探触子2から出射された超音波U1及びその入射方向を示している。
【0051】
補助線aと補助線bとの間の角度を角度αとする。補助線aと補助線bとの間の角度を角度βとする。
図5のスキャンで得られる超音波画像データにより、
図6に示す超音波画像310が表示部17に表示される。超音波画像310は、被検体SUの右足の股関節の断層画像(Bモード画像)であり、操作者の操作入力により補助線a,b,cが移動、回転、確定され、角度α,βが確定される。
【0052】
また、超音波画像310は、プローブマークPMを有する。プローブマークPMは、超音波探触子2のプローブマーク2bの位置に対応する表示マークである。
図3のポジションPO1において、プローブマーク2bが-y方向にあることと、超音波U1の入射方向と、に対応して、プローブマークPMは、超音波画像310の右上の位置に配置されている。また、超音波の入射方向の説明のため、表示はされないが、
図6に、超音波画像310のスキャン時に出射された超音波U1を示している。超音波画像310の右側は、被検体SUの頭側に対応する。超音波画像310の左側は、被検体SUの足側に対応する。また、補助線a,b,cは、一点の交点IPで交わる。また、角度αを求める補助線bは、交点IPを基準として、超音波画像310の右上の領域の点と左下の領域の点とを結ぶ直線となる。角度βを求める補助線cは、交点IPを基準として、超音波画像310の左上の領域の点と右下の領域の点とを結ぶ直線となる。なお、以降の記載では、説明を簡単にするために、補助線a,b,cが一点の交点IPで交わる場合を説明するが、これに限定されるものではない。例えば、補助線a,bの交点と、補助線a,cの交点とは、同じ点にならない場合もある。
【0053】
また、下記の表Iにより、Graf法による被検体の股関節の状態の分類(Type)が知られている。
【表1】
【0054】
表Iに示すように、角度α,βの値に応じて、Typeは、正常発達のI(Ia,Ib)、未発達のIIa(IIa+,IIa-)、骨化遅延のII(IIb,IIc)、非求心性のD、脱臼のIII(IIIa,IIIb)、高位脱臼のIVがある。
図6の角度α,βの値と、表Iとに応じて、被検体SUの右足の股関節のTypeが得られる。
【0055】
なお、第1のスキャン状態のポジションPO2で被検体SUをスキャンする場合にも、
図4と同様の被検体SUの左足の股関節の断層図の当該左足の股関節の拡大断層図において、補助線a,b,c、角度α,βを得ることが必要になる。このため、
図6と同様の超音波画像310が表示され、補助線a,b,cが引かれ、角度α,βの値と、表Iとに応じて、被検体SUの左足の股関節のTypeが得られる。
【0056】
ついで、
図7に示すように、第2のスキャン状態として、診察室、診察台に対応してx軸、y軸、z軸をとり、被検体SUの股関節をスキャンする状態を説明する。被検体SUは、第1のスキャン状態とは逆に、頭が+y方向に向けられ、足が-y方向に向けられている。被検体SUの右足の股関節をスキャンする場合に、超音波を+x方向に出射するように、被検体SUの右足の股関節の-x側から+x方向に向けて超音波探触子本体2Aの先端部が被検体SUに当てられる。このとき、超音波探触子本体2Aの向きは、第1のスキャン状態と同様に、プローブマーク2bが-y方向(足側)となるように設定されている。この超音波探触子2の配置状態をポジションPO3とする。
【0057】
同様に、
図7に示すように、第2のスキャン状態として、被検体SUの左足の股関節をスキャンする場合に、超音波を-x方向に出射するように、被検体SUの左足の股関節の+x側から-x方向に向けて超音波探触子本体2Aの先端部が被検体SUに当てられる。このとき、超音波探触子本体2Aの向きは、プローブマーク2bが+y方向(足側)となるように設定されている。この超音波探触子2の配置状態をポジションPO4とする。
【0058】
図8に示すように、第2のスキャン状態のポジションPO4で被検体SUをスキャンする場合に、例えば、被検体SUの左足の股関節の断層図の当該左足の股関節の拡大断層図で、当該左足の股関節は、大腿骨頭201と、腸骨外壁202と、骨性臼蓋嘴203と、腸骨下端204と、ラブルム(股関節唇)205と、を有する。
【0059】
第2のスキャン状態のポジションPO4のスキャンで得られる超音波画像データにより、
図9に示す超音波画像320が表示部17に表示される。超音波画像320は、被検体SUの左足の股関節の断層画像(Bモード画像)であり、操作者の操作入力により補助線a,b,cが移動、回転、確定され、角度α,βが確定される。
【0060】
また、超音波画像320は、プローブマークPMを有する。
図7のポジションPO4において、プローブマーク2bが-y方向にあることと、超音波U1の入射方向とに対応して、プローブマークPMは、超音波画像320の右上の位置に配置されている。また、超音波の入射方向の説明のため、表示はされないが、
