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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20241016BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241016BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20241016BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M10/04 Z
H01M50/35 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021088518
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181524
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】岡本 夕紀
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187554(WO,A1)
【文献】特開2006-179442(JP,A)
【文献】特表2014-534582(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132404(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/096412(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/342
H01M 50/35
H01M 50/131
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と前記集電体に形成された活物質層とを含む複数の電極が積層されて構成されており、複数の前記活物質層のそれぞれを含む複数の内部空間を有する積層体と、
前記複数の内部空間を封止するように前記集電体に設けられ、前記複数の内部空間のそれぞれを外部に連通するための複数の連通孔が形成されたシール部と、
前記複数の連通孔にわたって前記シール部に設けられ、前記複数の連通孔のそれぞれを個別に封止すると共に、開裂により前記複数の内部空間のそれぞれを前記複数の連通孔のそれぞれを介して外部に開放するためのシート部材と、
を備え、
前記シート部材は、前記複数の連通孔のそれぞれの前記内部空間と反対側の第1開口に対向する複数の対向部と、前記第1開口のそれぞれを囲うように前記複数の対向部のそれぞれの周囲に設けられて前記シール部に接合される接合部と、を含み、
前記対向部のそれぞれには、前記開裂の起点となる応力集中部が設けられており、
前記応力集中部が開裂するときの前記対向部にかかる内圧である開裂圧は、前記接合部と前記シール部とが剥離するときの前記対向部にかかる内圧である剥離圧よりも低い、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記シート部材は、前記シール部に接合される第1樹脂層と、前記第1樹脂層の前記シール部と反対側において前記第1樹脂層に積層された金属層と、を含む、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記シート部材は、前記金属層の前記第1樹脂層と反対側において前記金属層に積層された第2樹脂層を含む、
請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記応力集中部は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の少なくとも一方に形成された溝部を含む、
請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記応力集中部は、前記金属層に形成された屈曲部を含む、
請求項2~4のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記シール部は、前記第1開口が形成された外側面と、前記第1開口を囲うように前記外側面に突設された枠部と、を含み、
前記接合部は、前記枠部に接合されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記活物質層には、当該活物質層の一端から他端にわたって延在する溝が形成され、
前記複数の連通孔のそれぞれの前記内部空間側の第2開口は、前記シール部における前記活物質層の前記一端に臨む部分に形成されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記積層体は、前記電極の積層方向に沿って拘束板により拘束されており、
前記拘束板には、当該拘束板の一端から他端にわたって延在する溝が形成されており、
前記複数の連通孔のそれぞれの前記内部空間側の第2開口は、前記積層方向からみて前記シール部における前記拘束板の前記一端に臨む部分に形成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項9】
前記複数の連通孔は、前記積層体の最外層の前記電極の前記活物質層を含む前記内部空間に連通する前記連通孔である第1連通孔と、前記第1連通孔と異なる第2連通孔と、を含み、
