IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7571679運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置
<>
  • 特許-運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置 図1
  • 特許-運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置 図2
  • 特許-運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置 図3
  • 特許-運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置 図4
  • 特許-運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置 図5
  • 特許-運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置 図6
  • 特許-運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/127 20060101AFI20241016BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20241016BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241016BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241016BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20241016BHJP
【FI】
G08G1/127 A
G01C21/36
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021115252
(22)【出願日】2021-07-12
(65)【公開番号】P2023011414
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】長田 祐
(72)【発明者】
【氏名】東出 宇史
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237188(JP,A)
【文献】特開2018-017641(JP,A)
【文献】特開2011-027690(JP,A)
【文献】特開2015-206655(JP,A)
【文献】特開2021-043524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0169366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運行ルート生成装置が実行する運行ルート生成方法であって、
運転者が運転を行う第1分類の車両が走行する予め定められた運行ルートのルート情報を取得することと、
運転者無しで自動運転可能な第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報を取得することと、
前記走行可能条件情報に基づいて、前記運行ルート上で前記第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間を特定することと、
前記運行ルートのうち前記区間を含む第1ルートを、自動運転による走行が可能な第2ルートに置換するように、前記ルート情報を修正することと
を含む、運行ルート生成方法。
【請求項2】
前記区間を特定することは、前記運行ルートおよび該運行ルートの周辺の道路情報を取得することと、該道路情報と前記走行可能条件情報とに基づいて前記区間を特定することを含む、請求項1に記載の運行ルート生成方法。
【請求項3】
前記第2ルートになりうる候補ルートが複数あるとき、前記第1ルートに最も近い前記候補ルートを前記第2ルートに設定する、請求項1または2に記載の運行ルート生成方法。
【請求項4】
前記第1ルート上の各地点の前記候補ルートからの最短距離の総和に基づいて、前記第1ルートに最も近い前記候補ルートを決定する、請求項3に記載の運行ルート生成方法。
【請求項5】
前記区間に第1分類の車両が停車すべき第1の停車位置が含まれる場合、前記第1の停車位置の位置情報に基づいて、前記第2ルート上に前記第2分類の車両が停車すべき第2の停車位置を設定する、請求項1から4の何れか一項に記載の運行ルート生成方法。
【請求項6】
前記第1の停車位置に最も近い前記第2ルート上の位置に前記第2の停車位置を設定する、請求項5に記載の運行ルート生成方法。
【請求項7】
前記走行可能条件情報は、天候および日照状況の少なくとも何れかに関連する環境条件を含み、異なる環境条件に応じて複数の修正した前記ルート情報を生成する、請求項1から6の何れか一項に記載の運行ルート生成方法。
【請求項8】
