(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ネブライザ
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20241016BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61M11/00 300A
B05B17/06
(21)【出願番号】P 2021105971
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】東郷 秀孝
(72)【発明者】
【氏名】吉野 寛子
(72)【発明者】
【氏名】松元 敏文
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-18765(JP,A)
【文献】特表2020-519247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0285447(US,A1)
【文献】特開2018-51456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0173729(US,A1)
【文献】特開昭58-36564(JP,A)
【文献】特開2016-147248(JP,A)
【文献】特表2011-512954(JP,A)
【文献】国際公開第2021/123753(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を霧化して噴出するネブライザであって、
電源部と、この電源部から電力供給を受けて、予め定められた互いに異なる第1の周波数成分および第2の周波数成分を含む発振出力を発生する発振部とを搭載した本体と、
上記第1の周波数成分を用いて、供給された第1の液体を霧化するように構成された霧化部を搭載した第1の交換部材と、
上記第2の周波数成分を用いて、供給された第2の液体を霧化するように構成された霧化部を搭載した第2の交換部材と
を備え、
上記第1の交換部材および/または上記第2の交換部材は、上記第1、第2の周波数成分とは異なる予め定められた追加の周波数成分で動作するように構成された機能部を含み、
上記本体の上記発振部は、上記第1、第2の周波数成分に加えて上記追加の周波数成分を含む上記発振出力を発生させ、
上記本体に対して上記第1の交換部材または上記第2の交換部材が取り替えて装着され、上記本体に対して装着された交換部材は、上記本体から上記第1の周波数成分
、上記第2の周波数成分
、および上記追加の周波数成分を含む上記発振出力を受けるようになっている
ことを特徴とするネブライザ。
【請求項2】
請求項1に記載のネブライザにおいて、
上記本体は、上記発振出力を送電するための送電コイルを、上記装着された交換部材に対向する側に有し、
上記第1の交換部材および上記第2の交換部材は、上記発振出力を受電するための受電コイルを、それぞれ上記本体に対向する側に有し、
上記装着された交換部材は、上記本体から上記発振出力を、上記送電コイルと上記受電コイルとの間の磁気結合を用いたワイヤレス電力伝送方式で受けるようになっている
ことを特徴とするネブライザ。
【請求項3】
請求項2に記載のネブライザにおいて、
上記本体は、上記電源部と上記発振部とを収容する本体筐体を有し、この本体筐体をなす壁面の内側に沿った特定の領域に上記送電コイルが配置され、
上記第1の交換部材および上記第2の交換部材は、それぞれ上記霧化部を収容する装着用筐体を有し、この装着用筐体をなす壁面の内側に沿った、上記本体筐体の上記特定の領域と対応する領域に上記受電コイルが配置されている
ことを特徴とするネブライザ。
【請求項4】
請求項
2または3に記載のネブライザにおいて、
上記機能部を含む上記第1の交換部材および/または上記第2の交換部材は、上記受電コイルとして、上記霧化部のための第1の受電コイルと、上記機能部のための第2の受電コイルとを含み、
上記第1、第2の受電コイルは、同じポールピースに対して同心に巻回されている
ことを特徴とするネブライザ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のネブライザにおいて、
上記本体は探索部を備え、
上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記本体から上記装着された交換部材へ供給される電圧対電流の関係に基づいて、上記各周波数成分のための目標周波数を求める
ことを特徴とするネブライザ。
【請求項6】
請求項5に記載のネブライザにおいて、
上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記電圧対電流の関係に基づいて上記装着された交換部材へ供給されるべき新たな周波数成分があるか否かを探索し、
上記新たな周波数成分が発見されたとき、上記発振部は、上記新たな周波数成分を上記発振出力に含める
ことを特徴とするネブライザ。
【請求項7】
請求項5に記載のネブライザにおいて、
上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記電圧対電流の関係に基づいて上記各周波数成分のうち上記装着された交換部材へ供給不要な周波数成分があるか否かを探索し、
上記供給不要な周波数成分があると判明したとき、上記発振部は、上記供給不要な周波数成分を上記発振出力から除外する
ことを特徴とするネブライザ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載のネブライザにおいて、
上記第1の交換部材の上記霧化部は、上記第1の周波数成分を用いて動作する、振動面を有する振動部と、上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された上記第1の液体を、上記メッシュ部を通して霧化するようになっており、
上記第2の交換部材の上記霧化部は、上記第2の周波数成分を用いて動作する、振動面を有する振動部と、上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された上記第2の液体を、上記メッシュ部を通して霧化するようになっている