図9に、超音波画像320のスキャン時に出射された超音波U1を示している。超音波画像320の右側は、被検体SUの足側に対応する。超音波画像320の左側は、被検体SUの頭側に対応する。また、角度αを求める補助線bは、交点IPを基準として、超音波画像320の左上の領域の点と右下の領域の点とを結ぶ直線となる。角度βを求める補助線cは、交点IPを基準として、超音波画像320の右上の領域の点と左下の領域の点とを結ぶ直線となる。
【0061】
なお、第2のスキャン状態のポジションPO3で被検体SUをスキャンする場合にも、
図8と同様の被検体SUの右足の股関節の断層図の当該右足の股関節の拡大断層図において、補助線a,b,c、角度α,βを得ることが必要になる。このため、
図9と同様の超音波画像320が表示され、補助線a,b,cが引かれ、角度α,βの値と、表Iとに応じて、被検体SUの右足の股関節のTypeが得られる。
【0062】
ついで、
図10に示すように、第3のスキャン状態として、診察室、診察台に対応してx軸、y軸、z軸をとり、被検体SUの股関節をスキャンする状態を説明する。被検体SUは、第1のスキャン状態と同様に、頭が-y方向に向けられ、足が+y方向に向けられている。被検体SUの右足の股関節をスキャンする場合に、超音波を-x方向に出射するように、被検体SUの右足の股関節の+x側から-x方向に向けて超音波探触子本体2Aの先端部が被検体SUに当てられる。このとき、超音波探触子本体2Aの向きは、第1のスキャン状態と逆に、プローブマーク2bが+y方向(足側)となるように設定されている。この超音波探触子2の配置状態をポジションPO5とする。
【0063】
同様に、
図10に示すように、被検体SUの左足の股関節をスキャンする場合に、超音波を+x方向に出射するように、被検体SUの左足の股関節の-x側から+x方向に向けて超音波探触子本体2Aの先端部が被検体SUに当てられる。このとき、超音波探触子本体2Aの向きは、プローブマーク2bが+y方向(足側)となるように設定されている。この超音波探触子2の配置状態をポジションPO6とする。
【0064】
第3のスキャン状態のポジションPO5で被検体SUをスキャンする場合に、第3のスキャン状態のポジションPO5のスキャンで得られる超音波画像データにより、
図9に示す超音波画像320が表示部17に表示される。超音波画像320は、被検体SUの左足の股関節の断層画像(Bモード画像)であり、操作者の操作入力により補助線a,b,cが移動、回転、確定され、角度α,βが確定される。
【0065】
なお、第3のスキャン状態のポジションPO6で被検体SUをスキャンする場合にも、
図9と同様の超音波画像320が表示され、補助線a,b,cが引かれ、角度α,βの値と、表Iとに応じて、被検体SUの左足の股関節のTypeが得られる。
【0066】
つぎに、
図11を参照して、記憶部19に記憶される情報を説明する。
図11は、Type条件テーブル190を示す図である。
【0067】
図11に示すように、記憶部19には、Type条件テーブル190が記憶されている。Type条件テーブル190は、Type191と、α192と、β193と、の項目(カラム)を有する。Type191は、表Iに示す股関節の状態の分類(Type)である。表Iでは、TypeがI~IVの多数の状態に分類されているが、Type191では、一例として、角度α,βのみから状態の判断に必要な分類として、Ia(正常発達)と、II(未発達)と、III/IV(脱臼/高位脱臼)と、の3つの分類とした。
【0068】
α192は、Type191に対応する角度αの条件である。β193は、Type191に対応する角度βの条件である。
【0069】
つぎに、
図12~
図17を参照して、超音波診断装置100の動作を説明する。
図12は、股関節情報計測処理を示すフローチャートである。
図13は、角度α開始方向設定画面301を示す図である。
図14(a)は、回転前の超音波画像330を示す図である。
図14(b)は、時計回りに90°回転した超音波画像340を示す図である。
図14(c)は、時計回りに180°回転した超音波画像350を示す図である。
図14(d)は、時計回りに270°回転した超音波画像360を示す図である。
図15(a)は、超音波画像401を示す図である。
図15(b)は、超音波画像402を示す図である。
図15(c)は、超音波画像403を示す図である。
図16(a)は、超音波画像404を示す図である。
図16(b)は、超音波画像405を示す図である。
図16(c)は、超音波画像406を示す図である。
図17(a)は、超音波画像407を示す図である。
図17(b)は、超音波画像408を示す図である。
図17(c)は、超音波画像409を示す図である。
