(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】半導体モジュール、電気部品、および半導体モジュールと電気部品との接続構造
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241016BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241016BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20241016BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H05K7/12 E
(21)【出願番号】P 2021104329
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 寛
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 宏和
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 克也
(72)【発明者】
【氏名】土居 公司
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/002442(WO,A1)
【文献】特開2006-50769(JP,A)
【文献】特開平7-45450(JP,A)
【文献】特開2001-210392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 25/07
H05K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールであって、
半導体チップ(10)を樹脂封止した樹脂モールド部(19)と、
前記樹脂モールド部から露出した第1端子(15)および第2端子(16)と、を備え、
前記第1端子および前記第2端子は、それぞれ板状とされ、互いに積層されており、
前記第2端子は、前記樹脂モールド部の外部に突出しており、
前記第1端子は、前記樹脂モールド部のうち前記第2端子が突出した面とは異なる面に露出している半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1端子および前記第2端子は、前記樹脂モールド部に形成された凸部(19a)に覆われ、前記凸部に覆われた部分において互いに積層されており、
前記第2端子は、前記凸部から前記樹脂モールド部の外部に突出しており、
前記第1端子は、前記凸部のうち前記第
2端子が突出した面とは異なる面に形成された開口部において前記凸部から露出している請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第1端子および前記第2端子は、前記樹脂モールド部に形成された凸部(19a)に覆われ、前記凸部に覆われた部分において互いに積層されており、
前記第2端子は、前記樹脂モールド部から突出した部分が前記樹脂モールド部からの突出方向を長手方向とした板状とされ、前記樹脂モールド部から突出した部分の根元が前記凸部に覆われており、
前記第1端子は、前記凸部のうち前記第2端子が突出した面とは異なる面に形成された開口部において前記凸部から露出しており、
前記開口部のうち少なくとも一部は、前記第1端子および前記第2端子の積層方向に垂直な平面において、前記第2端子のうち該板状とされた部分に重なるように配置されている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第1端子は、前記樹脂モールド部に覆われた内部端子(15a)、および、前記開口部にて前記内部端子に接合された外部端子(15b)で構成されており、
前記外部端子は、前記第1端子および前記第2端子の積層方向に垂直な面の形状が、前記第2端子と同じ形状とされている請求項2
または3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記第2端子は、前記樹脂モールド部から突出した部分が前記樹脂モールド部からの突出方向を長手方向とした板状とされ、前記樹脂モールド部から突出した部分の根元が前記凸部に覆われており、
前記外部端子の先端部のうち少なくとも一部は、前記第1端子および前記第2端子の積層方向に垂直な平面において、前記第2端子のうち該板状とされた部分の先端部に重なるように配置されている請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1端子は、前記樹脂モールド部によって覆われた部分において、前記第2端子が接続されたリードフレーム(12)に積層されているか、または、
前記第2端子は、前記樹脂モールド部によって覆われた部分において、前記第1端子が接続されたリードフレーム(11)に積層されている請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記第1端子および前記第2端子をそれぞれ2つ備えている請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記半導体チップを6つ備え、
