(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】車両衝突回避支援装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20241016BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B60T7/12 A
B60T7/12 C
G08G1/16 C
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2021063360
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岩 祐太
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-024539(JP,A)
【文献】特開平07-108850(JP,A)
【文献】特開2012-148692(JP,A)
【文献】特開2017-019434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両とその前方の物体との衝突を回避するために前記自車両に制動力を付加して停止させる衝突回避制御を実行し、該衝突回避制御により前記自車両を停止させた後、該自車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行し、所定停止保持解除条件が成立した場合、前記停止保持制御を終了するように構成されている車両衝突回避支援装置
であって、
前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記自車両の運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が通常の運転操作を行うことができる状態にある場合、前記所定停止保持解除条件が成立したと判定して前記停止保持制御を終了し、
前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にある場合、前記所定停止保持解除条件が成立していないと判定して前記停止保持制御を継続する、
ように構成されている車両衝突回避支援装置
において、
前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者の視線が前記自車両の前方を向いていない場合、或いは、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者の目が開いていない場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定するように構成されている車両衝突回避支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両衝突回避支援装置において、
前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が前記自車両のアクセルペダルを踏み込んでいる場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定するように構成されている車両衝突回避支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両衝突回避支援装置において、
前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が前記自車両の運転席に着いていない場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定するように構成されている車両衝突回避支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の車両衝突回避支援装置において、
前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が前記自車両のアクセルペダルを踏み込んでおらず、且つ、前記運転者が前記自車両の運転席に着いており、且つ、前記運転者の視線が前記自車両の前方を向いており、且つ、前記運転者の目が開いている場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができる状態にあると判定するように構成されている車両衝突回避支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突回避支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両とその前方の物体との衝突を回避するために自車両を強制的に制動して停止させる衝突回避制御の1つである強制制動制御を実行する車両衝突回避支援装置が知られている。又、強制制動制御により自車両を停止させた後、自車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行するようになっている車両衝突回避支援装置も知られている。
【0003】
又、停止保持制御を開始してから一定の時間が経過したとき或いは自車両の運転者が運転操作を行ったことを検知した場合、基本的には、停止保持制御を終了して自車両を走行可能な状態に移行させるようになっている車両衝突回避支援装置も知られている。更に、自車両の周辺の状況が自車両を停止させた状態を継続したほうが好ましい状況である場合、停止保持制御を開始してから一定の時間が経過しても、自車両の運転者が運転操作を行うまでは、停止保持制御を終了しないようになっている車両衝突回避支援装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
強制制動制御により自車両が停止された場合、自車両の運転者が混乱しており、そのために、その運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあることがある。従って、停止保持制御の開始後、運転者が運転操作を行ったことを検知したとしても、その運転者が適切な運転操作を行ったとは限らない。例えば、運転者が誤ってアクセルペダルを踏み込んでいる等、適切な運転操作を行っていなかった場合において、自車両の周辺の状況が自車両を停止させた状態を維持しなくてもよい状況であるからといって、停止保持制御を終了してしまうと、自車両が意図せず急発進してしまう。
【0006】
このように、運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にある場合において、運転者による運転操作を検知したときに、自車両の周辺の状況が自車両を停止させた状態を維持しなくてもよい状況であるからといって、停止保持制御を終了してしまうことは、適切ではない。
【0007】
本発明の目的は、衝突回避制御により自車両が停止され、その自車両が停止保持制御により停止状態に保持された後、適切に停止保持制御を終了させることができる車両衝突回避支援装置を提供することにある。
【0008】
本発明に係る車両衝突回避支援装置は、自車両とその前方の物体との衝突を回避するために前記自車両に制動力を付加して停止させる衝突回避制御を実行し、該衝突回避制御により前記自車両を停止させた後、該自車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行し、所定停止保持解除条件が成立した場合、前記停止保持制御を終了するように構成されている。そして、本発明に係る車両衝突回避支援装置は、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記自車両の運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が通常の運転操作を行うことができる状態にある場合、前記所定停止保持解除条件が成立したと判定して前記停止保持制御を終了し、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にある場合、前記所定停止保持解除条件が成立していないと判定して前記停止保持制御を継続するように構成されている。
更に、本発明に係る車両衝突回避支援装置は、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者の視線が前記自車両の前方を向いていない場合、或いは、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者の目が開いていない場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定するように構成されている。
【0009】
停止保持制御が終了された場合に自車両が意図せず発進してしまうことがある。このとき、自車両の運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると、自車両の発進に対して運転者が適切な運転操作を行うことができず、自車両が前方の物等に衝突してしまう可能性がある。従って、運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあるときに、停止保持制御が開始されてから一定の時間が経過したり、停止保持制御が開始された後、運転者による運転操作が検知されたりしたからといって、停止保持制御を終了してしまうことは適切ではない。本発明によれば、停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は停止保持制御の開始後、運転者による運転操作が検知されたときに運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にある場合には、停止保持制御が継続され、停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は停止保持制御の開始後、運転者による運転操作が検知されたときに運転者が通常の運転操作を行うことができる状態にある場合に限り、停止保持制御が終了される。このため、適切に停止保持制御を終了させることができる。