前記複数の対向部のうちの前記第1連通孔の前記第1開口に対向する前記対向部に形成された前記応力集中部の前記開裂圧は、前記複数の対向部のうちの前記第2連通孔の前記第1開口に対向する前記対向部に形成された前記応力集中部の前記開裂圧と異なる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電装置が記載されている。この蓄電装置は、セパレータを介して積層された複数のバイポーラ電極を有する。バイポーラ電極は、集電体と、集電体の一方の面に形成された正極層と、集電体の他方の面に形成された負極層と、を有している。蓄電装置は、互いに隣り合うバイポーラ電極の集電体同士の間隔を保持すると共に集電体間に収容空間を形成するスペーサを有している。スペーサは、第一シール部と第二シール部とを含む。第一シール部には、収容空間と外部とを連通する連通部が形成されている。第二シール部は、連通部に隙間が無い状態で挿入されることにより、第一シール部と共に収容空間を封止している。そして、第二シール部における収容空間の圧力に対する耐圧性が、第一シール部と比較して低くされている。これにより、収容空間の圧力が所定の閾値まで上昇したときに、第二シール部が収容空間側から収容空間の外側に向かって押し出され、収容空間の圧力開放が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-092717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の蓄電装置では、連通部のそれぞれに第二シール部を挿入するため、収容空間のそれぞれで内圧上昇時に圧力解放がなされる。一方で、バイポーラ電極の積層数が多くなると、これに対応して第二シール部等の部品点数を同じ数だけ準備する必要があり、好ましくない。
【0005】
そこで、本開示は、電極を複数積層したとしても部品点数の増加を抑制しつつ、かつ内部空間のそれぞれで内圧上昇時に圧力解放が可能な蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る蓄電モジュールは、集電体と集電体に形成された活物質層とを含む複数の電極が積層されて構成されており、複数の活物質層のそれぞれを含む複数の内部空間を有する積層体と、複数の内部空間を封止するように集電体に設けられ、複数の内部空間のそれぞれを外部に連通するための複数の連通孔が形成されたシール部と、複数の連通孔にわたってシール部に設けられ、複数の連通孔のそれぞれを個別に封止すると共に、開裂により複数の内部空間のそれぞれを複数の連通孔のそれぞれを介して外部に開放するためのシート部材と、を備え、シート部材は、複数の連通孔のそれぞれの内部空間と反対側の第1開口に対向する複数の対向部と、第1開口のそれぞれを囲うように複数の対向部のそれぞれの周囲に設けられてシール部に接合される接合部と、を含み、対向部のそれぞれには、開裂の起点となる応力集中部が設けられており、応力集中部が開裂するときの対向部にかかる内圧である開裂圧は、接合部とシール部とが剥離するときの対向部にかかる内圧である剥離圧よりも低い。
【0007】
この蓄電モジュールでは、集電体と活物質層とを含む複数の電極が積層されて積層体が構成されており、集電体のそれぞれにはシール部が形成されている。シール部のそれぞれには、活物質層を含む内部空間に連通する連通孔が形成されている。また、シール部には、複数の連通孔にわたって一括してシート部材が設けられ、複数の連通孔のそれぞれが個別に封止されている。シート部材は、連通孔における内部空間と反対側の第1開口に対向する対向部を含み、当該対向部には開裂の起点となる応力集中部が形成されている。そして、応力集中部が開裂するときの対向部にかかる内圧である開裂圧は、シート部材の接合部とシール部とが剥離するときの対向部にかかる内圧である剥離圧よりも低い。したがって、ある内部空間の内圧が上昇すると、シート部材が、その内部空間に連通した連通孔に対向する対向部の応力集中部を起点として開裂され、当該内部空間が個別に且つ不可逆的に開放される。このように、この蓄電モジュールによれば、複数の内部空間を一括して封止することにより、電極を複数積層したとしても部品点数の増加を抑制しつつ、且つ、内部空間のそれぞれで内圧上昇時に圧力開放が可能である。
【0008】
本開示に係る蓄電モジュールでは、シート部材は、シール部に接合される第1樹脂層と、第1樹脂層のシール部と反対側において第1樹脂層に積層された金属層と、を含んでもよい。この場合、第1樹脂層によってシール部への接着性が確保されると共に、金属層によって水分透過が抑制される。
【0009】
本開示に係る蓄電モジュールでは、シート部材は、金属層の第1樹脂層と反対側において金属層に積層された第2樹脂層を含んでもよい。この場合、第2樹脂層によって金属層の腐食や短絡が抑制される。
【0010】
本開示に係る蓄電モジュールでは、応力集中部は、第1樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方に形成された溝部を含んでもよい。この場合、シート部材全体の破断強度を維持しつつ応力集中部を形成できる。特に、相対的に外側に位置する第2樹脂層に溝部が形成される場合、内部空間の内圧上昇によりシート部材が外側に膨らむように変形したときに、当該溝部に圧力をより集中させることができる。
【0011】
本開示に係る蓄電モジュールでは、応力集中部は、金属層に形成された屈曲部を含んでもよい。この場合、簡単な構成により応力集中部を形成できる。
【0012】
本開示に係る蓄電モジュールでは、シール部は、第1開口が形成された外側面と、第1開口を囲うように外側面に突設された枠部と、を含み、接合部は、枠部に接合されていてもよい。この場合、シート部材のシール部との接合部分が枠部に限定されて接合しやすくなる。
【0013】
本開示に係る蓄電モジュールでは、活物質層には、当該活物質層の一端から他端にわたって延在する溝が形成され、複数の連通孔のそれぞれの内部空間側の第2開口は、シール部における活物質層の一端に臨む部分に形成されていてもよい。この場合、内部空間で生じたガスが活物質層の溝に沿って滞りなく連通孔に導入されることが図られ、速やかなシート部材の開裂を生じさせることが可能となる。
【0014】
本開示に係る蓄電モジュールでは、積層体は、電極の積層方向に沿って拘束板により拘束されており、拘束板には、当該拘束板の一端から他端にわたって延在する溝が形成されており、複数の連通孔のそれぞれの内部空間側の第2開口は、積層方向からみてシール部における拘束板の一端に臨む部分に形成されていてもよい。この場合、内部空間で生じたガスが拘束板の溝に沿って滞りなく連通孔に導入されることが図られ、速やかなシート部材の開裂を生じさせることが可能となる。
【0015】