6つの前記半導体チップは、3列に配置されており、
2つの前記第1端子、および、2つの前記第2端子は、それぞれ、該3列の中央の列に配置された前記半導体チップを挟むように配置されている請求項1ないし
7のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
【請求項9】
電気部品であって、
筐体(20)と、
前記筐体から突出した第3端子(21)および第4端子(22)と、を備え、
前記第3端子および前記第4端子は、それぞれ板状とされ、互いに積層された状態で前記筐体から突出しており、
前記第3端子のうち前記第4端子とは反対側の面、および、前記第4端子のうち前記第3端子とは反対側の面には、ボルト(21a、22a)が形成されて
おり、
前記第3端子に形成された前記ボルトは、前記第4端子とは反対側に突出しており、
前記第4端子に形成された前記ボルトは、前記第3端子とは反対側に突出している電気部品。
【請求項10】
前記第3端子および前記第4端子の間に配置された絶縁層(23)を備え、
前記第3端子のうち前記第4端子に対向する面、および、前記第4端子のうち前記第3端子に対向する面は、前記絶縁層に覆われている請求項
9に記載の電気部品。
【請求項11】
前記絶縁層は、先端部がクランク状に屈曲している請求項10に記載の電気部品。
【請求項12】
請求項1ないし
8のいずれか1つに記載の半導体モジュールと、
請求項
9ないし11のいずれか1つに記載の電気部品と、の接続構造であって、
前記第1端子と、前記第2端子と、前記第3端子と、前記第4端子とが積層されている半導体モジュールと電気部品との接続構造。
【請求項13】
前記第1端子が前記第3端子に接続されており、
前記第2端子が前記第4端子に接続されており、
前記第1端子および前記第3端子と、前記第2端子および前記第4端子とを結ぶ直線上に、前記樹脂モールド部の一部、または、前記絶縁層の一部が配置されている請求項
12に記載の半導体モジュールと電気部品との接続構造。
【請求項14】
前記第1端子および前記第2端子は、導電性金属で構成されたボルト(21a、22a)およびナット(26、27)によって、それぞれ前記第3端子および前記第4端子に接続されている請求項
12または
13に記載の半導体モジュールと電気部品との接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール、電気部品、および半導体モジュールと電気部品との接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三相インバータ回路を構成する半導体モジュールと、平滑コンデンサを備えるコンデンサモジュールとの接続構造において、配線インダクタンスの低減が求められている。
【0003】
例えば特許文献1では、半導体モジュールにおいて、上下アームを構成する半導体チップに接続された2つの端子が、積層された状態で樹脂モールド部から突出している。また、コンデンサモジュールにおいて、平滑コンデンサに接続された2つの端子が積層された状態で筐体から突出している。このように、2つの端子を積層することで、配線インダクタンスの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、半導体モジュールとコンデンサモジュールにおいて、2つの端子は突出長さが異なっている。具体的には、半導体モジュールにおいて、コンデンサモジュールを介して電源の正極に接続されるP端子は、電源の負極に接続されるN端子よりも突出長さが長くなっており、P端子とN端子との間には、N端子を覆うように絶縁紙が配置されている。また、コンデンサモジュールにおいては、P端子はN端子よりも突出長さが短くなっており、P端子とN端子との間には、P端子を覆うように絶縁紙が配置されている。
【0006】
そして、半導体モジュールとコンデンサモジュールとの接続構造においては、半導体モジュールの2つの端子と、コンデンサモジュールの2つの端子とが対向し、互いのP端子同士、N端子同士が接触するように、各端子が配置されている。
【0007】
このような半導体モジュールの端子構造およびコンデンサモジュールの端子構造では、異電位の2つの端子の絶縁確保が困難である。すなわち、半導体モジュールにおいては、絶縁紙のうちN端子から突出した部分の長さがP端子とN端子との沿面距離となるため、沿面距離の増加が接続構造の体格の増加につながる。また、コンデンサモジュールにおいても、同様に、沿面距離の増加が接続構造の体格の増加につながる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、インダクタンスを低減しつつ容易に絶縁を確保することができる半導体モジュール、電気部品、および半導体モジュールと電気部品との接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体モジュールであって、半導体チップ(10)を樹脂封止した樹脂モールド部(19)と、樹脂モールド部から露出した第1端子(15)および第2端子(16)と、を備え、第1端子および第2端子は、それぞれ板状とされ、互いに積層されており、第2端子は、樹脂モールド部の外部に突出しており、第1端子は、樹脂モールド部のうち第2端子が突出した面とは異なる面に露出している。