【0070】
超音波診断装置100を用いて、医師などの操作者が、乳幼児の被検体の先天性の股関節脱臼を診断する場合を説明する。超音波診断装置100において、例えば、操作入力部11を介して操作者から股関節情報計測処理の実行指示が入力されたことをトリガーとして、制御部18は、ROMに記憶された股関節情報計測プログラムに従い、股関節情報計測処理を実行する。
【0071】
図12に示すように、まず、制御部18は、送信部12、受信部13、画像生成部14、画像処理部15、表示制御部16、表示部17を制御して、超音波探触子2から超音波をリアルタイムに送受信させ、被写体で反射された受信信号に応じた超音波画像データ(Bモード画像データ)を生成して、生成された超音波画像データに基づくライブの超音波画像(Bモード画像)を表示部17に表示し、操作入力部11を介して、操作者からフリーズの入力を受け付け、フリーズした静止画の超音波画像を表示部17に表示開始する(ステップS10)。フリーズ前に、操作者は、超音波探触子2の超音波探触子本体2Aの先端を被写体に当てている。
【0072】
そして、制御部18は、角度α開始方向設定画面を表示部17に表示し、操作入力部11を介して操作者からの角度α開始方向の設定入力を受け付ける(ステップS11)。ステップS11では、例えば、
図13に示す角度α開始方向設定画面301が表示されるものとする。
【0073】
角度α開始方向設定画面301は、超音波画像上で、角度αを設定するための補助線bを、デフォルト表示として、交点IPを基準として、超音波画像上の左上の領域の点と右下の領域の点とを結ぶ(左上-右下)直線を配置する「左」と、超音波画像上の右上の領域の点と左下の領域の点とを結ぶ(右上-左下)直線を配置する「右」と、の角度α開始方向の入力を受け付ける設定画面である。例えば、
図6の超音波画像310に対応する第1のスキャン状態では、角度α開始方向が「右」に設定入力される。
図9の超音波画像320に対応する第2、第3のスキャン状態では、角度α開始方向が「左」に設定入力される。
【0074】
そして、制御部18は、操作入力部11を介する操作者からの表示中の超音波画像の回転の指示入力に応じて、補助線aを表示部17の表示画面上に配置して表示する(ステップS12)。
【0075】
ここで、股関節情報計測処理において、被検体のスキャンにより表示部17に表示される超音波画像は、適宜、操作入力部11を介する操作者からの超音波画像の回転の指示入力により、表示部17の表示画面上で回転して表示させることが可能である。
【0076】
例えば、
図14(a)に示す超音波画像330が表示部17の表示画面に表示されているケースを考える。
図14(a)では、超音波の入射方向を分かりやすくするため、超音波画像330のスキャン時に入射された超音波U1を示しているが、表示画面上には表示されていない。また、超音波画像330は、分かりやすくするため、補助線a,b,cが表示されている状態としたが、後述するように、股関節情報計測処理において、補助線a,b,cは順に表示及び調整(移動、回転及び確定)される。また、
図14(a)自体の上下左右は、表示部17の表示画面の上下左右とする。これらの
図14(a)の事項は、
図14(b)~
図14(d)でも同様である。
【0077】
超音波画像330は、
図6の超音波画像310と同様に、第1のスキャン状態の超音波画像(Bモード画像)であって、回転の標準の状態(回転角度が0°)とする。このため、超音波画像330は、ステップS11で角度α開始方向に「右」が入力される超音波画像例とする。
【0078】
また、超音波画像330の表示中に、操作入力部11を介して操作者から超音波画像の時計回りの90°回転の指示入力がされると、
図14(b)に示す超音波画像340が表示部17の表示画面に表示される。超音波画像340は、超音波画像330を時計回りに90°回転させた第1のスキャン状態の超音波画像(Bモード画像)である。
【0079】
また、超音波画像330の表示中に、操作入力部11を介して操作者から時計回りの180°回転の指示入力がされると、
図14(c)に示す超音波画像350が表示部17の表示画面に表示される。超音波画像350は、超音波画像330を時計回りに180°回転させた第1のスキャン状態の超音波画像(Bモード画像)である。
【0080】
また、超音波画像330の表示中に、操作入力部11を介して操作者から時計回りの270°回転の指示入力がされると、
図14(d)に示す超音波画像360が表示部17の表示画面に表示される。超音波画像360は、超音波画像330を時計回りに270°回転させた第1のスキャン状態の超音波画像(Bモード画像)である。
【0081】