更に、停止保持制御が終了されたことにより自車両が発進してしまったときに運転者の視線が自車両の前方を向いていない場合、自車両の発進に対して運転者が適切な運転操作を行うことができず、自車両が前方の物等に衝突してしまう可能性があるので、こうした停止保持制御の終了は、適切なものであるとは言えない。本発明によれば、停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は停止保持制御の開始後、運転者による運転操作が検知されたときに運転者の視線が自車両の前方を向いていない場合、運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定されるので、停止保持制御が終了されることはない。このため、不適切な停止保持制御の終了を回避することができる。
更に、停止保持制御が終了されたことにより自車両が発進してしまったときに運転者の目が開いていない場合、自車両の発進に対して運転者が適切な運転操作を行うことができず、自車両が前方の物等に衝突してしまう可能性があるので、こうした停止保持制御の終了は、適切なものであるとは言えない。本発明によれば、停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は停止保持制御の開始後、運転者による運転操作が検知されたときに運転者の目が開いていない場合、運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定されるので、停止保持制御が終了されることはない。このため、不適切な停止保持制御の終了を回避することができる。
【0010】
尚、本発明に係る車両衝突回避支援装置は、例えば、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が前記自車両のアクセルペダルを踏み込んでいる場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定するように構成される。
【0011】
運転者がアクセルペダルを踏み込んでいるときに停止保持制御を終了してしまうと、自車両が急発進し、自車両がその前方の物等に衝突してしまう可能性があるので、こうした停止保持制御の終了は、適切なものであるとは言えない。本発明によれば、停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は停止保持制御の開始後、運転者による運転操作が検知されたときに運転者がアクセルペダルを踏み込んでいる場合、運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定されるので、停止保持制御が終了されることはない。このため、不適切な停止保持制御の終了を回避することができる。
【0012】
又、本発明に係る車両衝突回避支援装置は、例えば、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が前記自車両の運転席に着いていない場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定するように構成される。
【0013】
停止保持制御が終了されたことにより自車両が発進してしまったときに運転者が運転席に着いていない場合、自車両の発進に対して運転者が適切な運転操作を行うことができず、自車両が前方の物等に衝突してしまう可能性があるので、こうした停止保持制御の終了は、適切なものであるとは言えない。本発明によれば、停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は停止保持制御の開始後、運転者による運転操作が検知されたときに運転者が運転席に着いていない場合、運転者が通常の運転操作を行うことができない状態にあると判定されるので、停止保持制御が終了されることはない。このため、不適切な停止保持制御の終了を回避することができる。
【0018】
又、本発明に係る車両衝突回避支援装置は、前記停止保持制御が開始されてから経過した時間が前記所定時間に達したとき又は前記停止保持制御の開始後、前記運転者による運転操作を検知したときに前記運転者が前記自車両のアクセルペダルを踏み込んでおらず、且つ、前記運転者が前記自車両の運転席に着いており、且つ、前記運転者の視線が前記自車両の前方を向いており、且つ、前記運転者の目が開いている場合、前記運転者が通常の運転操作を行うことができる状態にあると判定するように構成されてもよい。
【0019】
停止保持制御が終了されたことにより自車両が発進してしまったときに運転者がアクセルペダルを踏み込んでおらず且つ運転者が運転席に着いており且つ運転者の視線が自車両の前方を向いており且つ運転者の目が開いていれば、運転者が自車両に対して適切な運転操作を行うことができ、自車両が前方の物等に衝突してしまう等の事態を回避することができる。本発明によれば、停止保持制御が開始されてから経過した時間が所定時間に達したとき又は停止保持制御の開始後、運転者による運転操作が検知されたときに運転者がアクセルペダルを踏み込んでおらず且つ運転者が運転席に着いており且つ運転者の視線が自車両の前方を向いており且つ運転者の目が開いている場合、運転者が通常の運転操作を行うことができる状態にあると判定され、停止保持制御が終了される。このため、適切に停止保持制御を終了させることができる。
【0020】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置及びその車両衝突回避支援装置が搭載された車両(自車両)を示した図である。
【
図2】
図2は、自車両とその前方の物体(車両)との間の距離等を示した図である。
【
図3】
図3は、ドライバーモニターカメラにより撮像される画像を示した図である。
【
図4】
図4の(A)は、自車両の予測走行領域を示した図であり、
図4の(B)は、自車両の予測走行領域に物体(車両)が存在している場面を示した図である。
【
図5】
図5の(A)は、自車両の予測走行領域に存在する物体(車両)に自車両が近づいて第1衝突条件が成立した場面を示した図であり、
図5の(B)は、自車両の予測走行領域に存在する物体(車両)に自車両が更に近づいて第2衝突条件が成立した場面を示した図である。
【
図6】
図6の(A)は、強制制動制御が開始された場面を示した図であり、
図6の(B)は、強制制動制御により自車両が停止された場面を示した図である。
【
図7】
図7は、強制操舵制御に用いられる目標回避経路を示した図である。
【
図8】
図8の(A)は、強制制動制御及び強制操舵制御が開始され、強制操舵制御により自車両が目標回避経路に沿って旋回し始めた場面を示した図であり、
図8の(B)は、強制操舵制御により自車両が前方の物体(車両)の横を通過する場面を示した図であり、
図8の(C)は、強制制動制御により自車両が前方の物体(車両)の横で停止された場面を示した図である。
【
図9】
図9は、ドライバーモニターカメラ画像中の頭部画像の面積及び所定画像領域の面積等を示した図である。
【
図10】
図10の(A)は、運転者の頭部のヨー角を示した図であり、
図10の(B)は、運転者の頭部のピッチ角を示した図であり、
図10の(C)は、運転者の頭部のロール角を示した図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置について説明する。
図1に示したように、本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置10は、自車両100に搭載されている。以下の説明において、自車両100の運転者を「運転者Dr」と表記する。
【0023】
<ECU>
車両衝突回避支援装置10は、ECU90を備えている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。
【0024】
<駆動装置等>
又、自車両100には、駆動装置21、制動装置22及び操舵装置23が搭載されている。
【0025】
<駆動装置>
駆動装置21は、自車両100を走行させるために自車両100に付加される駆動トルクTQd(駆動力)を出力する装置であり、例えば、内燃機関及びモータ等である。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21の作動を制御することにより駆動装置21から出力される駆動トルクTQdを制御することができる。
【0026】
<制動装置>
制動装置22は、自車両100を制動するために自車両100に付加される制動トルクTQb(制動力)を出力する装置であり、例えば、ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22の作動を制御することにより制動装置22から出力される制動トルクTQbを制御することができる。
【0027】
<操舵装置>
操舵装置23は、自車両100を操舵するために自車両100に付加される操舵トルクTQs(操舵力)を出力する装置であり、例えば、パワーステアリング装置である。操舵装置23は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵装置23の作動を制御することにより操舵装置23から出力される操舵トルクTQsを制御することができる。
【0028】
<センサ等>
更に、自車両100には、アクセルペダル31、アクセルペダル操作量センサ32、ブレーキペダル33、ブレーキペダル操作量センサ34、ハンドル35、ステアリングシャフト36、操舵角センサ37、操舵トルクセンサ38、車両運動量検出装置50、周辺情報検出装置60、運転者状態検出装置70及び通知装置80(警報装置)が搭載されている。
【0029】
<アクセルペダル操作量センサ>
アクセルペダル操作量センサ32は、アクセルペダル31の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。アクセルペダル操作量センサ32は、検出したアクセルペダル31の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてアクセルペダル31の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。ECU90は、アクセルペダル操作量AP及び自車両100の車速V100に基づいて要求駆動トルクTQd_req(要求駆動力)を演算により取得する。要求駆動トルクTQd_reqは、駆動装置21に出力が要求されている駆動トルクTQdである。ECU90は、要求駆動トルクTQd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御する。