【0010】
これによれば、第1端子と第2端子とが互いに積層されているため、配線インダクタンスを低減することができる。また、第1端子が樹脂モールド部のうち第2端子が突出した面とは異なる面に露出しているため、例えば第1、第2端子を同じ面から突出させる場合に比べて、第1、第2端子の絶縁距離の確保が容易になる。
【0011】
また、請求項9に記載の発明では、電気部品であって、筐体(20)と、筐体から突出した第3端子(21)および第4端子(22)と、を備え、第3端子および第4端子は、それぞれ板状とされ、互いに積層された状態で筐体から突出しており、第3端子のうち第4端子とは反対側の面、および、第4端子のうち第3端子とは反対側の面には、ボルト(21a、22a)が形成されており、第3端子に形成されたボルトは、第4端子とは反対側に突出しており、第4端子に形成されたボルトは、第3端子とは反対側に突出している。
【0012】
これによれば、第3端子と第4端子とが互いに積層されているため、配線インダクタンスを低減することができる。また、ボルトを設けることで、半導体モジュールの端子をスライドさせるだけで半導体モジュールと電気部品とを接続することができるため、これらの接続が容易になり、絶縁の確保が容易になる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】半導体モジュールの内部構造を示す図である。
【
図4】外部端子を接合する前の半導体モジュールの底面図である。
【
図5】外部端子を接合した後の半導体モジュールの底面図である。
【
図12】半導体モジュールとコンデンサモジュールとの接続構造の上面図である。
【
図13】半導体モジュールとコンデンサモジュールとの接続構造の底面図である。
【
図14】ナットを締結する前の接続構造の側面図である。
【
図15】ナットを締結した後の接続構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、三相交流モータを駆動する三相インバータ回路が備えられた半導体モジュール、および、この三相インバータ回路に接続される平滑コンデンサが備えられたコンデンサモジュールについて説明する。
【0017】
図1に示すように、三相インバータ回路1は、直流電源2に基づいて三相交流モータである負荷3を駆動するためのものである。三相インバータ回路1には平滑コンデンサ4が並列接続されており、スイッチング時のリプルの低減やノイズの影響を抑制して一定な電源電圧が形成できるようにしてある。
【0018】
三相インバータ回路1は、直列接続した上下アーム51~56が三相分並列接続された構成とされ、上アーム51、53、55と下アーム52、54、56との各中間電位を負荷3となる三相交流モータのU相、V相、W相の各相に順番に入れ替えながら印加する。
【0019】
具体的には、上下アーム51~56は、それぞれ、IGBTやMOSFETなどの半導体スイッチング素子51a~56aと、FWDなどの還流を目的とした整流素子51b~56bとを備えている。そして、各相の上下アーム51~56の半導体スイッチング素子51a~56aがオンオフ制御されることで、三相交流モータに対して周期の異なる三相の交流電流が供給される。これにより、三相交流モータの駆動を可能としている。IGBTはInsulated Gate Bipolar Transistorの略である。MOSFETはMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略である。FWDはFree Wheeling Diodeの略である。
【0020】
本実施形態では、三相インバータ回路1を構成する半導体スイッチング素子51a~56aおよび整流素子51b~56bが形成された半導体チップをモジュール化して一体化している。つまり、6つのアームを一体化した6in1構造の半導体モジュールとして三相インバータ回路1を構成している。
【0021】
この半導体モジュールの詳細構造について説明する。
図2~
図7に示す半導体モジュール6は、半導体チップ10と、リードフレーム11、12と、出力端子13と、制御端子14と、接続端子15、16と、放熱板17、18とを備えている。半導体モジュール6が備えるこれらの構成要素は、矩形板状の樹脂モールド部19によって樹脂封止されている。
【0022】
半導体チップ10は、上下アーム51~56に対応して6つ備えられている。上下アーム51~56を構成する半導体チップ10を、それぞれ半導体チップ101~106とする。
【0023】