ステップS12において、例えば、超音波画像330では、補助線aが被検体の体表(超音波画像330の上辺)に基づく位置として当該上辺に平行な位置に配置されてデフォルト表示される。超音波画像340では、補助線aが被検体の体表(超音波画像340の右辺)に平行な位置に配置されてデフォルト表示される。超音波画像350では、補助線aが被検体の体表(超音波画像350の下辺)に平行な位置に配置されてデフォルト表示される。超音波画像360では、補助線aが被検体の体表(超音波画像350の左辺)に平行な位置に配置されてデフォルト表示される。
【0082】
そして、制御部18は、操作入力部11を介して、操作者からの、表示中の補助線aの(平行)移動及び回転の操作入力を受け付け、その操作情報に応じて補助線aを移動及び回転して表示部17に表示する(ステップS13)。ステップS13では、例えば、補助線aは、操作入力部11のトラックボール、ボタンなどにより選択及び移動が入力され、操作入力部11のエンコーダーなどにより回転が入力され、後述する補助線b,cの移動及び回転の操作入力でも同様である。ステップS13において、操作者は、ライブの超音波画像の股関節の骨を参照し、当該股関節の骨に対応するように補助線aの移動及び回転の操作入力を行う。
【0083】
そして、制御部18は、操作入力部11を介して、操作者から、表示中の補助線aの位置の確定入力を受け付けたか否かにより、表示中の補助線aを確定するか否かを判別する(ステップS14)。表示中の補助線aを確定しない場合(ステップS14;NO)、ステップS13に移行される。
【0084】
表示中の補助線aを確定する場合(ステップS14;YES)、制御部18は、ステップS11で入力された角度α開始方向と、操作入力部11を介する操作者からの表示中の超音波画像の回転の指示入力と、に応じて、ステップS14で確定された補助線aから予め設定されたデフォルト角度(デフォルト角度α)の位置の補助線bとデフォルト角度としての角度αとを表示部17の表示画面上に配置して表示する(ステップS15)。ステップS15のデフォルト角度αは、例えば、60°とするが、この値に限定されるものではない。また、ステップS15のデフォルト角度αは、例えば、操作入力部11を介する操作者からの操作入力に応じて、あらかじめ設定されているものとする。また、ステップS15のデフォルト角度αは、補助線aと補助線bとの間の角度のうち、小さい方であるものとする。また、ステップS15において、制御部18は、角度α(デフォルト角度α)に対応する位置として、補助線aと補助線bとの間に配置した角度位置情報としての「α」の文字を表示する。
【0085】
図14(a)の超音波画像330では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線bは、補助線aと仮の交点IPで交わりかつ補助線aから反時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像330上の右上-左下の方向(交点IPを基準として、右上の領域の点と左下の領域の点とを結ぶ方向)(表示画面の右上-左下の方向)に配置されてデフォルト表示される。また、
図14(b)の超音波画像340では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線bは、補助線aと仮の交点IPで交わりかつ補助線aから反時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像340上の右上-左下の方向(表示画面の右下-左上の方向)に配置されてデフォルト表示される。また、
図14(c)の超音波画像350では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線bは、補助線aと仮の交点IPで交わりかつ補助線aから反時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像350上の右上-左下の方向(表示画面の左下-右上の方向)に配置されてデフォルト表示される。また、
図14(d)の超音波画像360では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線bは、補助線aと仮の交点IPで交わりかつ補助線aから反時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像360上の右上-左下の方向(表示画面の左上-右下の方向)に配置されてデフォルト表示される。
【0086】
そして、制御部18は、操作入力部11を介して、操作者からの、表示中の補助線bの(平行)移動及び回転の操作入力を受け付け、その操作情報に応じて補助線bを移動及び回転して表示部17に表示する(ステップS16)。ステップS16において、操作者は、ライブの超音波画像の股関節の骨を参照し、当該股関節の骨に対応するように補助線bの移動及び回転の操作入力を行う。