本開示に係る蓄電モジュールでは、複数の連通孔は、積層体の最外層の電極の活物質層を含む内部空間に連通する通孔である第1連通孔と、第1連通孔と異なる第2連通孔と、を含み、複数の対向部のうちの第1連通孔の第1開口に対向する対向部に形成された応力集中部の開裂圧は、複数の対向部のうちの第2連通孔の第1開口に対向する対向部に形成された応力集中部の開裂圧と異なっていてもよい。一般に、積層体の最外層の電極に対応する内部空間と、積層体の内側の電極に対応する内部空間とでは、内圧上昇の態様が異なる可能性がある。したがって、このように、積層体の最外層とそれ以外とで異なる開裂圧の応力集中部を用いることが有効となる場合がある。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、複数の内部空間を一括して封止しつつ、複数の内部空間のそれぞれを個別に且つ不可逆的に開放可能な蓄電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す模式的な側面図である。
図2図2は、図1に示された蓄電モジュールを示す模式的な断面図である。
図3図3は、図2に示された蓄電モジュールの斜視図である。
図4図4は、図3の一部を拡大して示す分解斜視図(一部部分断面図を含む)である。
図5図5は、図3,4に示されたシール部にシート部材を取り付けた状態を示す模式的な断面図である。
図6図6は、図5に示されたシート部材の一例を示す平面図である。
図7図7は、図5に示されたシート部材の一例を示す平面図である。
図8図4,5に示されたシート部材の例を示す断面図である。
図9】活物質層とシート部材との位置関係を説明する模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る蓄電装置について詳細に説明する。各図には、X軸、Y軸、Z軸によって規定される直交座標系を図示する場合がある。また、各図の説明において、同一の要素同士或いは相当する要素同士には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す模式的な側面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる装置である。蓄電装置1は、蓄電モジュール11を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に電気的に接続される接続部材3,4と、モジュール積層体2を拘束するための一対のエンドプレート5と、エンドプレート5,5同士を締結する締結部材6とを備えている。
【0020】
モジュール積層体2は、複数の蓄電モジュール11と、複数の導電板PとをZ軸方向に積層することによって構成されている。図1の例では、モジュール積層体2は、2体の蓄電モジュール11と、3体の導電板Pとを備えている。3体の導電板Pは、蓄電モジュール11間、及び積層方向におけるモジュール積層体2の両端にそれぞれ配置されている。これらの導電板Pは、蓄電モジュール11を構成する電極に電気的に接続されている。ここでは、2体の蓄電モジュール11は、導電板Pによって直列接続されている。
【0021】
導電板Pの内部には、空気等の冷却用媒体を流通させる複数の流路(不図示)が設けられていてもよい。導電板P内の流路に冷却用媒体を流通させることで、導電板Pは、複数の蓄電モジュール11同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール11で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つこととなる。図1の例では、導電板Pの面積が蓄電モジュール11の面積よりも一回り小さくなっている。放熱性の向上の観点から、導電板Pの面積は、蓄電モジュール11の面積と等しくなっていてもよく、蓄電モジュール11の面積よりも一回り大きくなっていてもよい。
【0022】
接続部材3,4は、蓄電装置1の正極端子及び負極端子として機能する導電部材(バスバー)である。接続部材3は、正極側となる導電板Pに電気的に接続され、接続部材4は、負極側となる導電板Pに電気的に接続されている。接続部材3,4は、例えば金属材料又は合金材料によって形成されている。金属材料としては、例えば銅、アルミニウム、チタン、ニッケル等が挙げられる。合金材料としては、例えばステンレス鋼板(SUS301、SUS304等)や、上記金属材料の合金が挙げられる。接続部材3,4の少なくとも一方には、熱伝導性に優れる放熱フィン(不図示)が取り付けられていてもよい。この場合、導電板P、接続部材3,4、及び放熱フィンを介し、蓄電モジュール11において発生した熱を効果的に放熱できる。
【0023】
一対のエンドプレート5及び締結部材6は、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材を構成している。一対のエンドプレート5は、モジュール積層体2を積層方向に挟むように設けられている。エンドプレート5は、例えば金属板によって形成されている。エンドプレート5の形成材料としては、例えば銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の合金などが挙げられる。エンドプレート5は、図1及び図2に示すように、モジュール積層体2を積層方向から見た場合の形状(ここでは矩形状)よりも一回り大きい矩形状をなしている。エンドプレート5は、積層方向から見てモジュール積層体2と同心に配置されている。これにより、エンドプレート5の4辺の縁部は、モジュール積層体2の挟持部分よりも外側に張り出す張出部分5aとなっている。
【0024】
締結部材6は、例えばボルト6A及びナット6Bによって構成されている。ボルト6Aは、一対のエンドプレート5のそれぞれの張出部分5aに設けられた挿通孔5bに通され、ナット6Bの螺合によって一対のエンドプレート5を締結している。これにより、モジュール積層体2には、一対のエンドプレート5を介して積層方向に拘束荷重が付加されている。本実施形態では、積層方向から見た場合に、締結部材6は、エンドプレート5の張出部分5aにおいてエンドプレート5の角部に対応する位置を含むように4辺の縁部に等間隔に配置されている。
【0025】