図2に示すように、6つの半導体チップ10は、3列に並ぶように配置されている。具体的には、上アーム51、53、55を構成する半導体チップ101、103、105は、樹脂モールド部19の上面に平行な一方向に沿って、半導体チップ101、103、105の順に並んでいる。そして、半導体チップ102、104、106は、半導体チップ101、103、105の並びに沿って、半導体チップ102、104、106の順に並んでいる。
【0024】
上アームの半導体チップ101、103、105は、リードフレーム11の表面側に搭載されており、下アームの半導体チップ102、104、106は、リードフレーム12の裏面側に搭載されている。半導体チップ101、103、105は、リードフレーム11を介して、出力端子13に接続されている。半導体チップ102、104、106は、リードフレーム12と、図示しない配線層と、リードフレーム11とを介して、出力端子13に接続されている。
【0025】
半導体モジュール6は、3つの出力端子13を備えている。3つの出力端子13は、それぞれ負荷3のU相、V相、W相に接続される。出力端子13は、板状の導電性部材で構成されており、樹脂モールド部19の側面から突出している。
【0026】
半導体チップ10は、制御端子14に接続されている。制御端子14は、棒状の導電性部材で構成されており、一端が半導体チップ10に接続され、他端が樹脂モールド部19の側面から突出している。制御端子14のうち樹脂モールド部19から露出した部分は、樹脂モールド部19の上面側に突出するように屈曲している。
【0027】
制御端子14は、各半導体チップ10に対して設けられている。上アームの半導体チップ101、103、105に対応する制御端子14は、樹脂モールド部19のうち、出力端子13と同じ側面から突出している。下アームの半導体チップ102、104、106に対応する制御端子14は、樹脂モールド部19のうち、出力端子13とは反対側の側面から突出している。
【0028】
接続端子15、16は、半導体チップ10を後述するコンデンサモジュール7に接続するものである。接続端子15、16は、板状とされており、互いに積層された状態で樹脂モールド部19の側面から突出している。なお、接続端子15、16は、互いに離されており、電気的に絶縁されている。
【0029】
接続端子15は、半導体チップ101、103、105を、コンデンサモジュール7を介して直流電源2の正極に接続する端子である。接続端子16は、半導体チップ102、104、106を、コンデンサモジュール7を介して直流電源2の負極に接続する端子である。接続端子15、16は、それぞれ第1端子、第2端子に相当する。
【0030】
接続端子15は、樹脂モールド部19に封止された内部端子15aと、樹脂モールド部19の外部に配置された外部端子15bとで構成されている。内部端子15aは、板状の導電性部材で構成されており、リードフレーム11を介して上アームの半導体チップ101、103、105に接続されている。
【0031】
半導体モジュール6は、2つの接続端子15を備えている。2つの接続端子15は、3列に並んだ6つの半導体チップ10のうち、中央の列に配置された半導体チップ103、104を挟むように配置されている。具体的には、一方の接続端子15が備える内部端子15aは、半導体チップ101、103の間と、半導体チップ102、104の間とを通るように配置されている。そして、他方の接続端子15が備える内部端子15aは、半導体チップ103、105の間と、半導体チップ104、106の間とを通るように配置されている。
【0032】
内部端子15aは、長手方向の一端で半導体チップ101、103、105に接続されており、他端は樹脂モールド部19のうち出力端子13とは反対側の側面から突出している。
図3~
図7に示すように、樹脂モールド部19のうち、下アームの制御端子14が突出した側面には、矩形板状の凸部19aが形成されている。内部端子15aのうち樹脂モールド部19の側面から突出した部分は、凸部19aに覆われており、凸部19aの底面に形成された開口部から露出している。この露出した部分は、超音波接合やろう付け等によって外部端子15bに接合されている。
【0033】
外部端子15bは、板状の導電性部材で構成されており、側面から見てクランク状となるように屈曲している。外部端子15bの屈曲部を挟んだ両端部のうち、一方の端部は内部端子15aに接続されており、他方の端部は、凸部19aの表面から離された状態で、凸部19aの底面に沿って突出している。この他方の端部と凸部19aとの距離は、異物の噛み込みを抑制するために、例えば0.1mm以上2mm以下とされる。外部端子15bは、この突出した部分においてコンデンサモジュール7に接続される。
【0034】
接続端子16は、板状の導電性部材で構成されており、リードフレーム12を介して下アームの半導体チップ10に接続されている。接続端子16は、長手方向の一端で半導体チップ102、104、106に接続されており、他端は樹脂モールド部19のうち出力端子13とは反対側の側面から外部端子15bの突出方向と同じ方向に突出している。接続端子16の根元は、凸部19aに覆われている。接続端子16は、凸部19aから露出した部分においてコンデンサモジュール7に接続される。