【0087】
そして、制御部18は、ステップS14で確定された補助線aと、ステップS16で移動、回転された補助線bとの間の角度のうち、小さい方を角度αとして演算し、Type条件テーブル190を記憶部19から読み出し、演算した角度αのα192に対応するType191を抽出する演算を行い、演算した角度α及びTypeを表示部17の表示画面の一部に表示する(ステップS17)。なお、ステップS17において、Type条件テーブル190が一つのα192に対し複数のTypeの抽出が可能である場合に、その抽出される複数のTypeを表示可能としてもよい。また、ステップS17において、演算したTypeが表示されない構成としてもよい。
【0088】
そして、制御部18は、操作入力部11を介して、操作者から、表示中の補助線bの位置の確定入力を受け付けたか否かにより、表示中の補助線bを確定するか否かを判別する(ステップS18)。表示中の補助線bを確定しない場合(ステップS18;NO)、ステップS16に移行される。
【0089】
表示中の補助線bを確定する場合(ステップS18;YES)、制御部18は、ステップS11で入力された角度α開始方向と、操作入力部11を介する操作者からの表示中の超音波画像の回転の指示入力と、に応じて、ステップS14で確定された補助線aとステップS18で確定された交点IPで交わり予め設定されたデフォルト角度(デフォルト角度β)の位置の補助線cとデフォルト角度としての角度βとを表示部17の表示画面上に配置して表示する(ステップS19)。ステップS19のデフォルト角度βは、例えば、55°とするが、この値に限定されるものではない。また、ステップS19のデフォルト角度βは、操作入力部11を介する操作者からの操作入力に応じて、あらかじめ設定可能な構成とする。また、ステップS19のデフォルト角度βは、補助線aと補助線cとの間の角度のうち、小さい方であるものとする。また、ステップS19において、制御部18は、角度β(デフォルト角度β)に対応する位置として、補助線aと補助線cとの間に配置した角度位置情報としての「β」の文字を表示する。
【0090】
図14(a)の超音波画像330では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線cは、補助線aと交点IPで交わりかつ補助線aから時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像330上の左上-右下の方向(交点IPを基準として、左上の領域の点と右下の領域の点とを結ぶ方向)(表示画面の左上-右下の方向)に配置されてデフォルト表示される。また、
図14(b)の超音波画像340では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線cは、補助線aと交点IPで交わりかつ補助線aから時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像340上の左上-右下の方向(表示画面の右上-左下の方向)に配置されてデフォルト表示される。また、
図14(c)の超音波画像350では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線cは、補助線aと交点IPで交わりかつ補助線aから時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像350上の左上-右下の方向(表示画面の右下-左上の方向)に配置されてデフォルト表示される。また、
図14(d)の超音波画像360では、角度α開始方向が「右」であるので、補助線cは、補助線aと交点IPで交わりかつ補助線aから時計回りにデフォルト角度回転された、超音波画像360上の左上-右下の方向(表示画面の左下-右上の方向)に配置されてデフォルト表示される。
【0091】
そして、制御部18は、操作入力部11を介して、操作者からの、表示中の補助線cの(平行)移動及び回転の操作入力を受け付け、その操作情報に応じて補助線cを移動及び回転して表示部17に表示する(ステップS20)。ステップS20において、操作者は、ライブの超音波画像の股関節の骨を参照し、当該股関節の骨に対応するように補助線cの移動及び回転の操作入力を行う。
【0092】
そして、制御部18は、ステップS14で確定された補助線aと、ステップS20で移動、回転された補助線cとの間の角度のうち、小さい方を角度βとして演算し、Type条件テーブル190を記憶部19から読み出し、ステップS17で演算した角度αと演算した角度βとのα192,β193に対応するType191を抽出する演算を行い、演算した角度α,β及びTypeを表示部17の表示画面の一部に表示する(ステップS21)。なお、ステップS21において、Type条件テーブル190が一つのα192に対し複数のTypeの抽出が可能である場合に、その抽出される複数のTypeを表示可能としてもよい。