前記第1分類の車両の運行計画と、前記第2分類の車両の走行可能な最高速度と、修正した前記ルート情報とに基づいて、前記第2分類の車両の運行計画を生成することをさらに含む、請求項1から7の何れか一項に記載の運行ルート生成方法。
【請求項9】
前記第2分類の車両の前記運行計画は、それぞれの停車位置における停車時間が、前記第1分類の車両の前記運行計画に含まれる対応する停車位置における停車時間よりも長い、請求項8に記載の運行ルート生成方法。
【請求項10】
運転者が運転を行う第1分類の車両が走行する予め定められた運行ルートのルート情報を取得することと、
運転者無しで自動運転可能な第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報を取得することと、
前記走行可能条件情報に基づいて、前記運行ルート上で前記第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間を特定することと、
前記運行ルートのうち前記区間を含む第1ルートを、自動運転による走行が可能な第2ルートに置換するように、前記ルート情報を修正することと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
運転者が運転を行う第1分類の車両が走行する予め定められた運行ルートのルート情報を取得することと、運転者無しで自動運転可能な第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報を取得することとを可能に構成された取得部と、
前記走行可能条件情報に基づいて、前記運行ルート上で前記第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間を特定することと、前記運行ルートのうち前記区間を含む第1ルートを、自動運転による走行が可能な第2ルートに置換するように、前記ルート情報を修正することとを含む、運行ルートの生成を実行可能に構成された制御部と、
を備える運行ルート生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信技術の採用により、バス等の車両を含む交通システムの効率性および利便性の向上が図られている。例えば、特許文献1では、車両のすれ違いが困難な狭隘エリアにバスが侵入する前に、バス同士が通信を行うことにより、バスの車載装置が、当該狭隘エリアを優先して通行するか否かを判断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-133392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の運転者により運転される従来型のバスの車両を自動運転車両に切り替える場合、自動運転の制約から必ずしも従来のバス路線の運行ルートをそのまま走行できない場合がある。従来の運行ルートに基づいて、自動運転車両用の運行ルートを迅速に生成できると有益である。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、予め定められた運行ルートに基づき自動運転車両が走行可能な運行ルートを生成する運行ルート生成方法、プログラムおよび運行ルート生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る運行ルート生成方法は、運行ルート生成装置が実行する運行ルート生成方法である。前記運行ルート生成方法は、運転者が運転を行う第1分類の車両が走行する予め定められた運行ルートのルート情報を取得することと、運転者無しで自動運転可能な第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報を取得することと、前記走行可能条件情報に基づいて、前記運行ルート上で前記第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間を特定することと、前記運行ルートのうち前記区間を含む第1ルートを、自動運転による走行が可能な第2ルートに置換するように、前記ルート情報を修正することとを含む。
【0007】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、運転者が運転を行う第1分類の車両が走行する予め定められた運行ルートのルート情報を取得することと、運転者無しで自動運転可能な第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報を取得することと、前記走行可能条件情報に基づいて、前記運行ルート上で前記第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間を特定することと、前記運行ルートのうち前記区間を含む第1ルートを、自動運転による走行が可能な第2ルートに置換するように、前記ルート情報を修正することとを含む処理を、コンピュータに実行させる。
【0008】