【0035】
半導体モジュール6は接続端子16を2つ備えている。また、前述したように、半導体モジュール6は接続端子15を2つ備えている。
図2に示すように、2つの内部端子15aは、樹脂モールド部19によって覆われた部分において、2つの接続端子16およびリードフレーム12に積層されている。
【0036】
内部端子15aは、樹脂モールド部19のうち接続端子16が突出した面とは異なる面に露出している。具体的には、接続端子16は、凸部19aの先端面から突出している。そして、内部端子15aは、凸部19aの内部において接続端子16に積層されており、前述したように凸部19aの底面に形成された開口部から露出している。
【0037】
内部端子15aと接続端子16との凸部19aの表面に沿った沿面距離は、所定の実効電圧の印加時に内部端子15aと接続端子16との絶縁が確保される長さより大きくなるように設計される。
【0038】
図7では凸部19aのうち内部端子15aが露出する面が平坦面とされているが、この面に、
図8に示すような凸部19bや、
図9に示すような凹凸部19cを形成してもよい。これにより、内部端子15aと接続端子16との沿面距離を長くすることができる。
【0039】
外部端子15bは、内部端子15aおよび接続端子16の積層方向に垂直な面の形状が、接続端子16と同じ形状とされている。具体的には、外部端子15b、接続端子16のうち凸部19aから突出した部分の先端部は、2つに分かれてU字状になっている。そして、このU字状の部分が、外部端子15bと接続端子16とで同一または略同一の形状とされており、外部端子15b、接続端子16の突出方向において、外部端子15bの突出長さと、接続端子16の突出長さとが、同一または略同一となっている。
【0040】
外部端子15bの先端部と、接続端子16の先端部は、後述するボルト21a、22aの直径よりも開口幅が大きくされている。また、外部端子15b、接続端子16の根元から開口部までの距離は、後述するナット26、27の締結作業のための空間が確保されるように設計されている。
【0041】
樹脂モールド部19のうち出力端子13とは反対側の側面において、制御端子14と接続端子15、16は、所定の距離を空けて配置されている。例えば、制御端子14と接続端子15、16との距離は、所定のインパルス電圧の印加時に制御端子14と接続端子15、16との絶縁が確保される距離よりも長くなるように設計される。
【0042】
放熱板17、18は、ヒートシンクに相当するものであり、一面側が半導体チップ10に向けられている。半導体チップ10は、リードフレーム11、12を介して放熱板17、18に接続されており、放熱板17、18のうちリードフレーム11、12とは反対側の面は、樹脂モールド部19から露出している。このように、各半導体チップ10は放熱板17、18に挟み込まれており、半導体モジュール6は、厚さ方向の両側を図示しない冷却機器によって挟み込まれることで、放熱を行いながら負荷3の駆動を行うものとして使用される。
【0043】
平滑コンデンサ4は、
図10、
図11に示すコンデンサモジュール7に備えられている。コンデンサモジュール7は、筐体20と、接続端子21、22と、絶縁紙23と、接続端子24、25とを備えている。コンデンサモジュール7は、電気部品に相当する。
【0044】
平滑コンデンサ4は、樹脂で構成された筐体20の内部に複数備えられており、接続端子21、22、24、25は、筐体20の内部において平滑コンデンサ4に接続されている。接続端子21、22は、平滑コンデンサ4を半導体モジュール6に接続するための端子である。
【0045】
接続端子21、22は、板状の導電性部材で構成されており、互いに積層された状態で筐体20から突出している。接続端子21は、この突出した部分において半導体モジュール6の外部端子15bに接続され、接続端子22は、この突出した部分において接続端子16に接続される。接続端子21、22は、それぞれ第3端子、第4端子に相当する。
【0046】
接続端子21、22は、これらの積層方向に垂直な面の形状が互いに同一または略同一とされており、筐体20からの突出長さが同一または略同一とされている。これにより、接続端子21、22のうち一方の突出長さを他方よりも長くする場合に比べて、絶縁確保を容易にするとともに、後述する接続構造の長さを短くすることができる。
【0047】
筐体20から突出した部分において、接続端子21のうち接続端子22とは反対側の面にはボルト21aが形成されており、接続端子22のうち接続端子21とは反対側の面にはボルト22aが形成されている。ボルト21a、22aは、導電性金属で構成されている。
【0048】
ボルト21a、22aは、2つの接続端子15と、2つの接続端子16とに対応して、それぞれ2つ形成されている。接続端子21、22の根元からボルト21a、22aまでの距離は、後述するナット26、27の締結作業のための空間が確保されるように設計されている。
【0049】