図2は、図1に示された蓄電モジュールの層構成を示す模式的な断面図である。蓄電モジュール11は、Z軸方向に扁平な直方体形状をなす単電池である。本実施形態では、蓄電モジュール11として、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池を例示する。蓄電モジュール11は、複数のバイポーラ電極(電極)14を含む電極積層体(積層体)12と、封止部13とを含む。電極積層体12におけるバイポーラ電極14は、Z軸方向に沿って積層されている。バイポーラ電極14の積層方向は、Z軸方向に沿っており、モジュール積層体2における蓄電モジュール11の積層方向と一致している。
【0026】
バイポーラ電極14は、集電体21と、集電体21の第1面21aに設けられた正極活物質層(活物質層)22と、集電体21の第2面21bに設けられた負極活物質層(活物質層)23とを備えている。集電体21と当該集電体21の第1面21aに設けられた正極活物質層22とは、バイポーラ電極14の正極を構成しており、集電体21と当該集電体21の第2面21bに設けられた負極活物質層23とは、バイポーラ電極14の負極を構成している。
【0027】
集電体21は、平面視において矩形状をなすシート状の導電部材であり、第1面21a及び第1面21aの反対側に位置する第2面21bを有している。集電体21は、例えば金属箔又は合金箔によって構成されている。金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、ニッケル箔等が挙げられる。合金箔としては、例えばステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301等)、メッキ処理が施された鋼板(例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等))、メッキ処理が施されたステンレス鋼板などが挙げられる。合金箔は、上記金属箔の材料として例示した金属の合金箔であってもよい。集電体21は、複数の金属箔が一体化されて形成されていてもよく、金属箔の表面に別の金属をメッキすることで形成されていてもよい。
【0028】
正極活物質層22は、正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材である。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物としては、例えばオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)が挙げられる。
【0029】
結着剤は、活物質又は導電助剤を集電体21の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、アクリル酸やメタクリル酸などのモノマー単位を含むアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体等が挙げられる。これらの結着剤は、単独又は複数で用いることができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。正極活物質層22には、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の粘度調整溶媒が用いられていてもよい。
【0030】
負極活物質層23は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材である。負極活物質としては、例えば黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素若しくは当該元素の化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。導電助剤及び結着剤は、正極活物質層22に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0031】
電極積層体12において、積層方向に隣り合うバイポーラ電極14は、互いの正極活物質層22と負極活物質層23とが向かい合うように配置されている。バイポーラ電極14間には、セパレータ15が配置されている。本実施形態では、セパレータ15は、平面視において矩形状をなすシート状部材であり、積層方向に隣り合うバイポーラ電極14間の短絡を防止する。セパレータ15は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムによって構成されている。セパレータ15は、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布によって構成されていてもよい。セパレータ15は、フッ化ビニリデン樹脂化合物によって補強されていてもよい。
【0032】
電極積層体12は、バイポーラ電極14の他に、正極終端電極(電極)16及び負極終端電極(電極)17を有している、正極終端電極16は、集電体21と、集電体21の第1面21aに設けられた正極活物質層22とによって構成されている。正極終端電極16は、第1面21aの正極活物質層22が末端のバイポーラ電極14の負極活物質層23と向かい合うように、電極積層体12における積層方向の一端側に配置されている。正極終端電極16では、集電体21の第2面21bには負極活物質層23が設けられておらず、当該第2面21bは、隣接する導電板Pに対して電気的に接続されている。
【0033】
負極終端電極17は、集電体21と、集電体21の第2面21bに設けられた負極活物質層23とによって構成されている。負極終端電極17は、第2面21bの負極活物質層23が末端のバイポーラ電極14の正極活物質層22と向かい合うように、電極積層体12における積層方向の他端側に配置されている。負極終端電極17では、集電体21の第1面21aには正極活物質層22が設けられておらず、当該第1面21aは、隣接する導電板Pに対して電気的に接続されている。
【0034】
上述したセパレータ15は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極14に加え、バイポーラ電極14と正極終端電極16との間、及びバイポーラ電極14と負極終端電極17との間にも配置されている。セパレータ15の配置により、バイポーラ電極14と正極終端電極16との間の短絡、及びバイポーラ電極14と負極終端電極17との間の短絡が防止される。