ことを特徴とするネブライザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はネブライザに関し、より詳しくは、薬液などの液体を霧化して噴出するネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のネブライザとしては、例えば特許文献1(特開2018-050821号公報)に開示されているように、1つの超音波振動子を搭載した本体と、メッシュ部を有するシートを含む交換部材とを備えたものが知られている。本体に交換部材が装着された状態では、超音波振動子の振動面に対して、シートのメッシュ部が少し傾斜した状態で対向して支持される。動作時には、上記振動面と上記メッシュ部との間に薬液が供給された状態で、上記超音波振動子の振動面が、この超音波振動子の共振周波数に略一致する或る周波数(180kHz±5kHzの範囲内)で振動される。これにより、上記メッシュ部を通して薬液が霧化され、噴霧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば薬液の種類(粘性が異なる)などによっては、霧化に適合した周波数(これを「目標周波数」と呼ぶ。)が180kHz近傍ではなく、例えば100kHz、300kHzなどのように、大きく異なる場合がある。しかしながら、上記ネブライザでは、1つの超音波振動子を或る周波数(180kHz±5kHzの範囲内)で駆動しているため、それらの目標周波数が異なる薬液を適切に霧化できず、様々なニーズに対応し難い、という問題がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、霧化に適合した目標周波数が異なる液体をそれぞれ適切に霧化でき、したがって様々なニーズに対応できるネブライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この開示のネブライザは、
液体を霧化して噴出するネブライザであって、
電源部と、この電源部から電力供給を受けて、予め定められた互いに異なる第1の周波数成分および第2の周波数成分を含む発振出力を発生する発振部とを搭載した本体と、
上記第1の周波数成分を用いて、供給された第1の液体を霧化するように構成された霧化部を搭載した第1の交換部材と、
上記第2の周波数成分を用いて、供給された第2の液体を霧化するように構成された霧化部を搭載した第2の交換部材と
を備え、
上記第1の交換部材および/または上記第2の交換部材は、上記第1、第2の周波数成分とは異なる予め定められた追加の周波数成分で動作するように構成された機能部を含み、
上記本体の上記発振部は、上記第1、第2の周波数成分に加えて上記追加の周波数成分を含む上記発振出力を発生させ、
上記本体に対して上記第1の交換部材または上記第2の交換部材が取り替えて装着され、上記本体に対して装着された交換部材は、上記本体から上記第1の周波数成分、上記第2の周波数成分、および上記追加の周波数成分を含む上記発振出力を受けるようになっている
ことを特徴とする。
【0007】
本明細書で、「電源部」とは、電池を用いてもよいし、また、商用電源を変換して用いるものであってもよい。
【0008】
「第1の液体」、「第2の液体」とは、例えば、互いに粘性が異なる薬液を指す。
【0009】
「第1の周波数成分」、「第2の周波数成分」は、それぞれ「第1の液体」、「第2の液体」の霧化に適合した周波数(目標周波数)をもつ。
【0010】
「第1の交換部材」、「第2の交換部材」は、典型的には、それぞれ霧化動作のための超音波振動子を含む。「第1の交換部材」は、自身の霧化部へ第1の液体を供給する給液部をさらに備えてもよいし、また、「第2の交換部材」は、自身の霧化部へ第2の液体を供給する給液部をさらに備えてもよい。
「機能部」とは、上記本体からの上記発振出力を受けて動作する要素を意味する(この限りでは、「機能部」は、上記霧化部をも含む概念である。)。「機能部」は、例えば、上記霧化部へ液体を供給する給液部(例えば、輸液ポンプを含む。)であってもよいし、また、霧化された液体の噴出を助ける送風部(例えば、送風ファン)であってもよい。
【0011】
「装着された交換部材」とは、上記本体に対して装着された上記第1の交換部材または上記第2の交換部材を指す。
【0012】
上記本体から上記第1の交換部材または上記第2の交換部材へ「発振出力」を伝送する方式は、ワイヤレス電力伝送方式であってもよいし、有線電力伝送方式であってもよい。
【0013】
この開示のネブライザでは、上記本体の上記発振部は、動作時に、上記第1、第2の周波数成分に加えて上記追加の周波数成分を含む上記発振出力を発生させる。上記装着された交換部材(上記第1の交換部材または上記第2の交換部材)は、上記本体から、上記第1、第2の周波数成分に加えて上記追加の周波数成分を含む上記発振出力を受ける。例えば、ユーザが上記本体に対して上記第1の交換部材を装着したものとする。上記本体に対して上記第1の交換部材が装着された状態では、動作時に、上記第1の交換部材が、上記本体から上記第1の周波数成分、上記第2の周波数成分、および上記追加の周波数成分を含む上記発振出力を受ける。これにより、上記第1の交換部材に搭載された霧化部が、上記第1の周波数成分を用いて、供給された第1の液体を霧化する。これにより、上記第1の液体を適切に霧化できる。また、第1の交換部材に搭載された上記機能部は、上記第1、第2の周波数成分とは異なる上記追加の周波数成分で動作する。それに代えて、ユーザが上記本体に対して上記第2の交換部材を装着したものとする。上記本体に対して上記第2の交換部材が装着された状態では、動作時に、上記第2の交換部材が、上記本体から上記第1の周波数成分および上記第2の周波数成分を含む上記発振出力を受ける。これにより、上記第2の交換部材に搭載された霧化部が、上記第1の周波数成分を用いて、供給された第2の液体を霧化する。これにより、上記第2の液体を適切に霧化できる。また、第2の交換部材に搭載された上記機能部は、上記第1、第2の周波数成分とは異なる上記追加の周波数成分で動作する。このように、このネブライザによれば、霧化に適合した目標周波数が異なる上記第1、第2の液体をそれぞれ適切に霧化でき、また、上記装着された交換部材に搭載された機能部を動作させることができる。したがって様々なニーズに対応できる。
【0014】
特に、このネブライザによれば、ユーザは、上記本体の発振部の設定(特に、発振出力に含まれた周波数成分)を変更する必要がなく、上記本体に対して上記第1の交換部材または上記第2の交換部材を取り替えて装着するだけで簡単に、上記第1、第2の液体をそれぞれ適切に霧化できる。また、上記装着された交換部材が上記霧化部とは別の機能部を含む場合であっても、ユーザが上記本体の発振部の設定(特に、発振出力に含まれた周波数成分)を変更することなしに、上記機能部を動作させることができる。
【0015】
一実施形態のネブライザでは、
上記本体は、上記発振出力を送電するための送電コイルを、上記装着された交換部材に対向する側に有し、
上記第1の交換部材および上記第2の交換部材は、上記発振出力を受電するための受電コイルを、それぞれ上記本体に対向する側に有し、
上記装着された交換部材は、上記本体から上記発振出力を、上記送電コイルと上記受電コイルとの間の磁気結合を用いたワイヤレス電力伝送方式で受けるようになっている
ことを特徴とする。
【0016】
「磁気結合を用いたワイヤレス電力伝送方式」とは、電磁誘導方式、磁界共鳴方式などを広く含む。