接続端子21、22の間には、絶縁紙23が配置されている。絶縁紙23は、接続端子21、22の接触を抑制して電気的絶縁を維持するためのものであり、例えばノーメックス(登録商標)で構成される。絶縁紙23は、絶縁層に相当する。
【0050】
絶縁紙23は、接続端子21、22と同様に筐体20から突出しており、接続端子21のうち接続端子22に対向する面、および、接続端子22のうち接続端子21に対向する面を覆うように形成されている。すなわち、接続端子21と接続端子22とは、筐体20から突出した部分の全面において、絶縁紙23を間に挟んで互いに対向している。
【0051】
これにより、接続端子21、22の絶縁紙23に沿った沿面距離は、接続端子21、22に対する絶縁紙23の突出長さの2倍となる。この沿面距離は、所定の実効電圧の印加時に接続端子21、22の絶縁が確保される長さより大きくなるように設計される。絶縁紙23の厚さは、所定のインパルス電圧の印加時に接続端子21、22の絶縁が確保される厚さより大きくなるように設計される。
【0052】
図11に示すように、絶縁紙23の先端部は、半導体モジュール6の接続端子15、16との接触を避けるために、筐体20の側面から見てクランク状となるように屈曲している。なお、絶縁紙23と接続端子15、16との接触を避けるために、接続端子15、16を絶縁テープで保護してもよい。
【0053】
接続端子24、25は、筐体20のうち接続端子21、22が突出した面とは反対側の側面から突出している。接続端子24、25は、平滑コンデンサ4を直流電源2に接続するためのものである。接続端子21、22を半導体モジュール6に接続するとともに、接続端子24、25を直流電源2に接続することにより、平滑コンデンサ4と各半導体チップ10が直流電源2に接続される。
【0054】
半導体モジュール6とコンデンサモジュール7との接続構造について説明する。この接続構造は、半導体モジュール6とコンデンサモジュール7を
図12~
図15に示すように接続することで構成される。
【0055】
すなわち、半導体モジュール6の外部端子15bの先端部、および、接続端子16の先端部がボルト21a、22aに当接するように、外部端子15b、接続端子16をスライドさせる。これにより、
図14に示すように、外部端子15bと接続端子16との間に、接続端子21、22および絶縁紙23が挟まれる。
【0056】
そして、
図12、
図13、
図15に示すように、ボルト21a、22aおよびナット26、27によって、外部端子15bを接続端子21に接続し、接続端子16を接続端子22に接続する。ナット26、27は導電性金属で構成されている。
【0057】
このように、接続構造は、接続端子15、16、21、22の厚さ方向において、接続端子15、16と接続端子21、22とが積層された構成とされる。
【0058】
この厚さ方向における外部端子15bと接続端子16との距離をtGAPとし、接続端子21のうち接続端子22とは反対側の面と、接続端子22のうち接続端子21とは反対側の面との距離をtCOとする。距離tGAPおよび距離tCOは、距離tGAPの最小値が距離tCOの最大値以下となるように設計される。
【0059】
図15に示すように、この接続構造では、外部端子15bおよび接続端子21と、接続端子16および接続端子22とを結ぶ直線上に、樹脂モールド部19の一部、または、絶縁紙23の一部が配置されている。具体的には、接続端子21、22と凸部19aとの間の空間においては、外部端子15bと接続端子16との間に絶縁紙23が配置されている。また、外部端子15bの根元と、接続端子16の根元との間には、凸部19aの角部が配置されている。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の半導体モジュール6では、接続端子15、16は、それぞれ板状とされており、互いに積層されている。そして、接続端子16は、樹脂モールド部19の外部に突出しており、接続端子15の内部端子15aは、樹脂モールド部19の凸部19aのうち接続端子16が突出した面とは異なる面に露出している。
【0061】
このように、接続端子15、16を積層することで、磁気相殺により配線インダクタンスを低減することができる。また、内部端子15aが樹脂モールド部19のうち接続端子16が突出した面とは異なる面に露出しているため、例えば内部端子15aと接続端子16とを同じ面から突出させる場合に比べて、内部端子15aと接続端子16との絶縁距離の確保が容易になる。
【0062】
また、本実施形態のコンデンサモジュール7では、接続端子21、22は、それぞれ板状とされており、互いに積層された状態で筐体20から突出している。そして、接続端子21のうち接続端子22とは反対側の面にはボルト21aが形成されており、接続端子22のうち接続端子21とは反対側の面にはボルト22aが形成されている。
【0063】
このように、接続端子21、22を積層することで、磁気相殺により配線インダクタンスを低減することができる。また、ボルト21a、22aを設けることで、接続端子15、16をスライドさせるだけで半導体モジュール6とコンデンサモジュール7とを接続することができるため、これらの接続が容易になり、絶縁の確保が容易になる。