【0035】
封止部13は、電極積層体12において積層方向に延びる側面部分を封止する部分である。封止部13は、積層方向から見た場合に、集電体21の外形に倣う矩形枠状をなしている。封止部13は、集電体21の縁部21cの第1面21a側に溶着されている。封止部13は、一のバイポーラ電極14に対して積層方向に隣り合う他のバイポーラ電極14における集電体21の縁部21cの第2面21b側に更に溶着されていてもよい。
【0036】
正極終端電極16では、集電体21の縁部21cの第1面21a側及び第2面21b側の双方に封止部13が溶着されている。負極終端電極17では、集電体21の縁部21cの第1面21aに封止部13が溶着されている。
【0037】
封止部13は、例えば耐熱性及び電解液に対する耐腐食性を有する樹脂によって構成されている。このような樹脂としては、ポリイミド、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。封止部13と積層方向に隣り合う集電体21とによって囲われた内部空間Sには、図示しない電解液が収容されている。電解液は、例えばカーボネート系又はポリカーボネート系の電解液である。電解液に含まれる支持塩としては、例えばリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えばLiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO、若しくはこれらの混合物が用いられる。
【0038】
封止部13は、集電体21の縁よりも外側に張り出す張出部分13aを有している。積層方向に隣り合う封止部13の張出部分13a同士は、互いに溶着されている。これにより、蓄電モジュール11では、複数の封止部13によって、内部空間Sのそれぞれを封止するためのシール部30が構成されている。
【0039】
このように、蓄電モジュール11は、複数のバイポーラ電極14、正極終端電極16、及び負極終端電極17が積層されて構成されており、複数の活物質層(正極活物質層22及び/又は負極活物質層23)のそれぞれを含む複数の内部空間Sを有する電極積層体12を備えている。また、蓄電モジュール11は、当該複数の内部空間Sを封止するように集電体21に設けられた封止部13(シール部30)を備える。特に、シール部30には、内部空間Sの内圧調整のための構成が設けられている。引き続いて、この点についてより具体的に説明する。
【0040】
図3は、図2に示された蓄電モジュールの斜視図である。図4は、図3の一部を拡大して示す分解斜視図(一部断面図を含む)である。図3,4に示されるように、シール部30を構成する1つの壁部30aには、内部空間Sの内圧を調整するためのシート部材40を取り付けるための複数(ここでは4つ)の取付領域24が設けられている。壁部30aは、封止部13の1つの外側面13bを含む壁部である。取付領域24のそれぞれには、複数(ここでは6つ)の連通孔30Hが設けられている(開口している)。連通孔30Hのそれぞれは、内部空間Sのそれぞれを外部に連通している。連通孔30Hのそれぞれは、互いに異なる内部空間Sのそれぞれに連通されている。連通孔30Hのそれぞれは、封止部13のそれぞれに設けられている。連通孔30Hのそれぞれは、封止部13を貫通して内部空間Sのそれぞれに至っている。これにより、連通孔30Hのそれぞれが、内部空間Sのそれぞれに連通することとなる。連通孔30Hは、取付領域24のそれぞれにおいて、3列,2段(Y軸方向に3列、Z軸方向に2段)に配列されている。したがって、連通孔30Hは、壁部30aにおいて12列,2段に配列されている。
【0041】
連通孔30Hは、封止部13の1つの外側面13b(すなわち、シール部30の壁部30aの外表面)に開口(第1開口)30Haを有する。開口30Haは、連通孔30Hにおける内部空間Sと反対側の開口であって、外側面13bに開口している。取付領域24のそれぞれには、シール部30の壁部30aの外表面に突設されている枠部27が設けられている。枠部27は、連通孔30Hの開口30Haをそれぞれ囲うように設けられている。これにより、枠部27は、連通孔30Hのそれぞれに繋がる複数(ここでは6つ)の空間部30sを形成している。空間部30s同士は、互いに枠部27の隔壁により区分けされて独立している。連通孔30H及び当該連通孔30Hに繋がる空間部30sとは、内部空間Sからのガスの流路28を形成する。
【0042】
図5は、図3,4に示されたシール部にシート部材を取り付けた状態を示す模式的な断面図である。図6及び図7は、図5に示されたシート部材の一例を示す平面図である。図5~7に示されるように、シート部材40は、枠部27を介してシール部30に取り付けられている。シート部材40は、シール部30(ここでは枠部27)に例えば溶着や接着により接合されている。より具体的には、シート部材40は、連通孔30Hのそれぞれの開口30Haに対向する(すなわち、空間部30sに面する)複数の対向部40aと、開口30Haのそれぞれを囲うように複数の対向部40aのそれぞれの周囲に設けられてシール部30(ここでは枠部27)に接合される接合部40bと、を含む。すなわち、シール部30は、開口30Haが形成された外側面13bと、外側面13bに交差する方向からみて開口30Haを囲うように外側面13bに突設された枠部27と、を含み、接合部40bは、枠部27に接合されることとなる。
【0043】
1つのシート部材40における対向部40aの数は、1つの取付領域24における連通孔30Hの数と同数であり、例えば6つである。これにより、1つの対向部40aと当該対向部40aの周囲に設けられた接合部40bとが、協働して1つの連通孔30H及び当該連通孔30Hに繋がる空間部30sを封止している。このように、1つのシート部材40は、複数(ここでは6つ)の連通孔30Hにわたってシール部30に設けられ、複数の連通孔30Hのそれぞれを個別に封止している。
【0044】