【0017】
この一実施形態のネブライザでは、上記本体から上記装着された交換部材への電力伝送がワイヤレス電力伝送方式であるから、ユーザが上記本体に対して上記第1の交換部材または上記第2の交換部材を取り替えて装着する際に、配線(または接点)の着脱をする必要が無い。したがって、ユーザにとって、上記本体に対して上記第1の交換部材または上記第2の交換部材を取り替えて装着する操作が容易になる。
【0018】
一実施形態のネブライザでは、
上記本体は、上記電源部と上記発振部とを収容する本体筐体を有し、この本体筐体をなす壁面の内側に沿った特定の領域に上記送電コイルが配置され、
上記第1の交換部材および上記第2の交換部材は、それぞれ上記霧化部を収容する装着用筐体を有し、この装着用筐体をなす壁面の内側に沿った、上記本体筐体の上記特定の領域と対応する領域に上記受電コイルが配置されている
ことを特徴とする。
【0019】
この一実施形態のネブライザでは、上記本体と、上記装着された交換部材(上記第1の交換部材または上記第2の交換部材)との間で、上記本体筐体をなす壁面と上記装着用筐体をなす壁面とを挟んで、上記送電コイルと上記受電コイルとが互いに対応した領域に配置される。したがって、上記送電コイルと上記受電コイルとの間のワイヤレス電力伝送が効率良く行われる。また、この一実施形態のネブライザでは、上記本体は上記本体筐体によって、また、上記第1、第2の交換部材はそれぞれ上記装着用筐体によって保護される。特に、上記本体筐体、上記装着用筐体をそれぞれ液密に構成することによって、液体(例えば、上記第1、第2の液体、洗浄用の水など)の浸入から保護される。
【0020】
一実施形態のネブライザでは、
上記機能部を含む上記第1の交換部材および/または上記第2の交換部材は、上記受電コイルとして、上記霧化部のための第1の受電コイルと、上記機能部のための第2の受電コイルとを含み、
上記第1、第2の受電コイルは、同じポールピースに対して同心に巻回されている
ことを特徴とする。
【0021】
【0022】
【0023】
一実施形態のネブライザでは、
上記本体は探索部を備え、
上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記本体から上記装着された交換部材へ供給される電圧対電流の関係に基づいて、上記各周波数成分のための目標周波数を求める
ことを特徴とする。
【0024】
「目標周波数」とは、各周波数成分のための目標となる周波数を指す。上記第1、第2の周波数成分のための「目標周波数」は、それぞれ上記第1、第2の交換部材の霧化部による上記第1、第2の液体の霧化に適合した周波数に相当する。ここで、「適合した」周波数とは、例えば上記霧化部が含む個々の超音波振動子の特性ばらつきなどを加味した上で、上記霧化部による霧化動作の効率を高め、かつ安定させることができる周波数を指す。同様に、上記追加の周波数成分のための「目標周波数」は、上記機能部の動作に適合した周波数に相当する。
【0025】
この一実施形態のネブライザでは、上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記本体から上記装着された交換部材へ供給される電圧対電流の関係に基づいて、上記各周波数成分のための目標周波数を求める。この結果、上記発振部は、上記各周波数成分の周波数を上記目標周波数に設定することができる。したがって、上記第1、第2の交換部材の上記霧化部による霧化動作の効率を高め、かつ安定させることができる。また、上記第1の交換部材および/または上記第2の交換部材が上記機能部を含む場合は、上記機能部を適切に動作させることができる。
【0026】
一実施形態のネブライザでは、
上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記電圧対電流の関係に基づいて上記装着された交換部材へ供給されるべき新たな周波数成分があるか否かを探索し、
上記新たな周波数成分が発見されたとき、上記発振部は、上記新たな周波数成分を上記発振出力に含める
ことを特徴とする。
【0027】
「新たな周波数成分」とは、既述の予め定められた周波数成分(第1、第2の周波数成分、および、追加の周波数成分)とは異なり、予定されていない周波数成分を指す。上記新たな周波数成分によって動作すべき機能部は、上記霧化部とは別の新たな霧化部であってもよい。
【0028】
この一実施形態のネブライザでは、上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記電圧対電流の関係に基づいて上記装着された交換部材へ供給されるべき新たな周波数成分があるか否かを探索する。上記新たな周波数成分が発見されたとき、上記発振部は、上記新たな周波数成分を上記発振出力に含める。したがって、ユーザが特に上記本体の発振部の設定(特に、発振出力に含まれた周波数成分)を変更しなくても、上記新たな周波数成分によって動作すべき新たな機能部(霧化部を含む)を動作させることができる。
【0029】
一実施形態のネブライザでは、
上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記電圧対電流の関係に基づいて上記各周波数成分のうち上記装着された交換部材へ供給不要な周波数成分があるか否かを探索し、
上記供給不要な周波数成分があると判明したとき、上記発振部は、上記供給不要な周波数成分を上記発振出力から除外する
ことを特徴とする。
【0030】
この一実施形態のネブライザでは、上記探索部は、動作時に或る周波数範囲で上記発振部が発生する発振周波数をスイープさせて、上記電圧対電流の関係に基づいて上記各周波数成分のうち上記装着された交換部材へ供給不要な周波数成分があるか否かを探索する。上記供給不要な周波数成分があると判明したとき、上記発振部は、上記供給不要な周波数成分を上記発振出力から除外する。したがって、ユーザが特に上記本体の発振部の設定(特に、発振出力に含まれた周波数成分)を変更しなくても、上記供給不要な周波数成分の供給を停止でき、省電力が可能となる。
【0031】
一実施形態のネブライザでは、
上記第1の交換部材の上記霧化部は、上記第1の周波数成分を用いて動作する、振動面を有する振動部と、上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された上記第1の液体を、上記メッシュ部を通して霧化するようになっており、
上記第2の交換部材の上記霧化部は、上記第2の周波数成分を用いて動作する、振動面を有する振動部と、上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された上記第2の液体を、上記メッシュ部を通して霧化するようになっている
ことを特徴とする。
【0032】
「メッシュ部」とは、シートまたは板材に形成された複数の貫通孔を有し、これらの貫通孔を通過させて液体を霧化するための要素を意味する。