【0064】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
(1)接続端子15、16は、樹脂モールド部19に形成された凸部19aに覆われており、凸部19aに覆われた部分において互いに積層されている。そして、接続端子16は、凸部19aから樹脂モールド部19の外部に突出しており、接続端子15の内部端子15aは、凸部19aのうち接続端子16が突出した面とは異なる面に形成された開口部において凸部19aから露出している。
【0066】
このように、内部端子15を凸部19aの開口部から露出させることで、絶縁距離の確保がさらに容易になる。また、凸部19aの表面に凸部19bや凹凸部19cを形成することで、絶縁距離の確保がさらに容易になる。
【0067】
また、樹脂モールド部19の表面が離型成分で覆われていれば、吸湿による機械特性および電気特性の低下や、汚れの付着を低減し、沿面絶縁性能の劣化を抑制することができる。例えばトランスファー成形で樹脂モールド部19を形成した場合には、樹脂モールド部19の表面は離型成分で覆われるため、凸部19aの表面処理等の工程を行わずに上記の効果を得ることができ、半導体モジュール6の製造コストの増加を抑制することができる。
【0068】
(2)外部端子15bは、凸部19aの開口部にて内部端子15aに接続されている。また、外部端子15bは、内部端子15aおよび接続端子16の積層方向に垂直な面の形状が接続端子16と同じ形状とされている。すなわち、凸部19aの端面からの突出長さが、外部端子15bと接続端子16とで同一とされている。これによれば、これらの突出長さが異なる場合に比べて、半導体モジュール6とコンデンサモジュール7との接続構造の長さを短くすることが可能となる。また、絶縁確保が容易になる。
【0069】
(3)内部端子15aは、樹脂モールド部19によって覆われた部分において、接続端子16が接続されたリードフレーム12に積層されている。これによれば、配線インダクタンスを低減するとともに、半導体モジュール6の厚さ寸法を小さくすることができる。
【0070】
(4)半導体モジュール6は、半導体チップ10を6つ備え、接続端子15、16をそれぞれ2つ備えている。そして、6つの半導体チップ10は、3列に配置されており、接続端子15、16は、該3列の中央の列に配置された半導体チップ103、104を挟むように配置されている。
【0071】
このように、接続端子15、16を並列に引き出すことにより、配線インダクタンスを低減することができる。3組以上の接続端子を並列に引き出してもよく、引き出す組数が多いほど配線インダクタンス低減の効果が大きいが、引き出す接続端子を2組とすることで、配線インダクタンスを低減するとともに、半導体モジュール6の体格の増加を抑制することができる。
【0072】
(6)接続端子21のうち接続端子22に対向する面、および、接続端子22のうち接続端子21に対向する面は、絶縁紙23に覆われている。これによれば、絶縁紙23の沿面距離によって接続端子21、22の電気的絶縁が確保されるため、半導体モジュール6とコンデンサモジュール7との接続構造の長さを短くすることができる。
【0073】
(7)半導体モジュール6とコンデンサモジュール7との接続構造において、接続端子15、16、21、22が積層されている。このように、ボルト締結時の荷重が4つの端子にかかる構造とすることにより、端子の変形や接触不良を抑制することができる。
【0074】
(8)接続端子15および接続端子21と、接続端子16および接続端子22とを結ぶ直線上に、樹脂モールド部19の一部、または、絶縁紙23の一部が配置されている。これによれば、接続構造の体格を小さく抑えるとともに、絶縁確保が容易になる。
【0075】
(9)外部端子15bおよび接続端子16は、導電性金属で構成されたボルト21a、22aおよびナット26、27によって、それぞれ接続端子21および接続端子22に接続されている。このように、金属で構成されたボルトおよびナットを用いることで、強固な接続や圧接が可能となり、端子間の接続が安定する。
【0076】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0077】
三相インバータ回路以外の回路を構成する半導体モジュールに本発明を適用してもよい。また、コンデンサモジュール以外の電気部品に本発明を適用してもよい。
【0078】
接続端子15が下アームの半導体チップ102、104、106に接続され、接続端子16が上アームの半導体チップ101、103、105に接続されていてもよい。この場合には、例えば、上アームの半導体チップ101、103、105はリードフレーム12の裏面に搭載され、下アームの半導体チップ102、104、106はリードフレーム11の表面に搭載される。そして、接続端子16は、樹脂モールド部19によって覆われた部分において、接続端子15が接続されたリードフレーム11に積層される。
【符号の説明】
【0079】
15 接続端子
16 接続端子
19 樹脂モールド部