【0030】
<ブレーキペダル操作量センサ>
ブレーキペダル操作量センサ34は、ブレーキペダル33の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ブレーキペダル操作量センサ34は、検出したブレーキペダル33の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてブレーキペダル33の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。ECU90は、ブレーキペダル操作量BPに基づいて要求制動トルクTQb_req(要求制動力)を演算により取得する。要求制動トルクTQb_reqは、制動装置22に出力が要求されている制動トルクTQbである。ECU90は、要求制動トルクTQb_reqが出力されるように制動装置22の作動を制御する。
【0031】
<操舵角センサ>
操舵角センサ37は、中立位置に対するステアリングシャフト36の回転角度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵角センサ37は、検出したステアリングシャフト36の回転角度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてステアリングシャフト36の回転角度を操舵角θsteerとして取得する。
【0032】
<操舵トルクセンサ>
操舵トルクセンサ38は、運転者Drがハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルクを検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵トルクセンサ38は、検出したトルクの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて運転者Drがハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルク(ドライバー入力トルクTQs_driver)を取得する。
【0033】
<車両運動量検出装置>
車両運動量検出装置50は、自車両100の運動量を検出する装置であり、本例においては、車速検出装置51、縦加速度センサ52、横加速度センサ53及びヨーレートセンサ54を備えている。
【0034】
<車速検出装置>
車速検出装置51は、自車両100の車速を検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置51は、ECU90に電気的に接続されている。車速検出装置51は、検出した自車両100の車速の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の車速V100を取得する。
【0035】
ECU90は、操舵角θsteer、ドライバー入力トルクTQs_driver及び車速V100に基づいて要求操舵トルクTQs_reqを演算により取得する。要求操舵トルクTQs_reqは、操舵装置23に出力が要求されている操舵トルクTQsである。ECU90は、要求操舵トルクTQs_reqが操舵装置23から出力されるように操舵装置23の作動を制御する。尚、ECU90は、後述する強制操舵制御を実行する場合、操舵角θsteer等にかかわりなく、自車両100を目標回避経路Rtgtに沿って走行させるのに必要な操舵トルクTQsを要求操舵トルクTQs_reqとして適宜決定し、その要求操舵トルクTQs_reqが出力されるように操舵装置23の作動を制御する。
【0036】
<縦加速度センサ>
縦加速度センサ52は、自車両100の前後方向の加速度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。縦加速度センサ52は、検出した加速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の前後方向の加速度を縦加速度Gxとして取得する。
【0037】
<横加速度センサ>
横加速度センサ53は、自車両100の横方向(幅方向)の加速度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。横加速度センサ53は、検出した加速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の横方向の加速度を横加速度Gyとして取得する。
【0038】
<ヨーレートセンサ>
ヨーレートセンサ54は、自車両100のヨーレートYRを検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ヨーレートセンサ54は、検出したヨーレートYRの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100のヨーレートYRを取得する。
【0039】
<周辺情報検出装置>
周辺情報検出装置60は、自車両100の周辺の情報を検出する装置であり、本例においては、電波センサ61及び画像センサ62を備えている。電波センサ61は、例えば、レーダセンサ(ミリ波レーダ等)である。画像センサ62は、例えば、カメラである。尚、周辺情報検出装置60は、超音波センサ(クリアランスソナー)等の音波センサやレーザーレーダ(LiDAR)等の光センサを備えていてもよい。
【0040】
<電波センサ>
電波センサ61は、ECU90に電気的に接続されている。電波センサ61は、電波を発信するとともに、物体で反射した電波(反射波)を受信する。電波センサ61は、発信した電波及び受信した電波(反射波)に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。別の言い方をすると、電波センサ61は、自車両100の周辺に存在する物体を検知し、その検知した物体に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。ECU90は、その情報(電波情報)に基づいて自車両100の周辺に存在する物体に係る情報(周辺検出情報INFs)を取得することができる。尚、本例において、物体は、車両、自動二輪車、自転車及び人等である。
【0041】
<画像センサ>
画像センサ62も、ECU90に電気的に接続されている。画像センサ62は、自車両100の周辺を撮像し、撮像した画像に係る情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報(画像情報)に基づいて自車両100の周辺に関する情報(周辺検出情報INFs)を取得することができる。
【0042】
ECU90は、
図2に示したように、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在する場合、その前方物体200を周辺検出情報INFsに基づいて検知する。尚、前方物体200は、車両、自動二輪車、自転車及び人等であり、
図2に示した例においては、車両である。
【0043】
ECU90は、前方物体200を検知した場合、周辺検出情報INFsに基づいて「その前方物体200と自車両100との間の距離(物体距離D200)」及び「前方物体200に対する自車両100の速度(相対速度ΔV200)」等を取得することができる。
【0044】
更に、ECU90は、周辺検出情報INFsに基づいて「自車両100の走行車線(自車線LN)を規定する左側の区画線LM_L及び右側の区画線LM_R」を認識する。ECU90は、認識した左右区画線LM(即ち、左側の区画線LM_L及び右側の区画線LM_R)に基づいて自車線LNの範囲を特定することができる。
【0045】
<運転者状態検出装置>
運転者状態検出装置70は、運転者Drの状態に関する情報であって、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる状態にあるか否かを判定するために利用可能な情報を検出する装置であり、本例においては、ドライバーモニターカメラ71である。ここで、運転操作とは、アクセルペダル31の踏込操作又は解放操作、ブレーキペダル33の踏込操作又は解放操作及びハンドル35の回転操作である。
【0046】
<ドライバーモニターカメラ>
ドライバーモニターカメラ71は、運転者Drを撮像するカメラであり、
図3に示したように、運転者Dr(本例においては、頭部及び上半身)を撮像することができるように運転者Drに向けて自車両100の室内に設けられている。
図3において、符号IMGmは、ドライバーモニターカメラ71により撮像された画像(ドライバーモニターカメラ画像)を示しており、符号IMGdは、ドライバーモニターカメラ71により撮像された運転者Drの画像(運転者画像)である。
【0047】
ドライバーモニターカメラ71は、ECU90に電気的に接続されている。ドライバーモニターカメラ71は、撮像したドライバーモニターカメラ画像IMGmに係る情報(運転者画像情報INFd又は運転者画像データ)をECU90に送信する。ECU90は、運転者画像情報INFdに基づいて運転者Drが通常の運転操作を行うことができる状態にあるか否かを判定することができる。
【0048】
尚、ECU90は、運転者Drのバイタルデータを取得し、それら取得したバイタルデータに基づいて運転者Drが通常の運転操作を行うことができる状態にあるか否かを判定するようになっていてもよい。バイタルデータは、運転者Drに装着可能な生体センサ(いわゆるウェアラブル生体センサ)により測定される運転者Drの脈拍や血圧等のデータである。
【0049】
<通知装置>
通知装置80は、運転者Drに対する各種の通知を行う装置であり、本例においては、表示装置81及び音響装置82を備えている。
【0050】
<表示装置>