【0033】
この一実施形態のネブライザでは、上記第1の交換部材の上記霧化部は、上記第1の周波数成分を用いて動作する、振動面を有する振動部と、上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された上記第1の液体を、上記メッシュ部を通して霧化する。一方、上記第2の交換部材の上記霧化部は、上記第2の周波数成分を用いて動作する、振動面を有する振動部と、上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された上記第2の液体を、上記メッシュ部を通して霧化する。すなわち、このネブライザは、メッシュ式ネブライザとして構成され、霧化部を小型に構成でき、したがって、上記第1、第2の交換部材を小型に構成できる。また、それに伴って電源部と発振部を小型化する(発振出力を抑える)ことによって、本体も小型化できる。これにより、全体として小型で、携帯性に優れたネブライザを実現できる。
【発明の効果】
【0034】
以上より明らかなように、この開示のネブライザによれば、霧化に適合した目標周波数が異なる液体をそれぞれ適切に霧化でき、したがって様々なニーズに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】この発明の一実施形態のネブライザの分解状態を示す斜視図である。
【
図2】上記ネブライザの内部構造を側方から見たところを模式的に示す図である。
【
図3】上記ネブライザの制御系のブロック構成を示す図である。
【
図4】上記ネブライザの制御部による発振出力に含まれた周波数成分を示す図である。
【
図5】ユーザによる上記ネブライザの使用態様を示す図である。
【
図6】上記ネブライザの変形例がとり得るブロック構成を示す図である。
【
図7】
図7(A)は、
図6のネブライザにおける制御部による概略的な動作フローを示す図である。
図7(B)は、上記概略的な動作フローに含まれた初期設定の詳細な動作フローを示す図である。
図7(C)は、上記概略的な動作フローに含まれた初期設定の別の詳細な動作フローを示す図である。
【
図8】
図8(A)は、駆動周波数の変化に伴う各交換部材の霧化部または機能部のアドミッタンス(または電流値)の変化を示す図である。
図8(B)は、駆動周波数の変化に伴う各交換部材の霧化部または機能部のインピーダンス(または電圧値)の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
(ネブライザの構成)
図1は、この発明の一実施形態のネブライザ(全体を符号1で示す)を分解状態で示している。このネブライザ1は、大別して、本体筐体11Mを有する本体11と、この本体11に取り替えて装着されるべき第1の交換部材としての噴霧ユニット12-1、第2の交換部材としての噴霧ユニット12-2、第3の交換部材としての噴霧ユニット12-3とを備えている。
【0038】
本体11をなす本体筐体11Mは、この例では長円状(
図1において左手前から右奥へ延在する長軸11Aを有する)の平面形状で、縦軸11Cの方向(この例では、上下方向)に延在する柱状の外形を有している。本体筐体11Mの前面(
図1において左手前の側面)11Msにこのネブライザ1の電源をオン、オフするための電源スイッチ50Aと、このネブライザ1の動作状態を示すための表示ランプ51A,51Bとが設けられている。本体筐体11Mの上壁11Mtの中央部(縦軸11Cが通る)には、本体11と噴霧ユニット12-1を着脱可能に取り付けるための要素として、略短円筒状の外形をもつ凹部11K1が設けられている。この例では、凹部11K1は、縦軸11Cの周りの特定の方位(この例では、120°間隔の3方位)に相当する部位に、径方向外向きに拡張された方位溝11K1e,11K1e,11K1eを有している。
【0039】
噴霧ユニット12-1は、本体筐体11Mにおけるのと同じ長円状の平面形状を有するベース筐体30Mと、このベース筐体30Mを覆うカバー部材31とを含んでいる。カバー部材31は、ベース筐体30Mに対して縦軸11Cの方向に(この例では、上方から)着脱可能に嵌合して取り付けられる。ベース筐体30Mとカバー部材31とは、装着用筐体30を構成している。
【0040】
この例では、ベース筐体30Mは、縦軸11Cから左手前側へ偏心した部位に、上方へ円柱状に突起した上段収容部30Maを有している。上段収容部30Maは、第1の液体を霧化するのに適合した振動部としてのホーン振動子40-1を収容している。この例では、上段収容部30Maの頂面30Mtに、メッシュ部材20-1が、ホーン振動子40-1に対向する状態で載置されている。この例では、メッシュ部材20-1は、第1の液体を霧化するのに適合したメッシュ部を含むシート21-1と、シート21-1の周縁を支持するフランジ部22とを含んでいる。「メッシュ部」とは、シート(または板材)に複数の微細な貫通孔を有し、これらの貫通孔を通過させて液体を霧化するための要素を意味する。この例では、メッシュ部材20-1は、1回の使用が終わると、使い捨てされるようになっている。この例では、ホーン振動子40-1とメッシュ部材20-1とが霧化部を構成している。
【0041】
噴霧ユニット12-1の底壁30Mbの中央部(縦軸11Cが通る)には、本体11と噴霧ユニット12-1を着脱可能に取り付けるための要素として、略短円柱状の外形をもつ凸部30K1が設けられている。この例では、凸部30K1は、本体筐体11Mの凹部11K1と対応する形状を有している。すなわち、凸部30K1は、略円筒状で、縦軸11Cの周りの特定の方位(この例では、120°間隔の3方位)に相当する部位に、径方向外向きに突出した拡径部(図示せず)を有している。したがって、本体11(本体筐体11M)に対して噴霧ユニット12-1(ベース筐体30M)を縦軸11Cの方向に(この例では、上方から)接近させれば、凹部11K1に対して凸部30K1が嵌合して、本体11と噴霧ユニット12-1とが簡単に取り付けられる。本体11に対して噴霧ユニット12-1が一旦取り付けられると、凹部11K1と凸部30K1との間の摩擦力によって取り付け状態が維持される。なお、ユーザがその摩擦力を超える力を加えて、本体11から噴霧ユニット12-1を縦軸11Cの方向に離間させれば、本体11から噴霧ユニット12-1が簡単に取り外される。
【0042】
カバー部材31は、ベース筐体30Mにおけるのと同じ長円状の平面形状で、縦軸11Cの方向に延在する筒状の外形を有している。カバー部材31の頂壁31tのうち縦軸11Cから左手前側へ偏心した部位に、円形の開口31oが設けられている。ベース筐体30Mに対してカバー部材31が取り付けられた状態では、開口31oの縁部が、縦軸11Cの方向に(この例では、上方から)、メッシュ部材20-1のフランジ部22を押圧する。これにより、メッシュ部を含むシート21-1がホーン振動子40-1に対して位置決めされるようになっている。また、開口31oには、例えば