本開示の一実施形態に係る運行ルート生成装置は、取得部と制御部とを含む。前記取得部は、運転者が運転を行う第1分類の車両が走行する予め定められた運行ルートのルート情報を取得することと、運転者無しで自動運転可能な第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報を取得することとを可能に構成される。前記制御部は、前記走行可能条件情報に基づいて、前記運行ルート上で前記第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間を特定することと、前記運行ルートのうち前記区間を含む第1ルートを、自動運転による走行が可能な第2ルートに置換するように、前記ルート情報を修正することとを含む、運行ルートの生成を実行可能に構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、予め定められた運行ルートに基づき、自動運転車両が走行可能な運行ルートを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る運行ルート生成装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】従来の運行ルートの一例を示す図である。
図3】本開示の運行ルート生成方法による運行ルートの生成の一例を説明する図である。
図4】本開示の運行ルート生成方法による運行ルート生成の他の一例を説明する図である。
図5】従来の車両による運行ダイヤの例と自動運転車両による運行ダイヤの例とを対比して示す図である。
図6】環境条件の違いに対応する自動運転車両の2つの運行ルートの例を示す図である。
図7】運行ルート生成装置が実行する運行ルート生成方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0012】
(全体システムの構成)
本開示の一実施形態に係る運行ルート生成装置10は、図1に示すようにバス会社等の車両運行事業者20との間で、バス等の車両の運行ルートの情報であるルート情報をやり取りすることができる。運行ルート生成装置10は、車両運行事業者20から、従来の運転者が運転を行う車両が走行する運行ルートの情報を取得することができる。運行ルート生成装置10は、取得したルート情報に基づき、車両を運転者無しで自動運転可能な車両に切り換えた場合の、新たな運行ルートのルート情報を生成し、車両運行事業者20に引き渡すことができる。
【0013】
運転者が運転を行う車両は、本願において第1分類の車両と呼ばれる。運転者無しで自動運転可能な車両は、第2分類の車両と呼ばれる。第1分類の車両は、例えば、車載システムによる運転支援を伴わない手動運転の車両、および、低レベルの自動運転を行う車両を含む。低レベルの自動運転は、運転者の運転の支援のみを行う自動運転、または、運転者による常時監視を必要とするレベルの自動運転である。低レベルの自動運転は、例えば、SAE(Society of Automotive Engineers)において定義されるレベル1およびレベル2の自動運転を含む。第2分類の車両は、運転操作全般が自動化されている高レベルの自動運転を行う車両を含む。高レベルの自動運転は、例えば、SAEにおいて定義されるレベル3以上またはレベル4以上の自動運転を含む。
【0014】
運行ルート生成装置10は、パソコン、ワークステーション、および、汎用コンピュータ等のコンピュータである。運行ルート生成装置10は、車両運行事業者20から依頼を受けて運行ルートを生成する事業者の事業所等に配置されてよい。運行ルート生成装置10は、車両運行事業者20の所有するコンピュータとの間で、通信によりルート情報を送信および受信してよい。または、運行ルート生成装置10は、車両運行事業者20との間で、記憶媒体の形でルート情報を受け渡してよい。記憶媒体は、磁気記憶媒体、光学式記憶媒体、および、半導体記憶媒体を含む。運行ルート生成装置10は、既存の第1分類の車両のルート情報に加え、切り換えの対象となる第2分類の車両の情報を、車両運行事業者20から取得してよい。
【0015】
運行ルート生成装置10は、道路情報提供者30から運行ルートの周辺の道路情報を取得することができる。道路情報提供者30は、例えば道路地図を提供する事業者であるが、これに限られない。道路情報提供者30は、一つに限られず複数であってよい。道路情報は、道路に関する地理的な情報、交通規制の情報、および、自動運転による走行が可能か否かを判断するために必要となる情報を含む。道路に関する地理的な情報は、道路の設置されている絶対位置の情報を含む。交通規制の情報は、制限速度、一方通行、高さ制限、および、右折または左折禁止等の規制情報を含む。自動運転による走行が可能か否かを判断するために必要となる情報は、高速道路および一般道等の道路種別、市街地または山間部等の区別、車線数、路肩の有無、車線表示状態、ガードレールの有無、自動運転車両と協調するインフラの有無等の情報を含む。
【0016】
(運行ルート生成装置の構成)
運行ルート生成装置10は、図1に示すように、取得部11、制御部12、出力部13および記憶部14を備える。
【0017】
取得部11は、車両運行事業者20および道路情報提供者30を含む外部からの情報を取得するように構成される。取得部11は、外部からの情報を受信するための通信モジュールを含んでよい。また、取得部11は、外部から提供された記憶媒体を読み取るための読取装置を含んでよい。
【0018】