シート部材40は、ここでは複数の層から構成されている。より具体的には、シート部材40は、互いに積層された第1樹脂層41、金属層42、及び、第2樹脂層43を含む。第1樹脂層41は、シール部30(枠部27)に接合されている。すなわち、第1樹脂層41は、最もシール部30側に位置する層であり、シール部30との接着層でもある。したがって、第1樹脂層41の材料は、シール部30の枠部27の樹脂材料との接着性を考慮して任意に選択され得る。
【0045】
金属層42は、第1樹脂層41のシール部30と反対側において第1樹脂層41に積層されている。金属層42は、第1樹脂層41に接合されて一体化されている。金属層42は、シート部材40の全体の耐圧強度を維持すると共に、例えば、シート部材40における内部空間Sへの水分透過を抑制するための機能を有する。
【0046】
第2樹脂層43は、金属層42の第1樹脂層41と反対側において金属層42に積層されている。第2樹脂層43は、金属層42に接合されて一体化されている。これにより、第1樹脂層41、金属層42、及び第2樹脂層43の全体が一体化されてラミネートフィルム状とされている。第2樹脂層43は、少なくとも金属層42を被覆することにより、金属層42の腐食や短絡の抑制に寄与している。
【0047】
以上のようなシート部材40は、内部空間Sの内圧が上昇したときに、当該内部空間Sに対応した部分が選択的に破断することによって、当該内部空間Sを不可逆的に外部に開放する機能を有している。より具体的には、シート部材40では、対向部40aのそれぞれに応力集中部50が形成されている。応力集中部50は、例えば内部空間Sでガスが発生することにより、当該内部空間S、連通孔30H、及び空間部30sの内圧が上昇し、対向部40aが外側に膨らむように変形するように対向部40aに内圧が付加されたときに、当該内圧による変形によって引張応力が集中することにより対向部40aの開裂の起点となる部分である。応力集中部50に生じる引張応力は対向部40aに付加される内圧に比例する。ここで、応力集中部50が開裂するときの対向部40aにかかる内圧(すなわち、応力集中部50が破断するような引張応力が生じる内圧)を開裂圧とする。
【0048】
このように、シート部材40は、対向部40aのそれぞれに応力集中部50が設けられることにより、ある内部空間Sの内圧が上昇したときに、当該内部空間Sに対応した部分(対向部40a)が選択的に破壊されることにより、その内部空間Sの内圧のみを調整可能としている。
【0049】
応力集中部50は、一例として、図8の(a)に示されるように、シート部材40のうちの第2樹脂層43に形成された溝部53gを含むことができる。溝部53gは、第2樹脂層43を貫通していてもよいが、第2樹脂層43の金属層42を被覆することによる腐食・短絡抑制機能の観点からは第2樹脂層43を貫通しないように設けられ得る。このような場合、シート部材40のうちの第2樹脂層43において、溝部53gが設けられた部分は形状が急激に変化することから、応力集中による開裂が生じやすくなる。また、少なくとも溝部53gが設けられた部分は他の部分と比べて強度が相対的に低下している。
【0050】
また、応力集中部50は、別の例として、図8の(b)に示されるように、シート部材40のうちの第1樹脂層41に形成された溝部51gを含むことができる。溝部51gは、第1樹脂層41を貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。溝部51gが設けられる対向部40aは、シート部材40のシール部30への接合に寄与する部分でないため、溝部51gが第1樹脂層41を貫通していても第1樹脂層41の接着性に関する機能が損なわれることはない。このような場合、シート部材40のうちの第1樹脂層41において、溝部51gが設けられた部分は形状が急激に変化することから、応力集中による開裂が生じやすくなる。また、少なくとも溝部51gが設けられた部分は、他の部分と比べて強度が相対的に低下している。
【0051】
さらに、応力集中部50は、さらなる別の例として、図8の(c)に示されるように、シート部材40の全体を屈曲させることにより、金属層42に生じた屈曲部52bを含むことができる。この場合、金属層42の屈曲部52bの座屈した部分では形状が急激に変化することから、応力集中による開裂が生じやすくなる。また、金属層42の屈曲部52bの座屈した部分は他の部分と比べて強度が相対的に低下している。なお、応力集中部50では、これらの溝部51g,53g、及び屈曲部52bが混在されていてもよい。
【0052】
応力集中部50の平面視での形状は、図6,7に示されるように種々の形態が想定される。例えば、図6の(a)に示される例では、応力集中部50は、対向部40aの外縁に対して斜めに延びる2本の直線(対角線)が対向部40aの中心付近で交差するように形成されている。なお、ここで図示されている直線とは、上述した溝部51g、溝部53g、及び、屈曲部52bの少なくとも1つである(以下同様)。
【0053】
また、図6の(b)に示される例では、応力集中部50は、対向部40aの外縁に沿った2本の直線が対向部40aの中心付近で交差するように形成されている。また、図6の(c)に示される例では、応力集中部50は、対向部40aの中心付近を囲うような円形状(ここでは楕円形状)の曲線によって形成されている。なお、ここでの曲線も、上記の直線と同様に、溝部51g、溝部53g、及び、屈曲部52bの少なくとも1つである。
【0054】
さらに、図7の(a)に示される例では、応力集中部50は、対向部40aの外縁の1つに沿って一方向に延びる1つの直線によって形成されており、図7の(b)に示される例では、対向部40aの別の外縁に沿って別の方向に延びる別の1つの直線によって形成されている。このように、応力集中部50では種々の形状が想定され、求められる開裂圧(開裂のしやすさ、応力の集中しやすさ)に応じて適宜選択され得る。換言すれば、シート部材40では、応力集中部50の形状を選択することにより開裂圧を制御可能である。
【0055】