図5中に示すように、パイプ部材としてのマウスピース80が、カバー部材31の外側から着脱可能に装着されるようになっている。
【0043】
また、カバー部材31は、頂壁31tのうち、開口31oよりも右奥側に相当する部位に、ヒンジによって開閉可能な蓋部31aと、この蓋部31aの直下の位置に設けられた給液部としての液溜め17とを有している。ユーザは、ベース筐体30Mに対してカバー部材31が取り付けられた状態で、蓋部31aを一時的に開いて、この例では液溜め17に第1の液体を入れることができる。
【0044】
噴霧ユニット12-2,12-3は、メッシュ部材20-1に代えてそれぞれ別のメッシュ部材20-2,20-3を有し、また、ホーン振動子40-1に代えてそれぞれ別のホーン振動子40-2,40-3を有している。噴霧ユニット12-2のメッシュ部材20-2とホーン振動子40-2は、上記第1の液体とは異なる第2の液体を霧化するのに適合したものになっている。また、噴霧ユニット12-3のメッシュ部材20-3とホーン振動子40-3は、上記第1、第2の液体とは異なる第3の液体を霧化するのに適合したものになっている。それ以外の点では、噴霧ユニット12-2,12-3は、噴霧ユニット12-1と同様に構成されている。
図1中に矢印B,Cで示すように、噴霧ユニット12-2,12-3は、それぞれ噴霧ユニット12-1と取り替える態様で、本体11に装着され得る。
【0045】
上記第1、第2、第3の液体は、例えば、互いに粘性が異なる薬液を指す(吸入用の様々な種類の薬液が市販されている。)。この例では、上記第1、第2、第3の液体をそれぞれ適切に霧化できるように、メッシュ部材20-1,20-2,20-3のメッシュ部の孔径、シート21-1,21-2,21-3の厚さがそれぞれ設定されているものとする。また、噴霧ユニット12-1,12-2,12-3でのホーン振動子40-1,40-2,40-3による霧化に適合した周波数(目標周波数)は、それぞれf1=180kHz近傍、f2=300kHz近傍、f3=500kHz近傍であるものとする。
【0046】
以下では、説明の便宜上、適宜、噴霧ユニット12-1,12-2,12-3を噴霧ユニット12と総称し、シート21-1,21-2,21-3をシート21と総称し、また、ホーン振動子40-1,40-2,40-3をホーン振動子40と総称する。
【0047】
図2は、ネブライザ1の内部構造を側方から見たところを模式的に示している。また、
図3は、ネブライザ1の制御系のブロック構成を示している。なお、理解の容易のために、
図2では、噴霧ユニット12のベース筐体30Mと本体筐体11Mとの間に、ベース筐体30Mの凸部30K1を示すための若干の隙間が設けられている。
図3では、噴霧ユニット12のベース筐体30Mと本体筐体11Mとの間の隙間は、意図されていない。
【0048】
図3によって分かるように、本体11は、本体筐体11Mに、制御部60と、操作部50と、報知部51、電源部53と、送電コイルユニット61とを搭載し収容している。この例では、制御部60は、プリント回路板(Printed Circuit Board;PCB)を含み、このネブライザ1全体の動作を制御する。操作部50は、既述の電源スイッチ50Aを含み、このネブライザ1の電源をオン、オフするための指示その他のユーザによる各種指示を入力する。電源部53は、この例では電池54を含み、このネブライザ1の各部(制御部60を含む)へ電力を供給する。制御部60と電源部53とは、配線55a,55bによって接続されている。なお、電源部53は、商用電源を変換して用いるものであってもよい。報知部51は、既述の表示ランプ51A,51B、および、図示しないブザーを含み、このネブライザ1の動作状態を表示し、および/または、アラーム表示若しくはアラーム音を発生する。例えば、表示ランプ51Aは電源のオン、オフを表示し、表示ランプ51Bは電池54の残量を表示する。
【0049】
図2中に示すように、送電コイルユニット61は、この例では、略円柱状の磁性体からなるポールピース64と、ポールピース64の下端に接する端板部65bおよびポールピース64の外周面を離間して環状に取り巻く外周部65cを含む磁性体からなるヨーク65と、ポールピース64を巻回してポールピース64とヨーク65との間の隙間に配置された送電コイル62と、これらのポールピース64、ヨーク65および送電コイル62を一体に覆う非磁性材料からなる封止ケース66とを含んでいる。この例では、送電コイルユニット61は、本体筐体11Mの上壁11Mtに沿って、噴霧ユニット12に対向する側に配置されている。これにより、送電コイル62は、本体筐体11Mをなす上壁11Mtの内側(壁面)に沿った特定の領域、すなわち、縦軸11Cを中心とした凹部11K1を取り囲む領域11a(
図2中に、領域11aの外径を両矢印で示す)に配置されている。送電コイル62は、配線63a,63bによって制御部60と接続されている。送電コイル62は、制御部60からの発振出力を、噴霧ユニット12へ向けてワイヤレス電力伝送方式で送電するために用いられる。
【0050】
噴霧ユニット12は、装着用筐体30(特に、ベース筐体30M)に、振動部としてのホーン振動子40と、受電コイルユニット71とを搭載し収容している。
【0051】
図2中に示すように、ホーン振動子40は、上方へ向かって水平に配された振動面43と、この振動面43から下方に離間した位置に配された超音波振動子41と、超音波振動子41と振動面43との間に配され、超音波振動子41の振動を増幅するとともに振動面43へ伝達するホーン42とが、一体に組み合わされて構成されている。ベース筐体30Mに対してカバー部材31が取り付けられた状態では、メッシュ部を含むシート21とホーン振動子40の振動面43との間に隙間43gが存在する状態になっている。後述するように、この隙間43gに対して、液溜め17に入っている第1の液体(または第2、第3の液体)が供給される。ホーン振動子40と受電コイルユニット71(の受電コイル72)とは、配線73a,73bによって接続されている。
【0052】
受電コイルユニット71は、略円柱状の磁性体からなるポールピース74と、ポールピース74を巻回してその周りに配置された受電コイル72と、これらのポールピース74および受電コイル72を一体に覆う非磁性材料からなる封止ケース75とを含んでいる。この例では、受電コイルユニット71は、ベース筐体30Mの底壁30Mbの内側に沿って、本体11に対向する側に配置されている。これにより、受電コイル72は、ベース筐体30Mをなす底壁30Mbの内側(壁面)に沿った、本体筐体11Mの送電コイル62が配置された領域11aと対応する領域12a(
図2中に、領域12aの外径を両矢印で示す)に配置されている。
【0053】