【0093】
そして、制御部18は、操作入力部11を介して、操作者から、表示中の補助線cの位置の確定入力を受け付けたか否かにより、表示中の補助線c及びTypeを確定するか否かを判別する(ステップS22)。表示中の補助線c及びTypeを確定しない場合(ステップS22;NO)、ステップS20に移行される。
【0094】
表示中の補助線c及びTypeを確定する場合(ステップS22;YES)、制御部18は、ステップS18,S22で確定された股関節情報としての角度α,β及びTypeを記憶部19に記憶し(ステップS23)、股関節情報計測処理を終了する。
【0095】
ここで、
図15(a)~
図17(c)を参照して、股関節情報計測処理の表示画面遷移の一例を説明する。股関節情報計測処理の開始後、例えば、ステップS10で被検体の右足の股関節がスキャンされて超音波画像が表示部17に表示され、ステップS11で角度α開始方向が「右」に入力され、超音波画像の回転の指示入力はされていないものとする。
【0096】
そして、ステップS12において、
図15(a)に示す超音波画像401が表示される。超音波画像401は、表示部17の表示画面の全画面表示とし、被検体の断層画像の図示を省略しているものとし、確定前の補助線を細線で示し、確定後の補助線を太線で示すものとする。これらの事項は、超音波画像402~409でも同様とする。超音波画像401には、超音波画像の上辺(被検体の体表)に平行な確定前の補助線aが表示されている。
【0097】
そして、ステップS13において、
図15(b)に示す超音波画像402が表示される。超音波画像402には、操作者の操作入力に応じて、確定前の補助線aが移動及び回転されてリアルタイムに表示されている。
【0098】
そして、ステップS14において、補助線aの確定の操作入力がされた場合に、
図15(c)に示す超音波画像403が表示される。超音波画像403には、確定後の補助線aが表示されている。
【0099】
そして、ステップS15において、
図16(a)に示す超音波画像404が表示される。超音波画像404には、確定後の補助線aが固定的に表示され、確定後の補助線aに交点IPで交わり、補助線aに反時計回り方向にデフォルト角度(60°)の角度αで回転された位置に配置された確定前の補助線bと、角度αの位置に配置された「α」の文字と、角度αの値としての「Rt.Hip α 60°」と、が表示されている。Rt.Hipは、右の腰(右足の股関節)を表している。
【0100】
そして、ステップS16,S17において、
図16(b)に示す超音波画像405が表示される。超音波画像405には、確定後の補助線aが固定的に表示され、操作者の操作入力に応じて、確定前の補助線bが移動及び回転されて、「α」の文字とともにリアルタイムに表示されている。超音波画像405は、Typeが表示されていない例であるが、演算されたTypeが変更可能にリアルタイム表示されてもよい。
【0101】
そして、ステップS18において、補助線bの確定の操作入力がされた場合に、
図16(c)に示す超音波画像406が表示される。超音波画像406には、確定後の補助線a,b、「α」の文字及び角度αの値が表示されている。
【0102】
そして、ステップS19において、
図17(a)に示す超音波画像407が表示される。超音波画像407には、確定後の補助線a,bと角度αの値「Rt.Hip α 65°」とが固定的に表示され、確定後の補助線aに交点IPで交わり、補助線aに時計回り方向にデフォルト角度(55°)の角度αで回転された位置に配置された確定前の補助線cと、角度βの位置に配置された「β」の文字と、角度βの値としての「Rt.Hip β 55°」と、が表示されている。
【0103】
そして、ステップS20,S21において、
図17(b)に示す超音波画像408が表示される。超音波画像408には、確定後の補助線a,b及び角度αの値が固定的に、「α」の文字とともに表示され、操作者の操作入力に応じて、確定前の補助線cが移動及び回転されて角度βの値及びTypeを変更可能に、「β」の文字とともにリアルタイムに表示されている。
【0104】
そして、ステップS22において、補助線cの確定の操作入力がされた場合に、
図17(c)に示す超音波画像409が表示される。超音波画像409には、確定後の補助線a,b,c、「α」、「β」の文字、角度α,βの値及びType「Rt.Type Ia」が表示されている。Rt.Typeは、右の腰(の股関節)のTypeを表している。
【0105】