制御部12は、第2分類の車両の運行ルートを生成する処理を実行可能に構成されるとともに、運行ルート生成装置10が備える各構成部を制御する。制御部12は、1つ以上のプロセッサを含んでよい。制御部12は、種々のプロセッサを含みうる。プロセッサには、特定のプログラムを読み込ませることにより、プログラムされた機能を実行する汎用プロセッサおよび、特定の処理に特化した専用プロセッサが含まれる。
【0019】
制御部12は、第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報に基づいて、第1分類の車両の運行ルート上で第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間を特定するように構成される。走行可能条件情報は、車両運行事業者20から取得した第2分類の車両の情報に含まれてよい。または、走行可能条件情報は、制御部12が第2分類の車両の情報に基づいて、取得部11を介して外部のデータベース等から取得してよい。
【0020】
制御部12は、道路情報提供者30から取得した道路情報と走行可能条件情報とに基づいて、既存の運行ルートのうち第2分類の車両が走行不可能な区間を含む第1ルートを置換することが可能な第2ルートを設定するように構成される。第2ルートは、第2分類の車両が走行可能なルートである。制御部12は、運行ルートのうち第1ルートを第2ルートに置換するように、ルート情報を修正するように構成される。
【0021】
出力部13は、生成したルート情報を出力するように構成される。出力部13は、外部へ情報を送信するための通信モジュールを含んでよい。また、出力部13は、記憶媒体に情報を書き込むための書込装置を含んでよい。出力部13は、取得部11と共通の通信部または媒体読取/書込部として構成されてよい。
【0022】
記憶部14は、制御部12が実行するプログラム、制御部12が実行する処理に必要な情報、および、制御部12が実行した結果得られた情報を記憶するように構成される。制御部12が実行する処理に必要な情報には、取得部11が取得したルート情報、走行可能条件情報、および、道路情報を含む。記憶部14は、半導体メモリ、磁気記憶装置、および、光記憶装置の何れか1つ以上を含む。半導体メモリは、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、等を含みうる。RAMにはDRAM(Dynamic Random Access Memory)とSRAM(Static Random Access Memory)とが含まれうる。磁気記憶装置は、ハードディスク等が含まれる。
【0023】
(ルート生成の例)
以下に、運行ルート生成装置10による運行ルートの生成について、図を用いて説明する。まず、既存の第1分類の車両の運行ルートが図2に示すように規定されていると想定する。図2において、停留所S1からS5はバスである第1分類の車両の停留所を示す。停留所S1からS5は、第1分類の車両の停車位置である。停留所S1は、第1分類の車両の出発地点である。停留所S5は、第1分類の車両の目的地点である。図2は、停留所S1から停留所S5へ向かう運行ルートを示すが、停留所S5から停留所S1へ同じ運行ルートを反対方向に進むルートが同時に存在してよい。図2において、運行ルートは、直線的に示されている。しかし、実際の運行ルートは、種々の屈曲する形状を含んでよい。
【0024】
運行ルート生成装置10の取得部11は、図2に示される運行ルートのルート情報を取得する。取得部11は、さらに、道路情報と走行可能条件情報とを取得する。制御部12は、道路情報と走行可能条件情報とに基づいて、運行ルート中に第2分類の車両の自動運転による走行が不可能な区間Pngを特定する。走行可能条件情報は、例えば、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)の情報を含む。運行設計領域は、自動運転システムが作動する前提となる走行環境条件である。運行設計領域は、自動運転システムごとに異なる。例えば、第2分類の車両の運行設計領域で、自動運転が可能な道路が、制限速度が時速40km未満の道路に限定されている場合、運行ルートに含まれる制限速度が時速40km以上の道路の部分は、走行が不可能な区間Pngとなる。また、自動運転可能な道路が、歩道と車道との間が分離されている道路に限定されている場合、道路の歩道のない区間は走行が不可能な区間Pngとなる。
【0025】
図3に示すように、停留所S2と停留所S3との間に、第2分類の車両の走行が不可能な区間Pngがあった場合、制御部12は、区間Pngを含むルートを第1ルートR1として特定する。第1ルートR1は、停留所S2と停留所S3との間で、区間Pngを含み、道路の分岐点を両端とするルートとすることができる。制御部12は、第2分類の車両が通行可能な複数の候補ルートCR1、CR2およびCR3を抽出する。図3の例では、制御部12は、複数の候補ルートCR1、CR2およびCR3から、第1ルートR1に最も近い候補ルートCR1を第2ルートR2として設定する。
【0026】