これにより、本体11と噴霧ユニット12とが装着された状態では、本体筐体11Mをなす上壁11Mtと装着用筐体30をなす底壁30Mbとを挟んで、送電コイル62と受電コイル72とが互いに対応した領域11a,12aに配置される。したがって、動作時に、本体11から噴霧ユニット12へ、制御部60からの発振出力が、送電コイル62と受電コイル72とを介してワイヤレス電力伝送方式で効率良く伝送される。
【0054】
(ネブライザの動作)
ネブライザ1を使用しようとするユーザは、本体11に対して噴霧ユニット12-1,12-2,12-3のいずれかを装着し、装着された噴霧ユニット12の液溜め17に、その噴霧ユニット12に適合した第1、第2または第3の液体を入れる。これにより、液溜め17に入れられた液体が、シート21とホーン振動子40の振動面43との間の隙間43g(
図2参照)に供給される。また、その噴霧ユニット12の開口31oに、マウスピース80を装着する。続いて、
図5に示すように、ユーザ99は、ネブライザ1全体を手前側に傾けて、マウスピース80を口に近づけ、咥える。この状態で、ユーザ99は、本体11の前面11Msに設けられた電源スイッチ50Aをオンする。
【0055】
すると、制御部60は発振部として働いて、
図4に示すような、予め定められた互いに異なる第1の周波数成分f1、第2の周波数成分f2および第3の周波数成分f3を含む発振出力POを発生する。この例では、噴霧ユニット12-1,12-2,12-3でのホーン振動子40-1,40-2,40-3による霧化に適合するように、予めf1=180kHz近傍、f2=300kHz近傍、f3=500kHz近傍に設定されている。なお、制御部60は探索部として働いて、発振周波数fをスイープさせることによって、本体11から噴霧ユニット12へ供給される電圧対電流の関係に基づいて、第1の周波数成分f1、第2の周波数成分f2および第3の周波数成分f3の周波数を、それぞれ個々のホーン振動子40の特性ばらつきを加味した上で、霧化部による霧化動作の効率を高め、かつ安定させることができる周波数(目標 周波数)に微調整(例えば、±5kHz)してもよい。この発振出力POは、磁気結合を用いたワイヤレス電力伝送によって、送電コイル62から受電コイル72へ伝送される。受電コイル72によって受電された発振出力POは、配線73a,73bを介してホーン振動子40に印加されて、振動面43が振動する。これにより、メッシュ部を含むシート21とホーン振動子40の振動面43との間の隙間43gに供給された液体(第1、第2または第3の液体)がメッシュ部を含むシート21を通して霧化され、
図5に示すように、マウスピース80を通してエアロゾル90として噴出される。
【0056】
ここで、例えば、ユーザが本体11に対して装着した噴霧ユニット12が噴霧ユニット12-1であったものとする。本体11に対して噴霧ユニット12-1が装着された状態では、動作時に、噴霧ユニット12-1が、本体11から第1の周波数成分f1、第2の周波数成分f2および第3の周波数成分f3を含む発振出力POを受け、そして、噴霧ユニット12-1に搭載されたホーン振動子40-1が、第1の周波数成分f1を用いて、供給された第1の液体を霧化する。これにより、第1の液体を適切に霧化できる。それに代えて、ユーザが本体11に対して装着した噴霧ユニット12が噴霧ユニット12-2であったものとする。本体11に対して噴霧ユニット12-2が装着された状態では、動作時に、噴霧ユニット12-2が、本体11から第1の周波数成分f1、第2の周波数成分f2および第3の周波数成分f3を含む発振出力POを受け、そして、噴霧ユニット12-2に搭載されたホーン振動子40-2が、第2の周波数成分f2を用いて、供給された第2の液体を霧化する。これにより、第2の液体を適切に霧化できる。それに代えて、ユーザが本体11に対して装着した噴霧ユニット12が噴霧ユニット12-3であったものとする。本体11に対して噴霧ユニット12-3が装着された状態では、動作時に、噴霧ユニット12-3が、本体11から第1の周波数成分f1、第2の周波数成分f2および第3の周波数成分f3を含む発振出力POを受け、そして、噴霧ユニット12-3に搭載されたホーン振動子40-3が、第3の周波数成分f3を用いて、供給された第3の液体を霧化する。これにより、第3の液体を適切に霧化できる。このように、このネブライザ1によれば、霧化に適合した目標周波数が異なる第1、第2、第3の液体をそれぞれ適切に霧化でき、したがって様々なニーズに対応できる。
【0057】
特に、このネブライザ1によれば、ユーザは、本体11の発振部としての制御部60の設定(特に、発振出力POに含まれた周波数成分)を変更する必要がなく、本体11に対して噴霧ユニット12-1,12-2,12-3を取り替えて装着することによって簡単に、第1、第2、第3の液体をそれぞれ適切に霧化できる。
【0058】
また、このネブライザ1では、本体11から装着された噴霧ユニット12への電力伝送がワイヤレス電力伝送方式であるから、ユーザが本体11に対して噴霧ユニット12-1,12-2または12-3を取り替えて装着する際に、配線(または接点)の着脱をする必要が無い。したがって、ユーザにとって、本体11に対して噴霧ユニット12-1,12-2または12-3を取り替えて装着する操作が容易になる。
【0059】
また、このネブライザ1では、本体11は本体筐体11Mによって、また、第1、第2の交換部材としての噴霧ユニット12-1,12-2,12-3はそれぞれ装着用筐体30によって保護される。特に、本体筐体11M、装着用筐体30をそれぞれ液密に構成することによって、液体(例えば、第1~第3の液体、洗浄用の水など)の浸入から保護される。
【0060】
この例では、ネブライザ1は、メッシュ式ネブライザとして構成されているので、霧化部を小型に構成でき、したがって、噴霧ユニット12-1,12-2,12-3を小型に構成できる。また、それに伴って電源部53と制御部60を小型化する(発振出力POを抑える)ことによって、本体11も小型化できる。これにより、全体として小型で、携帯性に優れたネブライザを実現できる。
【0061】
上の例では、本体11に対して取り替えて装着される噴霧ユニット12は3種類(噴霧ユニット12-1,12-2,12-3)としたが、これに限られるものではない。取り替えて装着される噴霧ユニット12は4種類以上であってもよいし、2種類であってもよい。それに応じて、本体11の制御部60は、それらの噴霧ユニット12の全てに対応した周波数成分を含む発振出力POを発生すればよい。
【0062】
(変形例1)
上述のネブライザ1では、噴霧ユニット12は、制御部60からの発振出力POを受けて動作する機能部として、霧化部(特に、振動部)としてのホーン振動子40のみを備えたが、これに限られるものではない。