表示装置81は、各種の画像を表示する装置であって、例えば、いわゆるコンビネーションメーター内に設けられたディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ又はカーナビゲーション装置のディスプレイ等である。表示装置81は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、表示装置81に各種の画像を表示させることができる。
【0051】
<音響装置>
音響装置82は、各種の通知音、警報音、通知音声又は警報音声を出力する装置であって、例えば、ブザー又はスピーカーである。音響装置82は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、音響装置82から各種の通知音、警報音、通知音声又は警報音声を出力させることができる。
【0052】
<車両衝突回避支援装置の作動の概要>
次に、車両衝突回避支援装置10の作動の概要について説明する。
【0053】
車両衝突回避支援装置10は、自車両100の走行中、周辺検出情報INFsに基づいて自車両100の進行方向前方の車両等の物体を検知するための処理を行っている。車両衝突回避支援装置10は、自車両100の進行方向前方の物体を検知していない間は、通常走行制御を実行している。
【0054】
通常走行制御は、要求駆動トルクTQd_req(要求駆動力)がゼロよりも大きい場合、その要求駆動トルクTQd_reqが駆動装置21から出力されるように駆動装置21の作動を制御し、要求制動トルクTQb_req(要求制動力)がゼロよりも大きい場合、その要求制動トルクTQb_reqが制動装置22から出力されるように制動装置22の作動を制御し、要求操舵トルクTQs_req(要求操舵力)がゼロよりも大きい場合、その要求操舵トルクTQs_reqが操舵装置23から出力されるように操舵装置23の作動を制御する制御である。
【0055】
車両衝突回避支援装置10は、自車両100の進行方向前方の物体(前方物体200)を検知すると、その物体が予測走行領域A100内に存在するか否かを周辺検出情報INFsに基づいて判定する。予測走行領域A100は、
図4の(A)に示したように、自車両100の予測走行ルートR100を中心として自車両100の幅に等しい幅を有する領域である。予測走行ルートR100は、自車両100がその時点の操舵角θsteerを維持したまま走行したときに自車両100が今後、走行するものと予測される走行ルートである。従って、
図4の(A)に示した予測走行ルートR100は、直線であるが、状況によっては、曲線であることもある。
【0056】
車両衝突回避支援装置10は、検知した前方物体200が予測走行領域A100内に存在しない場合、通常走行制御を継続する。
【0057】
一方、車両衝突回避支援装置10は、検知した前方物体200が予測走行領域A100内に存在すると判定すると、自車両100がその前方物体200に衝突する可能性(衝突可能性)を判定する。本例において、車両衝突回避支援装置10は、前方物体200と自車両100との間の距離(物体距離D200)を取得し、その取得した物体距離D200が所定の距離(衝突可能性判定距離Dth)以下であるか否かに基づいて衝突可能性を判定する。
【0058】
車両衝突回避支援装置10は、
図5の(A)に示したように自車両100が前方物体200に近づき、物体距離D200が衝突可能性判定距離Dthまで短くなり、物体距離D200が衝突可能性判定距離Dth以下であると判定すると、第1衝突条件Ccol_1が成立したと判定する。
【0059】
<通知制御>
車両衝突回避支援装置10は、第1衝突条件Ccol_1が成立したと判定すると、通知制御を開始する。通知制御は、通知音(若しくは警報音)又は通知音声(若しくは警報音声)を通知装置80から出力させたり、通知画像(若しくは警報画像)を通知装置80に表示させたりする制御である。
【0060】
通知制御により通知装置80から出力される通知音(又は警報音)は、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在すること、又は、自車両100が前方の物体(前方物体200)に衝突する可能性があること等を運転者Drに気づかせるものである。又、通知制御により通知装置80から出力される通知音声(又は警報音声)は、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在することを表す音声、自車両100が前方の物体(前方物体200)に衝突する可能性があることを表す音声、又は、自車両100と前方の物体(前方物体200)との衝突を回避するために必要な運転操作を表す音声等である。
【0061】
又、通知制御により通知装置80に表示される通知画像(又は警報画像)は、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在することを文字又は図形等で表す画像、自車両100が前方の物体(前方物体200)に衝突する可能性があることを文字又は図形等で表す画像、又は、自車両100と前方の物体(前方物体200)との衝突を回避するために必要な運転操作を文字又は図形等で表す画像等である。
【0062】
更に、車両衝突回避支援装置10は、第1衝突条件Ccol_1が成立したと判定すると、衝突回避制御の1つである強制制動制御を開始する条件(第2衝突条件Ccol_2)が成立したか否かを判定する。強制制動制御は、自車両100と前方物体200との衝突を回避するための制御であって、運転者Drのアクセルペダル操作又はブレーキペダル操作とは関係なく、自車両100に付加する駆動力をゼロにするとともに、自車両100に強制的に制動力を付加して自車両100を前方物体200の手前で停止させる制御である。
【0063】
本例においては、車両衝突回避支援装置10は、予測到達時間TTCが所定の時間(衝突判定時間TTCth)まで短くなったときに第2衝突条件Ccol_2が成立したと判定する。予測到達時間TTCは、自車両100が前方物体200に到達するまでに要すると予測される時間である。車両衝突回避支援装置10は、物体距離D200を相対速度ΔV200で除算することにより予測到達時間TTCを取得する(TTC=D200/dV200)。従って、予測到達時間TTCは、相対速度ΔV200が一定である場合、自車両100が前方物体200に近づくほど短くなる。車両衝突回避支援装置10は、予測走行領域A100内に前方物体200が存在すると判定している間、物体距離D200、相対速度ΔV200及び予測到達時間TTCの取得を所定演算周期で行い、予測到達時間TTCを取得する毎に予測到達時間TTCが衝突判定時間TTCthまで短くなったか否かの判定を行う。
【0064】
車両衝突回避支援装置10は、予測到達時間TTCが衝突判定時間TTCthよりも長い間は、通常走行制御を継続する。
【0065】
一方、
図5の(B)に示したように、運転者Drによる衝突回避運転操作(自車両100と前方物体200との衝突を避けるための運転操作)が行われないまま、自車両100が前方物体200に近づき、予測到達時間TTCが衝突判定時間TTCthまで短くなると、車両衝突回避支援装置10は、そのまま自車両100を走行させると自車両100が前方物体200に衝突すると判断する。車両衝突回避支援装置10は、そのように判断した場合、第2衝突条件Ccol_2が成立したと判定する。
【0066】
車両衝突回避支援装置10は、第2衝突条件Ccol_2が成立したと判定すると、前方物体200の手前で自車両100を停止させるために必要な自車両100の減速度を目標減速度Gtgtとして設定し、その目標減速度Gtgtで自車両100が減速するように自車両100に付加する制動力を制御する制御(強制制動制御)を開始する。
【0067】
これにより、自車両100は、
図6の(A)に示したように自車両100に付加される駆動力がゼロとされるとともに、自車両100に制動力が付加され始め、その後、
図6の(B)に示したように前方物体200の手前で停止する。これにより、自車両100と前方物体200との衝突が回避される。
【0068】
尚、車両衝突回避支援装置10は、第2衝突条件Ccol_2が成立したときに、自車両100に付加する駆動力をゼロとするとともに自車両100に制動力を付加するだけではく、前方物体200を避けるように自車両100を操舵したほうが好ましいと判断した場合、強制制動制御に合わせて強制操舵制御も実行するように構成されてもよい。
【0069】
この場合、車両衝突回避支援装置10は、第2衝突条件Ccol_2が成立したときに、周辺検出情報INFsに基づいて目標回避経路Rtgtを取得する。目標回避経路Rtgtは、自車両100と前方物体200との衝突を回避するために自車両100を走行させる経路であって、
図7に示したように、自車両100が自車線LN内を走行しつつ前方物体200の横を通過することができる経路である。尚、
図7に示した例においては、目標回避経路Rtgtは、前方物体200の右横を通る経路であるが、前方物体200の左横に自車両100が自車線LN内を走行しつつ前方物体200の横を通過することができるスペースが存在する場合、前方物体200の左横を通る経路が目標回避経路Rtgtとして取得されることもある。
【0070】
車両衝突回避支援装置10は、目標回避経路Rtgtを取得すると、その目標回避経路Rtgtに沿って自車両100が走行するように自車両100に付加する操舵力を制御する強制操舵制御を開始する。車両衝突回避支援装置10は、強制操舵制御の実施中、縦加速度Gx、横加速度Gy、ヨーレートYR及び左右区画線LM等に基づいて自車両100の現在位置を取得し、取得した自車両100の現在位置に基づいて自車両100を目標回避経路Rtgtに沿って走行させるように自車両100に付加する操舵力を制御する。
【0071】
これにより、自車両100は、まず、
図8の(A)に示したように旋回し始め、その直後、反対方向に旋回してその進行方向が自車線LNに対して平行となり、
図8の(B)に示したように前方物体200の横を通過する。これにより、自車両100と前方物体200との衝突が回避される。自車両100がこのように走行する間、強制制動制御も実施されているので、自車両100は減速する。最終的に、自車両100は、
図8の(C)に示したように前方物体200の横で停止される。
【0072】
<停止保持制御>