第1ルートR1と各候補ルートCR1、CR2およびCR3との距離の近さは複数の方法で判定することができる。例えば、制御部12は、各候補ルートCR1、CR2およびCR3について、第1ルートR1上の複数の地点に含まれる各地点のからの最短距離の総和に基づいて、距離の近さを判定してよい。また、例えば、制御部12は、各候補ルートCR1、CR2およびCR3上の、第1ルートR1から最も離れた地点における、第1ルートからの距離を用いて、距離の近さを判定してよい。また、例えば、制御部12は、第1ルートR1と各候補ルートCR1、CR2およびCR3によって囲まれた地形の面積を比較し、当該面積が小さいほど、第1ルートR1と候補ルートCR1、CR2およびCR3との距離が近いと判定してよい。
【0027】
また、図4に示すように第2分類の車両の走行が不可能な区間Pngに、停留所S3が含まれる場合、制御部12は、当該停留所S3を通らない第2ルートR2を設定してよい。停留所S3は第1の停車位置である。この場合、制御部12は、停留所S3の位置情報に基づいて、第2ルートR2上に第2分類の車両が停車すべき停留所S3-1を設定してよい。停留所S3-1は、第2の停車位置である。例えば、制御部12は、第1ルートR1上の停留所S3に、距離的に最も近い第2ルートR2上の位置に停留所S3-1を設定してよい。あるいは、制御部12は、第1ルートR1上の停留所S3に徒歩で移動した場合に最も早く移動可能な第2ルートR2上の位置に、停留所S3-1を設定してよい。制御部12は、新たに設定した停留所S3-1の情報を修正するルート情報に含ませることができる。
【0028】
制御部12は、第1分類の車両の運行計画に基づいて、第2分類の車両の運行計画を生成してよい。運行計画は、例えば、各車両の時間ごとの位置を線図で表現した運行ダイヤにより表すことができる。図5は、既存の運行ルートにおける第1分類の車両の運行ダイヤD1と、車両を第2分類の車両に置き換えた後の運行ダイヤD2の一例を示す。自動運転車両である第2分類の車両は、運転者が運転する第1分類の車両よりも、走行可能な最高速度が低くなる場合がある。制御部12は、第2分類の車両の走行可能な最高速度と、修正したルート情報とに基づいて、第2分類の車両の運行計画を生成する。このため、図5の例では、グラフの傾きで表される第2分類の車両の速度が、第1分類の車両の速度よりも遅くなっている。
【0029】
さらに、第2分類の車両に車両運行事業者の乗務員が乗車しない場合、各停留所S1からS5での乗客の乗車および降車時に、車両運行事業者20の監視センターで第2分類の車両に装着したカメラから送信された画像を目視して、安全確認を行うことが想定される。そのような場合、運行ルート上の各停留所S2、S3-1、S4では、安全確認のためにより多くの時間を要することがある。そのため、第2分類の車両の運行ダイヤD2では、各停留所S2、S3-1、S4での停車時間T2が、既存の第1分類の車両の運行ダイヤD1における各停留所S2、S3、S4における停車時間T1よりも長く設定されてよい。
【0030】
以上のように、一例において、第2分類の車両の運行ダイヤD2では、第1分類の車両の運行ダイヤD1と比較して、停留所S1からS5へ向かう往路および停留所S5からS1へ向かう復路の所要時間が長くなることがある。しかしながら、第2分類の車両の最高速度、および、乗客の乗車および降車を検知するシステムの高度化および自動化の状況に応じて、生成可能な走行計画は異なる。制御部12は、既存の第1分類の車両の運行ダイヤD1に、できるだけ近づけるように、第2分類の車両の運行ダイヤD2を生成してよい。
【0031】
第2分類の車両の走行可能条件情報は、前述の情報に加え、天候および日照状況の少なくとも何れかに関連する環境条件を含む場合がある。例えば、図6に示すように、第2分類の車両は、昼間または晴天時においては第2ルートR2-1を走行可能だが、夜間または雨天時には第2ルートR2-1を走行できない場合がある。そのような場合、制御部12は、夜間または雨天時用に他の第2ルートR2-2を設定することができる。すなわち、制御部12は、異なる環境条件に応じて異なる複数の第2ルートR2-1、R2-2を設定することにより、異なる複数の修正したルート情報を生成することができる。
【0032】
(運行ルート生成方法)
図7を参照して、運行ルート生成装置10が実行する運行ルート生成方法の手順について説明する。運行ルート生成装置10が実行する方法は、制御部12が運行ルート生成装置10の各構成部を制御して実行するものとみなすことができる。本明細書で開示される方法は、運行ルート生成装置10の制御部12に含まれるプロセッサがプログラムに従って実行することができる。そのようなプログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体において記憶されることが可能である。非一時的なコンピュータ可読媒体は、は、磁気記憶媒体、光磁気記憶媒体および半導体メモリ等を含むが、これらに限定されない。
【0033】
まず、運行ルート生成装置10は、車両運行事業者20から、運転者が運転する第1分類の車両の、予め定められた運行ルートのルート情報を取得する(ステップS101)。
【0034】
運行ルート生成装置10は、車両運行事業者20または他の外部の情報源から、自動運転可能な第2分類の車両の走行可能な条件を示す走行可能条件情報を取得する(ステップS102)。
【0035】
