(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241016BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20241016BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K3/34 501D
H05K1/18 J
(21)【出願番号】P 2021060563
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】石川 岳史
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-059533(JP,A)
【文献】特開2009-218258(JP,A)
【文献】特開2020-043321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/34
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板(4)上に電子部品(5、6)を実装してなるモジュール(3)を、マザー基板(2)上にはんだ接合して構成される電子装置(
31)であって、
前記モジュールには、前記電子部品を覆うリッド(7)が設けられていると共に、
前記マザー基板の上面と前記プリント基板の下面とのなす隙間部分には、前記はんだ接合部分の周囲を囲むように、シールド用導電層(
32)が設けられており、
前記シールド用導電層と前記マザー基板の上面あるいは前記プリント基板の下面との間には、空気が通過可能な隙間が形成されている電子装置。
【請求項2】
前記シールド用導電層(
32)は、はんだから構成されている請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記シールド用導電層(
32)は、繋がって延びる枠状に設けられている請求項1又は2記載の電子装置。
【請求項4】
前記シールド用導電層(
32)は、破線状に延びる枠状のものが、前記はんだ接合部分を二重以上に囲むように設けられている請求項1又は2記載の電子装置。
【請求項5】
前記シールド
用導電層(32)は、前記マザー基板の上面に設けられた内枠(32a)と、前記プリント基板の下面に設けられ前記内枠と隣り合う外枠(32b)と、を有し、
前記電子装置の厚み方向に沿った断面視において、前記内枠と前記外枠とは、互いに対向して設けられている請求項1記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板上に電子部品を実装してなるモジュールを、マザー基板上にはんだ接合して構成される電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子装置の多機能化及び高性能化に伴い、電子装置に搭載される電子部品の高性能化及び高速化が進んできている。例えば車載用の電子機器等にあっては、高周波回路部を有する部品を、微細プリント基板を用いたモジュールとして、そのモジュールを通常の配線ピッチのマザー基板に実装する構成が採用されてきている(例えば、特許文献1参照)。この場合、高周波回路を有するモジュールは、EMC(Electromagnetic Compatibility)が問題となり、その対策として、モジュールの上部を金属製のリッドで覆い、リッドをアース接続する構造をとっている。これにより、モジュールの部品面から発生するノイズは、リッドによりシールドされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような電子装置においては、マザー基板とモジュールのプリント基板との間は、はんだバンプにより接合される構成が多く採用される。このとき、プリント基板とマザー基板との間の隙間部分は、リッドにより覆われておらず、プリント基板とマザー基板との間のはんだ接合部からのノイズの漏れが問題となる。上記特許文献1では、例えばマザー基板に、モジュールのプリント基板が収容される凹部を設けて隙間を覆い、リッドをマザー基板側にも接続する等の対策が開示されているが、これでは、構成が複雑となり、部品点数や工数が多くなるといった問題点がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マザー基板上にモジュールをはんだ接合して構成されるものにあって、簡単な構成で済ませながら、はんだ接合部で発生する輻射ノイズを抑制することができる電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る電子装置(1、21、31)においては、プリント基板(4)上に電子部品(5、6)を実装してなるモジュール(3)を、マザー基板(2)上にはんだ接合して構成されるものであって、前記モジュールには、前記電子部品を覆うリッド(7)が設けられていると共に、前記マザー基板の上面と前記プリント基板の下面とのなす隙間部分には、前記はんだ接合部分の周囲を囲むように、シールド用導電層(10、22、32)が設けられている。