車両衝突回避支援装置10は、強制制動制御により自車両100を停止させると、強制制動制御を終了し、停止保持制御を開始する。停止保持制御は、自車両100を停止状態に保持する停止保持を行う制御であって、より具体的には、自車両100を停止状態に保持するのに十分な制動力を自車両100に付加し続ける制御である。尚、車両衝突回避支援装置10は、強制制動制御に合わせて強制操舵制御も実行するように構成されている場合、強制制動制御により自車両100を停止させると、強制制動制御及び強制操舵制御を終了し、停止保持制御を開始する。
【0073】
<停止保持制御の終了>
ところで、停止保持制御の開始後、停止保持制御を終了する条件、別の言い方をすると、自車両100の停止保持を解除する条件(停止保持解除条件Ccan)として、停止保持制御の開始から一定の時間が経過したとの条件又は停止保持制御の開始後に運転者Drが何らかの運転操作を行ったとの条件を採用することができる。
【0074】
ところが、強制制動制御により自車両100が停止されたとき、運転者Drが混乱しており、そのために、その運転者Drが通常の運転操作を行うことができない状態にあることがある。一方、停止保持制御が終了されると、例えば、いわゆるクリープ走行により、自車両100が意図せず発進してしまうことがある。特に、停止保持制御の開始後、運転者Drが誤ってアクセルペダル31を踏み込んでいる等、不適切な運転操作を行っているときに停止保持制御が終了されると、自車両100が意図せず急発進してしまう。
【0075】
停止保持制御が終了されて自車両100が意図せず発進(又は急発進)してしまったときに運転者Drが通常の運転操作を行うことができない状態にあると、自車両100の発進に対して運転者Drが適切な運転操作を行うことができず、自車両100が前方の物等に衝突してしまう可能性がある。従って、運転者Drが通常の運転操作を行うことができない状態にあるときに、停止保持制御が開始されてから一定の時間が経過したり、停止保持制御が開始された後、運転者Drによる運転操作が検知されたりしたからといって、停止保持制御を終了してしまうことは適切ではない。
【0076】
そこで、車両衝突回避支援装置10は、以下のようにして停止保持制御を終了させるか否か(即ち、停止保持解除条件Ccanが成立したか否か)を判定するようになっている。
【0077】
車両衝突回避支援装置10は、まず、第1解除条件Ccan_1が成立しているか否かを判定する。第1解除条件Ccan_1は、運転者Drの状況以外の状況に基づいて成立する条件であり、本例においては、停止保持制御の開始から経過した時間(停止保持時間Tstop)が所定停止保持時間Tstop_thに達したときに成立し、又、停止保持制御の開始後、運転者Drによる運転操作が検知されたときに成立する条件である。
【0078】
<第2解除条件>
車両衝突回避支援装置10は、第1解除条件Ccan_1が成立していると判定すると、追加の条件(第2解除条件Ccan_2)が成立しているか否かを判定する。本例において、車両衝突回避支援装置10は、以下のようにして第2解除条件Ccan_2が成立しているか否かを判定する。
【0079】
まず、車両衝突回避支援装置10は、今回、運転者異常時対応制御により自車両100を停止させたか否かを判定する。運転者異常時対応制御は、運転者Drが意識を失っている等、運転者Drが運転操作そのものを行うことができない(又は運転者Drが運転操作を行うことが困難である)ことが明らかであると判定したとき又は非常停止ボタン等が操作されて自車両100を停止させることが要求されたときに実行される制御であって、自車両100に付加する駆動力をゼロにするとともに自車両100に強制的に制動力を付加して自車両100を停止させる制御である。
【0080】
車両衝突回避支援装置10は、この運転者異常時対応制御を実行可能に構成されており、運転者異常時対応制御により自車両100を停止させたときにも、停止保持制御を実行するようになっている。
【0081】
車両衝突回避支援装置10は、運転者Drが意識を失っている等、運転者Drが運転操作を行うことができない状態(又は運転者Drが運転操作を行うことが困難である状態)になっている否かの判定を、運転者画像情報INFdや運転者Drのバイタルデータ等に基づいて判定する。
【0082】
運転者異常時対応制御により自車両100が停止された場合、運転者Drが運転操作自体を行うことができない状態(又は運転者Drが運転操作を行うことが困難である状態)にあることが明らかであるため、運転者異常時対応制御により自車両100を停止した後は、第1解除条件Ccan_1が成立しても、救護者等が自車両100に到着するまで、停止保持制御を継続しておくことが好ましい。
【0083】
そこで、車両衝突回避支援装置10は、今回、運転者異常時対応制御により自車両100を停止させた場合、第2解除条件Ccan_2が成立していないと判定する。この場合、第1解除条件Ccan_1が成立していても、停止保持制御は終了されず、自車両100は停止状態に保持される。
【0084】
一方、車両衝突回避支援装置10は、今回の自車両100の停止を運転者異常時対応制御により行っていない場合、第2解除条件Ccan_2の成否の判定を保留し、運転者Drが運転席に着いているか否かを判定する。
【0085】
車両衝突回避支援装置10は、ドライバーモニターカメラ画像IMGmから運転者Drの頭部の画像(頭部画像IMGh)を検出する頭部画像検出処理を実施し、その処理結果に基づいて運転者Drが運転席に着いているか否かを判定する。
【0086】
頭部画像検出処理により頭部画像IMGhを検出することができない場合、運転者Drが運転席に着いていない可能性があり、この場合に停止保持制御を終了させてしまうと、自車両100が意図せず発進してしまった場合に、その自車両100の発進に対して運転者Drが適切な運転操作を行うことができない可能性がある。
【0087】
そこで、車両衝突回避支援装置10は、頭部画像検出処理により頭部画像IMGhを検出することができない場合、第2解除条件Ccan_2が成立していないと判定する。
【0088】
尚、運転者Drが運転席に着いたことを検知することができる着座センサを自車両100に搭載し、その着座センサによる検知結果に基づいて運転者Drが自車両100の運転席に着いているか否かを判定するように車両衝突回避支援装置10を構成してもよい。
【0089】
又、自車両100の運転席のドアが開いている場合、運転者Drが自車両100の外に出てしまっていると推定することもできるので、自車両100の運転席のドアが開いているか否かに基づいて運転者Drが運転席に着いているか否かを判定するように車両衝突回避支援装置10を構成してもよい。
【0090】
一方、車両衝突回避支援装置10は、頭部画像検出処理により頭部画像IMGhを検出することができた場合、
図9に示したように、ドライバーモニターカメラ画像IMGm中の所定の領域(所定画像領域IMGa)に収まっている頭部画像IMGhの面積(頭部画像面積ARh)を取得する。所定画像領域IMGaは、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いているときに運転者Drの頭部全体が収まる広さの領域に設定されている。
【0091】
車両衝突回避支援装置10は、頭部画像面積ARhを取得すると、所定画像領域IMGaの面積(所定画像領域面積ARa)に占める頭部画像面積ARhの割合(頭部画像面積比RTh)を取得する。
【0092】
運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いている場合、頭部画像面積比RThが一定値以上になっているはずである。
【0093】
そこで、車両衝突回避支援装置10は、頭部画像面積比RThを取得すると、その頭部画像面積比RThが所定の値(所定頭部画像面積比RTh_th)以上であるか否かを判定する。車両衝突回避支援装置10は、この判定を所定演算周期で繰り返し行う。
【0094】
車両衝突回避支援装置10は、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_th以上であると連続して判定している時間(着席時間Tsy)又は頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_thよりも小さいと連続して判定している時間(非着席時間Tsn)を計測する。
【0095】
車両衝突回避支援装置10は、非着席時間Tsnを問わず、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_thよりも小さいと判定した時点で、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いていないと判定するように構成されてもよいが、本例においては、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_thよりも小さいと判定した時点で非着席時間Tsnが所定非着席時間Tsn_th以上となった場合、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いていないと判定し、第2解除条件Ccan_2が成立していないと判定する。
【0096】
又、車両衝突回避支援装置10は、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_th以上であると判定した時点で着席時間Tsyが所定着席時間Tsy_thよりも短い場合も、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いていないと判定し、第2解除条件Ccan_2が成立していないと判定する。
【0097】