運行ルート生成装置10は、道路情報提供者30から運行ルートの周辺の道路情報を取得する(ステップS103)。ステップS101からステップS103は、ここに示した順序と異なる順序で実行されてよい。また、ステップS101からステップS103は、少なくとも部分的に並行して事項されてよい。
【0036】
運行ルート生成装置10は、ステップS103で取得した道路情報とステップS102で取得した走行可能条件情報とに基づき、ステップS101で取得した運行ルート上で第2分類の車両が自動運転による走行が不可能な区間を特定する(ステップS104)。なお、自動運転による走行が不可能な区間がない場合、運行ルート生成装置10は、ルート情報を修正せずにステップS108に進んでよい。
【0037】
運行ルート生成装置10は、ステップS104で特定した自動運転による走行が不可能な区間Pngを含む第1ルートの代替となる第2分類の車両による自動運転による走行が可能な第2ルートを道路情報に基づき決定する(ステップS105)。運行ルート生成装置10は、複数の第2ルートの候補ルートが抽出される場合、第1ルートに最も近い候補ルートを第2ルートR2に決定してよい。
【0038】
運行ルート生成装置10は、第1ルートに第1分類の車両の停車位置が含まれる場合、第2ルート上の第1ルートの停車位置に近い位置に第2分類の車両の停車位置を設定する(ステップS106)。運行ルート生成装置10は、第1ルートに第1分類の車両の停車位置が含まれない場合、ステップS106を実行せずステップS107に進む。
【0039】
運行ルート生成装置10は、運行ルート中の第1ルートを、ステップS105で決定した第2ルートに置換した新たな運行ルートを生成し、この運行ルートに基づきルート情報を修正する(ステップS107)。
【0040】
運行ルート生成装置10は、ステップS107で修正されたルート情報に従って、運行計画を生成する(ステップS108)。運行ルート生成装置10は、ステップS108の後、処理を終了する。
【0041】
運行ルート生成装置10は、ステップS107で修正したルート情報およびステップS108で生成した運行計画を記憶部14に記憶してよい。運行ルート生成装置10の記憶部14に記憶されたルート情報および運行計画は、出力部13により車両運行事業者20に対して通信回線を介して送信されてよい。あるいは、運行ルート生成装置10の記憶部14に記憶されたルート情報および運行計画は、出力部13により媒体に記憶され車両運行事業者20に引き渡されてよい。
【0042】
以上説明したように本実施形態によれば、運行ルート生成装置10は、既存の第1分類の車両の運行ルート上で自動運転による走行が不可能な区間を特定し、上記区間を含む第1ルートを、自動運転による走行が可能な第2ルートに置換するように、ルート情報を修正する。これにより、運行ルート生成装置10は、予め定められた運行ルートに基づき、自動運転車両が走行可能な運行ルートを生成することができる。
【0043】
また、運行ルート生成装置10は、第2ルートになりうる候補ルートが複数あるとき、第1ルートに最も近い候補ルートを前記第2ルートに設定するので、既存の運行ルートにより近い経路を通る運行ルートを選択することができる。
【0044】
また、運行ルート生成装置10は、自動運転による走行が不可能な区間に第1分類の車両が停車すべき第1の停車位置が含まれる場合、第1の停車位置の位置情報に基づいて第2ルート上に第2分類の車両が停車すべき第2の停車位置を設定することができる。これにより、修正後の運行ルートにおいて、既存の運行ルートに配置されていた停車位置と対応する停車位置を設けることができる。したがって、既存の運行ルートの停車位置を利用していた乗客への利便性の低下を防止または低減することができる。
【0045】
さらに、走行可能条件情報は、天候および日照状況の少なくとも何れかに関連する環境条件を含み、運行ルート生成装置10は、異なる環境条件に応じて複数の修正したルート情報を生成することができる。これによって、運行ルート生成装置10は、異なる環境に応じて、既存の運行ルートに対する変更をできるだけ抑制した複数の自動運転車両の運行ルートを設定することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態によれば、修正された運行ルートに基づく、新たな運行計画を生成することができる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または改変が可能である。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段またはステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 運行ルート生成装置
11 取得部
12 制御部
13 出力部
14 記憶部
20 車両運行事業者
30 道路情報提供者
S1-S5 停留所
Png 自動運転による走行が不可能な区間
R1 第1ルート
R2 第2ルート
CR1-CR3 候補ルート
D1 第1分類の車両の運行ダイヤ
D2 第2分類の車両の運行ダイヤ
T1,T2 停車時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7