【0007】
これによれば、モジュールの部品面から発生するノイズは、リッドによりシールドされる。一方、プリント基板とマザー基板との間のはんだ接合部からのノイズの漏れに関しては、シールド用導電層により遮蔽することが可能となり、全体としてノイズのシールドが可能となる。この場合、はんだ接合部分の周囲を囲むようにシールド用導電層を設ければ良いので、マザー基板に凹部を設けたり、リッドをマザー基板に接続したりすることなく、比較的簡単な構成で済ませることができる。この結果、マザー基板上にモジュールをはんだ接合して構成されるものにあって、簡単な構成で済ませながら、はんだ接合部で発生する輻射ノイズを抑制することができるという優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態を示すもので、電子装置の縦断面図
【
図3】第2の実施形態を示すもので、電子装置の縦断面図
【
図5】第3の実施形態を示すもので、電子装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化したいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に示す各実施形態において、先行する実施形態で説明した内容に対応する部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略することがある。尚、以下に述べる各実施形態は、電子装置としての例えば車載用のナビゲーション装置、メータ装置などに適用したものであるが、それに限らず、電子装置全般に適用できることは勿論である。
【0010】
(1)第1の実施形態
図1及び
図2を参照して、第1の実施形態について述べる。
図1は、本実施形態に係る電子装置1の要部構成を示しており、この電子装置1は、多層配線基板からなるマザー基板2上に、モジュール3を備えて構成される。前記モジュール3は、多層配線基板からなるプリント基板4上に、図で2個のみを示すように、半導体素子からなる複数個の電子部品5、6を実装して構成されている。前記電子部品5、6のうち少なくとも一つは、高周波回路部を有する部品とされている。尚、図示は省略しているが、プリント基板4上には、抵抗、コンデンサ、コイル等の受動部品も実装されている。
【0011】
前記モジュール3には、ノイズ拡散防止用のリッド7が、前記プリント基板4の上面全体つまり前記電子部品5、6を覆うように設けられている。このリッド7は、例えば銅、アルミ等の金属材料即ち導電材料から、下面が開放した薄型矩形箱状、つまり蓋状に構成され、下端部がプリント基板4の外縁部に被せられるように設けられている。このとき、詳しく図示はしないが、前記リッド7は、前記プリント基板4のグランド端子に電気的に接続されている。
【0012】
上記したモジュール3と前記マザー基板2とは、はんだ接合部8により電気的及び機械的に接合される。この接合には、例えば周知のリフロー工程が用いられる。このとき、
図2にも示すように、前記モジュール3のプリント基板4の下面には、中央部の四角い領域及び、その外側の太めの矩形枠状をなす領域に、アレイ状に多数個のランド9が設けられている。一方、マザー基板2の実装面である上面には、前記モジュール3側のランド9に対応して、多数個のランドが設けられている。それらランド9同士間がはんだバンプにより接続され、はんだ接合部8が構成される。
【0013】
さて、
図1に示すように、前記マザー基板2の上面と前記モジュール3のプリント基板4の下面とのなす隙間部分には、前記はんだ接合部8部分の周囲を囲むように、シールド用導電層10が設けられている。本実施形態では、前記シールド用導電層10は、はんだから構成され、上下方向に平面的に見て、はんだ接合部8の外側を四角く囲むように、繋がって延びる枠状に設けられている。また、このシールド用導電層10は、マザー基板2の上面とプリント基板4の下面との両側にまたがる、つまり隙間を縦に塞ぐように設けられている。
【0014】
この場合、
図2に示すように、モジュール3のプリント基板4の下面には、前記ランド9の外側に位置して、例えば銅箔からなる配線パターンによって、四角の枠状に枠状パターン11が形成されている。一方、前記マザー基板2の上面にも、同様に、例えば銅箔からなる配線パターンによって、枠状パターン11に対応した枠状パターン12が形成されている。この枠状パターン12は、マザー基板2においてグランド接続されている。そして、前記シールド用導電層10は、次に述べるリフロー工程において、はんだ接合部8と同時に形成されるようになっている。