一方、車両衝突回避支援装置10は、着席時間Tsyを問わず、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_th以上であると判定した時点で、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いていると判定するように構成されてもよいが、本例においては、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_th以上であると判定した時点で着席時間Tsyが所定着席時間Tsy_th以上となった場合、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いていると判定し、第2解除条件Ccan_2の成否の判定を保留し、運転者Drの視線が前方(自車両100の進行方向)を向いており且つ運転者Drの目が開いた状態が一定時間以上継続しているか否かを判定する。即ち、車両衝突回避支援装置10は、運転者Drが前方を一定時間以上継続して見ているか否かを判定する。
【0098】
又、車両衝突回避支援装置10は、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_thよりも小さいと判定した時点で非着席時間Tsnが所定非着席時間Tsn_thよりも短い場合も、運転者Drが通常の運転操作を行うことができる姿勢で運転席に着いていると判定し、第2解除条件Ccan_2の成否の判定を保留し、運転者Drが自車両100の前方を見ているか否かを判定する。より具体的には、車両衝突回避支援装置10は、運転者Drが自車両100の前方を見ているか否かの判定として、運転者Drの視線が前方(自車両100の進行方向)を向いているか否かの判定、及び、運転者Drの目が開いた状態が一定時間以上継続しているか否かの判定を行う。
【0099】
車両衝突回避支援装置10は、頭部画像IMGhに基づいて運転者Drの頭部についてヨー角θy、ピッチ角θp及びロール角θrを取得する。本例において、ヨー角θyは、
図10の(A)に示したように、運転者Drの頭部Hの鉛直軸線周りの角度であって、運転者Drが自車両100の前方を真っ直ぐ見ているときの運転者Drの視線の方向を基準とした運転者Drの視線の方向を示す角度である。又、ピッチ角θpは、
図10の(B)に示したように、運転者Drの頭部Hの横方向の水平軸線周りの角度であって、運転者Drが自車両100の前方を真っ直ぐ見ているときの運転者Drの視線の方向を基準とした運転者Drの視線の方向を示す角度である。又、ロール角θrは、
図10の(C)に示したように、運転者Drの頭部Hの前後方向の水平軸線周りの角度であって、運転者Drが自車両100の前方を真っ直ぐ見ているときの運転者Drの視線の方向を基準とした運転者Drの視線の方向を示す角度である。
【0100】
車両衝突回避支援装置10は、ヨー角θy、ピッチ角θp及びロール角θrを取得すると、運転者Drの視線が自車両100の前方を向いているかの判定として、ヨー角θyが所定の範囲(所定ヨー角範囲RGy_th)内の角度になっており且つピッチ角θpが所定の範囲(所定ピッチ角範囲RGp_th)内の角度になっており且つロール角θrが所定の範囲(所定ロール角範囲RGr_th)内の角度になっているか否かの判定を行う。
【0101】
更に、車両衝突回避支援装置10は、頭部画像IMGhに基づいて運転者Drの目が開いた状態にあるか否かを判定する。車両衝突回避支援装置10は、この判定を所定演算周期で繰り返し行い、運転者Drの目が開いた状態にあると判定し続けている時間(開眼時間Teo)を計測し、運転者Drの目が開いた状態が一定時間以上継続しているか否かの判定として、開眼時間Teoが所定の時間(所定開眼時間Teo_th)以上であるか否かの判定を行う。
【0102】
尚、運転者Drがサングラス等のメガネをかけており、頭部画像IMGhに基づいて運転者Drの目が開いた状態にあるか否かを判定することができない場合、運転者Drの目が開いた状態にないと判定するように車両衝突回避支援装置10を構成してもよいが、本例においては、運転者Drの目が開いた状態にあると判定するように車両衝突回避支援装置10を構成してある。
【0103】
車両衝突回避支援装置10は、ヨー角θyが所定ヨー角範囲RGy_th内の角度になっていないと判定した場合、又は、ピッチ角θpが所定ピッチ角範囲RGp_th内の角度になっていないと判定した場合、又は、ロール角θrが所定ロール角範囲RGr_th内の角度になっていないと判定した場合、運転者Drの視線が自車両100の前方を向いていないと判定する。又、車両衝突回避支援装置10は、開眼時間Teoが所定開眼時間Teo_thよりも短いと判定した場合、運転者Drの目が開いた状態が一定時間以上継続していないと判定する。
【0104】
車両衝突回避支援装置10は、運転者Drの視線が自車両100の前方を向いていないと判定した場合、又は、運転者Drの目が開いた状態が一定時間以上継続していないと判定した場合、第2解除条件Ccan_2が成立していないと判定する。
【0105】
一方、車両衝突回避支援装置10は、ヨー角θyが所定ヨー角範囲RGy_th内の角度になっており且つピッチ角θpが所定ピッチ角範囲RGp_th内の角度になっており且つロール角θrが所定ロール角範囲RGr_th内の角度になっている場合、運転者Drの視線が自車両100の前方を向いていると判定する。尚、ヨー角θyが所定ヨー角範囲RGy_th内の角度になっており且つピッチ角θpが所定ピッチ角範囲RGp_th内の角度になっており且つロール角θrが所定ロール角範囲RGr_th内の角度になっていると連続して判定している時間を計測し、その時間が所定の時間以上である場合に運転者Drの視線が自車両100の前方を向いていると判定するように車両衝突回避支援装置10を構成してもよい。
【0106】
又、車両衝突回避支援装置10は、開眼時間Teoが所定開眼時間Teo_th以上であると判定した場合、運転者Drの目が開いた状態が一定時間以上継続していると判定する。
【0107】
車両衝突回避支援装置10は、運転者Drの視線が自車両100の前方を向いていると判定し且つ運転者Drの目が開いた状態が一定時間以上継続していると判定した場合、第2解除条件Ccan_2の成否の判定を保留し、停止保持制御を終了した場合に運転者Drが誤った操作を行う状態(誤操作状態)が発生するか否かを以下のようにして判定する。
【0108】
車両衝突回避支援装置10は、停止保持制御を終了した場合に誤操作状態が発生するか否かの判定の1つとして、運転者Drがアクセルペダル31を踏み込んだ状態にあるか否かの判定を行う。
【0109】
車両衝突回避支援装置10は、運転者Drがアクセルペダル31を踏み込んだ状態にあると判定した場合、第2解除条件Ccan_2が成立していないと判定する。この場合、第1解除条件Ccan_1が成立していても、停止保持制御は終了されず、自車両100は停止状態に保持される。
【0110】
又、運転者Drがアクセルペダル31を踏み込んだ状態にないとしても、強制制動制御の開始時点でアクセルペダル31を踏み込んでいた運転者Drがアクセルペダル31の踏込操作を止めてから間もない場合、運転者Drが混乱をしている可能性があり、停止保持制御を終了したことで自車両100が発進してしまった場合、誤操作状態が発生する可能性がある。
【0111】
そこで、車両衝突回避支援装置10は、運転者Drがアクセルペダル31を踏み込んだ状態にないと判定した場合、停止保持制御を終了した場合に誤操作状態が発生する可能性があるか否かの判定の1つとして、強制制動制御の開始時点で運転者Drがアクセルペダル31を踏み込んでおり且つその後、そのアクセルペダル31の踏込操作を運転者Drが止めてから経過した時間(誤操作停止時間Tw)が所定の時間(所定誤操作停止時間Tw_th)以上となっているか否かの判定を行う。
【0112】
車両衝突回避支援装置10は、誤操作停止時間Twが所定誤操作停止時間Tw_thよりも短いと判定した場合、第2解除条件Ccan_2が成立していないと判定する。この場合、第1解除条件Ccan_1が成立していても、停止保持制御は終了されず、自車両100は停止状態に保持される。
【0113】
一方、車両衝突回避支援装置10は、誤操作停止時間Twが所定誤操作停止時間Tw_th以上であると判定した場合、第2解除条件Ccan_2が成立していると判定する。
【0114】
このように、車両衝突回避支援装置10は、今回、運転者異常時対応制御により自車両100を停止させたのではなく且つ運転者Drが運転席に着いており且つ運転者Drが自車両100の前方を見ており且つ停止保持制御を終了しても誤操作状態が発生する可能性が低い場合、第2解除条件Ccan_2が成立していると判定する。
【0115】
車両衝突回避支援装置10は、第2解除条件Ccan_2が成立していると判定した場合、停止保持制御を終了する。即ち、車両衝突回避支援装置10は、第1解除条件Ccan_1及び第2解除条件Ccan_2が成立していると判定した場合、停止保持解除条件Ccanが成立したと判定し、停止保持制御を終了する。
【0116】
以上が車両衝突回避支援装置10の作動の概要である。これによれば、今回、運転者異常時対応制御により自車両100を停止させたのではなく且つ運転者Drが運転席に着いており且つ運転者Drが自車両100の前方を見ており且つ停止保持制御を終了しても誤操作状態が発生する可能性が低いと判定された場合に限り、停止保持制御が終了される。別の言い方をすると、停止保持制御が終了し、自車両100が意図せず発進してしまったとしても、その自車両100の発進に対して運転者Drが適切な運転操作を行うことができる状態にあると判断される場合に限り、停止保持制御が終了される。このため、適切に停止保持制御を終了させることができる。
【0117】
<車両衝突回避支援装置の具体的な作動>
次に、車両衝突回避支援装置10の具体的な作動について説明する。本発明の実施形態に係る車両衝突回避支援装置10のECU90のCPUは、
図11に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図11のステップ1100から処理を開始し、その処理をステップ1105に進め、強制制動中フラグXbの値が「0」であるか否かを判定する。強制制動中フラグXbは、強制制動制御の実行中であるか否かを表すフラグであり、その値は、強制制動制御が開始されたときに「1」に設定され、強制制動制御が終了されたときに「0」に設定される。
【0118】
CPUは、ステップ1105にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1110に進め、第1衝突条件Ccol_1が成立しているか否か、即ち、物体距離D200が衝突可能性判定距離Dth以下となっているか否かを判定する。