図6は、変形例のネブライザ1′を示している。このネブライザ1′は、噴霧ユニット12(噴霧ユニット12-1,12-2,12-3の少なくともいずれか)に、制御部60からの発振出力POを受けて動作する機能部として、霧化部としてのホーン振動子40に加えて、給液部としての輸液ポンプ47と、送風部としての送気ファン48とを搭載し収容している。なお、
図6において、
図1~
図3中の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。輸液ポンプ47は、液溜め17から霧化部(例えば、シート21とホーン振動子40の振動面43との間の隙間43g)へ向けて液体を供給するのに用いられる。送気ファン48は、霧化によって生じたエアロゾルを、パイプ部材(マウスピース80など)を通して流すのに用いられる。これらの輸液ポンプ47、送気ファン48は、それぞれ、既述の周波数成分f1,f2,f3とは異なる予め定められた追加の周波数成分f4,f5で動作するように構成されている。これに応じて、この例では、制御部60は、動作時に、第1~第3の周波数成分f1,f2,f3に加えて、追加の周波数成分f4,f5を含む発振出力POを発生するようになっている。なお、理解の便宜のために、
図6中の本体11側には、発振出力POの時間的に変化する波形OWが模式的に示されている。また、噴霧ユニット12側には、ホーン振動子40が受ける周波数成分(f1,f2またはf3)の時間的に変化する波形RW1、輸液ポンプ47が受ける周波数成分f4の時間的に変化する波形RW2、送気ファン48が受ける周波数成分f5の時間的に変化する波形RW3がそれぞれ模式的に示されている。
【0063】
この例では、装着用筐体30のうち、ホーン振動子40のための受電コイル72が配置された領域12aに、制御部60からの発振出力POを受けられるように、輸液ポンプ47のための受電コイル82と、送気ファン48のための受電コイル86とが併せて配置されている。なお、
図6では、理解の容易のために、3つの受電コイル72,82,86が互いにずらして描かれているが、これらの受電コイル72,82,86は同じポールピース74に対して同心に巻回されていてもよい。受電コイル82と輸液ポンプ47とは、配線84a,84bによって接続されている。受電コイル86と送気ファン48とは、配線88a,88bによって接続されている。
【0064】
このネブライザ1′では、本体11に装着された噴霧ユニット12は、動作時に、本体11から、周波数成分f1,f2,f3に加えて追加の周波数成分f4,f5を含む発振出力POを受ける。その噴霧ユニット12の霧化部(特に、ホーン振動子40)は、周波数成分f1,f2またはf3を用いて動作する。これとともに、その噴霧ユニット12の機能部(この例では、輸液ポンプ47、送気ファン48)は、上記周波数成分f1,f2,f3とは異なる追加の周波数成分f4,f5で動作する。したがって、装着された噴霧ユニット12が上記霧化部とは別の機能部を含む場合であっても、ユーザが本体11の制御部60の設定(特に、発振出力POに含まれた周波数成分)を変更することなしに、上記機能部を適切に動作させることができる。したがって、上記機能部による動作によって、さらに様々なニーズに対応できる。
【0065】
なお、制御部60は探索部として働いて、発振周波数fをスイープさせることによって、本体11から噴霧ユニット12へ供給される電圧対電流の関係に基づいて、追加の周波数成分f4,f5の周波数を、それぞれ輸液ポンプ47、送気ファン48の動作に適合した周波数(目標周波数)に微調整(例えば、±5kHz)してもよい。
【0066】
(変形例2)
上述の各例では、動作時に、制御部60は、予め定められた周波数成分f1,f2,f3(または予め定められた周波数成分f1,f2,f3,f4,f5)を含む発振出力POを発生したが、これに限られるものではない。制御部60は探索部として働いて、発振周波数fを、例えば予め定められた周波数成分f1,f2,f3近傍でそれぞれスイープさせて、本体11に装着された噴霧ユニット12へ供給されるべき各周波数成分f1,f2,f3のための目標周波数を求めてもよい。または、それに代えて、制御部60は探索部として働いて、発振周波数fをより広範囲でスイープさせることによって、本体11に装着された噴霧ユニット12へ供給されるべき新たな周波数成分(すなわち、予定されていない周波数成分。これを符号fxで表す)があるか否かを探索してもよい。そして、新たな周波数成分fxが発見されたとき、制御部60は発振部として働いて、新たな周波数成分fxを発振出力POに含めてもよい。これにより、ユーザが特に本体11の発振部としての制御部60の設定(特に、発振出力POに含まれた周波数成分)を変更しなくても、新たな周波数成分fxによって動作すべき新たな機能部(霧化部を含む)を動作させることができる。
【0067】
例えば、仮に或る噴霧ユニット12に既述のホーン振動子40-1,40-2,40-3が全て搭載され、さらに、新たな周波数成分fxによって動作すべき新たな機能部(霧化部を含む)(これを符号4xで表す)が搭載されているものとする。この場合、発振周波数fをスイープすると、
図8(A)に示すように、f1=180kHz近傍、f2=300kHz近傍、f3=500kHz近傍でそれぞれアドミッタンスY1,Y2,Y3(または電流値)のピークが観測され、さらに、fx近傍で新たなアドミッタンス(これを符号Yxで表す)のピークが観測される。なお、この例では、f2<fx<f3となっているが、これに限られるものではない。これと並行して、
図8(B)に示すように、f1=180kHz近傍、f2=300kHz近傍、f3=500kHz近傍でそれぞれインピーダンスZ1,Z2,Z3(または電圧値)の急峻な変化が観測され、さらに、fx近傍で新たなインピーダンス(これを符号Zxで表す)の急峻な変化が観測される。したがって、電圧対電流の関係として、例えば電圧/電流比を発振周波数fごとに算出することによって、制御部60は、予め定められた周波数成分f1,f2,f3に加えて、供給されるべき新たな周波数成分fxを発見することができる。
【0068】
具体的には、
図7(A)に示すように、ユーザが電源スイッチ50Aをオンすると、制御部60は、まずステップS1で、初期設定を行う。
【0069】
例えば、
図7(B)に示すフローにしたがって、初期設定を行うものとする。上述のように、f1=180kHz近傍、f2=300kHz近傍、f3=500kHz近傍であるものとする。このフローでは、制御部60は、発振出力POに含まれるべき周波数成分(この例では、f1,f2,f3とする。)ごとに、発振周波数fをそれぞれその周波数成分f1,f2,f3近傍でスイープさせて、探索を行う。具体的には、まずステップS11で、
図8(A)、
図8(B)中に示すように、周波数成分f1の近傍で、例えばΔf=±100Hzの範囲で発振周波数fをスイープする。これにより、ステップS12に示すように、制御部60は、本体11から噴霧ユニット12へ供給される電圧対電流の関係に基づいて、周波数成分f1についての目標周波数(共振周波数)を決定する。次に、全ての目標周波数についての決定が完了しない限り(ステップS13でNO)、ステップS11に戻って、