【0015】
ここで、詳しく図示はしないが、前記はんだ接合部8及びシールド用導電層10を形成するためのリフロー工程について、簡単に述べる。前記マザー基板2にモジュール3を接合するリフロー工程にあっては、例えばマザー基板2の上面のランド及び枠状パターン12の上面にはんだペーストが塗布される。そして、マザー基板2上にモジュール3が位置決め状態で載置され、リフロー炉内を通されて240℃に加熱され、その後冷却されることにより、はんだが凝固する。これにより、はんだ接合部8及びシールド用導電層10が形成される。
【0016】
本実施形態の電子装置1によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、本実施形態では、マザー基板2上にモジュール3をはんだ接合して構成されるものにあって、前記モジュール3には、電子部品5、6を覆うリッド7を設けると共に、マザー基板2の上面とプリント基板4の下面とのなす隙間部分に、はんだ接合部8部分の周囲を囲むように、シールド用導電層10を設ける構成とした。
【0017】
これにより、モジュール3の電子部品5、6の部品面から発生するノイズは、リッド7によりシールドされる。一方、プリント基板4とマザー基板2との間のはんだ接合部8部分からのノイズの漏れに関しては、シールド用導電層10により遮蔽することが可能となり、全体としてノイズのシールドが可能となる。この場合、はんだ接合部8の周囲を囲むようにシールド用導電層10を設ければ良いので、マザー基板2に凹部を設けたり、リッド7をマザー基板2に接続したりすることなく、比較的簡単な構成で済ませることができる。この結果、本実施形態によれば、簡単な構成で済ませながら、はんだ接合部8で発生する輻射ノイズを抑制することができるという優れた効果を得ることができる。
【0018】
特に本実施形態では、前記シールド用導電層10を、はんだから構成した。これにより、マザー基板2とモジュール3とのはんだ接合時に、材料をはんだとして併せてシールド用導電層10を設けることができるので、部品数の増加を抑え、工程も少なく済ませることができる。また本実施形態では、シールド用導電層10を、繋がって延びる枠状に設けるようにした。これにより、シールド用導電層10により、はんだ接合部8からのノイズの漏れを、確実にシールドすることができる。
【0019】
(2)第2の実施形態
図3及び
図4は、第2の実施形態を示すものである。この第2の実施形態に係る電子装置21が、上記第1の実施形態と異なるところは、シールド用導電層22の構成にある。この場合、シールド用導電層22は、マザー基板2の上面とモジュール3のプリント基板4の下面とのなす隙間部分に、前記はんだ接合部8の周囲を囲むように設けられるのであるが、本実施形態では、破線状に延びる四角形の枠状のものが、はんだ接合部8を二重以上、例えば内外二重に囲むように設けられている。尚、シールド用導電層22のうち、内側に位置するものを内枠22aと称し、外側に位置するものを外枠22bと称する。
【0020】
具体的には、
図4に示すように、前記内枠22a及び外枠22bを設けるにあたっては、モジュール3のプリント基板4の下面には、はんだ接合部8即ちランド9の外側に位置して、例えば銅箔からなる配線パターンによって、四角の枠状に二重の枠状パターン23が形成されている。各枠状パターン23は、破線状に、一定の長さを有する直線を間欠的にほぼ一定間隔で配置し、隙間つまり非形成部を繰り返し設けた構成を備える。このとき、内側の枠と外側の枠とは、同じ位置に同時に隙間が生じないように、隙間の位置をずらせながら、破線状に設けられている。
【0021】
一方、前記マザー基板2の上面にも、同様に、例えば銅箔からなる配線パターンによって、枠状パターン23に対応した鏡面対称的な枠状パターン24が形成されている。この枠状パターン24は、マザー基板2においてグランド接続されている。シールド用導電層22は、はんだからなり、マザー基板2の上面とプリント基板4の下面との両側にまたがり、枠状パターン23、24同士を接続するように設けられている。このシールド用導電層22は、やはりリフロー工程において、はんだ接合部8と同時に形成されるようになっている。
【0022】
このような第2の実施形態の電子装置21においては、モジュール3にリッド7を設けることに加え、マザー基板2の上面とプリント基板4の下面とのなす隙間部分に、はんだ接合部8部分の周囲を囲むように、シールド用導電層22を設ける構成とした。これにより、プリント基板4とマザー基板2との間のはんだ接合部8部分からのノイズの漏れに関しては、シールド用導電層22により遮蔽することが可能となり、全体としてノイズのシールドが可能となる。この結果、本実施形態によれば、簡単な構成で済ませながら、はんだ接合部8で発生する輻射ノイズを抑制することができるという優れた効果を得ることができる。