【0119】
CPUは、ステップ1110にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1115に進め、通知制御を開始する。尚、通知制御が既に開始されている場合、CPUは、その通知制御を継続する。次いで、CPUは、処理をステップ1120に進め、予測到達時間TTCを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ1125に進め、第2衝突条件Ccol_2が成立しているか否か、即ち、予測到達時間TTCが衝突判定時間TTCth以下となっているか否かを判定する。
【0120】
CPUは、ステップ1125にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1130に進め、強制制動制御を開始する。次いで、CPUは、処理をステップ1135に進め、強制制動中フラグXbの値を「1」に設定する。次いで、CPUは、処理をステップ1140に進め、通知制御を終了する。
【0121】
一方、CPUは、ステップ1125にて「No」と判定した場合、処理をステップ1195に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0122】
又、CPUは、ステップ1105又はステップ1110にて「No」と判定した場合も、処理をステップ1195に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0123】
更に、CPUは、
図12に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図12のステップ1200から処理を開始し、その処理をステップ1205に進め、強制制動中フラグXbの値が「1」であるか否かを判定する。
【0124】
CPUは、ステップ1205にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1210に進め、自車両100が停止しているか否か、即ち、自車両100の車速V100がゼロであるか否かを判定する。
【0125】
CPUは、ステップ1210にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1215に進め、強制制動制御を終了する。次いで、CPUは、処理をステップ1220に進め、強制制動中フラグXbの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、処理をステップ1225に進め、停止保持制御を開始する。次いで、CPUは、処理をステップ1230に進め、停止保持中フラグXstopの値を「1」に設定する。停止保持中フラグXstopは、停止保持制御の実行中であるか否かを表すフラグであり、その値は、停止保持制御が開始されたときに「1」に設定され、停止保持制御が終了されたときに「0」に設定される。
【0126】
次いで、CPUは、処理をステップ1295に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0127】
一方、CPUは、ステップ1210にて「No」と判定した場合、処理をステップ1235に進め、強制制動制御を継続して実行する。次いで、CPUは、処理をステップ1295に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0128】
又、CPUは、ステップ1205にて「No」と判定した場合、処理をステップ1295に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0129】
更に、CPUは、
図13に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図13のステップ1300から処理を開始し、その処理をステップ1305に進め、停止保持中フラグXstopの値が「1」であるか否かを判定する。
【0130】
CPUは、ステップ1305にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1310に進め、
図14に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ1310に進めると、
図14のステップ1400から処理を開始し、その処理をステップ1405に進め、第1解除条件フラグXcan_1の値が「1」であるか否かを判定する。第1解除条件フラグXcan_1は、第1解除条件Ccan_1が成立しているか否かを表すフラグであり、その値は、第1解除条件Ccan_1が成立したときに「1」に設定され、第1解除条件Ccan_1が成立しなくなったときに「0」に設定される。
【0131】
CPUは、ステップ1405にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1410に進め、
図15に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ1410に進めると、
図15のステップ1500から処理を開始し、その処理をステップ1505に進め、異常時対応実施フラグXdの値が「0」であるか否かを判定する。異常時対応実施フラグXdは、運転者異常時対応制御により自車両100が停止されたか否かを表すフラグであり、その値は、運転者異常時対応制御が開始されたときに「1」に設定され、停止保持制御が終了されたときに「0」に設定される。
【0132】
CPUは、ステップ1505にて「Yes」と判定された場合、処理をステップ1510に進め、
図16に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ1510に進めると、
図16のステップ1600から処理を開始し、その処理をステップ1605に進め、頭部画像検出処理を実施する。次いで、CPUは、処理をステップ1610に進め、頭部画像検出処理により頭部画像IMGhを検出することができたか否かを判定する。
【0133】
CPUは、ステップ1610にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1615に進め、頭部画像面積ARhを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ1620に進め、頭部画像面積比RThを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ1625に進め、頭部画像面積比RThが所定頭部画像面積比RTh_th以上であるか否かを判定する。
【0134】
CPUは、ステップ1625にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1630に進め、頭部検出フラグXhの値を「1」に設定する。頭部検出フラグXhは、運転者Drが運転席に着いている可能性を表すフラグであり、その値は、運転者Drが運転席に着いている可能性があるときに「1」に設定され、運転者Drが運転席に着いていない可能性があるときに「0」に設定される。
【0135】
次いで、CPUは、処理をステップ1635に進め、頭部検出フラグXhの値が「1」に設定されてからその値が「1」に維持されている時間(頭部検出時間Thy)が所定頭部検出時間Thy_th以上となっているか否かを判定する。
【0136】
CPUは、ステップ1635にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1640に進め、着席フラグXseatの値を「1」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1695を経由して処理を
図15のステップ1515に進める。
【0137】
一方、CPUは、ステップ1635にて「No」と判定した場合、処理をステップ1645に進め、着席フラグXseatの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1695を経由して処理を
図15のステップ1515に進める。
【0138】
又、CPUは、ステップ1625にて「No」と判定した場合、処理をステップ1650に進め、頭部検出フラグXhの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、処理を1555に進め、頭部検出フラグXhの値が「0」に設定されてからその値が「0」に維持されている時間(頭部非検出時間Thn)が所定頭部非検出時間Thn_th以上となっているか否かを判定する。
【0139】
CPUは、ステップ1655にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1660に進め、着席フラグXseatの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1695を経由して処理を
図15のステップ1515に進める。
【0140】
一方、CPUは、ステップ1655にて「No」と判定した場合、処理をステップ1665に進め、着席フラグXseatの値を「1」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1695を経由して処理を
図15のステップ1515に進める。
【0141】
又、CPUは、ステップ1610にて「No」と判定した場合、処理をステップ1670に進め、着席フラグXseatの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1695を経由して処理を
図15のステップ1515に進める。
【0142】
CPUは、
図15のステップ1515に処理を進めると、運転者Drが運転席に座っているか否か、即ち、着席フラグXseatの値が「1」であるか否かを判定する。
【0143】
CPUは、ステップ1515にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1520に進め、
図17に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ1520に進めると、