以上、本実施の形態によれば、超音波診断装置100は、操作入力を受け付ける操作入力部11と、被検体の医用画像としての超音波画像を表示部17に表示する制御部18と、を備える。制御部18は、超音波画像上でかつ超音波画像の上辺に基づく位置として当該上辺に平行な位置にベースとなる第1の直線としての補助線aを表示部17にデフォルト表示し、操作入力部を介する操作入力に応じて表示される補助線aの回転を設定し、補助線aとの交点IPを基準として、超音波画像上でかつ超音波画像の右上の領域と左下の領域との間、又は超音波画像の左上の領域と右下の領域との間を結ぶ第2の直線(第3の直線)としての補助線bを表示部17にデフォルト表示し、操作入力部11を介する操作入力に応じて表示される補助線bの回転を設定し、補助線aと補助線bとの間の角度を角度αとして演算し、補助線aとの交点IPを基準として、超音波画像上でかつ超音波画像の左上の領域と右下の領域との間、又は超音波画像の右上の領域と左下の領域との間を結ぶ第2の直線(第4の直線)としての補助線cを表示部17にデフォルト表示し、操作入力部11を介する操作入力に応じて表示される補助線cの回転を設定し、補助線aと補助線cとの間の角度を角度βとして演算する。超音波画像の上辺は、超音波が入射される辺である。超音波画像は、被検体の股関節の超音波画像である。角度α,βは、股関節の脱臼を診断するための角度である。
【0106】
このため、補助線a,b,cを設定するための複数の点の入力の順位を操作者が認識及び記憶する必要がなくなり、デフォルト表示された補助線a,b,cを順番に、操作入力により位置及び回転を設定するだけで、被検体情報として、被検体の股関節の脱臼を診断するための角度α,βを容易かつ正確に計測でき、操作者の負担を軽減できる。
【0107】
また、制御部18は、操作入力部11を介する操作入力に応じて表示される補助線aの位置及び回転を設定し、操作入力部11を介する操作入力に応じて表示される補助線bの位置及び回転を設定し、操作入力部11を介する操作入力に応じて表示される補助線cの位置及び回転を設定する。このため、補助線a,b,cを正確な位置及び回転角度に設定でき、角度α,βを正確に計測できる。
【0108】
また、制御部18は、角度α,βから股関節の状態を示す分類結果情報としてのTypeを演算する。このため、Typeに基づいて、操作者が股関節の脱臼を容易かつ正確に診断できる。
【0109】
また、制御部18は、角度α,β及びTypeを表示部17に表示する。このため、操作者が角度α,βの目視により補助線b,cを正確に設定でき、Typeの目視により股関節の脱臼(正常か異常か)を容易、速やかかつ正確に診断できる。
【0110】
また、制御部18は、補助線aと補助線b,cとの間の角度α,βの「α」、「β」を超音波画像上の対応する位置に表示する。このため、操作者が角度α,βの「α」,「β」の目視により誤った位置の角度α,βを計測するリスクを低減できる。さらに、超音波画像上に「α」,「β」を表示するので、被検体の診断部位の模式図の作成を作成することなく、処理負担を低減できる。
【0111】
また、操作入力部11は、角度α開始方向設定画面301に応じて、デフォルト表示する補助線b,cの方向を、超音波画像の右上の領域と左下の領域との間の方向、又は当該医用画像の左上の領域と右下の領域との間の方向との設定情報(角度α開始方向「右」、「左」)の入力を受け付ける。制御部18は、入力された補助線b,cの方向の設定情報に基づいて、補助線b,cをデフォルト表示する。このため、操作者が、第1、第2、第3のスキャン状態に応じて、入力された補助線b,cの方向を、適切に設定してデフォルト表示できる。
【0112】
また、操作入力部11は、補助線aに対する補助線b,cのデフォルト角度α(例えば、60°)、デフォルト角度β(例えば、55°)の設定情報の入力を受け付ける。制御部18は、入力されたデフォルト角度α,βの設定情報に基づいて、補助線a及び補助線b,cをデフォルト表示する。このため、デフォルト角度α,βを適切にして補助線b,cをデフォルト表示でき、補助線b,cの位置及び回転の操作入力を少なくして、操作者の負担を軽減できる。
【0113】
また、操作部は、超音波画像の回転(90°、180°、270°)の指示情報の入力を受け付ける。制御部18は、超音波画像の回転の指示情報に基づいて、超音波画像、補助線a及び補助線b,cを回転して表示部17に表示する。このため、超音波画像を回転しても、被検体の股関節の脱臼を診断するための角度α,βを容易かつ正確に計測できる。
【0114】
以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてROMを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリー、CD-ROMなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0115】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る好適な医用画像診断装置、被検体情報計測方法及びプログラムの一例であり、これに限定されるものではない。