【0023】
特に本実施形態のシールド用導電層22では、破線状に延びる枠状の内枠22a及び外枠22bを、はんだ接合部8を二重に囲むように設けた。これにより、はんだ接合部8と外部との空気の流動を可能としながら、二重に設けられるシールド用導電層22が、交互に配置されてノイズの漏れを防ぐようにして、必要なシールド効果を得ることができる。この場合、上記第1の実施形態のシールド用導電層10では、マザー基板2とモジュール3との間の隙間が密閉されるので、リフロー工程等における空気の流通が阻止され、密閉空間の空気の熱膨張、収縮を招く事情があるが、本実施形態ではそのような不具合を未然に防止できる。尚、シールド用導電層を三重以上に設ける構成としても良い。
【0024】
(3)第3の実施形態、その他の実施形態
図5及び
図6は、第3の実施形態に係る電子装置31の構成を示しており、シールド用導電層32の構成が上記第1、第2の実施形態と異なっている。このシールド用導電層32は、マザー基板2の上面とモジュール3のプリント基板4の下面とのなす隙間部分に、前記はんだ接合部8の周囲を囲む枠状に設けられるのであるが、本実施形態では、マザー基板2の上面に設けられる内枠32aと、プリント基板4の下面に設けられる外枠32bとを含んでいる。このとき、シールド用導電層32は、プリント基板4の下面と、マザー基板2の上面との両方に、通気性を確保した状態で設けられている。
【0025】
具体的には、
図6に示すように、前記内枠32aは、マザー基板2の上面のうち、はんだ接合部8の外側を囲むように位置して、全体が繋がった形態に延びる矩形枠状に設けられる。この場合、マザー基板2上にはグランド接続された枠状パターン33が、配線パターンによって四角の枠状に形成され、内枠32aは、その枠状パターン33上にはんだを設けて構成される。但し、内枠32aの上端は、モジュール3のプリント基板4の下面に接することなく、上下方向の隙間を有するように設けられている。
【0026】
前記外枠32bは、モジュール3のプリント基板4の下面のうち、はんだ接合部8の外側の内枠32aのやや外側を囲むように位置して、全体が繋がった形態に延びる矩形枠状に設けられる。この場合、プリント基板4の下面にはグランド接続された枠状パターン34が、配線パターンによって四角の枠状に形成され、外枠32bは、その枠状パターン34上にはんだを設けて構成される。但し、外枠32bの下端は、マザー基板2の上面に接することなく、上下方向の隙間を有するように設けられている。このシールド用導電層32は、やはりリフロー工程において、はんだ接合部8と同時に形成されるようになっている。
【0027】
このような第3の実施形態の電子装置31においては、モジュール3にリッド7を設けることに加え、マザー基板2の上面とプリント基板4の下面とのなす隙間部分に、はんだ接合部8部分の周囲を囲むように、シールド用導電層32を設ける構成とした。これにより、プリント基板4とマザー基板2との間のはんだ接合部8部分からのノイズの漏れに関しては、シールド用導電層32により遮蔽することが可能となり、全体としてノイズのシールドが可能となる。この結果、本実施形態によれば、簡単な構成で済ませながら、はんだ接合部8で発生する輻射ノイズを抑制することができるという優れた効果を得ることができる。
【0028】
そして、特に本実施形態のシールド用導電層32では、外枠32b及び内枠32aが、夫々モジュール3側とマザー基板2側とに設けられることにより、上記第2の実施形態と同様に、マザー基板2とモジュール3との間に空気が通過できる隙間を設けながら、両方でシールド性能を確保することを可能とすることができる。尚、内枠32a及び外枠32bを繋がって延びる形態に構成したが、破線状に間欠的に延びる構成としても良い。内枠32aと外枠32bとの関係を逆にしても良く、シールド用導電層を三重以上に設ける構成としても良い。
【0029】
尚、上記した各実施形態に限定されるものではなく、例えばランドやはんだ接合部の配置や構造、シールド用導電層の形状や構造、電子装置全体の具体的構成や用途などについても、様々な変更が可能であることは勿論である。本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0030】
図面中、1、21、31は電子装置、2はマザー基板、3はモジュール、4はプリント基板、5、6は電子部品、7はリッド、8ははんだ接合部、9はランド、10、22、32はシールド用導電層、11、12、23、24、33、34は枠状パターンを示す。