例えば、応力集中部50は、より開裂圧の低い(開裂しやすい、応力集中の度合いが大きい)ものが要求される場合、図6の(a),(b)のように互いに交差する2本の直線を含むように構成され得るし、より開裂圧の大きい(開裂しにくい、応力集中の度合いが小さい)ものが要求される場合、図6の(c)に示されるように不連続点や端部を有さない閉曲線(円、楕円)を含むように構成され得る。或いは、それらの間の中程度の開裂圧が要求される場合、図7の(a),(b)のように1つの直線を含むように構成されてもよいし、各形状を適宜混在させて構成されてもよい。
【0056】
なお、接合部40bに生じる引き剥がし力は対向部40aに付加される内圧に比例する。ここで、接合部40bとシール部30とが剥離するときの対向部40aにかかる内圧(すなわち、接合部40bとシール部30との接合が破断するような引き剥がし力が生じる内圧)を剥離圧とする。シート部材40では、接合部40bにおけるシール部30との接合が破断するよりも、対向部40aの応力集中部50を起点とした開裂が生じやすくなるように、応力集中部50の開裂圧が接合部40bの剥離圧よりも低くなるように調整されている。これにより、ある内部空間Sの内圧が上昇し、その内部空間Sに連通する連通孔30Hに対向する対向部40aに内圧が付加されたときに、その対向部40aの周囲の接合部40bにおいてシール部30との接合が破れ、問題の内部空間Sと別の内部空間Sとが連通することが避けられる。また、シート部材40(対向部40aのうち応力集中部50が存在しない部分)が破断するときの対向部40aにかかる内圧は、開裂圧及び剥離圧よりも高い。
【0057】
なお、一般に、電極積層体12の最外層の正極終端電極16及び負極終端電極17に対応する内部空間S(正極終端電極16の活物質層又は負極終端電極17の活物質層を含む内部空間S)と、電極積層体12の内側のバイポーラ電極14に対応する内部空間S(バイポーラ電極14の活物質層のみを含む内部空間S)とでは、内圧上昇の態様が異なる可能性がある。これは、電極積層体12が、その積層方向に沿って導電板(拘束板)Pにより拘束されているため、最外層の正極終端電極16及び負極終端電極17では、導電板Pに重複する部分では変形しにくいものの、導電板Pよりも外側の部分では、内側のバイポーラ電極14に比べてむしろ内圧上昇に応じて変形しやすい場合があることが一因と考えられる。このため、最外層と内側の層とで応力集中部50の形態を変更してもよい。
【0058】
すなわち、複数の連通孔30Hは、電極積層体12の最外層の正極終端電極16(又は負極終端電極17)の活物質層を含む内部空間Sに連通する連通孔30Hである第1連通孔31Hと、第1連通孔31Hと異なる(以外の)第2連通孔32Hと、を含み(図6の(c)参照)、複数の対向部40aのうちの第1連通孔31Hの開口30Haに対向する対向部40aに形成された応力集中部50の開裂圧を、複数の対向部40aのうちの第2連通孔32Hの開口30Haに対向する対向部40aに形成された応力集中部50の開裂圧と異ならせることができる。図7の(c)の例では、最外層に対応する応力集中部50が、開裂圧が相対的に大きいものとされているが、これとは逆に、最外層に対応する応力集中部50が、開裂圧が相対的に小さいものとされてもよい。
【0059】
ここで、図9に示されるように、蓄電モジュール11では、例えば正極活物質層22には、積層方向と交差する方向において、当該正極活物質層22の一端22aから他端22bにわたって延在する溝22gが形成されている。そして、連通孔30Hのそれぞれの内部空間S側の開口(第2開口)30Hbは、シール部30(封止部13)における正極活物質層22の一端22aに臨む部分に形成されている。すなわち、矩形枠状のシール部30(封止部13)の各辺のうち、溝22gの延びる方向と交差して正極活物質層22の一端22aと対向する辺に連通孔30Hが設けられている。なお、図示の例では正極活物質層22が示されているが、負極活物質層23についても(或いは負極活物質層23のみを)同様の構成としてもよい。
【0060】
さらには、電極積層体12を拘束する導電板Pに対して、同様に構成してもよい。すなわち、導電板Pに対して、積層方向と交差する方向において、当該導電板Pの一端から他端にわたって延在する溝を形成すると共に、連通孔30Hのそれぞれの内部空間S側の開口30Hbを、積層方向からみてシール部30における導電板Pの当該一端に臨む部分に形成してもよい。すなわち、矩形枠状のシール部30(封止部13)の各辺のうち、当該溝の延びる方向と交差する辺であって導電板Pの上記一端に近い辺に連通孔30Hが設けられてもよい。
【0061】
以上説明したように、蓄電モジュール11は、集電体と集電体に形成された活物質層とを含む複数の電極(バイポーラ電極14、正極終端電極16、及び負極終端電極17)が積層されて構成されており、複数の活物質層のそれぞれを含む複数の内部空間Sを有する電極積層体12と、複数の内部空間Sを封止するように集電体に設けられ、複数の内部空間Sのそれぞれを外部に連通するための複数の連通孔30Hが形成されたシール部30と、複数の連通孔30Hにわたってシール部30に設けられ、複数の連通孔30Hのそれぞれを個別に封止すると共に、開裂により複数の内部空間Sのそれぞれを複数の連通孔30Hのそれぞれを介して外部に開放するためのシート部材40と、を備えている。シート部材40は、複数の連通孔40Hのそれぞれの内部空間Sと反対側の開口30Haに対向する複数の対向部40aと、開口30Haのそれぞれを囲うように複数の対向部40aのそれぞれの周囲に設けられてシール部30に接合される接合部40bと、を含む。対向部40aのそれぞれには、開裂の起点となる応力集中部50が設けられている。そして、応力集中部50が開裂するときの対向部40aにかかる内圧である開裂圧は、シート部材40の接合部40bとシール部30とが剥離するときの対向部40aにかかる内圧である剥離圧よりも低い。
【0062】