図8(A)、
図8(B)中に示すように、次の周波数成分f2の近傍で、例えばΔf=±100Hzの範囲で発振周波数fをスイープする。これにより、ステップS12に示すように、制御部60は、周波数成分f2についての目標周波数(共振周波数)を決定する。この処理を、全ての目標周波数についての決定が完了するまで(ステップS13でYES)、継続する。このようにして、予め定められた周波数成分f1,f2,f3についての目標周波数をそれぞれ決定する。そして、後述の
図7(A)のステップS2へ進む。
【0070】
ここで、
図7(B)に示すフローでは、予め定められた周波数成分f1,f2,f3の近傍で発振周波数fをスイープするだけであるから、比較的短時間で初期設定を完了することができる。しかしながら、既述のように本体11から噴霧ユニット12へ供給されるべき新たな周波数成分fxが存在する場合は、新たな周波数成分fxを発見することができない。そこで、例えば、
図7(C)に示すフローにしたがって、初期設定を行ってもよい。
【0071】
図7(C)に示すフローでは、ステップS21で、制御部60は探索部として働いて、発振周波数fを、
図8(A)、
図8(B)中に示すように、予め定められた周波数成分f1,f2,f3の全てをカバーするような、例えば100Hzから2.5GHzまでの広範囲(これを「周波数シフト範囲」と呼ぶ。)Δfwでスイープさせる。制御部60は、周波数シフト範囲Δfw全域のスイープが終了しない限り(ステップS22でYES)、スイープを継続し、本体11から噴霧ユニット12へ供給されるべき周波数成分(共振周波数)があれば(ステップS23でYES)、目標周波数としてその共振周波数を記録する(ステップS24)。制御部60は、周波数シフト範囲Δfw全域のスイープが終了すると(ステップS22でYES)、後述の
図7(A)のステップS2へ進む。
【0072】
なお、まず
図7(B)に示すフローで初期設定を試みた後、予め定められた周波数成分f1,f2,f3を全く(または、いずれかを)検出できないときに、
図7(C)に示すフローにしたがって初期設定を行ってもよい。
【0073】
ここで、
図7(C)に示すフローにしたがう初期設定によって、例えば、予め定められた周波数成分f1,f2,f3のうちf1のみと、新たな周波数成分fxとが発見されたものとする。言い換えれば、予め定められた周波数成分f1,f2,f3のうち、f2,f3は供給不要な周波数成分であると判明したものとする。すると、この例では、制御部60は発振部として働いて、供給不要な周波数成分f2,f3を発振出力POから除外する。これにより、ユーザが特に本体11の制御部60の設定(特に、発振出力POに含まれた周波数成分)を変更しなくても、供給不要な周波数成分(この例では、f2,f3)の供給を停止でき、省電力が可能となる。
【0074】
図7(A)のステップS2では、制御部60は発振部として働いて、上の例では目標周波数に設定された周波数成分f1,fx(のみ)を含む発振出力POを発生する。この発振出力POは、磁気結合を用いたワイヤレス電力伝送によって、送電コイル62から霧化部(この例では、ホーン振動子40-1とメッシュ部材20-1とが構成する霧化部)のための受電コイル72、機能部4xのための受電コイル(図示せず)へそれぞれ伝送される。これにより、機能部4xの動作を伴って、噴霧動作、すなわち、上記霧化部による液体(この例では、第1の液体)の霧化が行われる。この例では、ユーザが終了操作(電源スイッチ50Aをオフ)を行わない限り(ステップS3でNO)、噴霧動作は継続される。ユーザが終了操作を行うと(ステップS3でYES)、噴霧動作は終了する。
【0075】
なお、上の例では、
図7(C)に示すフローにしたがう初期設定によって、予め定められた周波数成分f1,f2,f3のうちf1のみと、新たな周波数成分fxとが発見されたものとしたが、これに限られるものではない。例えば、予め定められた周波数成分f1のみが発見されたものとしてもよい。その場合、
図7(C)のステップS24で、制御部60は、周波数成分f1についての目標周波数(共振周波数)のみを記録する。さらに、
図7(A)のステップS2では、制御部60は発振部として働いて、上の例では目標周波数に設定された周波数成分f1のみを含む発振出力POを発生する。
【0076】
また、上の例では、
図7(C)に示すフローにしたがう初期設定で、100Hzから2.5GHzまでの周波数シフト範囲Δfwで発振周波数fをスイープしたが、これに限られるものではない。100Hzからではなく、例えば250kHzから探索を開始してもよい。
【0077】
上述の実施形態では、本体11から噴霧ユニット12へ発振出力POを伝送する方式は、ワイヤレス電力伝送方式であるものとしたが、これに限られるものではない。本体11から噴霧ユニット12へ発振出力POを伝送する方式は、有線電力伝送方式であってもよい。その場合、本体筐体11Mの上壁11Mtの外側(上側)の互いに離間した一対の箇所と、その一対の箇所に対応した、噴霧ユニット12の底壁30Mbの外側(下側)の互いに離間した一対の箇所とに、それぞれ一対の接点を設けておくのが望ましい。これにより、ユーザが本体11に対して噴霧ユニット12を装着すれば、上記一対の接点同士が対応して接触する。この結果、本体11から噴霧ユニット12へ、上記発振出力POの伝送が簡単な構成(接点による有線電力伝送方式)で行われ得る。
【0078】
また、上述の実施形態では、本体11(および噴霧ユニット12)は、長円状の平面形状を有するとしたが、これに限られるものではない。本体11(および噴霧ユニット12)の平面形状は、楕円、円、丸角四角形(角が丸くされた四角形)などであってもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、メッシュ式ネブライザに関して説明したが、これに限られるものではない。この発明は、いわゆる二槽構造の超音波式ネブライザ(すなわち、超音波振動子が面した冷却水槽に薬剤槽が浸漬され、超音波振動子から発生した超音波振動エネルギが冷却水を通して薬液表面に集中し、振動の作用(キャビテーション効果)で薬液が霧化されるタイプのネブライザ)にも適用され得る。
【0080】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1,1′ ネブライザ
11 本体
11M 本体筐体
12,12-1,12-2,12-3 噴霧ユニット
20-1,20-2,20-3 メッシュ部材
21,21-1,21-2,21-3 シート
30 装着用筐体
30M ベース筐体
31 カバー部材
40,40-1,40-2,40-3 ホーン振動子
60 制御部
61 送電コイルユニット
71 受電コイルユニット