図17のステップ1700から処理を開始し、その処理をステップ1705に進め、頭部画像情報INFhに基づいて運転者Drの頭部についてのヨー角θy、ピッチ角θp及びロール角θrを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ1710に進め、ヨー角θyの絶対値が所定ヨー角θy_th以下であるか否かを判定する。
【0144】
CPUは、ステップ1710にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1715に進め、ピッチ角θpの絶対値が所定ピッチ角θp_th以下であるか否かを判定する。
【0145】
CPUは、ステップ1715にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1720に進め、ロール角θrの絶対値が所定ロール角θr_th以下であるか否かを判定する。
【0146】
CPUは、ステップ1720にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1725に進め、開眼時間Teoが所定開眼時間Teo_th以上となっているか否かを判定する。
【0147】
CPUは、ステップ1725にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1730に進め、目視フラグXeの値を「1」に設定する。目視フラグXeは、運転者Drが一定時間以上継続して前方(自車両100の進行方向)を見ているか否かを表すフラグであり、その値は、運転者Drが一定時間以上継続して前方を見ていると判定されたときに「1」に設定され、運転者Drが前方を見ていないと判定されたとき或いは運転者Drが前方を見ているが一定時間以上継続して前方を見ているわけではないと判定されたときに「0」に設定される。
【0148】
次いで、CPUは、ステップ1795を経由して処理を
図15のステップ1525に進める。
【0149】
一方、CPUは、ステップ1725にて「No」と判定した場合、処理をステップ1735に進め、目視フラグXeの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1795を経由して処理を
図15のステップ1525に進める。
【0150】
又、CPUは、ステップ1710又はステップ1715又はステップ1720にて「No」と判定した場合も、処理をステップ1735に進め、目視フラグXeの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1795を経由して処理を
図15のステップ1525に進める。
【0151】
CPUは、処理を
図15のステップ1525に進めると、運転者Drが一定時間以上継続して自車両100の前方を見ているか否か、即ち、目視フラグXeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0152】
CPUは、ステップ1525にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1530に進め、
図18に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ1530に進めると、
図18のステップ1800から処理を開始し、その処理をステップ1805に進め、運転者Drが誤操作を行っているか否か、即ち、運転者Drがアクセルペダル31を踏み込んだ状態にあるか否かを判定する。
【0153】
CPUは、ステップ1805にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1810に進め、誤操作フラグXwの値を「1」に設定する。誤操作フラグXwは、運転者Drが誤った運転操作を現時点で行っている状態にあるか否か或いは誤った運転操作を行ったが現時点ではその誤った運転操作を止めており且つその誤った運転操作を止めてから一定時間が経過しているか否かを表すフラグであり、その値は、運転者Drが誤った運転操作を現時点で行っている状態にある場合、又は、誤った運転操作を行い、現時点ではその誤った運転操作を止めているがその誤った運転操作を止めてから一定時間が経過していない場合、「1」に設定され、運転者Drが誤った運転操作を現時点で行っておらず且つその誤った運転操作を行わなくなってから一定時間が経過している場合、「0」に設定される。
【0154】
次いで、CPUは、ステップ1895を経由して処理を
図15のステップ1535に進める。
【0155】
一方、CPUは、ステップ1805にて「No」と判定した場合、処理をステップ1815に進め、運転者Drが誤操作を停止してから経過した時間(誤操作停止時間Tw)が所定誤操作停止時間Tw_th以上となっているか否かを判定する。
【0156】
CPUは、ステップ1815にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1820に進め、誤操作フラグXwの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1895を経由して処理を
図15のステップ1535に進める。
【0157】
一方、CPUは、ステップ1815にて「No」と判定した場合、処理をステップ1825に進め、誤操作フラグXwの値を「1」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1895を経由して処理を
図15のステップ1535に進める。
【0158】
CPUは、処理を
図15のステップ1535に進めると、停止保持制御を終了した場合に誤操作状態が発生する可能性がないか否か、即ち、誤操作フラグXwの値が「0」であるか否かを判定する。
【0159】
CPUは、ステップ1535にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1540に進め、第2解除条件フラグXcan_2の値を「1」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1595を経由して処理を
図14のステップ1415に進める。
【0160】
一方、CPUは、ステップ1535にて「No」と判定した場合、処理をステップ1545に進め、第2解除条件フラグXcan_2の値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1595を経由して処理を
図14のステップ1415に進める。
【0161】
又、CPUは、ステップ1505又はステップ1515又はステップ1525にて「No」と判定した場合も、処理をステップ1545に進め、第2解除条件フラグXcan_2の値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1595を経由して処理を
図14のステップ1415に進める。
【0162】
CPUは、処理を
図14のステップ1415に進めると、第2解除条件Ccan_2が成立しているか否か、即ち、第2解除条件フラグXcan_2の値が「1」であるか否かを判定する。
【0163】
CPUは、ステップ1415にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1420に進め、停止保持解除条件フラグXcan_0の値を「1」に設定する。停止保持解除条件フラグXcan_0は、停止保持解除条件Ccanが成立しているか否かを表すフラグであり、その値は、停止保持解除条件Ccanが成立していると判定されたときに「1」に設定され、停止保持解除条件Ccanが成立していないと判定されたときに「0」に設定される。
【0164】
次いで、CPUは、ステップ1495を経由して処理を
図13のステップ1315に進める。
【0165】
一方、CPUは、ステップ1415にて「No」と判定した場合、処理をステップ1425に進め、停止保持解除条件フラグXcan_0の値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1495を経由して処理を
図13のステップ1315に進める。
【0166】
又、CPUは、ステップ1405にて「No」と判定した場合も、処理をステップ1425に進め、停止保持解除条件フラグXcan_0の値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ1495を経由して処理を
図13のステップ1315に進める。
【0167】
CPUは、処理を
図13のステップ1315に進めると、停止保持解除条件Ccanが成立しているか否か、即ち、停止保持解除条件フラグXcan_0の値が「1」であるか否かを判定する。
【0168】
CPUは、ステップ1315にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ1320に進め、停止保持制御を終了する。次いで、CPUは、処理をステップ1325に進め、停止保持中フラグXstopの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、処理をステップ1395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0169】
一方、CPUは、ステップ1315にて「No」と判定した場合、処理をステップ1330に進め、停止保持制御を継続して実行する。次いで、CPUは、処理をステップ1395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0170】
又、CPUは、ステップ1305にて「No」と判定した場合、処理をステップ1395に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0171】
以上が車両衝突回避支援装置10の具体的な作動である。
【0172】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0173】
10…車両衝突回避支援装置、60…周辺情報検出装置、70…運転者状態検出装置、90…ECU、100…自車両、200…前方物体