したがって、この蓄電モジュール11では、ある内部空間Sの内圧が上昇すると、シート部材40が、その内部空間Sに連通した連通孔30Hに対向する対向部40aの応力集中部50を起点として開裂され、当該内部空間Sが個別に開放される。このように、この蓄電モジュール11によれば、複数の内部空間Sを一括して封止することにより、電極を複数積層したとしても部品点数の増加を抑制しつつ、且つ、内部空間のそれぞれで内圧上昇時に圧力開放が可能である。また、蓄電モジュール11としてリチウムイオン二次電池が用いられる場合には、封止が解除されて内圧が解放された後には、内部空間Sに水分が混入するおそれがあるため、解放後に蓄電モジュール11を再利用することが好ましくない場合がある。これに対して、蓄電モジュール11では、シート部材40の開裂により不可逆的に内圧を解放するため、このような場合に蓄電モジュール11が再利用されることを抑制できる。
【0063】
また、蓄電モジュール11では、シート部材40は、シール部30に接合される第1樹脂層41と、第1樹脂層41のシール部30と反対側において第1樹脂層41に積層された金属層42と、を含んでいる。このため、第1樹脂層41によってシール部30への接着性が確保されると共に、金属層42によって内部空間Sへの水分透過が抑制される。
【0064】
また、蓄電モジュール11では、シート部材40は、金属層42の第1樹脂層41と反対側において金属層42に積層された第2樹脂層43を含んでいる。このため、第2樹脂層43によって金属層42の腐食や短絡が抑制される。
【0065】
また、蓄電モジュール11では、応力集中部50は、第1樹脂層41及び第2樹脂層43の少なくとも一方に形成された溝部51g,53gを含んでもよい。この場合、シート部材40全体の破断強度を維持しつつ応力集中部50を形成できる。特に、相対的に外側に位置する第2樹脂層43に溝部53gが形成される場合、内部空間Sの内圧上昇によりシート部材40が外側に膨らむように変形したときに、当該溝部53gに引張応力をより集中させることができる。
【0066】
また、蓄電モジュール11では、応力集中部50は、金属層42に形成された屈曲部52bを含んでもよい。この場合、簡単な構成により応力集中部50を形成できる。
【0067】
また、蓄電モジュール11では、シール部30は、開口30Haが形成された外側面13bと、開口30Haを囲うように外側面18aに突設された枠部27と、を含み、接合部40bは、枠部27に接合されている。このため、シート部材40のシール部30との接合部分が枠部27に限定されて接合しやすくなる。
【0068】
また、蓄電モジュール11では、正極活物質層22(又は負極活物質層23には、当該正極活物質層22の一端22aから他端22bにわたって延在する溝22gが形成され、複数の連通孔30Hのそれぞれの内部空間S側の開口30Hbは、シール部30における一端22aに臨む部分に形成されている。このため、内部空間Sで生じたガスが溝22gに沿って滞りなく連通孔30Hに導入されることが図られ、速やかなシート部材40の開裂を生じさせることが可能となる。
【0069】
また、蓄電モジュール11では、電極積層体12は、バイポーラ電極14等の積層方向に沿って導電板Pにより拘束されており、導電板Pには、当該導電板Pの一端から他端にわたって延在する溝が形成されていてもよい。この場合、複数の連通孔30Hのそれぞれの内部空間S側の開口30Hbは、積層方向からみてシール部30における導電板Pの当該一端に臨む部分に形成されていてもよい。この場合、内部空間Sで生じたガスが導電板Pの溝に沿って滞りなく連通孔30Hに導入されることが図られ、速やかなシート部材40の開裂を生じさせることが可能となる。
【0070】
さらに、蓄電モジュール11では、複数の連通孔30Hは、電極積層体12の最外層の電極(正極終端電極16又は負極終端電極17)の活物質層を含む内部空間Sに連通する連通孔30Hである第1連通孔31Hと、第1連通孔31Hと異なる第2連通孔32Hと、を含み、複数の対向部40aのうちの第1連通孔31Hの開口30Haに対向する対向部40aに形成された応力集中部50の開裂圧は、複数の対向部40aのうちの第2連通孔32Hの開口30Haに対向する対向部40aに形成された応力集中部50の開裂圧と異なっていてもよい。一般に、電極積層体12の最外層の正極終端電極16又は負極終端電極17に対応する内部空間Sと、電極積層体12の内側のバイポーラ電極14に対応する内部空間Sとでは、内圧上昇の態様が異なる可能性がある。したがって、このように、電極積層体12の最外層とそれ以外とで開裂圧の異なる応力集中部50を用いることが有効となる場合がある。
【0071】
以上の実施形態は、本開示の一側面を説明したものである。したがて、本開示は、上記の記載に限定されずに任意に変形され得る。
【0072】
例えば、上記実施形態では、第1樹脂層41、金属層42、及び、第2樹脂層43の3層からなるシート部材40を例示した。しかし、シート部材40は、第1樹脂層41と金属層42とから構成されてもよいし、第1樹脂層41、金属層42、及び第2樹脂層43の少なくとも1つの層を含んでいればよい。
【0073】
また、上記実施形態では、シール部30(封止部13)が枠部27を含み、シート部材40がこの枠部27に接合される例を説明した。しかし、シール部30には、枠部27が設けられておらず、シート部材40がシール部30の平坦な面に接合されていてもよい。
【0074】
さらに、上記実施形態では、正極活物質層22に溝22gを設けると共に、その溝22gと連通孔30H及びシート部材40との位置関係を特定した。しかし、正極活物質層22に溝22gを設けなくてもよいし、溝22gを設けたとしても連通孔30H及びシート部材40との位置関係が変更されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
11…蓄電モジュール、12…電極積層体(積層体)、14…バイポーラ電極(電極)、16…正極終端電極(電極)、17…負極終端電極(電極)、21…集電体、22…正極活物質層(活物質層)、22g…溝、23…負極活物質層(活物質層)、27…枠部、30…シール部、30H…連通孔、30Ha…開口(第1開口)、30Hb…開口(第2開口)、31H…第1連通孔、32H…第2連通孔、40…シート部材、40a…対向部、40b…接合部、41…第1樹脂層、42…金属層、43…第2樹脂層、50…応力集中部、51g,53g…溝部、52b…屈曲部、P…導電板(拘束板)、S…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9