【0116】
上記実施の形態では、診療科としての小児科で使用される超音波診断装置において、被検体の診断部位としての股関節をスキャンして先天性の股関節脱臼を診断するために、超音波診断装置100で股関節情報計測処理を実行し、補助線a,b,cを設定して、被検体情報としての角度α,β及びTypeを演算して計測する構成を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置100において、操作入力部11を介して、医師などの操作者から、整形外科、産科、小児科などの診療科と、肩、肘、足などの診断部位との少なくとも一方の設定情報の入力を受け付け、入力された診療科及び診断部位の少なくとも一方の設定情報に基づいて、第1の直線及び第2の直線をデフォルト表示し、第1の直線と第2の直線との間の角度(及び当該角度に対応する診断用の分類結果情報)を計測する構成としてもよい。この構成によれば、診療科や診断部位ごとに異なる角度(及び分類結果情報)の計測を容易かつ正確に行うことができる。
【0117】
また、上記実施の形態では、超音波診断装置100は、ベースとなる第1の直線(補助線a)と、第1の直線に交わる第2の直線(補助線b,c)を表示、操作入力により設定し、第1の直線と第2の直線との間の小さい方の角度(角度α,β)と、当該角度に対応する診断用情報(Type)と、を計測する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、第2の直線の数を1又は3以上とし、第1の直線と第2の直線との間の小さい方又は大きい方の角度を計測し、角度の数を1又は3以上とする構成としてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、操作入力部11を介して、操作者からの第1の直線(補助線a)に対する第2の直線(補助線b,c)のデフォルト角度の設定情報の入力を受け付け、制御部18が、入力された第1の直線に対する第2の直線のデフォルト角度の設定情報に基づいて、第2の直線をデフォルト表示する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、操作入力部11を介して、操作者からのデフォルト表示する第1の直線及び第2の直線の位置、並びに第1の直線に対する第2の直線のデフォルト角度の設定情報の入力を受け付け、制御部18が、入力された第1の直線及び第2の直線の位置及びデフォルト角度の設定情報に基づいて、第1の直線及び第2の直線をデフォルト表示する構成としてもよい。
【0119】
また、上記実施の形態では、制御部18が、第1の直線(補助線a)と第2の直線(補助線b,c)との間の角度のうち、小さい方の角度α,βを演算する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、操作入力部11を介して、操作者からの第1の直線と第2の直線との間の角度の大きい方又は小さい方を第1の直線と第2の直線との間の角度とする設定情報の入力を受け付け、制御部18が、入力された第2の直線の角度の大きい方又は小さい方の設定情報に基づいて、第1の直線及び第2の直線との間の角度を演算する構成としてもよい。この構成によれば、第1の直線と第2の直線との間の角度の大きい方又は小さい方のうち、適切な角度を第1の直線及び第2の直線との間の角度にできる。
【0120】
また、上記実施の形態では、医用画像診断装置として超音波診断装置100を用いて主にリニア走査方式の超音波画像を表示する構成を説明したが、これに限定されるものではない。医用画像診断装置として、例えば、X線画像、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)のなど、他の種類の医用画像を表示する装置を用いる場合や、超音波診断装置100を用いてコンベックス走査方式など他の超音波画像を表示する場合にも、表示した被検体の医用画像(超音波画像)上で、第1の直線、第2の直線を設定し、当該第1の直線と当該第2の直線との間の角度を計測する構成としてもよい。
【0121】
また、以上の実施の形態における超音波診断装置100を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0122】
100 超音波診断装置
11 操作入力部
12 送信部
13 受信部
14 画像生成部
15 画像処理部
15a 画像メモリー部
16 表示制御部
17 表示部
18 制御部
19 記憶部
2 超音波探触子
2A 超音波探触子本体
2a 振動子
2b プローブマーク
2B ケーブル
2C コネクター